特許第6558757号(P6558757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558757
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】抗腫瘍剤
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/566 20060101AFI20190805BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20190805BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20190805BHJP
   A61K 31/381 20060101ALN20190805BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20190805BHJP
   A61P 35/04 20060101ALN20190805BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20190805BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   G01N33/566
   G01N33/15 Z
   !A61K45/00
   !A61K31/381
   !A61P35/00
   !A61P35/04
   !A61P43/00 111
   !A61P25/04
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-213860(P2015-213860)
(22)【出願日】2015年10月30日
(62)【分割の表示】特願2015-504803(P2015-504803)の分割
【原出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-94403(P2016-94403A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-89356(P2013-89356)
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500575673
【氏名又は名称】株式会社栃木臨床病理研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅又 昌雄
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−514002(JP,A)
【文献】 特表2003−532675(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/115593(WO,A1)
【文献】 特表2005−519095(JP,A)
【文献】 Keio J Med.,2010年,59(1),10-18
【文献】 Arterioscler Thromb Vasc Biol.,2009年,29(6),915-20
【文献】 Current Respiratory Care Reports,2012年,1,9-20
【文献】 ClinicalTrials.gov,NIH,2012年 3月13日,[2015年9月10日検索],URL,https://clinicaltrials.gov/archive/NCT00056004/2012_03_13
【文献】 日呼吸会誌,2004年,42(5),378-86
【文献】 生化学辞典(第3版), 株式会社東京化学同人, 1998, pp.1529-1530
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
G01N 33/00−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイニルロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を介したシグナル伝達経路を阻害する能力を指標とする、腫瘍の治療剤若しくは予防剤、腫瘍に伴う疼痛の緩和剤又は間質増生阻害剤(ただし、転移抑制剤及び毛細血管透過性抑制剤を除く)のスクリーニング方法。
【請求項2】
システイニルロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を阻害する能力を指標とする、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコトリエン阻害剤を有効成分とする、抗腫瘍剤、腫瘍に伴う疼痛の緩和剤及び間質増生阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは現代の日本人の死因の多くを占める疾患である。これまでに様々な抗がん剤が開発され実用化されているが、副作用も強く、患者の体の負担が大きい。近年では体の負担が少ない重粒子線治療も実用化されているが、治療費が高額であり、また治療を受けられる機関も限られていることから、現状では誰でも自由に選べる一般的な選択肢とは言い難い。従って、がんに対し効果が高く、かつ副作用も少ない、安価で提供できる抗がん剤が依然として強く望まれている。
【0003】
安価な抗がん剤の一例として、特許文献1には、抗アレルギー剤であるオキサトミド若しくはアゼラスチン又はその薬剤的に許容される塩を有効成分とする抗腫瘍剤が開示されている。オキサトミド及びアゼラスチンはいずれもヒスタミンH1受容体拮抗剤に分類される薬剤である。また、特許文献1に記載されているオキサトミド及びアゼラスチン並びにそれらの塩の抗腫瘍用途とは、具体的には、悪性腫瘍の治療用途である。特許文献1には、ロイコトリエン受容体拮抗剤等のロイコトリエン阻害剤が、生体内で自然発生した、上皮性及び非上皮性の各種の腫瘍に対して実際に有効であり、且つ副作用もほとんどないことは、何ら具体的に開示されていない。良性腫瘍に対する効果も何ら開示されていない。オキサトミド及びアゼラスチンが腫瘍部の神経や血管、線維芽細胞等の間質成分に及ぼす作用についても、特許文献1には何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-252763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、がんの治療や予防等に有効で且つ副作用の少ない医薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、ロイコトリエン阻害剤が生体内で自然発生した腫瘍に対して有効であり、且つ副作用もほとんどないことを見出した。さらに、ロイコトリエン阻害剤投与群では、腫瘍部における末梢神経細胞の変性が観察され、腫瘍に伴う疼痛の緩和にも有効であり得ることが確認された。さらに、自然発症したラット腫瘍組織に加え、ヒト由来の各種腫瘍組織検体について、ロイコトリエン受容体に対する抗体を用いた免疫染色を行なったところ、上皮性か非上皮性か、悪性か良性かを問わず、確認した様々な腫瘍組織の全てでロイコトリエン受容体抗体陽性細胞の存在が確認され、様々な腫瘍に対してロイコトリエン阻害剤が有効であることを確認し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、システイニルロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を介したシグナル伝達経路を阻害する能力を指標とする、腫瘍の治療剤若しくは予防剤、腫瘍に伴う疼痛の緩和剤又は間質増生阻害剤(ただし、転移抑制剤及び毛細血管透過性抑制剤を除く)のスクリーニング方法を提供する
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗腫瘍剤は、生体内で自然発生した腫瘍に対して実際に効果があることが確認されており、且つ、副作用もほとんどない。抗アレルギー剤として実用化されているロイコトリエン阻害剤を有効成分として使用することができ、安価で提供可能である。上皮性か非上皮性か、悪性か良性かを問わず、様々な腫瘍においてロイコトリエン受容体が発現していることが、本願発明者により明らかとなった(下記実施例参照)。ロイコトリエン阻害剤は、ロイコトリエン受容体への拮抗作用、又はロイコトリエン産生の阻害等の作用により、腫瘍部におけるロイコトリエン受容体を介したシグナル伝達を阻害することで、様々な腫瘍に対して抗腫瘍効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図A】担腫瘍ラット無治療群(比較例1)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。E:血管内皮細胞、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維。
図B】担腫瘍ラットモンテルカストナトリウム投与群(実施例1、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、F:線維芽細胞、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス。
