特許第6558836号(P6558836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558836粒子を懸濁させるために有用なネットワークポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558836
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】粒子を懸濁させるために有用なネットワークポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20190805BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C08F265/06
   C08F2/44 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-190693(P2017-190693)
(22)【出願日】2017年9月29日
(62)【分割の表示】特願2014-538848(P2014-538848)の分割
【原出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-31017(P2018-31017A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2017年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/552,624
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリアン・ピー・クリーマー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ウィリアム・ドンブロスキ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・グレイソン
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ピー・ワッサーマン
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−241448(JP,A)
【文献】 特開2010−180398(JP,A)
【文献】 特開平09−286832(JP,A)
【文献】 特開平11−292905(JP,A)
【文献】 特開平08−231729(JP,A)
【文献】 特開平06−322008(JP,A)
【文献】 特開昭63−146913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均直径が100nmから10μmの複数のポリマー粒子を製造する方法であって、該複数のポリマー粒子のそれぞれの粒子が:(a)核、および(b)少なくとも1種のC〜Cのカルボン酸モノマーの少なくとも26wt%から50wt%以下の重合残基を含む、該核を囲む複数のローブを含み、各ローブは、該ローブの最小直径に対する該ローブの最大直径の比率が1.5以下の形状を有し、前記方法は:(i)少なくとも1種のC〜Cのカルボン酸モノマーの少なくとも20wt%の重合残基および少なくとも1種の架橋剤の少なくとも0.1wt%の重合残基を含む種粒子を提供するステップ;(ii)水性エマルション中に平均Van Krevelenパラメータが前記種粒子のものよりも少なくとも0.5J0.5cm−1.5低い第1のモノマー混合物と前記種粒子を懸濁化させ、前記第1のモノマー混合物を重合するステップ;ならびに(iii)前記水性エマルションに第2のモノマー混合物を加え、前記第2のモノマー混合物を重合するステップを含み、前記第2のモノマー混合物は、種粒子ならびに第1および第2のモノマー混合物の総重量の85wt%から98wt%からなり、前記第1および第2のモノマー混合物は、前記第1および第2のモノマー混合物の総重量に基づいて少なくとも26wt%から50wt%以下のC〜Cのカルボン酸モノマーを含む、方法。
【請求項2】
