(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
「第1実施形態」
図1−
図4は、車両用エアコンシステム(エア・コンディショナー・システム)に適用される可変容量型クラッチレス圧縮機を例示する。
【0010】
図1に示す可変容量圧縮機100は、複数のシリンダボア101aが形成されたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端にバルブプレート103を介して設けられたシリンダヘッド104と、を備える。
シリンダブロック101とフロントハウジング102とによってクランク室140が形成され、駆動軸110は、クランク室140内を横断して設けられている。
【0011】
駆動軸110の軸方向の中間部分の周囲には、斜板111が配置されている。
斜板111は、駆動軸110に固定されたロータ112にリンク機構120を介して連結し、斜板111の駆動軸110に沿った傾角は変更可能に構成される。
リンク機構120は、ロータ112から突設された第1アーム112aと、斜板111から突設された第2アーム111aと、一端が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに回動可能に連結され、他端が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに回動可能に連結されたリンクアーム121と、を備える。
【0012】
斜板111の貫通孔111bは、斜板111が最大傾角と最小傾角との間の範囲で傾動可能な形状に形成され、貫通孔111bには駆動軸110と当接する最小傾角規制部(図示せず)が形成されている。
斜板111が駆動軸110に直交するときの斜板111の傾角を0degとした場合、貫通孔111bの最小傾角規制部は、斜板111を略0degまで傾角変位が可能に形成されている。また、斜板111の最大傾角は、斜板111がロータ112に当接することにより規制される。
【0013】
ロータ112と斜板111の間には、斜板111を最小傾角に向けて付勢する傾角減少バネ114が装着され、また、斜板111と駆動軸110に設けたバネ支持部材116との間には、斜板111の傾角を増大する方向に付勢する傾角増大バネ115が装着されている。
ここで、最小傾角における傾角増大バネ115の付勢力は、傾角減少バネ114の付勢力より大きく設定されていて、駆動軸110が回転していないときは、斜板111は、傾角減少バネ114の付勢力と傾角増大バネ115の付勢力とがバランスする傾角に位置決めされる。
【0014】
駆動軸110の一端は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通してフロントハウジング102の外側まで延在し、図示しない動力伝達装置に連結される。
尚、駆動軸110とボス部102aとの間には、軸封装置130が挿入され、クランク室140と外部空間とを遮断している。
【0015】
駆動軸110とロータ112との連結体は、ラジアル方向に軸受131、132で支持され、スラスト方向に軸受133、スラストプレート134で支持されている。
そして、外部駆動源からの動力が動力伝達装置に伝達され、駆動軸110は動力伝達装置の回転と同期して回転可能となっている。
尚、駆動軸110のスラストプレート134が当接する部分とスラストプレート134との隙間は、調整ネジ135によって所定の隙間に調整される。
【0016】
シリンダボア101a内には、ピストン136が配置され、ピストン136のクランク室140側に突出している端部の内側空間には、斜板111の外周部が収容され、斜板111は、一対のシュー137を介してピストン136と連動するよう構成される。そして、ピストン136は、斜板111の回転によりシリンダボア101a内を往復動する。
シリンダヘッド104には、中央部に吸入室141が形成されると共に、吸入室141の径方向外側を環状に取り囲む吐出室142が区画形成される。
【0017】
吸入室141とシリンダボア101aとは、バルブプレート103に設けられた連通孔103a及び吸入弁形成板150に形成された吸入弁(図示せず)を介して連通する。吐出室142とシリンダボア101aとは、吐出弁形成板151に形成された吐出弁(図示せず)及びバルブプレート103に設けられた連通孔103bを介して連通する。
上記のフロントハウジング102、センターガスケット(図示せず)、シリンダブロック101、シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151、ヘッドガスケット153、シリンダヘッド104が順次接続され、複数の通しボルト105によって締結されて圧縮機ハウジングが形成される。
【0018】
また、シリンダブロック101の
図1で上部にはマフラが設けられる。マフラは、吐出ポート106aが開口される蓋部材106とシリンダブロック101上部に区画形成された形成壁101bとが図示しないシール部材を介してボルトで締結されることによって形成される。
蓋部材106と形成壁101bとで囲まれるマフラ空間143には吐出逆止弁200が配置されている。
【0019】
吐出逆止弁200は、吐出室142とマフラ空間143とを連通する連通路144とマフラ空間143との接続部に配置され、連通路144(上流側)とマフラ空間143(下流側)との圧力差に応答して動作し、圧力差が所定値より小さい場合は連通路144を遮断し、圧力差が所定値より大きい場合は連通路144を開放する。
したがって、吐出室142は、連通路144、吐出逆止弁200、マフラ空間143及び吐出ポート106aで形成される吐出通路を介してエアコンシステムの吐出側冷媒回路と接続される。
【0020】
シリンダヘッド104には、吸入ポート(図示せず)、連通路104aで構成される吸入通路がシリンダヘッド104の径方向外側から吐出室142の一部を横切るように直線状に延設され、この吸入通路を介して吸入室141はエアコンシステムの吸入側冷媒回路と接続されている。
シリンダヘッド104には、吐出室142とクランク室140とを連通する圧力供給通路145が形成され、圧力供給通路145の開口面積(開度)を制御する第1制御弁300が設けられている。
【0021】
第1制御弁300はシリンダヘッド104の径方向に沿って形成された収容孔104bに収容され、連通路104cを介して導入された吸入室141の圧力と外部信号に応じてソレノイドに流れる電流により発生する電磁力とに応答して圧力供給通路145の開度を調整し、クランク室140への吐出ガス導入量(圧力供給量)を制御する。
第1制御弁300の下流側の圧力供給通路145には、第2制御弁350が配設される。
【0022】
第2制御弁350は、
図4(a)、(b)に示すように、第1制御弁300とクランク室140との間の圧力供給通路145を開閉する第1弁部352aと、クランク室140と吸入室141とを連通する放圧通路146bを開閉する第2弁部352bとを有するスプール352を含んで構成される。
