【文献】
新井 英樹,次世代SIP教科書 初版 NEXT GENERATION SIP TEXTBOOK,日本,株式会社インプレスR&D 井芹 昌信,2010年 3月 1日,第1版,P.88−P.91、P.95、P.146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
拠点局、中継局等の複数の交換機(例えば、IP−PBX(Internet Protocol Private Branch eXchange))をネットワークで接続した電話交換システムが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
複数のIP−PBXをネットワークで接続した電話交換システムでは、IP−PBX間のネットワークの障害発生時に備え、呼を迂回させるため迂回ルートが予め設定されている。また、ネットワークの障害発生時の迂回とは別に、あるIP−PBXに収容されている電話機が、不在転送等の自動転送時の呼の転送先として、別のIP−PBXに収容された電話機を設定している場合がある。そのため、これらの迂回及び自動転送により、システム構築時に想定していなかったルートを通る呼が生成される場合がある。
【0004】
また、関連技術に係るIP−PBXでは、迂回及び自動転送のそれぞれで独立した処理を行う。そのため、中継局が呼生成可能な状態(例えば、IP−PBXとしてのリソースに空きがある、IP−PBXサービス上の規制を受けていない等)であれば、設定されているルート通りに中継局で呼を中継して迂回及び自動転送を行う。そのため、1つの中継局を2回以上経由するような中継ルートで、発呼側の電話機と着呼側の電話機とが接続され、その中継局のリソースが無駄に消費されてしまうことがあった。なお、以下では、中継ルートが複数の中継局を経由するうちに元の中継局に戻ることをループと称す。
【0005】
また、上記のような呼がいくつも発生し、中継局のリソースの消費が増えると、その中継局は、リソース不足に陥り、実施すべき他の呼の発着信が行えないため、不要な迂回が発生する。そのために、周辺中継局のリソースやIP−PBX間を接続するネットワークの帯域が無駄に消費されてしまうこともあった。
【0006】
例えば、スイッチ等のネットワーク機器には、自身が送出したフレームデータが自身に戻るというループが発生したことを検出する機能がある。しかし、IP−PBXの場合、ループが発生したとしても、IP−PBXが送出する呼制御データは、IP−PBXを経由するたびに新しいデータとなる。そのため、IP−PBXは、ネットワーク機器と同様の方法では、自身が送出したデータが自身に戻ってきたかを検出すること、すなわち、ループが発生していることを検出することができなかった。
【0007】
また、SIP(Session Initiation Protocol)では、ループ検出のため、SIPメッセージにviaヘッダが用意され、viaヘッダの情報からSIPメッセージが経由してきたルートを確認できるようになっている。しかし、IP−PBXの場合、SIPメッセージがIP−PBXを経由するたびに、IP−PBXが、新しいSIPメッセージを生成し、後段のIP−PBXへSIPメッセージを送出する際にviaヘッダの情報は引き継がれない。そのため、IP−PBXは、viaヘッダを利用したループ検出も行うことができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の通り、関連技術に係るIP−PBX等の交換機は、迂回及び自動転送により中継ルートにループが発生した場合でも、ループの発生を検出できないため、ループが発生した中継ルートで、発呼側の電話機と着呼側の電話機とを接続してしまっていた。その結果、交換機のリソースや、交換機間を接続するネットワークの帯域が無駄に消費されてしまうという問題があった。
【0010】
本開示の目的は、上述した課題を解決し、迂回及び自動転送が発生したとしても、ループが発生していないルートで、発呼側の電話機と着呼側の電話機とを接続できる電話交換システム、交換機、電話交換方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様による電話交換システムは、
ネットワークに接続された複数の交換機を備え、
前記交換機は、他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信し、
呼接続要求信号を受信した交換機は、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送し、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した交換機は、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する。
【0012】
一態様による交換機は、
トランシーバと、
前記トランシーバに結合されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信し、
呼接続要求信号を受信した場合、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送し、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した場合、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する。
【0013】
一態様による電話交換方法は、
ネットワークに接続された交換機による電話交換方法であって、
