(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558846
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】配管支持具および配管支持部材
(51)【国際特許分類】
F16L 3/14 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
F16L3/14 B
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-77272(P2015-77272)
(22)【出願日】2015年4月4日
(65)【公開番号】特開2016-196932(P2016-196932A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】515093272
【氏名又は名称】田口 暎又
(73)【特許権者】
【識別番号】596168649
【氏名又は名称】正田 雅造
(74)【代理人】
【識別番号】100097744
【弁理士】
【氏名又は名称】東野 博文
(72)【発明者】
【氏名】田口 暎又
(72)【発明者】
【氏名】正田 雅造
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第03026221(DE,A1)
【文献】
特開昭52−151455(JP,A)
【文献】
実開平07−028280(JP,U)
【文献】
仏国特許出願公開第03001009(FR,A1)
【文献】
特開2003−042526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L3/00−3/26
F16B2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材で周面が被覆された空調用配管を天井に吊り支持する配管支持具であって、
前記空調用配管を吊り下げ支持する可撓性バンドと、
前記可撓性バンドの幅と大略同じ幅を有する取付本体部と、
当該取付本体部の前記可撓性バンドの装着側と反対の側に屈曲した形状のヘッド部と、
当該ヘッド部に設けられた開口部であって、天井吊りボルトが挿通される前記開口部と、
当該取付本体部の前記可撓性バンドの挿通側に位置し、前記可撓性バンドを収容する間隔を有するバンド案内部と、
前記バンド案内部に挿通された前記可撓性バンド部を、前記取付本体部に固定するバンド固定部と、
を備えると共に、
前記可撓性バンドは、プラスチック材料、当該プラスチック材料とガラス繊維又は金属繊維からなる繊維強化プラスチック材料、当該プラスチック材料を表面にコートした金属製複合材料の何れか一種類よりなると共に、
前記可撓性バンドは前記断熱材が圧縮変形して断熱性能に影響がでないような幅を有する構成とすることを特徴とする配管支持具。
【請求項2】
前記取付本体部は、前記空調用配管を吊り下げた状態での前記配管支持具の重心位置が、前記ヘッド部の開口部に対して大略鉛直線上に位置するように保持する、オフセット部材を有することを特徴とする請求項1に記載の配管支持具。
【請求項3】
前記オフセット部材は、前記ヘッド部の曲げ剛性を高める第1折り曲げ部と、前記第1折り曲げ部と前記取付本体部とを傾斜した状態で連結する第2折り曲げ部とを有し、
前記第2折り曲げ部の傾斜態様は、前記空調用配管を吊り下げた状態での前記配管支持具の重心位置が、前記ヘッド部の開口部に対して大略鉛直線上に位置するように保持するオフセット値を確保する姿勢であることを特徴とする請求項2に記載の配管支持具。
【請求項4】
前記取付本体部は、当該ヘッド部に設けられた開口部と連通する連通開口部を有し、
前記連通開口部は、前記天井吊りボルトに止めネジが羅着された状態で通過できる形状の拡大開口部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の配管支持具。
【請求項5】
前記バンド案内部は、前記可撓性バンドの挿通側の両端に位置するように前記取付本体部に設けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の配管支持具。
