(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558892
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】コーヒーネル袋用脱水機
(51)【国際特許分類】
A47J 31/60 20060101AFI20190805BHJP
D06F 49/00 20060101ALI20190805BHJP
D06F 33/02 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
A47J31/60
D06F49/00 Z
D06F33/02 P
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-252925(P2014-252925)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-112171(P2016-112171A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592044075
【氏名又は名称】株式会社ハヤブサ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(72)【発明者】
【氏名】浜 義人
【審査官】
黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−114890(JP,U)
【文献】
実開昭63−201650(JP,U)
【文献】
特開平06−039187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/60
D06F 21/00−25/00
D06F 33/02
D06F 37/00−37/42
D06F 39/00−39/14
D06F 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ立方形の筐体内に上位室と下位室とを区画する仕切り板と、
前記下位室の床板上に軸心の延長線がそれぞれほぼ鉛直になるように設けられた複数の振動吸収手段と、
前記振動吸収手段を介して前記床板上に設けられた基台と、
前記基台の上面に固定された枠部材にモータ軸が上向き傾斜するように設けられた高速モータと、
前記モータ軸に設けられたブレーキ手段と、
前記上位室内に設けられた回転篭の下面の中心軸と前記モータ軸とを連結する連結手段と、
前記回転篭の上面に設けられたネル袋の投入口に対応するように前記筐体に設けられた開閉蓋と、
前記開閉蓋の開閉又は前記筐体に設けられたスイッチの作動に連動して前記高速モータの起動及び停止を制御する制御手段と
を有し、
前記振動吸収手段は、
前記高速モータに対して、回転により生じる振動を吸収し、
前記回転篭は、
重心が前記振動吸収手段それぞれの鉛直線で囲まれる領域の外側にあること
を特徴とするコーヒーネル袋用脱水機。
【請求項2】
前記仕切り板が、前記回転篭から脱水された水滴の傾斜受け板と、該傾斜受け板を流下した水滴の排水手段を有する貯水室になっていることを特徴とする請求項1に記載のコーヒーネル袋用脱水機。
【請求項3】
前記振動吸収手段が、ゴム管と、該ゴム管の両端に嵌入した取付部材と、該取付部材間に突っ張り状態で介装したコイルバネとからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーヒーネル袋用脱水機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネルドリップ式のコーヒー抽出に使用するネル袋を、先の抽出に使用したコーヒー滓を除去し、揉み洗い(洗剤を使わない)して次の抽出に直ぐに使えるようにしたコーヒーネル袋用脱水機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネルドリップ式のコーヒー抽出に採用されているネル袋は、ネル(羊毛織布)を袋状に縫製したもので、最近では綿織布もネル袋として用いられている。このネル袋でコーヒー粉をドリップしたコーヒーの味はすこぶる「うまい」と言われているが、ネル袋の手入れに困難さがあった。すなわち、味に影響する先の抽出時に残っているコーヒー滓を除去し、洗剤を使わないで揉み洗いにより「のり」を完全に落とすことが必要である上に半渇き状態にしなければ使用できない。
【0003】
特に客の多い店では1日のうちに数回ネル袋を使い回す必要があるが、かかる場合には揉み洗い後のネル袋を良く絞って半渇き状態にして再使用するが、これには大人の男性の力で水滴が出なくなる程度によく絞ることが必須であり、女性店員や力の弱い男性店員には大きな負担となっていた。この絞り作業は本発明者が先に提案した特許2515663号の回転脱水装置を用いれば揉み洗い後のネル袋をたちどころに半渇き状態に絞ることは容易である。
