特許第6558903号(P6558903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558903
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】吸収性製品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20190805BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20190805BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20190805BHJP
   A61F 13/515 20060101ALI20190805BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   A61F13/532 200
   A61F13/511 100
   A61F13/512 300
   A61F13/515
   A61F13/539
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-15513(P2015-15513)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-137211(P2016-137211A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0167046(US,A1)
【文献】 特開平02−274250(JP,A)
【文献】 特開2000−333987(JP,A)
【文献】 特開平11−113951(JP,A)
【文献】 特開2001−190581(JP,A)
【文献】 特開2006−239290(JP,A)
【文献】 特開2000−152958(JP,A)
【文献】 特開2015−226706(JP,A)
【文献】 特開2006−116157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物の通過を防止する防水シートと、
前記防水シートよりも着用者側に配置され、前記排泄物を吸収する吸収体と、
最も前記着用者側に配置され、液浸透性を有すると共に、前記排泄物の少なくとも軟便を前記吸収体側へ通すための通過部を有する表面シートと、
が重ねられた吸収性製品であって、
前記吸収体の存在しない不存在領域が前記吸収体によって区画され、前記吸収体の幅方向の中央部に形成されるとともに前記吸収体の着用時における前後方向について前記通過部の配置領域に対応して形成され、前記不存在領域に前記表面シートの一部が接続されており、
前記表面シートが前記吸収体から離間するように弾性力を発揮する弾性部材を前記不存在領域よりも前記幅方向の両外側に有する
ことを特徴とする吸収性製品。
【請求項2】
排泄物の通過を防止する防水シートと、
前記防水シートよりも着用者側に配置され、前記排泄物を吸収する吸収体と、
最も前記着用者側に配置され、液浸透性を有すると共に、前記排泄物の少なくとも軟便を前記吸収体側へ通すための通過部を有する表面シートと、
が重ねられた吸収性製品であって、
前記吸収体の存在しない不存在領域が前記吸収体によって区画され、前記不存在領域に前記表面シートの一部が接続されており、
前記表面シートが前記吸収体から離間するように弾性力を発揮する一対の弾性部材を前記不存在領域よりも前記吸収体の幅方向の両外側に有し、
前記通過部は、前記一対の弾性部材の間にのみ形成されている
ことを特徴とする吸収性製品。
【請求項3】
排泄物の通過を防止する防水シートと、
前記防水シートよりも着用者側に配置され、前記排泄物を吸収する吸収体と、
最も前記着用者側に配置され、液浸透性を有すると共に、前記排泄物の少なくとも軟便を前記吸収体側へ通すための通過部を有する表面シートと、
が重ねられた吸収性製品であって、
前記吸収体の存在しない不存在領域が前記吸収体によって区画され、前記不存在領域に前記表面シートの一部が接続されており、
前記表面シートが前記吸収体から離間するように弾性力を発揮する弾性部材を前記不存在領域よりも前記幅方向の両外側に有し、
前記表面シートと前記吸収体との間には、部分的に前記表面シートと前記吸収体とを繋ぐようにした複数の連結部が設けられている
ことを特徴とする吸収性製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排泄物を保持可能な吸収性製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の失禁用や乳幼児用の吸収性製品には、パンツと同様な形状をしたパンツ式やテープでパンツの形状に組み立てて使用するテープ式等の使い捨ておむつ、或いは、パンツの中に配置して使用される尿取りパッド等がある。
特許文献1は、この吸収性製品のおむつ例であり、その第2図及び第5図に示されるように、使用者の股側に軟便の透過が可能な透孔5Aを有する表面シート5と、外側に排泄物の透過を防止する不透液性シート1と、表面シート5と不透液性シート1とで挟まれ、表面シート5から透過してきた排泄物を吸収する吸収性ポリマー等からなる吸収体3とを有している。
【0003】
そして、この特許文献1の表面シート5は、着用時に弾性伸縮部材7の収縮力によって、幅方向の両端部が立ち上がり、これにより、表面シート5と吸収体3の上の透液性シート2との間には空間Pが形成され、この空間Pに軟便が収容可能とされている。
また、表面シート5は、幅方向の中央部が吸収体3の上の透液性シート2に接続され、これにより、表面シート5に付着した小便を吸収体3に導いて、表面シート5の湿潤した感触を可及的に回避するようにしている。
かくして、特許文献1のおむつでは、軟便については空間Pに収容し、そして、小便については吸収体3に移動し、軟便と小便を問わずに、身体への付着を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−274250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基本的に吸収体3自体は複数回の排泄量を吸収できる能力を有しており、通常(特に就寝中等では)、おむつは1回の排泄で捨てるのではなく、複数回の排泄を1枚のおむつで済ませることが多い。そうすると、例えば1回目の小便などの体液を吸収して吸収体3が膨張すると、吸収体3に接続された表面シート5は持ち上がって身体に近づく。このため、透孔5Aが閉じて、その後の使用において、軟便等が空間Pに移動できずに身体に付着し易くなることが分かった。また、表面シート5が身体側に持ち上ると、表面シート5が肌に触れ易くなり、表面シート5に付着した小便などの排泄物が身体に触れてしまう。
