(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558843
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/88 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
A61F2/88
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-501723(P2018-501723)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2017006518
(87)【国際公開番号】WO2017146080
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2019年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-33783(P2016-33783)
(32)【優先日】2016年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515212677
【氏名又は名称】株式会社PENTAS
(74)【代理人】
【識別番号】100168952
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】西岸 誠
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102015107291(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0288637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線がらせん状に編み込まれたステントであって、
前記複数の素線のうちの一部の同じ巻き方向の偶数本の素線に対して、プラチナを含む合金を素材とした素線を等間隔に配置することを特徴とするステント。
【請求項2】
請求項1に記載のステントにおいて、
前記複数の素線のうちの同じ巻き方向の2本の素線に対して、前記プラチナを含む合金を素材とした素線を等間隔に配置することを特徴とするステント。
【請求項3】
請求項1または2に記載のステントにおいて、
前記複数の素線は、コバルトクロム合金を素材とする素線であって、
前記プラチナを含む合金を素材とした素線は、プラチナイリジウム合金を素材とする素線であることを特徴とするステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
次のような医療用のステントが知られている。このステントは、複数の素線がらせん状に編み込まれることにより形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−223209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、複数の素線をらせん状に編み込んだステントを用いた動脈瘤の治療が行われている。ステントを構成する素線として、ステンレス、Co−Cr合金(コバルトクロム合金)、Ni−Ti合金(ニッケルチタン合金)などの金属製の素材が用いられるのが一般的であるが、これらの素材はX線透過性を有しているため、X線撮影では患者の血管に留置したステントが写らない可能性があり、患者のステントの留置位置を確認することができなかった。これを解消するために、ステントにX線不透過性を有するプラチナを含む合金を素材とした素線を含めることが考えられるが、プラチナを含む合金を素材とした素線は、一般的な素線と比較すると拡張性で劣るため、ステントに含めるプラチナを含む合金を素材とした素線の本数を奇数本とすると、ステントが均一に拡張しないおそれがあった。しかしながら、従来は、この点を加味してプラチナを含む合金を素材とした素線の本数を決定する方法については何ら検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、ステントは、複数の素線がらせん状に編み込まれたステントであって、複数の素線のうちの一部の
同じ巻き方向の偶数本の素線に対して、プラチナを含む合金を素材とした素線を
等間隔に配置する。
本発明の第2の態様によると、第1の態様のステントにおいて、複数の素線のうちの
同じ巻き方向の2本の素線に対して、プラチナを含む合金を素材とした素線を
等間隔に配置する
。
本発明の第
3の態様によると、
第1または第2の態様のステントにおいて、複数の素線は、コバルトクロム合金を素材とする素線であって、プラチナを含む合金を素材とした素線は、プラチナイリジウム合金を素材とする素線である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の素線のうちの一部の偶数本の素線に対して、プラチナを含む合金を素材とした素線を配置するようにしたので、ステントの拡張時に、ステントが均一に拡張するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】複数の素線がらせん状に編み込まれたステントの形状を模式的に示した図。
【
図2】ステントの展開図において、プラチナ合金線の配置例を模式的に示した図。
【
図3】ステントの側面図において、プラチナ合金線の配置例を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態におけるステントの形状を模式的に示した図である。本実施の形態では、
図1に示すように、複数の素線がらせん状に編み込まれたステント10を想定する。素線には、例えば、ステンレス、Co−Cr合金(コバルトクロム合金)、Ni−Ti合金(ニッケルチタン合金)などの金属製の素材が用いられる。
【0009】
ステント10は、このように金属製の素線の複数本をらせん状に編み込むことによって形成され、ステント10を構成する素線の本数には、複数のタイプがある。例えば、16本の素線を編み込んだ16本構造のステント、24本の素線を編み込んだ24本構造のステント、32本の素線を編み込んだ32本構造のステントなどがある。なお、
