特許第6558800号(P6558800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558800圧電アクチュエータおよび圧電式バルブシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558800
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータおよび圧電式バルブシステム
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/00 20060101AFI20190805BHJP
   F16K 31/02 20060101ALI20190805BHJP
   H01L 41/04 20060101ALI20190805BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H02N2/00
   F16K31/02 A
   H01L41/04
   H01L41/09
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-185455(P2015-185455)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-60356(P2017-60356A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】有井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
(72)【発明者】
【氏名】樋口 俊郎
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−185364(JP,A)
【文献】 特開2002−345264(JP,A)
【文献】 特開平06−177449(JP,A)
【文献】 特開2002−199748(JP,A)
【文献】 特開2013−124695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/00
F16K 31/02
H01L 41/04
H01L 41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電式バルブにそれぞれ対応して設けられ、電圧が印加されることにより所定の変位を生じ、対応する圧電式バルブを開閉させる複数の圧電素子と、
前記複数の圧電素子に電圧を印加する電源と、
前記複数の圧電素子のうち任意のものに選択的に前記電源から電圧を与えて駆動し、対応する前記圧電式バルブを開閉させる駆動回路と、
記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、
前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、圧電アクチュエータの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチと
有し、
前記異常検出回路は、
前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、
前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、
前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて異常判定を行う異常判定部と
を有することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記電圧検出部で検出された検出電圧値と、所定の閾値電圧とを比較する比較器を有し、比較器の信号から異常の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記電圧値に基づいて前記圧電素子に実際に異常が生じているか否か、または異常に至る前段階であるか否かを判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
複数の圧電式バルブにそれぞれ対応して設けられ、電圧が印加されることにより所定の変位を生じ、対応する圧電式バルブを開閉させる複数の圧電素子と、
前記複数の圧電素子に電圧を印加する電源と、
前記複数の圧電素子のうち任意のものに選択的に前記電源から電圧を与えて駆動し、対応する前記圧電式バルブを開閉させる駆動回路と、
記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、
前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、圧電アクチュエータの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチと、
有し、
前記異常検出回路は、
前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、
前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、
前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて前記圧電素子の抵抗値を算出する演算部と
