(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、少なくとも木材,竹炭若しくは籾殻から製造して粉状にした活性炭と、木綿から製造した繊維状の活性炭とを板状(電極状)に成形することによって作成した分極性電極を用いることによって、製造コストを抑えつつ、大容量で高品質な電気二重層キャパシタを量産できることを見出し、これを発明した。
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1(A)及び(B)は、電気二重層キャパシタの構成を示す概念図である。電気二重層キャパシタは、平行又は略平行状態で対向する一対の板状の集電極1,1と、該一対の集電極1,1間に配置されたシート状のセパレータ2と、セパレータ2と一対の集電極1との間にそれぞれ介挿された一対のシート状の分極性電極3,3と、ボックス状に形成された一端面が開放された外装ケース7と、電解液6と、外装ケース7の開放端側を密閉状態で閉塞して電解液等の漏れを防止する閉塞蓋8とを備えている。ちなみに、集電極1とセパレータ2と分極性電極3は隣接するもの同士が互いに密着状態で接しており、電極部を形成している。
【0014】
この電気二重層キャパシタは、厚板状に形成されて複数の電気二重層キャパシタを厚み方向に重ねることによって直列接続し、両端側の電気二重層キャパシタを介して、電気の充放電が行われる。
【0015】
前記集電極1は、上下方向が長手方向となる方形板状に成形され、少なくとも分極性電極(電気二重層キャパシタ用分極性電極)と接する側の面を、導体によって構成する必要があるが、本例では全体が導体で構成されている。導体として用いる金属は、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、銀、金又は白金であり、これらの組合せであってもよいが、本例では、この中でもコスト面を考慮して鉄を集電極用の導体として用いている。
【0016】
前記電解液6としては、水系の電解液であって濃度が10〜40重量%の水酸化カリウム水溶液か、或いは水酸化ナトリウム水溶液か、これらの混合液を用いる。ちなみに、強アルカリとなる電解液は、塩酸等によって容易に中和処理できるため、使用後も安全に廃棄できる。
【0017】
前記セパレータ2は、一方の分極性電極3及び集電極1と、他方分極電極3及び集電極1との接触(特に集電極間の接触)を防止する耐アルカリ性の絶縁シートであり、集電極1間のイオンの流通を妨げないように構成されている。具体的には、液体で含浸させた際に収縮し難い耐アルカリ性の紙(ろ紙)や、耐水処理を施したセルロース繊維やポリビニルアルコール繊維からなるセパレータを用いる。
【0018】
前記外装ケース7は、フレキシブルに変形可能な耐アルカリ性(具体的には、ポリエチレン製)の収容袋である。この収容袋は、扁平な筒状に成形され、収容袋には、セパレータの全部と、一対の集電極1の全部と、電解液を含浸させた一対の分極性電極3の全部と、一対の接続端子1aの一部とが、厚み方向を収容袋と一致させた状態で、差込収容され、開放された収容袋の上端部又は下端部が、対向面同士で熱圧着等されて密閉される。
【0019】
前記分極性電極3は、後述する活性炭製造工程により、少なくとも木材、竹炭若しくは籾殻の何れか一つの活性炭と、木綿とを混合して製造される板状の活性炭により構成される。このとき、各活性炭は、木材・竹材・籾殻を炭化処理して得られた炭(第1炭化物)を、薬品によるアルカリ賦活によって賦活処理して得られた活性炭(第1活性炭)を用いる。木材、竹材若しくは籾殻から作成された活性炭は、粉砕されて、繊維状の木綿活性炭(第2活性炭)と混練等された後に方形板状(電極状)となるように押圧成形することによって、分極性電極が作成される。分極性電極の詳しい製造方法については後述する。
【0020】
上述のように構成される電気二重層キャパシタは、特に、電解液として水系の電解液を用いた場合には、電気分解されることを回避するため、電気二重層キャパシタにかかる電圧が1.23V以下となるように設定されている。より高い電圧が必要な場合には、
図1のように、複数の電気二重層キャパシタを直列接続してキャパシタユニットにすることで高電圧の蓄電池として用いることができる。
【0021】
次に、
図2及び
図3に基づき、籾殻と木綿を用いた分極性電極の製造方法について説明する。
図2は、分極性電極の製造工程のフロー図であり、