前記第1のモノマー混合物が、平均Van Krevelenパラメータが前記種粒子のものよりも少なくとも0.6J0.5cm−1.5低い、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記種粒子が、前記種粒子ならびに前記第1および第2のモノマー混合物の総重量の0.1から10wt%である、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはローブ(lobe)に囲まれた核を有するポリマー粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ローブに囲まれた核を有するポリマーは知られている。例えば、米国特許第4,791,151号は、コーティングおよび粘着剤の用途において有用なこの構造を有するポリマーを開示している。しかし、これらのポリマーのための開示された組成物は限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4791151号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって解決される問題は、水性媒体中で固体粒子および気泡を懸濁させる改善された能力を有するポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、平均直径が100nmから10μmであり、それぞれの粒子が、(a)核、および(b)少なくとも1種のC〜Cのカルボン酸モノマーの少なくとも15wt%の重合残基を含むローブを含むポリマー粒子を対象とする。
【0006】
本発明はさらに、ポリマー粒子を含み、pHが少なくとも6である濃縮水性配合物を対象とする。
【0007】
本発明はさらに、(a)少なくとも1種のC〜Cのカルボン酸モノマーの少なくとも20wt%の重合残基および少なくとも1種の架橋剤の少なくとも0.1wt%の重合残基を含む種粒子を提供するステップ;(b)平均Van Krevelenパラメータが種粒子のものより少なくとも0.5J0.5cm−1.5低い第1のモノマー混合物で種粒子を水性エマルション中に懸濁させ、前記第1のモノマー混合物を重合するステップ;ならびに(c)水性エマルションに第2のモノマー混合物を加え、前記第2のモノマー混合物を重合するステップ;であって、第1および第2のモノマー混合物が、第1および第2のモノマー混合物の総重量に基づいて、少なくとも15wt%のC〜Cのカルボン酸モノマーを含むステップによりポリマー粒子を生成するための方法を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
そうでないと明記しない限り、全ての割合は、重量パーセント(wt%)であり、全ての画分は重量により、かつ全ての温度は℃である。ポリマー中またはポリマー(例えば、核、ローブ)の相中の重合モノマー残基の割合は、固体ポリマーまたはポリマー相の全重量に基づく。「室温」(room temp.)において行われる測定は、20〜25℃で行った。本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル酸」と言う語は、アクリル酸またはメタクリル酸を指す。Van Krevelen溶解パラメータ(δt)は、HoftyzerおよびVan Krevelenの「Properties of Polymers: Their Correlation with Chemical Structure; Their Numerical Estimation and Prediction from Additive Group Contributions」(D.W.Van Krevelen、第3版、エルゼビア、アムステルダム、1990年、74〜5および213頁)に記載のような方法に従って計算され、典型的には、J0.5/cm1.5を単位とする。「C3〜C6のカルボン酸モノマー」は、1つまたは2つのカルボン酸基を有するモノ−エチレン性不飽和化合物、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸などである。アルキル基は、直鎖または分岐であり得る飽和ヒドロカルビル基である。
【0009】
好ましくは、ポリマー粒子はアクリルポリマー、すなわち、アクリルモノマーの重合残基を少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、好ましくは少なくとも98wt%、好ましくは少なくとも99wt%有するアクリルポリマーである。好ましくは、核はアクリルポリマーである。好ましくは、ローブはアクリルポリマーである。アクリルモノマーには、(メタ)アクリル酸およびそれらのC〜C22のアルキルまたはヒドロキシアルキルエステル;クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルならびにクロトン酸、イタコン酸、フマル酸もしくはマレイン酸のアルキルまたはヒドロキシアルキルエステルが含まれる。アクリルポリマーは、例えば、非イオン性(メタ)アクリル酸エステル、カチオン性モノマー、一価不飽和のジカルボン酸塩、C〜C22のカルボン酸アルキルのビニルエステル、ビニルアミド(例えば、N−ビニルピロリドンを含む)、スルホン化アクリルモノマー、ビニルスルホン酸、ハロゲン化ビニル、リン含有モノマー、複素環式モノマー、スチレンおよび置換されたスチレンを含めた、他の重合モノマー残基も含んでいてもよい。好ましくは、ポリマーは、硫黄−またはリン−含有モノマーを5wt%以下、好ましくは3wt%以下、好ましくは2wt%以下、好ましくは1wt%以下、好ましくは0.5wt%以下含む。
