(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558594
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ハイピッチ耐失速プロペラ
(51)【国際特許分類】
F03B 3/00 20060101AFI20190805BHJP
F01D 1/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
F03B3/00
F01D1/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-561777(P2016-561777)
(86)(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公表番号】特表2017-511281(P2017-511281A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】AU2015000209
(87)【国際公開番号】WO2015154131
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年3月29日
(31)【優先権主張番号】2014901273
(32)【優先日】2014年4月8日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】516299361
【氏名又は名称】クリーンフューチャー エネルギー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】516299372
【氏名又は名称】クルーガー,ウリ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー,ウリ
(72)【発明者】
【氏名】ポチャナ,ステポン
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0311363(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第105715302(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第105736229(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/00
F01D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原点から3次元の渦巻線までの表面ラインの投影により画定された表面外形を持つプロペラブレードであり、前記渦巻き線は双曲線により画定された回転表面上への2次元の渦巻線の投射により形成されることを特徴とするプロペラブレード。
【請求項2】
前記2次元の渦巻線はフィボナッチ渦巻線である、請求項1に記載のプロペラブレード。
【請求項3】
前記双曲線は正方形の双曲線である、請求項1に記載のプロペラブレード。
【請求項4】
前記ブレードの前縁部および後縁部は対称である、請求項1に記載のプロペラブレード。
【請求項5】
前記前縁部は前記後縁部よりも小さい、請求項1に記載のプロペラブレード。
【請求項6】
前記ブレードの厚さが均一である、請求項1に記載のプロペラブレード。
【請求項7】
請求項1に記載のプロペラブレードを複数備えたプロペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロペラ、特にハイピッチ耐失速プロペラに関する。
【背景技術】
【0002】
プロペラは、トルクを推力に変換し、それによって流体を軸方向に加速することにより、回転運動を直線運動に変換するする装置である。プロペラが最小の軸パワー入力で最大推力を生成するためには、ハイブレードピッチと低速回転速度の組み合わせることが役立つ。
【0003】
プロペラに加えることができる最大のピッチは、実際には操作される流体の速度により制限を受ける。来入する流速が低い、またはゼロであれば、プロペラのブレードは非常に高いピッチ角度で失速して、流体を動かすことはない。従って、ファンまたは速度がゼロの条件で動作する静的なスラスタは、ピッチ角度に制約があるために、どのくらい効率よく動作することができるかは限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、流入する流速がゼロという条件でも、失速せずに高いブレードピッチ角度で運転することができるプロペラを提供し、従来のタイプのプロペラに比べてパワー入力レベルを著しく小さくしても、同等の推力を伝えるプロペラを実現すること、または少なくとも従来のプロペラの有効な代替品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は原点から3次元渦巻線までの表面ラインの投影により画定された表面外形を持つプロペラブレードを備え、渦巻線は二次元の渦巻線を双曲線により画定された回転表面上に投影することにより形成される。
【0006】
二次元渦巻線はフィボナッチ渦巻線であるのが好ましい。
【0007】
