【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、特に、独立特許請求項に記載の特徴を有するオプトエレクトロニクス半導体チップによって達成される。好ましいさらなる発展形態が従属請求項の主題である。
【0005】
少なくとも一実施形態によれば、本オプトエレクトロニクス半導体チップは、発光ダイオードチップ、レーザーダイオードチップ、または受光素子である。本半導体チップは特に好ましくは、発光ダイオードチップとして、電磁放射を出射するために設計されている。例えば、本半導体チップは、目的とする用途において、最大強度の波長が少なくとも350nmもしくは400nm、および/または最大で550nm、480nm、もしくは460nmである放射を出射する。
【0006】
少なくとも一実施形態によれば、本オプトエレクトロニクス半導体チップは、半導体積層体を備える。半導体積層体は、好ましくはIII−V族化合物半導体材料をベースとする。例えば、III−V族化合物半導体材料は、Al
nIn
1−n−mGa
mN等の窒化物化合物半導体材料、Al
nIn
1−n−mGa
mP等のリン化物化合物半導体材料、またはAl
nIn
1−n−mGa
mAs等のヒ化物化合物半導体材料である(各式中、0≦n≦1、0≦m≦1、m+n≦1)。この場合、上記半導体材料は、有意量混合されたホウ素をさらに含んでいても、ドーパントをさらに含んでいてもよい。しかしながら、結晶格子の本質的な構成成分(すなわち、B、Al、As、Ga、In、N、および/またはP)の一部分が微量のさらなる物質によって置換および/または補完されうるとしても、簡潔にするために、結晶格子の本質的な構成成分のみが示されている。
【0007】
少なくとも一実施形態によれば、半導体積層体は、第1の導電型の第1の半導体領域および第2の異なる導電型の第2の半導体領域を備える。ここで、導電型とは、「n導電型」または「p導電型」を示す。好ましくは、第1の半導体領域はn型に、第2の半導体領域はp型にドープされている。
【0008】
少なくとも一実施形態によれば、第1の半導体領域と第2の半導体領域との間に活性領域が存在している。活性領域は好ましくは、動作中に半導体チップによって出射される放射を発生するように設計されている。したがって、上記2つの半導体領域およびこれらの領域の間の活性領域は、半導体積層体の成長方向に沿って積層配置されている。活性領域は好ましくは、上記2つの半導体領域に直接隣接している。
【0009】
少なくとも一実施形態によれば、本オプトエレクトロニクス半導体チップは、第1の電気コンタクト層を備える。第1の電気コンタクト層は、第1の半導体領域に所々で直接的に位置している。さらに、この電気コンタクト層は、第1の半導体領域への電流の印加のために使用されるように構成されている。したがって、特に、第1の電気コンタクト層は、電気接触抵抗および電気的仕事関数に関して第1の半導体領域に適合されている。特に、電流は、第1の電気コンタクト層のみを介して第1の半導体領域に直接印加される。
【0010】
少なくとも一実施形態によれば、本半導体チップは、第2の電気コンタクト層を有する。第2の電気コンタクト層は、第2の半導体領域に所々で直接的に位置しており、第2の半導体領域に電流を印加するように構成されている。特に、電流は、第2の電気コンタクト層のみを介して第2の半導体領域に直接印加される。
【0011】
少なくとも一実施形態によれば、本半導体チップは、少なくとも2つの金属製電源ラインを有する。特に「金属製」とは、電源ラインが1種類以上の金属からなり、オーム性の電流導通特性を示すことを意味する。電源ラインをコンタクトメタライゼーションとすることができる。電源ラインは、第1の電気コンタクト層の上に直接的に、好ましくは第1の電気コンタクト層の上のみに位置していることが好ましい。好ましくは、第1のおよび/または第2の電気コンタクト層への電流注入は、電源ラインのみによって行われる。特に、電源ラインの1つがアノードコンタクトとして設計されており、電源ラインのさらなる1つがカソードコンタクトとして設計されている。電源ラインによって、外部からオプトエレクトロニクス半導体チップに電気接続することができる。
【0012】
少なくとも一実施形態によれば、本半導体チップは、少なくとも1つの電気絶縁層を備える。本半導体チップの目的の用途において、電気絶縁層を通る電流フローは抑制される。絶縁層は、第2の半導体領域に所々で直接的に位置しており、したがって、第2の半導体領域を所々で被覆している。
【0013】
少なくとも一実施形態によれば、絶縁層は、第2の半導体領域の上方に突起している。これは、絶縁層を設けるための凹部またはくぼみが第2の半導体領域に無い状態で、絶縁層が第2の半導体領域に形成されていることを意味し得る。例えば、光取出し効率を高めるために、第2の半導体領域の絶縁層が位置していない残部領域に粗面化部を設ける場合、絶縁層はそのような粗面化部の上方に突起している。
