(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平板状部材の外縁に沿って複数個連結されている電子部品接続用の接続部材を、下金型及び上金型で構成される切断金型で固定した状態で、前記平板状部材と前記接続部材との連結部分をパンチを用いてせん断して前記接続部材を前記平板状部材から切り離すための接続部材切り離し装置であって、
前記接続部材を所定の方向に沿って並べた状態で載置可能な下入れ子及び前記下入れ子を固定する下型板を有する前記下金型と、
前記下入れ子と対向する位置に設けられ、かつ、前記接続部材の基部を上側から押さえる押さえ部を有する上入れ子及び前記上入れ子を固定する上型板を有する上金型と、
前記下入れ子と隣接した位置に設けられ、上下方向に移動可能な前記パンチとを備え、
前記上入れ子は、前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で前記上型板に前記上入れ子を固定することを可能とする固定位置調整部をさらに有することを特徴とする接続部材切り離し装置。
前記固定位置調整部は、前記上入れ子を前記上型板にねじ止めするためのねじ穴であって、前記所定の方向に沿って延ばされた長穴形状のものを有することを特徴とする請求項1に記載の接続部材切り離し装置。
前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で前記上型板に前記上入れ子を固定したときの前記上入れ子のずらし量をD、隣接する前記接続部材における連結部分同士の間隔をLとしたときに、D<Lの関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接続部材切り離し装置。
前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で前記上型板に前記上入れ子を固定したときの前記上入れ子のずらし量をD、前記接続部材における連結部分における前記所定の方向と平行な軸方向の幅をWとしたときに、D>Wの関係を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接続部材切り離し装置。
前記上入れ子の形状は、断面形状が前記接続部材の形状に対応した断面形状であり、かつ、前記所定の方向に延在している柱状形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の接続部材切り離し装置。
平板状部材の外縁に沿って複数個連結されている電子部品接続用の接続部材を、下金型及び、上金型で固定した状態で、前記平板状部材と前記接続部材との連結部分をパンチを用いてせん断して前記接続部材を前記平板状部材から切り離す接続部材切り離し方法であって、
前記接続部材が外縁に沿って複数個連結されている前記平板状部材を搬送して、前記下金型の下入れ子の所定の位置に前記接続部材を所定の方向に沿って並べた状態で載置する接続部材載置工程と、
前記下入れ子と対向する位置に設けられた前記上金型の上入れ子の押さえ部で前記接続部材の基部を上側から押さえることによって前記接続部材を固定する接続部材固定工程と、
前記平板状部材と前記接続部材との連結部分を、前記下入れ子と隣接した位置に設けられ、かつ、上下方向に移動可能な前記パンチを用いてせん断して前記接続部材を前記平板状部材から切り離す接続部材切り離し工程とをこの順序で含み、
前記接続部材載置工程から前記接続部材切り離し工程までを所定の回数繰り返した後に、前記上入れ子の位置を前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした状態で、前記接続部材載置工程から前記接続部材切り離し工程までを繰り返すことを特徴とする接続部材切り離し方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、電子部品切り離し装置によって平板状部材と電子部品との連結部分をせん断することを繰り返すと、押さえ部の外側(平板状部材側)の表面(
図9における破線Dで囲まれた領域参照。)に摩耗が生じてしまう。このように摩耗が生じた状態で当該連結部分をせん断した場合には、電子部品の基部に切断バリが生じやすくなってしまうため、押さえ部の外側の表面に摩耗が生じていない金型に交換する必要がある。
【0009】
