特許第6558904号(P6558904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558904パイル案内用ガイド部材およびトンネル地盤支持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558904
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】パイル案内用ガイド部材およびトンネル地盤支持方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/30 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   E21D11/30
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-16245(P2015-16245)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-141946(P2016-141946A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 信毅
(72)【発明者】
【氏名】木梨 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】扇畑 邦史
(72)【発明者】
【氏名】真中 明浩
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−162366(JP,A)
【文献】 特開平07−324586(JP,A)
【文献】 特開2002−147164(JP,A)
【文献】 特開平05−025995(JP,A)
【文献】 特開2002−220997(JP,A)
【文献】 特開2000−073697(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01674657(EP,A1)
【文献】 登録実用新案第3188774(JP,U)
【文献】 特開2014−227739(JP,A)
【文献】 津野和宏,全断面早期閉合による都市部山岳工法トンネル安定対策,トンネル工学報告集,日本,社団法人土木学会,2007年11月,第17巻,第43−49頁
【文献】 渋谷優 外4名,崖錐堆積物直下の低土被り区間におけるトンネル補助工法の設計施工実績,トンネル工学報告集,日本,社団法人土木学会,2007年11月,第17巻,第127−134頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平をなしてトンネルの支保工の脚部に固定され、支保工の沈下を抑制するためのパイルを案内する平板形状のガイド部材であって、
前記パイルを通すための複数のガイド通路を有し、
前記複数のガイド通路の中心軸線が、下方に向かうにしたがってトンネル中心から離れるように傾斜し、
前記複数のガイド通路のうちの少なくとも2つのガイド通路の中心軸線が、前記トンネル奥行方向と直交する垂直面に対して傾斜し、掘削方向に斜め下方に延びており、
前記少なくとも2つのガイド通路の中心軸線は、前記トンネルの側方および上方から見て、前記トンネル奥行方向と直交する垂直面に対する傾斜角度が互いに異なるとともに、前記トンネルの奥行方向および上方から見て、前記トンネルの奥行方向に延びる垂直面に対する傾斜角度が互いに異なることを特徴とするパイル案内用ガイド部材。
【請求項2】
水平をなしてトンネルの支保工の脚部に固定され、支保工の沈下を抑制するためのパイルを案内する板状のガイド部材であって、
前記パイルを通すための3つ以上のガイド通路を有し、
全てのガイド通路の中心軸線は、下方に向かうにしたがってトンネル中心から離れるように傾斜するとともに、掘削方向に斜め下方に延び、
全てのガイド通路の中心軸線は、前記トンネルの側方および上方から見て前記トンネル奥行方向と直交する垂直面に対する傾斜角度が互いに異なるとともに、前記トンネルの奥行方向および上方から見て、前記トンネルの奥行方向に延びる垂直面に対する傾斜角度が互いに異なることを特徴とするパイル案内用ガイド部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガイド部材を、前記支保工の脚部の掘削方向側にのみ固定し、前記ガイド部材の全てのガイド通路にそれぞれ前記パイルを挿通して地中に埋設することにより、掘削方向の前方の地盤を支持することを特徴とするトンネル地盤支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支保工の沈下を抑制するためのパイルを案内するガイド部材およびこのガイド部材を用いたトンネル地盤支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを掘削する際、新たに掘削された部分の内壁にアーチ状の支保工を次々と設置して、トンネル内壁を支持することは周知である。この支保工の脚部から、パイルを斜め下方に、すなわち下方に向かうにしたがってトンネル中心から離れるように傾斜して埋設することにより、支保工の沈下を抑制し、ひいてはトンネル上方の地盤沈下を抑制することも周知である。
【0003】