図C】担腫瘍ラットモンテルカストナトリウム投与群(実施例1、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、F:線維芽細胞、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス、F−apo:線維芽細胞のアポトーシス。
図D】担腫瘍ラットプランルカスト水和物投与群(実施例3、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス。
図E】担腫瘍ラットプランルカスト水和物投与群(実施例3、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス。
図F】担腫瘍ラットプランルカスト水和物投与群(実施例3、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス。
図G】担腫瘍ラットザフィルルカスト投与群(実施例2、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、E:血管内皮細胞、F:線維芽細胞、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス、F−apo:線維芽細胞のアポトーシス。
図H】担腫瘍ラットザフィルルカスト投与群(実施例2、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、F:線維芽細胞、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス。
図I】担腫瘍ラットザフィルルカスト投与群(実施例2、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、E:血管内皮細胞。
図J】担腫瘍ラットジロートン投与群(実施例4、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス、F−apo:線維芽細胞のアポトーシス。
図K】担腫瘍ラットジロートン投与群(実施例4、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。RBC:赤血球、L:血管内腔、V:血管、C:膠原線維、E−apo:血管内皮細胞のアポトーシス。
図L】担腫瘍ラットモンテルカストナトリウム投与群(実施例1、投与期間3日)の腫瘍部の平滑筋細胞の電子顕微鏡像である。SMC-Apo:平滑筋細胞のアポトーシス。
図M】担腫瘍ラットプランルカスト水和物投与群(実施例3、投与期間3日)の腫瘍部の平滑筋細胞の電子顕微鏡像である。SMC-Apo:平滑筋細胞のアポトーシス。
図N】担腫瘍ラットザフィルルカスト投与群(実施例2、投与期間3日)の腫瘍部の平滑筋細胞の電子顕微鏡像である。SMC-Apo:平滑筋細胞のアポトーシス、C:膠原線維。
図O】担腫瘍ラットジロートン投与群(実施例4、投与期間3日)の腫瘍部の平滑筋細胞の電子顕微鏡像である。SMC-Apo:平滑筋細胞のアポトーシス。
図P】担腫瘍ラットモンテルカストナトリウム投与群(実施例1、投与期間3日)の腫瘍部の末梢神経細胞の電子顕微鏡像である。a:軸索、m:ミエリン鞘、★:軸索の空胞化および変性、矢印及び※:ミエリン鞘の変性。
図Q】担腫瘍ラットプランルカスト水和物投与群(実施例3、投与期間3日)の腫瘍部の末梢神経細胞の電子顕微鏡像である。a:軸索、m:ミエリン鞘、★:軸索の空胞化および変性、矢印及び※:ミエリン鞘の変性。
図R】担腫瘍ラットザフィルルカスト投与群(実施例2、投与期間3日)の腫瘍部の末梢神経細胞の電子顕微鏡像である。a:軸索、m:ミエリン鞘、★:軸索の空胞化および変性、矢印及び※:ミエリン鞘の変性。
図S】担腫瘍ラットジロートン投与群(実施例4、投与期間3日)の腫瘍部の末梢神経細胞の電子顕微鏡像である。a:軸索、m:ミエリン鞘、★:軸索の空胞化および変性、矢印:ミエリン鞘の変性。
図T】ロイコトリエン受容体抗体によるラット自然発症乳腺腫瘍組織の免疫染色像である。矢印:ロイコトリエン受容体抗体の陽性細胞(茶褐色に染色された細胞)。
図U】ロイコトリエン受容体抗体によるヒト乳癌組織の免疫染色像である。矢印:ロイコトリエン受容体抗体の陽性細胞(茶褐色に染色された細胞)。
図V】ロイコトリエン受容体抗体によるヒト胃癌組織の免疫染色像である。矢印:ロイコトリエン受容体抗体の陽性細胞(茶褐色に染色された細胞)。
図W】ロイコトリエン受容体抗体によるヒト子宮平滑筋腫の免疫染色像である。矢印:ロイコトリエン受容体抗体の陽性細胞(茶褐色に染色された細胞)。