しかしながら、従来の電子部品切り離し装置において、押さえ部923の外側の表面に摩耗が生じた場合には、上金型920全体を交換する必要があり、交換に時間と手間とがかかることから、高い生産性で電子部品を平板状部材から切り離すことが難しいという問題がある。このような問題は、電子部品を平板状部材から切り離す場合のみに発生する問題ではなく、電子部品接続用の接続部材を平板状部材から切り離す場合においても同様に発生する問題である。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、高い生産性で接続部材を平板状部材から切り離すことが可能な接続部材切り離し装置、接続部材切り離し方法及び電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。また、そのような接続部材切り離し装置に用いる切断金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために鋭意努力を重ねた結果、少なくとも上金型を入れ子構造とするとともに、上金型の上入れ子に摩耗が生じて使用できなくなる前に下入れ子に対応する位置から所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上入れ子を固定することにより、上金型全体を交換しなくても、上記した問題が解決可能であることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
[1]本発明の接続部材切り離し装置は、平板状部材の外縁に沿って複数個連結されている電子部品接続用の接続部材を、下金型及び上金型で構成される切断金型で固定した状態で、前記平板状部材と前記接続部材との連結部分をパンチを用いてせん断して前記接続部材を前記平板状部材から切り離すための接続部材切り離し装置であって、前記接続部材を所定の方向に沿って並べた状態で載置可能な下入れ子及び前記下入れ子を固定する下型板を有する前記下金型と、前記下入れ子と対向する位置に設けられ、かつ、前記接続部材の基部を上側から押さえる押さえ部を有する上入れ子及び前記上入れ子を固定する上型板を有する上金型と、前記下入れ子と隣接した位置に設けられ、上下方向に移動可能な前記パンチとを備え、前記上入れ子は、前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で前記上型板に前記上入れ子を固定することを可能とする固定位置調整部をさらに有することを特徴とする。
ことを特徴とする。
【0013】
なお、本明細書中、「隣接した位置」とは、全体として見たときに一方の部材が他方の部材と隣り合っている場合のみならず、全体として見たときには一方の部材が他方の部材を囲っている状態だが、一部分を拡大すると一方の部材が他方の部材と隣り合っている場合をも含むものとする。
【0014】
[2]本発明の接続部材切り離し装置においては、前記固定位置調整部は、前記上入れ子を前記上型板にねじ止めするためのねじ穴であって、前記所定の方向に沿って延ばされた長穴形状のものを有することが好ましい。
【0015】
[3]本発明の接続部材切り離し装置においては、前記押さえ部は、前記所定の方向に沿って延在していることが好ましい。
【0016】
[4]本発明の接続部材切り離し装置においては、前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で前記上型板に前記上入れ子を固定したときの前記上入れ子のずらし量をD、隣接する前記接続部材における連結部分同士の間隔をLとしたときに、D<Lの関係を満たすことが好ましい。
【0017】
[5]本発明の接続部材切り離し装置においては、前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で前記上型板に前記上入れ子を固定したときの前記上入れ子のずらし量をD、前記接続部材における連結部分における前記所定の方向と平行な軸方向の幅をWとしたときに、D>Wの関係を満たすことが好ましい。
【0018】
[6]本発明の接続部材切り離し装置においては、前記上入れ子の形状は、断面形状が前記接続部材の形状に対応した断面形状であり、かつ、前記所定の方向に延在している柱状形状であることが好ましい。
【0019】
[7]本発明の切断金型は、[1]〜[6]のいずれかに記載の接続部材切り離し装置に用いる切断金型であって、接続部材を所定の方向に沿って並べた状態で載置可能な前記下入れ子及び前記下入れ子を固定する下型板を有する下金型と、前記下入れ子と対向する位置に設けられ、かつ、前記接続部材の基部を上側から押さえる押さえ部を有する前記上入れ子及び前記上入れ子を固定する上型板を有する上金型とを備え、前記上入れ子は、前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で前記上型板に前記上入れ子を固定することを可能とする固定位置調整部をさらに有することを特徴とする。
【0020】