前記パイルを正確に方向付けするために、特許文献1では、支保工のH型鋼からなるアーチ部材の下端近傍にガイド部材を固定している。このガイド部材は板部とこの板部を貫通する複数の筒部とを有しており、この筒部の内部空間がガイド通路となって、斜め下方に延びるパイルを案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4757620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記述されたガイド部材において、斜め下方に延びる複数のパイルは、トンネルの奥行方向と直交する垂直面(支保工が配置された垂直面)と平行に延びており、これから掘削を進めようとする地盤(掘削方向の前方の地盤)を支持する役割を持たない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決したもので、トンネルの支保工の脚部に設けられ、支保工の沈下を抑制するためのパイルを案内するガイド部材において、前記パイルを通すための複数のガイド通路を有し、前記複数のガイド通路の中心軸線が、下方に向かうにしたがってトンネル中心から離れるように傾斜し、前記複数のガイド通路の少なくとも1つの中心軸線が、前記トンネル奥行方向と直交する垂直面に対して傾斜し、掘削方向に斜め下方に延びていることを特徴とする。
この構成によれば、掘削方向に斜め下方に延びるパイルにより、これから掘削を進めようとする地盤を支持することができ、掘削作業を円滑に行うことができる。
【0007】
好ましくは、前記複数のガイド通路のうちの少なくとも2つの中心軸線の延び方向が、互いに異なる。
この構成によれば、支保工の荷重負担を分散することができる。
【0008】
好ましくは、前記複数のガイド通路のうちの少なくとも2つの中心軸線が、掘削方向に斜め下方に延び、前記トンネルの側方から見て、当該少なくとも2つの中心軸線の、前記トンネル奥行方向と直交する垂直面に対する傾斜角度が、互いに異なる。
この構成によれば、掘削を進めようとする地盤をより一層良好に支持することができるとともに、荷重負担を分散することができる。
【0009】
好ましくは、前記トンネルの奥行方向から見て、前記複数のガイド通路のうちの少なくとも2つの中心軸線の、前記トンネルの奥行方向に延びる垂直面に対する傾斜角度が、互いに異なる。
この構成によれば、荷重負担を分散することができる。
【0010】
好ましくは、前記ガイド部材は上記ガイド通路を3つ以上備え、全てのガイド通路の中心軸線が下方に向かうにしたがってトンネル中心から離れるように傾斜するとともに、掘削方向に斜め下方に延び、全てのガイド通路の中心軸線が互いに異なる方向に延びている。
この構成によれば、掘削を進めようとする地盤の支持と、荷重負担を分散を最大限に発揮することができる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、トンネル地盤支持方法において、上記ガイド部材を、前記支保工の脚部に固定し、前記ガイド部材の前記複数のガイド通路にそれぞれ前記パイルを挿通して地中に斜め下方に埋設し、少なくとも1本のパイルを、前記トンネル奥行方向と直交する垂直面に対して傾斜させ、掘削方向に斜め下方に延ばすことにより、掘削方向の前方の地盤を支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、掘削を進めようとする地盤を支持することができ、掘削作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態をなすガイド部材を組み込んだ沈下抑制構造と、支保工を、トンネルの奥行方向から見た概略正面図である。
図2】前記沈下抑制構造と支保工を、トンネルの側方から見た概略側面図である。
図3】前記沈下抑制構造に用いられるガイド部材の正面図である。
図4】前記ガイド部材の平面図である。
図5】前記沈下抑制構造をトンネルの奥行方向から見た要部拡大正面図である。
図6】前記沈下抑制構造の要部拡大平面図であり、パイルについてはベース板より下方の部分だけを想像線で示す。
図7】本発明の第2実施形態をなすガイド部材を組み込んだ沈下抑制構造の、図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態をなすガイド部材を組み込んだトンネル支保工の沈下抑制構造について、図1図6を参照しながら説明する。
図1図2は、支保工1および沈下抑制構造5の全体構成を概略的に示す。この支保工1は、略半円形状に湾曲したH型鋼からなるアーチ部材2と、このアーチ部材2の両下端に固定された水平なベース板3とを備えている。このアーチ部材2の下端近傍部とベース板3により、支保工1の脚部1aが構成されている。
【0015】
トンネルの掘削工程において、所定距離掘削する度にトンネルの内壁に支保工1が設置される。その結果、支保工1は、所定距離毎に例えば1mおきにトンネルの奥行方向に沿って次々に設置され、トンネル内壁を支持する。
【0016】
最新の支保工1が設置される度に、その両脚部1aには沈下抑制構造5が設けられる。各沈下抑制構造5は、下方に向かうにしたがってトンネル中心から離れるように傾斜して埋設された複数例えば3本のパイル11,12,13と、これらパイル11,12,13を案内する後述のガイド部材20を備えている。パイル11,12,13は例えば周壁に多数の孔を有する鋼管からなる。
