特許第6558801号(P6558801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558801
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】染色方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/12 20060101AFI20190805BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20190805BHJP
   D06P 5/20 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   D06P5/12 101
   D06P5/30
   D06P5/20 D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-213049(P2015-213049)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-82362(P2017-82362A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−039797(JP,B1)
【文献】 特開2012−087422(JP,A)
【文献】 特開平06−294079(JP,A)
【文献】 特開平04−338580(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0066145(US,A1)
【文献】 特開2004−306469(JP,A)
【文献】 特開2013−193321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P
B41M
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛が染色液によって染色されることを防止するための防染剤をインクジェットプリンターによって前記布帛の一部に印刷する防染剤印刷工程と、
前記布帛のうち前記防染剤印刷工程によって前記防染剤が印刷された防染部分の周囲の部分を前記染色液によって染色する防染部分周囲染色工程と、
前記防染部分周囲染色工程によって染色された前記布帛の前記防染部分から前記防染剤を除去液によって溶かして除去する防染剤除去工程とを備え、
前記防染剤は、硬化後において酸塩基性が特定の範囲内の水溶液に溶けるUV硬化型インクであり、
前記除去液は、酸塩基性が前記特定の範囲内の水溶液であり、
前記染色液は、前記除去液と比較して前記防染剤を溶かし難い酸塩基性の水溶液であり、
前記防染剤印刷工程は、前記布帛に前記防染剤を塗布した後、前記布帛に塗布された前記防染剤に紫外線を照射して前記防染剤を硬化させることによって、前記布帛に印刷する工程であることを特徴とする染色方法。
【請求項2】
前記防染部分周囲染色工程は、前記防染剤印刷工程によって前記防染剤が印刷された前記布帛を前記染色液に浸漬することによって前記周囲の部分を前記染色液によって染色する工程であることを特徴とする請求項1に記載の染色方法。
【請求項3】
前記防染部分周囲染色工程は、前記周囲の部分にインクジェットプリンターによって前記染色液を印刷することによって前記周囲の部分を前記染色液によって染色する工程であることを特徴とする請求項1に記載の染色方法。
【請求項4】
前記防染剤は、硬化後において中性またはアルカリ性の水溶液に溶けるUV硬化型インクであることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の染色方法。
【請求項5】
前記防染剤は、色材を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の染色方法。
【請求項6】
前記防染剤印刷工程は、前記布帛の前記一部に前記防染剤を印刷する前に、前記布帛の前記一部にインクジェットプリンターによって捺染インクを印刷する工程であることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れかに記載の染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛のうち防染剤による防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防染剤を布帛の一部に手書で塗布した後、防染剤が塗布された布帛を染色液に浸漬することによって、布帛のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する染色方法が知られている。しかしながら、この染色方法は、防染剤による布帛への描画が手書きであるので、防染剤による布帛への描画に習熟が必要であり、誰でも簡単に実行することができるものではないという問題がある。また、防染剤による布帛への描画が手書きであるので、たとえ防染剤による布帛への描画に習熟した者であっても、同じ製品を繰り返し製造することが困難であるという問題もある。
【0003】