【請求項6】
前記可撓性バンドは、一定間隔で設けられた挿通用開口部を有し、
前記バンド固定部は、前記ヘッド部と前記バンド案内部との間に位置する折り曲げ可能な突状部材を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の配管支持具。
【請求項7】
前記突状部材は前記可撓性バンドの挿通側に傾斜していると共に、当該突状部材の先端は前記可撓性バンド部の前記挿通用開口部に貫入する形状であることを特徴とする請求項6に記載の配管支持具。
【請求項8】
前記突状部材は、先端が細くなっていると共に、当該先端の基部は前記突状部材の軸部よりも幅広に形成されており、当該先端の基部の幅広形状は前記挿通用開口部よりも僅かに大きくなっていることを特徴とする請求項6又は7に記載の配管支持具。
【請求項9】
前記バンド案内部は、前記可撓性バンドの挿通側の両端に位置する折り曲げ部を有すると共に、当該折り曲げ部の間には前記突状部材の幅よりも大きな間隙部を有し、
前記バンド固定部は、前記突状部材を前記可撓性バンド部の前記挿通用開口部と係合させて、前記突状部材を前記バンド案内部の間隙部の位置する方向に折り曲げて、前記可撓性バンド部を前記取付本体部に固定することを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の配管支持具。
【請求項10】
前記可撓性バンド部は、結露のしにくい材料よりなることを特徴とする請求項1に記載
の配管支持具。
【請求項11】
断熱材で周面が被覆された空調用配管を天井に吊り支持する配管支持具に用いられると共に、空調用配管を吊り下げ支持する可撓性バンドを保持する配管支持部材であって、
前記可撓性バンドの幅と大略同じ幅を有する取付本体部と、
当該取付本体部の前記可撓性バンドの装着側と反対の側に屈曲した形状のヘッド部と、
当該ヘッド部に設けられた開口部であって、天井吊りボルトが挿通される前記開口部と、
当該取付本体部の前記可撓性バンドの挿通側に位置し、前記可撓性バンドを収容する間隔を有するバンド案内部と、
前記バンド案内部に挿通された前記可撓性バンド部を、前記取付本体部に固定するバンド固定部と、
を備えると共に、
前記可撓性バンドは、プラスチック材料、当該プラスチック材料とガラス繊維又は金属繊維からなる繊維強化プラスチック材料、当該プラスチック材料を表面にコートした金属製複合材料の何れか一種類よりなると共に、
前記可撓性バンドは前記断熱材が圧縮変形して断熱性能に影響がでないような幅を有する構成とすることを特徴とする配管支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の天井内に配置するダクトや断熱材で周面が被覆された空調用配管を天井に吊り支持する配管支持具に関し、特に多様なダクト形状や配管外径にも対処できる配管支持具に関する。
また、本発明は当該配管支持具に用いて好適な配管支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の天井内に配置するダクトや断熱材で周面が被覆された空調用配管を天井に吊り支持する部材として、配管支持具が用いられている。このような配管支持具では、特許文献1のような金属製の部材が用いられている。しかし、このような金属製バンドを用いて空調用配管を吊り支持する構造の場合、複数の空調用配管を単一の金属製バンドを用いて吊り支持することはできず、各空調用配管に応じて金属製バンドを用いる必要があった。また、建設現場では十分な照明が得られない状況の場合も多く、明視できる状態であれば簡単なバンドの縮拡径作業も、現実の作業者にとっては大きな負担となっていた。
【0003】
さらに、汎用されている金属製の配管支持具では、特許文献2で指摘されているように、吊り金具によって略水平方向に支持された配管(横引き配管)は、吊り金具のバンド部においてその自重により、配管被覆部の潰れや配管被覆部の破れ等の不具合を生じる場合があった。このような配管被覆部の潰れや破れは、配管の保温・断熱機能の低下を招き、結露・熱ロス等の発生という空気調和機器上の問題を生じ得るという課題があった。特に、空調用配管に起因する結露は、空調用配管が天井裏に設置されているため、天井に結露した水として浸み出す。この浸出水が乾燥すると天井板のシミとなり、室内の美観を害するという課題があった。