[8]本発明の接続部材切り離し方法は、平板状部材の外縁に沿って複数個連結されている電子部品接続用の接続部材を、下金型及び、上金型で固定した状態で、前記平板状部材と前記接続部材との連結部分をパンチを用いてせん断して前記接続部材を前記平板状部材から切り離す接続部材切り離し方法であって、前記接続部材が外縁に沿って複数個連結されている前記平板状部材を搬送して、前記下金型の下入れ子の所定の位置に前記接続部材を所定の方向に沿って並べた状態で載置する接続部材載置工程と、前記下入れ子と対向する位置に設けられた前記上金型の上入れ子の押さえ部で前記接続部材の基部を上側から押さえることによって前記接続部材を固定する接続部材固定工程と、前記平板状部材と前記接続部材との連結部分を、前記下入れ子と隣接した位置に設けられ、かつ、上下方向に移動可能な前記パンチを用いてせん断して前記接続部材を前記平板状部材から切り離す接続部材切り離し工程とをこの順序で含み、前記接続部材載置工程から前記接続部材切り離し工程までを所定の回数繰り返した後に、前記上入れ子の位置を前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした状態で、前記接続部材載置工程から前記接続部材切り離し工程までを繰り返すことを特徴とする。
【0021】
[9]本発明の
電子デバイスの製造方法は、電子部品接続用の接続部材を介してチップとリードフレームとが接続された
電子デバイスを製造する
電子デバイスの製造方法であって、平板状部材から前記接続部材を切り離す第1工程と、前記第1工程において前記平板状部材から切り離された前記接続部材を前記チップ及び前記リードフレームとそれぞれ接合することにより、前記接続部材を介して前記チップと前記リードフレームとを接続する第2工程とを含み、前記第1工程は、前記接続部材が外縁に沿って複数個連結されている前記平板状部材を搬送して、下金型の下入れ子の所定の位置に前記接続部材を所定の方向に沿って並べた状態で載置する接続部材載置工程と、前記下入れ子と対向する位置に設けられた上入れ子の押さえ部で前記接続部材の基部を上側から押さえることによって前記接続部材を固定する接続部材固定工程と、前記平板状部材と前記接続部材との連結部分を、前記下入れ子と隣接した位置に設けられ、かつ、上下方向に移動可能なパンチを用いてせん断して前記接続部材を前記平板状部材から切り離す接続部材切り離し工程とをこの順序で含み、前記接続部材載置工程から前記接続部材切り離し工程までを所定の回数繰り返した後に、前記上入れ子の位置を前記下入れ子に対応する位置から前記所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした状態で、前記接続部材載置工程から前記接続部材切り離し工程までを繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の接続部材切り離し装置及び切断金型によれば、上入れ子が、下入れ子に対応する位置から所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板に上入れ子を固定することを可能とする固定位置調整部を有するため、上型板に上入れ子を固定する位置を、下入れ子に対応する位置からずらした位置とすることができる。従って、押さえ部の外側(平板状部材側)の表面に摩耗が生じてきた場合には、上入れ子を交換しなくても固定位置を調整することで上入れ子の押さえ部のうちまだ摩耗が生じていない部分を用いて当該連結部分をせん断することができる。その結果、上入れ子を交換する回数を少なくすることができ、高い生産性で接続部材を平板状部材から切り離すことができる。
【0023】
また、本発明の接続部材切り離し装置及び切断金型によれば、上入れ子を有する上金型を備えることから、固定位置調整部によって下入れ子に対応する位置からずらした位置においても押さえ部の外側の表面に摩耗が生じてきた場合でも、上金型全体を交換しなくても上入れ子を交換するだけでよく、上金型全体を交換する場合よりも部品交換にかかる時間が短くて済み、より一層高い生産性で接続部材を平板状部材から切り離すことができる。
【0024】
本発明の接続部材切り離し方法及び電子デバイスの製造方法によれば、接続部材載置工程から接続部材切り離し工程までを所定の回数繰り返した後に、上入れ子の位置を下入れ子に対応する位置から所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした状態で、接続部材載置工程から接続部材切り離し工程までを繰り返すため、押さえ部の外側表面に摩耗が生じてきた場合には、上入れ子を交換しなくても固定位置を調整することで上入れ子の押さえ部のうちまだ摩耗が生じていない部分を用いて当該連結部分をせん断することができ、上入れ子を交換する回数を少なくすることができる。その結果、高い生産性で接続部材を平板状部材から切り離すことができ、電子デバイスを高い生産性で製造することができる。
【0025】