そこで、このような問題を解決する染色方法として、従来、防染剤を布帛の一部に手書ではなくスクリーン印刷によって塗布する染色方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−346383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防染剤を布帛の一部にスクリーン印刷によって塗布する従来の染色方法においては、版を作成する必要があるので、作業性が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、高品質の製品を効率良く製造することができる染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の染色方法は、布帛が染色液によって染色されることを防止するための防染剤をインクジェットプリンターによって前記布帛の一部に印刷する防染剤印刷工程と、前記布帛のうち前記防染剤印刷工程によって前記防染剤が印刷された防染部分の周囲の部分を前記染色液によって染色する防染部分周囲染色工程と、前記防染部分周囲染色工程によって染色された前記布帛の前記防染部分から前記防染剤を除去液によって溶かして除去する防染剤除去工程とを備え、前記防染剤は、酸塩基性が特定の範囲内の水溶液に溶けるUV硬化型インクであり、前記除去液は、酸塩基性が前記特定の範囲内の水溶液であり、前記染色液は、前記除去液と比較して前記防染剤を溶かし難い酸塩基性の水溶液であることを特徴とする。
【0008】
この構成により、本発明の染色方法は、UV硬化型インクによるインクジェット印刷によって防染剤を布帛の一部に高精度に塗布するので、高品質の製品を効率良く製造することができる。
【0009】
本発明の染色方法において、前記防染部分周囲染色工程は、前記防染剤印刷工程によって前記防染剤が印刷された前記布帛を前記染色液に浸漬することによって前記周囲の部分を前記染色液によって染色する工程であっても良い。
【0010】
この構成により、本発明の染色方法は、布帛を染色液に浸漬することによって布帛のうち防染部分の周囲の部分に染色液を均一に行き渡らせるので、布帛のうち防染部分の周囲の部分をインクジェットプリンターによって染色液で染色する方法と比較して、布帛のうち防染部分の周囲の部分を均一に染色することができる。
【0011】
本発明の染色方法において、前記防染部分周囲染色工程は、前記周囲の部分にインクジェットプリンターによって前記染色液を印刷することによって前記周囲の部分を前記染色液によって染色する工程であっても良い。
【0012】
この構成により、本発明の染色方法は、布帛のうち防染部分の周囲の部分をインクジェットプリンターによって染色液で染色するので、布帛を染色液に浸漬することによって布帛のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する方法と比較して、布帛のうち防染部分の周囲の部分を少量の染色液によって染色することができる。
【0013】
本発明の染色方法において、前記防染剤は、中性またはアルカリ性の水溶液に溶けるUV硬化型インクであっても良い。
【0014】
この構成により、本発明の染色方法は、一般的な染色液である酸性の水溶液によって防染剤が溶けることを抑えるので、布帛のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する際に布帛のうち防染部分が染色液によって染色されることを防染剤によって防止することができる。
【0015】
本発明の染色方法において、前記防染剤は、色材を含んでも良い。
【0016】
この構成により、本発明の染色方法は、布帛のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する際に布帛のうち防染部分が染色液によって染色されることを防止することと、布帛のうち防染部分を染色することとの両方を、同一の防染部分によって実現するので、作業性を向上することができる。
【0017】
本発明の染色方法において、前記防染剤印刷工程は、前記布帛の前記一部に前記防染剤を印刷する前に、前記布帛の前記一部にインクジェットプリンターによって捺染インクを印刷する工程であっても良い。
【0018】
この構成により、本発明の染色方法は、布帛のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する際に布帛のうち防染部分が染色液によって染色されることを防止することができるとともに、布帛のうち防染部分を捺染インクによって染色することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の染色方法は、高品質の製品を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る染色方法の流れのフローチャートである。
図2図1に示す防染部分周囲染色工程のフローチャートである。
図3】(a)図1に示す染色方法に使用されるインクジェットプリンターの一部の正面図である。 (b)図3(a)に示すインクジェットプリンターの一部の側面図である。
図4図1に示す防染剤印刷工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図5図2に示す布帛浸漬工程に使用される容器の一部の正面断面図である。
図6図2に示す布帛浸漬工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図7図2に示す布帛染色工程に使用される装置の一部の正面断面図である。