なお、このような表面シート5の透孔5Aの閉鎖や肌への接触により排泄物が身体に触れるという問題は、1回の排泄で捨てるおむつであっても生じ得る問題であり、例えば、排泄物の量が多かったり、1回の排泄で小便をした後に大便をしたりした場合などでも生じ得る。
そこで、本発明は、排泄物が身体に触れることを可及的に回避して、排泄後の気持ち悪さやスキントラブルを回避できる吸収性製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、排泄物の通過を防止する防水シートと、前記防水シートよりも着用者側に配置され、前記排泄物を吸収する吸収体と、最も前記着用者側に配置され、液浸透性を有すると共に、前記排泄物の少なくとも軟便を前記吸収体側へ通すための通過部を有する表面シートと、が重ねられた吸収性製品であって、前記吸収体の存在しない不存在領域が前記吸収体によって区画され、前記吸収体の幅方向の中央部に形成されるとともに前記吸収体の着用時における前後方向について前記通過部の配置領域に対応して形成され、前記不存在領域に前記表面シートの一部が接続されており、前記表面シートが前記吸収体から離間するように弾性力を発揮する弾性部材を前記不存在領域よりも前記幅方向の両外側に有する吸収性製品により解決される。
【0007】
本発明によれば、排泄物の通過を防止する防水シートと、防水シートよりも着用者側に配置され、排泄物を吸収する吸収体とを有している。従って、小便等の排泄物を吸収体まで移動することが出来れば、排泄物は吸収体で保持されると共に、防水シートにより衣類側に付着することを防止できる。
また、最も着用者側に配置され、少なくとも軟便を吸収体側へ通すための通過部を有する表面シートは、吸収体から離間するように弾性力を発揮する弾性部材を有している。このため、弾性部材により表面シートと吸収体との間には空間が形成され、軟便は通過部を通ってこの空間に収容され、軟便と着用者とを表面シートで仕切りながら、収容した軟便を吸収体で吸収していくことができる。また、小便も表面シートの通過部を通るなどして、吸収体に吸収可能である。
ここで、吸収体の存在しない不存在領域が吸収体によって区画されている。また、不存在領域は、吸収体の幅方向の中央部に形成されるとともに、吸収体の着用時における前後方向について通過部の配置領域に対応して形成されている。この不存在領域に表面シートの一部が接続され、かつ、上述した表面シートを吸収体から離間させる弾性部材は不存在領域よりも幅方向の両外側に配置されている。そうすると、表面シートは、幅方向の両外側にある弾性部材の部分が最も股間側に配置され、不存在領域に接続された表面シートの一部が最も外側(股間とは反対側)に配置されることとなる。従って、表面シートについては、基本的に弾性部材の周辺以外の領域は股間に接触し難くなる。
さらに、この表面シートが接続されている不存在領域は、吸収体の幅方向の中央部において通過部の配置領域(装着した際において、少なくとも股間部から肛門部に至る領域、及びその周辺領域)に対応して形成され、吸収体の存在しない領域、例えば、吸収体に形成した孔(貫通孔)や切り欠きから露出した防水シート(防水シートの上に接続された他の部材を含む)の領域、或いは、吸収体を熱圧着してもはや吸収体ではなくなった領域である。そうすると、吸収体に小便や軟便が付着して膨張したとしても、吸収体の幅方向の中央部において通過部の配置領域(装着した際において、少なくとも股間部から肛門部に至る領域、及びその周辺領域)に対応して形成された不存在領域は吸収体が存在せずに膨張しないため、吸収体の幅方向の中央部における股間部から肛門部に至る領域の表面シートが股間に近づくことを防止できる。また、表面シートの最も股間側にある弾性部材の部分と最も外側にある不存在領域に接続された一部との位置差は略変わらないため、通過部が閉じることも有効に防止できる。従って、例えば、1枚のおむつを複数回の排泄に使用したり、1回の排泄量が多かったりした場合であっても、排泄物が身体に触れることを可及的に回避できる。
上記課題は、排泄物の通過を防止する防水シートと、前記防水シートよりも着用者側に配置され、前記排泄物を吸収する吸収体と、最も前記着用者側に配置され、液浸透性を有すると共に、前記排泄物の少なくとも軟便を前記吸収体側へ通すための通過部を有する表面シートと、が重ねられた吸収性製品であって、前記吸収体の存在しない不存在領域が前記吸収体によって区画され、前記不存在領域に前記表面シートの一部が接続されており、前記表面シートが前記吸収体から離間するように弾性力を発揮する一対の弾性部材を前記不存在領域よりも前記吸収体の幅方向の両外側に有し、前記通過部は、前記一対の弾性部材の間にのみ形成されていることを特徴とする吸収性製品により解決される。
本発明によれば、通過部が一対の弾性部材の間にのみ形成されているため、上記効果に加えて、吸収性製品を谷折りすることで、表面シートの弾性部材よりも幅方向の外側の部分が中央部に比べて肌に近くなっても、表面シートと吸収体との間の空間にいったん収容された軟便などの排泄物が弾性部材よりも外側の部分を通じて肌側に逆戻りする事態を防止できる。
【0012】
上記課題は、排泄物の通過を防止する防水シートと、前記防水シートよりも着用者側に配置され、前記排泄物を吸収する吸収体と、最も前記着用者側に配置され、液浸透性を有すると共に、前記排泄物の少なくとも軟便を前記吸収体側へ通すための通過部を有する表面シートと、が重ねられた吸収性製品であって、前記吸収体の存在しない不存在領域が前記吸収体によって区画され、前記不存在領域に前記表面シートの一部が接続されており、前記表面シートが前記吸収体から離間するように弾性力を発揮する弾性部材を前記不存在領域よりも前記幅方向の両外側に有し、前記表面シートと前記吸収体との間には、部分的に前記表面シートと前記吸収体とを繋ぐようにした複数の連結部が設けられていることを特徴とする吸収性製品により解決される。