図3は、分極性電極を製造する際の成形工程を示した図である。
図2に示すように、電気二重層キャパシタ用分極性電極の製造方法は、炭化処理工程、賦活処理工程、成形工程とを有している。
【0022】
前記炭化処理工程は、例えば、対象となる木材、竹材若しくは籾殻を設置した乾留炉において、400〜1200℃まで温度を上げ、その状態で5分〜20時間保持した後に、常温まで降温させることにより、木材、竹材若しくは籾殻を材料とした上記第1炭化物を得る。また、木綿についても上記と同様にして炭化処理を行い、木綿を材料とした第2炭化物を作成する。
【0023】
前記賦活処理工程は、窒素ガス、アルゴンガス又はこれらの混合物等の不活性ガスと、電解液にしようするものと同一種類の水溶液(具体的には、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液又はこれらの混合物)とを用意し、まず、該水溶液を上記第1炭化物に十分吸着させ、その後、不活性ガス雰囲気下において、加熱処理を行うことによってアルカリ賦活処理を行い、上記第1活性炭を得る。また、上記第2炭化物である木綿炭化物を上記と同様に賦活処理を行い、木綿活性炭である第2活性炭を作成する。
【0024】
上記賦活処理の際に吸着させる水溶液の量は、水溶液中の水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又はこれらの混合物の重さが、炭化処理された炭化物の乾燥状態時の重量とほぼ同量の重さとなる分量を用いることが好ましい。
【0025】
なお、このように、電解液に用いるものと同一のものを用いてアルカリ賦活処理を行うことにより、賦活処理によって得られた活性炭を、そのまま電解液に浸すことが可能になるため、酸洗浄による中和処理や、イオン交換水による繰返しの洗浄処理や、乾燥処理が不要になる。
【0026】
ちなみに、木材が材料の場合には、その大きさは、薪の形状をしていたり、数cmサイズのチップ状であったりするが、炭化処理工程後に粉砕処理された後に、上記賦活処理が実行される。上記で粉砕処理された木材からなる活性炭は、数ミクロン〜数mmのものが混ざった状態となり、これらを混練して以下の成形工程で成形する。また、材料が籾殻の場合には、あまり粉砕されていない数mmサイズのものが用いられる。
【0027】
さらに、上記木綿活性炭は、数mm〜数cmのサイズの繊維が使用され、上述の木材や籾殻から作成された活性炭である第1活性炭と混練される。
【0028】
前記成形工程は、
図3に示されるように、方形状の凹部が形成された金型に、該凹部に詰込まれる活性炭を包む十字型のセパレータを配置し、前記凹部にセパレータの上から粉状の籾殻の活性炭(第1活性炭)と繊維状の木綿活性炭(第2活性炭)を混ぜて水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、或いはこれらの混合物(図示する例では濃度が34重量%の水酸化ナトリウム水溶液)に浸したものを載せ、該状態で凹部に対応する凸部が形成された金型で上記活性炭を加圧することによって、分極性電極を方形板状に成形する(
図3の1〜4参照)。
【0029】
このとき、金型による加圧は、油圧ジャッキを用いて数百kg〜2トン以内の荷重を与えている。本実施例では、10mm×10mmのサイズの金型を用いている。これによって成形される分極性電極1つあたりの厚さを15mm(電気二重層キャパシタ中の活性炭の厚さで30mm)以上にすると、充電時間が急激に長くなったり、内部抵抗が増加したりする傾向があるため、これよりも薄くなるように成形することが好ましい。
【0030】
上記のように、木材、竹材又は籾殻の少なくとも一つから作成された第1活性炭に、ばらばらの繊維状の第2活性炭を一定の割合で混練することにより、ブロック状の分極性電極を成形し易くなる。
【0031】
次に、方形板状に成形された活性炭を金型から取出し、活性炭の表面に接続端子が形成された方形板状の集電極を重ねた後、集電極及び活性炭を、十字状のセパレータで包み、セパレータの端部をワックス等で固着させることによって前記電極部を形成している(
図3の5〜7参照)。このとき、重ねられた活性炭と集電極とセパレータとがワックス等で固着することでそれぞれが固定されている。
【0032】
上記手順(
図3の1〜7参照)によって製造される電極部を2つ用意し、集電極・分極性電極・セパレータ・分極性電極・集電極の順となるように重ね合わせ(