図8図2に示す布帛染色工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図9図1に示す防染剤除去工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る染色方法に使用されるインクジェットプリンターの一部の正面図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に係る染色方法における防染剤印刷工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施の形態に係る染色方法における布帛浸漬工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係る染色方法における布帛染色工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図14】本発明の第2の実施の形態に係る染色方法における防染剤除去工程の直後の布帛の一例を示す図である。
図15】本発明の第3の実施の形態に係る染色方法における防染部分周囲染色工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態に係る染色方法の流れについて説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る染色方法の流れのフローチャートである。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る染色方法は、布帛が染色液によって染色されることを防止するための防染剤をインクジェットプリンターによって布帛の一部に印刷する防染剤印刷工程(S11)と、布帛のうちS11の防染剤印刷工程によって防染剤が印刷された防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する防染部分周囲染色工程(S12)と、S12の防染部分周囲染色工程によって染色された布帛の防染部分から防染剤を除去液によって溶かして除去する防染剤除去工程(S13)とを備えている。
【0025】
図2は、S12の防染部分周囲染色工程のフローチャートである。
【0026】
図2に示すように、防染部分周囲染色工程は、S11の防染剤印刷工程によって防染剤が印刷された布帛を染色液に浸漬する布帛浸漬工程(S21)と、S21の布帛浸漬工程において布帛に染み込ませた染色液によって布帛を染色する布帛染色工程(S22)とを備えている。
【0027】
なお、本実施の形態に係る染色方法において使用される布帛は、無地であっても良いし、無地でなくても良い。例えば、布帛は、淡色の地染めがあるものであっても良いし、地模様があるものであっても良い。
【0028】
次に、S11の防染剤印刷工程について説明する。
【0029】
図3(a)は、本実施の形態に係る染色方法に使用されるインクジェットプリンター30の一部の正面図である。図3(b)は、インクジェットプリンター30の一部の側面図である。
【0030】
図3に示すように、インクジェットプリンター30は、布帛50が染色液によって染色されることを防止するための防染剤41aを布帛50に向けて吐出するインクジェットヘッド41を備えている。ここで、防染剤41aは、アルカリ性の水溶液にのみ溶けるアルカリ水溶性UV(ultraviolet)硬化型インクである。また、防染剤41aは、色材を含んでいない。
【0031】
インクジェットプリンター30は、インクジェットヘッド41によって布帛50に塗布された防染剤41aに紫外線31aを照射するUV照射器31と、インクジェットヘッド41およびUV照射器31を搭載するキャリッジ32とを備えている。
【0032】
インクジェットプリンター30は、布帛50の長さ方向である矢印30aで示す方向においてキャリッジ32および布帛50が相対的に移動するようにキャリッジ32および布帛50の少なくとも一方を移動させる図示していない第1の移動装置と、矢印30aで示す方向に直交する矢印30bで示す方向においてキャリッジ32および布帛50が相対的に移動するようにキャリッジ32および布帛50の少なくとも一方を移動させる図示していない第2の移動装置とを備えている。
【0033】
S11の防染剤印刷工程においては、防染部分の印刷データに基づいて、インクジェットプリンター30によって布帛50に防染剤41aで防染部分を印刷する。具体的には、インクジェットプリンター30は、インクジェットヘッド41によって防染剤41aを布帛50に向けて吐出した後、矢印30bで示す方向においてキャリッジ32および布帛50を第2の移動装置によって相対的に移動させて、インクジェットヘッド41によって布帛50に塗布された防染剤41aにUV照射器31によって紫外線31aを照射することによって、布帛50で防染剤41aを硬化させる。すなわち、インクジェットプリンター30は、矢印30aで示す方向における布帛50上の特定の位置において、矢印30bで示す方向における印刷を実行する。そして、インクジェットプリンター30は、矢印30bで示す方向における印刷を実行する度に、矢印30aで示す方向においてキャリッジ32および布帛50を第1の移動装置によって相対的に移動させて、矢印30bで示す方向における印刷を実行することによって、布帛50に防染剤41aで防染部分を印刷する。
