(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検者の眼底の位置を回転中心として、前記被検者の正面方向に対して前記被検者から見て左右の方向に共焦点レーザ走査型光学系を回動させる回動機構が、前記被検者から見て右側又は左側の一方に所定の角度を成す第1の回転位置に位置させる第1のステップと、
前記第1の回転位置に位置する前記共焦点レーザ走査型光学系が、前記被検者の眼底に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、前記眼底で反射された各波長のレーザ光により結像される画像を波長別にそれぞれ撮像する第2のステップと、
前記回動機構が、前記共焦点レーザ走査型光学系を、前記被検者から見て右側又は左側の他方に前記被検者の正面方向に対して所定の角度を成す第2の回転位置に位置させる第3のステップと、
前記第2の回転位置に位置する前記共焦点レーザ走査型光学系が、前記被検者の眼底に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、前記眼底で反射された各波長のレーザ光により結像される画像を波長別にそれぞれ撮像する第4のステップと、
前記第2のステップで撮像された前記各波長のレーザ光による画像と、前記第4のステップで撮像された前記各波長のレーザ光による画像とを用いて、前記被検者の3次元の眼底画像を作成する第5のステップと、
を含む撮像方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、SLO等により撮像された眼底画像は、あくまで2次元画像である。2次元の眼底画像を用いて網膜の各層の組織を切り分けて診断するには、相当な熟練度が要求される。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、診断する者の熟練度に関わらず、より正確に眼底の診断を行うことができるアタッチメント、撮像装置及び撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るアタッチメントは、
被検者の眼底を位置決めする位置決め部と、
前記位置決め部で位置決めされた前記被検者の眼底に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、前記眼底で反射された各波長のレーザ光により結像される画像を波長毎にそれぞれ撮像する共焦点レーザ走査型光学系と、
前記位置決め部で位置決めされた前記被検者の眼底の位置を回転中心として、前記共焦点レーザ走査型光学系を、前記被検者から見て左右の方向に回転させる回転軸と、
を備える撮像装置に取り付けられるアタッチメントであって、
前記位置決め部に固定される固定部と、
前記共焦点レーザ走査型光学系の回転に伴って回転し、前記回転軸を中心とする前記被検者の正面方向に対する前記共焦点レーザ走査型光学系の回転角度を調整可能に前記固定部と係止する係止部と、
を備える。
【0008】
前記固定部には、
前記回転軸を中心とする前記共焦点レーザ走査型光学系の回転方向に沿って複数の穴部が設けられ、
前記係止部は、凸部を備え、
前記凸部が前記複数の穴部のいずれかに挿入されることにより、前記被検者の正面方向に対する前記共焦点レーザ走査型光学系の回転角度が決定される、
こととしてもよい。
【0009】
前記係止部は、
前記共焦点レーザ走査型光学系に接続される接続部材と、
前記接続部材に一端が接続された弾性部材と、
を備え、
前記凸部は、前記弾性部材の他端に接続され、前記弾性部材の変形により、前記各穴部に対して進入及び退避可能である、
こととしてもよい。
【0010】
本発明の第2の観点に係る撮像装置は、
被検者の眼底を位置決めする位置決め部と、
前記位置決め部で位置決めされた前記被検者の眼底に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、前記眼底で反射された各波長のレーザ光により結像される画像を波長別にそれぞれ撮像する共焦点レーザ走査型光学系と、
前記位置決め部で位置決めされた前記被検者の眼底の位置を回転中心として、前記共焦点レーザ走査型光学系を、前記被検者から見て左右の方向に回転させる回転軸と、
前記共焦点レーザ走査型光学系に固定され、前記回転軸を中心とする、前記被検者の正面方向に対する前記共焦点レーザ走査型光学系の回転角度を調整可能な角度調整部と、