【0010】
好ましくは、種粒子から生じるポリマー粒子の核は、少なくとも1種のC〜Cのカルボン酸モノマーの少なくとも20wt%の重合残基および少なくとも1種の架橋剤の少なくとも0.1wt%の重合残基を含む。好ましくは、核は、ポリマー粒子全体の0.1から10wt%、好ましくは0.25から5wt%、好ましくは0.5から2wt%である。好ましくは、核は、40から1000nm、好ましくは50から250nmの直径を有する。好ましくは、核は、少なくとも1種のC3〜C6のカルボン酸モノマーの重合残基を少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%含む。好ましくは、核は、少なくとも1種の架橋剤の重合残基を少なくとも0.2wt%、好ましくは少なくとも0.5wt%、好ましくは少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも2wt%、好ましくは少なくとも3wt%含む。好ましくは、核は、少なくとも1種の架橋剤の重合残基を10wt%以下、好ましくは8wt%以下、好ましくは7wt%以下含む。
【0011】
好ましくは、ポリマー粒子は、水性媒体中に分散した離散粒子としてのポリマーを含有する水性組成物、すなわち、ポリマーラテックスとして提供される。この水性分散系において、好ましくはポリマー粒子の平均粒径は、100から2000nmの範囲、好ましくは100から1000nmの範囲である。水性分散系中のポリマー粒子の濃度は、水性分散系の重量に基づいて、典型的には15から60wt%の範囲、好ましくは25から50wt%の範囲である。
【0012】
濃縮水性配合物は、水性配合物の全重量に対するポリマー固体を基準に計算して、0.05から5wt%のポリマー粒子を含有する。好ましくは、濃縮水性配合物は、ポリマー粒子を少なくとも0.2wt%、好ましくは少なくとも0.3wt%、好ましくは少なくとも0.4wt%、好ましくは少なくとも0.5wt%、好ましくは少なくとも0.6wt%、好ましくは少なくとも0.8wt%、好ましくは少なくとも0.9wt%含む。好ましくは、濃縮水性配合物は、ポリマー粒子を4wt%以下、好ましくは3wt%以下、好ましくは2.5wt%以下、好ましくは2wt%以下、好ましくは1.8wt%以下含む。
【0013】
好ましくは、ポリマー粒子は、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つのローブを有する。好ましくは、ポリマー粒子のローブは、実質的に球体の形状、すなわちそれらの最小直径に対するそれらの最大直径の比率が1.5以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下である。好ましくは、ポリマー粒子のローブは、C〜Cのカルボン酸モノマーの重合残基を少なくとも18wt%、好ましくは少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも22wt%、好ましくは少なくとも24wt%、好ましくは少なくとも26wt%、好ましくは少なくとも28wt%、好ましくは少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも32wt%含む。好ましくは、ポリマー粒子のローブは、C〜Cのカルボン酸モノマーの重合残基を90wt%以下、好ましくは85wt%以下、好ましくは80wt%以下、好ましくは75wt%以下、好ましくは70wt%以下、好ましくは65wt%以下、好ましくは60wt%以下、好ましくは55wt%以下、好ましくは50wt%以下含む。好ましくは、C〜Cのカルボン酸モノマーは、C〜Cのカルボン酸モノマー、好ましくは1つのカルボン酸基を有するC〜Cのカルボン酸モノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸、好ましくはメタクリル酸(MAA)である。好ましくは、ポリマー粒子のローブは、アクリル酸(AA)の重合残基を40wt%以下、好ましくは35wt%以下、好ましくは30wt%以下、好ましくは25wt%以下、好ましくは20wt%以下含む。好ましくは、ローブは、ポリマー粒子全体の90から99.9wt%、より好ましくは95から99.75wt%、最も好ましくは98から99.5wt%からなる。