【0004】
また、建設現場では、工場生産のような製造条件の均一性は確保されないのが通例であり、建設現場の実情に応じた臨機応変な施工作業が求められている。しかし、臨機応変な施工作業によって、施工作業に手間取ったり、空調用配管や配管支持具の施工工事後の建物への取付状態が設計図通りとならない不都合を生じる蓋然性を高めている。そこで、特許文献3のように磁性を用いて吊り下げ支持することが、提案されている。しかし、吊り金具に磁性を用いた専用機器を使用することが必要となり、汎用の吊り金具が使用できなくなり、設備価格が高止まりするという課題があった。
【0005】
また、特許文献4では、業務用冷蔵庫やショーケース用のパイプ締結金具が提案されている。しかし、このようなパイプ締結金具は、業務用冷蔵庫やショーケース等の冷却装置側の配管に装着されるものであり、上記空調用配管を天井に吊り支持する部材として使用することができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−154384号公報
【特許文献2】特許第5371234号公報
【特許文献3】WO97/09537号公報
【特許文献4】特開平8−28757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、建築物の天井内に配置するダクトや断熱材で周面が被覆された空調用配管を天井に吊り支持する場合に、極めて容易に作業することができると共に、結露をする可能性の少ない配管支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の配管支持具は、例えば
図1に示すように、
断熱材で周面が被覆された空調用配管40を天井に吊り支持する配管支持具であって、空調用配管40を吊り下げ支持する可撓性バンド30と、可撓性バンド30の幅と大略同じ幅を有する取付本体部12と、取付本体部12の可撓性バンド30の装着側と反対の側に屈曲した形状のヘッド部14と、ヘッド部14に設けられると共に、天井吊りボルト50が挿通されるボルト取付用開口部16と、取付本体部12の可撓性バンド30の挿通側に位置し、可撓性バンド30を収容する間隔を有するバンド案内部18と、バンド案内部18に挿通された可撓性バンド30を、取付本体部12に固定するバンド固定部20とを備える
と共に、可撓性バンド30は、プラスチック材料、当該プラスチック材料とガラス繊維又は金属繊維からなる繊維強化プラスチック材料、当該プラスチック材料を表面にコートした金属製複合材料の何れか一種類よりなると共に、前記可撓性バンドは前記断熱材が圧縮変形して断熱性能に影響がでないような幅を有する構成とするものである。
【0009】
本発明の配管支持具によれば、
プラスチック材料、繊維強化プラスチック材料、又は当該プラスチック材料を表面にコートした金属製複合材料よりなる可撓性バンド30によって、
断熱材で周面が被覆された空調用配管40を吊り下げ支持する。可撓性バンド30はバンド案内部18に挿通され、バンド固定部20によって取付本体部12に固定されるので、空調用配管40を天井に対して所定の姿勢、例えば水平に保持することができる。取付本体部12は、ボルト取付用開口部16に天井吊りボルト50を挿通させることで、天井に吊り支持状態で固定される。ヘッド部14は、取付本体部12の可撓性バンド30の装着側と反対の側に屈曲した形状であるため、天井吊りボルト50と空調用配管40が干渉しない位置に取付本体部12を保持できる。このため、空調用配管40の取付作業性が著しく向上する。
好ましくは、バンド案内部18は、可撓性バンド30が2枚重なった状態を収容する間隔を有するとよい。
【0010】
本発明の配管支持具において、好ましくは、例えば
図5乃至
図7に示すように、取付本体部12は、空調用配管40を吊り下げた状態での空調用配管40の重心位置が、ヘッド部14のボルト取付用開口部16に対して大略鉛直線上に位置するように保持する、オフセット部材(124、126)を有するとよい。オフセット部材を設けることで、空調用配管40を吊り下げた状態での空調用配管40の重心位置が、ヘッド部14のボルト取付用開口部16に対して大略鉛直線上に位置するため、ヘッド部14に偏心荷重が作用しなくなり、配管支持具が安定した状態で空調用配管40を天井に吊り支持できる。
