(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、植物系材料の内腔に、前記植物系材料の内腔の容積に対して、5%を超える樹脂を導入することにより、前記樹脂含有植物系材料を作製する樹脂導入工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の光透過性を有する植物系材料の製造方法。
前記植物系材料の内腔に、前記植物系材料の内腔の容積に対して、80%以下の樹脂を導入することにより、前記樹脂含有植物系材料を作製する、請求項5記載の光透過性を有する植物系材料の製造方法。
前記植物系材料の内腔に、前記植物系材料の内腔の容積に対して、10%以上の樹脂を導入することにより、前記樹脂含有植物系材料を作製する、請求項5または6記載の光透過性を有する植物系材料の製造方法。
前記樹脂が、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、メラミン樹脂、およびフェノール樹脂からなる群から選択された少なくとも1つの樹脂である、請求項1から7のいずれか一項に記載の光透過性を有する植物系材料の製造方法。
前記植物系材料が、木質系材料、葦材、および竹材からなる群から選択された少なくとも1つである、請求項1から8のいずれか一項に記載の光透過性を有する植物系材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造方法において、前記樹脂含有植物系材料が、例えば、前記植物系材料の内腔の容積に対して、80%以下の樹脂を含む。また、本発明の製造方法において、前記樹脂含有植物系材料が、前記植物系材料の内腔の容積に対して、10%以上の樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法において、前記樹脂含有植物系材料の流動しない圧力が、例えば、面圧30MPa以下である。
【0014】
本発明の製造方法は、さらに、前記植物系材料の内腔に、前記植物系材料の内腔の容積に対して、5%を超える樹脂を導入することにより、前記樹脂含有植物系材料を作製する樹脂導入工程を含んでもよい。本発明の製造方法は、例えば、前記植物系材料の内腔に、前記植物系材料の内腔の容積に対して、80%以下の樹脂を導入することにより、前記樹脂含有植物系材料を作製する。本発明の製造方法は、前記植物系材料の内腔に、前記植物系材料の内腔の容積に対して、10%以上の樹脂を導入することにより、前記樹脂含有植物系材料を作製することが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法において、前記樹脂が、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、メラミン樹脂、およびフェノール樹脂からなる群から選択された少なくとも1つの樹脂である。
【0016】
本発明の製造方法において、前記植物系材料が、例えば、木質系材料、葦材、および竹材からなる群から選択された少なくとも1つである。
【0017】
本発明において、「細胞壁構造」とは、
図1に示すように、木材等の植物において見られる内腔1および細胞壁2を含む構造を意味する。また、本発明において、「細胞壁」は、細胞壁2間の細胞間層3を含む。
【0018】
本発明において、「光透過性を付与する」とは、前記植物系材料の光透過性を有意に向上させることを意味する。このため、本発明において、「光透過性を付与する」とは、光透過性がない前記植物系材料を、光透過性がある植物系材料とすることを含む。前記「光透過性を有意に向上させる」とは、例えば、処理後の植物系材料の光透過率が、未処理の植物系材料の光透過率に対して有意に上昇することを意味する。前記「光透過性がある」とは、例えば、厚さ2mmの未処理または処理後の植物系材料の750nmにおける光透過率が、20%以上であり、好ましくは、50%以上であることを意味する。また、本発明において、前記「光透過性がない」とは、例えば、厚さ2mmの未処理または処理後の植物系材料の750nmにおける光透過率が、20%未満であることを意味する。前記光透過率は、例えば、JIS K 7105により測定できる。前記光透過率をJIS K7105により測定する場合、前記光透過率は、全光線透過率ということもできる。前記光透過性の付与は、例えば、全波長における光透過率の向上であってもよいし、一部の波長の光透過率の向上であってもよい。前記光透過性の付与は、可視光の波長の光透過率の向上であることが好ましい。
【0019】
<光透過性を有する植物系材料の製造方法>
