特許第6558776号(P6558776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558776
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】栽培装置、栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20190805BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20190805BHJP
【FI】
   A01G31/00 617
   A01G9/00 J
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-203240(P2016-203240)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-64463(P2018-64463A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】501276315
【氏名又は名称】三秀工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168538
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 来
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀俊
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−054348(JP,U)
【文献】 実開昭54−007141(JP,U)
【文献】 実開平01−101341(JP,U)
【文献】 米国特許第04294037(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 9/00
A01G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を支持する植物支持体と、培養液を貯える培養液用容器と、培養液を植物へ導くシート状給液用導液材と、培養液用容器を覆う蓋部材と、紐状の雨水用導水材とを備えた栽培装置において、
前記シート状給液用導液材の少なくとも一つの端部が、前記培養液用容器の内部の培養液に浸かるとともに、前記シート状給液用導液材の中央部が、前記植物支持体の上に配設され、
前記植物の根が、前記シート状給液用導液材の中央部の上に設置され、
前記蓋部材が、前記培養液用容器に対して着脱自在に培養液用容器の長手方向に複数配設されているとともに、前記長手方向の端部に切り欠き部を有し、隣り合う蓋部材の切り欠き部同士または切り欠き部および端部が植物の茎の周囲を囲っており、
前記雨水用導水材が、前記蓋部材の上に配設され、
前記雨水用導水材の一端側が、互いに対向した切り欠き部の上において植物の茎と結ばれ、前記雨水用導水材の他端側が、前記蓋部材の端部から培養液用容器の外側へ延設されていることを特徴とする栽培装置。
【請求項2】
前記培養液用容器の内部の培養液の水位を計る浮力式水位計をさらに備え、
前記浮力式水位計が、前記培養液用容器の内部の培養液から上方へ延びて蓋部材の貫通穴を介して突出自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
前記蓋部材が、点検用開口と、前記点検用開口に対して着脱自在な開口用蓋とを有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の栽培装置。
【請求項4】
前記植物支持体が、前記培養液用容器の底部と接触した状態で植物を支持していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の栽培装置。
【請求項5】
前記植物の根の進入を防ぐ防根シートをさらに備え、
前記防根シートが、前記シート状給液用導液材の中央部の上の植物の根の上に載置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の栽培装置。
【請求項6】
前記植物の根の進入を防ぐ防根シートをさらに備え、
前記防根シートが、前記シート状給液用導液材と蓋部材との間において植物の根を包み込んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の栽培装置。
【請求項7】