本発明によれば、部分的に表面シートと吸収体とを繋ぐようにした複数の連結部が表面シートと吸収体との間に設けられているため、上記効果に加えて、表面シートの通過部を通らずに付着して残った体液を、連結部を介して吸収体に積極的に導くことができる。また、この連結部は表面シートと吸収体とを部分的に繋ぐものであり、このため、表面シートと吸収体との間の空間を完全に塞いでしまうこともなく、表面シートと吸収体との間の空間に軟便を移動させる機能を阻害することもない。
なお、本発明の連結部は、表面シートと吸収体とを直接的に繋ぐものに限られるものではなく、間接的に繋ぐものも含まれる。例えば、吸収体の着用者側の表面を覆う部材があれば、この部材と表面シートとを連結部で繋いでも構わない。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明は、排泄物が身体に触れることを可及的に回避して、排泄後の気持ち悪さやスキントラブルを回避できる吸収性製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性製品の斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係る吸収性製品の平面図。
図3図1の概略A−A断面図。
図4図1の吸収性製品の装着方法を示す図であり、図3の断面図に対応した図。
図5】本発明の第1実施形態に係る吸収性製品の第1変形例であり、図2に対応した平面図。
図6】本発明の第1実施形態に係る吸収性製品の第2変形例であり、図2に対応した平面図。
図7】本発明の第1実施形態に係る吸収性製品の第3変形例であり、図2に対応した平面図。
図8図7の吸収性製品を装着して、図7のB−B位置で切断した場合の概略断面図。
図9】本発明の第1実施形態に係る吸収性製品の第4変形例であり、図2に対応した平面図。
図10】本発明の第1実施形態に係る吸収性製品の第5変形例であり、表面シートと不存在領域との接続部分を拡大した概略部分縦断面図。
図11】本発明の第2実施形態に係る吸収性製品の概略斜視図。
図12図11の吸収性製品を装着して、図11のC−C位置で切断した場合の概略断面図。
図13図11の概略D−D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
また、以下の図において、同一の符号を付した箇所は同様の構成である。
また、以下の説明において、特段の説明がない限り、「前後方向」は吸収性製品を装着した際の着用者の下腹部と股間部と臀部とを結ぶ方向を、「左右方向」は吸収性製品を装着した際の着用者の左右方向(右脚と左脚とを結ぶ方向)を意味する。
【0016】
〔第1実施形態〕
先ず、本発明の第1実施形態に係る吸収性製品10を図1図4を用いて説明する。
なお、図1は吸収性製品10が湾曲した状態であり、理解の便宜のため、後述する表面シート20と不存在領域30との接続部分を平行斜線で示している。図2図1の吸収性製品10を伸ばし広げてから平面視した図であり、図1と同様、表面シート20と不存在領域30との接続部分を平行斜線で示している。図3の一点鎖線で囲った図は表面シート20と不存在領域30との接続部分における変形例を示す拡大図である。図4では、表面シート20の周縁部20Aの固定態様を図3とは変えて図示している。
【0017】
図1図4の吸収性製品10は、本発明の好適な例として、パンツの中に敷いて用いられる失禁用の尿便パッド(「失禁用パッド」とも言う)の例を示しているが、本発明の吸収性製品は、失禁用に限られるものではなく、乳幼児用おしめとしても用いることができる。また、パンツの中に敷く形式ではなく、おしめ自体がパンツ形状をしたパンツ式、またはテープでパンツの形状に組み立てて使用するテープ式等の使い捨ておむつ等として用いることができる。
【0018】
図1及び図2に示すように、吸収性製品10は広げた際、全体的に扁平で瓢箪のような形状をしており、一方向(図のY方向)に長い。この長手方向Yは、装着状態における着用者の前後方向に対応している。吸収性製品10は、着用者の下腹部側から股間部を通って臀部側に装着され、長手方向Yの両端部10a,10bが、パンツの中で着用者の胴回り又は胴回りに近接した位置まで配置される。
また、吸収性製品10は、この長手方向Yに直交する幅方向(短手方向)Xにおいて、着用者の左右方向に沿って装着される。
図2に示すように、吸収性製品10は、この幅方向Xの寸法が長手方向Yの中央部付近において短くなることで、吸収性製品10には縮幅部12が形成されている。縮幅部12は股間部に装着される部分である。
この縮幅部12は長手方向Yの中央ではなく、やや位置がずれており、縮幅部12から臀部側の端部10bまでの距離L1は、縮幅部12から下腹部側の端部10aまでの距離L2に比べて長い。縮幅部12から臀部側の端部10bまでの形状、及び、縮幅部12から下腹部側の端部10aまでの形状は、それぞれ概ね円形状である。なお、幅方向Xについて、吸収性製品10は左右対称である。
【0019】
図1及び図2に示す吸収性製品10は、長手方向Yに沿って、肌側に起立する一対のサイドギャザー14,14を有している。サイドギャザー14は、幅方向Xから排泄物が漏れる所謂横漏れを防止するための起立部である。具体的には、図1及び図3に示すように、吸収性製品10の幅方向Xの両端部に接続された防水性のあるサイドシート15の自由端部15aに、長手方向Yに沿って合成ゴム等の弾性材16が伸長した状態で接続したものである。この一対のサイドギャザー14,14間の寸法が股間部の左右方向の寸法に対応しており、吸収性製品10を装着すると、弾性材16の収縮力でサイドシート15が起立した状態になり、自由端部15aが股間部と内腿の付け根付近との間位に当たって、所謂横漏れを防止できる。
【0020】
本実施形態の吸収性製品10は男性用であり、陰茎を挿入できる切り込み部37を有している。切り込み部37は、装着した際に最も肌側となる表面シート20に形成されており、長手方向Yと幅方向Xで交差する十字状である。この切り込み部37の周辺は陰茎を挿入するための内側空間を有する袋状であり、当該内側空間には吸収体19が存在し、挿入した陰茎からの小便を吸収可能としている。表面シート20や吸収体19については後で詳細に説明する。なお、この切り込み部37については、複数の小さな切込みを断続的に配列してなる切断可能なミシン目にし、男性が使用する場合に当該ミシン目が切断されることで、吸収性製品10を男性用と女性用を兼ねた製品にしてもよい。
【0021】
このような吸収性製品10は、図3に示すように、複数層からなっており、外側(パンツ側)に露出する防水シート18と、この防水シート18よりも着用者US側の吸収体19と、最も着用者US側(肌側)に配置された表面シート20とが重ねられている。