【0011】
本発明の配管支持具において、好ましくは、例えば
図5乃至
図7に示すように、オフセット部材は、ヘッド部14の曲げ剛性を高める第1折り曲げ部126と、第1折り曲げ部126と取付本体部12とを傾斜した状態で連結する第2折り曲げ部124とを有し、第2折り曲げ部124の傾斜態様は、空調用配管40を吊り下げた状態での配管支持具の重心位置が、ヘッド部14のボルト取付用開口部16に対して大略鉛直線上に位置するように保持するオフセット値を確保する姿勢であるとよい。
【0012】
本発明の配管支持具において、好ましくは、例えば
図7に示すように、取付本体部12は、ヘッド部14に設けられたボルト取付用開口部172と連通する連通開口部17を有し、連通開口部17は、天井吊りボルト50に止めネジ52が羅着された状態で通過できる形状の拡大開口部174を有するとよい。
本発明の配管支持具において、好ましくは、例えば
図1、
図5乃至
図7に示すように、バンド案内部18は、可撓性バンド30の挿通側の両端に位置するように取付本体部12に設けられるとよい。
【0013】
本発明の配管支持具において、好ましくは、例えば
図1乃至
図4に示すように、可撓性バンド30は、一定間隔で設けられた挿通用開口部32を有し、バンド固定部20は、ヘッド部14とバンド案内部18との間に位置する折り曲げ可能な突状部材22を有するとよい。
本発明の配管支持具において、好ましくは、突状部材22は可撓性バンド30の挿通側に傾斜しており、突状部材22の先端は可撓性バンド30の挿通用開口部32に貫入することができる位置にあるとよい。
本発明の配管支持具において、好ましくは、突状部材22は、先端222が細くなっていると共に、先端222の基部224は突状部材22の軸部226よりも幅広に形成されており、先端222の基部の幅広形状は挿通用開口部32よりも僅かに大きくなっているとよい。
【0014】
本発明の配管支持具において、好ましくは、バンド案内部18は、可撓性バンド30の挿通側の両端に位置する折り曲げ部182、184を有すると共に、当該折り曲げ部の間には突状部材22の幅よりも大きな間隙部186を有し、バンド固定部20は、突状部材22を可撓性バンド30の挿通用開口部32と係合させて、突状部材22をバンド案内部18の間隙部の位置する方向に折り曲げて、可撓性バンド30を取付本体部12に固定するとよい。
本発明の配管支持具において、好ましくは、可撓性バンド30は、結露のしにくい材料よりなるとよい。結露のしにくい材料としては、塩化ビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のプラスチック材料や、これらのプラスチック材料とガラス繊維や金属繊維等の繊維強化プラスチック材料、これらのプラスチック材料を表面にコートした金属製複合材料などがある。
【0015】
上記課題を解決する本発明の配管支持部材は、例えば
図1に示すように、
断熱材で周面が被覆された空調用配管40を天井に吊り支持する配管支持具に用いられると共に、空調用配管40を吊り下げ支持する可撓性バンドを保持する配管支持部材10であって、可撓性バンド30の幅と大略同じ幅を有する取付本体部12と、取付本体部12の可撓性バンド30の装着側と反対の側に屈曲した形状のヘッド部14と、ヘッド部14に設けられると共に、天井吊りボルト50が挿通されるボルト取付用開口部16と、取付本体部12の可撓性バンド30の挿通側に位置し、可撓性バンド30が2枚重なった状態を収容する間隔を有するバンド案内部18と、バンド案内部18に挿通された可撓性バンド30を、取付本体部12に固定するバンド固定部20とを備える