を有することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記演算部により算出された前記圧電素子の抵抗値から、前記圧電素子に実際に異常が生じているか否か、または異常に至る前段階であるか否かを把握することを特徴とする請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記異常検出回路は、前記線路における前記抵抗器に基づく電圧の検出点の上流側に設けられた保護抵抗器をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記スイッチは、前記圧電アクチュエータの動作時に前記圧電素子の接地側端子を前記動作側線路に接続し、異常検出動作時に前記接地側の端子を前記異常検出回路に接続するように切り替えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記異常検出回路は前記圧電素子の接地側端子に接続されており、前記スイッチは、前記圧電アクチュエータの動作時に前記圧電素子の接地側端子を前記動作側線路に接続し、異常検出動作時に前記圧電素子の接地側端子を前記動作側線路から切り離すことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記動作側線路および前記異常検出回路は、前記複数の圧電素子に対して共通に設けられ、前記駆動回路により選択された前記圧電素子に対して前記異常検出回路により異常検出を行うことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
前記圧電式バルブは、光学検出手段により特定した粒状物を噴風により吹き飛ばす光学式粒状物選別機の噴風排出路の開閉に用いられることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項11】
前記圧電素子の変位を拡大する変位拡大機構をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項12】
光学検出手段により粒状物を選別し、選別した粒状物を噴風により吹き飛ばす光学式粒状物選別機に用いられる圧電式バルブシステムであって、
圧電素子に所定の変位を生じさせることにより噴風排出路の開閉を行う複数の圧電式バルブと、
前記複数の圧電式バルブに対応する複数の前記圧電素子に電圧を印加する電源と、
前記光学検出手段からの信号に基づいて、前記複数の圧電式バルブのうち対応するものの前記圧電素子に選択的に前記電源からの電圧を与えて駆動する駆動回路と、
前記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、
前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、前記バルブシステムの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側の端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチとを有し、
前記異常検出回路は、
前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、
前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、
前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて異常判定を行う異常判定部と
を有し、
前記異常検出回路が前記複数の圧電素子のうち対応するものに接続されるようにして、その圧電素子の異常検出を行うことを特徴とする圧電式バルブシステム。
【請求項13】
光学検出手段により粒状物を選別し、選別した粒状物を噴風により吹き飛ばす光学式粒状物選別機に用いられる圧電式バルブシステムであって、
圧電素子に所定の変位を生じさせることにより噴風排出路の開閉を行う複数の圧電式バルブと、
前記複数の圧電式バルブに対応する複数の前記圧電素子に電圧を印加する電源と、
前記光学検出手段からの信号に基づいて、前記複数の圧電式バルブのうち対応するものの前記圧電素子に選択的に前記電源からの電圧を与えて駆動する駆動回路と、
前記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、
前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、前記バルブシステムの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側の端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチとを有し、
前記異常検出回路は、
前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、
前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、
前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて前記圧電素子の抵抗値を算出する演算部と
を有し、
前記異常検出回路が前記複数の圧電素子のうち対応するものに接続されるようにして、その圧電素子の異常検出を行うことを特徴とする圧電式バルブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の変位を利用して所定の駆動動作を行う圧電アクチュエータ、およびそれを用いた圧電式バルブシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子に電圧を与えることにより印加電圧に応じた伸縮変位が生じる圧電アクチュエータは、エネルギー効率が高く、高速応答が可能であり、小型化、薄型化に適している等の優れた点を有しているため、種々の分野の駆動装置として適用されている。
【0003】
例えば、このような圧電アクチュエータを駆動機構として用いた圧電式バルブが、高速応答が可能なバルブとして知られており、このような圧電式バルブを光学式粒状物選別機に用いることが提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、圧電アクチュエータにおいて、圧電素子に異常が生じて正常な伸縮動作を行えなくなると、圧電バルブが正常な動作を行えなくなるため、圧電素子の異常を速やかに検出することが望まれる。
【0005】
特許文献2〜5には、圧電素子を含む駆動回路の異常を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4344164号公報
【特許文献2】特許第4741098号公報
【特許文献3】特許第2685200号公報
【特許文献4】特許第4651179号公報
