(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2圧電振動片は、前記ホルダに対して相対移動不能に前記一端が固定されると共に、前記他端が前記錘部に対してスライド移動可能とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献3、特許文献4にあっては、複数の圧電振動片を厚さ方向に並べているので、圧電振動片全体の剛性が高まる。このため、一塊の錘によって、複数の圧電振動片を纏めて振動させ、これら圧電振動片の所望の振動周波数を得るには、錘が大型化してしまう。したがって、振動発電装置を小型化しにくいという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、2つの圧電振動片を厚さ方向に並べつつ、効果的に小型化できる振動発電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る振動発電装置は、厚さ方向に撓み変形可能とされ、撓み変形による電荷を発生する第1圧電振動片、および第2圧電振動片と、前記第1圧電振動片、および前記第2圧電振動片の長手方向一端を、前記厚さ方向に並べて保持し、前記一端を固定端とするホルダと、前記第1圧電振動片、および前記第2圧電振動片の自由端となる2つの長手方向他端に、これら他端と共に一体的に設けられる錘部と、を備え、前記第1圧電振動片は、前記ホルダに対して相対移動不能に前記一端が固定されると共に、前記錘部に対して相対移動不能に前記他端が固定されており、前記第2圧電振動片は、前記一端および前記他端の何れか一方が、前記ホルダまたは前記錘部に対して相対移動不能に固定されていると共に、他方が前記ホルダまたは前記錘部に対して前記第2圧電振動片の面方向に沿ってスライド移動可能、且つ前記厚さ方向への移動が規制されるように保持されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、錘部が各圧電振動片の厚さ方向に変位する際、第1圧電振動片は、錘部の変位に倣ってそのまま湾曲変形する。
一方、第2圧電振動片の長手方向一端および長手方向他端の何れか一方は、ホルダまたは錘部に対して第2圧電振動片の面方向に沿ってスライド移動自在、且つ厚さ方向への移動が規制されている。このため、第2圧電振動片も、錘部の変位に倣ってそのまま湾曲変形するものの、錘部の変位を阻害するように突っ張ることがない。この結果、第1圧電振動片を中心に、錘部を大きく傾倒させることができるので、錘部の重量を低減してもこの錘部を大きく変位させることが可能になる。よって、圧電振動片の所望の振動周波数を得つつ、振動発電装置を効果的に小型化できる。
【0009】
本発明に係る振動発電装置において、前記ホルダは、前記第1圧電振動片と前記第2圧電振動片との間に所定間隔が空くようにホルダスペーサを有していることを特徴とする。
【0010】
このように、第1圧電振動片と第2圧電振動片との間に所定の間隔を設けることにより、圧電振動片同士が互いの湾曲変形を阻害してしまうことを防止できる。このため、錘部の重量を利用して、各圧電振動片を効率よく湾曲変形させることができるので、この分、錘部の重量を低減でき、振動発電装置を効果的に小型化できる。
【0011】
本発明に係る振動発電装置において、前記第2圧電振動片は、前記ホルダに対して相対移動不能に前記一端が固定されると共に、前記他端が前記錘部に対してスライド移動可能とされていることを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、錘部の重量を利用して、第2圧電振動片を効率よく湾曲変形させることができる。
【0013】
本発明に係る振動発電装置において、前記錘部は、前記第1圧電振動片の他端と前記第2圧電振動片の他端との間に配置される第1錘と、前記第1錘の各前記他端を挟んで反対側に配置される2つの第2錘と、前記第1圧電振動片の他端および前記第2圧電振動片の他端を避けた位置で、且つ前記第1錘と前記第2錘との間に配置される錘スペーサと、を備えていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、錘スペーサの肉厚を調整するだけで、錘部に対する第2圧電振動片のスライド移動を可能にできると共に、厚さ方向への移動を高精度に規制できる。また、第1錘と第2錘とにより構成することで、錘部全体の重量も容易に調整できる。
【0015】