前記角度調整部で調整された前記被検者の正面方向に対して前記被検者から見て右側に所定の角度を成す回転位置にある前記共焦点レーザ走査型光学系により撮像された前記被検者の眼底画像と、前記角度調整部で調整された前記被検者の正面方向に対して前記被検者から見て左側に所定の角度を成す回転位置にある前記共焦点レーザ走査型光学系により撮像された前記被検者の眼底画像と、を用いて、前記被検者の3次元の眼底画像を作成する画像処理部と、
を備える。
【0011】
本発明の第3の観点に係る撮像方法は、
被検者の眼底の位置を回転中心として、前記被検者の正面方向に対して前記被検者から見て左右の方向に共焦点レーザ走査型光学系を回動させる回動機構が、前記被検者から見て右側又は左側の一方に所定の角度を成す第1の回転位置に位置させる第1のステップと、
前記第1の回転位置に位置する前記共焦点レーザ走査型光学系が、前記被検者の眼底に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、前記眼底で反射された各波長のレーザ光により結像される画像を波長別にそれぞれ撮像する第2のステップと、
前記回動機構が、前記共焦点レーザ走査型光学系を、前記被検者から見て右側又は左側の他方に前記被検者の正面方向に対して所定の角度を成す第2の回転位置に位置させる第3のステップと、
前記第2の回転位置に位置する前記共焦点レーザ走査型光学系が、前記被検者の眼底に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、前記眼底で反射された各波長のレーザ光により結像される画像を波長別にそれぞれ撮像する第4のステップと、
前記第2のステップで撮像された前記各波長のレーザ光による画像と、前記第4のステップで撮像された前記各波長のレーザ光による画像とを用いて、前記被検者の3次元の眼底画像を作成する第5のステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被検者の正面方向に対して被検者から見て右側に所定の角度を成す回転位置にある共焦点レーザ走査型光学系により撮像された眼底の複数の層それぞれの眼底画像と、被検者の正面方向に対して被検者から見て左側に所定の角度を成す回転位置にある共焦点レーザ走査型光学系により撮像された眼底の複数の層それぞれの眼底画像とを得ることができる。これらの画像は、視差があり、かつ、異なる層をそれぞれ撮像した眼底画像であるので、これらの画像の視差を利用して、奥行きのある3次元の眼底画像を作成することができる。3次元の眼底画像を用いれば、眼底における網膜の各層の組織を区別して診断し易くなるので、診断する者の熟練度に関わらず、より正確に眼底の診断を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態に係る撮像装置は、被検者の3次元の眼底画像を作成する。
図1に示すように、撮像装置100は、位置決め部10と、共焦点レーザ走査型光学系20と、回転部30と、画像処理部40と、メガネ50と、を備える。
【0016】
位置決め部10は、主として、撮像装置100全体を支持する土台と、その土台の上方に延びるフレームとで構築されている。位置決め部10は、被検者の眼底を位置決めするために設けられている。位置決め部10は、頭部当接部10Aと、顎部当接部10Bとを有している。頭部当接部10Aに被検者の頭部が当接し、顎部当接部10Bに被検者の顎部が当接することにより、被検者の頭部が固定される。
【0017】
被検者の頭部が固定されると、
図2に示すように、被検者の眼球60(具体的には瞳孔62及び眼底61)が、共焦点レーザ走査型光学系20の光軸AX2上に配置されるようになり、被検者の眼底61が、焦点レーザ走査型光学系20で撮像可能な位置に位置決めされる。
【0018】
共焦点レーザ走査型光学系20は、位置決め部10で位置決めされた被検者の眼底61に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、眼底61で反射された各波長のレーザ光による画像を波長毎にそれぞれ撮像する。
【0019】
図2に示すように、共焦点レーザ走査型光学系20は、レーザ光源1と、絞り2と、ビームスプリッタ3と、走査部4と、対物光学系5と、絞り6と、撮像素子7と、を備える。
図2では、上述のように、被検者の頭部が位置決め部10により固定され、被検者の眼球60の光軸AX1と、共焦点レーザ走査型光学系20の対物光学系5の光軸AX2とが、略一致しているものとして説明を行う。
【0020】