図X】ロイコトリエン受容体抗体によるヒト平滑筋肉腫の免疫染色像である。矢印:ロイコトリエン受容体抗体の陽性細胞(茶褐色に染色された細胞)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「ロイコトリエン阻害剤」とは、ロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を介したシグナル伝達経路を阻害する物質である。ロイコトリエンの生合成からロイコトリエン受容体の下流のシグナル経路までの経路のうち、いずれのステップを阻害するものであってもよい。具体例を挙げると、ロイコトリエン阻害剤は、ロイコトリエンの産生を阻害する物質、ロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を阻害する物質、又はロイコトリエン受容体の活性化を抑制して下流因子へのシグナル伝達を阻害する物質等であり得る。典型的には、ロイコトリエン阻害剤は、ロイコトリエンの生体内での機能を阻害又は抑制する作用を有する物質であってよく、ロイコトリエン産生阻害剤及びロイコトリエン受容体拮抗剤が包含される。
【0011】
本発明において、「ロイコトリエン産生阻害剤」には、ロイコトリエン生合成経路で働く酵素等の因子を阻害する物質(ロイコトリエン生合成阻害剤)、並びに肥満細胞、好酸球、好中球、好塩基球、単球などのロイコトリエンを産生する細胞からのロイコトリエンの遊離を阻害する物質(ロイコトリエン遊離阻害剤)が包含される。本発明で使用し得るロイコトリエン産生阻害剤の具体例としては、5-リポキシゲナーゼ阻害剤であるジロートン(zileuton)、ABT-761、CJ-13610、ZD-2138、AA-861、サーシリオール(cirsiliol)等;5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質阻害剤であるMK-886、BAY X1005等を挙げることができる。また、これらの化合物の薬剤的に許容される塩、これらの化合物及びその塩の薬剤的に許容される溶媒和物も使用可能である。もっとも、本発明で有効成分として使用可能なロイコトリエン産生阻害剤はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0012】
本発明において、「ロイコトリエン受容体拮抗剤」には、ロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの作用に対して拮抗的に働く様々な物質が包含される。例えば、ロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を競合的又は非競合的に阻害する物質や、ロイコトリエン受容体の活性化を抑制して下流の因子へのシグナル伝達を阻害する作用を有する物質を挙げることができる。ロイコトリエン受容体に結合して該受容体を不活性な構造に安定化する作用を有するインバースアゴニストのような分子も、アンタゴニストの一例として「ロイコトリエン受容体拮抗剤」に包含される。本発明で使用し得るロイコトリエン受容体拮抗剤の具体例としては、ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、FPL55712、BAYu9773、LY293111 Na、CGS 25019C、ONO-4057、SB201993、CP195543、SC53228、BIIL 284(BIIL 260)等を挙げることができる。また、これらの化合物の薬剤的に許容される塩、並びにこれらの化合物及びその塩の薬剤的に許容される溶媒和物も使用可能である。もっとも、本発明で有効成分として使用可能なロイコトリエン受容体拮抗剤はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0013】
薬剤的に許容される塩には、塩酸塩、硫酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の酸付加塩が包含され、ロイコトリエン阻害剤が酸の場合にはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩も包含される。薬剤的に許容される溶媒和物には、有機溶媒との溶媒和物、水和物等が包含される。ただし、これらの具体例には限定されない。
【0014】
ロイコトリエン阻害剤の好ましい具体例としては、モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト及びジロートンから選択される化合物、該化合物の薬剤的に許容される塩、並びに該化合物及び該化合物の塩の薬剤的に許容される溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0015】