【0034】
図3においては、布帛50上に、矢印30aで示す方向と、矢印30bで示す方向との両方に直交する矢印30cで示す布帛50の厚み方向において未硬化の防染剤41aが行き渡った部分50aと、部分50aがUV照射器31による紫外線31aの照射によって硬化された部分、すなわち、防染部分50bとを示している。
【0035】
S11の防染剤印刷工程においては、矢印30cで示す布帛50の厚み方向において、布帛50の全体に防染剤41aが行き渡るように、インクジェットヘッド41から十分な量の防染剤41aが布帛50に向けて吐出される。そして、S11の防染剤印刷工程においては、布帛50の全体に防染剤41aが行き渡るように、UV照射器31による紫外線31aの照射のタイミングと、UV照射器31による紫外線31aの照射の強度とが調整される。すなわち、インクジェットヘッド41によって布帛50に防染剤41aが塗布された後、この防染剤41aが矢印30cで示す方向において布帛50の全体に行き渡る前に、この防染剤41aに向けてUV照射器31によって紫外線31aが照射されると、防染剤41aが矢印30cで示す方向において布帛50の全体に行き渡る前に硬化される可能性がある。特に、UV照射器31による紫外線31aの照射の強度が強いと、防染剤41aが矢印30cで示す方向において布帛50の全体に行き渡る前に硬化される可能性が高まる。
【0036】
なお、S11の防染剤印刷工程においては、布帛50の片面から防染剤41aによって防染部分50bを印刷しても良いが、布帛50の両面から防染剤41aによって防染部分50bを印刷しても良い。布帛50の両面から防染剤41aによって防染部分50bを印刷する場合、矢印30cで示す方向において厚い布帛50であっても、防染剤41aを矢印30cで示す方向において布帛50の全体に容易に行き渡らせることが可能である。S11の防染剤印刷工程においては、インクジェットプリンター30によって防染剤41aを印刷するので、両面の印刷位置を高精度に合わせることが可能である。
【0037】
図4は、S11の防染剤印刷工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0038】
図4に示すように、布帛50は、防染部分50bが形成されている。
【0039】
次に、S21の布帛浸漬工程について説明する。
【0040】
図5は、S21の布帛浸漬工程に使用される容器60の一部の正面断面図である。
【0041】
図5に示すように、S21の布帛浸漬工程においては、容器60に染色液60aが溜められている。染色液60aは、色材を含んでいる酸性の水溶液であって捺染インクである。染色液60aには、色材を布帛50の繊維に定着させるための媒染剤や助剤などの物質が必要に応じて添加されている。
【0042】
ここで、容器60中の染色液60aは、布帛50に均一に染み込ませるために温められることによって流動性が上げられていることが好ましい。染色液60aは、温められることによって、色材の溶解度も上がる。容器60中の染色液60aは、例えば常温で十分な流動性が確保可能である場合には、常温であっても良い。
【0043】
S21の布帛浸漬工程においては、S11の防染剤印刷工程によって防染部分50bが形成された布帛50を図5に示すように染色液60aに浸漬することによって、布帛50に染色液60aを十分に染み込ませる。ここで、防染部分50bの防染剤は、上述したようにアルカリ性の水溶液にのみ溶けるので、酸性の水溶液である染色液60aには溶けない。したがって、防染部分50bの防染剤は、布帛50のうち防染部分50bに染色液60aが浸み込むことを防止することができる。
【0044】
S21の布帛浸漬工程においては、布帛50を染色液60aに複数回浸漬しても良い。浸漬の回数が多いほど、布帛50に染み込む染色液60aの濃度を上げることができる。
【0045】
図6は、S21の布帛浸漬工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0046】
図6に示すように、布帛50は、防染部分50bと、染色液60a(図5参照。)が浸み込んだ染色予定部分50cとが形成されている。
【0047】
次に、S22の布帛染色工程について説明する。
【0048】
図7は、S22の布帛染色工程に使用される装置70の一部の正面断面図である。
【0049】
図7において、装置70は、布帛50を蒸熱(または加熱)することが可能であるオーブンなどの装置である。
【0050】
S22の布帛染色工程においては、S21の布帛浸漬工程において染色液60aを染み込ませた布帛50を図7に示すように装置70内に収納した後、装置70によって布帛50を蒸熱(または加熱)することによって、布帛50の染色予定部分50c中の色材を発色させる。例えば、染色予定部分50c中の色材が染料であり、染色予定部分50c中に媒染剤や助剤などの物質が含まれる場合には、色材は、媒染剤や助剤などの物質のアシストを受けて布帛50の繊維と反応して発色する。
【0051】
なお、S22の布帛染色工程においては、色材を発色させた後、色材を布帛50に定着させる必要がある場合には、色材を布帛50に定着させる定着剤を添加した液に布帛50を浸すことによって、色材を布帛50に定着させても良い。
【0052】
図8は、S22の布帛染色工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0053】