図3の8参照)、集電極のみを露出させた状態で前記収容袋に収容してガスバリアし、該状態で加圧密封して電気二重層キャパシタを製造する。
【0033】
該構成の分極性電極によれば、材料に木綿と比較しても更に安価な木材、竹材、籾殻を用いているため、製造コストを低く抑えつつ、十分な静電容量を得ることのできる電気二重層キャパシタ用分極性電極を製造できる。
【0034】
次に、
図4乃至10に基づき、上述の第1活性炭と第2活性炭を混練して成形した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量の大きさを調べる実験をした。
図4より、電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を計測する回路について説明する。
【0035】
図4は、測定対象の電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を測定する回路図を示したものである。図より、該計測回路は、電流制限の設定が可能な定電圧電源と、電流測定のための抵抗であって、0.1Ωの低抵抗オーム(R
C,R
D)と、放電のための抵抗であって10Ωの放電抵抗(R
E)と、スイッチ1(SW1)と、スイッチ2(SW2)とを含む配線とで構成されており、下記実験対象の電気二重層キャパシタを、該測定回路に設置する。
【0036】
まず、籾殻から作成した活性炭(第1活性炭)と、木綿活性炭(第2活性炭)とを用いて上述の製造方法により製造された分極性電極を用いた電気二重層キャパシタと、従来のシート状の木綿活性炭を分極性電極として用いた電気二重層キャパシタの静電容量の大きさを比較した。なお、従来の電気二重層キャパシタの静電容量は、厚さ0.4mmの木綿活性炭1cm
2で1[F]程度の静電容量が得られた。
【0037】
(試験1−1)
上述の分極性電極の製造方法に基づいて、木綿タオルから作成した木綿活性炭(第2活性炭)と、籾殻から作成した活性炭(第1活性炭)とを1:1の割合で混合して50mm×50mmで且つ厚さ3mm(体積が7.5cm
3程度)の方形板状に圧密成形した分極性電極を作成し、該分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗とを、
図4に示した回路を用いて通常の方法で測定した。
【0038】
上記電気二重層キャパシタは、静電容量が237[F]となり、内部抵抗が0.182[Ω]となった。ここで分極性電極としてシート状の木綿活性炭を積層したものを、同じ体積だけ用いた場合の静電容量は、7.5/0.04=187[F]程度と推定される。このため、上記の電気二重層キャパシタ用電極を用いたものによれば、シート上の木綿活性炭を積層したものと比較して26%程、静電容量が大きくなっていることが確認できた。
【0039】
(試験1−2)
上記の試験1−1と同様の構成で、厚さ6mm(体積が15cm
3程度)の方形板状の分極性電極を作成し、該分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗とを測定した。
【0040】
上記電気二重層キャパシタは、静電容量が373[F]となり、内部抵抗が0.247[Ω]となった。ここで分極性電極としてシート状の木綿活性炭を積層したものを、同じ体積だけ用いた場合の静電容量は、15/0.04=375[F]程度と推定される。このため、上記の電気二重層キャパシタ用電極を用いたものによれば、シート上の木綿活性炭を積層したものを分極性電極として用いたものと同程度の静電容量を得ることができた。
【0041】
次に、上述の分極性電極を、第1活性炭と第2活性炭とを混練成形したもの(本発明)と、木綿(第2活性炭)のみで成形したもの(比較対象1)と、第2活性炭のみで成形したもの(比較対象2)とで比較した。
【0042】
(比較対象1)
まず、比較対象として、木綿タオルをアルカリ賦活して得られた木綿活性炭(第2活性炭)のみを50mm×50mmの方形板状に圧密成形して分極性電極を作成した。なお、電気二重層キャパシタ組立後の全体の厚みは10mmで、このときの一対の分極性電極の厚さの和である活性炭厚は8.5mmとなった。製造された電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を5サイクル測定し、それを2回繰返した実験結果を
図5に示す。
【0043】
図5は、木綿タオルのみで作成した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を示した表図である。