【0014】
本発明の方法において、好ましくは種粒子のVan Krevelenパラメータは、第1のモノマー混合物のものよりも、少なくとも0.5J0.5cm−1.5、好ましくは少なくとも0.6J0.5cm−1.5、好ましくは少なくとも0.65J0.5cm−1.5、好ましくは少なくとも0.7J0.5cm−1.5、好ましくは少なくとも0.75J0.5cm−1.5高い。好ましくは、第1のモノマー混合物は、C〜Cの(メタ)アクリル酸アルキルを少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも60wt%含む。好ましくは、第1のモノマー混合物は、C3〜C6のカルボン酸モノマー、C〜Cの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、(メタ)アクリルアミドまたはC〜Cのモノ−もしくはジ−アルキル(メタ)アクリルアミドを、10wt%以下、好ましくは8wt%以下、好ましくは6wt%以下、好ましくは4wt%以下、好ましくは3wt%以下、好ましくは2wt%以下含む。好ましくは、第1のモノマー混合物は、C〜Cの(メタ)アクリル酸アルキルを少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、好ましくは少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも80wt%含む。好ましくは、第1のモノマー混合物は、C〜Cの(メタ)アクリル酸アルキルを少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%含み、好ましくはC〜Cの(メタ)アクリル酸アルキルは、(メタ)アクリル酸ブチル、好ましくはアクリル酸ブチルである。好ましくは、第2のモノマー混合物は、C〜Cのカルボン酸モノマーを少なくとも18wt%、好ましくは少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも22wt%、好ましくは少なくとも24wt%、好ましくは少なくとも26wt%、好ましくは少なくとも28wt%、好ましくは少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも32wt%含む。好ましくは、第2のモノマー混合物は、C〜Cのカルボン酸モノマーを90wt%以下、好ましくは85wt%以下、好ましくは80wt%以下、好ましくは75wt%以下、好ましくは70wt%以下、好ましくは65wt%以下、好ましくは60wt%以下、好ましくは55wt%以下、好ましくは50wt%以下含む。好ましくは、第2のモノマー混合物は、種粒子ならびに第1および第2のモノマー混合物の総重量の85から98wt%、より好ましくは86から96wt%、最も好ましくは87から93wt%からなる。好ましくは、種粒子は、種粒子ならびに第1および第2のモノマー混合物の総重量の0.1から10wt%、好ましくは0.25から5wt%、好ましくは0.5から2wt%である。
【0015】
架橋剤、すなわち2つまたはそれ以上の非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーは、ポリマー粒子の任意の相の重合中に、コポリマー成分に含まれていてもよい。こうしたモノマーの好ましい例には、例えば、ジオールもしくはポリオールのジ−またはトリ−アリルエーテルおよびジ−またはトリ−(メタ)アクリリルエステル(例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ジメタクリル酸エチレングリコール)、二酸もしくは三酸のジ−またはトリ−アリルエステル、(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルスルホン、リン酸トリアリル、ジビニル芳香族(例えば、ジビニルベンゼン)が含まれる。好ましくは、ローブ中の重合架橋剤残基の量は、少なくとも0.025wt%、好ましくは少なくとも0.05wt%である。好ましくは、ローブ中の重合架橋剤残基の量は、5wt%以下、好ましくは2wt%以下、好ましくは0.5wt%以下である。
【0016】