と共に、可撓性バンド30及び取付本体部12は、プラスチック材料、当該プラスチック材料とガラス繊維又は金属繊維からなる繊維強化プラスチック材料、当該プラスチック材料を表面にコートした金属製複合材料の何れか一種類よりなると共に、前記可撓性バンドは前記断熱材が圧縮変形して断熱性能に影響がでないような幅を有する構成とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の配管支持具および配管支持部材によれば、可撓性バンドはバンド案内部に挿通され、バンド固定部によって取付本体部に固定されるので、空調用配管を天井に対して所定の姿勢、例えば水平に保持することができる。取付本体部は、ボルト取付用開口部に天井吊りボルトを挿通させることで、天井に吊り支持状態で固定される。ヘッド部は、取付本体部の可撓性バンドの装着側と反対の側に屈曲した形状であるため、天井吊りボルトと空調用配管が干渉しない位置に取付本体部を保持できる。このため、空調用配管の取付作業性が著しく向上する。
また、可撓性バンドによって、空調用配管を吊り下げ支持しているので、可撓性バンドとして結露のしにくい材料よりなるものを用いることで、結露をする可能性の少ない配管支持具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例を示す配管支持具にて、空調用配管を天井吊りボルトに対して固定する状態を示す構成斜視図で、部品を展開した状態で示してある。
【
図2】本発明の一実施例を示す配管支持具にて、空調用配管を天井吊りボルトに対して固定する状態を示す構成側面図である。
【
図3】本発明の一実施例を示す配管支持部材の詳細構成図である。
【
図4】本発明の一実施例を示す可撓性バンドの平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施例を示す配管支持部材の構成図である。
【
図6】本発明の第3の実施例を示す配管支持部材の構成図である。
【
図7】本発明の第4の実施例を示す配管支持部材の構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面によって本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す配管支持具にて、空調用配管を天井吊りボルトに対して固定する状態を示す構成斜視図で、部品を展開した状態で示してある。
図2は、本発明の一実施例を示す配管支持具にて、空調用配管を天井吊りボルトに対して固定する状態を示す構成側面図である。
図3は、本発明の一実施例を示す配管支持部材の詳細構成図である。
図4は、本発明の一実施例を示す可撓性バンドの平面図である。尚、各図において同一部材については、同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0019】
本発明の配管支持具は、例えば空調用配管40を天井に吊り支持するために使用されるものであり、配管支持部材10と可撓性バンド30の2部品から主に構成されている。天井には、吊り支持用に天井吊りボルト50が予め一定間隔で設けられている。
配管支持部材10は、取付本体部12、ヘッド部14、ボルト取付用開口部16、バンド案内部18、バンド固定部20としての突状部材22を有している。
【0020】
取付本体部12は、可撓性バンド30の幅と大略同じ幅を有するもので、例えば鋼、アルミニューム合金、真鍮、銅合金等の剛性が大きく塑性加工の容易な金属材料を用いるとよいが、樹脂製として量産性を高めてもよい。樹脂としては、汎用のプラスチック材料であればよく、例えば塩化ビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等や、これらのプラスチック材料とガラス繊維や金属繊維等の繊維強化プラスチック材料などがある。
【0021】
ヘッド部14は、取付本体部12の可撓性バンド30の装着側と反対の側に屈曲した形状をしており、天井吊りボルト50に対して固定した状態での剛性を高めるため、天井吊りボルト50の装着側と反対側に折り曲げた補強部142を有している。ボルト取付用開口部16は、ヘッド部14に設けられると共に、天井吊りボルト50が挿通される。ボルト取付用開口部16の形状は、例えば丸穴や角穴とするのがよく、また天井吊りボルト50が挿通しやすいように、天井吊りボルト50の径に対して十分余裕のある大きさ、例えば内径φとするとよい。ボルト取付用開口部16を天井吊りボルト50に係合させた後で、
図2に示すように、作業者はネジ52を天井吊りボルト50に羅着させて、ボルト取付用開口部16が天井吊りボルト50から離脱することを防止する。