レーザ光源1は、長波長(例えば赤外光、赤色の波長帯域であるがこれに制限されない)のレーザ光源と、前述の長波長より短い中波長(例えば緑色に対応する波長帯域であるがこれに制限されない)のレーザ光源と、前述の中波長より短い短波長(例えば緑青、青色に対応する波長帯域であるがこれに制限されない)のレーザ光源と、を備える。レーザ光源1は、3つのレーザ光源からそれぞれ出射された3つの波長のレーザ光を含むレーザ光束を出射する。
【0021】
絞り2は、ピンホールの開口を有する。絞り2は、レーザ光源1から出射されたレーザ光束を入射し、その開口を通過したレーザ光束だけを通過させる。
【0022】
ビームスプリッタ3は、入射した光の一部を反射し、残りを透過する。すなわち、ビームスプリッタ3は、絞り2を通過したレーザ光束の一部をそのまま透過させる。
【0023】
走査部4は、ガルバノミラー等で構成されている。走査部4は、ビームスプリッタ3を通過したレーザ光束を2次元走査する。より具体的には、走査部4は、ガルバノミラー等を揺動させ、レーザ光束の出射方向を2次元的に周期的に変化させる。
【0024】
対物光学系5は、対物レンズを含むオートフォーカス可能な屈折光学系である。対物光学系5は、走査部4で2次元走査されたレーザ光束を被検者の瞳孔62に入射させる。瞳孔62に入射したレーザ光束は、被検者の眼底61に導かれる。走査部4による2次元走査により、レーザ光束は、眼底61の矩形領域Sで2次元走査される。
【0025】
レーザ光束の一部は、眼底61で反射して、瞳孔62から外部に出射して、再び対物光学系5に入射し、戻りレーザ光束となる。絞り2と、対物光学系5の合焦面とは、共役の関係にある。
【0026】
絞り6には、対物光学系5、走査部4を通過し、ビームスプリッタ3で反射された戻りレーザ光束が入射する。絞り6は、ピンホール状の開口部を有する。絞り6は、その開口を通過したレーザ光束を通過させる。絞り6と対物光学系5の合焦面とは、共役の関係にある。これにより、絞り6は、対物光学系5の合焦点以外で反射した戻りレーザ光(点線)を遮蔽し、対物光学系5の合焦点で反射した戻りレーザ光束(実線)だけを通過させる。
【0027】
撮像素子7は、例えばCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ又はCCD(電荷結合素子)イメージセンサであり、2次元の撮像面を有する。撮像素子7の撮像面には、絞り6を通過した戻りレーザ光束が入射する。
【0028】
上述のように、眼底61に到達するレーザ光束は、走査部4によって2次元走査されているため、眼底61に照射されたレーザ光束は、眼底61の矩形領域S全体に走査されるようになる。また、撮像素子7の撮像面は、対物光学系5の合焦面と共役の関係にある。したがって、撮像素子7には、被検者の眼底61の矩形領域Sの像が結像する。したがって、その像が撮像素子7で撮像される。
【0029】
ここで、前述の通り、眼底61に照射されるレーザ光束には、長波長のレーザ光、緑色に相当する中波長のレーザ光、及び短波長のレーザ光が含まれている。
【0030】
図3に示すように、長波長のレーザ光Rは、眼底61にある網膜の最奥層61Aまで進み、最奥層61Aで反射する。また、中波長のレーザ光Gは、眼底61にある網膜の中間層61Bまで進み、中間層61Bで反射する。また、短波長のレーザ光Bは、眼底61にある網膜の最上層61Cで反射する。
【0031】
さらに、対物光学系5は、オートフォーカスにより、合焦面を最奥層61A、中間層61B、最上層61Cにそれぞれ合わせることが可能である。撮像素子7は、合焦面が最奥層61Aに合っているときの画像と、合焦面が中間層61Bに合っているときの画像と、合焦面が最上層61Cに合っているときの画像とを、それぞれ撮像する。共焦点レーザ走査型光学系20は、対物光学系5のオートフォーカスで合焦面を動かしつつ、撮像素子7で3つの画像を撮像するように不図示のコントローラにより制御される。この結果、撮像素子7の撮像により得られるのは、
図4に示すように、最奥層61Aの画像IRと、中間層61Bの画像IGと、最上層61Cの画像IBとなる。
【0032】
図5に示すように、回転部30は、回転軸31を有している。回転軸31の回転中心をOとする。この回転中心Oは、位置決め部10で位置決めされた被検者の眼球60(眼底61)の真下(−Z側)に位置するように設定されている。また、回転部30は、位置決め部10に対して回転軸31を中心に回転可能な回転部32と、回転部32から延びる回転アーム33とを備える。この構成により、回転部30は、位置決め部10で位置決めされた被検者の眼底の位置を回転中心として、共焦点レーザ走査型光学系20を、被検者から見て左右に回転可能である。