スプール352は、第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145の圧力とクランク室140の圧力との差に応じて移動し、これによって、第2制御弁350は、クランク室140側から第1制御弁300に向かう冷媒(流体)の逆流を阻止する逆止弁としての機能と、クランク室140から吸入室141への冷媒の排出を制御する機能とを有する。
【0023】
また、クランク室140内の冷媒を吸入室141に排出する放圧通路146として、第2制御弁350を経由し第2制御弁350によって開閉される放圧通路146b(第1放圧通路)が設けられると共に、連通路101c、空間101d、バルブプレート103に形成された固定絞り103cを経由し第2制御弁350を迂回する放圧通路146a(第2放圧通路)が設けられている。
なお、第2制御弁350によって開かれたときの第1放圧通路146bの流路断面積は、第2放圧通路146aの固定絞り103cの流路断面積より大きく設定されている。
【0024】
そして、第1制御弁300が閉じ、第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145の圧力がクランク室140の圧力よりも低くなったとき、第2制御弁350は圧力供給通路145を閉鎖してクランク室140側から第1制御弁300に向かう冷媒の逆流を阻止する一方で第1放圧通路146bの開度を最大開度にする。
これにより、クランク室140の冷媒が第2放圧通路146a及び第1放圧通路146bを介して速やかに吸入室141に排出され、クランク室140の圧力が吸入室141の圧力と同等となって斜板の傾斜角が最大となり、ピストンストローク(吐出容量)が最大となる。
【0025】
また、第1制御弁300が開き、第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145の圧力がクランク室140の圧力よりも高くなったとき、第2制御弁350は圧力供給通路145を開放すると共に第1放圧通路146bを閉鎖する。
これにより、吐出室142の冷媒が圧力供給通路145を介してクランク室140に供給される一方で、クランク室140の冷媒が吸入室141に流出することが制限されてクランク室140の圧力が上昇し易くなり、第1制御弁300の開度に応じてクランク室140内の圧力が上昇して斜板111の傾斜角が最大から減少し、ピストンストロークを可変に制御することができる。
【0026】
このように、可変容量圧縮機100は、クランク室140内の調圧によって吐出容量が制御される圧縮機である。
なお、第2制御弁350の構造、作用については、後で詳細に説明する。
可変容量圧縮機100内部には潤滑用のオイルが封入され、駆動軸110の回転に伴うオイルの撹拌や、冷媒ガスの移動に伴うオイルの移動によって、可変容量圧縮機100内部が潤滑される。
【0027】
「第1制御弁」
図2は、第1制御弁300の一例を示す縦断面図である。
図2の第1制御弁300は、弁ユニットと弁ユニットを開閉作動させる駆動ユニット(ソレノイド)とから構成される。
【0028】
第1制御弁300の弁ユニットは、円筒状の弁ハウジング301を有し、弁ハウジング301の内部には、第1感圧室302、弁室303及び第2感圧室307が軸方向に順番に並んで形成されている。
第1感圧室302は、弁ハウジング301の外周面に形成された連通孔301a、シリンダヘッド104に形成された収容孔104b及び連通路104fを介してクランク室140と連通している。
【0029】
第2感圧室307は、弁ハウジング301の外周面に形成された連通孔301e及びシリンダヘッド104に形成された連通路104cを介して吸入室141と連通している。
弁室303は、弁ハウジング301の外周面に形成された連通孔301b及びシリンダヘッド104に形成された連通路104kを介して吐出室142と連通している。
第1感圧室302と弁室303とは、弁孔301cを介して連通可能となっている。
【0030】
弁室303と第2感圧室307との間には、支持孔301dが形成されている。
第1感圧室302内には、ベローズ305が配設されている。ベローズ305は、内部を真空にしてバネを内蔵し、弁ハウジング301の軸方向に変位可能に配置され、第1感圧室302内、即ちクランク室140内の圧力を受圧する感圧手段としての機能を有する。
【0031】
弁室303内には、円柱状の弁体304が収容されている。弁体304は、外周面が支持孔301dの内周面に密接しつつ支持孔301d内を摺動可能であって、弁ハウジング301の軸線方向に移動可能である。弁体304の一端は弁孔301cを開閉可能であり、弁体304の他端は第2感圧室307内に突出している。
弁体304の一端には、棒状の連結部306の一端が固定されている。連結部306は、他端がベローズ305に当接可能に配置されており、ベローズ305の変位を弁体304に伝達する機能を有する。
【0032】
駆動ユニットは円筒状のソレノイドハウジング312を有し、ソレノイドハウジング312は弁ハウジング301の他端に同軸に連結されている。
ソレノイドハウジング312内には、電磁コイルを樹脂で覆ったモールドコイル314が収容されている。
【0033】
また、ソレノイドハウジング312内には、モールドコイル314と同心上に円筒状の固定コア310が収容され、固定コア310は、弁ハウジング301からモールドコイル314の中央付近にまで延びている。弁ハウジング301とは反対側の固定コア310の端部は、筒状のスリーブ313によって囲まれて閉塞している。
固定コア310は、中央に挿通孔310aを有し、挿通孔310aの一端は第2感圧室307に開口している。また、固定コア310とスリーブ313の閉塞端との間には、円筒状の可動コア308が収容されている。
【0034】
挿通孔310aには、ソレノイドロッド309が挿通され、ソレノイドロッド309の一端は弁体304の基端側に圧入により固定されている。ソレノイドロッド309の他端部は、可動コア308に形成された貫通孔に圧入され、ソレノイドロッド309と可動コア308とは一体化されている。また、固定コア310と可動コア308との間には、可動コア308を固定コア310から離れる方向(開弁方向)に付勢する強制解放バネ311が備えられている。
【0035】
可動コア308、固定コア310及びソレノイドハウジング312は、磁性材料で形成されて磁気回路を構成する。一方、スリーブ313は、例えばステンレス系材料などの非磁性材料で形成されている。
モールドコイル314には、可変容量圧縮機100の外部に設けられた制御装置(図示せず)が信号線を介して接続される。モールドコイル314は、制御装置から制御電流Iが供給されると電磁力F(i)を発生する。モールドコイル314の電磁力F(i)は、可動コア308を固定コア310に向けて吸引し、弁体304を閉弁方向に駆動する。
【0036】
第1制御弁300の弁体304には、モールドコイル314による電磁力F(i)の他に、強制解放バネ311による付勢力fs、弁室303の圧力(吐出圧力Pd)による力、第1感圧室302の圧力(クランク室圧力Pc)による力、第2感圧室307の圧力(吸入圧力Ps)による力、及び、ベローズ305が内蔵するバネによる付勢力Fが作用する。