【0022】
バンド案内部18は、取付本体部12の可撓性バンド30の挿通側に位置し、可撓性バンド30の厚さtよりも2倍よりも大きな間隔d
1に位置して、可撓性バンド30が2枚重なった状態でも収容できる構造となっている。バンド案内部18は、可撓性バンド30の挿通側の両端に位置する折り曲げ部182、184を有すると共に、当該折り曲げ部の間には突状部材22の幅w
1よりも大きな間隙部186を有する。間隙部186の幅は、例えばw
2とする。
【0023】
バンド固定部20は、バンド案内部18に挿通された可撓性バンド30を、取付本体部12に固定するものである。バンド固定部20は、ヘッド部14とバンド案内部18との間に位置する折り曲げ可能な突状部材22を有する。突状部材22は可撓性バンド30の挿通側に傾斜していると共に、突状部材22の先端222は可撓性バンド30の挿通用開口部32に貫入することが可能な位置にある。バンド固定部20は、突状部材22を可撓性バンド30の挿通用開口部32と係合させて、突状部材22をバンド案内部18の間隙部186の位置する方向に折り曲げて、可撓性バンド30を取付本体部12に固定することが可能な構造となっている。
【0024】
突状部材22は、先端222が細くなっていると共に、先端222の基部224は突状部材22の軸部226よりも幅広に形成されている。先端222の開き角度θは、例えば45度から120度の角度とするのがよく、好ましくは90度とする。軸部226の幅w
1に対して、基部224の幅w
2は幅広になっている。基部224の幅w
2は、可撓性バンド30の挿通用開口部32よりも僅かに大きくして、突状部材22を挿通用開口部32に貫入されると共に、可撓性バンド30に生じる弾性変形によって、突状部材22が挿通用開口部32から抜けることを防止するとよい。
窓部24は、矩形の板金材料から突状部材22を打ち抜き加工するために設けられたもので、取付本体部12を窓状に除去したものである。窓部24を設けることで、取付本体部12に突状部材22を打ち抜き加工する際に生じる、矩形の板金材料の塑性変形が取付本体部12や突状部材22の加工形状に影響を及ぼさなくなる。例えば板金の厚さが1mm程度のときは、窓部24と基部224とのクリアランスは、板金の厚さの2倍から5倍程度の隙間を確保するような形状に定める。
【0025】
可撓性バンド30は、空調用配管40を吊り下げ支持するもので、その幅は空調用配管40が断熱材で周面が被覆されている場合でも、断熱材が圧縮変形して断熱性能に影響がでないように、充分な幅を有するとよく、例えば50mmから100mm程度の幅とするのがよい。可撓性バンド30の厚さは、空調用配管40を吊り下げ支持するのに必要な強度を有するように定めるとよく、例えば0.5mmから5mm程度の厚さとするのがよい。可撓性バンド30はバンド案内部18に挿通され、バンド固定部20によって取付本体部12に固定されるので、空調用配管40を天井に対して所定の姿勢、例えば水平に保持することができる。
【0026】
可撓性バンド30は、結露のしにくい材料よりなるとよい。結露のしにくい材料としては、塩化ビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のプラスチック材料や、これらのプラスチック材料とガラス繊維や金属繊維等の繊維強化プラスチック材料、これらのプラスチック材料を表面にコートした金属製複合材料などがある。
【0027】
また、可撓性バンド30は、一定間隔で設けられた挿通用開口部32を有するとよい。挿通用開口部32は、各種の開口部形状を用いることができ、例えば突状部材22の先端形状に適合するように、五角形や七角形のような多角形や丸穴、平穴、小判穴等を用いることができる。丸穴は、突状部材22が丸棒状の棒材である場合に適合する。五角形や七角形のような多角形は、突状部材22が平板状の突状板材で、先端が突端形状を有する場合に適合する。挿通用開口部32の形状としては、三角形や四角形等の多角形や、星型のような凹部を有するものでもよい。挿通用開口部32は、可撓性バンド30が空調用配管40を吊り下げ支持する場合に、強度不足によって隣接する挿通用開口部32にまで開口部が拡大しないように、適切な間隔で設けると良い。