好ましくは、濃縮水性組成物のpHは、6から11、好ましくは7から10、好ましくは7.5から9の範囲となるように調整される。配合物のpHを調整するのに適した塩基には、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどの無機塩基、水酸化アンモニウム、ならびにモノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミンなどの有機塩基が含まれる。塩基の混合物を用いてもよい。水性媒体のpHを調整するのに適した酸には、塩酸、リン酸、および硫酸などの鉱酸、ならびに酢酸などの有機酸が含まれる。酸の混合物を用いてもよい。
【0017】
本発明の方法における使用に適した重合技術には、乳化重合および溶液重合が含まれる。種粒子は、溶液または乳化重合のいずれかによって作成してよい。好ましくは、ローブは乳化重合を用いて作成される。水性乳化重合プロセスは、典型的には、少なくとも1種のモノマーならびに遊離基源、緩衝剤、および還元剤などの種々の合成補助剤を水性反応媒体中に含有する、水性反応混合物中で行われる。連鎖移動剤は、分子量を制限するのに用いてよく、好ましくはメルカプタン、好ましくはC〜C12のアルキルメルカプタンである。水性反応媒体は、水性反応混合物の連続流体相であり、水性反応媒体の重量に基づいて50wt%より多い水および場合によっては1種または複数の水混和性溶媒を含有する。適した水混和性溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、エチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、およびジアセトンアルコールが含まれる。好ましくは、水性反応媒体は、水性反応媒体の重量に基づいて少なくとも90wt%の水、好ましくは少なくとも95wt%の水、好ましくは少なくとも98wt%の水を含有する。
【実施例】
【0018】
粒子サイズ決定の方法:種については、米国ニューヨーク州ホールトヴィルのBrookhaven Instruments Corporationにより製造されたBrookhaven Model BI−90粒径分析計を用いて粒径を決定した。最終ポリマーラテックスについては、米国ペンシルバニア州モンゴメリービルのMICROTRAC,Inc.により製造されたNANOTRAC 150 Particle Size Analyzerを用いて粒径を決定した。
【0019】
レオロジー解析の方法:レオロジー改質剤の膨潤水性分散系を、水中10%のNaOHでpH8.3±0.5に中和した、脱イオン水中1.5wt%のポリマー分散系を生成することにより調製した。レオロジー解析に先立って、試料を24時間置き、その後3,000rpmで5分間遠心分離した。AR−2000レオメーター(TA Instruments)を用い、角度0.5°の直径60mmのステンレス製のコーンおよびペルチェプレート(Peltier plate)を用いて、25℃で実行し、動的振動応答を収集した。試料を、初期せん断5s−1で5分間調整し、その後2分保持した。周波数は1Hzで一定に保持し、10倍毎に10ポイント(対数的分布)で、応力を0.05から1000Paに増加した。G’=G”である点を、Rheology Advantage Data Analysisプログラム(TA Instruments)を用いて計算し、交差する降伏応力(YS、x軸の値)および交差におけるG’値(y軸の値)を記録した。せん断応力0.1PaにおけるG’の値も表にした。
【0020】
透過電子顕微鏡法(TEM)の方法:試料を脱イオン水中1:200に希釈し、TEM用グリッド上に噴霧した。Hitachi 7000 TEMを用いてグリッドを試験し、GATAN MUTLISCAN 4000カメラで撮像した。
【0021】
実施例1.種粒子エマルションの調製。塔頂撹拌、熱電対、および窒素バブラー(nitrogen bubbler)を備えた2Lのガラス容器に516.25gの脱イオン水および0.15gのACTRENEを装入し、83℃に加熱した。別の容器において、18.52gのアクリル酸ブチル(BA)、2.3のメタクリル酸(MAA)、および203.2gのメタクリル酸メチル(MMA)を、140gの脱イオン水および2.3gの脂肪アルコールエーテル硫酸ナトリウム塩(DISPONIL FES993、30%溶液、Cognis)と乳化するまで混合した。このエマルションの一部(43.97g)を、反応器に供給し、その後16.25gの脱イオン水中1.6gの過硫酸ナトリウムの溶液を供給した。