本発明において、「抗腫瘍」との語には、腫瘍の発生(初発、転移、再発)の抑制及び増殖の抑制が包含される。従って、「抗腫瘍剤」には、腫瘍の治療剤、予防剤、転移抑制剤、及び再発抑制剤が包含される。「腫瘍」には良性腫瘍と悪性腫瘍の両者が包含される。具体的には、腫瘍は、悪性の上皮性腫瘍、良性の上皮性腫瘍、悪性の非上皮性腫瘍、良性の非上皮性腫瘍に分類される。悪性腫瘍(がん)には、固形がん及び血液がんが包含される。固形がんには、癌腫(悪性上皮性腫瘍)、肉腫(悪性非上皮性腫瘍)、並びにメラノーマやグリオーマ等の神経系悪性固形腫瘍(悪性非上皮性腫瘍)が包含される。血液がんには、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等の血液悪性腫瘍が包含される。また、「固形腫瘍」との語には、固形がんの他、良性の固形腫瘍も包含される。
【0016】
本発明の抗腫瘍剤は、少なくとも1種のロイコトリエン阻害剤を有効成分として含有する。2種以上のロイコトリエン阻害剤を有効成分として含んでいてもよい。本発明の抗腫瘍剤を悪性腫瘍の治療に用いる場合、オキサトミド及びアゼラスチン並びにそれらの薬剤的に許容される塩から選択される少なくとも1種を有効成分とする剤は、これらの抗アレルギー剤が本発明で定義される通りのロイコトリエン阻害剤に包含されるか否かとは無関係に、本発明の抗腫瘍剤から除外され得る。あるいは、悪性腫瘍の転移抑制剤又は再発抑制剤として用いられる場合、オキサトミド及びアゼラスチン並びにそれらの薬剤的に許容される塩から選択される少なくとも1種を有効成分とする剤は、本発明の抗腫瘍剤から除外され得る。あるいは、悪性腫瘍の予防剤として用いられる場合、オキサトミド及びアゼラスチン並びにそれらの薬剤的に許容される塩から選択される少なくとも1種を有効成分とする剤は、本発明の抗腫瘍剤から除外され得る。
【0017】
下記実施例に記載される通り、良性か悪性か、上皮性か非上皮性かを問わず、様々な種類の腫瘍においてロイコトリエン受容体の発現が確認されている。ロイコトリエン阻害剤は、ロイコトリエン受容体に対する拮抗的な作用により、又はロイコトリエン産生の阻害により、腫瘍部において発現しているロイコトリエン受容体を介したシグナル伝達を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮していると考えられる。従って、ロイコトリエン阻害剤は、悪性及び良性の上皮性腫瘍、並びに悪性及び良性の非上皮性腫瘍に対して広く抗腫瘍効果を発揮できる。本発明の抗腫瘍剤は、特に限定されないが、例えば、固形腫瘍に対して、あるいは悪性腫瘍に対して、あるいは固形がんに対して、好ましく用いることができる。
【0018】
ロイコトリエン阻害剤には、生体内で自然発生した腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する作用がある(下記実施例参照)。特に、腫瘍組織の間質成分であり腫瘍細胞の酵素・栄養補給経路として必須である新生血管の内皮細胞、さらには腫瘍部において新生血管に併走して増生する末梢神経細胞、血管の収縮運動をつかさどる平滑筋細胞等のその他の間質細胞に対してもアポトーシスや変性が観察されていることから、ロイコトリエン阻害剤は腫瘍の中でも固形腫瘍、特には固形がんに対して好ましく使用できる。
【0019】
ロイコトリエン阻害剤による新生血管の内皮細胞に対するアポトーシスの誘導は、固形腫瘍組織内の血管においてのみ観察され、腫瘍部以外の健常組織では観察されない。この効果に着目すれば、固形腫瘍に対して用いられる本発明の抗腫瘍剤は、固形腫瘍特異的な血管新生抑制剤ともいうことができる。また、間質細胞の増生の抑制作用に着目すれば、固形腫瘍特異的な間質増生阻害剤ともいうことができる。新生血管は腫瘍細胞の酵素・栄養補給経路として必須であり、線維芽細胞、線維芽細胞が産生する膠原線維、末梢神経細胞、平滑筋細胞等のその他の間質成分は、腫瘍細胞と共に腫瘍部を構成している。ロイコトリエン阻害剤は、腫瘍細胞の酵素・栄養補給経路を断つとともに増生した間質細胞を死滅させることによって固形腫瘍の増殖及び転移を抑制することができるので、固形腫瘍の治療及び予防(悪性腫瘍の転移及び再発の予防も含む)が可能となる。
【0020】
もっとも、ロイコトリエン阻害剤によるアポトーシスの誘導は、上記した通り新生血管等だけではなく腫瘍細胞自体に対しても認められるため、本発明の抗腫瘍剤の効果は固形腫瘍に限定されるものではなく、血液がんに対しても有効である。
【0021】
健康診断や人間ドック等でがんの疑いありとされ、精密検査の結果良性腫瘍であった場合、悪性化(がん化)を早期発見して対処する目的で、その後定期的に通院して経過観察を続けるのが一般的である。ロイコトリエン阻害剤は良性腫瘍に対しても増殖抑制等の治療効果を奏するので、腫瘍(より具体的には悪性腫瘍)の予防にも有用である。予防目的で用いる場合、抗腫瘍剤は、典型的には、良性腫瘍を有する対象、より具体的には悪性化するおそれのある良性腫瘍を有する対象に対して投与され得る。