図8に示すように、布帛50は、防染部分50bと、染色液60a(図5参照。)によって染色された染色部分50dとが形成されている。
【0054】
次に、S13の防染剤除去工程について説明する。
【0055】
S13の防染剤除去工程においては、S22の布帛染色工程において発色させられた布帛50を除去液によって洗浄することによって、防染部分50bの防染剤を除去液によって溶かして除去する。ここで、除去液は、炭酸ソーダ水や苛性ソーダ水など、例えばpHが9を超えるアルカリ性の水溶液である。防染部分50bの防染剤は、上述したようにアルカリ性の水溶液に溶けるので、除去液によって布帛50から除去されることが可能である。
【0056】
S13の防染剤除去工程においては、布帛50から防染剤を除去液によって除去した後、除去液を布帛50から除去するために水で洗浄してから布帛50を乾燥させる。
【0057】
なお、S13の防染剤除去工程においては、除去液を布帛50から除去するために水で洗浄した後、色材を布帛50に定着させる必要がある場合には、色材を布帛50に定着させる定着剤を添加した液に布帛50を浸すことによって、色材を布帛50に定着させても良い。S22の布帛染色工程における定着の処理と、S13の防染剤除去工程における定着の処理とは、何れか一方が実行されるだけでも良い。
【0058】
図9は、S13の防染剤除去工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0059】
図9に示すように、布帛50は、染色部分50dが形成されている。
【0060】
以上に説明したように、本実施の形態に係る染色方法は、UV硬化型インクによるインクジェット印刷によって防染剤41aを布帛50の一部に高精度に塗布するので、高品質の製品を効率良く製造することができる。したがって、本実施の形態に係る染色方法は、防染剤を布帛の一部に手書やスクリーン印刷によって塗布する従来の染色方法に代えて実施されることが可能である。また、本実施の形態に係る染色方法は、従来の絞り染めに代えて実施されることも可能である。
【0061】
防染剤を布帛の一部にスクリーン印刷によって塗布する従来の染色方法においては、版の作成によるコストアップの関係で、多品種少量生産には適していない。しかしながら、本実施の形態に係る染色方法は、防染剤41aを布帛50の一部にインクジェット印刷によって塗布するので、多品種少量生産であっても安価に製品を製造することができる。
【0062】
本実施の形態に係る染色方法は、UV硬化型インクによるインクジェット印刷によって防染剤41aを布帛50の一部に塗布するので、布帛50に前処理が施されていなくても、防染剤41aが滲むことなく高精度に塗布されることが可能である。
【0063】
本実施の形態に係る染色方法によって染色された布帛50は、ハンカチ、スカーフ、ドレス、シャツ、カーテン、シーツ、暖簾など、様々な布製品に採用されることが可能である。
【0064】
本実施の形態に係る染色方法は、布帛50を染色液60aに浸漬することによって布帛50のうち防染部分50bの周囲の部分に染色液60aを均一に行き渡らせるので、後述する第3の実施の形態のように布帛50のうち防染部分50bの周囲の部分をインクジェットプリンターによって染色液で染色する方法と比較して、布帛50のうち防染部分50bの周囲の部分を均一に染色することができる。
【0065】
本実施の形態に係る染色方法は、防染剤41aがアルカリ性の水溶液に溶けるUV硬化型インクであるので、一般的な染色液である酸性の水溶液によって防染部分50bの防染剤が溶けることを抑えることができる。したがって、本実施の形態に係る染色方法は、布帛50のうち防染部分50bの周囲の部分を染色液によって染色する際に布帛50のうち防染部分50bが染色液によって染色されることを防染剤によって防止することができる。
【0066】
なお、除去液は、本実施の形態に係る染色方法においてアルカリ性の水溶液であるが、酸塩基性が特定の範囲内の水溶液に溶けるUV硬化型インクが防染剤である場合に、酸塩基性が特定の範囲内の水溶液であれば良い。また、染色液は、本実施の形態に係る染色方法において酸性の水溶液であるが、除去液と比較して防染剤を溶かし難い酸塩基性の水溶液であれば良い。
【0067】
例えば、塩基性の強度が特定の強度以上のアルカリ性の水溶液に溶けるUV硬化型インクが防染剤である場合、除去液は、塩基性の強度が特定の強度以上のアルカリ性の水溶液であれば良い。この場合、染色液は、塩基性の強度が特定の強度未満のアルカリ性の水溶液、中性の水溶液、および、酸性の水溶液の何れかであると好ましい。
【0068】
また、酸性の強度が特定の強度以上の酸性の水溶液に溶けるUV硬化型インクが防染剤である場合、除去液は、酸性の強度が特定の強度以上の酸性の水溶液であれば良い。この場合、染色液は、酸性の強度が特定の強度未満の酸性の水溶液、中性の水溶液、および、アルカリ性の水溶液の何れかであると好ましい。
【0069】
本実施の形態に係る染色方法は、除去液が水溶液であるので、除去液が溶剤である場合と比較して、除去液の廃棄の観点から容易に実現されることが可能である。特に、本実施の形態に係る染色方法は、除去液が炭酸ソーダ水である場合、除去液を下水に流すことが可能であるので、容易に実現されることが可能である。
【0070】