むしろ双曲線は正方形の双曲線であり、双曲線の頂点は1に等しく、双曲線の焦点は2の平方根に等しい。
【0008】
ブレードの前方部分および後方部分は対称であることが好ましく、そうでないと、1つの方向で性能が向上すると、前方部分が後方部分よりも小さくなってしまう。
【0009】
ブレードの厚さは均一であるのが好ましい。
【0010】
別の態様では本発明は、上記のように複数のプロペラブレードを備える。
【0011】
必要に応じて、上記の態様のどれでも、上記の任意の他の態様の任意の特徴を含むことができるし、以下の任意の態様の任意の特徴を含むこともできることは注意すべきである。
【0012】
本発明の好ましい特徴、実施形態、および変形は、当業者が本発明を実施するための十分な情報を提供する以下の発明を実施するための形態から認識することができる。発明を実施するための形態は、本発明の前記発明の概要の範囲を限定すると決して考えてはならない。発明を実施するための形態は、以下の多数の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明のプロペラブレードの外形を決定するために使用する、双曲線の回転表面上に投射された渦巻線を示す。
【
図3】
図3は、プロペラブレードの表面外形の半分を表す、
図2の投射から構築された3次元表面を示す。
【
図4】
図4は、コピーして回転させ、プロペラブレードの完全な表面外形を生成した
図3の表面を示す。
【
図5】
図5は、
図4の表面上に投射して第1のプロペラブレードを形成した、第1のプロペラブレード側面図を示す。
【
図6】
図6は、中央ハブの周りに置かれた
図5の3枚のブレードにより形成された、第1のプロペラを示す。
【
図7】
図7は、
図4の表面上に投射して第2のプロペラブレードを形成した、第2のプロペラブレード側面図を示す。
【
図8】
図8は、中央ハブの周りに置かれた
図7の3枚のブレードにより形成された、第2のプロペラを示す。
【
図9】
図9は、非対称側面で形成された第3のプロペラを示す。
【
図11】
図11は、比較する目的で使用された従来のプロペラを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の本発明の詳細な説明は、添付の図面を参照している。可能な限り同じ参照番号を、すべての図面および以下の説明で使用して、同一および類似の部分を参照することにする。図面に示すある部品の寸法は、明確にする、または説明する目的で修正および/または誇張する可能性がある。
【0015】
本発明は、表面の輪郭線が自然界の渦巻に固有の流れの輪郭線から得られた、対数スケールのブレードを備えたプロペラを記載している。このようにして構築されたプロペラは、流入する速度がゼロという条件でも、失速せずに高いブレードピッチ角度で操作することができ、従来のタイプのプロペラと比較すると、パワー入力レベルが極端に小さくても同等の推力を供給するということが見出されている。
【0016】
明確に画定された幾何学的なパラメータに従って、自己組織化方式で、渦巻じょうご内に流体の流れが発生する。渦巻の内部では流体は乱れることなくより高速で流れる。本発明で説明するプロペラブレードは、渦巻の流線形状から得られた表面の輪郭線を持つので、表面の乱れが形成されないようにし、表面全体に均一で位相の揃った流体の流れを発生させるプロペラが得られる。その結果、流体の来入速度が遅い条件下でも、失速することなく急勾配のピッチ角度でプロペラを動作させることができる。同じ風量吐出し率で、より低速の回転速度で動作させることにより、軸パワーの消費が著しく小さくなり、翼端速度が小さくなるのでノイズも小さくなる。あるいは、一定のパワーを使用して、従来のプロペラと比較するとより大きい風量を吐き出すことができる。
【0017】
渦巻の根本的な幾何形状は、貝殻から渦状銀河に亘る自然界の事物によく見られる黄金渦巻、すなわちフィボナッチの渦巻として知られる等角対数螺旋である。3次元的に見れば、渦巻き内の流体の流れは、頂点が1に等しく焦点が2の平方根に等しい正方形の双曲線の回転表面上への、黄金渦巻の投射として描くことができる。
【0018】
図1は、本発明によるプロペラブレードの表面を画定するのに使用する、基本的な幾何学的構成要素を示す。正方形の双曲線は、10および20で示し、双曲線が360°回転して回転表面を形成する際に形成される基部を示す。双曲線の原点の周囲の黄金渦巻30は回転表面上に投射されて、渦巻き内の流体の流れに対応する3次元渦巻線40を形成する。
図1は、視覚化しやすくするために、格子を付けて示している。さらに
図2に格子を付けない形状を示す。
【0019】
プロペラブレードの第1の半表面形状50を、(渦巻線および双曲線の)原点から3D渦巻線40上の終点までの線分で形成された
図3内の格子で示す。
【0020】
図4では、表面50を複写、回転して第2の表面60とする。2つの表面は、発散および収束する流れの輪郭線を持つ連続表面70を生成する。
【0021】
第1のブレード断面図を
図5の80で示す。ブレード断面図は表面70に投射され、第1のプロペラブレード90を形成する。
【0022】
第1の完成したプロペラ100を
図6に示すが、ブレード90およびハブ95の周りに等間隔に置かれた2つの同一の複製91、92を備える。
【0023】