防水シート18は、着用者USの排泄物の通過を防止して、服の汚れ等を防止するための部材であり、バックシートとも呼ばれる。防水シート18は周知の材料を利用でき、可撓性を備えた材質、例えば薄いプラスチックフィルムにより作られている。具体的に、防水シート18は、ポリエチレンフィルムやポリエチレンラミネート紙等が使用でき、好ましくは、微多孔性防水樹脂フィルム等の不透性ではあるが透湿性を有する素材を用いるとよい。
【0022】
吸収体19は、排泄物を吸収して保持する部材であり、防水シート18にホットメルト等で貼着して重合されている。この吸収体19は、吸収した液体の保持性が高く、比較的厚みが薄く嵩張らない形態とされるのが好ましい。このような吸収体19としては、例えばパルプに吸収材であるポリマーを混合したり、パルプにポリマーを散布したりして形成するパルプ吸収体、さらにパルプ等によるシート材間にポリマーを高密度に配置してシート状としたポリマーシート等が使用できる。
なお、吸収体19は、図2に示すように、平面視が瓢箪型又は砂時計型をしており、臀部側が下腹部側に比べて大きな面積を有している。
【0023】
図3の吸収体19はティッシュ17に包まれて、その形状が保持され、外部に晒されることが防がれている。ティッシュ17には、液体等を吸収する柔らかい材質、たとえばパルプ、レーヨン、コットン、ケナフ、バガス、シルク、親水処理をした繊維(ポリオレフィン系、ポリエステル、アクリル)などを単一又は複合してシート化したものを用いることができる。
【0024】
さらに、本実施形態では、ティッシュ17を被覆するカバーシート(このカバーシートは表面シート20が存在しない吸収性製品では、表面材又はトップシートとも呼ばれる)21が設けられている。このカバーシート21は、体液の浸透が可能な部材であり、例えば、不織布や微細な孔を有するポリエチレンシートの上下を不織布で挟んだもの等を用いることができる。
図の場合、カバーシート21は、吸収体19を包囲するティッシュ17をさらに包囲するのではなく、吸収体19及びティッシュ17をカバーシート21と防水シート18とで挟むように配置されている。
【0025】
表面シート20はシート状であり、図3に示すように、着用者USの肌と吸収体19との間に所要の空間Sを形成して、当該空間Sと着用者USの肌とを空間的に区分けする役割を有する。
本実施形態の表面シート20は不織布から形成されている。不織布には公知なものが利用でき、例えば、合成樹脂を繊維化した熱融着性繊維(例えば、PET/PE,PP/PE,PET/EP,PP/EP)をサーマルボンド法やスパンボンド法等でバインダーを使わずに融着して形成される。このような不織布は、起毛立ちし難くい材料であることから使用者の肌に触れる材料として好適に使用できると共に、吸収体19側に排泄物を透過させることができる。この不織布は、液透過性を有すると共に液浸透性も有する。
【0026】
図3に示す表面シート20は、少なくとも股間部の領域において、吸収体19から図のZ方向に離間するように(図の場合、吸収体19を包むティッシュ17を被覆するカバーシート21の部分から離間するように)弾性力を発揮する弾性部材28を有している。弾性部材28は、吸収性製品10を広げた図2の状態では強いテンションがかかるのに対して、吸収性製品10を着用者の股間部の前後方向の湾曲に合わせて湾曲させた場合、テンションが緩んで収縮するだけで、他の部材と同様には湾曲しないようになっている。
図3に示すように、弾性部材28は表面シート20の部分20Cに被覆されて接続され、これにより、テンションが緩んだ装着状態において、表面シート20の部分20Cを肌側に持ち上げて、表面シート20と吸収体19との間には、排泄物を一時又は常時収容するための空間Sが形成される。
また、図2に示すように、弾性部材28は長手方向Yに沿って配置されている。また、図3に示すように、弾性部材28は、幅方向Xについて、表面シート20の中央部20Dを間に挟んで両外側に設けられて一対とされ、かつ、吸収体19の上方に配置されている。このようにして、股間部における表面シート20は、幅方向Xについて、中央部20Dよりも両外側の部分20C,20Cが肌側に持ち上げられている。
なお、本発明の弾性部材28の配置や数はこれに限られるものではなく、例えば幅方向Xの配置について、中央部20Dを間に挟んで左右それぞれ2本ずつでも構わない。また、弾性部材28の材料はサイドギャザー14の弾性材16と同様であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
以上のようにして所要の空間Sを形成した表面シート20は、肌に対する接触を出来るだけ防止すると共に、付着した小便などの体液を吸収体19に直ぐに移動させるため、カバーシート21と接続されている(表面シート20とカバーシート21との接続については後述する)。
具体的には、装着状態における表面シート20は、幅方向Xの中央部20Dが防水シート18側に向かって垂下してカバーシート21と接続され、この中央部20Dが表面シート20の最も外側とされている。そうすると、吸収性製品10には、一対の弾性部材28,28の間に、防水シート18側に窪んだ窪み部68が形成され、この窪み部68により、少なくとも肛門付近や女性の外尿道口部付近などの肌と表面シート20とが接触しなくなる。また、図3に示すように、表面シート20は、股間部の領域における幅方向Xの縦断面は概ねM字状とされ、これにより、表面シート20の肌に触れる部分は、基本的に弾性部材28の周辺のみとなる。そして、表面シート20に付着した小便などの体液は、カバーシート21を介して吸収体19に移動される。
【0028】
この表面シート20は、図1及び図3に示すように、少なくとも軟便を吸収体19側、即ち空間Sに通すための複数の通過部25を有している。従って、着用者が排泄した軟便は、この通過部25を通って空間Sに移動し、空間Sに軟便を収容してから、これを吸収体19で吸収していくことができ、その間、軟便と肌とを表面シート20で仕切って、吸収体19で素早く吸収できない軟便であっても、着用者の肌を汚してしまう事態を抑制できる。
【0029】
本実施形態の各通過部25は、吸収性製品10を広げ伸ばした図2の状態では、長手方向Yに沿ったスリット状であるが、装着状態における表面シート20は、弾性部材28の部分が最も肌側に、中央部20Dが最も外側に配置されるため、この長手方向Yに沿ったスリット状の通過部25は、装着状態では図1に示すように幅方向Xに広がって、所定の大きさに開口する孔となる。この広がった孔の大きさは、軟便だけではなく小便も空間S側に移動でき、また、大便が大きく硬くない限り、空間S側に移動できる大きさとされる。