図5より、測定1回目の平均値は、静電容量が300.5[F]となり、抵抗値が0.161[Ω]となり、測定2回目の平均値は、静電容量が290.8[F]となり、抵抗値が0.182[Ω]となった。
【0044】
(比較対象2)
次に、比較対象として、籾殻を炭化処理したものをアルカリ賦活して得られた活性炭(第1活性炭)のみを50mm×50mmの方形板状に圧密成形して分極性電極を作成した。なお、電気二重層キャパシタ組立後の全体の厚みは10mmで、このときの一対の分極性電極の厚さの和である活性炭厚は8.5mmとなった。製造された電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を5サイクル測定し、それを2回繰返した実験結果を
図6に示す。
【0045】
図6は、籾殻のみで作成した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を示した表図である。
図6より、測定1回目の平均値は、静電容量が263.9[F]となり、抵抗値が0.282[Ω]となり、測定2回目の平均値は、静電容量が261.7[F]となり、抵抗値が0.239[Ω]となった。
【0046】
(試験2)
上述の分極性電極の製造方法に基づいて、木綿タオルから作成した木綿活性炭(第2活性炭)と、木材から作成した活性炭(第1活性炭)とを1:1の割合で混合して50mm×50mmの方形板状に圧密成形して分極性電極を作成した。なお、電気二重層キャパシタ組立後の全体の厚みは12mmで、このときの一対の分極性電極の厚さの和である活性炭厚は10.5mmとなった。製造された電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を5サイクル測定し、それを2回繰返した実験結果を
図7に示す。
【0047】
図7は、木綿タオルと木材から作成した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を示した表図である。
図7に示す結果によれば、上記比較対象1,2に活性炭厚(8.5mm)をあわせると、静電容量がおよそ275.8[F]となるため、木綿タオルのみで作成した分極性電極を用いたものと比較すると、静電容量が若干小さくなる一方で、籾殻のみから作成した分極性電極を用いたものと比較すると、静電容量が大きくなることが確認できた。
【0048】
(試験3)
上述の分極性電極の製造方法に基づいて、木綿タオルから作成した木綿活性炭(第2活性炭)と、竹材から作成した活性炭(第1活性炭)とを1:1の割合で混合して50mm×50mmの方形板状に圧密成形して分極性電極を作成した。なお、電気二重層キャパシタ組立後の全体の厚みは10mmで、このときの一対の分極性電極の厚さの和である活性炭厚は8.5mmとなった。製造された電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を5サイクル測定し、それを2回繰返した実験結果を
図8に示す。
【0049】
図8は、木綿タオルと竹材から作成した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を示した表図である。
図8に示す結果によれば、上記比較対象1の木綿タオルのみで作成した分極性電極を用いたものと比較して、若干少ないか略同程度の静電容量を得ることができることが確認できた。内部抵抗は木綿タオルのみのものよりも若干高くなった。また、籾殻のみのものと比較すると、静電容量は大きくなるとともに、内部抵抗も小さくなった。
【0050】
(試験4−1)
上述の分極性電極の製造方法に基づいて、木綿タオルから作成した木綿活性炭(第2活性炭)と、木材から作成した活性炭(第1活性炭)と、籾殻から作成した活性炭(第1活性炭)とを、木綿45%:木材10%:籾殻45%の割合で混合して50mm×50mmの方形板状に圧密成形して分極性電極を作成した。なお、電気二重層キャパシタ組立後の全体の厚みは12mmで、このときの一対の分極性電極の厚さの和である活性炭厚は8.5mmとなった。製造された電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を5サイクル測定し、それを2回繰返した実験結果を
図9に示す。
【0051】