【0017】
なお、最新の支保工1が設置される度に、沈下抑制構造5の他に、トンネルの天井壁から掘削方向に斜め上方に延びるパイルを埋設したり、トンネル内壁に放射状にパイルを埋設するが、本願発明の要旨ではないので詳細な説明を省略する。
【0018】
図3図4に示すように、ガイド部材20は、平板形状の板部25(ベース部)と、この板部25を貫通するようにして板部25に固定された複数例えば3つの筒部21,22,23を有している。これら筒部21,22,23の内部空間が、パイル11,12,13を案内するガイド通路21a,22a,23aとして提供される。
【0019】
図4に示すように、ガイド部材20の板部25は、その一側縁部に複数の取付穴25aを有している。図6に示すように、ねじ26を取付穴25aからベース板3の一側縁部(例えば、トンネル掘削方向Fの側縁部)に形成されたねじ穴にねじ込むことにより、ガイド部材20の板部25が水平をなしてベース板3に固定される。なお、ベース板3において、トンネル掘削方向Fの反対側の側縁部にガイド部材20を固定してもよい。
【0020】
図3図4に示すように、ガイド部材20のガイド通路21a,22a,23aの中心軸線21a’,22a’,23a’は、互いに平行ではなく、異なる方向に延びている。以下、この中心軸線21a’,22a’,23a’の延び方向について、トンネルの奥行方向に延びる垂直面Aと、奥行方向と直交する垂直面例えば支保工1が配置された垂直面Bを基準として説明する。これら垂直面A,Bは互いに直交している。
【0021】
図3に示すように、ガイド部材20が支保工1のベース板3に固定された状態で、トンネル奥行方向から見た時、ガイド通路21a,22a,23aの中心軸線21a’,22a’,23a’は、下方に向かうにしたがってトンネル中心から離れるように傾斜しており、垂直面Aに対する角度θ1A、θ2A、θ3Aが互いに異なっている。例えば、θ1A>θ2A>θ3Aである。
【0022】
図4に示すように、ガイド部材20が支保工1のベース板3に固定された状態で、ガイド通路21a,22a,23aの中心軸線21a’,22a’,23a’は、下方に向かうにしたがって掘削方向Fに進むように垂直面Bに対して傾斜し、トンネルの上方から見た時、垂直面Bに対する角度θ1B、θ2B、θ3Bが互いに異なっている。例えば、θ1B<θ2B<θ3Bである。
【0023】
上述したようにガイド通路21a,22a,23aの中心軸線21a’,22a’,23a’が掘削方向Fに斜め下方に延びるので、トンネルの側方、すなわちトンネル奥行方向と直交する方向から見た時、ガイド通路21a,22a,23aの中心軸線21a’,22a’,23a’は垂直面Bに対して傾斜し、これら中心軸線21a’,22a’,23a’の垂直面Bに対する角度θ1B’、θ2B’、θ3B’も互いに異なっている。例えば、θ1B’<θ2B’<θ3B’である。これら角度θ1B’、θ2B’、θ3B’は、図3図4から容易に推測できるので図示しない。
【0024】
前記構成のガイド部材20を最新の支保工1の脚部1aに固定した状態で、パイル11,12,13を、ガイド部材20のガイド通路21a,22a,23aにそれぞれ挿通して地中に斜め下方に埋設する。パイル11,12,13は、ガイド通路21a,22a,23aの中心軸線21a’,22a’,23a’に沿って延びる。ガイド部材20を用いることによってパイル11,12,13は正確に方向付けされて埋設される。パイル11,12,13の埋設後に凝固剤を注入して地中に浸透凝固させる。
【0025】
沈下抑制構造5の斜め下方に埋設されたパイル11〜13により、支保工1の脚部1aの沈下を抑制することができる。
パイル11〜13は、垂直面Bに対して傾斜し、掘削方向Fに斜め下方に延びているため、これから掘削する地盤(掘削方向の前方の地盤)の荷重を負担でき、その沈下を抑制できる。
パイル11,12,13は、互いに異なる方向に延びているので、荷重負担を分散することができる。
【0026】
図7は、本発明の第2実施形態を示す。この実施形態では、支保工1のベース板3における地中側すなわちトンネル中心から遠い方の側縁部にガイド部材20が固定されている。その他は第1実施形態と同様である。
【0027】
本発明は、前記実施形態に制約されず、種々の態様を採用することができる。例えば、
ガイド部材のガイド通路は2つでもよいし、3つ以上でもよい。
ガイド部材は支保工のアーチ部材の下端近傍に固定してもよい。このガイド部材には、斜め下方に埋設されるパイプのみならず水平方向に埋設されるパイルを案内するガイド通路を一緒に形成してもよい。
複数のガイド通路の中心軸線の全てまたは一部が互いに平行に延びていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、トンネル支保工の沈下を抑制するためのパイルを案内するガイド部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 支保工
1a 支保工の脚部
5 沈下抑制構造
11〜13 パイル
20 ガイド部材
21a,22a,23a ガイド通路
21a’,22a’,23a’ ガイド通路の中心軸線
A トンネル奥行方向に延びる垂直面
B トンネル奥行方向と直交する垂直面
F 掘削方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7