図2のスリット状の通過部25の長さL3は、一般的な大人用の失禁パッドを想定して約4cmとされている。このような長さL3を有する通過部25は、股間部に対応した領域の全体に満遍なく配置されるように複数列となっている。図2の場合、長手方向Yについて互いに隣接する通過部25同士の間隔L4は、通過部25の長さL3の約1/8の約0.5cmである。
なお、本発明において、通過部25の寸法・互いの間隔・数・形状・配置は、本実施形態に限られるものではなく、吸収性製品の男女別・サイズ・用途などによって変えても勿論構わない。
【0030】
また、通過部25は、表面シート20における一対の弾性部材28,28の間に形成されるのが好ましく、これにより、図3に示すように、窪み部68に排出された排泄物については、直ぐに通過部25を通って空間Sに移動させることができる。より好ましくは、通過部25は、表面シート20における一対の弾性部材28,28の間にのみ形成されるとよい。これにより、図4に示すように吸収性製品10を谷折りすることで、表面シート20の弾性部材28よりも幅方向Xの外側の部分20Bが中央部に比べて肌に近くなっても、いったん空間Sに収容された軟便などの排泄物が部分20Bを通じて肌側に逆戻りする事態を防止できる。
【0031】
ここで、図1図3に示すように、平面視において(より具体的には、防水シート18、吸収体19、表面シート20が重ねられた層方向であり、図3のZ方向から見て)、吸収体19が存在しない不存在領域30が吸収体19により区画されている。この「吸収体19が存在しない不存在領域30」とは、吸収体19に期待する吸収力を発揮できない領域を意味し、例えば、排泄物を略吸収しないために、排泄時に層方向Z(図3のZ方向)への膨張が規制された領域である。また、「吸収体19により区画されている」とは、平面視において(より具体的には、層方向Z(図3のZ方向)から見て)、吸収体19に囲まれた位置に形成されていること、又は吸収体19に挟まれた位置に形成されていることを意味する。そして、平面視において(より具体的には、層方向Zから見て)この不存在領域30に表面シート20の一部、図の場合は幅方向Xの中央部20Dが接続されている。
この不存在領域30は主に2つの機能を発揮するものであり、一つ目は表面シート20が肌に触れる事態を有効に防止する機能であり、二つ目は通過部25の開口状態を維持する機能である。即ち、もし表面シート20が吸収体19(図3の場合、吸収体19を包むティッシュ17の部分17Bを被覆するカバーシート21の部分21B)に接続されていると、吸収体19の体液吸収による膨張に伴って、表面シート20が持ち上がって肌に触れ易くなると共に、表面シート20の最も肌側の弾性部材28と最も外側の中央部20Dとの位置差が小さくなって通過部25の孔の開口具合も小さくなり、軟便等が通過部25を通過し難くなる。そこで、吸収体19が膨張しても、肌側の弾性部材28と表面シート20の外側の中央部20Dとの位置差を維持できるように、吸収体19が配置される領域の一部分に層方向Z(図3のZ方向)に膨張しない部分を形成して、そこに表面シート20を接続するようにした。
【0032】
不存在領域30は、例えば、吸収体19、ティッシュ17、及びカバーシート21を、その層方向に一体的に熱圧着して膨張しないようにして形成し、もはや吸収体19ではなくなった領域とすることができる。即ち、このように吸収体19を熱圧着して形成された部分は、もはや期待した排泄物の吸収力を発揮することが困難であるため、吸収体が存在しない不存在領域30とすることができる。
好ましくは、不存在領域30は、図3に示すように、防水シート18側が露出するようにした吸収体19の孔(或いは、後述する図6のような切り欠き)から形成し、このような孔や切り欠きから露出した防水シート18(防水シート18の上に接続された他の部材を含む)の領域とするのが良い。これにより確実に吸収体19の層方向の膨張を防止できる。
さらに、図3に示すように不存在領域30を吸収体19に形成した孔(貫通孔)から形成することで、吸収体19にはその孔の内側面19Fが形成される。この内側面19Fの面積は当該孔の平面積より大きく、その分、吸収体19の表面積が増加して、吸収速度を向上させることができる。しかも、不存在領域30を孔から構成すると、吸収体19の上面が所謂ゲルブロッキング状態(液体成分の吸収により膨張したポリマー成分が液体成分の吸収体19の内部への侵入を阻止する状態)になっても、ゲルブロッキング状態になっていない内側面19Fから体液を吸収することができる。これにより、吸収能力を十分に活用するのが困難であった吸収体19の底面側19Dを活用して吸収体19の吸収力を高めることもできる。
【0033】
本実施形態の場合、不存在領域30は、図1及び図2に示すように、吸収体19の幅方向Xの中央部に形成されると共に、長手方向(吸収体の着用時における前後方向)Yに延伸して形成された細長い長孔からなっている。これにより、図4に示すように、吸収性製品10を装着する際、長手方向Yに曲げ易い不存在領域30が下側となるように手HDで谷折りして装着できる。従って、表面シート20は、身体に接触する弾性部材28の周辺20Cと不存在領域30に接続した中央部20Dとの位置差が大きくなり、通過部25を構成する孔の所要の開口具合を維持し易くなる。そして、不存在領域30の位置で谷折りをして、幅方向Xの寸法を小さくすることで、脚を開きにくいが故に吸収性製品10を適切に装着するのが難しい着用者に対しても、吸収性製品10を適切に装着することができる。
また、不存在領域30は、図2に示すように、長手方向Yの寸法L5を、概ね通過部25が配置された領域(装着した際において、少なくとも股間部から肛門部に至る領域、及びその周辺領域)に対応した寸法としている。
また、不存在領域30の幅方向Xの寸法W1は10〜30mmが適当であり、15〜20mmであるとより好しい。
【0034】
そして、図3に示すように、不存在領域30を形成する孔により露出した防水シート18側には(この孔の内側底部には)、液浸透性のある浸透性部材33が不存在領域30を構成するものとして吸収体19に繋がるようにして配置され、この浸透性部材33に表面シート20の中央部20Dが接続されている。