【特許文献1】特許2515663号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の回転脱水装置は、例えば、スイミングクラブなどの施設に設置され、濡れたスイミングパンツやスイミングスーツやスイミングキャップなどを瞬時に半渇き状態にすることができるが、人が立ったまま操作できるように筐体の背の高さが1mぐらいに作られていた。したがって、この高さのものをそのまま店のカウンター上や流し台上或いは隣接テーブル上に置いてネル袋の絞りには高すぎて使い勝手が悪かった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、その目的とするところは、ネルドリップ式のコーヒー抽出に使用するネル袋を、先の抽出時に残留したコーヒー滓を除去するとともに揉み洗いし「のり」を除去した後のネル袋を直ぐに使えるように半渇き状態に絞れるようにしたコーヒーネル袋用脱水機を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコーヒーネル袋用脱水機は、ほぼ立方形の筐体内に上位室と下位室とを区画する仕切り板と、前記下位室の床板上に軸心の延長線がそれぞれほぼ鉛直になるように設けられた複数の振動吸収手段と、前記振動吸収手段を介して前記床板上に設けられた基台と、前記基台の上面に固定された枠部材にモータ軸が上向き傾斜するように設けられた高速モータと、前記モータ軸に設けられたブレーキ手段と、前記上位室内に設けられた回転篭の下面の中心軸と前記モータ軸とを連結する連結手段と、前記回転篭の上面に設けられたネル袋の投入口に対応するように前記筐体に設けられた開閉蓋と、前記開閉蓋の開閉又は前記筐体に設けられたスイッチの作動に連動して前記高速モータの起動及び停止を制御する制御手段とを有
し、前記振動吸収手段は、前記高速モータに対して、回転により生じる振動を吸収し、前記回転篭は、重心が前記振動吸収手段それぞれの鉛直線で囲まれる領域の外側にあることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載のコーヒーネル袋用脱水機は、前記仕切り板が、前記回転篭から脱水された水滴の傾斜受け板と、該傾斜受け板を流下した水滴の排水手段を有する貯水室になっているものである。
【0008】
さらに、請求項3に記載のコーヒーネル袋用脱水機は、前記振動吸収手段が、ゴム管と、該ゴム管の両端に嵌入した取付部材と、該取付部材間に突っ張り状態で介装したコイルバネとからなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高速モータのモータ軸を上向き傾斜に設置し、高速モータからネル袋を投入できる回転篭までの高さを抑え筐体の背の高さを低くしたから、店のカウンター上や流し台上或いは隣接テーブル上などに設置して使い勝手がよいとともにコーヒーを喫するスペースとなるカウンター上に設置したとしてもカウンター席の者に振動を伝えることがないし、コーヒーカップなどの食器を鳴らすこともないという優れた効果を奏するものである。
【0010】
また、請求項2に係る発明によれば、ネル袋を絞ったときに出る水滴を一カ所に集めて筐体内に取り外し可能に設置した収容タンクに繋げることも、既設の排水設備に繋げる水処理が容易にできるという優れた効果を奏するものである。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明によれば、横揺れも縦揺れも確実に吸収でき、例えば、店のカウンター上に設置しても、該カウンター上に置いたコーヒーカップを振動により鳴らすことも客に振動を伝えて不愉快な想いをさせる虞もないという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の態様について図面を参照して説明する。
図1は本願機内を示す側面断面図、
図2は基台上に固定した枠部材の斜視図、
図3は振動吸収手段を示す拡大断面図、
図4は開閉蓋を示す筐体の外観斜視図である。
【0013】
本願機1は、
図1の如く、ほぼ立方形の筐体2内に備えられている。該筐体2内には上位室3と下位室4とを仕切り板5で区画している。前記下位室4の床板4′上には振動吸収手段6を介して基台7が設けられている。前記振動吸収手段6は、
図2の如く、前記基台7を3点支持しているが、該3点支持には限らない。該筐体2の底部下の角部には脚部材2′が設けられている。勿論、図示していないが、キャスターを設けて移動可能にすることも可能である。
【0014】
前記基台7の上面には、高速モータ8を設置した枠部材9が斜状に固定(溶接など)されている。該枠部材9に設置された前記高速モータ8はそのモータ軸11が、枠部材9の頂面に設けた透孔10を通して上向き傾斜するように延びている。
【0015】
前記振動吸収手段6は、
図3の如く、ゴム管6aと、該ゴム管6aの両端に嵌入固定した取付部材6b、6b′と、該取付部材6b、6b′間に介装したコイルバネ6cとからなり、横振動にはゴム管6aが対応し、縦振動にはコイルバネ6cが対応できるようになっている。前記取付部材6b、6b′には、それぞれ外向きに2個の突起6d、6d′が突設され、基台7及びに下位室4の床板4′の対応位置に設けた穴に嵌入できるようになっている。
【0016】
前記モータ軸11の先端部には、連結手段12を介して前記上位室3側から回転篭13の下面から突設された中心軸14が連結されている。この連結手段12の筒部分には中心軸14とモータ軸11とを締込み固定できるようになっている。
【0017】
