(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558847
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】建物構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20190805BHJP
E04B 1/682 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
E04H9/02 321E
E04H9/02 301
E04B1/682 A
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-91446(P2015-91446)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-205080(P2016-205080A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 資貴
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直幹
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−003455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00−9/16
E04B 1/00−1/61
E04B 1/682
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁又はスラブと接合された外壁と、
前記梁と接合されかつ前記外壁の壁面と隙間をあけて配置された複数の柱で構成された列柱と、
を有し、
前記列柱を構成する前記複数の柱は、モルタルで打ち増しされて前記外壁と接合された接合柱と、前記外壁と前記隙間をあけて接合されていない非接合柱と、で構成されている建物構造。
【請求項2】
前記外壁における前記非接合柱間の部位及び前記非接合柱と対向する部位の少なくとも一方には、開口部が設けられている、
請求項1に記載の建物構造。
【請求項3】
前記外壁と複数の前記柱との隙間は100mm以下に設定されている、
請求項1又は請求項2に記載の建物構造。
【請求項4】
前記接合柱と前記外壁とに跨って鉄筋が配筋されている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の建物構造。
【請求項5】
前記梁は、前記壁面と隙間をあけて配置され、
前記梁は、充填材で打ち増しされて前記外壁と接合されている、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の建物構造。
【請求項6】
前記梁と前記外壁とに跨って鉄筋が配筋されている、
請求項5に記載の建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、既存建物の耐震補強方法に関する技術が開示されている。この先行技術では、既存建物内の柱とそれに接続する壁の境界部分を斫り、柱と壁との間に縦方向にスリットを形成し、柱と壁とを実質的に分離していることを特徴としている。
【0003】
特許文献2には、構造物の耐震制御構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、水平力に対する抵抗要素となる反力部材を垂直方向の中間部においては制御壁から分離することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開1997−203219号公報
【特許文献2】特開2012−149412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
柱と外壁とが同一構面内にある場合、柱の側面と外壁との間に耐震スリットを設けて短柱化を防止すことが行われている。この場合、柱の側面と外壁との耐震スリット部分を防水構造とする必要がある。
【0006】
本発明は、上記事実を鑑み、防水性能を容易に確保しつつ、柱の短柱化を防止することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様は、梁又はスラブと接合された外壁と、前記梁と接合されかつ前記外壁の壁面と隙間をあけて配置された複数の柱で構成された列柱と、を有し、前記列柱を構成する前記複数の柱は、前記壁面との間に充填材が設けられ前記外壁と接合された接合柱と、前記外壁と接合されていない非接合柱と、で構成されている建物構造である。
【0008】
第1態様では、壁と接合しない非接合柱とすることよって、当該柱の短柱化を防止することができる。また、柱と外壁とが同一構面内にある場合の柱の側面と外壁との間に耐震スリットを設けて短柱化を防止する場合と比較し、防水性能(水密性能)に優れている。
【0009】
また、外壁を耐力壁とする部分は、外壁の壁面との間に充填材を設けて増し打ちして接合した接合柱とする。そして、外壁と接合していない非接合柱と、外壁と接合した接合柱と、を併用することで、外壁の剛性を自由に調整することができる。
【0010】
第2態様は、前記外壁における前記非接合柱間の部位及び前記非接合柱と対向する部位の少なくとも一方には、開口部が設けられている、
第1態様の建物構造である。
【0011】
第2態様では、外壁における非接合柱間の部位及び非接合柱と対向する部位は非耐力壁であるので、開口部を設けて、例えば採光や出入口とすることができる。
【0012】
第3態様は、前記外壁と複数の前記柱との隙間は100mm以下に設定されている、
第1態様又は第2態様の建物構造である。
【0013】
第3態様では、外壁と柱との隙間は100mm以下に設定されているので、充填材での打ち増し量が少なくなる。また、室内空間が広くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、防水性能を容易に確保しつつ、柱の短柱化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は
図2のA部の水平断面図であり、(B)は
図2のB−B線に沿った垂直断面図である。
【
図3】(A)は比較例の
図1(A)に対応する水平断面図であり、(B)は比較例の
図1(B)に対応する垂直断面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る建物構造について説明する。なお、各図において、鉛直方向を矢印Zで示し、水平方向における直交する2方向を矢印X及び矢印Yで示す。また、X方向は、後述する外壁20の面外方向である。