本発明の光透過性を有する植物系材料の製造方法は、前述のように、樹脂含有植物系材料を、前記樹脂含有植物系材料が流動しない圧力で圧縮することにより、光透過性を付与する光透過性付与工程を含み、前記樹脂含有植物系材料が、前記植物系材料の内腔の容積に対して、5%を超える樹脂を含む植物系材料であることを特徴とする。本発明の製造方法は、前記樹脂含有植物系材料を、前記樹脂含有植物系材料が流動しない圧力で圧縮することにより、光透過性を付与する光透過性付与工程を含み、前記樹脂含有植物系材料が、前記植物系材料の内腔の容積に対して、5%を超える樹脂を含む植物系材料であることを特徴とし、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0020】
本発明の製造方法は、前記光透過性付与工程において、前記内腔に樹脂を含む植物系材料を圧縮することにより、圧縮した箇所に光透過性を付与できる。これは、以下のメカニズムによると推定される。具体的には、前記光透過性付与工程前においては、前記植物系材料の内腔は、前記樹脂で満たされていない。このため、前記植物系材料内に入射した光が、前記植物系材料の細胞壁と内腔(空気)との境界面で屈折することにより散乱する。これにより、透過に必要な距離が長くなり、その結果、前記光は、前記植物系材料を透過できない。これに対し、前記光透過性付与工程後においては、前記細胞壁構造が圧縮されることで、前記内腔の容積が縮小し、予め導入していた樹脂が、前記内腔全体を満たす。そして、前記樹脂の屈折率は、前記空気の屈折率と比較して、前記植物系材料の屈折率と近いため、前記光透過性付与工程前と比較して、前記植物系材料内に入射した光が、前記細胞壁と前記内腔(樹脂)との境界面で屈折することを抑制できる。このため、前記光は、前記植物系材料を透過できるようになる。したがって、本発明の製造方法によれば、例えば、前記樹脂含有植物系材料の所望の位置を圧縮することにより、所望の位置に光透過性を付与することができる。なお、前記メカニズムは、推定であり、本発明を何ら制限しない。また、本発明の製造方法は、例えば、光透過性を付与する際に使用する前記樹脂の量を低減することができる。このため、本発明の製造方法によれば、例えば、光透過性を有し、且つ木質感に優れた植物系材料を、より低コストで製造できる。
【0021】
前記樹脂含有植物系材料において、前記樹脂は、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂でもよいし、熱硬化性樹脂でもよい。前記樹脂は、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等があげられる。前記ビニル樹脂は、例えば、酢酸ビニル等があげられる。前記樹脂は、例えば、未重合の前記樹脂のモノマーであってもよい。前記樹脂は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記樹脂は、例えば、導入効率を向上できることから、水素結合能を有する樹脂が好ましい。また、前記樹脂が水素結合能を有さない樹脂である場合、前記樹脂は、水素結合能を有する溶媒と併用することが好ましい。
【0022】
前記樹脂含有植物系材料において、前記植物系材料は、特に制限されず、例えば、前記細胞壁構造を有する材料があげられる。前記植物系材料は、例えば、木質系材料、葦材、竹材等があげられる。前記木質系材料は、例えば、無垢の木材、木質積層材、木質繊維材、集成材、合板等があげられる。前記木質系材料の由来は、特に制限されず、例えば、ヒノキ等の任意の木材があげられる。前記植物系材料は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前記植物系材料は、例えば、疎水性化でき、樹脂の導入が容易になり、また水素結合能を有さない樹脂の導入がさらに容易になることから、化学修飾された植物系材料であってもよい。具体的には、前記化学修飾された植物系材料における化学修飾の度合いを上昇させることにより、例えば、後述する樹脂導入工程において、前記植物系材料の内腔の容積に対する前記樹脂の体積の割合(以下、「充填率」ともいう。)を相対的に高い充填率とすることができる。前記化学修飾は、特に制限されず、例えば、アセチル化、エステル化等があげられる。
【0024】