他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信し、
呼接続要求信号を受信した場合、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送し、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した場合、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する。
【0014】
一態様によるプログラムは、
交換機となるコンピュータに、
他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信する手順と、
呼接続要求信号を受信した場合、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送する手順と、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した場合、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する手順と、
を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
上述の態様によれば、迂回及び自動転送が発生したとしても、ループが発生していないルートで、発呼側の電話機と着呼側の電話機とを接続できる電話交換システム、交換機、電話交換方法、及びプログラムを提供できるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0018】
最初に、本実施の形態に係る電話交換システムの構成例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る電話交換システムの一構成例を示す図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る電話交換システムは、中継局10−A,10−B,10−Cと、拠点局20−1,20−2と、内線電話機30−11,30−21,30−B1と、を備えている。以下、中継局10−A,10−B,10−Cを特に区別することなく言及する場合には、単に「中継局10」と呼称することがある。同様に、拠点局20−1,20−2は、単に「拠点局20」と呼称し、内線電話機30−11,30−21,30−B1は、単に「内線電話機30」と呼称することがある。
【0019】
なお、
図1においては、3つの中継局10及び2つの拠点局20を示しているが、中継局10及び拠点局20の数は、
図1の例に限定されない。また、中継局10−Bには内線電話機30−B1が収容され、拠点局20−1には内線電話機30−11が収容され、拠点局20−2には内線電話機30−21が収容されているが、中継局10及び拠点局20に収容される内線電話機30は、
図1の例に限定されない。
【0020】
中継局10及び拠点局20は、例えば、IP−PBXで実現される交換機である。
ただし、本実施の形態においては、中継局10に対し、通常の交換機が実行する制御処理に加えて、以下の制御処理を追加している。
【0021】
・中継局10は、呼接続を要求するために、他の中継局10又は拠点局20に対し、呼制御データ(呼接続要求信号)を送信する場合、その呼制御データが経由した経由局を示す経由局情報として、自局の局IDを追加する。以下では、呼制御データがSIPメッセージのINVITEリクエストであるものとして説明する。
具体的には、中継局10は、INVITEリクエストの独自ヘッダに、経由局情報として、自局の局IDを追加し、そのINVITEリクエストを他の中継局10又は拠点局20に対し送信する。
【0022】
・中継局10は、INVITEリクエストを受信した場合、そのINVITEリクエストに独自ヘッダが付加されているか否かをチェックする。また、中継局10は、INVITEリクエストに独自ヘッダが付加されていることを検出した場合、その独自ヘッダの経由局情報に、自局の局IDが含まれているか否かをチェックする。
【0023】
・中継局10は、INVITEリクエストに自局の局IDが含まれていることを検出した場合、中継ルートにループが発生したと判断し、着信規制をするために(呼接続要求を拒否するために)、そのINVITEリクエストを送信してきた前段の中継局10又は拠点局20に対し、SIPメッセージのレスポンスコード「482 Loop Detected」(呼接続要求拒否信号)を返送する。
【0024】
・中継局10は、INVITEリクエストに自局の局IDが含まれていることを検出し着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を返送した場合、別ルート上の他の中継局10又は拠点局20に対しINVITEリクエストを送信する。
【0025】
なお、中継局10は、INVITEリクエストに自局の局IDが含まれていない場合、そのINVITEリクエストに基づき、そのINVITEリクエストを送信(中継)するという通常の処理を実行する。
【0026】
・中継局10は、着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を受信した場合、INVITEリクエストを送信してきた前段の中継局10又は拠点局20に対し着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を返送する。
【0027】