【0017】
(建物構造)
本実施形態の建物構造10について説明する。なお、本実施形態の建物12は、鉄筋コンクリート造であるが、これに限定されるものではない。また、各図において、鉄筋は、図示が省略されている。
【0018】
図2に示すように、本実施形態の建物構造10が適用された建物12は、外壁20の内側(室内側)にY方向に並んだ複数の柱30で構成された列柱38が設けられている。列柱38を構成する各柱30は、外壁20の壁面22と隙間S(
図1参照)をあけて配置されている。なお、柱を示す符号30後のA及びBは、後述するように外壁20に接合されていない非接合柱30Aと、外壁20と接合された接合柱30Bと、を示している。また、非接合柱30Aと接合柱30Bとを区別する必要がない場合は、符号30の後のA及びBを省略して説明する。なお、各柱30における側面32はX方向(外壁20の面外方向)外側を向いた面であり、側面34はY方向に向いた面である。
【0019】
図1(B)に示すように、各柱30には、梁40が接合されている。梁40は、スラブ60を支持している。また、梁40も柱30と同様に建物12の外壁20の壁面22と隙間Sをあけて配置されている。なお、外壁20の壁面22と、複数の柱30の側面32及び梁40の側面42との隙間Sは、100mm以下に設定されている。また、本実施形態では、隙間Sは50mmに設定されている。
【0020】
梁40は、外壁20との間にモルタル等の充填材50を設けて打ち増しすることで、外壁20と接合され、外壁20を支持している。なお、図示されていないが、梁40と外壁20とに跨って鉄筋(例えば、せん断補強筋)が配筋されている。また、スラブ60も外壁20と接合されている。
【0021】
図2に示すように、列柱38を構成する複数の柱30の、図における左端から三番目までの柱30と右端の柱30とは、当該柱30と外壁20との間にモルタル等の充填材52を設けて打ち増しすることで、外壁20と接合されている。なお、図示されていないが、柱30と外壁20とに跨って鉄筋(例えば、せん断補強筋)が配筋されている。
【0022】
前述したように、外壁20と接合されていない柱30を非接合柱30Aとし、外壁20と接合された柱30を接合柱30Bとする。また、
図2における非接合柱30A及び接合柱30Bの配置は一例であって、これに限定されるものではない。
【0023】
そして、外壁20における柱30が接合されていない領域は非耐力壁20A(非耐力壁領域)となり、外壁20における柱30が接合された領域は耐力壁20B(耐力壁領域)となる。また、外壁20における非接合柱30A間の部位及び非接合柱30Aの側面32Aと対向する部位、つまり非耐力壁20Aには、窓やドア等などが設けられた開口部24(
図1参照)及び開口部25が形成されている。
【0024】
(作用効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、外壁20と接合していない非接合柱30Aとすることで、当該非接合柱30Aの短柱化が防止される。また、外壁20には、建物12内外を連通する耐震スリット110(
図3(A)参照)がないので、防水性能に優れている。なお、耐震スリット110については後述する。
【0026】
また、
図2に示すように、外壁20を耐力壁20Bとする部分は、外壁20との間に充填材52を設けて増し打ちして接合した接合柱30Bとする。そして、外壁20と接合していない非接合柱30Aと、外壁20と接合した接合柱30Bと、を併用することで、外壁20の剛性を自由に調整することができる。
【0027】
別の観点から説明すると、外壁20における非耐力壁20Aとする領域と耐力壁20Bとする領域とを自由に設定することができる。
【0028】
また、非接合柱30A間の外壁20は非耐力壁20Aであるので、開口部24を設けて採光(窓)や出入口(ドア)とすることができる。
【0029】
なお、外壁20と柱30及び梁40との隙間Sは100mm以下(本実施形態では50mm)に設定されているので、充填材50及び充填材52による打ち増し量が少なくなる。
【0030】
ここで、
図3に示す比較例の建物構造100について説明する。なお、本実施形態の建物構造10と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、比較例の建物構造100が適用された建物112は、柱30及び梁40と、外壁20とが同一構面内にあり、柱30の側面34と外壁20の端面26との間に耐震スリット110を設けて、柱30の短柱化を防止している。
【0032】
このような建物構造100の場合、柱30の側面34と外壁20の端面26との間、つまり耐震スリット110は建物112の内外を連通しているので、耐震スリット110に、例えば、シール剤120を充填してシールし、防水構造とする必要がある。しかし、このようなシール剤120等による防水構造は、防水性能(水密性能)に限界がある。
【0033】
これに対して、
図1及び
図2に示す本実施形態の建物構造10は、非接合柱30Aは外壁20の壁面22との間に隙間Sを設けて短柱化を防止している。よって、耐震スリット110(
図3(A))のような建物内外を連通する部位がないので、漏水が防止される。つまり、比較例の建物構造100と比較し、本実施形態の建物構造10の方が防水性能(水密性能)に優れている。
【0034】
このように、本実施形態の建物構造10は、防水性能を容易に確保しつつ、柱30(非接合柱30A)の短柱化が防止されている。
【0035】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0036】
例えば、上記実施形態では、
図2に示すように、外壁20における非接合柱30A間の部位に開口部24が設けられ、外壁20における非接合柱30Aの側面32Aと対向する部位に開口部25が形成されていたが、これに限定されない。開口部24及び開口部25のいずれか一方のみが形成されていてよい。或いは、非耐力壁20Aに開口部24、25が形成されていなくてもよい。
【0037】
また、例えば、上記実施形態では、
図1(B)に示すように、梁40を打ち増しして外壁20と接合し、外壁20が支持される構成であったが、これに限定されない。梁40は外壁20と非接合で、スラブ60のみが外壁20と接合されていてもよい。
【0038】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0039】
10 建物構造
12 建物
20 外壁
22 壁面
24 開口部
30A 非接合柱
30B 接合柱
38 列柱
40 梁
52 充填材
S 隙間