植物支持体と培養液用容器とシート状給液用導液材と培養液用容器を覆う蓋部材と紐状の雨水用導水材とを備え、蓋部材が、培養液用容器に対して着脱自在に培養液用容器の長手方向に複数配設されているとともに、前記長手方向の端部に切り欠き部を有し、隣り合う蓋部材の切り欠き部同士または切り欠き部および端部が植物の茎の周囲を囲っており、前記雨水用導水材が、前記蓋部材の上に配設され、前記雨水用導水材の一端側が、互いに対向した切り欠き部の上において植物の茎と結ばれ、前記雨水用導水材の他端側が、前記蓋部材の端部から培養液用容器の外側へ延設されている構成の栽培装置を用いた栽培方法であって、
前記シート状給液用導液材が、前記培養液用容器の内部の培養液を吸い上げる培養液吸い上げ工程と、
前記シート状給液用導液材が、前記培養液吸い上げ工程で吸い上げた培養液を植物支持体の上方の植物へ供給する培養液供給工程と、
前記蓋部材および雨水用導水材が、雨水を蓋部材の上から培養液用容器の外側の下方へ案内する雨水移動工程とを具備していることを特徴とする栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を支持する植物支持体と、培養液を貯える培養液用容器と、培養液を植物へ導くシート状給液用導液材と、培養液用容器を覆う蓋部材とを備えた栽培装置、および栽培装置を用いた栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培装置として、植物を収容する容器本体と、容器本体を覆う上蓋とを備えた植物栽培用容器が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−167157号公報(特に図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の植物栽培用容器は、上蓋が単に定植穴を植物栽培用容器の長手方向に沿って複数有して、定植穴を介して外部から内部へ苗が植えられて植物の茎が定植穴に挿通された状態で植物が発育する構造であったため、発育中に上蓋を容器本体から取り外すことが困難であるという問題、さらに、上蓋を取り外せないために内部の状態を確認することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、容易に蓋部材を培養液用容器から取り外し、容易に培養液用容器の内部を確認して点検自在となる栽培装置、および栽培装置を用いた栽培方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、植物を支持する植物支持体と、培養液を貯える培養液用容器と、培養液を植物へ導くシート状給液用導液材と、培養液用容器を覆う蓋部材と、紐状の雨水用導水材とを備えた栽培装置において、前記シート状給液用導液材の少なくとも一つの端部が、前記培養液用容器の内部の培養液に浸かるとともに、前記シート状給液用導液材の中央部が、前記植物支持体の上に配設され、前記植物の根が、前記シート状給液用導液材の中央部の上に設置され、前記蓋部材が、前記培養液用容器に対して着脱自在に培養液用容器の長手方向に複数配設されているとともに、前記長手方向の端部に切り欠き部を有し、隣り合う蓋部材の切り欠き部同士または切り欠き部および端部が植物の茎の周囲を囲っており、前記雨水用導水材が、前記蓋部材の上に配設され、前記雨水用導水材の一端側が、互いに対向した切り欠き部の上において植物の茎と結ばれ、前記雨水用導水材の他端側が、前記蓋部材の端部から培養液用容器の外側へ延設されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された栽培装置の構成に加えて、前記培養液用容器の内部の培養液の水位を計る浮力式水位計をさらに備え、前記浮力式水位計が、前記培養液用容器の内部の培養液から上方へ延びて蓋部材の貫通穴を介して突出自在に設けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された栽培装置の構成に加えて、前記蓋部材が、点検用開口と、前記点検用開口に対して着脱自在な開口用蓋とを有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された栽培装置の構成に加えて、前記植物支持体が、前記培養液用容器の底部と接触した状態で植物を支持していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載された栽培装置の構成に加えて、前記植物の根の進入を防ぐ防根シートをさらに備え、前記防根シートが、前記シート状給液用導液材の中央部の上の植物の根の上に載置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載された栽培装置の構成に加えて、前記植物の根の進入を防ぐ防根シートをさらに備え、前記防根シートが、前記シート状給液用導液材と蓋部材との間において植物の根を包み込んでいることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項に係る発明は、植物支持体と培養液用容器とシート状給