・中継局10は、着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を返送した後は、INVITEリクエストを送信してきた前段の中継局10又は拠点局20との間で、そのINVITEリクエストの送受信に使用したリソースを解放する。
【0028】
続いて以下では、本実施の形態に係る電話交換方法を説明すると共に、本実施の形態との比較のために、比較例に係る電話交換方法について説明する。なお、いずれの電話交換方法においても、電話交換システムの構成自体は、
図1の構成であるものとする。
また、いずれの電話交換方法においても、拠点局20−1に収容されている内線電話機30−11から、中継局10−Bに収容されている内線電話機30−B1を発信先とする発呼を行うものとする。また、いずれの電話交換方法においても、拠点局20−1と中継局10−Bとを直接接続可能なルートのネットワークで障害が発生した場合の迂回ルートとして、中継局10−Aを経由し中継局10−Bへ接続するルートが予め設定されているものとする。また、いずれの電話交換方法においても、内線電話機30−B1には不在転送(自動転送)が設定されており、不在転送時の転送先として、拠点局20−2に収容されている内線電話機30−21が指定されているものとする。
【0029】
まず、比較例に係る電話交換方法について説明する。
図2は、比較例に係る電話交換方法の一例を示す図である。また、
図3は、
図2に示した比較例に係る電話交換方法のシーケンスを示すシーケンス図である。なお、
図2及び
図3においては、同一のステップには同一のステップ番号を付している。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、まず、拠点局20−1に収容されている内線電話機30−11から、中継局10−Bに収容されている内線電話機30−B1を発信先とする発呼を行う。
しかし、ここでは、拠点局20−1と中継局10−Bとを直接接続可能なルートのネットワークで障害が発生している。そのため、拠点局20−1は、予め設定されている迂回ルートへの接続切替を行う。ここでは、迂回ルートとして、中継局10−Aを経由し中継局10−Bへ接続するルートが予め設定されている。
【0031】
そこで、拠点局20−1は、予め設定された迂回ルートで内線電話機30−B1へ接続するために、中継局10−Aに接続し、中継局10−Aに対しINVITEリクエストを送信する(ステップS101)。
【0032】
中継局10−Aは、内線電話機30−B1へ接続するために、中継局10−Bに接続し、中継局10−Bに対しINVITEリクエストを送信する(ステップS102)。このINVITEリクエストは、中継局10−Aが新しく生成したINVITEリクエストである。
【0033】
中継局10−Bは、中継局10−AからINVITEリクエストを受信するが、内線電話機30−B1は、不在転送(自動転送)を設定している。そのため、中継局10−Bは、不在転送設定に基づき、不在転送時の転送先である内線電話機30−21へ接続するための接続切替を行う。
【0034】
そこで、中継局10−Bは、内線電話機30−21へ接続するために、中継局10−Cに接続し、中継局10−Cに対しINVITEリクエストを送信する(ステップS103)。このINVITEリクエストは、中継局10−Bが新しく生成したINVITEリクエストであり、新たな発信先が内線電話機30−21であることが追加されている。
【0035】
中継局10−Cは、内線電話機30−21へ接続するために、中継局10−Aに接続し、中継局10−Aに対しINVITEリクエストを送信する(ステップS104)。このINVITEリクエストは、中継局10−Aが新しく生成したINVITEリクエストである。
【0036】
中継局10−Aは、中継局10−CからINVITEリクエストを受信するが、受信したINVITEリクエストには、経由局情報が含まれていない。そのため、中継局10−Aは、自局を起点とした中継ルートが中継局10−Aを2回経由し、ループを発生していることを検出できない。そのため、中継局10−Aは、中継ルートにループを発生しているにもかかわらず、内線電話機30−21へ接続するために、拠点局20−2に接続し、拠点局20−2に対しINVITEリクエストを送信する(ステップS105)。
【0037】
その結果、中継局10−Aを2回経由する中継ルートで、発呼側の内線電話機30−11と着呼側の内線電話機30−21とが接続されてしまうため、中継局10−Aは、1回の通話であるにもかかわらず、2回の通話分のリソースを消費してしまうことになる。
【0038】
続いて、本実施の形態に係る電話交換方法について説明する。
図4は、本実施の形態に係る電話交換方法の一例を示す図である。また、
図5は、
図4に示した本実施の形態に係る電話交換方法のシーケンスを示すシーケンス図である。なお、
図4及び
図5においては、同一のステップには同一のステップ番号を付している。
【0039】
図4及び
図5に示されるように、まず、拠点局20−1に収容されている内線電話機30−11から、中継局10−Bに収容されている内線電話機30−B1を発信先とする発呼を行う。
しかし、ここでは、拠点局20−1と中継局10−Bとを直接接続可能なルートのネットワークで障害が発生している。そのため、拠点局20−1は、予め設定されている迂回ルートへの接続切替を行う。ここでは、迂回ルートとして、中継局10−Aを経由し中継局10−Bへ接続するルートが予め設定されている。
【0040】
そこで、拠点局20−1は、予め設定された迂回ルートで内線電話機30−B1へ接続するために、中継局10−Aに接続し、中継局10−Aに対しINVITEリクエストを送信する(ステップS201)。