また、本発明の接続部材切り離し方法及び電子デバイスの製造方法によれば、上入れ子を用いていることから、下入れ子に対応する位置からずらした位置においても押さえ部の外側の表面に摩耗が生じてきた場合には、上金型全体を交換しなくても上入れ子を交換するだけでよく、上金型全体を交換する場合よりも部品交換にかかる時間が短くて済む。その結果、より一層高い生産性で接続部材を平板状部材から切り離すことができ、より一層高い生産性で電子デバイスを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の接続部材切り離し装置、切断金型、接続部材切り離し方法及び電子デバイスの製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0028】
[実施形態]
実施形態に係る接続部材切り離し装置100は、平板状部材Hの外縁に沿って複数個連結されている電子部品接続用の接続部材40を、下金型110及び上金型120で構成される切断金型で固定した状態で、平板状部材Hと接続部材40との連結部分CPをパンチ130を用いてせん断して接続部材40を平板状部材Hから切り離すための接続部材切り離し装置である(
図3参照。)。実施形態に係る接続部材切り離し装置100で平板状部材Hから切り離された接続部材40は、半導体装置1(電子デバイス)の製造に用いられる。
【0029】
1.半導体装置1及び接続部材40について
半導体装置1は、ダイパッド10と、ダイパッド10に搭載されたチップ20と、ダイパッド10と離間した位置に配置されたリードフレーム30と、チップ20とリードフレーム30とを電気的に接続する電子部品接続用の接続部材40とを備える(
図1参照。)。
【0030】
接続部材40は、チップ20とリードフレーム30とを接続するための金属製のコネクタである。接続部材40は、チップ20と接続するためのチップ接続部42と、リードフレーム30と接続するためのリードフレーム接続部44とを有し、チップ接続部42とリードフレーム接続部44とが橋を架けたような状態で接続されている(
図1(c)参照。)。接続部材40においては、段差加工が施されており、チップ接続部42の高さ位置とリードフレーム接続部44の高さ位置とは異なる。
【0031】
接続部材40は、平板状部材Hの短手方向の両端の外縁に沿ってそれぞれ所定のピッチで複数個連結されている(
図2参照。)。接続部材40は、リードフレーム接続部44側で平板状部材Hと連結されており、接続部材40と平板状部材Hとの連結部分CPを切断することにより平板状部材Hから切り離される。平板状部材Hは、金属製のフープ材であるが適宜の平板状部材(例えば、リードフレーム等)を用いることができる。
【0032】
2.実施形態に係る接続部材切り離し装置100について
実施形態に係る接続部材切り離し装置100は、
図3に示すように、下金型110と、上金型120と、パンチ130と、シャダー140と、パンチプレート150と、ダイプレート160とを備える。接続部材切り離し装置100においては、パンチを1度上下動させることで平板状部材Hの短手方向の両端の外縁に連結されている接続部材40をそれぞれ複数個(実施形態においては片方の端で20個ずつ、両端で40個)一括して平板状部材Hから切り離すことができる(
図5(a)参照。)。
【0033】
下金型110は、中央付近にパンチ130を挿入する穴が設けられた板状部材である。下金型110は、複数の接続部材40を所定の方向A(
図4(a)のx方向と同じ方向)に沿って並べた状態で載置可能な下入れ子111及び下入れ子111を固定する下型板112を有する(
図3、
図4(a)及び
図5(a)参照。)。
【0034】
下入れ子111は、ねじ穴(図示せず。)を有し、当該ねじ穴にねじを貫通させた状態でねじ止めすることで下型板112に固定されている。下入れ子111の材料は、適宜のものを用いることができるが、摩耗が生じにくい超鋼を用いることが好ましい。
【0035】
下入れ子111の形状は、断面形状が接続部材40の形状に対応した断面形状であり、かつ、所定の方向Aに沿って延在している柱状形状である(
図4(c)参照。)。下入れ子111には、所定の方向Aに沿って接続部材40を吸着して固定するための吸着穴(図示せず。)が平板状部材Hにおける接続部材40が連結されているピッチと対応したピッチで設けられている。
【0036】
下型板112は、ガイド穴113を有し(
図4(a)参照。)、当該ガイド穴113に後述するパンチプレート150のガイドピン(図示せず。)を貫通した状態でねじ止めすることによって後述するパンチプレート150と連結されている。
【0037】
上金型120は、中央付近にシャダー140を挿入する穴が設けられた板状部材である。上金型120は、下入れ子111と対向する位置に設けられた上入れ子121及び上入れ子121を固定する上型板122を有する(
図3及び
図4(b)参照。)。
【0038】
上型板122は、ガイド穴126を有し、当該ガイド穴126に後述するダイプレート160のガイドピン(図示せず。)を貫通した状態でねじ止めすることによりダイプレート160に固定されている(