液用導液材と培養液用容器を覆う蓋部材と紐状の雨水用導水材とを備え、蓋部材が、培養液用容器に対して着脱自在に培養液用容器の長手方向に複数配設されているとともに、前記長手方向の端部に切り欠き部を有し、隣り合う蓋部材の切り欠き部同士または切り欠き部および端部が植物の茎の周囲を囲っており、前記雨水用導水材が、前記蓋部材の上に配設され、前記雨水用導水材の一端側が、互いに対向した切り欠き部の上において植物の茎と結ばれ、前記雨水用導水材の他端側が、前記蓋部材の端部から培養液用容器の外側へ延設されている構成の栽培装置を用いた栽培方法であって、前記シート状給液用導液材が、前記培養液用容器の内部の培養液を吸い上げる培養液吸い上げ工程と、前記シート状給液用導液材が、前記培養液吸い上げ工程で吸い上げた培養液を植物支持体の上方の植物へ供給する培養液供給工程と、前記蓋部材および雨水用導水材が、雨水を蓋部材の上から培養液用容器の外側の下方へ案内する雨水移動工程とを具備していることにより、前述した課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の栽培装置は、植物を支持する植物支持体と、培養液を貯える培養液用容器と、培養液を植物へ導くシート状給液用導液材と、培養液用容器を覆う蓋部材とを備えていることにより、培養液の蒸発を抑制するとともに断熱効果で培養液を比較的低温に保つことができ、さらに、雨が降ったときに雨が蓋部材に当たり雨水が培養液用容器の内部に入ってしまうことを回避して微生物の発生や培養液の濃度が薄くなるなどの不都合を防止できるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0015】
本請求項1に係る発明の栽培装置によれば、蓋部材を培養液用容器から取り外すときに植物を移動させる必要がないため、容易に蓋部材を培養液用容器から取り外すことができる。
さらに、蓋部材を培養液用容器から取り外すことで内部の様子を目視可能となるため、容易に培養液用容器の内部を確認して点検することができる。
また、蓋部材の上で溜まろうとする雨水が表面張力や毛管現象によって雨水用導水材に吸い寄せられるように移動して重力によって他端側へ移動するため、蓋部材の上の雨水を培養液用容器の外側の下方へ流して雨水が培養液用容器の内部に浸入することをより確実に回避できる。
【0016】
本請求項2に係る発明の栽培装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、培養液用容器の内部の培養液の水位の変化に伴って浮力式水位計の位置が変化して上端の突出量が変わるため、ユーザが蓋部材を開けずに培養液の水位を把握することができる。
【0017】
本請求項3に係る発明の栽培装置によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、ユーザが培養液用容器の内部を視認可能となるため、蓋部材の全体を培養液用容器から取り外すことなく容易に培養液用容器の内部を確認して点検することができる。
さらに、点検用開口を介して培養液を補給可能となるため、ユーザが蓋部材の全体を培養液用容器から取り外すことなく容易に培養液を補給することができる。
【0018】
本請求項4に係る発明の栽培装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、植物支持体が蓋部材に対して変位しないため、植物の枝や茎が傷つくことを回避できる。
【0019】
本請求項5に係る発明の栽培装置によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、植物の根が防根シートとシート状給液用導液材との間に沿って成長するため、植物の根が蓋部材と絡まるように接触してしまうことを回避して蓋部材が培養液用容器に対して外せなくなることを回避できる。
【0020】
本請求項6に係る発明の栽培装置によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、植物の根が防根シートの内側で成長するため、植物の根が蓋部材およびシート状給液用導液材と絡まるように接触してしまうことを回避して蓋部材が培養液用容器に対して外せなくなることを回避でき、さらに、植物がシート状給液用導液材に対して外せなくなることを回避して植物を栽培装置から出して自由に持ち運ぶことができる。
【0022】
本請求項に係る発明の栽培方法によれば、雨が降ったときに雨が蓋部材に当たるため、雨水が培養液用容器の内部に入ってしまうことを回避して微生物の発生や培養液の濃度が薄くなるなどの不都合を防止できる。
さらに、蓋部材を培養液用容器から取り外すときに植物を移動させる必要がないため、容易に蓋部材を培養液用容器から取り外すことができる。