【0041】
中継局10−Aは、内線電話機30−B1へ接続するために、中継局10−Bに接続する。このとき、中継局10−Aは、拠点局20−1から受信したINVITEリクエストを流用し、INVITEリクエストが自局を経由したことを示すために、INVITEリクエストの独自ヘッダに、経由局情報として、自局の局ID(A)を追加して、そのINVITEリクエストを中継局10−Bに対し送信する(ステップS202)。この時点のINVITEリクエストは、経由局情報として、中継局10−Aの局IDが追加された状態となる(X−Forwarding−Info:A)。
【0042】
中継局10−Bは、中継局10−AからINVITEリクエストを受信するが、内線電話機30−B1は、不在転送(自動転送)を設定している。そのため、中継局10−Bは、不在転送設定に基づき、不在転送時の転送先である内線電話機30−21へ接続するための接続切替を行う。
【0043】
そこで、中継局10−Bは、内線電話機30−21へ接続するために、中継局10−Cに接続する。このとき、中継局10−Bは、INVITEリクエストが内線電話機30−11からの着信であるという情報を引き継ぐ必要がある。そのため、中継局10−Bは、中継局10−Aから受信したINVITEリクエストを流用し、新たな発信先が内線電話機30−21であることと、中継局10−Bを経由したことを示すための局ID(B)を、INVITEリクエストの独自ヘッダに追加して、そのINVITEリクエストを中継局10−Cに対し送信する(ステップS203)。この時点のINVITEリクエストは、経由局情報として、中継局10−A,10−Bの2局の局IDが追加された状態となる(X−Forwarding−Info:A,B)。
【0044】
中継局10−Cは、内線電話機30−21へ接続するために、中継局10−Aに接続する。このとき、中継局10−Cは、中継局10−Bと同様に、中継局10−Bから受信したINVITEリクエストを流用し、中継局10−Cを経由したことを示すための局ID(C)を、INVITEリクエストの独自ヘッダに追加して、そのINVITEリクエストを中継局10−Aに対し送信する(ステップS204)。この時点のINVITEリクエストは、経由局情報として、中継局10−A,10−B,10−Cの3局の局IDが追加された状態となる(X−Forwarding−Info:A,B,C)。
【0045】
中継局10−Aは、中継局10−CからINVITEリクエストを受信するが、受信したINVITEリクエストには、経由局情報として、中継局10−Aの局IDが含まれている。そのため、中継局10−Aは、INVITEリクエストに中継局10−Aの局IDが含まれていることを検出し、中継ルートにループが発生したと判断し、INVITEリクエストを送信してきた前段の中継局10−Cに対し、着信規制をするため、SIPメッセージのレスポンスコード「482 Loop Detected」を返送する(ステップS205)。中継局10−Aは、着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を返送した後は、中継局10−Cとの間でINVITEリクエストの送受信に使用したリソースを解放する。
【0046】
中継局10−Cは、中継局10−Aから着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を受信すると、INVITEリクエストを送信してきた前段の中継局10−Bに対し着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を返送する(ステップS206)。同様に、中継局10−Bも、前段の中継局10−Aに対し着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」を返送する(ステップS207)。着信規制の482 Loop Detectedを返送した後は、中継局10−Cは、中継局10−Bとの間でINVITEリクエストの送受信に使用したリソースを解放する。同様に、中継局10−Bは、中継局10−Aとの間でINVITEリクエストの送受信に使用したリソースを解放する。
【0047】
その後、中継局10−Aは、別ルート上の他の中継局10又は拠点局20に対しINVITEリクエストを送信する(ステップS208)。
図4及び
図5の例では、中継局10−Aは、拠点局20−2に対しINVITEリクエストを送信し、拠点局20−1との間でINVITEリクエストの送受信に使用したリソースの接続先を、中継局10−Bから別ルートである拠点局20−2に変更している。これにより、ループが発生していない別の中継ルートで、発呼側の内線電話機30−11と着呼側の内線電話機30−21とを接続することができる。
【0048】
上述したように本実施の形態によれば、中継局10は、他の中継局10又は拠点局20に対しINVITEリクエストを送信する場合、自局の局IDをINVITEリクエストに追加する。また、中継局10は、INVITEリクエストを受信した場合、INVITEリクエストに自局の局IDが含まれるかどうかをチェックする。中継局10は、INVITEリクエストに自局の局IDが含まれていれば、中継ルートにループが発生したと判断し、INVITEリクエストを送信してきた前段の中継局10又は拠点局20に対し着信規制の「482 Loop Detected」を返送し、また、別ルート上の他の中継局10又は拠点局20に対し、INVITEリクエストを送信する。
【0049】
