(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558897
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】熱伝導性に優れたダイヤモンド構造体の製造法。
(51)【国際特許分類】
C30B 29/04 20060101AFI20190805BHJP
C01B 32/26 20170101ALI20190805BHJP
C01B 32/28 20170101ALI20190805BHJP
【FI】
C30B29/04 U
C01B32/26
C01B32/28
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-267205(P2014-267205)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-117633(P2016-117633A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】藤村 忠正
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 茂
【審査官】
今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0019114(US,A1)
【文献】
特開2004−083315(JP,A)
【文献】
特開2012−121765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/04
C01B 32/26
C01B 32/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド粉末のみを金型に入れ、不活性ガス雰囲気中で、前記ダイヤモンド粉末を高温、高圧下で焼結し、成型する工程を備え、
前記高温が700〜4000K、前記高圧が1〜15GPaであり、
前記ダイヤモンド粉末は、曝轟法によって得られたナノダイヤモンドを硝酸の共存下で高温高圧処理することによりグラファイト層の一部を除去したナノダイヤモンドである、熱伝導性に優れたダイヤモンド構造体の製造方法。
【請求項2】
前記不活性ガスが窒素、ヘリウム、又はアルゴンである、請求項1に記載の熱伝導性に優れたダイヤモンド構造体の製造方法。
【請求項3】
前記高温が1300〜3300K、前記高圧が4〜12GPaである、請求項1又は2に記載の熱伝導性に優れたダイヤモンド構造体の製造方法。
【請求項4】
前記ダイヤモンド粉末の密度が、3.36g/cm3以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導性に優れたダイヤモンド構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ダイヤモンド構造体の熱伝導率が500W/m・K以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱伝導性に優れたダイヤモンド構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド粉末を、高温、高圧下で固めて優れた熱伝導性を有するダイヤモンド構造体を、簡便に、効率よく、かつ高い生産性で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、化学的安定性、生体適合性、半導体特性、硬度、熱伝導性等の物性の高さから、パワー半導体デバイス、電子放出源、電極、MEMS、バイオデバイス、切削工具、研磨工具、プローブ、ヒートシンク、触媒担体等への応用が期待されている。しかし、ダイヤモンド自体の正確な微細加工が困難であるという問題があり、これがデバイスの実用化を阻む原因の一つとなっている。ダイヤモンドの微細加工では、上記の困難さのために、まずは所定の構造を製造することが目的となっている。ダイヤモンド構造体の微細加工では、加工面の平坦性、形状を加工する方法等さまざまな技術開発が行われている。
【0003】
これらは所望の構造体を加工することによって得ることを目的とした技術開発であり、所望の構造体そのものを得る技術開発については検討されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、ダイヤモンド粉末を、高温、高圧下で固めて優れた熱伝導性を有するダイヤモンド構造体を、簡便に、効率よく、かつ高い生産性で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、不活性ガス雰囲気中で、ダイヤモンド粉末を高温、高圧下で成型して、熱伝導性に優れたダイヤモンド構造体を製造することができることを見出し、本発明に想到した。
【0006】
すなわち、本発明のダイヤモンド構造体の製造法は、不活性ガス雰囲気中で、ダイヤモンド粉末を高温、高圧下で用途に応じた任意の形状に成型した熱伝導性に優れたことを特徴とするダイヤモンド構造体及びその製造法に関する。
【0007】
前記ダイヤモンド粉末を窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、高温、高圧下で焼結し、成型することが好ましい。
【0008】