【0033】
このような構成を有することにより、例えば、
図6に示すように、被検者の眼底61の位置Oを中心として、被検者の正面方向、すなわち被検者の瞳孔62の光軸AX2を基準として共焦点レーザ走査型光学系20を所定の角度αだけ左右に回転させ、眼底画像を撮像することができる。この左右に回転させたときに得られる2つの眼底画像は、左右に視差のある画像となる。また、左右それぞれの眼底画像は、奥行きの異なる3つの眼底画像を含む。したがって、これらの眼底画像を画像処理することにより、3次元の眼底画像を作成することができる。
【0034】
なお、
図6に示すように、立体感のある正確な3次元画像を作成するためには、共焦点レーザ走査型光学系20の左右の回転角度は同一の角度αである必要がある。最適な角度αは、症例に応じて異なるため、角度αとして複数の異なる角度を設定できるようにしておくのが望ましい。
【0035】
図1に戻り、画像処理部40は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、記憶装置、通信インターフェイス、操作入力部及び表示ディスプレイ等を有し、画像処理を行うコンピュータである。CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することにより、画像処理部40の機能が実現される。
【0036】
画像処理部40と、共焦点レーザ走査型光学系20との間は、通信線70で接続されている。共焦点レーザ走査型光学系20の撮像素子7で撮像された画像は、通信線70を介して画像処理部40へ送られる。通信線70は、有線となっているが、通信線70の代わりに、共焦点レーザ走査型光学系20と、画像処理部40との間で無線通信が行われるようにしてもよい。
【0037】
画像処理部40は、共焦点レーザ走査型光学系20で撮像された眼底画像を用いて、眼底画像を立体表示するための3次元画像を作成する。
【0038】
メガネ50は、画像処理部40の画面に表示された眼底画像を、立体画像として見せるための立体表示メガネである。このようなメガネ50には、様々な方式のものを採用することができる。例えば、画像処理部40の表示画面に、左眼用の画像と右眼用の画像とを短い周期で交互に表示するとともに、メガネ50では、右眼又は左眼の一方を同じ周期で交互に遮蔽したり開いたりすることにより、左眼側が開いたときは左眼用の画像を表示し、右眼側が開いたときは右眼用の画像を表示することにより、3次元立体表示を行うようにすることができる。
【0039】
また、メガネ50の他の方式として偏向方式を採用することもできる。例えば、画像処理部40の表示画面に表示される左眼用の画像の光と右眼用の画像の光を偏向方向が異なる直線偏光の光とし、メガネ50側では、左眼のレンズと、右眼のレンズとを、偏向方向が異なる偏向フィルタを有するものとし、左眼には、左眼用の画像を見せ、右眼には右眼用の画像を見せて、3次元立体表示を行う。
【0040】
3次元の表示方式としては、他の方式を用いても良い。メガネ50を用いない方式を採用するようにしてもよい。
【0041】
上述のように、立体感のある正確な3次元画像を正確に再現するためには、共焦点レーザ走査型光学系20の左右の回転角度は同一の角度αである必要がある。そこで、本実施の形態では、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、撮像装置100に共焦点レーザ走査型光学系20の回転角度を調整するアタッチメント80が取り付けられる。このアタッチメント80は、固定部80Aと、係止部80Bという2つの部分に分かれている。
【0042】
固定部80Aは、
図8に示すように、位置決め部10に固定される。固定部80Aには、
図7(A)に示すように、回転中心Oを中心とする、位置決め部10に対する共焦点レーザ走査型光学系20の回転方向に沿って複数の穴部81が設けられている。また、固定部80Aには、位置決め部10に固定されるための矩形状の凹部82が設けられている。
図8には、固定部80Aが位置決め部10に固定された様子が示されている。
図8に示すように、凹部82が位置決め部10の矩形状の柱(回転部30と接続される部分の柱)に嵌め込まれることにより、固定部80Aが位置決め部10に固定されている。
【0043】
係止部80Bは、
図9に示すように、回転アーム33の根元に固定される。
図7(B)に示すように、係止部80Bは、接続部材83と、弾性部材84と、凸部85と、を備える。接続部材83は、回転アーム33に固定される。これにより、係止部80Bは、共焦点レーザ走査型光学系20の回転に伴って回転する。