【0014】
少なくとも一実施形態によれば、絶縁層は、第2の半導体領域が電気接続される電流供給ラインの下方に配置されている。換言すれば、絶縁層はこの場合、第2の半導体領域と、上記関連する電流供給ラインとの間に位置している。この場合、絶縁層は好ましくは、当該電流供給ラインと物理的に接触していない。特に、第1の電気コンタクト層の材料および第2の電気コンタクト層の材料はいずれも、当該電流供給ラインと絶縁層との間に存在する。
【0015】
少なくとも一実施形態によれば、上記2つのコンタクト層は、それぞれ、1種類以上の透明導電性酸化物(略してTCO)から製造されている。透明導電性酸化物は、一般に金属酸化物(例えば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウム、または酸化インジウムスズ(ITO))である。金属と酸素の二元化合物(ZnO、SnO
2、またはIn
2O
3)に加えて、TCOの群には、金属と酸素の三元化合物(例えば、Zn
2SnO
4、CdSnO
3、ZnSnO
3、MgIn
2O
4、GaInO
3、Zn
2In
2O
5、またはIn
4Sn
3O
12)、または様々な透明導電性酸化物の混合物も含まれる。さらに、TCOは、必ずしも化学量論的組成に一致しておらず、p型にドープされることも、n型にドープされることもできる。
【0016】
少なくとも一実施形態によれば、第1のコンタクト層は、絶縁層の領域において第2のコンタクト層を被覆している。この場合、好ましくは、第2のコンタクト層は絶縁層の上に直接的に位置しており、第1のコンタクト層は第2のコンタクト層の上に直接的に位置している。したがって、電流の印加は、第2の半導体領域のための金属製電流供給部から第1のコンタクト層に、第1のコンタクト層から第2のコンタクト層に、第2のコンタクト層から横方向にシフトして第2の半導体領域に行われる。
【0017】
少なくとも一実施形態によれば、第1のコンタクト層は、絶縁層を包み込んでいる(mantles)。換言すれば、第2の半導体領域の上方に絶縁層によって形成された隆起部(elevation)を、第1のコンタクト層がキャップまたは天井のように被覆している。具体的には、平面視において、第1のコンタクト層の材料は絶縁層全体に亘って位置し、好ましくは第2のコンタクト層の材料も同様に絶縁層全体に亘って位置している。
【0018】
少なくとも一実施形態では、本オプトエレクトロニクス半導体チップは、第1の導電型の第1の半導体領域および第2の導電型の第2の半導体領域を備える。これらの2つの半導体領域の間には、好ましくは可視光を発生するように設計された活性領域が存在している。第1の電気コンタクト層が第1の半導体領域に所々で直接的に位置しており、第1の電気コンタクト層は、第1の半導体領域に電流を印加するために設けられている。さらに、第2の電気コンタクト層が第2の半導体領域に所々で直接的に位置しており、第2の半導体領域には、第2のコンタクト層を介して電流が供給される。さらに、本半導体チップは、2つの金属製電源ラインと、絶縁層とを有する。絶縁層は第2の半導体領域を所々で直接的に被覆しており、また、第2の半導体領域の上方に突起している。さらに、絶縁層は、第2の半導体領域のための電流供給ラインの下方に位置している。これらの2つのコンタクト層は、それぞれ、透明導電性酸化物から製造されており、第1のコンタクト層は、絶縁層の領域において第2のコンタクト層および絶縁層自体を直接的に包み込んでいる。
【0019】
特に、サファイア成長基板を備える発光ダイオードチップ(略してLEDチップ)が電気絶縁層を有し、電気絶縁層によって、金属製電源ラインから半導体積層体への直接の電流フローが防止されている。そのような絶縁層によって、金属製電源ラインの直下での光の発生が防止される。光がこの領域で発生する場合、この光のわずかな部分のみがLEDチップから取り出されることになる。また、金属構造による吸収が比較的大きい。横方向の電流拡散を実現するために、上記絶縁層は、透明導電層によって被覆されており、この場合、この透明導電層は、対応する半導体領域のためのコンタクト層に相当する。しかしながら、透明導電性酸化物から作られるコンタクト層の光透過率は、高い導電率では比較的低く、逆も同様に成り立つ。放射吸収を減少するために、薄いコンタクト層が高い光取出し効率を実現するために有利である。しかしながら、薄いコンタクト層の場合、絶縁層を被覆する際に問題が生じ、コンタクト層と金属製電源ラインとの間の電気的接触が絶縁層の領域において遮断される可能性がある。これは、半導体チップの製造における低収率に結びつく可能性がある。
【0020】