【0022】
また、ロイコトリエン阻害剤により、腫瘍部において末梢神経細胞の変性が生じており、腫瘍部において増生した神経細胞も死滅することから、ロイコトリエン阻害剤は腫瘍に伴う疼痛の緩和にも有効である。
【0023】
ロイコトリエン阻害剤自体は上記した通り各種のものが公知であり、その合成方法も公知である。
【0024】
本発明の抗腫瘍剤の投与経路は経口投与でも非経口投与(例えば静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経腸投与等)でもよく、全身投与でも局所投与でもよいが、経口投与が簡便で好ましい。投与量は、患者の症状(腫瘍の大きさ、進行度、悪性度等)の程度や用いるロイコトリエン阻害剤の種類等に応じて適宜設定される。抗アレルギー剤として通常使用される程度の量でも抗腫瘍効果を得ることができるが、必要に応じてその10倍量〜100倍量ないしはそれ以上の量で投与してもよい。特に限定されないが、通常、成人1日当たりロイコトリエン阻害剤の量として1mg〜200000mg程度、例えば10mg〜100000mg程度、100mg〜100000mg程度、10mg〜50000mg程度、100mg〜50000mg程度、又は10mg〜10000mg程度で用いることができる。
【0025】
抗腫瘍剤の剤形は特に限定されず、投与経路に応じて適宜選択することができ、医薬品の分野で通常用いられる製剤技術により製造することができる。抗アレルギー薬として市販されている製剤と同じ構成のものを本発明の抗腫瘍剤として用いることができる。
【0026】
ロイコトリエン阻害剤の投与対象は哺乳動物であり、ヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、マウス、ラット、フェレット、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、サル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0027】
ロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を介したシグナル伝達経路を阻害する能力を指標とすれば、新規な抗腫瘍剤、腫瘍に伴う疼痛の緩和剤、又は間質増生阻害剤をスクリーニングすることができる。ロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合を介したシグナル伝達経路の阻害とは、上述した通り、ロイコトリエン産生の阻害、ロイコトリエン受容体へのロイコトリエンの結合の阻害、又はロイコトリエン受容体の活性化の抑制による下流因子へのシグナル伝達の阻害等であり得る。シグナル伝達経路を阻害する作用があるか否かは、例えば、当該シグナル伝達経路で促進的に作用している因子の機能を阻害するか否か、又は当該シグナル伝達経路で抑制的に作用している因子の機能を促進するか否かによって調べることができる。促進的因子の機能の阻害は、例えば、細胞内における当該因子の発現の阻害、又は当該因子の生理活性の阻害であり得る。抑制的因子の機能の促進は、例えば、細胞内における当該因子の発現の促進、又は当該因子の生理活性の促進であり得る。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0029】
<材料>
飼育中に腫瘍を自然発症したSprague-Dawleyラット(以下、担腫瘍ラット)を日本チャールズリバー株式会社より購入し、実験に用いた。観察された腫瘍は全て乳腺腫瘍(腺癌及び腺腫)であった。また、これらは全て自然発症(spontaneous)の腫瘍であり、ヒトを含む哺乳動物の発がん要因を含む腫瘍発生の諸条件を踏まえた担がん動物である。
【0030】
<方法>
比較例1:無治療の担腫瘍ラットの腫瘍病変標本の観察(3症例)
エーテル麻酔下において担腫瘍ラットから腫瘍組織を摘出した。摘出腫瘍を固定後、光学顕微鏡(ヘマトキシリン・エオジン染色)標本及び電子顕微鏡(ウラン・鉛重染色)標本を作製し観察した。
【0031】
実施例1:モンテルカストナトリウムの担腫瘍ラットに対する治療効果(3症例)
担腫瘍ラットに対し、モンテルカストナトリウムを活性成分とするロイコトリエン阻害剤(ロイコトリエン受容体拮抗剤、商品名「シングレア錠」、MSD株式会社製)を、モンテルカストナトリウムとして1日当たり0.16mg/kg体重の投与量で最長7日間経口投与し、エーテル麻酔下において腫瘍組織を3日目および7日目に摘出した。比較例1と同様に、摘出腫瘍を固定後、光学顕微鏡(ヘマトキシリン・エオジン染色)標本及び電子顕微鏡(ウラン・鉛重染色)標本を作製し観察した。