【特許文献5】特開2002−246667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献2〜5は、圧電アクチュエータを適用した装置を稼働している際に圧電素子を含む駆動回路の断線や短絡等の異常を検出するものであり、圧電素子の異常を事前に検出することはできない。
【0008】
また、圧電素子は絶縁特性が徐々に劣化して異常が発生するため、異常の有無のみならず実際に異常となる前段階で絶縁性の劣化の状態を把握して事前に故障を予知することが望まれるが、上記特許文献2〜5では、圧電素子に異常が発生する前の絶縁性の劣化までは把握することができない。
【0009】
したがって、本発明は、圧電素子の異常を事前に検出することができ、また圧電素子の実際の異常に至る前段階の絶縁性の劣化をも検出することができる圧電アクチュエータ、およびそれを用いた圧電式バルブシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、複数の圧電式バルブにそれぞれ対応して設けられ、電圧が印加されることにより所定の変位を生じ、対応する圧電式バルブを開閉させる複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子に電圧を印加する電源と、前記複数の圧電素子のうち任意のものに選択的に前記電源から電圧を与えて駆動し、対応する前記圧電式バルブを開閉させる駆動回路と、前記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、圧電アクチュエータの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチと、を有し、前記異常検出回路は、前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて異常判定を行う異常判定部とを有することを特徴とする圧電アクチュエータを提供する。
【0011】
前記第1の観点の圧電アクチュエータにおいて、前記異常判定部は、前記電圧検出部で検出された検出電圧値と、所定の閾値電圧とを比較する比較器を有し、比較器の信号から異常の判定を行うことが好ましい。前記異常判定部は、前記電圧値に基づいて前記圧電素子に実際に異常が生じているか否か、または異常に至る前段階であるか否かを判定するようにすることができる。
【0012】
本発明の第2の観点は、複数の圧電式バルブにそれぞれ対応して設けられ、電圧が印加されることにより所定の変位を生じ、対応する圧電式バルブを開閉させる複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子に電圧を印加する電源と、前記複数の圧電素子のうち任意のものに選択的に前記電源から電圧を与えて駆動し、対応する前記圧電式バルブを開閉させる駆動回路と、前記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、圧電アクチュエータの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチと、を有し、前記異常検出回路は、前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて前記圧電素子の抵抗値を算出する演算部とを有することを特徴とする圧電アクチュエータを提供する。
【0013】
上記第2の観点の圧電アクチュエータにおいて、前記演算部により算出された前記圧電素子の抵抗値から、前記圧電素子に実際に異常が生じているか否か、または異常に至る前段階であるか否かを把握するようにすることができる。
【0014】
上記第1および第2の観点の圧電アクチュエータにおいて、前記異常検出回路は、前記線路における前記抵抗器に基づく電圧の検出点の上流側に設けられた保護抵抗器をさらに有することが好ましい。
【0015】
前記スイッチは、前記圧電アクチュエータの動作時に前記圧電素子の接地側端子を前記動作側線路に接続し、異常検出動作時に前記接地側の端子を前記異常検出回路に接続するように切り替えるようにすることができる。また、前記異常検出回路は前記圧電素子の接地側端子に接続されており、前記スイッチは、前記圧電アクチュエータの動作時に前記圧電素子の接地側端子を前記動作側線路に接続し、異常検出動作時に前記圧電素子の接地側端子を前記動作側線路から切り離すようにすることもできる。
【0016】
記動作側線路および前記異常検出回路は、前記複数の圧電素子に対して共通に設けられ、前記駆動回路により選択された前記圧電素子に対して前記異常検出回路により異常検出を行うようにすることできる。
【0017】
前記圧電式バルブは、光学検出手段により特定した粒状物を噴風により吹き飛ばす光学式粒状物選別機の噴風排出路の開閉に用いることができる。また、前記圧電素子の変位を拡大する変位拡大機構をさらに有してもよい。
【0018】
本発明の第3の観点は、光学検出手段により粒状物を選別し、選別した粒状物を噴風により吹き飛ばす光学式粒状物選別機に用いられる圧電式バルブシステムであって、圧電素子に所定の変位を生じさせることにより噴風排出路の開閉を行う複数の圧電式バルブと、前記複数の圧電式バルブに対応する複数の前記圧電素子に電圧を印加する電源と、前記光学検出手段からの信号に基づいて、前記複数の圧電式バルブのうち対応するものの前記圧電素子に選択的に前記電源からの電圧を与えて駆動する駆動回路と、前記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、前記バルブシステムの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側の端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチとを有し、前記異常検出回路は、前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて異常判定を行う異常判定部とを有し、前記異常検出回路が前記複数の圧電素子のうち対応するものに接続されるようにして、その圧電素子の異常検出を行うことを特徴とする圧電式バルブシステムを提供する。