ここで、ベローズ305の伸縮方向の有効受圧面積Sb、弁孔301c側より弁体304に作用するクランク室の圧力受圧面積Sv、弁体304の円筒外周面の断面積SrをSb=Sv=Srとしてあるので、弁体304に作用する力の関係は数式1で示される。尚、数式1において、「+」は弁体304の閉弁方向、「−」は開弁方向を示す。
【0038】
ベローズ305、連結部306及び弁体304の連結体は、吸入室141の圧力が設定圧力よりも高くなると吐出容量を増大させるために圧力供給通路145の開度を小さくしてクランク室140の圧力を低下させ、吸入室141の圧力が設定圧力を下回ると吐出容量を減少させるために圧力供給通路145の開度を大きくしてクランク室140の圧力を上昇させる。
つまり、第1制御弁300は、吸入室141の圧力が設定圧力に近づくように圧力供給通路145の開度(開口面積)を自律制御する。
【0039】
弁体304には、ソレノイドロッド309を介してモールドコイル314の電磁力が閉弁方向に作用するので、モールドコイル314への通電量が増加すると圧力供給通路145の開度を小さくする方向の力が増大し、
図3に示すように設定圧力が低下方向に変化する。
制御装置(駆動ユニット)は、例えば400Hz〜500Hzの範囲の所定周波数でのパルス幅変調(PWM制御)によりモールドコイル314への通電を制御し、モールドコイル314を流れる電流値が所望の値となるようにパルス幅(デューティ比)を変更する。
【0040】
エアコンシステムの作動時、つまり可変容量圧縮機100の作動状態では、設定温度などの空調設定や外部環境に基づいてモールドコイル314への通電量が制御装置によって調整され、吸入室141の圧力が通電量に対応する設定圧力になるように吐出容量が制御される。
また、エアコンシステムの非作動時、つまり可変容量圧縮機100の非作動状態では、制御装置はモールドコイル314への通電をOFFする。これにより、圧力供給通路145が強制開放バネ311によって開放され、可変容量圧縮機100の吐出容量は最小の状態に制御される。
【0041】
「第2制御弁」
図4(a)、(b)は、シリンダヘッド104に配設される第2制御弁350の一例を示す縦断面図であり、
図4(a)はクランク室140への圧力供給状態を示し、
図4(b)はクランク室140からの放圧状態を示す。
第2制御弁350は、シリンダヘッド104の開放端面104d側に形成され吐出弁形成板151からなる閉塞部材で閉塞される収容室104eと、収容室104eに収容され収容室104e内を軸線方向に移動するスプール352と、収容室104e内に固定され収容室104eを軸方向に沿って第1収容室(第1空間)104e1と第2収容室(第2空間)104e2とに区画する区画部材351と、を備えている。
【0042】
収容室104eは、スプール352の移動方向の一端側に開口する第1弁孔104e32と、スプール352の移動方向の他端側に開口する第2弁孔151aとを有し、更に、収容室104eの第2収容室104e2側の内周壁に開口する放圧孔104g1を有する。
第1弁孔104e32は、連通路104fを介して第1制御弁300の弁孔301cより下流側に連通している。つまり、第1弁孔104e32は、連通路104f、収容孔104b、第1制御弁300、連通路104kを介して吐出室142に連通する。
【0043】
また、第2弁孔151aは、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔及びシリンダブロック101に形成された連通路101eを介してクランク室140に連通する。
更に、放圧孔104g1は、連通路104gを介して吸入室141と連通する。
【0044】
一方、スプール352は、第1弁孔104e32の周囲に設けた第1弁座104e31に離接する第1弁部352aと、第2弁孔151aの周囲に設けた第2弁座151bに離接する第2弁部352bとを一体的に備える。
そして、連通路104f(第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145)の圧力が連通路101e(クランク室140)の圧力よりも低いときに、スプール352は係る圧差によって
図4の右方向に移動して、
図4(b)に示すように、第1弁部352aは第1弁座104e31に着座し第2弁部352bは第2弁座151bから離座する。
また、連通路104fの圧力が連通路101eの圧力よりも高いときに、スプール352は係る圧力差によって
図4の左方向に移動して、
図4(a)に示すように、第1弁部352aは第1弁座104e31から離座し第2弁部352bは第2弁座151bに着座する。
【0045】
以下では、第2制御弁350の構成をより詳細に説明する。
「収容室及び閉塞部材」
収容室104eは、駆動軸110の軸線と平行な軸線に沿って円筒状に形成される。また、収容室104eは、シリンダヘッド104の開放端面104d側(クランク室140に近い側)に大径部、奥側(クランク室140から遠い側)に大径部より小径の小径部を有する。そして、収容室104eの大径部に固定される区画部材351により、小径部が第1収容室104e1を構成し、大径部が第2収容室104e2を構成する。
【0046】
第1収容室104e1を構成する軸方向の端面104e3には、スプール352の一端面(第1弁部352a)が着座する第1弁座104e31が形成され、第1弁座104e31の内側には第1弁孔104e32が開口される。
第1弁孔104e32は、収容室104eと同軸に延設される連通路104fを介して第1制御弁300の弁孔301cより下流の収容孔104b内のクランク室圧力領域と連通する。更に、第1制御弁300の弁孔301cより下流の収容孔104b内のクランク室圧力領域は、第1制御弁300及び連通路104kを介して吐出室142と連通しており、第1弁孔104e32は、連通路104fを含む圧力供給通路145を介して吐出室142と連通する。
【0047】
そして、したがって、第1収容室101e1は、圧力供給通路145の一部を構成すると同時に、第2制御弁350のいわゆる背圧室を構成する。
また、第2収容室104e2の周壁には、第2収容室104e2と吸入室141とを連通させる連通路104gが接続され、第2収容室104e2の内周壁に開口する連通路104gの一端は放圧孔104g1を構成する。
【0048】
第2収容室104e2の軸方向の開放端面を閉塞する吐出弁形成板151(閉塞部材)には第2弁孔151aが開口し、第2弁孔151aの開口部周縁の閉塞部材にはスプール352の他端面(第2弁部352b)が着座する第2弁座151bが形成されている。
第2収容室104e2は、第2弁孔151a、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔及びシリンダブロック101に形成された連通路101eを介してクランク室140と連通する。
【0049】
尚、第2収容室104e2の軸方向の開放端面を閉塞する閉塞部材としては、吐出弁形成板151に代えて、シリンダブロック101とシリンダヘッド104との間の他の圧縮機構成部材を用いることができるし、専用の閉塞部材を付加することもできる。
但し、吸入弁形成板150、吐出弁形成板151及びバルブプレート103のいずれか一つを閉塞部材とすれば、専用の閉塞部材を付加する必要がなく、また平面度の精度も良いので弁座を形成する閉塞部材として好適である。