図3及び
図4(b)参照。)。
【0039】
上入れ子121は、接続部材40の基部(切り離し後はリードフレーム接続部44となる)を上側から押さえる押さえ部123と、凹部124と、固定位置調整部125とを有する。上入れ子121の形状は、断面形状が接続部材40の形状に対応した断面形状であり、かつ、所定の方向Aに延在している柱状形状である(
図3及び
図4(c)参照。)。上入れ子121の材料は、適宜のものを用いることができるが、摩耗が生じにくい超鋼を用いることが好ましい。
【0040】
押さえ部123は、上入れ子121のパンチ130側(平板状部材H側)に設けられた凸部である。押さえ部123は、所定の方向に沿って延在しており、パンチ130側(平板状部材H側)の外側の表面(
図4(c)におけるA面)は平面になっている。
【0041】
凹部124は、接続部材40の断面形状に対応した形状で形成されている。凹部124は、平板状部材Hから切り離した接続部材40を取り出し易くするために、接続部材40を凹部124に収容したときに接続部材40と上入れ子121との間に隙間ができるように形成されている。
【0042】
固定位置調整部125は、上入れ子121を上型板122にねじ止めするためのねじ穴であって、所定の方向Aに沿って延ばされた長穴形状のものを有する(
図4(b)参照。)。固定位置調整部125においては、ねじ170を当該ねじ穴を貫通させた状態でねじ止めすることで上型板122に上入れ子121を固定することができる(
図5(b)参照。)。固定位置調整部125においては、ねじ止めする位置をねじ穴の中央付近、中央から所定の方向にずらした位置、又は、所定の方向と反対方向にずらした位置で固定することにより、下入れ子111に対応する位置から所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122に上入れ子121を固定することを可能とする(
図8参照。)。
【0043】
なお、下入れ子111に対応する位置Lから所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122に上入れ子121を固定したときのずらし量をD、隣接する接続部材40における連結部分CP同士の間隔をLとしたときに、D<Lの関係を満たす(
図8参照。)。また、下入れ子111に対応する位置Lから所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122に上入れ子121を固定したときのずらし量をD、接続部材40における連結部分CPにおける所定の方向Aと平行な軸方向の幅をWとしたときに、D>Wの関係を満たす(
図8参照。)。
【0044】
パンチ130は、パンチプレート150の中央付近に形成されている。パンチ130は、下入れ子111と隣接した位置(全体的に見ると下入れ子111に囲まれる位置)に設けられ、上下方向に移動可能である。パンチ130は、下金型110及び上金型120で構成される切断金型で接続部材40を固定した状態で、上方向に移動させることにより、上入れ子121の押さえ部123とパンチ130とで平板状部材Hと接続部材40との連結部分CPをせん断することができる。パンチ130の材料は、適宜のものを用いることができるが、摩耗が生じにくい超鋼を用いることが好ましい。
【0045】
シャダー140は、パンチ130の上方に設けられ、パンチ130が上方に移動しすぎることを防ぐ。パンチプレート150は、下金型110の下方に設けられ、所定の位置にガイドピン(図示せず。)が設けられているとともに、中央付近にパンチ130が立設されている。パンチプレート150は、パンチプレート150を上下動することによってパンチ130を上下動させることができる。ダイプレート160は、上金型120の上方に設けられており、所定の位置にガイドピン(図示せず。)が設けられている。
【0046】
なお、下金型110と上金型120とで切断金型を構成している。すなわち、実施形態に係る切断金型は、接続部材40を所定の方向に沿って並べた状態で載置可能な下入れ子111及び下入れ子111を固定する下型板112を有する下金型110と、下入れ子111と対向する位置に設けられ、かつ、接続部材40の基部(リードフレーム接続部44)を上側から押さえる押さえ部123を有する上入れ子121及び上入れ子121を固定する上型板122を有する上金型120とを備え、上入れ子121は、下入れ子111に対応する位置から所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122に上入れ子121を固定することを可能とする固定位置調整部125をさらに有する。
【0047】
3.実施形態に係る接続部材切り離し方法について