【0019】
本発明の第4の観点は、光学検出手段により粒状物を選別し、選別した粒状物を噴風により吹き飛ばす光学式粒状物選別機に用いられる圧電式バルブシステムであって、圧電素子に所定の変位を生じさせることにより噴風排出路の開閉を行う複数の圧電式バルブと、前記複数の圧電式バルブに対応する複数の前記圧電素子に電圧を印加する電源と、前記光学検出手段からの信号に基づいて、前記複数の圧電式バルブのうち対応するものの前記圧電素子に選択的に前記電源からの電圧を与えて駆動する駆動回路と、前記圧電素子のそれぞれまたは2以上の接地側の端子に接続される一または複数の異常検出回路と、前記一または複数の異常検出回路に対応して設けられ、前記バルブシステムの動作時に前記複数の圧電素子のうち対応するものの接地側の端子を動作側線路に接続し、前記異常検出回路による異常検出時に前記圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態とするスイッチとを有し、前記異常検出回路は、前記圧電素子の前記接地側の端子に接続される接地された線路と、前記線路の途中に設けられ、前記圧電素子に対して直列に接続された抵抗器と、前記電源から前記圧電素子に電圧が印加された際の前記抵抗器に基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて前記圧電素子の抵抗値を算出する演算部とを有し、前記異常検出回路が前記複数の圧電素子のうち対応するものに接続されるようにして、その圧電素子の異常検出を行うことを特徴とする圧電式バルブシステムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧電アクチュエータの駆動回路とは別個に、圧電素子の接地側の端子に接続される異常検出回路を設け、異常検出回路による異常検出を圧電素子の接地側端子が前記動作側線路に接続されていない状態で圧電素子の絶縁異常の有無を検出することができる。このため、圧電アクチュエータを動作させる前に、異常検出回路により事前に圧電素子に絶縁劣化による異常が生じているか否かを把握することができる。これにより、圧電アクチュエータの動作中に圧電素子に異常が生じることを有効に防止することができる。
【0021】
また、圧電素子は、健全な状態では抵抗が高く接地漏れ電流は極めて小さいが、絶縁性が劣化していくと、劣化の度合いに応じて接地漏れ電流が大きくなるので、上述のように異常検出回路により接地漏れ電流に応じた電圧を検出して圧電素子の絶縁劣化を検出する構成とすること、または演算部で圧電素子の抵抗値を算出することにより、圧電素子に実際に異常が生じているか否かのみならず、異常となる前段階のわずかな絶縁性劣化をも検出することができ、事前に圧電素子の故障を予知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す概略図である。
図2】異常検出回路における異常判定部の構造例を示す図である。
図3】(a)は圧電素子が正常な場合の異常検出回路における検出電圧および比較器からの出力信号を示す図であり、(b)は圧電素子が絶縁不良を起こした場合の異常検出回路における検出電圧および比較器からの出力信号を示す図である。
図4】オープンの場合の異常検出回路における検出電圧および比較器からの出力信号を示す図である。
図5図1の変形例を示す図である。
図6図1の他の変形例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す概略図である。
図8】圧電アクチュエータの適用例としてのバルブシステムを有する光学式粒状物選別機を示す側断面図である。
図9図8のバルブシステムに適用される圧電式バルブの構造例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<圧電アクチュエータ>
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す概略図である。第1の実施形態の圧電アクチュエータ100は、光学検出手段により粒状物を選別し、選別した粒状物を噴風により吹き飛ばす光学式粒状物選別機に用いられるバルブシステムに適用することができる。
【0024】
圧電アクチュエータ100は、電圧が印加されることにより伸縮変位する4つの圧電素子41a,41b,41c,41dを有する圧電素子ユニット40を複数有している。光学式粒状物選別機に用いられる圧電式バルブシステムに適用される場合は、圧電素子ユニット40は例えば17個であり、圧電素子41a,41b,41c,41dは、それぞれ圧電式バルブの駆動部を構成し、これら4つの圧電式バルブが1つのケースに収納されて1つのバルブユニットを構成する。
【0025】
圧電素子41a,41b,41c,41dには、電源10から駆動回路20を介して例えば72Vの電圧が印加されるようになっている。駆動回路20は、圧電素子41a,41b,41c,41dのそれぞれに電圧を印加するための複数の電界効果型トランジスタ(FET)からなるスイッチング素子21を有している。なお、駆動回路20の詳細な構成は省略する。圧電素子は電圧を印加することにより所定の変位が生ずるものであれば使用可能であるが、板状の圧電体が電極を挟んで複数積層され、電圧の印加により伸縮変位が生じる積層型の圧電素子を好適に用いることができる。圧電材料は絶縁体(誘電体)であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O;PZT)を用いることができる。また、圧電素子41a,41b,41c,41dの変位を変位拡大機構で拡大するようにしてもよい。
【0026】
電源10からスイッチング素子21に至る線路には、ヒューズ抵抗11が設けられており、圧電素子が完全に短絡した場合はヒューズ抵抗11で検出することができる。
【0027】
また、駆動回路20等を制御する制御部30が設けられている。制御部30は、スイッチング素子21の動作タイミング等を制御するようになっている。
【0028】
圧電アクチュエータ100は、さらに、スイッチ50a,50bおよび異常検出回路60a,60bを有している。