エマルションを保持している容器に、(1)7.5gの脱イオン水中で洗った4.65gのDISPONIL FES 993、(2)7.5gの脱イオン水中で洗った129.05gのメタクリル酸、および(3)7.5gの脱イオン水中で洗った9.8gのジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール(1,3−BGDMA)を加えた。反応器内の初期発熱が最大になった後、エマルションを保持している容器の内容物を、84℃で90分掛けて反応器に供給し、その後合計45gになる脱イオン水ですすいだ。モノマーエマルションの消耗後、反応器を84℃に15分間保持し、その後室温に冷却し、100メッシュスクリーンを通してろ過した。エマルションのpHは2.9であった。平均粒径は、188nmになると決定された。ポリマーエマルションは、32.6wt%の固体、80ppmの残余アクリル酸ブチルおよび294ppmの残余メタクリル酸メチルを含有することが分かった。
【0022】
実施例2.懸濁力が改善されたミクロゲルレオロジー改質剤の調製。塔頂撹拌、熱電対、および窒素バブラーを備えた2Lのガラス容器に199.4gの脱イオン水および0.27gの酢酸を装入し、75℃に加熱した。実施例1からの種エマルションの一部(15.1g)を、11.8gの脱イオン水で反応器にゆすぎ入れた。別の容器において、10.1gの脱イオン水、0.29gのアニオン性硫酸塩界面活性剤(TRITON XN−45S、60%溶液、Dow)、0.036gのトリメチロールプロパンジアリルエーテル(TMPDE)、14.51gのメタクリル酸メチル(MMA)、0.43gのアクリル酸(AA)、および18.24gのアクリル酸ブチル(BA)を乳化するまで混合した(ME1)。ME1の一部(16.43g)を、反応器に加え、その後10.35gの脱イオン水中0.74の過硫酸アンモニウムの溶液を加えた。この時点で、過硫酸アンモニウム(65gの脱イオン水中1.72g)および亜硫酸水素ナトリウム(65gの脱イオン水中0.84g)の溶液を、その後105分にわたって同時に注射器ポンプで供給した。注射器ポンプ供給の開始に次いで、5.7gの脱イオン水中0.198gの亜硫酸水素ナトリウムの溶液、その後7.8gの硫酸鉄(II)0.15%水溶液を、反応器に注ぎ入れた。次いでME1の残りを9.25分掛けて供給し、その後10gの脱イオン水ですすいだ。第2のモノマーエマルション(ME2)を、273.5gの脱イオン水、7.06gのTRITON XN−45S、0.56gのTMPDE、243.8gのアクリル酸エチル(EA)、23.3gの2−アクリル酸エチルヘキシル(EHA)、18.95のネオデカン酸ビニル(VEOVA)、および179.84gのMAAから調製した。これを3.6mL/分の速度で10.75分間、その後6mL/分で10分間および次いで9.66mL/分で70分間反応器に注ぎ込み、その後50gの脱イオン水ですすいだ。ME1およびME2の供給中の反応温度は、78℃に維持した。亜硫酸水素ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムの供給の完了後、反応器を78℃に5分間保持し、次いで70℃に冷却した。この時点でt−ブチルヒドロペルオキシド(20.09gの水中に0.221g)の追加溶液(chase solution)および20gの脱イオン水中0.145gのイソアスコルビン酸の溶液を反応器に加え、反応器を70℃で30分撹拌し、その後室温に冷却して100メッシュスクリーンを通してろ過した。エマルションのpHは2.4であった。最終エマルションは、36.69%の固体、ならびにそれぞれ9.6、17、および6.5ppmの、残余EA、EHA、およびMAAを有した。
【0023】
比較例C1.単一モノマーエマルションを有するプロセスの実証。塔頂撹拌、熱電対、および窒素バブラーを備えた2Lのガラス容器に199.4gの脱イオン水および0.27gの酢酸を装入し、75℃に加熱した。実施例1からの種エマルションの一部(15.1g)を、11.8gの脱イオン水で反応器にゆすぎ入れた。別の容器において、283.6gの脱イオン水、7.35gのTRITON XN−45S、0.596gのTMPDE、14.51gのMMA、18.24gのBA、243.8gのEA、23.3gのEHA、18.95gのVEOVA、0.43gのAA、および179.84gのMAAを乳化するまで混合した(ME)。MEの一部(16.43g)を、反応器に加え、その後10.35gの脱イオン水中0.74gの過硫酸アンモニウムの溶液を加えた。この時点で、過硫酸アンモニウム(65gの脱イオン水中に1.72g)および亜硫酸水素ナトリウム(65gの脱イオン水中に0.84g)の溶液を、その後105分にわたって同時に注射器ポンプで供給した。