【0044】
弾性部材84は、接続部材83に一端が接続されている。凸部85は、弾性部材84の他端に接続されており、
図9に示すように、弾性部材84を手で撓ませて変形させることにより、固定部80Aの各穴部81に対して進入及び退避可能である。このようにして、係止部80Bは、回転軸31を中心とする、位置決め部10と共焦点レーザ走査型光学系20との相対回転角度を調整可能に固定部80Aと係止する。
【0045】
次に、本発明の一実施の形態に係る撮像装置100を用いた3次元の眼底画像の作成方法について説明する。
【0046】
図10に示すように、まず、アタッチメント80(固定部80A及び係止部80B)を、撮像装置100に設置する(ステップS1)。例えば、
図8及び
図9に示すように、固定部80Aが、位置決め部10に取り付けられ、係止部80Bが、回転アーム33に取り付けられることによって、アタッチメント80が設置される。
【0047】
続いて、被検者の頭部を、位置決め部10に固定する(ステップS2)。具体的には、頭部当接部10Aに被検者の頭部(前側)を当接し、顎部当接部10Bに、被検者の顎部を当接させることにより、被検者の頭部を固定する。この結果、被検者の眼底61が、共焦点レーザ走査型光学系20の撮像位置に固定される。
【0048】
続いて、共焦点レーザ走査型光学系20の回転調整(右)を行う(ステップS3)。具体的には、固定部80Aと係止部80Bとの係止を解除し、被検者の眼底61の位置を回転中心Oとして、共焦点レーザ走査型光学系20を、被検者から見て右側の方向に回転させる。そして、共焦点レーザ走査型光学系20が、被検者の正面方向に対して右側に角度αを成す回転位置(第1の回転位置)に来たところで、係止部80Bを固定部80Aに係止し、共焦点レーザ走査型光学系20を位置決めする(
図6参照)。
【0049】
続いて、第1の回転位置に位置する共焦点レーザ走査型光学系20が、被検者の眼底61に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、眼底61で反射された各波長のレーザ光により結像される画像をそれぞれ撮像する(ステップS4)。撮像により得られた画像は、それぞれ通信線70を介して画像処理部40へ送られる。
【0050】
続いて、共焦点レーザ走査型光学系20の回転調整(左)を行う(ステップS5)。より具体的には、固定部80Aと係止部80Bとの係止を解除し、被検者の眼底61の位置を回転中心Oとして、共焦点レーザ走査型光学系20を、被検者から見て左側の方向に回転させる。そして、共焦点レーザ走査型光学系20が、被検者の正面方向に対して被検者から見て左側に角度αを成す第2の回転位置に来たところで、係止部80Bを固定部80Aに係止し、共焦点レーザ走査型光学系20を位置決めする(
図6参照)。
【0051】
第2の回転位置に位置する共焦点レーザ走査型光学系20が、被検者の眼底61に複数の異なる波長のレーザ光を照射し、眼底で反射された各波長のレーザ光により結像される画像をそれぞれ撮像する(ステップS6)。撮像により得られた画像は、それぞれ通信線70を介して画像処理部40へ送られる。
【0052】
続いて、画像処理部40は、右側の回転位置で撮像された各波長のレーザ光による画像と、左側の回転位置で撮像された各波長のレーザ光による画像とに基づいて、被検者の3次元の眼底画像を作成し、画像の3次元化を行う(ステップS7)。
【0053】
この画像の3次元化においては、
図11に示すように、画像処理部40は、まず、画像の着色を行う(ステップS11)。これにより、左右の網膜の最奥層61Aの画像には、赤色が付与され、左右の網膜の中間層61Bの画像には、緑色が付与され、左右の網膜の最上層61Cの画像には、青色が付与される。
【0054】
これにより、
図12に示すように、左側の回転位置で撮像された、最奥層61Aの赤色の画像IRL、中間層61Bの緑色の画像IGL、最上層61Cの青色の画像IBLが得られる。また、右側の回転位置で撮像された、最奥層61Aの赤色の画像IRR、中間層61Bの緑色の画像IGR、最上層61Cの青色の画像IBRが得られる。すなわち、計6枚の画像が得られる。
【0055】
続いて、画像処理部40は、3次元画像を構成する上での各画像の補正を行う(ステップS12)。