【0029】
圧電素子ユニット40においては、圧電素子41a,41bが第1の組42となっており、第1の組42は、接地ライン51aおよび異常検出回路60aのいずれかに接続可能となっている。そして、これらの接続の切り替えはスイッチ50aにより行われるようになっている。また、圧電素子41c,41dが第2の組43となっており、第2の組43は、接地ライン51bおよび異常検出回路60bのいずれかに接続可能となっている。そして、これらの接続の切り替えはスイッチ50bにより行われるようになっている。なお、異常検出回路60a,60bは圧電素子の接地側の端子に接続される。
【0030】
また、スイッチ50a,50bは、制御部30により、圧電アクチュエータ100の動作時に、第1の組42および第2の組43を、それぞれ動作側線路である接地ライン51a,51bに接続し、異常検出動作時に第1の組42および第2の組43を、それぞれ異常検出回路60a,60bに接続するように制御される。スイッチ50a,50bは、電界効果型トランジスタ(FET)やリレーにより構成することができる。
【0031】
異常検出回路60aは、圧電素子41a,51bの接地側の端子に接続される接地された線路61aと、線路61aの途中に設けられ、圧電素子41a,41bに対して直列に接続された抵抗器62aと、抵抗器62aの上流側に接続された電圧検出線路63aと、電圧検出線路63aに接続され、抵抗器62aに基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて異常判定を行う異常判定部64aとを有する。電圧検出線路63aには抵抗器65aが設けられている。また、線路61aには、電圧検出線路63aの接続部の上流側に保護抵抗器66aが設けられている。抵抗器62aは例えば1.0MΩであり、保護抵抗器66aは例えば6.8MΩである。
【0032】
異常検出回路60bは、圧電素子41c,51dの接地側の端子に接続される接地された線路61bと、線路61bの途中に設けられ、圧電素子41c,41dに対して直列に接続された抵抗器62bと、抵抗器62bの上流側に接続された電圧検出線路63bと、電圧検出線路63bに接続され、抵抗器62bに基づく電圧を検出し、その電圧値に基づいて異常判定を行う異常判定部64bとを有する。電圧検出線路63bには抵抗器65bが設けられている。また、線路61bには、電圧検出線路63bの接続部の漏れ電流方向上流側に保護抵抗器66bが設けられている。抵抗器62bは例えば1.0MΩであり、保護抵抗器66bは例えば6.8MΩである。
【0033】
抵抗器62a,62bは、圧電素子41a,41b,41c,41dに例えば72Vの電圧を印加した場合に、圧電素子41a,41b,41c,41dで電圧降下した後の電圧を検出するためのものである。正常な圧電素子では500MΩ程度の大きな抵抗値であり電圧降下が大きいため、線路61a,61bには接地漏れ電流がほとんど流れず、電圧検出線路63a,63bを経て検出される電圧値は非常に低い値となる。これに対し、圧電素子の絶縁性が劣化した場合は、圧電素子での電圧降下が小さくなり、接地漏れ電流が流れるため、電圧検出線路63a,63bを経て検出される電圧値は大きくなる。異常判定部64aおよび64bでは、これを利用して圧電素子の絶縁劣化を検出する。
【0034】
この場合に、圧電素子の内部が完全に短絡して大電圧が直接異常判定部64a,64bにかかると回路が破壊されるおそれがあるため、保護抵抗器66a,66bを設けて電圧検出線路63a,63bに入力される電圧が低くなるようにしている。
【0035】
図2に示すように、異常判定部64aおよび64bは、それぞれ比較器71aおよび71bを有している。比較器71aは、電圧検出線路63aからの電圧Aと、所定の閾値電圧(+V)、例えば2.4Vとを比較し、電圧Aが閾値電圧以上の場合に出力信号がLとなり、電圧Aが閾値電圧よりも低い場合に出力信号がHとなる。比較器71bも同様である。
【0036】
例えば、圧電素子41a,41b,41cが正常で圧電素子41dが絶縁不良を起こした場合は、図3に示すようになる。すなわち、2つの圧電素子41a,41bの両方が正常な第1の組42に接続された異常検出回路60aにおいては、図3(a)に示すように、電圧検出線路63aからの電圧Aは、一旦閾値より高い値になった後、閾値より低い電圧に収束し、比較器71aの出力信号CはHとなる。一方、圧電素子41cが正常で圧電素子41dが絶縁不良を起こした第2の組43に接続された異常検出回路60bにおいては、図3(b)に示すように、電圧検出線路63bからの電圧Bは閾値より高い電圧に収束し、比較器71bの出力信号DはL(出力0)となる。したがって、出力信号がLとなった場合に圧電素子に絶縁劣化による異常が生じたと判断することができる。このとき、出力信号がLとなった場合に、ランプ等の表示装置や警報装置といった適宜の出力手段により出力することにより、圧電素子に絶縁劣化による異常が生じたことを速やかに把握することができる。
【0037】
また、オープンの場合は、図4に示すように、異常検出回路の検出電圧は閾値を超えることなく0のままであり、このような状態を検出することにより、断線やコネクタの差し忘れ等を検出することができる。
【0038】
さらに圧電素子が完全に短絡した場合は、上述したように、ヒューズ抵抗11で検出することができる。
【0039】
このような複数の圧電素子ユニット40の各々の圧電素子の組における異常検出は、スイッチを順次異常検出回路側に切り替えて順次行ってもよいし、スイッチを一括して異常検出回路側に切り替えて一括して行ってもよい。
【0040】
このように構成される圧電アクチュエータ100によれば、圧電アクチュエータ100を動作させる前に、スイッチ50a,50bを異常検出回路60a,60b側へ切り替えることにより、事前に圧電素子に絶縁劣化による異常が生じているか否かを把握することができる。このため、圧電アクチュエータ100の動作中に圧電素子に異常が生じることを有効に防止することができる。また、スイッチ50a,50bを異常検出回路60a,60b側へ切り替えるのみであるから、このように複数の圧電素子が存在する場合にも、圧電素子の絶縁劣化による異常の有無を速やかに把握することができ、異常が生じた圧電素子の特定も容易である。特に、スイッチを一括して異常検出回路側に切り替えて圧電素子の異常検出を一括して行うことにより、異常検出をより短時間で行うことができる。