図9は、木綿タオルと木材と籾殻から作成した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を示した表図である。
図9に示す結果によれば、上記比較対象1の木綿タオルのみで作成した分極性電極を用いたものと比較して、若干少ないか略同程度の静電容量を得ることができることが確認できた。内部抵抗は木綿タオルのみのものよりも若干高くなった。また、籾殻のみのものと比較すると、静電容量は大きくなるとともに、内部抵抗も小さくなった。
(試験4−2)
また、同様にして、木綿活性炭と、木材から作成した活性炭と、籾殻から作成した活性炭とを、木綿25%:木材50%:籾殻25%の割合で混合して50mm×50mmの方形板状に圧密成形して分極性電極を作成した。なお、電気二重層キャパシタ組立後の全体の厚みは12mmで、このときの一対の分極性電極の厚さの和である活性炭厚は12.5mmとなった。製造された電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を5サイクル測定し、それを2回繰返した実験結果を
図10に示す。
【0052】
図10は、木綿タオルと木材と籾殻から作成した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗を示した表図である。
図10に示す結果によれば、上記比較対象1,2に活性炭厚(8.5mm)をあわせると、静電容量がおよそ390.0[F]となるため、木綿タオル又は籾殻のみで作成した分極性電極を用いたものと比較して、静電容量が大きくなることが確認できた。
【0053】
次に、
図11に基づき、上記実験結果について考察する。
図11は、比較対象1,2と、試験1乃至4の結果をまとめた表図である。
図11に記載された、電解液と活性炭1g当り容量の静電容量に示されるように、本願発明に基づいて木綿タオルから作成した木綿活性炭(第2活性炭)と、木材、竹材又は籾殻の少なくとも何れか一つを炭化処理した後に賦活処理して得られた活性炭(第1活性炭)とを混練した分極性電極は、木綿活性炭のみで分極性電極を作成した電気二重層キャパシタと比較して略同程度の静電容量が得られていることが確認できる。
【0054】
また、特に、木綿タオルと籾殻と木材とを、25%:50%:25%の割合で混ぜ合わせたものでは、木綿活性炭のみで分極性電極を作成したものよりも静電容量が向上している。さらに、木材のみで作成したものについても良好な静電容量が得られているが、木材のみ製造した分極性電極については、後述する。
【0055】
なお、分極性電極の材料として、木綿よりも低コストな木材、竹材又は籾殻の少なくとも何れかを混ぜ合わせることによって、木綿のみから製造する場合と比較してコストを低く抑えることができるとともに、粉砕した前記第1活性炭に繊維状の木綿活性炭を混ぜることによって、圧密による成形作業時に分極性電極を成形し易くなるという効果がある。
【0056】
ちなみに、上述の分極性電極内に占める木綿タオルの割合は、上記実験(25%)より小さくても良く、全体の数%(5%程度)の割合であっても同様に十分な静電容量を得ることができるとともに、分極性電極の成形し易さも確保することができる。
(試験5)
【0057】
次に、
図12に基づき、本願の木綿タオルと木材と籾殻を混練成形した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタと、シート状の木綿活性炭を積層させた分極性電極を用いた電気二重層キャパシタとで、自己放電時の特性の比較を行った。
図12は、電気二重層キャパシタの静電容量及び内部抵抗と、放電特性を示した表図である。
【0058】
図12より、木綿タオルと木材と籾殻とを混練成形した分極性電極を用いた電気二重層キャパシタは、従来のシート状の木綿活性炭を10枚積層させた分極性電極を用いて、通常の方法で組み立てた電気二重層キャパシタ(
図1等参照)よりも、静電容量が1割程度高く、抵抗値は若干高いものを用いている。また、充電完了時の本願発明の電気二重層キャパシタの電流は0.016Aであり、比較対象の電気二重層キャパシタの電流は0.010Aである。
【0059】
図示されたグラフより、本発明の分極性電極を用いた電気二重層キャパシタによれば、シート状の木綿活性炭を積層させた分極性電極を用いた電気二重層キャパシタと比較して、自己放電が非常に小さくなることがわかった。
【0060】