また、蓋部材を培養液用容器から取り外すことで内部の様子を目視可能となるため、容易に培養液用容器の内部を確認して点検することができる。
さらに、蓋部材の上で溜まろうとする雨水が表面張力や毛管現象によって雨水用導水材に吸い寄せられるように移動して重力によって他端側へ移動するため、蓋部材の上の雨水を培養液用容器の外側の下方へ流して雨水が培養液用容器の内部に浸入することをより確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施例の栽培装置の概略を示す平面図。
図2図1に示す符号2−2で視た概略断面図。
図3】取り外した状態の蓋部材を示す概略平面図。
図4】本発明の第2実施例の栽培装置の概略を示す平面図。
図5図4に示す符号5−5で視た概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の栽培装置は、植物を支持する植物支持体と、培養液を貯える培養液用容器と、培養液を植物へ導くシート状給液用導液材と、培養液用容器を覆う蓋部材とを備え、シート状給液用導液材の少なくとも一つの端部が、培養液用容器の内部の培養液に浸かるとともに、シート状給液用導液材の中央部が、植物支持体の上に配設され、植物の根が、シート状給液用導液材の中央部の上に設置され、蓋部材が、培養液用容器に対して着脱自在に培養液用容器の長手方向に複数配設されているとともに、培養液用容器の長手方向の端部に切り欠き部を有し、隣り合う蓋部材の切り欠き部同士または切り欠き部および端部が植物の茎の周囲を囲っていることにより、雨が降ったときに雨水が培養液用容器の内部に入ってしまうことを回避して微生物の発生や培養液の濃度が薄くなるなどの不都合を防止するとともに、容易に蓋部材を培養液用容器から取り外し、容易に培養液用容器の内部を確認して点検自在となるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0025】
また、本発明の栽培方法は、植物支持体と培養液用容器とシート状給液用導液材と培養液用容器を覆う蓋部材とを備え、蓋部材が、培養液用容器に対して着脱自在に培養液用容器の長手方向に複数配設されているとともに、培養液用容器の長手方向の端部に切り欠き部を有し、隣り合う蓋部材の切り欠き部同士または切り欠き部および端部が植物の茎の周囲を囲っている構成の栽培装置を用いた栽培方法であって、シート状給液用導液材が、培養液用容器の内部の培養液を吸い上げる培養液吸い上げ工程と、シート状給液用導液材が、培養液吸い上げ工程で吸い上げた培養液を植物支持体の上方の植物へ供給する培養液供給工程と、蓋部材が、雨水を蓋部材の上から培養液用容器の外側の下方へ案内する雨水移動工程とを具備していることにより、雨が降ったときに雨水が培養液用容器の内部に入ってしまうことを回避して微生物の発生や培養液の濃度が薄くなるなどの不都合を防止するとともに、容易に蓋部材を培養液用容器から取り外し、容易に培養液用容器の内部を確認して点検自在となるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0026】
例えば、蓋部材は、培養液用容器を覆って雨水の浸入を回避することができればよく、蓋部材の材質は、如何なるものであっても構わない。
また、植物支持体は、培養液用容器の内部の培養液に浮かぶ構成でもよいし、培養液用容器の底部と接触する構成でもよい。
【実施例1】
【0027】
以下に、本発明の第1実施例である栽培装置100について、図1乃至図3に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例の栽培装置100の概略を示す平面図であり、図2は、図1に示す符号2−2で視た概略断面図であり、図3は、取り外した状態の蓋部材140を示す概略平面図である。
【0028】
本発明の第1実施例である栽培装置100は、図1乃至図3に示すように、植物支持体110と、培養液用容器120と、シート状給液用導液材130と、蓋部材140とを備えている。
このうち、植物支持体110は、植物PTを支持するものであり、培養液用容器120の内部に配設されている。
【0029】
本実施例では、植物支持体110は、一例として、脚部111を有している。
脚部111は、植物支持体110の下方に設けられ、下方へ延びて培養液用容器120の底部121と接触している。
つまり、植物支持体110は、培養液用容器120の内部の培養液FLに浮いている構成ではなく、培養液用容器120の底部121に立って植物PTを支持する構成である。
【0030】
培養液用容器120は、培養液FLを貯えるものであり、所謂、水槽の役割を果たす。
本実施例の培養液用容器120は、一例として、培養液FLを培養液用容器120の外部へ排出する排液口122と、培養液FLを培養液用容器120の内部へ供給する給液口123とを有している。
本実施例では、培養液FLの水位WLを一定にするように制御されているものとする。