【0041】
また、圧電素子が正常な場合には、500MΩ程度の大きな抵抗値であり電圧降下が大きいため、線路61a,61bには接地漏れ電流が極めて小さく、電圧検出線路63a,63bを経て検出される電圧値は非常に低い値となるのに対し、圧電素子の絶縁性が劣化した場合は、圧電素子での電圧降下が小さくなり、接地漏れ電流が流れるため、電圧検出線路63a,63bを経て検出される電圧値は大きくなる。これを利用することにより、適切な閾値電圧を設定すれば、圧電素子に実際に異常が生じているか否かのみならず、異常となる前段階のわずかな絶縁性劣化をも検出することができ、圧電素子の劣化の過程を監視することにより事前に圧電素子の故障を予知することができる。これにより、圧電アクチュエータを組み込んだ装置の動作中に圧電素子が壊れる事態が発生する前の適切なタイミングで圧電素子を交換することが可能となる。
【0042】
次に、第1の実施形態のいくつかの変形例について説明する。
上記図1の例では、圧電アクチュエータ100の動作時に、圧電素子の接地側端子を動作側線路である接地ライン51a,51bに接続し、異常検出動作時に圧電素子の接地側端子を異常検出回路60a,60bに接続するスイッチ50a,50bを用いているが、スイッチはこれに限らず、圧電アクチュエータ100の動作時に圧電素子の接地側端子を動作側線路に接続し、異常検出回路60a,60bによる異常検出時に圧電素子の接地側端子が動作側線路である接地ライン51a,51bに接続されていない状態とするものであればよい。例えば、図5に示すように、異常検出回路60a,60bを圧電素子の接地側端子に接続するようにした上で、圧電アクチュエータ100の動作時に圧電素子の接地側端子を動作側線路である接地ライン51a,51bに接続し、異常検出動作時に圧電素子の接地側端子を動作側線路である接地ライン51a,51bから切り離すように動作するスイッチ150a,150bを用いることもできる。
【0043】
また、上記図1の例では、動作側線路である接地ラインおよび異常検出回路を、圧電素子の組ごとに複数設けているが、これに限らず、図6に示すように、共通の接地ライン51および共通の検出回路60を設け、異常検出動作時にスイッチ150により圧電素子の接地側端子を動作側線路である接地ライン51から切り離した上で、駆動回路20のスイッチング素子21を制御して検出する圧電素子を順次切り替えるようにしてもよい。なお、図6において、検出回路60は、検出回路60a,60bと同様に構成され、線路61と、抵抗器62と、電圧検出線路63と、異常判定部64と、抵抗器65と、保護抵抗器66を有しており、これらはそれぞれ線路61a,61b、抵抗器62a,62b、電圧検出線路63a,63b、異常判定部64a,64b、抵抗器65a,65b、保護抵抗器66a,66bと同様である。また、図6において、スイッチ150の代わりに図1のスイッチ50a,50bと同様のスイッチを用いてもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す概略図である。第2の実施形態の圧電アクチュエータ100′は、基本構成は第1の実施形態の圧電アクチュエータ100と同様であるが、異常検出回路60a,60bが第1の実施形態の異常判定部64a,64bの代わりに演算部67a,67bを有している点のみが第1の実施形態と異なっている。したがって、第1の実施形態と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
演算部67aは、電圧検出線路63aに接続される。演算部67aでは、電圧検出線路63aからの電圧を検出し、その電圧から線路61aに流れる電流を算出し、これらと圧電素子41a,41bに印加される電圧、ならびに線路61aおよび圧電素子の給電ラインの既知の抵抗とから圧電素子41a,41bの抵抗値を演算する。
【0046】
また、演算部67bは電圧検出線路63bに接続される。演算部67bでは、電圧検出線路63bからの電圧を検出し、その電圧から線路61bに流れる電流を算出し、これらと圧電素子41c,41dに印加される電圧、ならびに線路61bおよび圧電素子の給電ラインの既知の抵抗とから圧電素子41c,41dの抵抗値を演算する。
【0047】
そして、演算部67a,67bの演算結果を適宜の表示部に表示させることにより、圧電素子の抵抗値を把握することができ、圧電素子の絶縁性の異常の有無、および絶縁劣化の程度を把握することができる。
【0048】
本実施形態の圧電アクチュエータ100′においても、圧電アクチュエータ100′を動作させる前に、スイッチ50a,50bを異常検出回路60a,60b側へ切り替えることにより、事前に圧電素子に絶縁劣化による異常が生じているか否かを把握することができる。このため、圧電アクチュエータ100′の動作中に圧電素子に異常が生じることを有効に防止することができる。また、スイッチ50a,50bを異常検出回路60a,60b側へ切り替えるのみであるから、このように複数の圧電素子が存在する場合にも、圧電素子の絶縁劣化による異常の有無を速やかに把握することができ、異常が生じた圧電素子の特定も容易である。特に、スイッチを一括して異常検出回路側に切り替えて圧電素子の異常検出を一括して行うことにより、異常検出をより短時間で行うことができる。
【0049】
また、演算部67a,67bにより、圧電素子41a,41b,41c,41dの抵抗値を算出することができるので、圧電素子の絶縁性の劣化を高精度で把握することができる。このため、圧電素子に実際に異常が生じているか否かのみならず、異常となる前段階のわずかな絶縁性劣化をも検出することができ、圧電素子の劣化の過程を監視することにより事前に圧電素子の故障を予知することができる。これにより、圧電アクチュエータを組み込んだ装置の動作中に圧電素子が壊れる事態が発生する前の適切なタイミングで圧電素子を交換することが可能となる。