本明細書に記載の半導体チップの場合、絶縁層が第1のコンタクト層によって局所的にさらに包み込まれているので、第2の半導体領域に亘って平面的に伸長する第2のコンタクト層を、相当薄いものとすることができる。第2のコンタクト層による電源ラインから第2の半導体領域への連続的な電気的接触を実現することができなくても、絶縁層を包み込む第1のコンタクト層によって連続的な電気的接触が確保される。
【0021】
少なくとも一実施形態によれば、第2の半導体領域のための電流供給ラインから第2の半導体領域への電流の印加が、第2の半導体領域に直交する方向において絶縁層によって防止されている。換言すれば、この場合、電流は、電流供給ラインによって第2のコンタクト層に印加され、第2のコンタクト層は、第2の半導体領域の全域に横方向に電流を拡散する。したがって、第2の半導体領域の2次元的通電が可能である。横方向の導電率、すなわち、半導体積層体の成長方向に直交する方向における導電率は、第2のコンタクト層における導電率が第2の半導体領域における導電率の少なくとも10倍または100倍大きい。
【0022】
少なくとも一実施形態によれば、平面視における第1のコンタクト層は、絶縁層を少なくとも200nm、0.5μm、1μm、または5μm横方向に越えて延出している。代替的または追加的に、平面視における第1のコンタクト層の絶縁層を越える延出部は、最大で100μm、50μm、20μm、または10μmである。さらに、代替的または追加的に、同様に平面視における第1のコンタクト層が絶縁層を越えて延出している長さを、絶縁層の平均幅の少なくとも1%、5%、15%、もしくは20%、および/または最大で150%、90%、または60%とすることができる。平面視における第1のコンタクト層が絶縁層を越えて延出する、このような延出長さによって、一方では確実に第2の半導体領域に電流を注入することができ、他方では第1のコンタクト層による吸収損失を低く抑えることができる。
【0023】
少なくとも一実施形態によれば、断面における第1のコンタクト層は、絶縁層側から見てV字形であり、連続的に細くなっている。換言すれば、第1のコンタクト層の厚さは、絶縁層から遠ざかる方向に小さくなっている。
【0024】
少なくとも一実施形態によれば、平面視における絶縁層の幅は、少なくとも5μmまたは20μmである。代替的または追加的に、絶縁層の幅は、最大で0.2mm、0.1mm、50μm、または30μmである。
【0025】
少なくとも一実施形態によれば、第1のコンタクト層の厚さは、第2のコンタクト層の厚さより少なくとも2倍、3倍、または5倍大きい。代替的または追加的に、第1のコンタクト層の厚さは、第2のコンタクト層の厚さより最大で20倍、15倍、または10倍大きい。
【0026】
少なくとも一実施形態によれば、上記2つのコンタクト層の厚さは、それぞれ、絶縁層の厚さより小さい。この場合、絶縁層の厚さは、第1のコンタクト層の厚さよりも、好ましくは少なくとも1.5倍、2倍、もしくは3倍、および/または最大で5倍、3.5倍、もしくは2倍大きい。
【0027】
少なくとも一実施形態によれば、第1のコンタクト層の厚さは、少なくとも30nm、50nm、もしくは100nm、および/または最大で500nm、300nm、もしくは150nmである。また、第2のコンタクト層の厚さを少なくとも5nm、10nm、もしくは15nm、および/または最大で100nm、70nm、50nm、もしくは30nmとすることができる。言い換えると、第2のコンタクト層は比較的薄い。
【0028】
少なくとも一実施形態によれば、絶縁層の厚さは、少なくとも70nm、100nm、または150nmである。代替的または追加的に、絶縁層の厚さは、最大で1μm、500nm、または300nmである。特に、絶縁層の厚さは、絶縁層に全反射され、動作中に半導体チップにおいて発生する光のエバネセント場の侵入深さよりも、絶縁層の厚さが大きくなるように選択されている。この場合、光の侵入深さは、具体的には放射強度が1/eまで落ちる深さである。絶縁層をブラッグ鏡として設計することもできる。
【0029】
少なくとも一実施形態によれば、第1のコンタクト層の材料の平均粒径は、第2のコンタクト層の材料の平均粒径より小さい。例えば、第1のコンタクト層の材料の平均粒径は、少なくとも5nmもしくは10nm、および/または最大で50nmもしくは20nmである。さらに、第2のコンタクト層の材料の粒径を、少なくとも1nm、100nm、200nm、もしくは1μm、および/または最大で2μm、1μm、0.5μm、もしくは2nmとすることができる。
【0030】
少なくとも一実施形態によれば、第1のコンタクト層および第2のコンタクト層は、同じ基材から製造されている。基材は、例えば酸化亜鉛または酸化インジウムスズである。
【0031】