【0031】
シート状給液用導液材130は、培養液FLを植物PTへ導くものである。
本実施例のシート状給液用導液材130は、毛管現象で液体を吸い上げて移動させるフェルトや不織布である。
蓋部材140は、培養液用容器120を覆うものである。
図3に示すように、シート状給液用導液材130の両側の端部131が、培養液用容器120の内部の培養液FLに浸かるとともに、シート状給液用導液材130の中央部132が、植物支持体110の上に配設されている。
【0032】
本実施例では、植物PTの根PT1が、シート状給液用導液材130の中央部132の上に設置されている。
さらに、蓋部材140が、培養液用容器120に対して着脱自在に培養液用容器120の長手方向Dに複数配設されている。
具体的には、図1および図2に示すように、左側蓋部材140A、中央蓋部材140B、右側蓋部材140Cの3つが配設されている。
さらに、図3に示すように、左側蓋部材140A、中央蓋部材140B、右側蓋部材140Cがそれぞれ、培養液用容器120の長手方向Dの端部に切り欠き部141を有している。
そして、隣り合う蓋部材140の切り欠き部141が互いに対向して配設され、互いに対向した切り欠き部141が植物PTの茎PT2の周囲を囲っている。
なお、本実施例では、隣り合う蓋部材140の切り欠き部141同士が植物PTの茎PT2の周囲を囲っている構成としたが、蓋部材140の切り欠き部141および端部が植物PTの茎PT2の周囲を囲う構成でもよい。
【0033】
これにより、雨が降ったときに雨が蓋部材140に当たる。
その結果、雨水が培養液用容器120の内部に入ってしまうことを回避して微生物の発生や培養液FLの濃度が薄くなるなどの不都合を防止できる。
さらに、蓋部材140を培養液用容器120から取り外すときに植物PTを移動させる必要がない。
その結果、容易に蓋部材140を培養液用容器120から取り外すことができる。
また、蓋部材140を培養液用容器120から取り外すことで内部の様子を目視可能となる。
その結果、容易に培養液用容器120の内部を確認して点検することができる。
【0034】
なお、蓋部材140を発泡スチロールで形成し、切り欠き部141における茎PT2と接触する箇所に凹凸を設けてもよい。
この凹凸が茎PT2と接触することにより適度に変形して切り欠き部141と茎PT2との隙間が出来るだけ小さくなる。
つまり、茎PT2を傷つけることなく、植物PTをサポートすることができる。
【0035】
さらに、本実施例では、栽培装置100が、浮力式水位計150をさらに備え、浮力式水位計150が、培養液用容器120の内部の培養液FLの水位WLを計るように構成されている。
具体的には、浮力式水位計150が、培養液用容器120の内部の培養液FLから上方へ延びて蓋部材140の貫通穴142を介して突出自在に設けられている。
これにより、培養液用容器120の内部の培養液FLの水位WLの変化に伴って浮力式水位計150の位置が変化して浮力式水位計150の上端の突出量が変わる。
その結果、ユーザが蓋部材140を開けずに培養液FLの水位WLを把握することができる。
【0036】
また、本実施例では、蓋部材140が、点検用開口143と、点検用開口143に対して着脱自在な開口用蓋144とを有している。
これにより、ユーザが培養液用容器120の内部を視認可能となる。
その結果、蓋部材140の全体を培養液用容器120から取り外すことなく容易に培養液用容器120の内部を確認して点検することができる。
さらに、点検用開口143を介して培養液FLを補給可能となる。
その結果、ユーザが蓋部材140の全体を培養液用容器120から取り外すことなく容易に培養液FLを補給することができる。
なお、点検用開口143の縁部は、下方へいくに従って開口面積が小さくなるように傾斜している。
他方、開口用蓋144の縁部は、上方へいくに従って蓋面積が大きくなるように傾斜している。
したがって、開口用蓋144が点検用開口143の内部に落ちてしまう虞がない。
【0037】
さらに、本実施例では、前述したように、植物支持体110が、脚部111を有して培養液用容器120の底部121と接触した状態で植物PTを支持している。
これにより、植物支持体110が蓋部材140に対して変位しない。
その結果、植物PTの枝や茎PT2が傷つくことを回避できる。
【0038】
また、栽培方法としては、本実施例の栽培装置100の構成を前提にして、シート状給液用導液材130が、培養液用容器120の内部の培養液FLを吸い上げる(培養液吸い上げ工程)。
そして、シート状給液用導液材130が、培養液吸い上げ工程で吸い上げた培養液FLを植物支持体110の上方の植物PTへ供給する(培養液供給工程)。
また、雨が降ったときに、蓋部材140が、雨水を蓋部材140の上から培養液用容器120の外側の下方へ案内する(雨水移動工程)。