実施形態に係る接続部材切り離し方法は、実施形態に係る接続部材切り離し装置100を用いて、平板状部材Hの外縁に沿って複数個連結されている電子部品接続用の接続部材40を、下金型110の下入れ子111、及び、上金型120の上入れ子121で固定した状態で、平板状部材Hと接続部材40との連結部分CPをパンチ130を用いてせん断して接続部材40を平板状部材Hから切り離す接続部材切り離し方法である。
【0048】
実施形態に係る接続部材切り離し方法においては、まず、固定位置調整部125において、ねじ170をねじ穴の中央付近を貫通させた状態でねじ止めすることで上入れ子121を上型板122に固定する(
図8(a)参照。)。このとき、上入れ子121の位置は、下入れ子111に対応した位置Lとなる。次に、接続部材載置工程と、接続部材固定工程と、接続部材切り離し工程とをこの順序で繰り返す(
図6及び
図7参照。)。以下、実施形態に係る接続部材切り離し方法を工程順に説明する。
【0049】
(1)接続部材載置工程
まず、電子部品接続用の接続部材40が外縁に沿って複数個連結されている平板状部材Hを図示しない搬送装置によって間欠的に搬送して、下入れ子111の所定の位置に接続部材40を所定の方向に沿って並べた状態で載置する(
図5(a)及び
図6(a)参照。)。
【0050】
(2)接続部材固定工程
次に、上金型120を図示しない駆動装置によって下降させることにより、上入れ子121の押さえ部123で接続部材40の基部(リードフレーム接続部44)を上側から押さえることによって接続部材40を固定する(
図6(b)参照。)。
【0051】
(3)接続部材切り離し工程
次に、平板状部材Hと接続部材40との連結部分CPを、下入れ子111と隣接した位置に設けられ、かつ、上下方向に移動可能なパンチ130を下方から上方へ移動させることにより、パンチ130と上入れ子121の押さえ部123とでせん断して接続部材40を平板状部材Hから切り離す(
図7(a)参照。)。次に、パンチ130を下方へ移動させた後、上入れ子121を上方へ移動させることによって、接続部材40を固定から解放する(
図7(b)参照。)。次に、下金型110における吸引穴からの接続部材40の吸着を停止する。次に、接続部材40を下入れ子111上から移動させる。これにより接続部材40を平板状部材Hから切り離すことができる。
【0052】
上記各工程(1)〜(3)を所定の回数繰り返すと、上入れ子121の押さえ部123の外側(平板状部材H側)の表面に摩耗が生じてくる(
図8(a)右図における摩耗表面C1参照。)。このとき、固定位置調整部125において、上入れ子121を所定の方向Aに沿ってずらした位置で上型板122にねじ170でねじ止めする。換言すると、ねじ170をねじ穴の中央付近よりも所定の方向Aに沿って所定の幅D移動させた位置を貫通させた状態でねじ止めすることで上入れ子121を上型板122に固定する(
図8(b)左図参照。)。従って、上入れ子121の位置は、下入れ子111に対応した位置Lよりも所定の方向Aに沿ってDだけ移動した位置となる。これにより、押さえ部123の外側(平板状部材H側)の表面のうち摩耗が生じていない領域を用いて接続部材40を平板状部材Hから切り離すことができる。
【0053】
上記したように上入れ子121を上型板122に固定する位置を変えた後、上記各工程(1)〜(3)を繰り返し実施する。上記各工程(1)〜(3)を所定の回数繰り返すと、上入れ子121の押さえ部123の外側(平板状部材H側)の表面(摩耗表面C1よりも所定の方向Aに沿ってDだけ移動した位置の表面)に摩耗が生じてくる(
図8(b)右図における摩耗表面C2参照。)。このとき、固定位置調整部125において、上入れ子121を所定の方向Aとは反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122にねじ170でねじ止めする。換言すると、ねじ170をねじ穴の中央付近よりも所定の方向Aとは反対の方向に沿って中央位置より所定の幅D移動させた位置を貫通させた状態でねじ止めすることで上入れ子121を上型板122に固定する(
図8(c)左図参照。)。従って、上入れ子121の位置は、下入れ子111に対応した位置Lよりも所定の方向Aとは反対の方向に沿ってDだけ移動した位置となる。これにより、押さえ部123の外側(平板状部材H側)の表面のうち摩耗が生じていない領域を用いて接続部材40を平板状部材Hから切り離すことができる。
【0054】
上記したように上入れ子121を上型板122に固定する位置を変えた後、上記各工程(1)〜(3)を繰り返し実施する。上記工程を所定の回数繰り返すと、上入れ子121の押さえ部123の外側(平板状部材H側)の表面(摩耗表面C1よりも所定の方向Aに沿ってDだけ移動した位置の表面)に摩耗が生じてくる(
図8(c)右図における摩耗表面C3参照。)。この状態となったときに上入れ子121を交換する。
【0055】
4.実施形態に係る電子デバイスの製造方法について
実施形態に係る