前記樹脂含有植物系材料において、前記光透過性付与工程前の前記充填率は、5%を超えればよく、光透過性をより向上できることから、好ましくは、10%以上、20%以上である。前記光透過性付与工程前の前記充填率の上限は、特に制限されず、例えば、80%以下であり、製造コストが低減できることから、好ましくは、70%以下、50%以下、40%以下である。また、前記光透過性付与工程前の前記充填率の範囲は、5%を超え、70%以下であり、より光透過性を向上でき、且つ製造コストを低減できることから、好ましくは、10%以上、50%以下であり、より好ましくは、10%以上、40%以下である。前記光透過性付与工程前の前記充填率は、1種類の樹脂の充填率でもよいし、2種類上の樹脂の充填率の合計の充填率でもよい(以下、同様)。本発明の製造方法は、このような樹脂含有植物系材料を用いるため、前記光透過性付与工程において、前記樹脂含有植物系材料を圧縮する際に、例えば、前記樹脂を含まない植物系材料を圧縮した場合と比較して、より低い温度および圧力で、圧縮することが可能である。このため、本発明の製造方法は、例えば、前記特許文献1の方法に対して、製造コストが低い。また、本発明の製造方法は、前記植物系材料が樹脂を含むため、例えば、前記光透過性付与工程後において、前記樹脂が、前記植物系材料が元の構造に復元しようとする復元力を吸収する。このため、本発明の製造方法は、例えば、前記特許文献1の方法に対して、製造後の変形を抑制できる。
【0025】
前記植物系材料の内腔の容積の測定方法は、特に制限されない。前記容積は、例えば、顕微鏡による画像解析により測定できる。
【0026】
前記内腔に導入された前記樹脂の体積の測定方法は、特に制限されない。前記樹脂の体積は、例えば、顕微鏡による画像解析、水銀圧入ポロシメーター、ガス吸着法等の空隙測定法により測定できる。
【0027】
前記樹脂含有植物系材料は、例えば、前記植物系材料に、前記樹脂を導入することで得られる。このため、本発明の製造方法は、例えば、さらに、前記植物系材料の内腔に、前記植物系材料の内腔の容積に対して、5%を超える樹脂を導入することにより、前記樹脂含有植物系材料を作製する樹脂導入工程を含むことが好ましい。前記樹脂導入工程後の前記充填率は、例えば、前述の前記光透過性付与工程前の前記充填率でもよい。
【0028】
前記樹脂導入工程において、前記植物系材料における前記樹脂の導入位置は、前記植物系材料の内腔を含めばよく、例えば、前記植物系材料の内腔に加え、細胞壁に導入してもよい。
【0029】
前者の場合、前記樹脂導入工程において、前記植物系材料の内腔に前記樹脂を導入する方法は、特に制限されず、前記樹脂に浸漬する方法、前記樹脂を含む水性媒体を使用する方法、前記樹脂を含む両極性の溶媒を使用する方法等の公知の樹脂の導入方法が使用できる。前記樹脂に浸漬する方法の場合、前記樹脂導入工程における前記充填率は、例えば、前記樹脂に浸漬する時間、温度、圧力、溶液濃度、溶媒、乾燥時の温度、風速、時間、圧力、周囲気体等の導入条件により調整できる。前記樹脂導入工程において、前記充填率が10〜30%となるように前記樹脂を導入する場合、前記導入条件は、特に制限されず、浸漬時間が、例えば、1〜168時間であり、温度が、例えば、20〜60℃であり、圧力が、例えば、3.2kPa〜1MPaである。また、前記樹脂導入工程において、導入する前記樹脂は、前述の樹脂のモノマーと前記モノマーの重合開始剤との組合せが好ましい。この場合、本発明の製造方法は、さらに、前記モノマーを重合させる重合工程を含むことが好ましい。前記モノマーと前記重合開始剤との組合せは、特に制限されず、例えば、公知の組合せが使用できる。前記樹脂がアクリル樹脂の場合、前記モノマーは、例えば、アクリル樹脂モノマーであり、前記重合開始剤は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルである。前記重合工程の条件は、特に制限されず、重合時間が、例えば、2〜48時間であり、温度が、例えば、60〜100℃であり、圧力が、例えば、大気圧〜0.4MPa、標準気圧〜0.4MPaである。
【0030】
後者の場合、前記樹脂導入工程において、前記植物系材料の内腔および細胞壁に前記樹脂を導入する方法は、特に制限されず、例えば、下記参考文献1の方法等を参照できる。
参考文献1:特開2013−244599号公報
【0031】
前記光透過性付与工程において、前記樹脂含有植物系材料の圧縮方法は、特に制限されず、例えば、金型を用いたプレス加工、ロール加工による転写等の公知の圧縮方法が使用できる。前記樹脂含有植物系材料を圧縮する圧力は、前記樹脂含有植物系材料が流動しない圧力であり、例えば、前記樹脂含有植物系材料の種類、前記光透過性付与工程前の充填率、前記圧縮時の温度等に応じて、適宜設定できる。前記「流動しない」は、例えば、植物系材料の細胞配置に著しい変化が生じていることを意味する。前記圧縮する圧力は、例えば、面圧30MPa以下であり、好ましくは、面圧20MPa以下、面圧18MPa以下、面圧10MPa以下である。前記圧力の下限は、例えば、面圧0.05MPa以上であり、好ましくは、面圧4MPa以上、面圧5MPa以上、面圧10MPa以上である。また、前記圧力の範囲は、例えば、面圧0.05〜30MPa、面圧4〜10MPaである。前記植物系材料が無垢のヒノキであり、前記光透過性付与工程前の前記ヒノキの樹脂の充填率が20%以上である場合、前記圧力は、例えば、面圧30MPa以下である。