図13に示すように、3次元画像を見る者(診断者)の左眼の位置をLEとし、右眼の位置をREとする。診断者の左眼の位置REは、共焦点レーザ走査型光学系20の右側の回転位置に対応するため、診断者の左眼には、右側の回転位置で撮像された画像IRR、IGR、IBRが見えるように3次元画像が作成される。また、診断者の右眼の位置REは、共焦点レーザ走査型光学系20の左側の回転位置に対応するため、診断者の右眼には、左側の回転位置で撮像された画像IRL、IGL、IBLが見えるように3次元画像が作成される。
【0056】
左眼用の画像は、画像IRR、IGR、IBRを合成して作成される。
図13に示すように、画像IRRは、例えば、最奥層61Aの画像IRを構成するように配置されなければならない。また、画像IGRは、中間層61Bの画像IGを構成するように配置されなければならない。また、画像IBRは、最上層61Cの画像IBを構成するように配置されなければならない。したがって、画像IRRは、画像IGRよりも、左側に位置をシフトして画像IGRと合成され、画像IBRは、画像IGRよりも、右側に位置をシフトして画像IGRと合成される。すなわち、画像IRR、IGR、IBRは、それぞれ左右に位置ずれした状態で合成される。
【0057】
同様に、右眼用の画像は、画像IRL、IGL、IBLを合成して作成される。
図13に示すように、画像IRLは、例えば、最奥層61Aの画像IRを構成するように配置されなければならず、画像IGLは、中間層61Bの画像IGを構成するように配置されなければならない。画像IBLは、最上層61Cの画像IBを構成するように配置されなければならない。したがって、画像IRLは、画像IGLよりも、右側に位置をシフトして画像IGLと合成され、画像IBLは、画像IGLよりも、左側に位置をシフトして画像IGRと合成される。すなわち、画像IRL、IGL、IBLは、それぞれ左右に位置ずれした状態で合成される。
【0058】
なお、
図13では、画像IRR、IGR、IBR及び画像IRL、IGL、IBLの位置を、診断者から見て画像IRの位置よりも後方としたが、これは図面の錯綜を避けるための措置であり、実際には、画像IGの位置が、画像処理部40の表示画面の位置に対応するため、画像IRR、IGR、IBR及び画像IRL、IGL、IBLの位置ずれ補正は、画像IGの位置を基準として行われる。
【0059】
画像IRR、IGR、IBR及び画像IRL、IGL、IBLの位置ずれ量については、大きければ大きいほど、3次元の眼底画像の奥行きを広くすることができる。
【0060】
続いて、画像処理部40は、3次元画像化を行う(ステップS13)。より具体的には、画像処理部40は、求められた位置ずれ量で各画像が補正され合成された左眼、右眼用の画像を、画像処理部40の表示画面に表示される1組の3次元画像データとして生成する。
【0061】
ステップS13実行後、
図10に戻り、ステップS7が終了する。
【0062】
診断は、このようにしてステップS13で作成された3次元の眼底画像が画像処理部40の表示画面に表示されることにより行われる。診断者は、メガネ50をかけて、表示画面に表示された3次元の眼底画像を見る。メガネ50には、例えば、偏向方式とシャッタ方式のものがあるが、画像処理部40の表示画面には、その方式に応じた画面が表示され、青色の画像(最上層61Cの画像)が画面より手前に見えるように、緑色の画像が画面上に見えるように、又は、赤色の画像が画面より奥側に見えるような3次元表示がなされる。
【0063】
このような3次元表示により、例えば、糖尿病網膜症や、網膜静脈閉塞症などの診断が可能になる。このような3次元表示によれば、例えば糖尿病網膜症の場合、青色、緑色の網膜浮腫領域が前方に浮き出るように強調表示されるようになり、加齢黄斑変性における網膜色素上皮剥離などが、網膜下層に存在する隆起に見える様に強調表示されるので、診断が容易になる。
【0064】
なお、本実施の形態では、被検者から見て共焦点レーザ走査型光学系20を右側に回転させて撮像を行った後、左側に回転させて撮像を行ったが、逆の順番で撮像を行っても良い。
【0065】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、被検者の正面方向に対して被検者から見て右側に角度αを成す回転位置にある共焦点レーザ走査型光学系20により撮像された眼底の複数の層それぞれに対応する眼底画像と、被検者の正面方向に対して被検者から見て左側に角度αを成す回転位置にある共焦点レーザ走査型光学系20により撮像された眼底の複数の層それぞれに対応する眼底画像とを得ることができる。
【0066】