本発明に係る振動発電装置において、前記錘部には、前記第1圧電振動片の他端を相対移動不能に保持する第1スリットと、前記第2圧電振動片の他端をスライド移動可能、且つ厚さ方向への移動が規制されるように保持する第2スリットと、が形成されていることを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、錘部の生産性を向上できると共に、各圧電振動片への錘部の取り付け作業を容易化できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、錘部が各圧電振動片の厚さ方向に変位する際、第1圧電振動片は、錘部の変位に倣ってそのまま湾曲変形する。
一方、第2圧電振動片の長手方向一端および長手方向他端の何れか一方は、ホルダまたは錘部に対して第2圧電振動片の面方向に沿ってスライド移動自在、且つ厚さ方向への移動が規制されている。このため、第2圧電振動片も、錘部の変位に倣ってそのまま湾曲変形するものの、錘部の変位を阻害するように突っ張ることがない。この結果、第1圧電振動片を中心に、錘部を大きく傾倒させることができるので、錘部の重量を低減してもこの錘部を大きく変位させることが可能になる。よって、圧電振動片の所望の振動周波数を得つつ、振動発電装置を効果的に小型化できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
(振動発電温度センサ)
図1は、振動発電温度センサ1の斜視図である。
同図に示すように、振動発電温度センサ1は、ケーシング2内に、振動発電装置3と、無線送信モジュール4と、不図示の温度センサと、を備えている。
ケーシング2は、ベース部5と、カバー部6と、に分割構成されている。ベース部5は、略等脚三角形状に形成されている。また、ベース部5の頂部側には、後述の錘部10を受け入れ可能な平面視略円形状の凹部5aが形成されている。
【0021】
カバー部6は、一面が開口された箱状に形成されており、その外周面がベース部5の外形状に対応するように略等脚三角形状に形成されている。また、カバー部6は、開口側をベース部5側に向けて配置されており、不図示のボルトによってベース部5に締結固定されている。そして、ベース部5とカバー部6とにより囲まれた内部空間に、振動発電装置3と無線送信モジュール4とが配置されている。
【0022】
(振動発電装置)
図2は、振動発電装置3の分解斜視図である。
図1、
図2に示すように、振動発電装置3は、第1圧電振動片7および第2圧電振動片8の2つの圧電振動片7,8と、各圧電振動片7,8の基端を保持するホルダ9と、各圧電振動片7,8の自由端となる先端部に設けられた錘部10と、を主構成としている。
【0023】
2つの圧電振動片7,8は、それぞれ薄板状の振動片18と、この振動片18の両面に貼付された圧電素子19と、により構成されており、振動片18の厚さ方向に並んで配置されている。すなわち、ベース部5寄りに第1圧電振動片7が配置され、この第1圧電振動片7のベース部5とは反対側に第2圧電振動片8が配置されている。
振動片18は、ベース部5の外形状に対応するように、基端側から先端側に向かって徐々に先細りとなるように、且つ基端側から先端側に向かう方向が長くなるように略等脚三角形状に形成されている。そして、振動片18は、厚さ方向に撓み変形可能に構成されている。
【0024】
一方、圧電素子19も、振動片18の形状に対応するように、基端側から先端に向かって徐々に先細りとなるように、且つ基端側から先端側に向かう方向が長くなるように略等脚三角形状に形成されている。圧電素子19は、振動片18のほぼ全面に貼付されている。圧電素子19は、振動片18と一体となって撓み変形し、この撓み変形によって電荷を発生するものである。
ここで、各圧電振動片7,8(振動片18および圧電素子19)を、基端側から先端側に向かって徐々に先細りとなるように略等脚三角形状に形成することにより、ホルダ9によって各圧電振動片7,8の基端を保持した場合、各圧電振動片7,8の全体をできる限り均一に撓ませることが可能になる。
【0025】
圧電素子19の基端側には、不図示のリード線の一端が接続されている。圧電素子19により発生した電荷は、不図示のリード線に導かれる。
なお、以下の説明では、各圧電振動片7,8(振動片18)の厚さ方向を単に厚さ方向と称する。また、各圧電振動片7,8(振動片18)の底辺(基端)の延在方向、つまり、長手方向、および厚さ方向に直交する方向を、圧電振動片7,8の幅方向と称する。
【0026】
各圧電振動片7,8の基端を保持するホルダ9は、各圧電振動片7,8の間に配置されるホルダスペーサ11と、第2圧電振動片8を挟んでホルダスペーサ11とは反対側に配置されたホルダ本体12と、を備えている。
