特許第6558906号(P6558906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558906セパレータ及びそれを含んで構成される電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558906
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】セパレータ及びそれを含んで構成される電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20190805BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M10/30 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-22394(P2015-22394)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-146263(P2016-146263A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 賢
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−011924(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/005329(WO,A1)
【文献】 特表2007−507850(JP,A)
【文献】 特開2012−043628(JP,A)
【文献】 特開2011−124104(JP,A)
【文献】 特開2005−259566(JP,A)
【文献】 特開2011−222215(JP,A)
【文献】 自動車用リチウムイオン電池,日本,日刊工業新聞社,2011年 9月16日,初版3刷,p.156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に用いられるイオン伝導性のセパレータであって、
該セパレータは、電気抵抗値が10Ω・cm以上であり、平均厚みが50μm以上である絶縁層と電気抵抗値が10Ω・cm未満である導電層とを含む多層構造をもち、
該導電層は、該絶縁層に挟まれており、該セパレータを用いて二次電池を構成する際に、電気的にフローティング状態となるものである
ことを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記絶縁層の少なくとも1つは、ポリマーと無機物とを含むアニオン伝導性材料を用いて形成されるアニオン伝導性膜である
ことを特徴とする請求項に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記導電層は、導電性炭素材料を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のセパレータ、電極、及び、電解質を含んで構成される
ことを特徴とする二次電池。
【請求項5】
前記電池は、亜鉛負極を含む
ことを特徴とする請求項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ及びそれを含んで構成される電池に関する。より詳しくは、特に亜鉛負極を含む電池に好適に用いることができるセパレータ及びそれを含んで構成される電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、近年においては、携帯機器から自動車等まで多くの産業において、主にその性能や二次電池化の面で開発・改良の重要性が益々高まっている。
【0003】
電池、特に亜鉛種やカドミウム種、リチウム種を含む負極を用いて構成される二次電池は、長期間充放電を繰り返すと、電極の活物質層等の近傍で金属の溶解析出反応が起こる過程で、シェイプチェンジという電極活物質の形態変化が発生し、容量劣化や短寿命化が起こるという課題があった。
【0004】
このような課題に対し、例えば、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物とを含むアニオン伝導性材料や、該アニオン伝導性材料を含んで構成される電池構成部材を備える電池が開示され、該電池構成部材としては、セパレータ、正極、負極、及び、電解質からなる群より選択される少なくとも1種が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また正極層と、負極層と、前記正極層及び負極層の間の電解質層とを含む金属空気電池であって、前記負極層と前記電解質層との間に金属多孔体を備える、金属空気電池が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/119665号
【特許文献2】特開2014−49408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば二次電池の負極に亜鉛を用いると、上述したように、充電時に亜鉛表面で形成されるデンドライトによって正極と負極とが短絡し、電池が頓死する。これを防ぐために、上記特許文献1に記載されるようなアニオン伝導性膜を本発明者は開発し、亜鉛二次電池の実用化を目指している。しかしながら、上述した特許文献1に記載されるような、これまで提案してきたアニオン伝導性膜の組成上の特徴だけでは、シェイプチェンジを抑制する効果を更に高める余地があった。
【0008】