【0039】
このようにして得られた本発明の第1実施例である栽培装置100は、植物PTを支持する植物支持体110と、培養液FLを貯える培養液用容器120と、培養液FLを植物PTへ導くシート状給液用導液材130と、培養液用容器120を覆う蓋部材140とを備え、シート状給液用導液材130の少なくとも一つの端部131が、培養液用容器120の内部の培養液FLに浸かるとともに、シート状給液用導液材130の中央部132が、植物支持体110の上に配設され、植物PTの根PT1が、シート状給液用導液材130の中央部132の上に設置され、蓋部材140が、培養液用容器120に対して着脱自在に培養液用容器120の長手方向Dに複数配設されているとともに、培養液用容器120の長手方向Dの端部に切り欠き部141を有し、隣り合う蓋部材140の切り欠き部141同士または切り欠き部141および端部が植物PTの茎PT2の周囲を囲っていることにより、雨が降ったときに雨水が培養液用容器120の内部に入ってしまうことを回避して微生物の発生や培養液FLの濃度が薄くなるなどの不都合を防止し、容易に蓋部材140を培養液用容器120から取り外すとともに、容易に培養液用容器120の内部を確認して点検することができる。
【0040】
さらに、培養液用容器120の内部の培養液FLの水位WLを計る浮力式水位計150をさらに備え、浮力式水位計150が、培養液用容器120の内部の培養液FLから上方へ延びて蓋部材140の貫通穴142を介して突出自在に設けられていることにより、ユーザが蓋部材140を開けずに培養液FLの水位WLを把握することができる。
【0041】
また、蓋部材140が、点検用開口143と、点検用開口143に対して着脱自在な開口用蓋144とを有していることにより、ユーザが蓋部材140の全体を培養液用容器120から取り外すことなく容易に培養液用容器120の内部を確認して点検するとともに培養液FLを補給することができる。
【0042】
さらに、植物支持体110が、培養液用容器120の底部121と接触した状態で植物PTを支持していることにより、植物PTの枝や茎PT2が傷つくことを回避できる。
【0043】
また、本発明の第1実施例である栽培方法は、植物支持体110と培養液用容器120とシート状給液用導液材130と培養液用容器120を覆う蓋部材140とを備え、蓋部材140が、培養液用容器120に対して着脱自在に培養液用容器120の長手方向Dに複数配設されているとともに、培養液用容器120の長手方向Dの端部に切り欠き部141を有し、隣り合う蓋部材140の切り欠き部141同士または切り欠き部141および端部が植物PTの茎PT2の周囲を囲っている構成の栽培装置100を用いた栽培方法であって、シート状給液用導液材130が、培養液用容器120の内部の培養液FLを吸い上げる培養液吸い上げ工程と、シート状給液用導液材130が、培養液吸い上げ工程で吸い上げた培養液FLを植物支持体110の上方の植物PTへ供給する培養液供給工程と、蓋部材140が、雨水を蓋部材140の上から培養液用容器120の外側の下方へ案内する雨水移動工程とを具備していることにより、雨が降ったときに雨水が培養液用容器120の内部に入ってしまうことを回避して微生物の発生や培養液FLの濃度が薄くなるなどの不都合を防止し、容易に蓋部材140を培養液用容器120から取り外すとともに、容易に培養液用容器120の内部を確認して点検することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0044】
続いて、本発明の第2実施例である栽培装置200について、図4および図5に基づいて説明する。
ここで、図4は、本発明の第2実施例の栽培装置200の概略を示す平面図であり、図5は、本発明の第2実施例の栽培装置200の概略を示す断面図である。
第2実施例の栽培装置200は、第1実施例の栽培装置100のシート状給液用導液材130の中央部132の上の植物PTの根PT1の上に防根シートを載置するとともに、蓋部材140の上に紐状の雨水用導水材を配設したものであり、多くの要素について第1実施例の栽培装置100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
【0045】
本発明の第2実施例である栽培装置200は、図4および図5に示すように、植物支持体210と、培養液用容器220と、シート状給液用導液材230と、蓋部材240とを備えている。
【0046】
本実施例では、植物PTの根PT1が、植物PTの根PT1の進入を防ぐ防根シート260によって包まれている。
技術的思想としては、植物PTの根PT1の進入を防ぐ防根シート260が、シート状給液用導液材230の中央部232の上の植物PTの根PT1の上に載置されていればよい。
これにより、植物PTの根PT1が防根シート260とシート状給液用導液材230との間に沿って成長する。