電子デバイスの製造方法は、接続部材を介してチップとリードフレームとが接続された
電子デバイスを製造する方法である。
【0056】
実施形態に係る
電子デバイスの製造方法は、平板状部材から接続部材を切り離す第1工程と、第1工程において平板状部材から切り離された接続部材をチップ及びリードフレームとそれぞれ接合することにより、接続部材を介してチップとリードフレームとを接続する第2工程とを含む。
【0057】
第1工程は、上記した「実施形態に係る接続部材切り離し方法」と同様の方法を実施する工程であるので説明を省略する。
【0058】
第2工程においては、まず、ダイパッド上に接合部材(例えば、はんだ)を介してチップ20を載置するとともに、ダイパッド10とは離間した位置にリードフレーム30を配置する。次に、チップ20上に接合部材を介して接続部材40のチップ接続部42を載置するとともにリードフレーム30上に接合部材を介して接続部材40のリードフレーム接続部44を載置する。次に、ダイパッド10、チップ20、リードフレーム30及び接続部材40ごとリフローして接合部材を溶融して接続部材40をチップ20及びリードフレーム30とそれぞれ接合することにより、接続部材40を介してチップ20とリードフレーム30とを接続する。
【0059】
このようにして、電子デバイス(半導体装置1)を製造することができる。
【0060】
5.実施形態に係る接続部材切り離し装置100、切断金型、接続部材切り離し方法及び電子デバイスの製造方法の効果について
実施形態に係る接続部材切り離し装置100及び切断金型によれば、上入れ子121が、下入れ子111に対応する位置から所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122に上入れ子121を固定することを可能とする固定位置調整部を有するため、上型板122に上入れ子121を固定する位置を、下入れ子111に対応する位置からずらした位置とすることができる。従って、押さえ部123の外側(平板状部材H側)の表面に摩耗が生じてきた場合には、上入れ子121を交換しなくても固定位置を調整することで上入れ子121の押さえ部123のうちまだ摩耗が生じていない部分を用いて当該連結部分CPをせん断することができる。その結果、上入れ子121を交換する回数を少なくすることができ、高い生産性で接続部材40を平板状部材Hから切り離すことができる。
【0061】
また、実施形態に係る接続部材切り離し装置100及び切断金型によれば、上入れ子121を有する上金型120を備えることから、固定位置調整部によって下入れ子111に対応する位置からずらした位置においても押さえ部123の外側の表面に摩耗が生じてきた場合でも、上金型120全体を交換しなくても上入れ子121を交換するだけでよく、上金型120全体を交換する場合よりも部品交換にかかる時間が短くて済み、より一層高い生産性で接続部材40を平板状部材Hから切り離すことができる。
【0062】
また、実施形態に係る接続部材切り離し装置100によれば、固定位置調整部は、上入れ子121を上型板122にねじ止めするためのねじ穴であって、所定の方向Aに沿って延ばされた長穴形状のものを有するため、上入れ子121を固定する位置をずらしてねじ止めするという簡単な操作で、下入れ子111に対応する位置から所定の方向又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上入れ子121を上型板122に固定することができる。
【0063】
また、実施形態に係る接続部材切り離し装置100によれば、押さえ部123は、所定の方向Aに沿って延在しているため、上入れ子121を、下入れ子111に対応する位置から所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122に固定した場合でも、当該押さえ部123の外側の摩耗が生じていない部分を用いて、平板状部材と前記接続部材との連結部分CPをせん断することができる。
【0064】
また、実施形態に係る接続部材切り離し装置100によれば、下入れ子111に対応する位置Lから所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上入れ子121を上型板122に固定したときの上入れ子121のずらし量をD、隣接する接続部材40における連結部分CP同士の間隔をLとしたときに、D<Lの関係を満たすため、下入れ子111に対応する位置Lからずらした位置で上入れ子121を上型板122に固定したときに接続部材の「平板状部材Hと接続部材40との連結部分CP」のせん断に用いる領域と、それ以前に、隣接する接続部材40における「平板状部材Hと接続部材40との連結部分CP」のせん断に用いて摩耗が生じてきた領域とが重複することがない。従って、「平板状部材Hと接続部材40との連結部分CP」のせん断に当該摩耗が生じてきた領域を用いることを防ぐことができる。