また長期のサイクル試験では、充放電による亜鉛種等の活物質のシェイプチェンジが問題となる。上述した亜鉛種やカドミウム種、リチウム種を含む負極を用いて構成される二次電池等のように、電池反応に伴って活物質の溶解・析出反応が生じる場合、活物質の析出形態を制御することは極めて重要である。当該活物質の析出形態が制御できていないと、充放電反応を重ねるごとにシェイプチェンジが進行し、負極の活物質が枯渇して容量が低下したり、水素ガスが発生したりするという現象が生じる。これは電池開発における重要な課題のひとつとなっている。
【0009】
上述したシェイプチェンジに関する課題は、亜鉛負極、カドミウム負極、リチウム負極のいずれかを用いる電池において特に重要であるが、これら以外の電極を用いる電池も有する。当該課題に対し、本発明者は、これまでアニオン伝導性膜によってデンドライト抑制を試みてきたが、特に電池の長期使用に伴う活物質のシェイプチェンジの抑制については、更なる工夫の余地があった。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電池の長期使用に伴う活物質のシェイプチェンジを抑制できる電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、電池の長期使用に伴う活物質のシェイプチェンジの原因の1つが、負極面内の電流分布の不均一性であると考えた。本発明者は、正極や負極等の電極、セパレータのいずれかの中で電流の分布(電流集中)が存在すれば、全電池構成部材がその影響を受け、例えば亜鉛負極中で電流の集中が生じれば、その部分における亜鉛種の酸化−還元反応が局所的に活発化してしまうため、大きくシェイプチェンジすることになると考えた。本発明者は、これにより、電池の長期使用時に、亜鉛種等の活物質が負極面内で偏在し、正極等との短絡・容量低下・ガス発生等を誘発する原因となっていると考えた。本発明者は、このような考えにもとづき、負極面内の電流分布をより均一にすること、そのために電池に用いられるセパレータを利用することに着目し、種々検討した。そして、本発明者は、鋭意検討の結果、電池に用いるセパレータを、絶縁層と導電層とを含む多層構造をもつものとし、該絶縁層を介して電極と電気的に絶縁した状態で導電層を電池中に配置することとした。これにより、該セパレータが、電流を、正極及び負極に対して直交する方向に整流する機能、すなわち、正極から負極に向かって電流密度分布を作らないで満遍なく流す機能を発揮できることを見出した。その結果、電池における負極面における電流分布をより均一にすることができ、電池の長期使用に伴う活物質のシェイプチェンジを高度に抑制することができ、電池を長寿命化できることを見出し、本発明に想到したものである。
【0012】
なお、特許文献2に記載の発明は、金属空気電池に係るものとして記載されているものの、実質的な内容はリチウム極を用いるリチウム空気電池に特化したものである。この場合、基本的な反応はリチウムイオンの挿入・脱離現象による充放電反応である。ここではデンドライトの発生は過充電等を生じた際に問題となる現象でもあり、これを抑制するために、上述した特許文献2に記載の金属空気電池では、負極層と電解質層との間に金属多孔体を設けることにより電流を分散させる。一方、特許文献2には、図1及び図3において、負極層3上に、負極層3と接するように金属多孔体5を配置することを示しており、また、金属多孔体を電極から電気的に絶縁すること(フローティング)について開示していない。このような特許文献2に記載の金属空気電池は、本発明のように電流を正極から負極に向かって電流密度分布を作らないで満遍なく流すことにより電極面における電流分布を均一にしてシェイプチェンジ等を抑制できるものではなかった。また特許文献2に記載の発明を亜鉛極等の水系電解液用の負極を用いる電池に適用した場合、負極上に導電性の金属多孔体を配置してしまうと、該金属多孔体は集電体と同等の働きを担うため、充電時にはその金属多孔体上に亜鉛等の金属が析出し、デンドライトが形成されてしまうと考えられる。これに対し、本発明は、特に亜鉛極等の水系電解液用の負極を用いた場合にも、引用文献2に記載の発明で考えられるようなデンドライト形成が生じないものである。
【0013】
すなわち本発明は、電池に用いられるセパレータであって、上記セパレータは、絶縁層と導電層とを含む多層構造をもつセパレータである。
また本発明は、本発明のセパレータ、電極、及び、電解質を含んで構成される電池でもある。
【0014】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
【0015】
<本発明のセパレータ>
本発明のセパレータは、絶縁層と導電層とを含む多層構造をもつ。多層構造は、絶縁層と導電層とを少なくとも1層ずつ含むものであればよい。セパレータは、正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材であればよいが、活物質の変質を抑制する働きや、正負極を湿潤させる働き、液枯れを回避する働きをするものであってもよい。
【0016】
本発明のセパレータは、導電層が(1)充分な電子伝導性を有していることが重要であり、本発明のセパレータを用いて電池を構成する際に、その導電層が(2)正極、負極等の電極と電気的に絶縁された状態となる(電気的にフローティング状態となること)ものであることが重要である。
【0017】