【0050】
「区画部材」
区画部材351は、第2収容室104e2の周壁に圧入されて、第2収容室104e2を内側の円筒状空間と吸入室141と連通する円環状空間とに区画する円筒状の側壁351aと、第1収容室104e1と第2収容室104e2の内側の円筒状空間とを区画し、中央部にスプール352(軸部352c)が挿通する挿通孔351b1が形成された端壁351bとで構成される。
【0051】
換言すれば、端壁351bは、スプール352周囲の環状空間を、第1弁孔104e32側の第1環状空間104e1と、第2弁孔151a側の第2環状空間104e2とに隔て、放圧孔104g1は第2環状空間104e2に開口して、吸入室141と第2環状空間104e2とを連通させる。
側壁351aと端壁351bとで区画された第2収容室104e2の内側の円筒状空間は弁室351cを構成する。
【0052】
区画部材351は、側壁351aの開放端面351a1が吐出弁形成板151に当接するように第2収容室104e2に位置決めされる。側壁351aには、側壁351aと第2収容室104e2の内周壁とで挟まれる円環状空間と、弁室351cとを連通する連通孔351a2が形成されている。
【0053】
「スプール」
スプール352は、第1収容室101e1に収容されて一端面352a1が第1弁座104e31に離接する第1弁部352aと、弁室351cに収容されて他端面352b1(環状着座面)が第2弁座151bに離接する第2弁部352bと、第1弁部352a及び第2弁部352bよりも小径で第1弁部352aと第2弁部352bとを連結する軸部352cと、で構成される。
【0054】
第1弁部352aは第1弁座104e31に離接することで、第1弁孔104e32を開閉する。
また、第2弁部352bが第2弁座151bから離座することで、第2弁部352bと第2弁座151bとの間に間隙(連通部)151b1が形成され、係る間隙151b1を介して連通路101e(第2弁孔151a)と連通路101g(放圧孔104g1)とが連通する。
一方、第2弁部352bが第2弁座151bに着座することで、第2弁部352bと第2弁座151bとの間の間隙(連通部)151b1が閉鎖され、連通路101e(第2弁孔151a)と連通路101g(放圧孔104g1)との連通が遮断される。
【0055】
軸部352cは第1弁部352aと一体部品として形成される一方、第2弁部352bは別部品として形成され、軸部352cを区画部材351の挿通孔351b1に挿通させた状態で軸部352cを第2弁部352bに圧入することにより軸部352cと第1弁部352aとの一体物に第2弁部352bが固定されてスプール352が構成される。
【0056】
ここで、第2弁部352bの一端面352b1が吐出弁形成板151に設けた弁座151bに着座したとき、同時に第1弁部352aの他端面352a2(受圧部)が区画部材351の端壁351bの一端面351b2に軸方向に当接するように、第2弁部352bに対する第1弁部352aの軸線方向の圧入位置が調整されている。
尚、第1弁部352aを軸部352cに圧入する構造であると、後述するように、第1弁部352aの他端面352a2が弁手段を構成するので、第1弁部352aが軸部352cに圧入された状態を考慮して第2連通孔352d3を形成する必要があり、通路形成が複雑となる。これに対し、第1弁部352aと軸部352cとを一体に形成すれば、圧入位置のずれなどを考慮する必要がなく第2連通孔352d3を容易に形成できる。
【0057】
スプール352には、第2弁部352bの端面352b1に開放され軸方向に第1弁部352aに向けて延設され第1弁部352a側が閉塞される内部通路352d2と、第1弁部352aの外周面から径方向内側に向けて延設され内部通路352d2に連通する第1連通孔352d1とで構成される内部連通路352dが形成されている。
第2弁部352bの一端面(着座面)352b1は、内部通路352d2が開口することで環状に形成される。
【0058】
また、スプール352には、第1弁部352aの他端面352a2と一端面352a1との間に第1収容室101e1の内周面に摺動支持される最外周面(摺接部)352a3が設けられ、第1連通孔352d1は、最外周面(摺接部)352a3よりも一端面352a1側に設けられる。
更に、第1弁部352aの他端面352a2と最外周面352a3との間の外周面と内部通路352d2とを連通する第2連通孔352d3が形成されている。
【0059】
「放圧通路及び圧力供給通路」
図4(b)に示すように、第2弁部352bが第2弁座151bから離座したとき、連通路101e、シリンダガスケット152の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、バルブプレート103の連通孔、第2弁孔151a、第2弁部352bと第2弁座151bとの間隙151b1、弁室351c、連通孔351a2、側壁351aと第2収容室104e2の内周壁で挟まれる円環状空間、放圧孔104g1及び連通路104gが、クランク室140と吸入室141とを連通させる第1放圧通路146bを構成し、係る第1放圧通路146bを介してクランク室140の冷媒が吸入室141に排出される。
【0060】
つまり、第2弁部352bが第2弁座151bから離座することで、第2弁部352bと第2弁座151bとの間に間隙151b1が形成されて連通路101eと連通路104gとの連通部が開口し、第1放圧通路146bの開度が最大開度となり、クランク室140の冷媒が吸入室141に排出される。
また、第2弁部352bが第2弁座151bから離座したときには、第1弁部352aは第1弁座104e31に着座して第1弁孔104e32が閉鎖され、第1弁孔104e32を含んで構成される圧力供給通路145は閉鎖されることになる。
【0061】
一方、
図4(a)に示すように、第2弁部352bが第2弁座151bに着座すると、第2弁部352bと第2弁座151bとの間隙151b1、つまり、連通路101eと連通路104gとの連通部が閉鎖されることで、間隙151b1を含む第1放圧通路146bが閉鎖される。したがって、第2弁部352bが第2弁座151bに着座することで、
放圧通路146は第2放圧通路146aの固定絞り103cが最小開口となり、クランク室140の冷媒の吸入室141への排出が制限される。
【0062】
ここで、第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときには、第1弁部352aは第1弁座104e31から離座して第1弁孔104e32が開放される。
これにより、連通路104k、第1制御弁300、収容孔104b、連通路104f、第1弁孔104e32、第1収容室(第1空間)104e1、第1連通孔352d1、内部通路352d2、第2弁孔151a、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔及び連通路101eが、クランク室140と吐出室142とを連通させる圧力供給通路145を構成し、係る圧力供給通路145を介して吐出室142の冷媒がクランク室140に供給される。
【0063】