注射器ポンプ供給の開始に次いで、5.7gの脱イオン水中0.198gの亜硫酸水素ナトリウムの溶液、その後7.8gの硫酸鉄(II)0.15%水溶液を、反応器に注ぎ入れた。次いでMEの残りを100分掛けて供給し(7.6g/分)、その後60gの脱イオン水ですすいだ。MEの供給中の反応温度は、78℃に維持した。亜硫酸水素ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムの供給の完了後、反応器を78℃に5分間保持し、次いで70℃に冷却した。この時点でt−ブチルヒドロペルオキシド(20.09gの水中に0.221g)の追加溶液および20gの脱イオン水中0.145gのイソアスコルビン酸の溶液を反応器に加え、反応器を70℃で30分撹拌し、その後室温に冷却して100メッシュスクリーンを通してろ過した。エマルションのpHは2.6であった。最終エマルションは、37.33%の固体、ならびにそれぞれ6、13、および0ppmの、残余EA、EHA、およびBAを有した。
【0024】
実施例3.懸濁力が改善されたミクロゲルレオロジー改質剤の調製。塔頂撹拌、熱電対、および窒素バブラーを備えた2Lのガラス容器に199.4gの脱イオン水および0.27gの酢酸を装入し、75℃に加熱した。実施例1からの種エマルションの一部(15.1g)を、11.8gの脱イオン水で反応器にゆすぎ入れた。別の容器において、10.1gの脱イオン水、0.29gのアニオン性硫酸塩界面活性剤(TRITON XN−45S、60%溶液、Dow)、0.036gのTMPDE、14.51gのMMA、0.43gのAA、および18.24gのBAを乳化するまで混合した(ME1)。ME1の一部(16.43g)を、反応器に加え、その後10.35gの脱イオン水中0.74gの過硫酸アンモニウムの溶液を加えた。この時点で、過硫酸アンモニウム(65gの脱イオン水中に1.72g)および亜硫酸水素ナトリウム(65gの脱イオン水中に0.84g)の溶液を、その後105分にわたって同時に注射器ポンプで供給した。注射器ポンプ供給の開始に次いで、5.7gの脱イオン水中0.198gの亜硫酸水素ナトリウムの溶液、その後7.8gの硫酸鉄(II)0.15%水溶液を、反応器に注ぎ入れた。次いでME1の残りを9.25分掛けて供給し、その後10gの脱イオン水ですすいだ。第2のモノマーエマルション(ME2)を、273.5gの脱イオン水、7.06gのTRITON XN−45S、0.56gのTMPDE、286.05gのEA、および179.84gのMAAから調製した。これを3.6mL/分の速度で10.75分間、その後6mL/分で10分間および次いで9.66mL/分で70分間反応器に注ぎ込み、その後50gの脱イオン水ですすいだ。ME1およびME2の供給中の反応温度は、78℃に維持した。亜硫酸水素ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムの供給の完了後、反応器を78℃に5分間保持し、次いで70℃に冷却した。この時点でt−ブチルヒドロペルオキシド(20.09gの水中に0.221g)の追加溶液および20gの脱イオン水中0.145gのイソアスコルビン酸の溶液を反応器に加え、反応器を70℃で30分撹拌し、その後室温に冷却して100メッシュスクリーンを通してろ過した。エマルションのpHは2.5であった。最終エマルションは、37.68%の固体、ならびにそれぞれ5および2ppmの、残余EAおよびBAを有した。
【0025】
比較例C2.単一モノマーエマルションを有するプロセスの実証。塔頂撹拌、熱電対、および窒素バブラーを備えた2Lのガラス容器に199.4gの脱イオン水および0.27gの酢酸を装入し、75℃に加熱した。実施例1からの種エマルションの一部(15.1g)を、11.8gの脱イオン水で反応器にゆすぎ入れた。別の容器において、283.6gの脱イオン水、7.35gのTRITON XN−45S、0.596gのTMPDE、14.51gのMMA、18.24gのBA、286.05gのEA、0.43gのAA、および179.84gのMAAを乳化するまで混合した(ME)。MEの一部(16.43g)を、反応器に加え、その後10.35gの脱イオン水中0.74gの過硫酸アンモニウムの溶液を加えた。この時点で、過硫酸アンモニウム(65gの脱イオン水中に1.72g)および亜硫酸水素ナトリウム(65gの脱イオン水中に0.84g)の溶液を、その後105分にわたって同時に注射器ポンプで供給した。注射器ポンプ供給の開始に次いで、5.7gの脱イオン水中0.198gの亜硫酸水素ナトリウムの溶液、その後7.8gの硫酸鉄(II)0.15%水溶液を、反応器に注ぎ入れた。