染色液60aに含まれる色材としては、様々な色材が採用されることが可能である。例えば、染色液60aに含まれる色材は、直接染料、反応染料、分散染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、硫化染料、バッド染料、可溶性バッド染料、アゾイック染料、酸化染料、顔料樹脂色材などが採用されることが可能である。また、染料の化学構造上の分類では、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリフェニルメタン染料、キノンイミン染料、フタロシアニン染料などの染料が採用されることが可能である。
【0071】
(第2の実施の形態)
本実施の形態に係る染色方法は、色材を含む防染剤が使用される点を除いて第1の実施の形態に係る染色方法と同様である。以下においては、第1の実施の形態に係る染色方法と同様の点については説明を省略する。
【0072】
まず、本実施の形態に係る染色方法におけるS11の防染剤印刷工程について説明する。
【0073】
図10は、本実施の形態に係る染色方法に使用されるインクジェットプリンター130の一部の正面図である。
【0074】
図10に示すように、インクジェットプリンター130は、布帛50が染色液によって染色されることを防止するための防染剤141aを布帛50に向けて吐出するインクジェットヘッド141と、布帛50が染色液によって染色されることを防止するための防染剤142aを布帛50に向けて吐出するインクジェットヘッド142と、布帛50が染色液によって染色されることを防止するための防染剤143aを布帛50に向けて吐出するインクジェットヘッド143と、布帛50が染色液によって染色されることを防止するための防染剤144aを布帛50に向けて吐出するインクジェットヘッド144とをキャリッジ32に備えていることを除いて、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター30(図3参照。)と同様である。ここで、防染剤141a、142a、143a、144aは、防染剤41aと同様に、アルカリ性の水溶液にのみ溶けるアルカリ水溶性UV硬化型インクである。また、防染剤141a、142a、143a、144aは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色材を含んでいる。
【0075】
防染剤141a、142a、143a、144aに含まれる色材としては、様々な色材が採用されることが可能である。例えば、防染剤141a、142a、143a、144aに含まれる色材は、直接染料、反応染料、分散染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、硫化染料、バッド染料、可溶性バッド染料、アゾイック染料、酸化染料、顔料樹脂色材などが採用されることが可能である。また、染料の化学構造上の分類では、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリフェニルメタン染料、キノンイミン染料、フタロシアニン染料などの染料が採用されることが可能である。
【0076】
図11は、本実施の形態に係る染色方法におけるS11の防染剤印刷工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0077】
図11に示すように、布帛50は、防染部分50b、150a、150b、150cが形成されている。防染部分150a、150b、150cは、それぞれ、防染剤141a、142a、143a、144aのうち少なくとも1種類と、必要に応じて防染剤41aとによって形成されている。なお、防染部分150a、150b、150cは、それぞれ、構成している防染剤41a、141a、142a、143a、144aの比率が異なる。
【0078】
次に、本実施の形態に係る染色方法におけるS21の布帛浸漬工程について説明する。
【0079】
防染部分50b、150a、150b、150cの防染剤は、上述したようにアルカリ性の水溶液にのみ溶けるので、酸性の水溶液である染色液60a(図5参照。)には溶けない。したがって、本実施の形態に係る染色方法におけるS21の布帛浸漬工程においては、第1の実施の形態に係る染色方法におけるS21の布帛浸漬工程と同様に、防染部分50b、150a、150b、150cの防染剤は、布帛50のうち防染部分50b、150a、150b、150cに染色液60aが浸み込むことを防止することができる。
【0080】
図12は、本実施の形態に係る染色方法におけるS21の布帛浸漬工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0081】
図12に示すように、布帛50は、防染部分50b、150a、150b、150cと、染色液60a(図5参照。)が浸み込んだ染色予定部分50cとが形成されている。
【0082】
次に、本実施の形態に係る染色方法におけるS22の布帛染色工程について説明する。
【0083】
図13は、本実施の形態に係る染色方法におけるS22の布帛染色工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0084】
図13に示すように、布帛50は、防染部分50bと、防染部分150d、150e、150fと、染色液60a(図5参照。)によって染色された染色部分50dとが形成されている。ここで、防染部分150d、150e、150fは、染色部分50dと同様に、それぞれ、防染部分150a、150b、150c(図12参照。)中の色材が布帛50の繊維と反応して発色した部分である。