前記ダイヤモンド構造体において、高温が1300〜3500K、高圧が4〜12GPaの範囲の組合せで焼結し、成型することが好ましい。
【0009】
前記ダイヤモンド構造体において、ダイヤモンドが爆轟法により得られたナノダイヤモンドであることが好ましい。
【0010】
前記ダイヤモンド構造体において、ダイヤモンドの熱伝導率が500W/m・K以上であることが好ましい。
【0011】
ここで言う熱伝導率は、JIS R1611に準拠して測定した。
熱伝導率の単位は、W/m・K で表される。ここで、
W;ワット
m;メートル
K;絶対温度(ケルビン)
を表す。
【0012】
本発明は、不活性ガス雰囲気中で、ダイヤモンド粉末を高温、高圧下で焼結し、成型することによって、任意の形状の熱伝導性の良好な成型物とし、パワー半導体デバイス、電子放出源、電極、MEMS、バイオデバイス、切削工具、研磨工具、プローブ、ヒートシンク、触媒担体等への応用が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1]ダイヤモンド構造体の製造方法
本発明のダイヤモンド構造体の製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
(1)ダイヤモンド構造体の製造法
本発明のダイヤモンド構造体の製造方法は、高温、高圧圧縮機に金型をセットし、金型中にダイヤモンド粉末を窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等の不活性ガス雰囲気に満たし、高温、高圧下で圧縮、焼結し、構造体にすることを特徴とする。
【0015】
ダイヤモンド粉体には空気を含むので、高温に加熱するとダイヤモンドが酸化して燃焼するので、高温、高圧圧縮機にセットした金型にダイヤモンド粉末をセットした状態で、金型部分より吸引して、空気を予め除去しておくことが好ましい。真空で空気を除去するとダイヤモンド粉体が舞い上がるので、ダイヤモンド粉体が舞い上がらないように、徐々に真空度を上げて空気を除く事が好ましい。
【0016】
しかる後、金型部分にダイヤモンド粉末が舞い上がらないように、不活性ガスを徐々に注入することが好ましい。注入する不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等が挙げられるが、窒素、ヘリウム、アルゴンが特に好ましい。
【0017】
ダイヤモンド粉末は、使用用途に応じて作製された金型にコンパクトに充填され次工程で高温に加熱され、高圧がかけられる。高温加熱、加圧に先だって、金型中のダイヤモンド粉末より空気を完全に除くために、空気を除く真空操作と不活性ガスを注入する操作を数回繰り返し行う事が好ましい。
【0018】
不活性ガスで置換されたダイヤモンド粉末を金型に充填した状態で、不活性ガスを温度700〜1200Kで1分から30分かけて予熱して、しかる後、高温、高圧をかけてダイヤモンド構造体を作製する。かける温度としては、700〜4000K、好ましくは1300〜3300Kであることが良い。このときの圧力は、1Gpa〜15Gpa、好ましくは4〜12Gpaであることが良い。温度、圧力は、これら両者の組合せの範囲内で有れば良い。加熱する温度、圧力が700K以下、1Gpa以下であると構造体としての形状の保持が難しく、力を加えると容易に崩れる。また熱伝導率が目的とする500W/m・K以上を達成できない。その理由は良く分からないが、不活性ガス等がダイヤモンド間に介在し、ダイヤモンドの密着が十分でない事が理由であるかもしれない。加熱する温度、圧力の上限は特に限定されないが、生産技術上4000K、15Gpa程度が限界である。また4000K以上では加熱による劣化が大きく好ましくない。加熱、加圧する時間は、数秒から5分の間で有れば良く、好ましくは15秒から3分程度かければ良い。高温で加圧圧縮終了後、冷却スピードが遅いとナノダイヤモンドは酸化劣化するので、冷却は速いほうが良く、冷却するスピードは、500〜6000K/分であることが良い。
【0019】
(2)ダイヤモンドの製造法
ダイヤモンド粉末としては、市販のナチュラルダイヤモンドを用いることが好ましい。0〜0.1μから30〜40μ大きさのナチュラルダイヤモンドは多数あるが、細かく粉砕したメジアン径で100nm程度のダイヤモンド粉末を用いることが好ましい。本発明に於いて用いるダイヤモンドは、爆轟法ナノダイヤモンドが更に好ましい。爆轟法ナノダイヤモンドは、コアがSP3ダイヤモンドで、その表面のシェルはSP2グラファイトからなるコア・シェル構造から成っている。シェルのSP2グラファイト表面に多数の官能基、すなわち、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)等が存在している。高温・高圧を加えることで固い構造体になる理由は明らかでないが、−OHと−COOHが、又は−OH同士が反応して、エーテル結合を作製するためと考えられている。いずれにしろ、しっかりと結合したダイヤモンド構造体が得られる。
【0020】
爆轟法によるナノダイヤモンドの合成は、例えば、水と多量の氷を満たした純チタン製の耐圧容器に、電気雷管を装着した爆薬[例えば、TNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50]を胴内に収納させ、片面プラグ付き鋼鉄製パイプを水平に沈め、この鋼鉄製パイプに鋼鉄製のヘルメット状カバーを被覆して、前記爆薬を爆裂させることにより行うことができる。反応生成物としてのナノダイヤモンドは容器中の水中から回収する。