具体的には、吸収体19に孔を形成すると、通常は防水シート18が露出するが、本実施形態では、ティッシュ17の一部17Aをこの露出した防水シート18の上に延伸させ、さらに、カバーシート21の一部21Aをティッシュ17の一部17Aの上に延伸させている。これら重合した防水シート18、ティッシュ17のうち吸収体19を包んでいない一部17A、カバーシート21のうち吸収体19を被覆していない一部21Aは、好ましくは熱圧着して接続固定されている。このようなティッシュ17及びカバーシート21の夫々の一部17A,21Aが浸透性部材33であり、層方向Z(図3のZ方向)から見てカバーシート21の一部21Aが不存在領域30を構成している。このようにして、浸透性部材33は、吸収体19を包むティッシュ17の部分17B、及び、この部分17Bを被覆するカバーシート21の部分21Bを介して、吸収体19に繋がっている。そして、このカバーシート21の一部21Aと表面シート20の中央部20Dとを接続固定している。この接続方法は、浸透性部材33における体液の浸透性を阻害しないように熱圧着で接続するのが好ましい。
【0035】
かくして、表面シート20に付着した体液は、その中央部20Dから浸透性部材33(カバーシート21の一部21A及びティッシュの一部17A)を介して、吸収体19の全周から効率よく吸収体19に移動される。
そして、吸収体19が膨張したとしても、表面シート20は吸収体19(これを包むティッシュ17の部分17B、及び、この部分17Bを被覆するカバーシート21の部分21Bを含む)には接続されていないので、吸収体19の膨張により、弾性部材28と中央部20Dとの位置差が小さくなることは略ない。
なお、表面シート20の中央部20Dはカバーシート21の一部21Aに接続されているが、この一部21Aは吸収体19を覆うカバーシート21の部分21Bに繋がっている。このため、吸収体19が膨張すると、カバーシート21を介して表面シート20が肌側に持ち上がるという影響が考えられる。しかし、本実施形態のカバーシート21の部分21Bは、寸法的に多少余裕を持たせて吸収体19の上のティッシュの部分17Bに被せてあるし、少なくとも幅方向Xに伸縮性も有している。また、浸透性部材33は防水シート18に固定されている。従って、吸収体19が膨張したとしても、カバーシート21を介する中央部20Dへの影響は殆どない。
【0036】
また、表面シート20の周縁部20Aについても吸収体19には直接接続されていない。例えば、図3に示す幅方向Xの周縁部20Aは、防水シート18の上に固定されたカバーシート21(カバーシート21のティッシュ17を被覆していない部分)を介して防水シート18に固定されると共に、サイドシート15に接続されている。なお、表面シート20の周縁部20Aについては、本発明は図3の態様に限られるものではく、例えば、図4に示すようにサイドシート15に接続されなくてもよい。また、長手方向Yの周縁部20Aついては(図1参照)、吸収体19を被覆していないカバーシート21の部分を介して防水シート18に接続されている。
【0037】
本第1実施形態に係る吸収性製品10は以上のように構成され、図3に示すように、吸収体19が存在しない不存在領域30が吸収体19に囲まれた位置に形成され、この不存在領域30に表面シート20の一部である幅方向の中央部20Dが接続され、かつ、装着時に吸収体19から離間する弾性部材28が幅方向Xの中央部20Dよりも両外側に設けられている。そうすると一対のサイドギャザー14,14の間において、表面シート20は幅方向Xの縦断面が略M字のような形状となり、基本的に弾性部材28の周辺の部分20Cのみが股間に密着するようになる。そして、排泄物により吸収体19が膨張しても、表面シート20が股間に近づいたり、通過部25が閉じたりする事態を可及的に防止できる。
なお、本発明はこのような態様に限られず、図3の一点鎖線で囲った図に示すように、ティッシュ17やカバーシート21を不存在領域30における防水シート18の上まで延伸させずに、防水シート18の上に全く別の不織布35を固定して、吸収体19に形成した孔により露出した不織布35を不存在領域30を構成するものとし、そこに表面シートの中央部20Dを接続してもよい。
【0038】
〔第1実施形態の第1変形例〕
次に、上述した第1実施形態の第1変形例について、図5を用いて説明する。
図5は当該第1変形例に係る吸収性製品90であり、図2に対応した平面図である。なお、図5では、上述したサイドギャザー14や弾性部材28などを省略している。
この吸収性製品90が図1図4の吸収性製品10と異なるのは、不存在領域40の構成である。即ち、図5の吸収性製品90は、吸収体19に囲まれた位置に複数の不存在領域(吸収体19が存在しない領域)40が形成され、各不存在領域40が図2に比べて短い長方形状の孔からなり、この短い孔からなる不存在領域40が着用時における前後方向(長手方向Y)に沿って断続的に配置されている。なお、不存在領域40が幅方向Xの中央部に配置され、長手方向Yについて、通過部25が配置された領域(装着した際において、少なくとも、股間部から肛門部に至る領域、及びその周辺領域)に対応して配置されていることは、図2と同様である。
【0039】
このように比較的短い長方形状の孔からなる不存在領域40を断続的に配置した場合であっても、図1図4と同様に、吸収体19の膨張に際して、表面シート20の最も肌側の弾性部材28と最も外側の中央部20Dとの所要の位置差を維持して、表面シート20が股間に近づいたり、通過部25が閉じたりする事態を防止できる。
そして、図5に示す断続的な不存在領域40を形成することにより、その不存在領域40が連なった長手方向Yの縦断面は凹凸状となる。従って、この凹凸状により軟便の長手方向Yへの流れが阻害され、幅の狭い縮幅部12に軟便が勢いよく流れ込む等の事態を防止することができる。また、不存在領域40を断続的にすることで、不存在領域40を形成することで減る吸収体19の量を可及的に抑えることができる。
【0040】
〔第1実施形態の第2変形例〕
次に、上述した第1実施形態の第2変形例について、図6を用いて説明する。
図6は当該第2変形例に係る吸収性製品91であり、図2に対応した平面図である。なお、図6では、上述したサイドギャザー14や弾性部材28などを省略している。
図6の吸収性製品91が図1図4の吸収性製品10と異なるのは、不存在領域42の構成である。即ち、図6の不存在領域42は、幅方向Xで吸収体19を完全に分離するような孔又は切り欠きからなり、吸収体19によって挟まれた位置に形成されている。なお、この吸収性製品91は、図1等に示す切り込み部37が設けられていないため、好ましくは女性用として使用される。