前記回転篭13は、前述の如く瞬時に高速回転させるためにバランスのとれた形状になっている。実施例ではステンレス製の鍔付き凹状体の側面に多数の水切り穴15が形成されている(図示では側面を網状になっている)。該回転篭13の回転時に安定回転をさせるため、その鍔部16の裏面側にバランスをとる錘17を設置している。
【0018】
前記回転篭13の上面にはネル袋Nの投入口18が開口している。該投入口18に対応する前記筐体2の上面傾斜部2″には前記投入口18に対応する開口部19が設けられている。該開口部19には開閉蓋20が蝶番21を介して開閉自在に設けている。該開閉蓋20の張出片20′は前記筐体2の前面に沿って並行に垂下し、筐体側の吸着体20″に吸着するようになっている。前記張出片20′は前記開閉蓋20の開閉時の把手となるようになっている。なお、前記開閉蓋20は図示の場合には上下方向に開閉できるようになっているが、横方向に開閉できるように構成してもよい。
【0019】
前記モータ軸11にはブレーキ手段22が設けられている。該ブレーキ手段22は前記モータ軸11に固定した摩擦板22aと、ソレノイド(電磁石)22bと、該ソレノイド22bへの通電時に摩擦板22aに接する圧接板22cと、該圧接板22cを旧位に復帰させるバネ(図示せず)とを備える。該ブレーキ手段22は、前記高速モータ8の通電をカットしたときにトップスピードで回転させている回転篭13に急ブレーキを掛けて即時に停止させることができるように設計されている。
【0020】
前記高速モータ8は、前記筐体2の前面に設けたスイッチ23を押すことにより起動するとともに、該起動から一定時間(5〜10秒)を経過すると自動的に停止するように制御手段24により制御されている。前記高速モータ8の起動は、瞬時(直ぐに)トップスピード(3,000/分以上)になるように設計されている。また、前記制御手段24は、図示していないが、前記開閉蓋20の開閉に連動して前記高速モータ8を起動及び停止できるように制御させることも可能である。前記開閉蓋20の開閉又は筐体2の前面に設けたスイッチ23の作用は、メーンスイッチ25を閉じ(通電しておく)ことが前提となることは勿論である。
【0021】
前記上位室3と下位室4との仕切り板5は、前記回転篭13から脱水された水滴の傾斜受け板5aと、該傾斜受け板5aを流下した水滴を貯留する貯水室5bとして利用している。該傾斜受け板5aは前記モータ軸11に対してほぼ直交している。また、前記貯水室5bには貯留された水の排出管5cを備えている。該排出管5cは前記筐体2の底面上に取り出し可能に設置した収容タンク26に繋げられている。勿論、前記排出管5cには延長ホース(図示せず)を延長し、筐体2の両側面に設けた穴27の一方から外出させ、既設の排水設備(図示せず)に繋げるようにしてもよい。
【0022】
次に、店のカウンター(コーヒーを喫するスペースに使っている)上に本願機1をセットした場合の作用について説明する。まず、メーンスイッチ25を閉じて操作を開始する。次に、ネルドリップ式のコーヒー抽出に使用するネル袋Nを、先の抽出時に残留したコーヒー滓を除去し、揉み洗いした後、開閉蓋20を、蝶番21を中心に上方に向けて開け、筐体2の開口部19を開放して回転篭13内にその投入口18より投入する。
【0023】
前記ネル袋Nの投入は、前記回転篭13が基台7上に設置した枠部材9に固定された高速モータ8の上向き傾斜したモータ軸11の先端部に連結手段12を介して取付けられ、筐体2の背の高さを含めて低く抑えられているために楽に行えて使い勝手がよい。
【0024】
次いで、前記ネル袋Nの投入後、開閉蓋20を閉じると、該開閉蓋20の張出片20′が筐体2側に設けた吸着体20″に吸着して固定される。しかる後、前記筐体2の前面に設けたスイッチ23を押す。これにより制御手段24が働き、前記高速モータ8が起動して前記回転篭13を回転させる。該回転篭13は瞬時にトップスピードになって5〜10秒程度でネル袋Nを半渇き状態まで絞って停止させる。
【0025】
前記高速モータ8の回転中、前記基台7は振動吸収手段6により支持されているため、横振動にはゴム管6aが対応し、縦振動にはコイルバネ6cが対応するから、筐体2を設置したカウンターにはその振動を伝えない。したがって、該カウンターでコーヒーを喫する者があっても違和感を与えないばかりでなく、コーヒーカップを鳴らすようなこともない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本願装置は、ネルドリップ式のコーヒー抽出に使用するネル袋を、先の抽出のコーヒー滓を除去した後、揉み洗い(洗剤を使わない)して直ぐに次の抽出に使えるようにしたもので、コーヒー業界、喫茶店業界など産業上の利用可能性は高いものである。
【符号の説明】
【0028】
1 本願装置
2 筐体
2′ 脚部材
2″ 上面傾斜部
3 上位室
4 下位室
5 仕切り板
6 振動吸収手段
6a チューブ状のゴム管
6b、6b′ 接続部材
6c コイルバネ
6d、6d′ 突起
7 基台
8 高速モータ
9 枠部材
10 透孔
11 モータ軸
12 連結手段
13 回転篭
14 中心軸
15 水切り穴
16 鍔部
17 錘
18 投入口
19 開口部
20 開閉蓋
20′ 張出片
20″ 吸着体
21 蝶番
22 ブレーキ手段
22a 摩擦板
22b ソレノイド(電磁石)
22c 圧接板
23 スイッチ
24 制御手段
25 メーンスイッチ
26 収容タンク
27 穴
N ネル袋