【0032】
前記光透過性付与工程後の充填率は、特に制限されず、例えば、70%以上であり、光透過性を向上できることから、好ましくは、80%以上であり、さらに好ましくは、100%である。
【0033】
このようにして、前記光透過性を有する植物系材料を製造できる。
【0034】
<光透過性を有する植物系材料>
本発明の光透過性を有する植物系材料(以下、「本発明の植物系材料」ともいう。)は、前述のように、前記本発明の光透過性を有する植物系材料の製造方法で得られることを特徴とする。本発明の光透過性を有する植物系材料は、前記本発明の製造方法により得られることが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の光透過性を有する植物系材料は、例えば、前記本発明の製造方法の説明を援用できる。
【0035】
本発明の光透過性を有する植物系材料は、前述の光透過性付与工程において、圧縮された部位(以下、「透光部」ともいう。)に光透過性が付与される。このため、本発明の光透過性を有する植物系材料は、例えば、所望の位置に光透過性を付与された植物系材料である。
【0036】
本発明の植物系材料は、光透過性を有する透光部を含む。前記本発明の植物系材料において、その一部が前記透光部であってもよいし、その全体が前記透光部であってもよい。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。
【0038】
[実施例1]
本発明の製造方法により、光透過性を有する植物系材料が得られることを確認した。
【0039】
(1)光透過性を有する植物系材料の作製
前記植物系材料として、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の辺材を用いた。前記辺材は、直径が、40mmであり、厚さが、3.3mmであり、木目が、板目のヒノキを使用した。前記辺材を、無水酢酸(和光特級、和光純薬工業株式会社製)に浸漬し、減圧条件下で静置することで、前記辺材に酢酸を導入した。前記減圧条件において、圧力は、3.2kPaとした。導入後、大気圧に解放し、1週間静置した。さらに、120℃で、10、60または1440分間処理することで、前記辺材をアセチル化したサンプルを作製した(それぞれ、サンプル1−1〜1−3)。前記アセチル化後、前記辺材を純水へ含浸し、80℃で1440分間乾燥することで、前記辺材内に残留する酢酸を除去した。前記除去は、3回行った。また、前記アセチル化処理を行わない以外は同様にして、サンプルを作製した(サンプル1−4)。
【0040】
つぎに、前記サンプル1−1〜1−4を24時間風乾し、さらに、105℃で24時間全乾処理した。そして、全乾状態の前記サンプル1−1〜1−4の質量を測定した。前記サンプル1−1〜1−4において、前記質量は、それぞれ、1.51g、1.65g、1.70g、1.81gであった。
【0041】
前記サンプル1−1〜1−4を、1%(重量%) 2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを含むメタクリル酸メチル(和光特級、和光純薬工業株式会社製)に浸漬し、減圧条件下で静置後、大気圧に解圧し、1週間静置した。さらに、加圧条件下で静置することで、メタクリル酸メチルを導入した。前記減圧条件において、圧力は、3.2kPaとし、減圧時間は、2時間とした。また、前記加圧条件において、圧力は、0.2MPaとし、加圧時間は、1時間とし、温度は、約20℃とした。
【0042】
つぎに、100℃で24時間静置し、前記サンプル1−1〜1−4に導入したメタクリル酸を重合させた。前記重合後、前記サンプル1−1〜1−4の寸法および質量を測定した。前記サンプル1−1〜1−4において、前記寸法は、直径が、それぞれ、38.4mm、38.9mm、39.1mm、39.4mmであった。また、前記サンプル1−1〜1−4の厚さは、3mmであった。
【0043】
また、顕微鏡による画像解析に基づき、前記サンプル1−1〜1−4における充填率を算出した。前記サンプル1−1〜1−4において、前記光透過性付与工程前の前記充填率は、それぞれ、38%、40%、42%、63%であった。