【0032】
実施例2:ザフィルルカストの担腫瘍ラットに対する治療効果(3症例)
担腫瘍ラットに対し、ザフィルルカストを活性成分とするロイコトリエン阻害剤(ロイコトリエン受容体拮抗剤、商品名「アコレート」、アストラゼネカ株式会社製)を、ザフィルルカストとして1日当たり1.33mg/kg体重の投与量で最長7日間経口投与し、エーテル麻酔下において腫瘍組織を3日目および7日目に摘出した。比較例1と同様に、摘出腫瘍を固定後、光学顕微鏡(ヘマトキシリン・エオジン染色)標本及び電子顕微鏡(ウラン・鉛重染色)標本を作製し観察した。
【0033】
実施例3:プランルカスト水和物の担腫瘍ラットに対する治療効果(3症例)
担腫瘍ラットに対し、プランルカスト水和物を活性成分とするロイコトリエン阻害剤(ロイコトリエン受容体拮抗剤、商品名「オノン」、小野薬品工業株式会社製)を、プランルカスト水和物として1日当たり7.5mg/kg体重の投与量で最長7日間経口投与し、エーテル麻酔下において腫瘍組織を3日目および7日目に摘出した。比較例1と同様に、摘出腫瘍を固定後、光学顕微鏡(ヘマトキシリン・エオジン染色)標本及び電子顕微鏡(ウラン・鉛重染色)標本を作製し観察した。
【0034】
実施例4:ジロートンの担腫瘍ラットに対する治療効果(3症例)
担腫瘍ラットに対し、ジロートンを活性成分とするロイコトリエン阻害剤(ロイコトリエン生合成阻害剤、商品名「ZYFLO」、アボットラボラトリーズ製)を、ジロートンとして1日当たり34.3mg/kg体重の投与量で最長7日間経口投与し、エーテル麻酔下において腫瘍組織を3日目および7日目に摘出した。比較例1と同様に、摘出腫瘍を固定後、光学顕微鏡(ヘマトキシリン・エオジン染色)標本及び電子顕微鏡(ウラン・鉛重染色)標本を作製し観察した。
【0035】
<結果>
比較例1の無治療担腫瘍ラット腫瘍組織像と比較して、ロイコトリエン阻害剤である、モンテルカストナトリウム(ロイコトリエン受容体拮抗剤、実施例1)、ザフィルルカスト(ロイコトリエン受容体拮抗剤、実施例2)、プランルカスト水和物(ロイコトリエン受容体拮抗剤、実施例3)及びジロートン(ロイコトリエン生合成阻害剤、実施例4)による治療を施した全ての担腫瘍ラットの腫瘍細胞において、投与3日目には既に部分的にアポトーシスが誘導され、腫瘍細胞の進展・増殖の抑制効果が顕著に認められた。
【0036】
また、治療群全てにおいて、腫瘍組織の間質成分であり腫瘍細胞の酵素・栄養補給経路として必須である新生血管の内皮細胞に対しても、アポトーシスが誘導されており、腫瘍内の血流が阻止され、腫瘍細胞増殖・転移抑制効果につながったと考えられた。血管内皮細胞のほか、線維芽細胞及び平滑筋細胞のアポトーシス、並びに血管に併走する末梢神経細胞の変性も確認された。これらの間質細胞のアポトーシス及び変性は、治療群の腫瘍組織内のみに観察され、全ての治療群の正常部位及び無治療群の腫瘍組織内には認められなかった。
【0037】
また、治療群のラットには副作用は全く認められなかった。
【0038】
上記した病理所見を病理標本の顕微鏡像に基づきさらに詳細に説明する。
【0039】
図Aは、無治療群(比較例1)の腫瘍組織の電子顕微鏡像であり、正常な血管内皮細胞(図中のE)が認められる。
【0040】
図B及びCは、モンテルカストナトリウム投与群(実施例1、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。腫瘍組織内の血管において内皮細胞のアポトーシス(図中のE−apo)が認められた。これらの内皮細胞は核の不整(イレギュラー)な濃縮や断片化(図中の*)がみられ、アポトーシスのステージII〜IIIに相当する(T. Ihara, et al. The process of ultrastructural changes from nuclei to apoptotic body. Virchow Arch (1998) 433: 443-447)。内皮細胞のアポトーシスにより腫瘍組織への血流阻害効果(新生血管阻害効果)が得られた。また、膠原線維を産生し腫瘍組織の間質を構成する、線維芽細胞のアポトーシス(図中のF−apo)も誘導されており、膠原線維の減少(図中のC)も観察され、間質増生阻害効果もみられた。
【0041】
図D〜Fは、プランルカスト水和物投与群(実施例3、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。腫瘍組織内の血管において内皮細胞のアポトーシス(図中のE−apo)が認められた。これらの内皮細胞は核の不整(イレギュラー)な濃縮や断片化(図中の*)がみられ、アポトーシスのステージII〜IIIに相当する(Ihara, et al. 1998、上掲)。ジロートン投与群と同様に、内皮細胞のアポトーシスにより腫瘍組織への血流阻害効果(新生血管阻害効果)が得られた。