図1では、16本構造のステントを示している。
【0010】
このような複数の金属製の素線をらせん状に編み込んで形成されるステント10では、金属製の素線のX線透過性により、X線撮影では、患者体内のステントを撮影することができず、患者のステントの留置位置を確認することができなかった。これを解決するために、本実施の形態におけるステントでは、ステントを構成する複数の素線のうちの一部の素線に対して、X線不透過性を有するプラチナを含んだ合金を素材とした素線を配置する。
【0011】
本実施の形態では、コバルトクロム合金を素材とする素線(以下、「Co−Cr素線」と呼ぶ)で構成されるステントにおいて、そのうちの複数本、例えば2本の素線に隣接させて、プラチナイリジウム合金を素材とする素線(以下、「Pt−Ir素線」と呼ぶ)を配置する場合について説明する。
【0012】
図2は、16本構造のステントの展開図において、Pt−Ir素線の配置例を模式的に示した図である。
図2に示す例では、斜め右上を向く第一の方向と斜め左上を向く第二の方向の各方向にそれぞれ8本の素線が巻かれて編み込まれている。
図2において、展開図の上部と下部に付した数字は、素線の連続性をわかりやすくするために便宜的に付した数字であり、それ以外の意味は持たない。展開図の上部に付した数字は、
図2上で斜め右上を向く第一の方向に巻かれた素線の連続性を示す数字である。例えば、上部に同じ数字が付されている素線は、第一の方向に巻かれた1本の素線を表している。また、展開図の下部に付した数字は、
図2上で斜め左上を向く第二の方向に巻かれた素線の連続性を示す数字である。例えば、下部に同じ数字が付されている素線は、第二の方向に巻かれた1本の素線を表している。
【0013】
本実施の形態では、ステントを構成するCo−Cr素線のうち、同じ巻き方向の偶数本の素線に対して、Pt−Ir素線を配置する。
図2では、第一の方向に巻かれた素線3に対して、太線で示されたPt−Ir素線2aを配置し、第一の方向に巻かれた素線7に対して、太線で示されたPt−Ir素線2bを配置した例を示している。すなわち、
図2では、第一の方向に巻かれたCo−Cr素線3とCo−Cr素線7に対して、2本のPt−Ir素線2aとPt−Ir素線2bとが配置されている。このように、ステントの均一な拡張性と拡張力の観点からは、
図2に示したように、ステントに2本のPt−Ir素線を配置するのが好ましい。
【0014】
ここで、ステントに2本のPt−Ir素線を配置するのが好ましい理由について説明する。Pt−Ir素線は、Co−Cr素線と比較すると拡張性の面で劣るため、ステントに配置するPt−Ir素線の本数は、できるだけ少ない方がステントの拡張力を確保できる。また、ステントに配置するPt−Ir素線の本数を奇数本とすると、ステントが均一に拡張しないおそれが生じる。このため、Pt−Ir素線の本数は、偶数かつできるだけ少ない本数の条件を満たす2本が最適といえる。
【0015】
また、
図2に示したように、2本のPt−Ir素線を同じ巻き方向となるように配置するのは、次の理由による。2本のPt−Ir素線を異なる巻き方向となるように配置した場合には、
図3(a)に示すように、ステントの部分によって、2本のPt−Ir素線の間隔が異なる。すなわち、
図3(a)に示すステント上の位置3aでは2本のPt−Ir素線2aと2bの間隔が広いのに対して、位置3bでは2本のPt−Ir素線2aと2bの間隔が狭くなっている。この位置3bのように2本のPt−Ir素線2aと2bの間隔が狭くなる位置においては、Pt−Ir素線2aと2bの間の部分が塑性変形するため、位置3aにおけるステントの断面形状と、位置3bにおけるステントの断面形状が異なってしまう。このように、2本のPt−Ir素線を異なる巻き方向となるように配置した場合には、ステント上の位置によってステントの断面形状が変化してしまう。
【0016】
これに対して、2本のPt−Ir素線を等間隔で同じ巻き方向となるように配置した場合には、
図3(b)に示すように、2本のPt−Ir素線2aと2bの間隔はどの位置においても変わらないため、ステント上の位置によって断面形状が変化することはない。本実施の形態では、2本のPt−Ir素線2aと2bを同じ巻き方向となるように配置することにより、ステント上の位置によって断面形状が変化することを防止している。
【0017】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)複数の素線がらせん状に編み込まれたステントにおいて、複数の素線のうちの一部の偶数本の素線に対して、プラチナを含む合金を素材としたPt−Ir素線を配置するようにした。これによって、プラチナのX線不透過性により、X線撮影時にステントの留置位置を確認することが可能となる。さらに、ステントの拡張時に、ステントが均一に拡張するようにすることができる。
【0018】
(2)複数の素線のうちの2本の素線に対して、Pt−Ir素線を配置するようにした。これによって、ステントの拡張力を確保した上で、ステントが均一に拡張するようにPt−Ir素線を配置することができる。
【0019】
(3)複数の素線のうちの同じ巻き方向の素線に対して、Pt−Ir素線を配置するようにした。これによって、ステントのどの位置においても、同じ断面形状を確保することができる。
【0020】
―変形例―
なお、上述した実施の形態のステントは、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、ステントに配置する2本のプラチナを含んだ合金を素材とした素線として、プラチナイリジウム合金を素材とするPt−Ir素線を配置する例について説明した。しかしながら、ステントに配置する素材として適切であり、かつX線不透過性を有するプラチナを含んだ合金を素材であれば、Pt−Ir素線に限定されない。
【0021】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。
【0022】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2016年第33783号(2016年2月25日出願)
【符号の説明】
【0023】
10 ステント
2a 第一のプラチナ合金線
2b 第二のプラチナ合金線