第1のプロペラブレードのXY水平断面全体が対称形状であるので、プロペラの両方向の回転性能が等しくなる。
【0024】
ブレード断面は美的または性能のどちらか一方を考慮して変えることもできるし、ブレードはプロペラのハブまで延ばしても、または延ばさなくてもよい。そのような変化があったとしても性能に対する影響は殆どないことが示されている。
【0025】
第2の対称ブレード断面を
図7の105に示す。ブレード断面は表面上に投射され、第2のプロペラブレード106を形成するが、さらに2つのブレードを組み合わせると、
図8に示すように第2のプロペラ101を形成する。
【0026】
本発明の別の実施形態では、
図4の表面上への非対称投射を使用して、非対称ブレード断面が生成される。そのようなブレード断面を組み込んだプロペラを
図9の102に示す。そのようなプロペラは、(断面後方の狭くなった部分を持つ)第1の方向では、下側のブレード高さの障害物が減るので、
図6および
図8の対称なプロペラよりも効率よく動作する。プロペラは、効率は低くなるが逆方向でも動作する。
【0027】
図6のプロペラ100は、ブレード全長で均一で不変の風速を持ち、それが高効率につながることが風洞実験で示されている。これに対して従来の断面を持つファンは、風速が一番大きくなるのは直径のおよそ3分の2のところであり、そこから中心および先端に向かってゼロに減少する。
【0028】
本発明の実用試作機を製作して直径が1.1mの従来の天井ファンと比較した。軸速度150rpmでは、標準的なファンは9.8Wの電力を消費して107m
3/分で送風する。一方本発明のファンは、5.7Wだけの電力消費で、軸速度100rpmの運転で114m
3/分で送風する。効率が46%よくなることを示している。様々なブレードの直径および速度で、テストおよびシミュレーションをさらに行った結果でも、同じような向上が見られた。すべての速度でピッチが最適であることも立証された。最適なピッチが速度に依存する従来のプロペラにはなかったことである。ピッチ制御機構が不要になるので、明らかに簡単になりコスト上でも有利になる。プロペラファンの速度を変えるだけで空気の流れを調整できるので、比較的簡単に実装することもできる。低い速度で同じ空気の流れを生成することができるので、プロペラをずっと静かに運転することができ、テスト結果ではブレードから30cm離れた所での測定でノイズが92dBから83dBに減少した。
【0029】
さらに、本発明により製作した非対称プロペラを
図10の103に示す。このプロペラの断面はハブまでは延びていない。このプロペラを徹底的にモデル化して、
図11の200に示す、優れた性能を持つ市販の従来のプロペラの実施例の1つとの比較を行った。
【0030】
プロペラを通過する空気の流れの速度の軌跡は、本発明のプロペラ103を通過する場合は、まっすぐで密着した空気の流れになるが、従来のプロペラ200を通過する場合は乱れた空気の流れになる。プロペラの圧力プロットは、プロペラ103では外側前面後縁上で最小の高圧領域を示すが、プロペラ200では前面後縁全体に沿う、および裏側前縁全体に沿う著しく高圧の領域を示す。従って、直径1.5mのファンを使用して891m
3/分の空気の流れを生成するのに必要な軸パワーは、従来のファン200の1,832kWと比べると、ファン103用にはわずか1,198kWとなる。
【0031】
多くの従来のプロペラとは異なるのは、本プロペラは、翼として動作する必要がなく、従って厚さを均一にすることができることである。このため、金属シートから打ち抜くことができるので、プロペラの形成が大幅に簡素化されるので都合がよい。プロペラを非常に薄くすることができるので、障害物が小さくなる。
【0032】
本発明の別の実施形態では、図示しないがプロペラの前縁部および後縁部を非対称にすることができる。先端断面が急勾配のプロペラは、さらに優れた性能を提供するという利点があることが見出されている。
【0033】
流体速度がゼロの流入条件下でも失速することなく、高いブレードピッチ角度で動作することができ、従来のタイプのプロペラと比較すると著しく低いパワー入力レベルで同等の推力を実現するプロペラを提供する本発明を、読者は高く評価するであろう。
【0034】
その範囲を超えることなく、本発明に対してさらに長所の強化および改善を施すことができるのは当然である。本発明は、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられることが示され記載されているが、本明細書で開示した詳細に限定することなく、任意のおよびすべての等価なデバイスおよび装置を包含するように、特許請求項の範囲全体と一致するようにして本発明の範囲および精神の範囲内で、逸脱させることができることは認識されている。本明細書全体でなされた従来技術の議論はどれでも、そのような従来技術が周知であり、または本分野で共通の一般的知識の一部を形成しているということを認めているとは、決して考えてはならない。
【0035】
本明細書および(任意の)特許請求項では、「comprising」という用語、および「comprises」ならびに「comprise」を含むその派生語は、各々記載した整数を含むが、さらに1つ以上の整数を含むことを除外してはいない。