上記(2)に関し、本発明のセパレータは、絶縁層と導電層とを含む多層構造をもつものであるが、絶縁層に挟まれた導電層を含むことが好ましい。これにより、セパレータを用いて電池を構成した場合に、正極、負極のいずれとも絶縁した導電層を少なくとも1つ含むことになり、シェイプチェンジを抑制する効果をより充分に発揮することができる。ここで、導電層が絶縁層に挟まれているとは、導電層の厚み方向の両側それぞれに絶縁層が配置されていることをいう。
すなわち、本発明のセパレータは、絶縁層/導電層/絶縁層の3層構造を含んで構成されることが好ましい。本発明のセパレータが絶縁層/導電層/絶縁層の3層構造を含んで構成されるとは、少なくともこれら3層を含むものであればよく、抵抗が上昇したり、電池性能が低下したりしない限り、絶縁層上、及び/又は、絶縁層と導電層との間に、更に1層以上の導電層、及び/又は、1層以上の絶縁層を有していてもよい。例えば、本発明のセパレータが導電層/絶縁層/導電層/絶縁層の4層構造であってもよい。
中でも、本発明のセパレータが、絶縁層/導電層/絶縁層の3層構造であること、すなわち、1層の導電層が2層の絶縁層に挟まれているものであることが、本発明における特に好ましい形態の1つである。
【0018】
〔導電層〕
上記(1)に関し、本発明のセパレータの導電層は、導電率が電解液の導電率より大きいものであればよく、その限りにおいて該導電層として種々のものを使用できる。該導電層は、導電率が0.1S/cm〔ジーメンス毎センチメートル〕を超えることが好ましい。言い換えれば、該導電層は、電気抵抗値が10Ω・cm未満であることが好ましい。
【0019】
上記導電層は、電気抵抗値が5Ω・cm以下であることがより好ましく、3Ω・cm以下であることが更に好ましく、1Ω・cm以下であることが一層好ましく、0.3Ω・cm以下であることが特に好ましい。該電気抵抗値は、0.0001Ω・cm以上であることが好ましく、0.001Ω・cm以上であることがより好ましく、0.01Ω・cm以上であることが更に好ましい。
上記電気抵抗値は、JIS H 0602−1995又はJIS K 7194−1994記載の4短針法により求めることができ、三菱化学製 Loresta−GPや、Solartron製インピーダンスアナライザ1260等を用いて測定することができる。
【0020】
上記導電層の平均厚みは、例えば10μm以上であることが好ましい。より好ましくは50μm以上であり、更に好ましくは100μm以上である。また、該平均厚みは、2000μm以下であることが好ましい。より好ましくは1000μm以下であり、更に好ましくは500μm以下である。
上記導電層の平均厚みは、マイクロメーターにより任意に5点を測定して算出することができる。上記導電層が複数ある場合は、導電層の各層の平均厚みの総和を上記導電層の厚みとすることができる。
【0021】
上記導電層としては、例えば、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与したアニオン伝導性膜、導電性を付与した不織布、Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・アニオン伝導性材料・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;銅、真鍮、ニッケル、亜鉛、鋼、銀等から構成される金属多孔体等が挙げられる。中でも、導電性を付与したアニオン伝導性膜、銅メッシュ等の金属メッシュ、銅多孔体等の金属多孔体が好ましく、導電性を付与したアニオン伝導性膜がより好ましい。
【0022】
上記導電性を付与したアニオン伝導性膜としては、ポリマーと無機物とを含むアニオン伝導性材料、及び、導電物質を用いて形成されるものが好適なものとして挙げられる。
【0023】
上記導電物質としては、例えば、導電性炭素材料、導電性セラミックや、亜鉛・亜鉛末・亜鉛合金、銅、真鍮、ニッケル、銀、ビスマス、インジウム、鉛、錫等の金属等が好ましいものとして挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用でき、中でも、導電性炭素材料がより好ましい。
【0024】
上記導電性炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、グラッシーカーボン、アモルファス炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、炭素繊維、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、バルカン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用でき、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛が好ましい。
【0025】
上記導電層が導電性を付与したアニオン伝導性膜である場合、上記導電物質の割合は、該導電層100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、1質量%以上であり、更に好ましくは、2質量%以上であり、特に好ましくは、5質量%以上である。また、該導電物質の割合は、70質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、50質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以下であり、特に好ましくは、20質量%以下である。
【0026】
以下では、上記導電性を付与したアニオン伝導性膜を形成するのに用いられるアニオン伝導性材料について説明する。
【0027】