ホルダスペーサ11は、各圧電振動片7,8の基端における幅方向に沿って延在するように略四角棒状に形成されている。そして、ホルダスペーサ11の厚さ方向両面に、各圧電振動片7,8の基端が接続されている。ホルダ本体12は、プレート状に形成されたものであって、ホルダスペーサ11に対応するように、各圧電振動片7,8の幅方向に長く形成されている。
【0027】
ホルダスペーサ11の長手方向両端には、ボルト13を挿通可能な貫通孔11aがホルダスペーサ11の厚さ方向に貫通形成されている。また、ホルダ本体12の長手方向両端で、且つホルダスペーサ11の貫通孔11aに対応する位置にも、ボルト13を挿通可能な貫通孔12aがホルダ本体12の厚さ方向に貫通形成されている。さらに、ベース部5には、各貫通孔11a,12aに対応する位置に、不図示の雌ネジ部が刻設されている。そして、各貫通孔11a,12aに挿入されたボルト13がベース部5の雌ネジ部に螺入されることにより、ベース部5にホルダ9が締結固定される。さらに、ホルダ9を介し、ベース部5に、各圧電振動片7,8が固定される。また、ホルダ本体12の一側には、台座部14が延出形成されている。この台座部14に、カラー15を介して無線送信モジュール4がボルト16によって締結固定されている。
【0028】
無線送信モジュール4は、不図示の温度センサによる温度の検出結果を、信号として不図示の制御機器に送信するものである。無線送信モジュール4には、不図示の温度センサが電気的に接続されている。この温度センサによる温度の検出結果が、信号として無線送信モジュール4に入力される。
また、無線送信モジュール4は、ボルト16の他に、スタッドボルト17によってベース部5に締結固定されている。そして、無線送信モジュール4に、各圧電振動片7,8に一端が接続されている不図示のリード線の他端が接続される。これにより、各圧電振動片7,8により発生した電荷が無線送信モジュール4に供給される。
【0029】
各圧電振動片7,8の先端に設けられた錘部10は、各圧電振動片7,8の間に配置される中錘21と、第1圧電振動片7を挟んで中錘21とは反対側のベース部5側に配置される下錘22と、第2圧電振動片8を挟んで中錘21とは反対側に配置される上錘23と、を備えている。
各錘21,22,23は、それぞれ複数の円板状の錘を積層して構成されている。各錘21,22,23を複数の円板状の錘で構成することにより、各錘21,22,23の重量調整を容易にしている。但し、中錘21の厚さは、ホルダスペーサ11の厚さとほぼ同一に設定されている。このため、2つの圧電振動片7,8は、ほぼ平行に配置される。
【0030】
また、各錘21,22,23は、無線送信モジュール4側(各圧電振動片7,8の基端側)に、平坦に切除されることによって形成された平坦面21a,22a,23aを有している。
さらに、中錘21には、ボルト24を挿通可能な3つの貫通孔25a,25b,25cが形成されていると共に、上錘23には、ボルト24を挿通可能な3つの貫通孔26a,26b,26cが形成されている。これら貫通孔25a〜26cは、それぞれ周方向に等間隔で配置されている。
【0031】
より具体的には、それぞれ3つの貫通孔25a〜26cのうち、2つの貫通孔25a,25b,26a,26bは、平坦面21a,23a側の角部に配置されている。また、3つの貫通孔25a〜26cのうち、もう1つの貫通孔25c,26cは、それぞれ各圧電振動片7,8の先端側に配置されている(以下、これら貫通孔25c,26cを先端側貫通孔25c,26cと称する)。そして、このように配置された各貫通孔25a,25b,25cの間に、各圧電振動片7,8の先端が配置される。
また、下錘22には、各貫通孔25a〜26cに対応する位置に、雌ネジ部22bが刻設されている。そして、上錘23の上から各貫通孔25a〜26cにボルト24を挿入し、これらボルト24を下錘22の雌ネジ部22bに螺入することにより、各錘21〜23と各圧電振動片7,8の先端とが共締めされる。
【0032】
ここで、上錘23の各貫通孔26a,26b,26cに対応する位置には、中錘21とは反対側の一面23bに、ざぐり部27が形成されている。このざぐり部27により、各ボルト24の頭部24aが上錘23の一面23bから突出してしまうのが防止される。
ボルト24によって各錘21〜23と各圧電振動片7,8の先端とが共締めされると、中錘21と下錘22とによって、第1圧電振動片7の先端部が挟持される。また、中錘21と上錘23とによって、第2圧電振動片8の先端部が挟持される。
【0033】
ここで、中錘21と下錘22との間には、先端側貫通孔25cに対応する位置に、略リング状の第1錘スペーサ28が設けられている。すなわち、中錘21の先端側貫通孔25cに挿入されたボルト24は、第1錘スペーサ28を介して下錘22の雌ネジ部22bに螺入されている。