【0050】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、図5および図6の変形例を適用することができる。
【0051】
<光学式粒状物選別機>
次に、上記圧電アクチュエータの適用例として、圧電アクチュエータを組み込んだ圧電式バルブシステムを有する光学式粒状物選別機について説明する。図8は、粒状物選別機200の内部構造を簡略化して示す要部側断面図である。
【0052】
粒状物選別機200は、上部にタンク202と振動フィーダ203とからなる粒状物供給部を有する。粒状物供給部の下方には所定幅を有する傾斜状シュート204が配置される。
【0053】
粒状物供給部から供給された粒状物は、傾斜状シュート204を連続状に自然流下した後、その下端部から所定落下軌跡に沿って空中に放出される。
【0054】
所定の落下軌跡の前後には、落下軌跡に沿った検出位置Oにおいて粒状物を撮像する少なくとも一対の光学検出装置205a,205bが対向して配設される。各光学検出装置205a,205bは、それぞれCCDラインセンサを内蔵するCCDカメラ等の撮像手段251a,251b、蛍光灯等からなる照明手段252a,252b、およびバックグラウンド253a,253b等から構成される。
【0055】
また、前記検出位置Oの下方には、不良品等をエアの噴風により除去する噴風装置207が配設される。噴風装置207は、複数のノズル孔を有する噴風ノズル271と、該噴風ノズル271に圧縮空気を送る圧縮空気供給装置272と、噴風を噴出するノズル孔を切り替えるための圧電式バルブシステム273とを備える。
【0056】
圧電式バルブシステム273は、圧電素子を有する複数の圧電式バルブ274と、電源275と、所定の圧電素子に電源275から電圧を印加し、伸縮動作をさせて圧電式バルブ274の開閉駆動を行うための駆動回路276と、駆動部276による圧電素子の伸縮動作のオンオフを制御する制御部277と、圧電素子の異常検出を行う複数の異常検出回路(図示せず)と、動作時に圧電素子の接地側端子を動作側線路に接続し、異常検出時に圧電素子の接地側の端子を異常検出回路に接続するように切り替える複数のスイッチ(図示せず)とを有する。異常検出回路およびスイッチは、第1の実施形態の圧電アクチュエータ100または第2の実施形態の圧電アクチュエータ100′における異常検出回路60a,60b、およびスイッチ50a,50bと同様に構成することができる。また、図5図6に示す変形例も適用することができる。
【0057】
圧電式バルブ274は、図9(a)の閉弁時における側面図および(b)の正面図に示すように、圧縮空気供給装置272から圧縮空気の供給を受ける圧力室311および圧力室311内の気体を外部に噴出する気体排出路312を有するバルブ本体301と、圧力室311内に配置され排出路312を開閉する弁体302と、バルブ本体301内に配置され当該バルブ本体301に一端が固定される圧電素子303と、気体圧力室311内に配置され圧電素子303の変位を拡大して弁体302に作用させる変位拡大機構304とを有している。圧電素子303は上述した駆動回路276により電源275からの電圧が印加されることにより駆動され、弁体302が開閉駆動される。そして、気体排出路312の圧力室311側に突出して形成される弁座305に対し弁体302を離間または着座させることで当該バルブの開閉を行う。
【0058】
変位拡大機構304は、圧電素子303の長手方向軸線と排出路312とを結ぶ線(以下、「中心線」という。)に対し対称に第1部分304aと第2部分304bとを有している。
【0059】
変位拡大機構304の第1部分304aは、第1ヒンジ306a、第2ヒンジ307a、第1アーム部材308aおよび第1板ばね209aで構成される。第1ヒンジ306aの一端はバルブ本体301に接合される。第2ヒンジ307aの一端は圧電素子303に取り付けられるキャップ部材331に接合される。第1ヒンジ306aおよび第2ヒンジ307aの各他端は、第1アーム部材308aの基部に接合される。第1アーム部材308aは、弁体302の方向に向けて中心線から離れる方向に延びており、その先端部分に第1板ばね309aの一端が接合される。第1板ばね309aの他端は弁体302の一方側に接合される。
【0060】
一方、変位拡大機構304の第2部分304bは、第3ヒンジ306b、第4ヒンジ307b、第2アーム部材308bおよび第2板ばね309bで構成される。第3ヒンジ306bの一端はバルブ本体301に接合される。第4ヒンジ307bの一端は圧電素子303に取り付けられるキャップ部材331に接合される。第3ヒンジ306bおよび第4ヒンジ307bの各他端は、第2アーム部材308bの基部に接合される。第2アーム部材308bは、弁体302の方向に向けて中心線から離れる方向に延びており、その先端部分に第2板ばね309bの一端が接合される。第2板ばね309bの他端は弁体302の他方側に接合される。
【0061】
このような構成の4つの圧電式バルブ274が1つのケースに収納されて1つのバルブユニットを構成し、圧電式バルブシステム273はこのようなバルブユニットを複数、例えば17個有している。
【0062】
なお、図中281は不良品排出口であり、282は良品排出口である。
【0063】
次に、このように構成される光学式粒状物選別機200の動作について説明する。
粒状物供給部から供給された粒状物は、斜状シュート204を幅方向に広がって連続状に自然流下した後、その下端から所定の落下軌跡に沿って空中に放出される。そして、放出された粒状物は、粒状物検出位置Oにおいて各光学検出装置205a,205bの撮像手段251a,251bにより撮像され、当該撮像データが噴風装置270における圧電式バルブシステム273の制御部277に送られる。制御部270は、撮像データに基づいて不良品等の除去すべき粒状物を特定するとともに当該粒状物の大きさ等に関する情報を取得し、不良品等の排除信号を駆動回路276に送る。
【0064】
駆動回路276は、送られてきた排除信号に基づいて圧電式バルブシステム273における複数の圧電式バルブ274を選択的に駆動し、傾斜状シュート240の幅方向に平行に直線状に延びる粒状物排除位置Eを通過する不良品等に対し、該幅方向の各位置に対応して設けられる噴風ノズル271の各ノズル孔からエアを噴風する。