このように、第2弁孔151a、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔及び連通路101eは、第1放圧通路146bと圧力供給通路145とを兼ね、クランク室140から放圧するときとクランク室140に圧力を供給するときとでは連通路101eにおける冷媒の流れ方向が逆になる。
換言すれば、第2弁孔151aとクランク室140とを連通させる連通路は、スプール352の位置に応じて第1放圧通路146bの一部を構成する状態と圧力供給通路145の一部を構成する状態とに切り換わる。
【0064】
第2弁部352bが第2弁座151bに着座し第1弁部352aが第1弁座104e31から離座したときには、第2弁孔151aとクランク室140とを連通させる連通路101eを第2弁孔151aからクランク室140に向けて冷媒が流れて連通路101eは圧力供給通路145として機能する。
一方、第2弁部352bが第2弁座151bから離座し第1弁部352aが第1弁座104e31に着座したときには、第2弁孔151aとクランク室140とを連通させる連通路101eをクランク室140から第2弁孔151aに向けて冷媒が流れて連通路101eは第1放圧通路146bとして機能する。
【0065】
尚、スプール352の第1弁部352aの最外周面352a3と、第1収容室104e1の内周面との間には微小な隙間が形成される。
このため、第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31から僅かに離座した状態では、連通路104fから第1収容室104e1に流入した冷媒ガスは、最外周面352a3と第1収容室104e1の内周面との間の隙間及び軸部352cの外周面と挿通孔351b1の内周面との間の隙間を経由して弁室351c(第2収容室104e2)に流入する。
【0066】
一方、第2弁部352bの端面352b1が第2弁座151bに着座し、第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31から最大に離座した状態では、第1弁部352aの他端面352a2が端壁351bの一端面351b2に当接するように構成されているので、軸部352cの外周面と挿通孔351b1の内周面との間の隙間を経由する第1収容室104e1から弁室351cへの冷媒の流れは遮断される。
【0067】
つまり、第1弁部352aの他端面352a2と端壁351bの一端面351b2とは、軸部352cの外周面と挿通孔351b1の内周面との間の隙間を経由する第1収容室104e1から弁室351cへの冷媒の流れを遮断する弁手段(弁装置)を構成する。
したがって、第1収容室101e1が圧力供給通路145として機能しているときは、第1収容室101e1から弁室351cを介して吸入室141に冷媒が流出することが抑制され、第1収容室101e1に流入した冷媒ガスの略全てをクランク室140に供給できる。
【0068】
尚、スプール352の第1弁部352aの他端面352a2と最外周面352a3との間に一端が開口し、当該開口部から径方向に延設されて他端が内部通路352d2に開放される第2連通孔352d3をスプール352に形成してある。
このため、第1弁部352aの最外周面352a3と第1収容室104e1の内周面との間の隙間に流入した冷媒ガスは、第2連通孔352d3を介して内部通路352d2に流入して、第1連通孔352d1を介して内部通路352d2に流入した冷媒に合流する。
【0069】
冷媒ガスには微小な異物が含まれる場合があり、第1弁部352aの最外周面352a3と第1収容室104e1の内周面との間の隙間は異物が通過するのに十分な開口面積を有するが、第2連通孔352d3を形成することにより、第1弁部352aの最外周面352a3と第1収容室104e1の内周面との間の隙間に冷媒ガスが流れるようにして、隙間への異物の滞留を抑制するようにしてある。これにより、異物の滞留によってスプール352の動きが阻害されることを抑制できる。
【0070】
また、第1弁部352aの他端面352a2と端壁351bの一端面351b2との当接で、軸部352cの外周面と挿通孔351b1の内周面との間の隙間を介した漏れを抑制するので、漏れ抑制のための弁手段の構成が簡素である。
【0071】
「絞り通路」
第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145の領域は、絞り通路104hを介して吸入室141と連通している。絞り通路104hは絞りを有するので、圧力供給通路145から絞り通路104hを介して吸入室141に流出する冷媒の量は僅かである。
したがって、第1制御弁300が閉弁し、更に第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31に着座して圧力供給通路145が閉鎖されたときに、スプール352の一端面に作用する背圧Pmは吸入室141の圧力と同等になる。
また、第1制御弁300が開弁し、更に第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31から離座して圧力供給通路145が開放されたときに、スプール352の一端面に作用する背圧Pmは、吸入室141の圧力より高くなる。
【0072】
「スプールの動作」
スプール352の一端面(第1弁部352aの一端面352a1)は、上流(第1制御弁300と第2制御弁350との間)の圧力供給通路145の圧力、いわゆる背圧Pmを受ける。
一方、スプール352の他端面(第2弁部352bの一端面352b1)は、クランク室140の圧力Pcを受ける。そして、スプール352は背圧Pmと圧力Pcとの圧力差ΔP(ΔP=Pm−Pc)に応答して軸線方向に移動する。
【0073】
そして、第1制御弁300が開弁してスプール352の背圧Pmがクランク室140の圧力Pcよりも高くなると(Pm−Pc>0の状態では)、スプール352の第2弁部352bの一端面352b1が第2弁座151bに着座して、連通路104gと連通路101eとの連通部151b1を閉鎖すると同時に、第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31から離座して、吐出室142とクランク室140との連通路(圧力供給通路145)が開放される。
【0074】
つまり、第1制御弁300が開弁すると、第1弁部352aは第1弁座104e31から離座して第1弁孔104e32が開放され、連通路104k、第1制御弁300、収容孔104b、連通路104f、第1弁孔104e32、第1収容室(第1空間)104e1、第1連通孔352d1、内部通路352d2、第2弁孔151a、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔及び連通路101eから構成される圧力供給通路145を介して吐出室142の冷媒がクランク室140に供給されるようになる。
【0075】
これによって、第2放圧通路146a、第1放圧通路146bのうちの第2放圧通路146aのみが開放される状態となって放圧通路146の最小開口面積が固定絞り103cの開口面積となる。このため、クランク室140の圧力が上昇し易くなって、第1制御弁300の開度に応じてクランク室140内の圧力が上昇して斜板111の傾斜角が最大から減少し、ピストンストロークを可変に制御することができる。