上記本発明の電気二重層キャパシタは、比較対象の電気二重層キャパシタと比較して、活性炭の違いの他、一方の電極部がセパレータで包まれていることから、一対の集電極間に2枚のセパレータが配置されるとともに、一方の集電極が活性炭を重ねた状態でセパレータに包まれることで、外気と接触しない密封状態となっている点で異なる。
【0061】
(試験6)
次に、
図13及び
図14に基づき、木材を利用した電気二重層キャパシタの特性について実験した。
図13は、木材を利用した電気二重層キャパシタのモデル図であり、
図14は、木材を用いた電気二重層キャパシタの特性を比較した表図である。ここでは、上述の第1活性炭に用いるのに適した木材を調べた。比較する木材としては、樫、松、杉からなる活性炭を分極性電極として用いて、これを利用した電気二重層キャパシタの特性を調べた。
【0062】
木材を利用した電気二重層キャパシタの製造方法について説明する。樫、松又は杉を炭化処理した木炭を用意し、輪切りにして円柱状のプレートにし、輪切りされた木炭の断面を紙やすり等を用いて研磨する。作成されたプレート状の木炭を水酸化カリウム水溶液に浸漬した状態から真空ポンプで脱気することによって、木炭中に水酸化カリウム水溶液を浸透させる(炭化処理工程)。
【0063】
該状態の木炭を賦活炉(ガス置換炉)に入れて、窒素を供給しながら、30分〜2時間程度、700〜1000℃の温度で加熱処理を行うことによってアルカリ賦活処理を行う(賦活処理工程)。その後、洗浄、乾燥処理をすることによって、木材の第1活性炭を得る。上記活性炭の断面積はおよそ15.7cm
2で厚さは1cmとなり、体積はおよそ16cm
3となった。
【0064】
上記で作成された第1活性炭を再び水酸化カリウム水溶液(アルカリ水溶液)に浸漬して、真空脱気処理を行い、集電極、活性炭、セパレータ、活性炭、集電極の順番に重ねた状態で容器に入れ、荷重を加えることで、電気二重層キャパシタを作成する。樫、松、杉の活性炭を用いてそれぞれ電気二重層キャパシタを作成し、それぞれについて内部抵抗と静電容量を比較した。ちなみに、杉の場合では、賦活処理工程後に形を保てずバラバラになったため、荷重を掛けて活性炭を砕いた状態で分極性電極として使用し、同様にして測定した。なお、比較対象となる従来の電気二重層キャパシタは、木綿活性炭16cm
3を用いると、静電容量はおよそ400[F]程度となる。
【0065】
図14に示した結果より、木炭の種類により、大きく静電容量に違いがあるが、特に、松を用いた場合には、木綿を用いた場合の約8割程度の静電容量が得られた。また、上記賦活処理工程後にばらばらになり形を保てなかった杉についてもある程度の静電容量が得られており、
図11のように、粉砕して電極形状に成形し直すことで十分な静電容量を得ることができため、高性能を電気二重層キャパシタにおける分極性電極として用いることができる。
【0066】
なお、木材を炭化処理した後にアルカリ賦活して得られる活性炭を、非水系電解液を用いる電気二重層キャパシタの分極性電極に用いるには、賦活時のアルカリ溶質やアルカリ賦活により析出した炭素以外の残留物(非水系電解液の不純物となるため)を除去するために酸洗浄などの工程が必要で、コストがかかる問題があった。電解液として、アルカリ水溶液を用いることにより、この問題が改善されるため、木材のみから得られる活性炭を、粉砕処理を行わずに、そのまま切断等として、分極性電極として用いることが可能になり、高性能な電気二重層キャパシタを安価に得ることが容易になる。
【0067】
言換えると、木材のみを炭化処理した後に賦活処理して得られる活性炭を、酸洗浄等のコストの掛かる洗浄工程を経ずにそのまま電気二重層キャパシタの分極性電極として用いるためには、電気二重層キャパシタの電解質としてアルカリ水溶液を用いることと、賦活処理がアルカリ賦活であることの2点が必須の要件となり、粉砕して電極形状に成形し直す工程があるかないかにかかわらず高性能な電気二重層キャパシタを、安価に得ることが容易になる。
【0068】
また、賦活処理と電解液には、水酸化ナトリウム水溶液を用いることもできる。水酸化カリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液は、混合しても化学反応が起こらないため、賦活処理に水酸化ナトリウム水溶液を用い、電解液に水酸化カリウム水溶液を用いたり、その逆の組合せにしたりしても良い。なお、電解液の濃度は高い方がより大きい静電容量が得られるため、溶解度の高い水酸化カリウム水溶液を電解液に用いる方が性能の良い電気二重層キャパシタを得やすい。