【0021】
爆薬としては、トロメチルアニリン(テトリル)、トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)、ジアミノトリニトロベンゼン(DATB)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、ヘキサニトロアゾベンゼン(HNAB)、ヘキサニトロジフェニルアミン(HNDP)、ピクリン酸、ピクリン酸アンモニウム、ベンゾトリアゾール(TACOT)、エチレンジニトラミン(EDNA)、ニトログアニジン(NQ)、ペンタエリスリトールテトラナイトレート(ペンスリット)、ベンゾトリフルオキサン(BTF)等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用する。特に、RDX(60%)とTNT(40%)との混合爆薬であるコンポジションB、HMX(75%)とTNT(25%)との混合爆薬であるオクトール等を使用するのが好ましい。
【0022】
これらの有機系爆薬は、炭素原子含有率が15質量%以上、好ましくは20〜35質量%、密度が1.5g/cc以上、好ましくは1.6g/cc以上、爆速は7000m/s以上、好ましくは7500m/s以上であり、酸素バランスが負、好ましくは−0.2〜−0.6であり、爆轟圧が18GPa以上、好ましくは20〜30GPa、爆轟温度が3000K以上、好ましくは3000〜4000Kである。そのため、爆薬中の炭素原子を効率よくダイヤモンドに転換することができる。
【0023】
回収した爆発生成物は、ナノオーダーサイズのダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、黒く着色している。この未精製のナノダイヤモンドは、2.4〜2.6g/cm
3程度の密度を有し、メジアン径(動的光散乱法)は50〜500nm程度である。未精製ナノダイヤモンドの精製の程度によっては目的とする熱伝導性に差異が出るので、高熱伝導性を求める場合は、SP2グラファイトを除去して構造体に供することが好ましい。この未精製のダイヤモンドを後述の方法で酸化処理することにより、グラファイト系炭素のシェル層を除去し、ナノダイヤモンドの粒子を得ることができる。酸化処理により精製したダイヤモンド粒子は、2〜10nm程度の一次粒子からなるメジアン径50〜250nm程度の二次粒子である。
【0024】
未精製のナノダイヤモンド(粗ダイヤモンド)の酸化処理方法としては、(a)硝酸等の共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(b)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(c)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(d)380〜450℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行っても良い。酸化処理を組合せる場合は、爆轟法で得られた未精製のナノダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
【0025】
爆轟法で得られた未精製のダイヤモンドに酸化処理Aを施すことによりグラファイト層の一部が除去されたダイヤモンド粒子(グラファイト−ダイヤモンド粒子)が得られ、このグラファイト−ダイヤモンド粒子に酸化処理B〜Cのいずれかの処理を施すことにより前記グラファイト層をさらに除去することができる。
【0026】
酸化処理したダイヤモンドの密度は、ダイヤモンド粒子中のダイヤモンドとグラファイトとの量によって決まる。すなわち、未精製のナノダイヤモンドに施す酸化処理の程度によって、ダイヤモンド粒子中のダイヤモンドとグラファイトとの量を変え、ダイヤモンド粒子の密度を調節することができる。グラファイト系炭素(グラファイトの密度:2.25g/cm
3)の残存量が少なくなればなるほどダイヤモンドの密度(3.50g/cm
3)に近づく。従って、精製度が高くグラファイト系炭素の残存量が少ないほど密度が高くなる。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0028】
実施例1〜5、比較例1〜2
(1)爆薬の準備
図4(a)に示すように、TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65kgの爆薬3を、円筒状のPET製の容器20aに充填し、同じくPET製の蓋20bをして容器20aを密閉した。前記蓋20bに設けられたノズル21から容器20a内の空気を吸引し、代わりに窒素ガスを充填する操作を5回繰り返した後、ノズルを閉めて容器20aを密閉した。このような操作により、容器20a内は窒素ガスで満たされ、このときの酸素濃度は0.5容量%であった。なお爆薬3には、起爆用爆薬及び電気雷管を取り付けた。
【0029】
(2)爆薬の設置
この爆薬3を充填した容器20aを、
図1に示すように、5m
3の大きさの耐圧性容器1内のほぼ中央部分に吊材4で吊り下げ、耐圧性容器1内の空気を窒素と置換した。前記吊材4として銅線を使用し、爆薬3を起爆するための電気雷管への電流はこの銅線を通して供給した。このときの耐圧性容器1内は1気圧であり、酸素濃度は4容量%であった。