【0076】
一方、第1制御弁300が閉弁してスプール352の背圧Pmがクランク室140の圧力Pcよりも低くなると(Pm−Pc<0の状態では)、第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31に着座して第1弁孔104e32(圧力供給通路145)が閉鎖されると同時に、スプール352の第2弁部352bの一端面352b1が第2弁座151bから離座して、連通路104gと連通路101eとの連通部151b1の開度(開口面積)が最大開度になり、クランク室140と吸入室141とを連通する第1放圧通路146bの開度が最大開度になる。
【0077】
つまり、第1制御弁300が閉弁すると、第2弁部352bが第2弁座151bから離座して連通部151b1が開口し、連通路101e、シリンダガスケット152の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、バルブプレート103の連通孔、第2弁孔151a、連通部151b1、弁室351c、連通孔351a2、側壁351aと第2収容室(第2空間)104e2の内周壁で挟まれる円環状空間、放圧孔104g1及び連通路104gから構成される第1放圧通路146b及び第2放圧通路146aを介してクランク室140の冷媒が吸入室141に排出されるようになる。
【0078】
これによって、吐出室142からクランク室140に向けた冷媒の供給が停止される一方で、クランク室140の冷媒は第2放圧通路146a(固定絞り103c)及び第1放圧通路146bを介して速やかに吸入室141に排出される。このため、クランク室140の圧力が吸入室141の圧力と同等となって斜板の傾斜角が最大となり、ピストンストローク(吐出容量)が最大となる。
このとき、第1弁部352aは第1弁座104e31に着座して第1弁孔104e32を閉塞するから、第1弁孔104e32(圧力供給通路145)を介して冷媒が第1制御弁300側に逆流することが阻止される。
【0079】
尚、背圧Pmを受ける軸線方向のスプール352の受圧面積S1、及び、クランク室140の圧力Pcを受けるスプール352の受圧面積S2は、例えばS1=S2に設定されるが、スプール352の動作を調整するためS1>S2或いはS1<S2に設定することができる。
【0080】
上記のように、第2制御弁350は、第1制御弁300が開弁したときに第1放圧通路146bの閉鎖により放圧通路146の開度を最小開度に制御し、第1制御弁300が閉弁したときに第1放圧通路146bの開度を最大開度に制御する機能を備えると同時に、第1制御弁300が閉弁したときにクランク室140から第1制御弁300に向けた冷媒の流れを阻止する逆止弁としての機能を備える。
したがって、可変容量圧縮機100は、第1制御弁300の開閉に応じて第1放圧通路146bを開閉する制御弁と第1制御弁300に向かう冷媒の逆流を阻止する逆止弁とを個別に設ける場合に比べて、構造が簡略で弁のレイアウトが容易である。
【0081】
「可変容量圧縮機の動作」
可変容量圧縮機100が運転されている状態で第1制御弁300のモールドコイル314への通電を遮断すると、第1制御弁300の開口面積が最大になって圧力供給通路145が開放され、第2制御弁350のスプール352の背圧Pmが昇圧する。
このため、第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31に着座していた場合(最大吐出容量状態のとき)は、スプール352はクランク室140(第2弁座151b)に近づく方向に移動して第1弁部352aの一端面352a1が第1弁座104e31から離座し、同時に、第2弁部352bの一端面352b1が第2弁座151bに着座して連通路104gと連通路101eとの連通部151b1(第1放圧通路146b)を閉鎖する。
【0082】
つまり、第1制御弁300が開くと、放圧通路146は第2放圧通路146aのみとなる一方(放圧経路の開口面積が最小になる一方)、吐出室142とクランク室140とを連通する圧力供給通路145が開放される結果、クランク室140の圧力が上昇して斜板111の傾角が減少し、吐出容量が最小に変更されて維持される。
前述のように、圧力供給通路145を流れる冷媒流の動圧がスプール352に作用することで第2弁部352bの一端面352b1が第2弁座151bに着座し、係る第2弁部352bの着座状態では、第1放圧通路146bを開放する方向に押圧する動圧が第2弁部352bに作用せず、第1放圧通路146bの閉鎖状態(放圧通路146の最小開度状態)を安定的に維持できる。
【0083】
また、第1放圧通路146bの閉鎖状態では、第2放圧通路146aを介して放圧が行われるから、第2放圧通路146aを、第2制御弁350の位置に拘束されることなく潤滑などを考慮して適切に配置することが可能である。
係る最小吐出容量状態では、連通路144とマフラ空間143との接続部(吐出通路)を吐出逆止弁200が遮断し、最小の吐出容量で吐出された冷媒ガスは外部冷媒回路へは流れずに、吐出室142、圧力供給通路145、クランク室140、第2放圧通路146a、吸入室141、シリンダボア101aで構成される内部循環路を循環する。このとき、第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145の冷媒は、絞り通路104hを介して吸入室141に僅かに流出する。
【0084】
この状態(最小吐出容量状態)から第1制御弁300のモールドコイル314へ通電すると、第1制御弁300が閉弁し、圧力供給通路145が閉鎖される。したがって、第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145の冷媒は、絞り通路104hを介して吸入室141に流出し、第1制御弁300と第2制御弁350との間の圧力供給通路145の圧力(背圧Pm)が低下する。
【0085】
係る背圧Pmの低下に応答してスプール352がクランク室140(第2弁座151b)から遠ざかる方向に移動することで、第1弁部352aが第1弁座104e31に着座して第1弁孔104e32(圧力供給通路145)を閉鎖するため、クランク室140から連通路101eを経由して第2制御弁350より上流の圧力供給通路145に冷媒が逆流することが阻止される。同時に、第2弁部352bの一端面352b1が第2弁座151bから離座することで、連通路104gと連通路101eとの連通部151b1(第1放圧通路146b)が開放される。
このように、前後圧差によるスプール352の移動によって、第1放圧通路146bの開度を最大開度(開放状態)と最小開度(閉鎖状態)とに容易に切り替えることができる。
【0086】
なお、第1弁部352aが第1弁座104e31に着座する方向にスプール352を付勢する付勢手段(弾性部材やばねなど)を備える場合、可変容量圧縮機100が非作動状態で運転され、吐出室142と吸入室141との圧力差が極めて小さくなったときに、付勢手段の付勢力によって圧力供給通路が閉鎖され第1放圧通路146bが開放される状態に急激に切り替わり、不用意に吐出容量が急増する可能性がある。