その結果、植物PTの根PT1が蓋部材240と絡まるように接触してしまうことを回避して蓋部材240が培養液用容器220に対して外せなくなってしまうことを回避できる。
【0047】
なお、植物PTの根PT1が、植物PTの根PT1の進入を防ぐ防根シート260によって包まれていることにより、植物PTの根PT1がシート状給液用導液材230の内部に入り込んでしまうことが回避される。
その結果、植物PTを持ち上げて容易にシート状給液用導液材230の中央部232から離して移動させることができる。
技術的思想としては、植物PTの根PT1の進入を防ぐ防根シート260が、シート状給液用導液材230の中央部232と、植物PTの根PT1との間に載置されていればよい。
【0048】
さらに、本実施例では、紐状の雨水用導水材270が、蓋部材240の上に配設されている。
そして、雨水用導水材270の一端271側が、互いに対向した切り欠き部241の上において植物PTの茎PT2と結ばれている。
他方、雨水用導水材270の他端272側が、蓋部材240の端部から培養液用容器220の外側へ延設されている。
これにより、蓋部材240の上で溜まろうとする雨水が表面張力や毛管現象によって雨水用導水材270に吸い寄せられるように移動して重力によって他端272側へ移動する。
その結果、蓋部材240の上の雨水を培養液用容器220の外側の下方へ流して雨水が培養液用容器220の内部に浸入することをより確実に回避できる。
【0049】
なお、植物支持体210を、一例として発泡スチロールで形成して、培養液用容器220の内部の培養液FLに浮かべてもよい。
そして、植物支持体210が、培養液用容器220の内部の培養液FLの上に浮かんだ状態で植物PTを支持する。
つまり、植物支持体210の浮力を利用して植物PTおよびシート状給液用導液材230を支持する構成としてもよい。
これにより、培養液FLの量に応じて植物支持体210が高さ方向に変位してシート状給液用導液材230が培養液FLと常に接触する。
その結果、培養液FLを植物PTの根PT1へ安定して供給することができる。
【0050】
このようにして得られた本発明の第2実施例である栽培装置200は、植物PTの根PT1の進入を防ぐ防根シート260をさらに備え、防根シート260が、シート状給液用導液材230の中央部232の上の植物PTの根PT1の上に載置されていることにより、植物PTの根PT1が蓋部材240と絡まるように接触することを回避して蓋部材240が培養液用容器220に対して外せなくなってしまうことを回避できる。
【0051】
また、防根シート260が、シート状給液用導液材230と蓋部材240との間において植物PTの根PT1を包み込んでいることにより、植物PTの根PT1が蓋部材240およびシート状給液用導液材230と絡まるように接触してしまうことを回避して蓋部材240が培養液用容器220に対して外せなくなることを回避でき、さらに、植物PTがシート状給液用導液材230に対して外せなくなることを回避して植物PTを栽培装置200から出して自由に持ち運ぶことができる。
【0052】
さらに、紐状の雨水用導水材270をさらに備え、雨水用導水材270が、蓋部材240の上に配設され、雨水用導水材270の一端271側が、互いに対向した切り欠き部241の上において植物PTの茎PT2と結ばれ、雨水用導水材270の他端272側が、蓋部材240の端部から培養液用容器220の外側へ延設されていることにより、蓋部材240の上の雨水を培養液用容器220の外側の下方へ流して雨水が培養液用容器220の内部に浸入することをより確実に回避できるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0053】
100、 200 ・・・ 栽培装置
110、 210 ・・・ 植物支持体
111、 211 ・・・ 脚部
120、 220 ・・・ 培養液用容器
121、 221 ・・・ 底部
122、 222 ・・・ 排液口
123、 223 ・・・ 給液口
130、 230 ・・・ シート状給液用導液材
131、 231 ・・・ 端部
132、 232 ・・・ 中央部
140、 240 ・・・ 蓋部材
140A、240A・・・ 左側蓋部材
140B、240B・・・ 中央蓋部材
140C、240C・・・ 右側蓋部材
141、 241 ・・・ 切り欠き部
142、 242 ・・・ 貫通穴
143、 243 ・・・ 点検用開口
144、 244 ・・・ 開口用蓋
150、 250 ・・・ 浮力式水位計
260 ・・・ 防根シート
270 ・・・ 雨水用導水材
271 ・・・ 一端
272 ・・・ 他端
PT ・・・ 植物
PT1・・・ 根
PT2・・・ 茎
FL ・・・ 培養液
WL ・・・ 水位
D ・・・ (培養液用容器の)長手方向
図1
図2
図3
図4
図5