図4に示す一実施例では、挿通用開口部32として五角形開口部322、丸穴開口部324、小五角形開口部326、丸穴開口部328がこの順で繰り返して設けられている。
【0028】
以上の構成を有する本発明の配管支持具により空調用配管40を天井に取り付ける手順を説明する。天井には、吊り支持用に天井吊りボルト50が予め一定間隔で設けられている。空調用配管40は、典型的には周面が断熱材で被覆されているもので、単一の配管支持具により単一の空調用配管40を取り付ける場合でもよく、また複数の空調用配管40を取り付けてもよい。複数の空調用配管40を取り付ける場合は、可撓性バンド30の長さがそれに応じた長さとなる。可撓性バンド30は複数の空調用配管40が平行に当接した状態で、配管支持部材10に取り付けられる。
【0029】
ここでは、単一の配管支持具により単一の空調用配管40を取り付ける場合を例に説明する。まず、作業者は配管支持部材10のボルト取付用開口部16を天井吊りボルト50に挿入して、ネジ52を用いて、配管支持部材10を天井吊りボルト50に仮止めする。次に、可撓性バンド30の一端をバンド案内部18を介して、バンド固定部20に固定する。具体的には、可撓性バンド30の挿通用開口部32を突状部材22に貫入させて、可撓性バンド30を配管支持部材10に係合させる。そして、可撓性バンド30がロール状に巻かれている場合には、可撓性バンド30を空調用配管40の取付用に適した長さに切断する。なお、可撓性バンド30は予め一定長さに切断されていてもよい。
【0030】
次に、可撓性バンド30をU字形に屈曲させて空調用配管40の周囲に当接させる。この場合、可撓性バンド30を空調用配管40の周囲に捲回してもよい。そして、可撓性バンド30の他端をバンド案内部18を介して、バンド固定部20に固定する。具体的には、可撓性バンド30の挿通用開口部32を突状部材22に貫入させて、可撓性バンド30を配管支持部材10に係合させる。このようにして、可撓性バンド30の一端側と他端側が重なった状態で、バンド案内部18に係止される。
【0031】
次に、バンド固定部20の突状部材22を、バンド案内部18の間隙部186の位置する方向に折り曲げて、可撓性バンド30を取付本体部12に固定する。このようにして、可撓性バンド30は、U字形に屈曲させられた状態で、空調用配管40を支持する。最後に、ネジ52を用いて、配管支持部材10を天井吊りボルト50に本止めする。
【0032】
このように、本発明では配管支持部材10を天井吊りボルト50に仮止めした状態で、可撓性バンド30の空調用配管40を支持する作業が行えるので、作業者の両手が自由となり、配管支持部材10の天井吊りボルト50への挿通から螺合に至る一連の作業を両手を使って行うことができる。また、ヘッド部14が取付本体部12の可撓性バンド30の装着側と反対の側に屈曲した形状であるため、配管支持部材10の天井吊りボルト50への取付作業と、可撓性バンド30の空調用配管40支持作業が干渉せず行え、建設現場での天井取付作業が円滑に行える。
【0033】
図5は、本発明の第2の実施例を示す配管支持部材の構成図である。尚、
図5において前出した図面に表記した同一部材については、同一符号を付して重複する説明は省略する。取付本体部12は、オフセット部材としての、第1折り曲げ部126と、第2折り曲げ部124とで構成される。第1折り曲げ部126は、ヘッド部14の曲げ剛性を高めていると共に、天井吊りボルト50に羅着された止めネジ52がヘッド部14の補強部142との間に収まるような形状とする。第2折り曲げ部124は、第1折り曲げ部126と取付本体部12とを傾斜した状態で連結するもので、その傾斜態様は、空調用配管40を吊り下げた状態での配管支持具の重心位置が、ヘッド部14のボルト取付用開口部16に対して大略鉛直線上に位置するように保持するオフセット値を確保する姿勢である。
【0034】
突状部材22は、先端221が大略楕円状に細くなっていると共に、先端221の基部223は突状部材22の軸部225よりも幅広に形成されている。基部223の幅は、可撓性バンド30の挿通用開口部32よりも僅かに大きくして、突状部材22を挿通用開口部32に貫入されると共に、可撓性バンド30に生じる弾性変形によって、突状部材22が挿通用開口部32から抜けることを防止するとよい。