第1錘スペーサ28の厚さは、第1圧電振動片7とほぼ同一の厚さに設定されている。このため、第1圧電振動片7の先端部に無理な応力がかかることなく、この第1圧電振動片7の先端部が中錘21と下錘22とに挟持される。このように挟持された第1圧電振動片7の先端部は、中錘21および下錘22に対して第1圧電振動片7の厚さ方向に移動不能、且つ面方向にスライド移動不能に固定される。
【0034】
一方、中錘21と上錘23との間には、先端側貫通孔25c,26cに対応する位置に、略リング状の複数の第2錘スペーサ29が設けられている。すなわち、上錘23の先端側貫通孔26cに挿入されたボルト24は、複数の第2錘スペーサ29を介して中錘21の先端側貫通孔25cに挿入される。
第2錘スペーサ29は、全体で第2圧電振動片8の厚さよりも若干厚くなるように配置される。このため、第2圧電振動片8の先端部は、中錘21と上錘23との間で第2圧電振動片8の面方向(以下、単に面方向と称する)にスライド移動可能、且つ中錘21および上錘23に対して第2圧電振動片8の厚さ方向(以下、単に厚さ方向と称する)への移動がほぼ不能に保持される。
【0035】
さらに、中錘21の第2圧電振動片8に接触する面には、易滑りシート31が設けられていると共に、上錘23の第2圧電振動片8に接触する面には、易滑りシート32が設けられている。これら易滑りシート31,32は、中錘21および上錘23と第2圧電振動片8との摩擦抵抗を低減するためのものである。易滑りシート31,32としては、例えば、テフロン(登録商標)シートが用いられる。
【0036】
各易滑りシート31,32は、中錘21の平坦面21aおよび上錘23の平坦面23aに沿って長くなるように帯状に形成されている。各易滑りシート31,32の長手方向両端には、それぞれボルト24を挿通可能な挿通孔31a,32aが形成されている。これにより、中錘21と第2圧電振動片8との間に易滑りシート31が固定され、上錘23と第2圧電振動片8との間に易滑りシート32が固定される。
なお、易滑りシート31,32に代わって、中錘21および上錘23と第2圧電振動片8との摩擦抵抗を低減できるテープを貼り付けたり、中錘21および上錘23に、摩擦抵抗を低減可能な加工を施したりしてもよい。
【0037】
(振動発電温度センサの作用)
このような構成のもと、振動発電温度センサ1は、例えば、不図示の電動モータのモータケースに取付けられ、電動モータの駆動時の温度を管理するために使用される。このように使用する場合、モータケースに、ベース部5側が鉛直方向下側となるように振動発電温度センサ1が取り付けられる。
この状態で電動モータを駆動させるとモータケースが振動する。この振動により、振動発電装置3の錘部10が、各圧電振動片7,8の厚さ方向に沿って振動する。換言すれば、各圧電振動片7,8の厚さ方向に沿って錘部10が変位を繰り返す。すると、各圧電振動片7,8が撓み変形され、各圧電振動片7,8に電荷が生じる。この電荷は、不図示のリード線を介して無線送信モジュール4に供給される。
【0038】
また、無線送信モジュール4には、不図示の温度センサの検出結果が信号として入力される。そして、無線送信モジュール4は、温度センサの検出信号を不図示の制御機器に送信する。これら温度センサによるモータケースの温度検出、および検出結果信号の制御機器への送信には、振動発電装置3からの電力が利用される。
制御機器は、振動発電温度センサ1からの出力信号に基づいて、不図示の電動モータの駆動制御を行う。
【0039】
ここで、第1圧電振動片7の先端部は、中錘21および下錘22に対して厚さ方向に移動不能、且つ面方向にスライド移動不能に固定される。これに対し、第2圧電振動片8の先端部は、中錘21と上錘23との間で面方向にスライド移動可能、且つ厚さ方向への移動がほぼ不能に保持されている。
このため、錘部10が振動すると、第1圧電振動片7は、錘部10の変位に倣ってそのまま湾曲変形する。一方、第2圧電振動片8の先端部は、錘部10の変位に倣ってそのまま湾曲変形するものの、錘部10の変位を阻害するように突っ張ることがない。この結果、第1圧電振動片7を中心に、錘部10が大きく傾倒するように変位するので、錘部10の重量を低減してもこの錘部10を大きく変位させることが可能になる。
【0040】
このことについて、
図3、
図4に基づいてより詳しく説明する。
図3は、振動発電装置3の各圧電振動片7,8のうち、第2圧電振動片8の先端部を、中錘21と上錘23との間で面方向にスライド移動可能、且つ厚さ方向への移動がほぼ不能に保持した場合(本第1実施形態、以下、「拘束なし」と称する)の各圧電振動片7,8における撓み変形の解析結果を示す図である。