少なくとも一実施形態によれば、これらの2つのコンタクト層は、ドーピング、平均粒径、導電率、電気接触抵抗、表面粗さの1つ以上の特性において互いに異なる。例えば、第2のコンタクト層の表面粗さは、第1のコンタクト層の表面粗さより大きい。
【0032】
少なくとも一実施形態によれば、両方のコンタクト層は、酸化インジウムスズから作られている。この場合、スズ含有量は、好ましくは少なくとも3%もしくは5%、および/または最大で10%もしくは8%である。この場合、好ましくは、第1のコンタクト層のほうが第2のコンタクト層よりもスズの割合が高い(例えば、スズ含有量が少なくとも0.5パーセントポイントまたは少なくとも1パーセントポイント大きい)。この場合、スズ含有量は、特に重量パーセントに関する。
【0033】
少なくとも一実施形態によれば、絶縁層は、電気絶縁性の酸化物、窒化物、または酸窒化物から構成されている。特に、絶縁層は、二酸化ケイ素または窒化アルミニウムから製造されている。絶縁層の材料は、好ましくは、動作中に半導体チップにおいて発生した放射を透過させる。
【0034】
少なくとも一実施形態によれば、上記2つのコンタクト層は、異なる材料から製造されている。例えば、コンタクト層の一方が酸化インジウムスズ(略してITO)を含み、他方のコンタクト層が酸化亜鉛を含む。
【0035】
少なくとも一実施形態によれば、断面視における絶縁層は、第2の半導体領域から遠ざかる方向において少なくとも絶縁層の平均厚さまで狭くなっている。絶縁層にはアンダーカットが存在しないことが好適である。「アンダーカット」という用語は、上から見たときに、絶縁層の全側面を視認することができないことを意味することができる。代替的に、絶縁層が、例えば絶縁層の製造方法に起因するそのようなアンダーカットを有することも可能である。
【0036】
少なくとも一実施形態によれば、第1のコンタクト層は、平面視において、2つの半導体領域の最大で20%、10%、または5%を被覆している。代替的または追加的に、この被覆率は、少なくとも0.5%、1%、または2%である。換言すれば、この場合、第1の半導体領域のための接触領域を除いて、半導体積層体には平面視において第1のコンタクト層が実質的に存在しない。
【0037】
少なくとも一実施形態によれば、第2のコンタクト層は、平面視において、第2の半導体領域の最大で90%または95%を被覆しているか、あるいは、第2の半導体領域の全体をも被覆している。これにより、確実に電流が第2のコンタクト層によって横方向に効率的に拡散される。この場合、第2の半導体領域の縁部に第2のコンタクト層および第1のコンタクト層が存在しないことが可能である。その結果、そのような縁部付近では第2の半導体領域に通電されないようにすることができる。例えば、幅が少なくとも1μmもしくは2μmおよび/または最大で5μmもしくは3μmであるストリップ状の縁部に、第2のコンタクト層が存在しない。
【0038】
少なくとも一実施形態によれば、本半導体チップはn型接触領域を有し、n型接触領域では、第1のコンタクト層が第1の半導体領域に接触しており、電流が第1の半導体領域に印加される。n型接触領域は、平面視において第2の半導体領域によって四方を包囲されている。換言すれば、n型接触領域は、第2の半導体領域の凹部に位置している。あるいは、n型接触領域は、平面視において半導体積層体の縁部に位置することもできる。2箇所以上のn型接触領域が存在することもできる。
【0039】
少なくとも一実施形態によれば、第2の半導体領域のための電流供給ラインは、電流拡散構造を形成している。例えば、第2の半導体領域のための電流供給ラインは、半導体積層体に亘って伸長するウェブ部の形で構築されている。この場合、平面視における半導体積層体の、好ましくは最大で10%もしくは5%および/または少なくとも2%もしくは4%が、電流供給ラインによって被覆されている。
【0040】
少なくとも一実施形態によれば、第1の半導体領域、活性領域、第2の半導体領域、絶縁層、第2のコンタクト層、第1のコンタクト層、第2の半導体領域のための金属製電流供給ラインが、絶縁層の領域において第2の半導体領域に直交する方向に、特定した順序で直接的に重ねられている。
【0041】
少なくとも一実施形態によれば、本半導体チップは、第1の半導体領域のための電気接触領域において、第1の半導体領域、第1のコンタクト層、第1の半導体領域のための金属製電流供給部を有し、これらの構成要素は、特定した順序で第1の半導体領域に直交する方向に互いに直後に後続している。
【0042】
以下、本明細書に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップについて、例示的な実施形態に基づいて図面を参照しながら詳細に説明する。各図において同一の参照番号は、同一の要素を示す。しかしながら、この場合、各要素の関係は正しい縮尺では示されておらず、むしろ、個々の要素は、理解しやすいように誇張した大きさで示され得る。