第2の実施例によれば、オフセット部材124、126を設けることで、空調用配管40を吊り下げた状態での空調用配管40の重心位置が、ヘッド部14のボルト取付用開口部16に対して大略鉛直線上に位置するため、ヘッド部14に偏心荷重が作用しなくなり、配管支持具が安定した状態で空調用配管40を天井に吊り支持できる。
【0035】
図6は、本発明の第3の実施例を示す配管支持部材の構成図である。第3の実施例では、上記第2の実施例に対して、さらにファスナー取付穴26をバンド案内部18の中央部近傍に設けたものである。また、取付本体部12にも、バンド案内部18のファスナー取付穴26と対抗する位置にファスナー取付穴(図示せず)を設ける。
ファスナー取付穴26に、例えば樹脂製のファスナー(図示せず)を装着することで、取付本体部12に装着された可撓性バンド30を、バンド案内部18や取付本体部12と一体的に固定する。ファスナー取付穴26が、例えば間隙部186を挟んだ両側のバンド案内部に設けられることで、可撓性バンド30が、バンド固定部20の突状部材22に加えて、ファスナーでも固定される。なお、樹脂製のファスナーは、例えば軸部とファスナー取付穴係合用の係合突起部を有するとよい。樹脂製のファスナーによれば、取付作業性は高まるが、通常のボルトとナットでも同等の機能を有する。
【0036】
図7は、本発明の第4の実施例を示す配管支持部材の構成図である。第4の実施例では、上記第2の実施例に対して、さらに、ヘッド部14に設けられたボルト取付用開口部と連通する連通開口部17を取付本体部12に設けたものである。連通開口部17は、ボルト取付用開口部172、拡大開口部174、オフセット部材側伸長部176を有する。ボルト取付用開口部172は、上記第2の実施例のボルト取付用開口部16と同等の機能を有するが、その形状は天井吊りボルト50の装着利便性を考慮して半円形の領域を有し、他方は拡大開口部174側に伸長した長穴を有する。拡大開口部174は、天井吊りボルト50に止めネジ52が羅着された状態で通過できる形状を有し、例えば止めネジ52よりも僅かに大きな形状を有する。オフセット部材側伸長部176は、止めネジ52を羅着した天井吊りボルト50が通過する程度の長さに定める。
【0037】
第4の実施例によれば、連通開口部17には、天井吊りボルト50に止めネジ52が羅着された状態で通過できる形状の拡大開口部174を有するため、天井吊りボルト50に配管支持部材を取り付ける作業が迅速に行える。
【0038】
上記実施例においては、配管支持部材10を板材から板金加工で形成するのに適した形状とした場合を示している。建築用では、防火性能確保の観点から、不燃材料である金属製が望まれている。しかし、用途によっては、配管支持部材を樹脂を用いたモールド成形加工する場合もあり得る。そのようなモールド成形では、全部を樹脂で成形すると突状部材22の強度が不足したり、あるいは塑性加工に適しない場合もある。そこで、樹脂を用いたモールド成形加工では、配管支持部材10のうち、取付本体部12、ヘッド部14、ボルト取付用開口部16、バンド案内部18、バンド固定部20の一部に金属部材を用いて補強するようにしてもよい。
【0039】
なお、上記の本発明の実施の形態においては、具体的な実施例を用いて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、当業者にとって自明事項の範囲内で設計された態様も含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の配管支持具によれば、建築物の天井内に配置するダクトや断熱材で周面が被覆された空調用配管を天井に吊り支持するのに好適であり、可撓性バンドを適宜の長さとすることで多様なダクト形状や配管外径にも対処できる。
【符号の説明】
【0041】
10 配管支持部材
12 取付本体部
124、126 オフセット部材
14 ヘッド部
16、172 ボルト取付用開口部
17 連通開口部
18 バンド案内部
20 バンド固定部
22 突状部材
24 窓部
30 可撓性バンド
32 挿通用開口部
40 空調用配管
50 天井吊りボルト
52 止めネジ