これに対し、本実施形態の可変容量圧縮機100は、スプール352を付勢する付勢手段を備えず、スプール352は前後圧力差に応答して移動するので、吐出室142と吸入室141との圧力差が極めて小さくなっても圧力供給通路が閉鎖され第1放圧通路146bが開放される状態に急激に切り替わり不用意に吐出容量が急増することを抑制できる。
【0087】
モールドコイル314へ通電して第1制御弁300を閉弁させると、第1放圧通路146bの開度が最大開度となって、2つの放圧通路146a、146bを介してクランク室140の冷媒が吸入室141に排出される。
第2制御弁350内の第1放圧通路146bの流路断面積は、固定絞り103c(第2放圧通路146a)の流路断面積より大きく設定されているので、第2制御弁350により第1放圧通路146bの開度が最大開度に制御されると、クランク室140内の冷媒が速やかに吸入室141に流出してクランク室140の圧力が低下し、吐出容量が最小の状態から速やかに最大吐出容量にまで増大する。
これにより、吐出室142の圧力が急激に昇圧して吐出逆止弁200が開弁し、冷媒ガスは可変容量圧縮機100から吐出されて外部冷媒回路を冷媒が循環するようになり、エアコンシステムは作動状態になる。
【0088】
エアコンシステムが作動して吸入室141の圧力が低下し、モールドコイル314に流れる電流で設定される設定圧力に到達すると第1制御弁300が開弁する。第1制御弁300が開弁すると、第2制御弁350のスプール352の背圧Pmが昇圧するので、第2制御弁350は、圧力供給通路145を開放すると同時に第1放圧通路146bを閉鎖する。
このとき、放圧通路146a、146bのうちの第2放圧通路146aのみが開放されることにより、クランク室140の冷媒が吸入室141に流出することが制限されてクランク室140の圧力が昇圧し易くなり、吸入室141の圧力が設定圧力を維持するように、第1制御弁300の開度が調整されて吐出容量が可変制御される。
つまり、第2制御弁350は、第1制御弁300の開閉に連動して動作し、第1制御弁300が閉弁しているときは第1放圧通路146bの開度を最大開度とし、第1制御弁300が開弁しているときは第1放圧通路146の開度を最小開度とする。
【0089】
「第2実施形態」
図1−
図4に示した第1実施形態では、スプール352の第2弁部352bが第2弁座151bに着座することで、連通路104gと連通路101eとの連通部151b1(第1放圧通路146b)を閉鎖するが、第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときに第2弁部352bと第2弁座151bとの合わせ面の一部に隙間が形成され、この隙間を介して放圧(クランク室140から吸入室141への冷媒の排出)が行われる構成とすることができる。
図5(a)、(b)は、スプール352の第2弁部352bが第2弁座151bに着座した状態で第1放圧通路146bを介して放圧が行われるようにした、可変容量圧縮機100の第2実施形態を示し、
図5(a)はクランク室140への圧力供給状態を示し、
図5(b)はクランク室140からの放圧状態を示す。
【0090】
図5(a)、(b)に示した第2制御弁350では、第2弁部352bの端面352b1(環状着座面)に径方向に延びる切欠き溝部352b3(絞り通路)を形成してある。
なお、切欠き溝部352b3を付加した以外は、
図1−
図4に示した第1実施形態と同じ構成であり、共通部分の詳細な説明は省略する。
第2弁部352bの端面352b1に切欠き溝部352b3を形成した第2制御弁350では、第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときに切欠き溝部352b3を介して内部通路352d2と弁室351cが連通することで、連通路101eと連通路104gとが連通し、切欠き溝部352b3を介してクランク室140の冷媒が吸入室141に排出される。
【0091】
つまり、連通路101eと連通路104gとの連通部151b1の最小開度、換言すれば第1放圧通路146bの最小開度が切欠き溝部352b3の開口面積になり、第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときも、第1放圧通路146bは閉鎖されずに切欠き溝部352b3の横断面積に一致する最小開度だけ開口する。
これにより、連通路101e、シリンダガスケット152の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、バルブプレート103の連通孔、第2弁孔151a、切欠き溝部352b3、弁室351c、連通孔351a2、側壁351aと第2収容室(第2空間)104e2の内周壁で挟まれる円環状空間、放圧孔104g1及び連通路104gから構成される第1放圧通路146bを介してクランク室140の冷媒は吸入室141に流出する。
したがって、切欠き溝部352b3の横断面積を第1実施形態における第2放圧通路146aの固定絞り103cの開口面積と同等にすれば、第1放圧通路146bは第2放圧通路146aの機能を兼ね備えることになって、第2放圧通路146aを省略することができる。
【0092】
「第3実施形態」
上記の第1、第2実施形態では、第2弁孔151a、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔及び連通路101eからなる通路部は、第1放圧通路146bと圧力供給通路145とを兼ねるが、第1放圧通路146bと圧力供給通路145とを別経路として設けることができる。
図6は、第2弁孔151a、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔及び連通路101eからなる通路部を第1放圧通路146bとしてのみ用い、第2制御弁350からクランク室140に向けて冷媒を供給する圧力供給経路を個別に設けた第3実施形態の第2制御弁350を示す。
なお、
図6は、第2制御弁350が圧力供給通路145を開いたときの断面図である。
【0093】
図6に示す第2制御弁350は、収容室104eの第1収容室104e1の内周壁であって第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときに最外周面352a3と重ならない位置に圧力供給孔104jを開口させ、この圧力供給孔104jに一端が連通し、他端がクランク室140に連通する連通路104mを形成してある。
第1収容室104e1とクランク室140に連通する連通路104mは、シリンダヘッド104に形成した連通路104m1、吐出弁形成板151の連通孔、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔、シリンダブロック101に形成した連通路104m2により構成される。
また、最外周面352a3と区画部材351との間に形成される第1収容室(第1空間)104e1と、連通路104m(連通路104m1)とを連通させる連通孔352d4を形成してある。
【0094】
一方、スプール352には、第1、第2実施形態で形成される内部通路352d2、第1連通孔352d1及び第2連通孔352d2は形成されていない。