このような態様の吸収性製品91であっても、図1図4と同様の作用効果を発揮する。また、不存在領域42が幅方向Xで吸収体19を完全に分離させているため、この薄い不存在領域42の位置で図4に示すような谷折りをより容易に行うことができる。なお、図6の不存在領域42は図1図4に比べて大きくなるため、吸収体19の平面積は減少するが、その分、吸収体19の厚みを大きくして、所要の吸収量を確保すればよい。
【0041】
〔第1実施形態の第3変形例〕
次に、上述した第1実施形態の第3変形例について、図7及び図8を用いて説明する。
図7は当該第3変形例に係る吸収性製品92であり、図2に対応した平面図である。図8図7の吸収性製品92を装着して、図7のB−B位置で切断した場合の断面図である。なお、図7では、上述したサイドギャザー14などを省略している。また、図8では上述したティッシュ17を省略している。
図7及び図8の吸収性製品92が図1図4の吸収性製品10と主に異なるのは、不存在領域44の構成である。即ち、これら図の不存在領域44は、幅方向Xの中央CLを挟んで両外側に配置されて二列となっている。この両外側の夫々の不存在領域44は、図1図4で説明した不存在領域30と同様に、長手方向Yについては通過部25が配置された領域に対応して連続して形成された長細い寸法とされているが、幅方向Xの寸法W2は図2に示す不存在領域30の寸法W1に比べて小さい。このように寸法W2が比較的小さくても、2カ所の不存在領域44,44の部分で表面シート20は接続されているため、表面シート20が不存在領域44から外れてしまう恐れは低い。
【0042】
そして、一対の不存在領域44,44に挟まれた領域(幅方向Xの中央)には吸収体19Aが存在する。この中央の吸収体19Aは、その両脇の吸収体19B,19Cに比べて小さい。
また、中央CLの吸収体19A(具体的には、吸収体19Aを覆うカバーシート21)の上には、表面シート20の部分20Eが配置されている。この吸収体19Aと部分20Eとは互いに固定しないのが好ましく、これにより、吸収体19Aの膨張により、表面シート20の接続部分である中央部20Dが不存在領域44から外れてしまう事態を防止できる。
なお、図7では、表面シート20に形成される通過部25は、不存在領域44と弾性部材28との間に配置され、不存在領域44,44同士の間には配置されていない。
【0043】
本第3変形例は以上のように構成され、このため、着用者の着座時や股を窄めた時などにおいて、吸収性製品92の着用感を阻害するような変形を抑制することができる。即ち、図2のように不存在領域30が幅方向Xの中央部にあり、さらに、表面シート20との接続強度を確保するためその幅W1を大きくすると、不存在領域30は吸収体19が存在しない薄い部分であるため、着座時等において、例えば、図3に示す不存在領域30より幅方向Xの片側の吸収体19−1がもう一方の片側の吸収体19−2の上に重なったりして、着用感悪化の恐れがある。しかし、本第3変形例では、図8に示すように、幅方向Xの中央(股の幅方向の中央の直下)には吸収体19Aが存在し、しかも、各不存在領域44の幅W2は小さいため、そのような不要な変形を防止することができ、良好な着用感を得ることができる。
【0044】
〔第1実施形態の第4変形例〕
次に、上述した第1実施形態の第4変形例について、図9を用いて説明する。
図9は当該第4変形例に係る吸収性製品93であり、図2に対応した平面図である。なお、図9では、上述したサイドギャザー14や弾性部材28などを省略している。
図9の吸収性製品93の不存在領域45は、図8の吸収性製品92と同様に二列45−145−2とされているが、各列が図8に比べて短い長方形状の孔45aを前後方向(長手方向Y)に沿って断続的に配列することで、吸収体19に囲まれた位置に形成されている。さらに、この複数の孔45aは、列45?1,45?2によって長手方向Yにおける位置が異なっており、全体的にジグザグに配置されている。
従って、図1図4図6図8に示すような長手方向Yに延伸して形成された長孔からなる不存在領域30,42,44だと、そこに接続された表面シート20のうち一カ所が不存在領域30,42,44から外れてしまうと、その外れた箇所を契機に連続的に外れてしまう恐れがあるが、図9に示すようにジグザグに複数の孔45aを配置することで、そのような連続的な外れの恐れを防止することができる。
【0045】
〔第1実施形態の第5変形例〕
次に、上述した第1実施形態の第5変形例について、図10を用いて説明する。
図10は当該第5変形例に係る吸収性製品94であり、表面シート20と不存在領域46との接続部分を拡大した概略部分縦断面図である。
図10の吸収性製品94が図1図4の吸収性製品10と主に異なるのは、不存在領域46を形成するための孔や切り欠きについての構成である。即ち、図10の吸収体19の厚みH2は、図3の吸収体19の厚みH1に比べて大きく形成され、これにより、吸収体19に孔や切り欠きからなる不存在領域46を形成して吸収体19の平面積が減少した分、吸収体19の量を確保している。
そして、この不存在領域46を形成するための孔や切り欠きについては、その開口部周縁53が防水シート18側に向かって傾斜する傾斜面とされていることを特徴とする。
【0046】
本第5変形例は以上のように構成され、吸収体19の上側(図10の網掛けで示す部分)が膨潤して、それ以上体液を吸収しにくい所謂ゲルブロッキング状態になった場合、例えば小便は開口部周縁53の傾斜面を重力の作用により滑って不存在領域46に入り易くなる。従って、不存在領域46により多くの排泄物を導いて、未だゲルブロッキング状態になっていない吸収体19の底面側19Dから小便等を吸収することができ、そして、このように吸収体19を全体的に活用できるので、吸収性製品94の外部へ排泄物が流出する事態をより一層防止できる。さらに、開口部周縁53が傾斜面であると、吸収体19の厚みH2が大きくても、不存在領域46を形成するための孔や切り欠きの中に熱圧着機などの機器を挿入し易くなり、表面シート20と不存在領域46(具体的には不存在領域46である孔や切り欠きの内側底部を構成するカバーシートの一部21A)との接続作業が行い易くもなる。
【0047】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図11図13を用いて説明する。