次いでMEの残りを100分掛けて供給し(7.6g/分)、その後60gの脱イオン水ですすいだ。MEの供給中の反応温度は、78℃に維持した。亜硫酸水素ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムの供給の完了後、反応器を78℃に5分間保持し、次いで70℃に冷却した。この時点でt−ブチルヒドロペルオキシド(20.09gの水中に0.221g)の追加溶液および20gの脱イオン水中0.145gのイソアスコルビン酸の溶液を反応器に加え、反応器を70℃で30分撹拌し、その後室温に冷却して100メッシュスクリーンを通してろ過した。エマルションのpHは2.6であった。最終エマルションは、37.7%の固体、ならびにそれぞれ1.6および0ppmの、残余EAおよびBAを有した。
【0026】
実施例4.本実施例においては、より高希釈であることを除いて実施例2の手順に従った。塔頂撹拌、熱電対、および窒素バブラーを備えた2Lのガラス容器に249.4gの脱イオン水および0.27gの酢酸を装入し、75℃に加熱した。実施例1からの種エマルションの一部(15.1g)を、11.8gの脱イオン水で反応器にゆすぎ入れた。別の容器において、10.1gの脱イオン水、0.29gのアニオン性硫酸塩界面活性剤(TRITON XN−45S、60%溶液、Dow)、0.036gのTMPDE、14.51gのMMA、0.43gのAA、および18.24gのBAを乳化するまで混合した(ME1)。ME1の一部(16.43g)を、反応器に加え、その後10.35gの脱イオン水中0.74の過硫酸アンモニウムの溶液を加えた。この時点で、過硫酸アンモニウム(140gの脱イオン水中に1.72g)および亜硫酸水素ナトリウム(140gの脱イオン水中に0.84g)の溶液を、その後105分にわたって同時に注射器ポンプで供給した。注射器ポンプ供給の開始に次いで、5.7gの脱イオン水中0.198gの亜硫酸水素ナトリウムの溶液を、その後7.8gの硫酸鉄(II)0.15%水溶液を、反応器に注ぎ入れた。次いでME1の残りを9.25分掛けて供給し、その後10gの脱イオン水ですすいだ。第2のモノマーエマルション(ME2)を、273.5gの脱イオン水、7.06gのTRITON XN−45S、0.56gのTMPDE、243.8gのEA、23.3gのEHA、18.95のVEOVA、および179.84gのMAAから調製した。これを3.6mL/分の速度で10.75分間、その後6mL/分で10分間および次いで9.66mL/分で70分間反応器に注ぎ込み、その後50gの脱イオン水ですすいだ。ME1およびME2の供給中の反応温度は、78℃に維持した。亜硫酸水素ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムの供給の完了後、反応器を78℃に5分間保持し、次いで70℃に冷却した。この時点でt−ブチルヒドロペルオキシド(20.09gの水中に0.221g)の追加溶液および20gの脱イオン水中0.145gのイソアスコルビン酸の溶液を反応器に加え、反応器を70℃で30分撹拌し、その後室温に冷却して100メッシュスクリーンを通してろ過した。エマルションのpHは2.4であった。最終エマルションは、31.13%の固体を有した。
【0027】
実施例C3.本実施例においては、実施例C1の手順に厳密に従った。エマルションのpHは2.6であった。最終エマルションは、36.52%の固体を有した。
【0028】
実施例5.気泡懸濁化の比較。分散系A:実施例4のポリマーの水性分散系を、脱イオン水中で適量のラテックスをスラリー化し、その後水酸化ナトリウム溶液の追加および十分な脱イオン水の追加によってpHを8.3±0.5に調整して混合物中のポリマーの濃度を1.5wt%にすることにより調製した。分散系B:実施例C3のポリマーの水性分散系を、同様の方法で調製した。分散系AおよびBを、調製後に1日休ませ、次いで遠心分離して気泡を取り除いた。それぞれの分散系の約20mLを1オンスのガラスシンチレーションバイアル内に置き、100μLのエッペンドルフ分注器(Eppendorf pipettor)を用いてそれぞれの底部で20μLの気泡を注入した。分散系A中の気泡は、室温において24時間で約1mm移動した。これを2回繰り返し、同じ結果を得た。分散系B中の気泡は、1秒未満に1.5cm移動した。これをさらに4回繰り返し、同じ結果を得た。分散系Aを含むバイアルをオーブン内に置いて40℃に設定し、その中で20μLの泡はその温度で93時間後にさらに1mm上昇した。
【0029】
【表1】