【0065】
そして、噴風ノズル271の各ノズル孔からの噴風により吹き飛ばされた不良品等は、不良品排出口281から機外に排出される。また、噴風により吹き飛ばされることなく所定の落下軌跡をそのまま通過した良品等は、良品排出口282から回収される。
【0066】
このとき、圧電式バルブ274においては、図9(a)の閉状態において駆動回路276により電源275からの電圧が圧電素子303に印加されると、圧電素子303は図面上右方向に伸長する。この伸長に伴い、変位拡大機構304の第1部分304aでは、第2ヒンジ307aが力点、第1ヒンジ306aが支点、第1アーム部材308aの先端部が作用点として作用し、第1アーム部材308aの先端部には、圧電素子303の変位量がテコの原理により拡大されて現れる。同様に、第2部分304bでは、第4ヒンジ307bが力点、第3ヒンジ306bが支点、第2アーム部材308bの先端部が作用点として作用し、第2アーム部材308bの先端部には、圧電素子303の変位量が拡大されて現れる。
【0067】
そして、第1アーム部材308aおよび第2アーム部材308bの各先端部を離間させる方向に拡大されて現れた変位は、第1板ばね309aおよび第2板ばね309bを介して弁体302を弁座305から十分な距離離間させ、両者間に大きな間隙を生じさせる。これにより圧電式バルブ274は開弁され、十分な量の空気が圧力室311から排出路312を通して噴風ノズル271のノズル孔へ導かれ、ノズル孔から噴風される。
【0068】
一方、圧電式バルブ274は、駆動回路276からの駆動信号が解除されて電圧の印加が停止されると伸長した状態から電圧印加前の状態まで収縮し、弁体302が弁座305に着座する。このとき、圧電式バルブ274には第1板ばね309aおよび第2板ばね309bのばねとしての復帰力も弁体302に作用するため、弁体302は弁座305に確実に着座させることができる。
【0069】
このように、圧電式バルブ274を複数有する圧電式バルブシステム273においては、複数の圧電式ノズルが圧電素子303により頻繁に開閉される。したがって、従来のように異常検出回路が存在しない場合には、動作中に圧電素子303に異常が生じた場合に不良品等の排除が十分に行われない事態が生じ、装置を停止してどの圧電式ノズル274が異常かを特定した後、圧電素子の交換等を行う必要があった。
【0070】
これに対して、本例の光学式粒状物選別機200の圧電式バルブシステム273では、圧電素子を有する複数の圧電式バルブ274と、電源275と、所定の圧電素子に電源275から電圧を印加し、伸縮動作をさせて圧電式バルブ274の開閉駆動を行うための駆動回路276と、駆動回路276による圧電素子の伸縮動作のオンオフを制御する制御部277とを有する他、第1の実施形態の圧電アクチュエータ100または第2の実施形態の圧電アクチュエータ100′における異常検出回路60a,60b、およびスイッチ50a,50bと同様の構成の異常検出回路およびスイッチを備えている。すなわち、圧電式バルブシステム273に第1の実施形態の圧電アクチュエータ100または第2の実施形態の圧電アクチュエータ100′が組み込まれている。
【0071】
このため、光学式粒状物選別機200を動作させる前、すなわち圧電式バルブシステム273を動作させる前に、異常検出回路により、事前に複数の圧電式バルブ274の圧電素子303に絶縁劣化による異常が生じているか否かを簡単な動作で把握することができる。これにより、動作中に圧電素子に異常が生じることを有効に防止することができ、しかも複数の圧電式バルブ274のうちの異常が生じた圧電素子の特定も容易である。
【0072】
また、異常検出回路を設けることにより、圧電素子に実際に異常が生じているか否かのみならず、異常となる前段階のわずかな絶縁性劣化をも検出することができ、圧電素子の劣化の過程を監視することにより事前に圧電素子の故障を予知することができる。これにより、光学式粒状物選別機200の動作中に圧電式バルブシステム273の圧電式バルブ274に用いられている圧電素子が壊れる事態が発生する前の適切なタイミングで圧電素子を交換することが可能となる。
【0073】
<他の適用>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、本発明に係る圧電アクチュエータの適用例として光学式粒状物選別機の圧電式バルブシステムを挙げたが、これに限るものではなく、駆動機構として圧電素子を用いるものであれば適用可能である。また、上記実施形態では複数の圧電素子を用い、2つの圧電素子ごとに異常検出回路により圧電素子の異常を検出する圧電アクチュエータを例示したが、1つの圧電素子ごとに異常検出回路を設けてもよい。また、複数の圧電素子を有する場合に限らず一つの圧電素子のみを有する圧電アクチュエータであってもよい。
【0074】
また、変位拡大機構についても図9に示す構造に限定されるものではなく、ヒンジとアームを種々に組み合わせた種々のタイプの変位拡大機構を用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
10;電源
11;ヒューズ抵抗
20;駆動回路
21;スイッチング素子
30;制御部
40;圧電素子ユニット
41a,41b,41c,41d;圧電素子
50a,50b,150,150a,150b;スイッチ
51a,51b;接地ライン
60,60a,60b;異常検出回路
61a,61b;線路
62a,62b;抵抗器
63a,63b;電圧検出線路
64a,64b;異常判定部
66a,66b;保護抵抗器
67a,67b;演算部
71a,71b;比較器
100,100′;圧電アクチュエータ
200;光学式粒状物選別機
205a,205b;光学検出装置
207;噴風装置
271;噴風ノズル
272;圧縮空気供給装置
273;バルブシステム
274;圧電式バルブ
275;電源
276;駆動部(駆動回路)
277;制御部
301;バルブ本体
302;弁体
303;圧電素子
304;変位拡大機構
305;弁座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9