第3実施形態の第2制御弁350は、連通路104m及び連通孔352d4を備え、内部通路352d2、第1連通孔352d1及び第2連通孔352d2を備えない点で、第1実施形態の第2制御弁350と異なるが、それ以外は
図1−
図4に示した第1実施形態と同じ構成であり、共通部分の詳細な説明は省略する。
【0095】
第3実施形態の第2制御弁350では、第1制御弁300が開弁して、第1弁部352aが第1弁座104e31から離座し第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときに、第1弁孔104e32が開口し、連通路104k、第1制御弁300、収容孔104b、連通路104f、第1弁孔104e32、第1収容室(第1空間)104e1、圧力供給孔104j、連通路104m1、吐出弁形成板151の連通孔、バルブプレート103の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、シリンダガスケット152の連通孔、連通路104m2で構成される圧力供給通路145を介して吐出室142の冷媒がクランク室140に供給される。
【0096】
また、第1制御弁300が閉弁して、第1弁部352aが第1弁座104e31に着座し第2弁部352bが第2弁座151bから離座したときには、第1弁孔104e32が閉塞されることで連通路104mを含んで構成される圧力供給通路145が閉じられ、第1制御弁300に向けた冷媒の逆流が阻止される一方で、連通路101eと連通路104gとの連通部151b1が開く。
【0097】
これにより、連通路101e、シリンダガスケット152の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、バルブプレート103の連通孔、第2弁孔151a、第2弁部352bと第2弁座151bとの間隙(連通部)151b1、弁室351c、連通孔351a2、側壁351aの外側の第2収容室(第2空間)104e2内の円環状空間、放圧孔104g1及び連通路104gから構成される第1放圧通路146bの開度が最大開度となり、クランク室140の冷媒が第2放圧通路146a及び第1放圧通路146bを介して吸入室141に排出される。
【0098】
このように、第3実施形態の第2制御弁350も、第1、第2実施形態の第2制御弁350と同様に、第1制御弁300の開閉に応じて第1放圧通路146bを開閉する機能と第1制御弁300に向かう冷媒の逆流を阻止する機能とを兼ね備えるから、第1制御弁300の開閉に応じて第1放圧通路146bを開閉する制御弁と第1制御弁300に向かう冷媒の逆流を阻止する逆止弁とを個別に設ける場合に比べて、構造が簡略で弁のレイアウトが容易である。
【0099】
また、第1弁部352aの最外周面352a3と第1収容室104e1の内周面との間の隙間に流入した冷媒ガスは、連通孔352d4を介して連通路104m(連通路104m1)に流入し、連通路104m内を流れる冷媒に合流する。
これにより、第1弁部352aの最外周面352a3と第1収容室104e1の内周面との間の隙間に冷媒ガスを流し、隙間への異物の滞留を抑制するようにしてあり、第1、第2実施形態の第2制御弁350と同様に、異物の滞留によってスプール352の動きが阻害されることを抑制できる。
【0100】
「第4実施形態」
図6に示した第3実施形態の第2制御弁350は、スプール352の第2弁部352bが第2弁座151bに着座することで、連通路104gと連通路101eとの連通部151b1(第1放圧通路146b)を閉鎖するが、第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときに第2弁部352bと第2弁座151bとの合わせ面の一部に隙間が形成され、この隙間を介して放圧(クランク室140から吸入室141への冷媒の排出)が行われる構成とすることができる。
【0101】
図7は、第1放圧通路146bと圧力供給通路145とを別経路として設け、かつ、スプール352の第2弁部352bが第2弁座151bに着座した状態で第1放圧通路146bを介して放圧が行われるようにした、可変容量圧縮機100の第4実施形態を示す。
なお、
図7は、第2制御弁350が圧力供給通路145を開いたときの断面図である。
図7に示した第2制御弁350では、第2弁部352bの端面352b1(環状着座面)に径方向に延びる切欠き溝部352b3(絞り通路)を形成してある。
なお、第4実施形態の第2制御弁350は、連通路104m及び連通孔352d4を備え、内部通路352d2、第1連通孔352d1及び第2連通孔352d2を備えない点は第3実施形態と同様であり、第3実施形態の第2制御弁350とは切欠き溝部352b3を付加した点が異なる。
【0102】
このように、第2弁部352bの端面352b1に切欠き溝部352b3を形成した第2制御弁350では、第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときに切欠き溝部352b3を介して連通路101eと連通路104gとが連通し、切欠き溝部352b3を介してクランク室140の冷媒が吸入室141に排出される。
つまり、連通路101eと連通路104gとの連通部151b1の最小開度、換言すれば第1放圧通路146bの最小開度が切欠き溝部352b3の開口面積になり、第2弁部352bが第2弁座151bに着座したときも、第1放圧通路146bは閉鎖されずに切欠き溝部352b3の横断面積に一致する最小開度だけ開口する。
【0103】
これにより、連通路101e、シリンダガスケット152の連通孔、吸入弁形成板150の連通孔、バルブプレート103の連通孔、第2弁孔151a、切欠き溝部352b3、弁室351c、連通孔351a2、側壁351aと第2収容室(第2空間)104e2の内周壁で挟まれる円環状空間、放圧孔104g1及び連通路104gから構成される第1放圧通路146bを介してクランク室140の冷媒は吸入室141に流出する。
したがって、切欠き溝部352b3の横断面積を第2放圧通路146aの固定絞り103cの開口面積と同等にすれば、第1放圧通路146bは第2放圧通路146aの機能を兼ね備えることになって、第2放圧通路146aを省略することができる。
【0104】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、スプール352の第1弁部352aが第1弁座104e31に着座したときに、背圧Pmの低下に支障がない範囲内で漏れを許容する構造とすることができる。
【0105】
また、上記の実施形態では、第2制御弁350はシリンダヘッド104に配設されるが、第2制御弁350を他のハウジング構成部材、例えばシリンダブロックに配設したり、第2制御弁350を専用のバルブハウジングに収容して圧縮機ハウジングに配設したりすることができる。
また、第1制御弁300を、ソレノイドを備えない機械式制御弁とすることができる。
【0106】
また、上記の実施形態では、の可変容量圧縮機100を斜板式のクラッチレス可変容量圧縮機としたが、これに限定されず、電磁クラッチを装着した可変容量圧縮機や、モータで駆動される可変容量圧縮機とすることができる。