図4は、振動発電装置3の各圧電振動片7,8の先端部を両者とも錘部10に面方向にスライド不能、且つ厚さ方向への移動がほぼ不能に固定した場合(以下、「拘束あり」と称する)の各圧電振動片7,8における撓み変形の解析結果を示す図である。なお、
図4に示す錘部10の重量は、
図3に示す錘部10の重量よりも重く設定されている。
【0041】
図3に示すように、拘束なしの場合、錘部10が大きく傾倒するように変位し、各圧電振動片7,8が大きく撓み変形していることが確認できる。これに対し、
図4では、
図3と比較して錘部10の重量が重いのにも関わらず、錘部10の変位量が小さく、各圧電振動片7,8の撓み変形量が小さいことが確認できる。これは、各圧電振動片7,8同士が錘部10に完全に固定されているため、互いに突っ張り合ってしまうからである。この結果、錘部10が殆ど傾倒せず、錘部10の変位量が小さくなってしまう。
【0042】
図5は、縦軸を圧電振動片の共振周波数(Hz)とし、横軸を錘部10の重量(g)とした場合の共振周波数の変化を示すグラフである。
図5では、拘束あり(図中■参照)と、拘束なし(図中▲参照)と、各圧電振動片7,8と比較して大きい圧電振動片を1つ用いた場合(図中●参照、以下「圧電振動片(大)」と称する)と、を比較している。
同図に示すように、所望の周波数を得るにあたり、拘束なしの錘部10の重量は、圧電振動片(大)の錘部10の重量よりも重くなるものの、拘束ありと比較する軽量化されることが確認できる。
【0043】
図6は、拘束あり、拘束なし、および圧電振動片(大)の各々圧電振動片による電荷出力(W)を比較したグラフである。
同図に示すように、拘束なしが最も大きな電荷出力を得られることが確認できる。
【0044】
したがって、上述の第1実施形態によれば、各圧電振動片7,8の所望の振動周波数を得て電荷出力を向上させつつ、振動発電装置3を効果的に小型化できる。
また、ホルダ9は、第1圧電振動片7と第2圧電振動片8との間に所定間隔が空くようにホルダスペーサ11を有している。このように、第1圧電振動片7と第2圧電振動片8との間に所定の間隔を設けることにより、圧電振動片7,8同士が互いの湾曲変形を阻害してしまうことを防止できる。このため、錘部10の重量を利用して、各圧電振動片7,8を効率よく湾曲変形させることができるので、この分、錘部10の重量を低減でき、振動発電装置3を効果的に小型化できる。
【0045】
また、錘部10に対し、第2圧電振動片8の先端部の面方向をスライド移動可能としているので、錘部10の重量を利用して第2圧電振動片8を効率よく湾曲変形させることができる。
さらに、中錘21の第2圧電振動片8に接触する面に、易滑りシート31を設けると共に、上錘23の第2圧電振動片8に接触する面に、易滑りシート32を設けている。このため、中錘21および上錘23と第2圧電振動片8との摩擦抵抗を低減でき、錘部10に対して第2圧電振動片8の先端部をスムーズにスライド移動させることができる。よって、さらに効率よく第2圧電振動片8を湾曲変形させることができる。
【0046】
また、錘部10を、中錘21、下錘22、および上錘23に分割構成することにより、錘部10の重量調整を容易化できる。
さらに、各錘21,22,23の間に、それぞれ第1錘スペーサ28を配置したり、第2錘スペーサ29を配置したりしている。このため、各スペーサ28,29の肉厚を調整するだけで、第1圧電振動片7の先端部の損傷を防止したり、錘部10に対する第2圧電振動片8の先端部のスライド移動を可能にしたりすることが容易にできる。
【0047】
また、各圧電振動片7,8(振動片18および圧電素子19)を、基端側から先端側に向かって徐々に先細りとなるように略等脚三角形状に形成することにより、ホルダ9によって各圧電振動片7,8の基端を保持した場合、各圧電振動片7,8の全体をできる限り均一に撓ませることが可能になる。このため、各圧電振動片7,8によって、効率よく電荷を発生させることができる。
【0048】
(第1実施形態の変形例)
なお、上述の第1実施形態では、ホルダ本体12の一側に台座部14を延出形成し、この台座部14に、ボルト16を用いて無線送信モジュール4を固定すると共に、スタッドボルト17によって、ベース部5に直接無線送信モジュール4を固定する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、後述のように構成してもよい。
【0049】
図7は、第1実施形態の変形例における振動発電温度センサ1の斜視図であって、前述の