本明細書中、アニオン伝導性膜は、電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンを透過する材料である。本発明のアニオン伝導性膜は、後述する無機物等の作用により、透過するアニオンの選択性を有する。例えば、水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、アニオンであってもイオン半径の大きな、活物質に由来する金属含有イオン(例えば、Zn(OH)2−)等の透過は充分に防止する。本明細書中、アニオン伝導性とは、水酸化物イオン等のイオン半径の小さなアニオンを充分に透過すること、ないし、当該アニオンの透過性能を意味する。金属含有イオン等のイオン半径の大きなアニオンは、より透過しにくいものであり、全く透過しなくても構わない。
【0028】
上記アニオン伝導性材料が含む無機物は、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物(以下、無機化合物とも言う。)であることが好ましい。
周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、及び、Brからなる群より選択される少なくとも1つの元素であることが好ましい。中でも、周期表の第1族〜第15族から選ばれる少なくとも1種の元素がより好ましく、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Sb、及び、Biからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素が更に好ましい。特に好ましくは、Li、Mg、Ca、Ba、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、及び、Tlからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。
【0029】
上記無機化合物としては、例えば、酸化物;複合酸化物;層状複水酸化物;水酸化物;粘土化合物;固溶体;合金;ゼオライト;ハロゲン化物;カルボキシラート化合物;炭酸化合物;炭酸水素化合物;硝酸化合物;硫酸化合物;スルホン酸化合物;ヒドロキシアパタイト等のリン酸化合物;亜リン化合物;次亜リン酸化合物、ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硫化物;オニウム化合物;塩等が挙げられる。好ましくは、酸化物;複合酸化物;ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物;水酸化物;粘土化合物;固溶体;ゼオライト;フッ化物;リン酸化合物;ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;塩が挙げられる。
これらの中でも、無機化合物は、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。より好ましくは、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、及び、硫酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であり、更に好ましくは、層状複水酸化物及び/又は酸化物である。
【0030】
上記層状複水酸化物は、例えばハイドロタルサイトであることが好ましい。これにより、上記アニオン伝導性材料のアニオン伝導性を際立って優れたものとすることができる。
上記ハイドロタルサイトは、下記式(1);
[M1−x(OH)](An−x/n・mHO (1)
(Mは、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cuのいずれかを表す。Mは、Al、Fe、Mnのいずれかを表す。An−は、1〜3価のアニオンを表す。mは0以上の数である。nは、1〜3の数である。xは、0.20〜0.40の数である。)に代表される化合物であり、150℃〜900℃で焼成することにより、脱水した化合物や、層間内の陰イオンを分解させた化合物、層間内の陰イオンを水酸化物イオン等に交換した化合物、天然鉱物であるMgAl(OH)16CO・mHO等を上記無機化合物として使用してもよい。上記ハイドロタルサイトには、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。
上記式(1)においてAn−で表される1〜3価のアニオンとしては、CO2−、OH等が挙げられる。
【0031】
上記酸化物としては、例えば酸化セリウム、酸化ジルコニウムが好ましい。より好ましくは、酸化セリウムである。また、酸化セリウムは、例えば、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化ビスマス等の金属酸化物がドープされたものや、酸化ジルコニウム等の金属酸化物との固溶体であってもよい。酸素欠陥を持つものであってもよい。
【0032】
上記水酸化物としては、例えば水酸化セリウム、水酸化ジルコニウムが好ましい。上記硫酸化合物は、例えばエトリンガイトが好ましい。
【0033】
上記リン酸化合物は、例えばヒドロキシアパタイトが好ましい。
上記ヒドロキシアパタイトとは、Ca10(PO(OH)に代表される化合物であり、調製時の条件によりCaの量を減らした化合物や、Ca以外の元素を導入したヒドロキシアパタイト化合物等を上記無機化合物として使用しても良い。
【0034】