【0042】
図G〜Iは、ザフィルルカスト投与群(実施例2、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。腫瘍組織内の血管において内皮細胞のアポトーシス(図中のE−apo)が認められた。これらの内皮細胞は核の不整(イレギュラー)な濃縮や断片化(図中の*)がみられ、アポトーシスのステージII〜IIIに相当する(Ihara, et al. 1998、上掲)。加えて血管内皮細胞(E)の変性像(→)が認められた(図I)。内皮細胞のアポトーシスおよび変性により腫瘍組織への血流阻害効果(新生血管阻害効果)が得られた。
【0043】
図J及びKは、ジロートン投与群(実施例4、投与期間3日)の腫瘍組織の電子顕微鏡像である。腫瘍組織内の血管において内皮細胞のアポトーシス(図中のE−apo)が認められた。これらの内皮細胞は核の不整(イレギュラー)な濃縮や断片化(図中の*)がみられ、アポトーシスのステージII〜IIIに相当する(Ihara, et al. 1998、上掲)。内皮細胞のアポトーシスにより腫瘍組織への血流阻害効果(新生血管阻害効果)が得られた。また、膠原線維を産生し腫瘍組織の間質を構成する、線維芽細胞のアポトーシス(図中のF−apo)も誘導されており、間質増生阻害効果もみられた。
【0044】
図L〜Oは、各ロイコトリエン阻害剤投与群における平滑筋細胞の電子顕微鏡像である。いずれの投与群でも、腫瘍組織内にある平滑筋細胞のアポトーシス(SMC-Apo)が認められた。これらの平滑筋細胞はの不整(イレギュラー)な濃縮や断片化(*)がみられアポトーシスのステージII〜IIIに相当する(Ihara, et al. 1998、上掲)。腫瘍組織内の平滑筋細胞のアポトーシスにより、新生血管阻害効果(血管周囲の平滑筋細胞にもアポトーシスが確認されたため)、および間質増生阻害効果(平滑筋細胞は線維芽細胞と共に間質構成成分である膠原線維を産生するため)が認められた。これらの所見はロイコトリエン阻害剤投与群のみに認められ、無治療群にはみられなかった。

【0045】
図P〜Sは、各ロイコトリエン阻害剤投与群における末梢神経の電子顕微鏡像である。腫瘍組織内の末梢神経において軸索(a)およびミエリン鞘(m)の変性像が認められた。これらの所見は末梢神経細胞の障害を示しており、ロイコトリエン阻害剤投与により血管に併走している神経の増生抑制効果が得られた。また、腫瘍組織内の神経細胞増生が抑制されることにより、腫瘍による疼痛に対して抑制効果も得られる。これらの所見はロイコトリエン阻害剤投与群のみに認められ、無治療群にはみられなかった。またこれらの変性は、ロイコトリエン阻害剤投与群担腫瘍ラットの腫瘍部位対側(非腫瘍部位)の末梢神経細胞には全く認められず、副作用もないと考えられた。
【0046】
実施例5:ロイコトリエン受容体抗体を用いた免疫染色によるロイコトリエン受容体の確認
パラフィン切片を用いて、各種腫瘍組織内にロイコトリエン受容体が存在するかどうかを、ロイコトリエン受容体抗体(Polyclonal Antibody to CysLT1およびPolyclonal Antibody to CysLT2:Acris Antibodies社)を用いた、免疫染色法(シンプルステインMAX-PO法:ニチレイ社)により確認した。確認を行った腫瘍組織を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
今回確認した腫瘍組織全てにおいて、ロイコトリエン受容体抗体陽性細胞が確認された。免疫染色像の代表例を図T〜Xに示す。
【0049】
上記で用いた4種のロイコトリエン阻害剤は、ロイコトリエン受容体に対して拮抗的に作用する、ないしはロイコトリエン産生を阻害する薬剤であるが、腫瘍組織内の各種細胞にロイコトリエン受容体が多数発現していることから、ロイコトリエン受容体を介したシグナル伝達を阻害することによって腫瘍に対する治療効果が得られると考えられる。上皮性及び非上皮性腫瘍組織の両方にロイコトリエン受容体の発現が認められており、ロイコトリエン阻害剤は両腫瘍群に治療効果を発揮すると考えられる。さらに、良性腫瘍組織においてもロイコトリエン受容体の発現が確認されたことから、ロイコトリエン阻害剤は悪性腫瘍のみならず良性腫瘍に対しても治療効果を発揮すると考えられる。
図A
図B
図C
図D
図E
図F
図G
図H
図I
図J
図K
図L
図M
図N
図O
図P
図Q
図R
図S
図T
図U
図V
図W
図X