【0085】
次に、本実施の形態に係る染色方法におけるS13の防染剤除去工程について説明する。
【0086】
防染部分50bの防染剤は、上述したようにアルカリ性の水溶液に溶けるので、アルカリ性の除去液によって布帛50から除去されることが可能である。また、防染部分150d、150e、150fの防染剤、すなわち、防染部分150a、150b、150cの防染剤も、上述したようにアルカリ性の水溶液に溶けるので、アルカリ性の除去液によって布帛50から除去されることが可能である。したがって、本実施の形態に係る染色方法におけるS13の防染剤除去工程においては、第1の実施の形態に係る染色方法におけるS13の防染剤除去工程と同様に、防染部分50b、150d、150e、150fの防染剤を除去液によって溶かして除去することができる。
【0087】
図14は、本実施の形態に係る染色方法におけるS13の防染剤除去工程の直後の布帛50の一例を示す図である。
【0088】
図14に示すように、布帛50は、染色部分50dだけでなく、防染部分150d、150e、150fがそれぞれ除去されて残った染色部分150g、150h、150iが形成されている。
【0089】
以上に説明したように、本実施の形態に係る染色方法は、布帛50のうち防染部分50b、150a、150b、150cの周囲の部分を染色液60aによって染色する際に布帛50のうち防染部分150aが染色液60aによって染色されることを防止することと、布帛50のうち防染部分150aを染色することとの両方を、同一の防染部分150aによって実現するので、作業性を向上することができる。防染部分150aについて説明したが、防染部分150b、150cについても同様である。
【0090】
本実施の形態においては、色材を含む防染剤として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色用の防染剤が採用されている。しかしながら、防染剤の色の種類は、これらの種類以外であっても良い。例えば、インクジェットプリンター130は、オレンジ、緑などの特殊な色用の防染剤を吐出可能であっても良い。インクジェットプリンター130は、色材を含む防染剤の種類毎にインクジェットヘッドを備えれば良い。
【0091】
インクジェットプリンター130は、本実施の形態において、色材を含む防染剤だけでなく、色材を含まない防染剤も吐出可能である。しかしながら、インクジェットプリンター130は、色材を含む防染剤だけを吐出可能であっても良い。
【0092】
なお、除去液は、本実施の形態に係る染色方法においてアルカリ性の水溶液であるが、酸塩基性が特定の範囲内の水溶液に溶けるUV硬化型インクが防染剤である場合に、酸塩基性がこの範囲内の水溶液であれば良い。また、染色液は、本実施の形態に係る染色方法において酸性の水溶液であるが、除去液と比較して防染剤を溶かし難い酸塩基性の水溶液であれば良い。
【0093】
本実施の形態に係る染色方法においては、色材を含む防染剤によって防染部分を染色している。しかしながら、防染部分を捺染インクによって染色しても良い。例えば、S11の防染剤印刷工程において、布帛50の一部(例えば、図11における防染部分150a、150b、150cに相当する部分)に防染剤を印刷する前に、この部分にインクジェットプリンターによって捺染インクを布帛50の片面または両面から印刷しても良い。そして、布帛50のうち捺染インクを印刷した部分に防染剤を布帛50の片面または両面から印刷しても良い。この構成により、本実施の形態に係る染色方法は、布帛50のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する際に布帛50のうち防染部分が染色液によって染色されることを防止することができるとともに、布帛50のうち防染部分をS11の防染剤印刷工程において印刷された捺染インクによって染色することができる。なお、S11の防染剤印刷工程において捺染インクを布帛50に印刷するインクジェットプリンターと、S11の防染剤印刷工程において防染剤を布帛50に印刷するインクジェットプリンターとは、同一のインクジェットプリンターであることが好ましい。例えば、図10に示すインクジェットプリンター130が捺染インク用のインクジェットヘッドを追加で備える構成であることが好ましい。
【0094】
(第3の実施の形態)
本実施の形態に係る染色方法は、S12の防染部分周囲染色工程を除いて第1の実施の形態に係る染色方法や第2の実施の形態に係る染色方法と同様である。以下においては、第1の実施の形態に係る染色方法や第2の実施の形態に係る染色方法と同様の点については説明を省略する。
【0095】
図15は、本実施の形態に係る染色方法におけるS12の防染部分周囲染色工程のフローチャートである。
【0096】
図15に示すように、防染部分周囲染色工程は、S11の防染剤印刷工程によって防染剤が印刷された布帛50のうち防染部分の周囲の部分にインクジェットプリンターによって染色液を印刷する染色液印刷工程(S221)と、S221の染色液印刷工程において布帛50に染み込ませた染色液によって布帛を染色する布帛染色工程(S22)とを備えている。
【0097】