なお、アニオン伝導性膜に含まれる層状複水酸化物が、アニオンをそのイオン半径により選択的に透過する性能を有することについては、例えば“層状複水酸化物”、[online]、2011年6月公開、独立行政法人産業技術総合研究所、[平成25年10月22日検索]インターネット、〈URL: http://unit.aist.go.jp/emtech-ri/ci/e-keyword/LDH/ldh.html〉や、麻田裕矢、外3名、“ホスト構成カチオン比を制御したMg-Al系層状複水酸化物のアニオン伝導特性”、電気化学会大会講演要旨集、第79巻、2012年3月29日発行、p284等の技術情報からも示唆されている。また、層状複水酸化物以外の、本発明に係る酸化物、水酸化物、リン酸化合物、硫酸化合物についても同様に、アニオンをそのイオン半径により選択的に透過する性能を発揮できる。
【0035】
上記無機物の割合は、導電層100質量%中、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、更に好ましくは、10質量%以上であり、特に好ましくは、30質量%以上である。また、該無機物の割合は、99質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以下であり、更に好ましくは、60質量%以下であり、特に好ましくは、50質量%以下である。
【0036】
本発明におけるアニオン伝導性材料が含むポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等に代表される芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等に代表されるエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコールやポリ(α−ヒドロキシメチルアクリル酸塩)等に代表される水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンやN−置換ポリアクリルアミド等に代表されるアミド結合含有ポリマー;ポリマレイミド等に代表されるイミド結合含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリメチレングルタル酸等に代表されるカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリマレイン酸塩、ポリイタコン酸塩、ポリメチレングルタル酸塩等に代表されるカルボン酸塩含有ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン含有ポリマー;エポキシ樹脂等のエポキシ基が開環することにより結合したポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;ARB(Aは、N又はPを表す。Bは、ハロゲンアニオンやOH等のアニオンを表す。R、R、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜7のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボキシル基、芳香環基を表す。R、R、Rは、結合して環構造を形成してもよい。)で表される基が結合したポリマーに代表される第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)等に代表される人工ゴム;セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、アルギン酸(塩)等に代表される糖類;ポリエチレンイミンに代表されるアミノ基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマー;低分子量界面活性剤等が挙げられる。
中でも、カルボキシル基含有ポリマー及び/又はハロゲン含有ポリマーが好ましい。より好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有ポリマーである。上記アニオン伝導性膜を製造する際には、導電物質及びアニオン伝導性材料を圧延する工程を含む方法を用いることが好ましい。このとき、アニオン伝導性材料がフッ素含有ポリマーを含むものであると、圧延時にフッ素含有ポリマーに強い力がかかることでポリマーの繊維化が促進され、その結果、上記アニオン伝導性膜の物理的強度が向上することになるため、デンドライトの成長による電極間の短絡を防止する効果がより高くなる。
【0037】
ポリマーはその構成単位に該当するモノマーより、ラジカル重合、ラジカル(交互)共重合、アニオン重合、アニオン(交互)共重合、カチオン重合、カチオン(交互)共重合、グラフト重合、グラフト(交互)共重合、リビング重合、リビング(交互)共重合、分散重合、乳化重合、懸濁重合、開環重合、環化重合、光、紫外線や電子線照射による重合、メタセシス重合、電解重合等により得ることができる。これらポリマーが官能基を有する場合には、それを主鎖及び/又は側鎖に有していても良く、架橋剤との結合部位として存在しても良い。これらポリマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
これらのポリマーは、上記無機化合物以外の有機架橋剤化合物により、エステル結合、アミド結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、アゴスチック相互作用、水素結合、アセタール結合、ケタール結合、エーテル結合、ペルオキシド結合、炭素−炭素結合、炭素−窒素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、カルバメート結合、チオカルバメート結合、カルバミド結合、チオカルバミド結合、オキサゾリン部位含有結合、トリアジン結合等を介して、架橋されていてもよい。