【0065】
また、実施形態に係る接続部材切り離し装置100によれば、下入れ子111に対応する位置Lから所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした位置で上型板122に上入れ子121を固定したときの上入れ子121のずらし量をD、接続部材40における連結部分CPにおける所定の方向Aと平行な軸に沿った幅をWとしたときに、D>Wの関係を満たすため、下入れ子111に対応する位置Lからずらした位置で上入れ子121を上型板122に固定したときに接続部材40の「平板状部材Hと接続部材40との連結部分CP」のせん断に用いる領域と、それ以前に接続部材40における「平板状部材Hと接続部材40との連結部分CP」のせん断に用いて摩耗が生じてきた領域とが重複することがない。従って、「平板状部材Hと接続部材40との連結部分CP」のせん断に当該摩耗が生じてきた領域を用いることを防ぐことができる。
【0066】
また、実施形態に係る接続部材切り離し装置100によれば、上入れ子121の形状は、断面形状が接続部材40の形状に対応した断面形状であり、かつ、所定の方向Aに延在している柱状形状であるため、上入れ子121を、下入れ子111に対応する位置Lから所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした場合でも、上入れ子121によって接続部材40の基部を上側から押さえることができる。
【0067】
実施形態に係る接続部材切り離し方法及び電子デバイスの製造方法によれば、接続部材載置工程から接続部材切り離し工程までを所定の回数繰り返した後に、上入れ子121の位置を下入れ子111に対応する位置Lから所定の方向A又はこれと反対の方向に沿ってずらした状態で、接続部材載置工程から接続部材切り離し工程までを繰り返すため、押さえ部123の外側表面に摩耗が生じてきた場合には、上入れ子121を交換しなくても固定位置を調整することで押さえ部123のうちまだ摩耗が生じていない部分を用いて当該連結部分CPをせん断することができ、上入れ子121を交換する回数を少なくすることができる。その結果、高い生産性で接続部材40を平板状部材Hから切り離すことができ、電子デバイスを高い生産性で製造することができる。
【0068】
また、実施形態に係る接続部材切り離し方法及び電子デバイスの製造方法によれば、上入れ子121を用いていることから、下入れ子111に対応する位置Lからずらした位置においても押さえ部123の外側の表面に摩耗が生じてきた場合には、上金型120全体を交換しなくても上入れ子121を交換するだけよく、上金型120全体を交換する場合よりも部品交換にかかる時間が短くて済む。その結果、より一層高い生産性で接続部材40を平板状部材Hから切り離すことができ、より一層高い生産性で電子デバイスを製造することができる。
【0069】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0070】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0071】
(2)上記実施形態においては、平板状部材Hの両端の外縁に沿って連結されている接続部材40を両側一括して切り離す接続部材切り離し装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。平板状部材Hの短手方向の外縁に沿って連結されている接続部材を片側ずつ切り離す接続部材切り離し装置を用いてもよい。
【0072】
(3)上記実施形態においては、短手方向の両端の外縁に沿って接続部材が連結されている平板状部材Hを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。短手方向の一方の端の外縁に沿ってのみ接続部材が連結されている平板状部材Hを用いてもよい。
【0073】
(4)上記実施形態においては、接続部材を用いる電子デバイスとして半導体装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。接続部材を用いる電子デバイスとしてコンデンサ、インダクタその他適宜の電子デバイスを用いてもよい。
【0074】
(5)上記実施形態においては、固定位置調整部として、上入れ子を上型板にねじ止めするためのねじ穴であって、所定の方向に沿って延ばされた長穴形状のものを有する固定位置調整部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。固定位置調整部として、所定の方向又はこれと反対の方向に移動させる機構を有する固定位置調整部であればよく、例えば、固定位置調整部として、モーター等で上入れ子を移動させる機構を有する固定位置調整部や、スイッチで上入れ子を移動させる機構を有する固定位置調整部を用いてもよい。