このように、中継局10は、INVITEリクエストを送信する場合、自局の局IDをINVITEリクエストに追加し、INVITEリクエストを受信した場合、INVITEリクエストに自局の局IDが含まれるか否かに応じて、中継ルートにループが発生したか否かを判断する。そのため、INVITEリクエストの迂回及び自動転送により中継ルートにループが発生した場合、ループが発生したことを検出することができる。
【0050】
また、中継局10は、中継ルートにループが発生した場合、INVITEリクエストを送信してきた前段の中継局10又は拠点局20に対し着信規制を返送して、呼接続を拒否する一方で、別ルート上の他の中継局10又は拠点局20に対し、INVITEリクエストを送信する。そのため、ループが発生していない中継ルートで、発呼側の内線電話機30と着呼側の内線電話機30とを接続することができる。
【0051】
従って、INVITEリクエストの迂回及び自動転送が発生したとしても、ループが発生していない中継ルートで、発呼側の内線電話機30と着呼側の内線電話機30とを接続することができる。これにより、中継局10のリソースが無駄に消費されたり、中継局10間を接続するネットワーク及び中継局10と拠点局20間を接続するネットワークの帯域が無駄に消費されたりすることを防止することができる。
【0052】
また、中継局10は、着信規制の「482 Loop Detected」を受信した場合、前段の中継局10又は拠点局20に対し着信規制の「482 Loop Detected」を返送する。また、中継局10は、着信規制のレスポンスコード「482 Loop Detected」の返送後は、前段の中継局10又は拠点局20との間でINVITEリクエストの送受信に使用したリソースを解放する。そのため、ループが発生した中継ルートで使用していたリソースを、別ルート等のために使用することができ、リソースを効率良く使用することができる。
【0053】
続いて以下では、上記の実施の形態で説明された中継局10の構成例について説明する。
図6は、中継局10の一構成例を示すブロック図である。
図6に示されるように、中継局10は、トランシーバ101と、プロセッサ102と、メモリ103と、を含んでいる。
トランシーバ101は、他の中継局10、拠点局20、又は内線電話機30と通信するために使用される。トランシーバ101は、複数のトランシーバを含んでも良い。トランシーバ101は、プロセッサ102と結合される。
【0054】
メモリ103は、上記の実施の形態で説明された中継局10による処理を行うための命令群及びデータを含むソフトウェアモジュール(コンピュータプログラム)を格納するように構成されている。メモリ103は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成されても良い。
【0055】
プロセッサ102は、メモリ103からソフトウェアモジュール(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上記の実施の形態で説明された中継局10の処理を行うように構成されている。プロセッサ102は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であっても良い。プロセッサ102は、複数のプロセッサを含んでも良い。
【0056】
プロセッサ102は、上記の実施の形態で説明された中継局10のアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。このプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、CD−R(CD-Recordable)、CD−R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0057】
なお、上記の実施の形態で説明された拠点局20の構成については、図示及び説明を省略するが、拠点局20は、
図6に示した中継局10の構成と同様の構成を有していても良い。
【0058】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0059】
例えば、上記実施の形態においては、中継ルートにループが発生した場合、ループが発生したことを検出した中継局が、別ルート上の他の中継局又は拠点局に対し、INVITEリクエストを送信していたが、これには限定されない。
【0060】
上記の代わりに、ループが発生したことを検出した中継局が、INVITEリクエストの発信元である拠点局に対し着信規制を返送し、その拠点局との間でINVITEリクエストの送受信に使用したリソースを解放しても良い。この場合、中継局から着信規制を受信した拠点局が、中継ルートにループが発生したというアラームを出力しても良い。これにより、保守者へ中継ルートの再設計を促し、中継ルートにループが発生しにくい設計に改善されることが期待できる。又は、中継局から着信規制を受信した拠点局が、別ルートでの呼接続を試行しても良いし、発呼を行った内線電話機からの発信を規制しても良い。
【0061】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
ネットワークに接続された複数の交換機を備え、
前記交換機は、他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信し、