【0044】
そして、前記サンプル1−1〜1−4について、金型とプレス機(電気熱盤、株式会社神藤金属工業所社製)を使用し、80℃の条件下で、3トンの圧力で圧縮し、厚さ2mmの実施例1−1〜1−4を得た。なお、前記圧縮において、前記サンプル1−1〜1−4は流動していなかった。また、顕微鏡による画像解析に基づき実施例1−1〜1−4における充填率を算出した。前記実施例1−1〜1〜4において、前記光透過性付与工程後の充填率は、約90%であった。比較例1−1は、前記光透過性付与工程前の前記充填率を5%とした以外は同様にして、また、比較例1−2は、前記メタクリル酸を導入しなかった以外は同様にして、作製した。そして、実施例1−1〜1−4および比較例1−1〜1−2について、圧縮部分に532nm、1Wのレーザー光を照射し、光の透過を目視で確認した。その結果、実施例1−1〜1−4では、圧縮部分において、光の透過を目視で確認できたのに対し、比較例1−1〜1−2では、圧縮部分において、光の透過を目視で確認できなかった。これらの結果から、前記光透過性付与工程前の前記充填率が5%を超える樹脂含有植物系材料を前記樹脂含有植物系材料が流動しない圧力で圧縮することにより光透過性が付与できることがわかった。
【0045】
つぎに、実施例1−1について、圧縮部分と非圧縮部分とにレーザー光を照射した時の写真を
図2に示す。
図2は、圧縮部分と非圧縮部分とにレーザー光を照射した時の写真である。
図2において、(A)は、非圧縮部分に前記レーザー光を照射した結果を示し、(B)は、圧縮部分に前記レーザー光を照射した結果を示し、図中の矢印Xで示す領域は、レーザー光を照射した領域を示す。また、
図2において、凹部が圧縮部分を示す。(A)に示すように、非圧縮部分では、光の透過を確認できなかった。これに対し、(B)に示すように、圧縮部分では、光の透過を確認できた。これらの結果から、本発明の製造方法によれば、圧縮部分に光透過性が付与されることがわかった。したがって、本発明の製造方法によれば、所望の位置を圧縮することにより、所望の位置に光透過性を付与できることがわかった。
【0046】
(2)透過率の測定
前記実施例1−1の圧縮部分について、JIS K 7105により、透過率を測定した。比較例1−3は、同じ寸法のヒノキの辺材を前記実施例1−1と同条件で圧縮することで、前記実施例1−1と同じ厚さ(2mm)にそろえ、透過率を測定した。
【0047】
この結果を
図3に示す。
図3は、光透過率を示すグラフである。
図3において、横軸は、波長を示し、縦軸は、光透過率を示す。
図3に示すように、実施例1−1は、比較例1−3と比較して、400〜780nmの幅広い波長において、光透過率が向上していた。具体的に、実施例1−1は、比較例1−1と比較して、750nmにおける光透過率が、61%上昇していた。これらの結果から、本発明の製造方法によれば、圧縮部分の光透過性が上昇することがわかった。
【0048】
[実施例2]
本発明の製造方法で得られる植物系材料の内部構造を確認した。
【0049】
直径が、39mmであり、厚さが、3mmであるヒノキの辺材を使用し、アセチル化処理を4時間行った以外は、前記実施例1と同様にして、樹脂を導入したサンプルを作製した(サンプル2)。樹脂導入後の前記サンプル2の寸法は、直径が9mm、繊維方向の長さが46mm、接線方向の長さが48mmであった。また、前記サンプルは、処理前の辺材と比較して、重量が114.6%、繊維に直行する方向に寸法が、3.4%増加していた。また、前記サンプル2の前記光透過性付与工程前の充填率は、30%であった。
【0050】
つぎに、前記金型と前記プレス機とを用い、100℃の条件下で、3トンの圧力で圧縮し、実施例2を得た。
【0051】
前記実施例2について、小型帯鋸により切断し、断面を作製した。そして、前記断面について、走査型電子顕微鏡(JSM-5610LV、日本電子株式会社製)を使用し、前記プレス機で圧縮した部分について、観察した。比較例2は、前記樹脂が未導入である以外は同様にして、観察した。
【0052】
この結果を、
図4に示す。
図4において、(A)は、実施例2のSEM画像を示し、(B)は、比較例2のSEM画像を示す。(A)中の矢印で示すように、実施例2では、内腔が樹脂で満たされていた。これに対して、(B)に示すように、比較例2では、内腔は空隙となっていた。これらのことから、前記植物系材料の内腔が、前記樹脂で満たされることにより、前記植物系材料に光透過性が付与されることが示唆された。なお、この推定は、本発明を何ら制限しない。