これらの画像は、視差があり、かつ、異なる層をそれぞれ撮像した眼底画像であるので、これらの画像の視差等を利用して、奥行きのある3次元の眼底画像を作成することができる。3次元の眼底画像を用いれば、その眼底における網膜の各層組織を奥行き方向に区別し、各層を独立して診断し易くなるので、熟練度を伴わなくても、客観的で正確に眼底の診断を行うことができる。
【0067】
本実施の形態に係るアタッチメント80及び撮像装置100を用いて予備実験を行った。この予備実験では、それぞれ得られた3次元の眼底画像を用いて複数の医師の診断結果が従来とどのように変化するかを調べた。より具体的には、日常診療で遭遇頻度が高い5つの疾患について、通常の2次元眼底画像と、本実施の形態に係るアタッチメント80、撮像装置100を用いて得られた3次元の眼底画像をそれぞれ用意する。そして、経験年数の異なる複数の医師が各画像を用いて診断を行い、その正答率を求めた。その結果、2次元画像では、正答率が7割程度であったのに対し、3次元の眼底画像を用いた場合には、正答率が9割に上昇した。この傾向は、特に、熟練度の低い若年の医師で差が顕著であった。
【0068】
このような共焦点レーザ走査型光学系20により撮像結果と、網膜光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)で撮像された網膜像とを組み合わせることにより、組織検査レベルの解像度で網膜を観察することも可能となる。
【0069】
また、この3次元の眼底画像を用いて患者に対して診断結果を説明するようにすれば、患者が診断結果を理解し易くなる。
【0070】
本実施の形態では、眼底画像を撮像する撮像装置100の光学系として、共焦点レーザ走査型光学系20を採用した。従来の眼底カメラは、フラッシュによる撮影を行っていたため、瞳孔径の違いが眼底に届く撮影光に大きく影響し、周辺部分が暗くなったりして診断が困難になるときもある。これに対して、共焦点レーザ走査型光学系20は、レーザ光を用いているため、瞳孔径に影響されず、ピクセル単位で眼底画像を取得することができるうえ、共焦点方式により高コントラストな画像を得ることができるので、診断に好適である。
【0071】
本実施の形態に係るアタッチメント80を用いることにより、誰でも、容易かつ安価に3次元の眼底画像を得ることができる。なお、アタッチメント80は、上記実施の形態の形状のものには限られない。共焦点レーザ走査型光学系20の角度を調整可能なアタッチメントであれば、形状は任意である。
【0072】
また、上記実施の形態では、対物光学系5の合焦点を眼底61の奥行き方向に変化させて、最奥層61Aの画像、中間層61Bの画像、最上層61Cの画像を撮像したが、これには限られない。例えば、撮像素子7において、高波長の光だけを透過するフィルタと、中波長の光だけを透過するフィルタと、短波長の光だけを透過するフィルタとを用意し、これらのフィルタを用いて、高波長のレーザ光による画像、中波長のレーザ光による画像、短波長のレーザ光による画像を、別々の画像として撮像するようにしてもよい。
【0073】
また、3次元の眼底画像の生成を、撮像装置100で行わず、撮像装置100から左側の撮像画像と、右側の撮像画像データを抜き出して、パーソナルコンピュータ上の市販された3次元画像生成ソフトで、画像の3次元化を行うようにしてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、撮像装置100にアタッチメント80が設置される構成について説明したが、撮像装置100が、共焦点レーザ走査型光学系20に固定され、被検者の正面方向に対する共焦点レーザ走査型光学系20の回転角度を調整可能な角度調節部を備えるようにしてもよい。
【0075】
その他、画像処理部40のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0076】
画像処理部40の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する画像処理部40を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで画像処理部40を構成してもよい。
【0077】
画像処理部40の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0078】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0079】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。