【0030】
(3)爆発
耐圧性容器1の外壁に、送風機で風を当てながら窒素ガスで満たした容器20aに充填した爆薬3を爆発させた。
【0031】
(4)爆発生成物の回収
爆発後5分間静置し、耐圧性容器1の上蓋7を開け、水で耐圧性容器の内壁面を洗浄しながら黒色液状の爆発生成物(未精製のダイヤモンド)を回収した。この未精製のダイヤモンドの収率は使用した爆薬量に対して7.5質量%であり、密度は2.44g/cm
3、メジアン径(動的光散乱法)は100nmであった。この未精製のダイヤモンドは、密度から計算して、85体積%のグラファイト系炭素と15体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
【0032】
(5)ダイヤモンドの精製
この未精製のダイヤモンドを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、グラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、ダイヤモンドの粉末を得た。このダイヤモンド粉末の収率は使用した爆薬量に対して4.1質量%であり、密度は3.36g/cm
3、メジアン径は35nm(動的光散乱法)であった。密度から計算して、89体積%のダイヤモンドと11体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
【0033】
実施例1〜5、比較例1〜2の項で得られたナノダイヤモンド粉末を、金型に入れ、ナノダイヤモンド粉末が飛ばないように空気を抜き、同様にナノダイヤモンドが飛ばないように、徐々に不活性ガスアルゴン注入をする。これを5回繰り返し、アルゴン雰囲気のナノダイヤモンドを1000Kで2分間、予め加熱して、表1に記載の温度、圧力で圧縮機にかけて10mm径の厚み3mmのナノダイヤモンド構造体を作製した。この試料の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
表1から明らかなように、熱伝導率が500W/m・K以上を満足するには、処理温度は、700〜4000K、処理圧力が1〜15GPaの組み合わせが好ましく、処理温度が1300〜3300K、処理圧力が4〜12GPaである事が最も好ましい事が理解される。
【0035】
実施例2
実施例1と同様にして、(1)爆薬の準備、(2)爆薬の設置、及び(3)爆発の操作を行った後、さらに、(1)爆薬の準備、(2)爆薬の設置、及び(3)爆発の操作を4回繰り返し、続けて合計で5回の爆発を行った。ただし、2回目以降の爆発においては、爆薬を設置した後に容器内のガスを窒素で置換する操作は省略した。5回目の爆発後、実施例1と同様にして、(4)爆発生成物の回収作業、及び(5)ダイヤモンドの精製を行った。この未精製のダイヤモンドを60質量%硝酸水溶液と混合し、130℃、10気圧、10分の条件で酸化性分解処理を行った後、110℃、10気圧、30分で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、グラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、180℃、15気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、ダイヤモンドの粉末を得た。このダイヤモンド粉末の収率は使用した爆薬量に対して4.3質量%であり、密度は3.13g/cm
3、メジアン径は30nm(動的光散乱法)であった。密度から計算して、70体積%のダイヤモンドと30体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
【0036】
実施例6〜10、比較例3〜4の項で得られたナノダイヤモンド粉末を、金型に入れ、ナノダイヤモンド粉末が飛ばないように空気を抜き、同様にナノダイヤモンドが飛ばないように、徐々に不活性ガスアルゴン注入をする。これを5回繰り返し、アルゴン雰囲気のナノダイヤモンドを1000Kで2分間、予め加熱して、表2に記載の温度、圧力で圧縮機にかけて10mm径の厚み600μのナノダイヤモンド構造体を作製した。この試料の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
表2から明らかなように、熱伝導率が500W/m・Kを満足するには、処理温度は、700〜4000K、処理圧力が1〜15GPaの組み合わせが好ましく、処理温度が1300〜3300K、処理圧力が4〜12GPaである事が最も好ましい事が理解される。
【0038】
表1、表2の結果から明らかなように、熱伝導率が500W/m・Kを満足するダイヤモンド構造体を作製するには、高温、高圧圧縮機にセットした金型中に、ダイヤモンド粉末をセットし、空気を除き、不活性ガスを充填を数回繰り返し、予め余熱を加えてしかる後、処理温度は、700〜4000K、処理圧力が1〜15GPaの組み合わせが好ましく、処理温度が1300〜3300K、処理圧力が4〜12GPaである事が最も好ましい事が理解される。
【符号の説明】
【0040】
1・・・耐圧性容器
2・・・容器
3・・・爆薬
4・・・吊材
5・・・リーク弁
6・・・耐圧性の密閉容器
7・・・上蓋
20a・・・容器
20b・・・蓋
21・・・ノズル
22a,22b・・・氷の容器