図11は当該第2実施形態に係る吸収性製品95の概略斜視図、図12はその吸収性製品95を装着して、図11のC−C位置で切断した場合の概略断面図、図13図11の概略D−D断面図である。なお、図13では上述したティッシュを省略してある。
これらの図の吸収性製品95が図1図4の吸収性製品10と異なるのは、表面シート20と吸収体19とを繋ぐ部材を設けた点である。即ち、図12及び図13に示すように、吸収性製品95の空間Sには、表面シート20と吸収体19との間に、排泄物の液体(即ち、体液)が浸透可能な部材であって、部分的に表面シート20と吸収体19とを繋ぐようにした複数の連結部50を有している。従って、表面シート20に付着した体液の吸収体19への移動を阻害する要因となる空間Sがあっても、排泄後に表面シート20に付着した体液を連結部50を介して吸収体19に導くことができる。
なお、この連結部50は表面シート20と吸収体19とを部分的に繋ぐため、空間Sの軟便に対する収容量を著しく阻害することもない。
【0048】
連結部50は、表面シート20と同様の薄い不織布であり、好ましくは、表面シート20に比べて繊維密度の高い不織布がよく、これにより、表面シート20に付着した尿を、相対的に繊維密度の高い連結部50により、毛細管現象で吸収体19側に積極的に導くことができる。
このような材質の連結部50は、表面シート20側については、図11及び図12に示すように、通過部25を避けるようにして通過部25,25同士の間の部分20Fに、吸収体19側についてはカバーシート21に、それぞれ接続されている。連結部50を形成するに当たっては、図示していないが、一例として、表面シート20を全体的に複数層にして、所定の部分の上層と下層を除いて熱圧着し、当該熱圧着していない下層の部分をカバーシート21に接続すると、当該熱圧着していない下層を連結部50とすることができる。
【0049】
この点、図12及び図13に示すように、連結部50は、層方向(防水シート18、吸収体19、表面シート20が重なっている方向)Zに折り返すことなく形成された壁状とされている。図12及び図13の場合、表面シート20の下面から吸収体19の上面に向かう間の連結部50の態様については、複数の連結部50の夫々が独立した壁状であり、その壁面は略ストレートとされている。従って、層方向Zについては、連結部50に軟便が引っかかることはなく、軟便を吸収体19に円滑に移動することができる。
【0050】
このような壁状の連結部50は、図11及び図12に示すように前後方向Yに断続的に配置され、図12に示すように、空間Sの前後方向Yを複数に仕切って、複数の空間S1,S2,S3,S4を形成するようになっている。具体的には、連結部50は、空間Sの内、少なくとも最も幅の狭い股間部の直下にある空間(縮幅部12に存在する空間)S2,S3とその他の空間S1,S4とを、前後方向Yで仕切っている。これにより、肛門部ANの直下の空間S1に軟便を収容できるにもかかわらず、軟便が勢いよく排泄されて、股間部の幅の狭く小さな空間S2,S3に軟便が流入してくることを可及的に防止し、また、陰茎PEから小便が勢いよく排泄された場合も、当該空間S2,S3に小便が不要に流入して、股間部の幅の狭い部分から外部に排泄物が漏れる事態を有効に防止できる。
なお、図12では、吸収が遅いために小便に比べて大きな空間を必要とする軟便に対応して、肛門部ANの直下にある空間S1は他の空間S2,S3,S4に比べて大きく形成されている。
【0051】
また、上記空間Sの前後方向Yを連結部50で仕切っている態様には、前後方向Yにおいて空間Sを完全に仕切らない態様も含まれ、好ましくは、図13に示すように、連結部50は、空間Sの前後方向Yに排泄物が移動するための流路49を有するように、空間S1,S2,S3,S4を完全に遮蔽しないように形成するのがよい。これにより、図12の複数の空間S1,S2,S3,S4は図13に示すような流路49を介して連通し、例えば、軟便の量が多く、空間S1だけでは収容しきれない場合があっても、当該空間S1よりも前方の空間S2に流路49を介して軟便を移動させて、軟便が空間S1に入りきらずに肌側に漏れてしまう事態を防止することができる。また、空間Sの内、縮幅部12に対応した空間S2,S3に小便が収容しきれない場合も、その前後の空間S4,S1に小便を移動させて、縮幅部12からの所謂横漏れを防止できる。
【0052】
本第2実施形態の吸収性製品95は以上のように構成され、軟便や多量の小便については通過部25で吸収体19側に移動させ、少量の小便や排泄後に表面シート20に残った体液については、連結部50を介して、吸収体19側に素早く移動させることができる。かくして、小便と軟便を問わず、排泄物が身体に触れることをより有効に回避して、排泄後の気持ち悪さやスキントラブルをより有効に回避できる。
【0053】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の個別の構成は、必要により省略したり、説明しない他の構成と組み合わせたりしてもよい。
例えば、上述した実施形態では尿便パッドを例示したが、パンツ式のおむつ等であってもよい。
また、本発明の通過25の数・種類・寸法も上述した実施形態に限れるものではなく、例えば図2の状態でスリットにしない場合は、幅の狭い長孔(直線状の孔だけではなく、例えば、曲がっている孔や、幅の狭い長円状・楕円形状・三角形状の孔、等も含まれる)が好ましく、或いは、スリットと長孔を組み合せて用いてもよい。
また、上記実施形態では、不存在領域30を構成するカバーシートの一部21Aと表面シート20の中央部20Dとを接続しているが、表面シート20と接続されるのは、ティッシュ17の一部17Aであってもよく、或いは、吸収体19の孔又は切り欠きにより不存在領域30を形成したことで露出した防水シート18であっても構わない。
また、第2実施形態の連結部50は直接又は間接的に吸収体19と繋がっていればよく、例えば、連結部50を吸収体19を包むティッシュに接続しても構わない。
【符号の説明】
【0054】
10,90,91,92,93,94,95・・・吸収性製品、17・・・ティッシュ、18・・・防水シート、19・・・吸収体、20・・・表面シート、21・・・カバーシート、33・・・浸透性部材、25・・・通過、28・・・弾性部材、30,40,42,44,45,46・・・不存在領域、50・・・連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13