図1に対応している。
すなわち、
図7に示すように、ホルダ本体12の他側にも台座部214を延出形成し、台座部14、および台座部214に、それぞれボルト16,216、およびカラー15を用いて無線送信モジュール4を固定してもよい。
このように構成することで、無線送信モジュール4のホルダ9寄りとベース部5との間のスペースを空けることができる。このため、このスペースをできる限り小さくするように、ベース部5を小型化することが可能になる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、
図8、
図9に基づいて、第2実施形態について説明する。
図8は、第2実施形態における振動発電装置203の斜視図、
図9は、
図8のA−A線に沿う断面図である。なお、前述の第1実施形態と同一態様には同一符号を付して説明を省略する。
ここで、前述の第1実施形態と本第2実施形態との相違点は、第1実施形態の錘部10と第2実施形態の錘部210との構成が異なる点にある。
【0051】
より詳しくは、
図8、
図9に示すように、錘部210は、前述の第1実施形態のように分割構成されておらず、一塊の錘部210として構成されている。錘部210は、例えば高比重樹脂等により、略直方体状に形成されている。
錘部210には、第1圧電振動片7の先端部に対応する位置に、この先端部を差込可能な第1スリット41が形成されている。第1スリット41のスリット幅は、第1圧電振動片7の厚さとほぼ同一かまたは若干大きい程度に設定されている。そして、第1圧電振動片7の先端部は、第1スリット41に差し込まれ、接着剤等により錘部210に固定されている。
【0052】
また、錘部210には、第2圧電振動片8の先端部に対応する位置に、この先端部を差込可能な第2スリット42が形成されている。第2スリット42のスリット幅は、第2圧電振動片8の厚さよりも大きく設定されている。このように形成された第2スリット42に、第2圧電振動片8の先端部が差し込まれている。
また、第2スリット42の第2圧電振動片8に接触する面、および、第2圧電振動片8の先端部の両面には、それぞれ易滑りシート43が設けられている。これにより、第2スリット42内において、第2圧電振動片8の先端部は、面方向に沿ってスムーズにスライド移動することができる。
【0053】
なお、第2スリット42のスリット幅は、第2スリット42内において、第2圧電振動片8の先端部が、できる限り厚さ方向に移動不能な幅となるように設定することが望ましい。このように構成することで、錘部210によって、第2圧電振動片8を効率よく撓み変形させることができる。
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、錘部210を一塊とすることができるので、錘部210の生産性を向上できると共に、各圧電振動片7,8への錘部210の取り付け作業を容易化できる。
【0054】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、振動発電温度センサ1を電動モータの温度を検出するために使用する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな装置の温度を検出するために、振動発電温度センサ1を使用することが可能である。
【0055】
また、上述の実施形態では、第2圧電振動片8の先端部を、錘部10,210に対して面方向にスライド移動可能、且つ厚さ方向への移動がほぼ不能とされている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第2圧電振動片8の先端部を、錘部10,210に対して面方向にスライド移動不能、および厚さ方向に移動不能に固定する一方、第2圧電振動片8の基端部を、ホルダ9に対して面方向にスライド移動可能、且つ厚さ方向への移動がほぼ不能としてもよい。つまり、第2圧電振動片8が突っ張って錘部10,210の変位を阻害しないように構成されていればよい。
【0056】
さらに、上述の実施形態では、圧電素子19の基端側に、不図示のリード線の一端を接続し、このリード線によって各圧電振動片7,8と無線送信モジュール4とを電気的に接続した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、圧電素子19と無線送信モジュール4とが電気的に接続されればよい。例えば、リード線に代わってフレキシブル基板を用いることも可能である。また、無線送信モジュール4やホルダ9にスルーホールを形成し、これによって、圧電素子19と無線送信モジュール4とを電気的に接続してもよい。