呼接続要求信号を受信した交換機は、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送し、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した交換機は、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する、
電話交換システム。
(付記2)
呼接続要求拒否信号を受信した交換機は、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送する、
付記1に記載の電話交換システム。
(付記3)
前記交換機は、呼接続要求拒否信号の返送後は、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機との間で該呼接続要求信号の送受信に使用したリソースを解放する、
付記2に記載の電話交換システム。
(付記4)
呼接続要求信号及び呼接続要求拒否信号は、SIPメッセージである、
付記1から3のいずれか1項に記載の電話交換システム。
(付記5)
呼接続要求信号は、SIPメッセージのINVITEリクエストであり、
呼接続要求拒否信号は、SIPメッセージのレスポンスコード「482 Loop Detected」である、
付記4に記載の電話交換システム。
(付記6)
トランシーバと、
前記トランシーバに結合されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信し、
呼接続要求信号を受信した場合、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送し、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した場合、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する、
交換機。
(付記7)
前記プロセッサは、呼接続要求拒否信号を受信した場合、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送する、
付記6に記載の交換機。
(付記8)
前記プロセッサは、呼接続要求拒否信号の返送後は、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機との間で該呼接続要求信号の送受信に使用したリソースを解放する、
付記7に記載の交換機。
(付記9)
ネットワークに接続された交換機による電話交換方法であって、
他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信し、
呼接続要求信号を受信した場合、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送し、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した場合、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する、
電話交換方法。
(付記10)
呼接続要求拒否信号を受信した場合、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送する、
付記9に記載の電話交換方法。
(付記11)
呼接続要求拒否信号の返送後は、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機との間で該呼接続要求信号の送受信に使用したリソースを解放する、
付記10に記載の電話交換方法。
(付記12)
交換機となるコンピュータに、
他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信する手順と、
呼接続要求信号を受信した場合、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送する手順と、
呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した場合、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する手順と、
を実行させるためのプログラム。
(付記13)
前記コンピュータに、
呼接続要求拒否信号を受信した場合、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送する手順をさらに実行させる、
付記12に記載のプログラム。
(付記14)
前記コンピュータに、
呼接続要求拒否信号の返送後は、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機との間で該呼接続要求信号の送受信に使用したリソースを解放する手順をさらに実行させる、
付記13に記載のプログラム。
【解決手段】電話交換システムは、ネットワークに接続された複数の交換機を備える。交換機は、他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する場合、自交換機のIDを呼接続要求信号に追加して、該呼接続要求信号を送信する。呼接続要求信号を受信した交換機は、該呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれているか否かをチェックし、自交換機のIDが含まれていることを検出した場合、ループが発生したと判断し、呼接続要求信号を送信してきた前段の交換機に対し呼接続要求拒否信号を返送する。呼接続要求信号に自交換機のIDが含まれていたことを検出し呼接続要求拒否信号を返送した交換機は、別ルート上の他の交換機に対し呼接続要求信号を送信する。