なお、S11の防染剤印刷工程において防染剤を布帛50に印刷するインクジェットプリンターと、S221の染色液印刷工程において染色液を布帛50に印刷するインクジェットプリンターとは、同一のインクジェットプリンターであることが好ましい。例えば、図3に示すインクジェットプリンター30や図10に示すインクジェットプリンター130が染色液用のインクジェットヘッドを追加で備える構成であることが好ましい。
【0098】
以上に説明したように、本実施の形態に係る染色方法は、布帛50のうち防染部分の周囲の部分をインクジェットプリンターによって染色液で染色するので、第1の実施の形態または第2の実施の形態のように布帛50を染色液に浸漬することによって布帛50のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する方法と比較して、布帛50のうち防染部分の周囲の部分を少量の染色液によって染色することができる。したがって、本実施の形態に係る染色方法は、例えば、布帛50のうち防染部分の周囲の部分を安価に染色することができる。
【0099】
また、本実施の形態に係る染色方法は、布帛50のうち防染部分の周囲の部分をインクジェットプリンターによって染色液で染色するので、第1の実施の形態または第2の実施の形態のように布帛50を染色液に浸漬することによって布帛50のうち防染部分の周囲の部分を染色液によって染色する方法のように染色液60a(図5参照。)の容器60(図5参照。)を準備する必要がない。したがって、本実施の形態に係る染色方法は、布帛50のうち防染部分の周囲の部分を簡単に染色することができる。特に、本実施の形態に係る染色方法は、S11の防染剤印刷工程において防染剤を布帛50に印刷するインクジェットプリンターと、S221の染色液印刷工程において染色液を布帛50に印刷するインクジェットプリンターとが同一のインクジェットプリンターである場合、S11の防染剤印刷工程と、S221の染色液印刷工程とを同一のインクジェットプリンターによって連続して実行することができるので、布帛50のうち防染部分の周囲の部分を簡単に染色することができる。
【0100】
以下、上述した各実施の形態において使用される防染剤について詳細に説明する。
【0101】
防染剤は、(メタ)アクリル酸基およびスルホン酸基のうち少なくとも一方を含むことがより好ましい。このとき、布帛が実質的に(メタ)アクリル酸基を含まないことがより好ましい。布帛と防染剤との酸価の差をより大きくし、防染剤の除去をより簡易且つ迅速に行うことができる。
【0102】
防染剤に含まれる重合成分は、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、メレイン酸などのフリーのカルボン酸基を有するモノマー、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸などのスルホン酸基を有する重合性モノマーを単独または2種類以上で採用され得る。また、必要に応じて、アクリレート類と組み合わせて、酸価が80以上になるように調整したものであっても良い。同系統のアクリレートを組み合わせることによって、布帛と、防染剤との収縮率を近付けることができる。このとき、組み合わせるアクリレート化合物は、硬化後の水による溶解を容易にすることが容易な単官能モノマーが好ましい。
【0103】
防染剤は、水溶性あるいは弱アルカリ水溶性であることが好ましい。酸価が高いものを水溶性にすると、水により溶解し易くなる。つまり、防染剤は水溶性であり、防染剤除去工程は水を用いて行うことがより好ましい。酸価が80以上であり、且つ、水溶性の防染剤は、極めて水に溶け易いので、より短時間に目的の布製品を得ることができる。また、扱いの容易な水によって防染剤を迅速に除去することができる。
【0104】
また、防染剤は、ホモポリマー水溶性となる水溶性ビニルモノマーを含むことがより好ましい。防染剤を水で除去し易くなるため、より簡易且つ迅速に防染剤を除去することができる。また、ホモポリマーが水溶性となり得るN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルメチルエーテルなどの水溶性ビニル化合物を併用することがより好ましい。水およびアルカリ性水溶液による洗浄性が更に向上するからである。
【0105】
通常の防染剤は、着色剤を含まないことが好ましい。また、硬化収縮の抑制、増量目的、硬さ調整、除去液による除去効果などを考慮して、防染剤は、タルク、コロイダルシリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの公知の体質顔料を含んでも良い。このように、防染剤が着色剤を含まないか、または、体質顔料を含むことによって、防染剤が残留しても布帛の色調を損ねることを防ぐことができる。
【0106】
防染剤は、使用するインクジェットプリンターにもよるが、各々のモノマーを配合後の粘度が概ね1〜100mPa・secとなるように設計されることが好ましい。
【符号の説明】
【0107】
30 インクジェットプリンター
41a 防染剤
50 布帛
50b 防染部分
60a 染色液
130 インクジェットプリンター
141a、142a、143a、144a 防染剤
150a、150b、150c、150d、150e、150f 防染部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15