【0038】
上記ポリマーは、重量平均分子量が、200〜7000000であることが好ましい。これにより、アニオン伝導性材料のイオン伝導性、可とう性等を調節することができる。該重量平均分子量は、より好ましくは、400〜6500000であり、更に好ましくは、500〜5000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0039】
上記ポリマーの割合は、導電層100質量%中、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、更に好ましくは、10質量%以上であり、特に好ましくは、40質量%以上である。また、該ポリマーの割合は、99質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以下であり、更に好ましくは、70質量%以下であり、特に好ましくは、60質量%以下である。
【0040】
なお、上記導電層における、ポリマーと無機化合物との配合割合は、5000000/1〜1/100000であることが好ましい。より好ましくは、2000000/1〜1/50000であり、更に好ましくは、1000000/1〜1/10000である。
【0041】
上記導電層は、導電物質と、ポリマーと、無機物とを含む限り、上記導電物質、ポリマー、無機物以外のその他の成分を更に含んでいてもよい。また、その他の成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0042】
上記導電層が上記その他の成分を含む場合は、上記その他の成分の割合は、導電層100質量%中、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以下であり、更に好ましくは、1質量%以下であり、特に好ましくは、0.1質量%以下である。
【0043】
〔絶縁層〕
本発明のセパレータにおける上記絶縁層は、電気抵抗値が10Ω・cm以上である。該電気抵抗値は、1×10Ω・cm以上であることが好ましく、1×10Ω・cm以上であることがより好ましく、1×10Ω・cm以上であることが更に好ましく、1×10Ω・cm以上であることが特に好ましく、1×10Ω・cm以上であることが最も好ましい。該電気抵抗値の上限値は特に限定されないが、例えば1×10Ω・cm以下であることが好ましい。
上記電気抵抗値は、上記導電層の電気抵抗値と同様の方法で測定することができる。
【0044】
上記絶縁層の平均厚みは、例えば10μm以上であることが好ましい。より好ましくは50μm以上であり、更に好ましくは100μm以上である。また、該平均厚みは、2000μm以下であることが好ましい。より好ましくは1000μm以下であり、更に好ましくは500μm以下である。
上記絶縁層の平均厚みは、マイクロメーターにより任意に5点を測定して算出することができる。上記絶縁層が複数ある場合は、絶縁層の各層の平均厚みの総和を上記絶縁層の厚みとすることができる。
【0045】
上記絶縁層としては、不織布、微多孔膜、ポリマーと無機物とを含むアニオン伝導性材料を用いて形成されるアニオン伝導性膜等が挙げられる。
上記不織布は、不織布として通常用いられるポリマーから構成されるものであればよく、例えば、セルロースから構成されるものが好ましい。
上記微多孔膜は、例えば低密度ポリエチレン等の樹脂からなるものが挙げられる。微多孔膜の微孔は、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールのような水溶性物質を樹脂の分散液と混合し、成膜した後に水洗してこの水溶性物質を溶出することにより形成することができる。上記微多孔膜は、親水性処理されたもの等、親水性であることが好ましい。
中でも、上記絶縁層の少なくとも1層(1つ)が、ポリマーと無機物とを含むアニオン伝導性材料を用いて形成されるアニオン伝導性膜であることがより好ましい。特に、後述するように、亜鉛負極やカドミウム負極、リチウム負極を含んで構成される電池に本発明のセパレータを使用する場合は、絶縁層の少なくとも1層が上記アニオン伝導性膜であるセパレータが好ましい。この場合でも、本発明のセパレータは、更に不織布及び/又は微多孔膜を有していてもよい。
【0046】
上記絶縁層におけるアニオン伝導性膜は、導電物質を添加せず、導電性を付与しない以外は導電層におけるアニオン伝導性膜として上述したものと同様のものを使用することができる。すなわち、上記絶縁層におけるアニオン伝導性膜は、無機化合物、ポリマーとして、導電層におけるアニオン伝導性材料として上述した無機化合物、ポリマーと同様のものを使用して形成することができる。
上記無機化合物の割合は、絶縁層100質量%中、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、更に好ましくは、10質量%以上であり、特に好ましくは、30質量%以上である。また、該無機化合物の割合は、99質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以下であり、更に好ましくは、60質量%以下であり、特に好ましくは、50質量%以下である。
【0047】
上記ポリマーの割合は、絶縁層100質量%中、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、更に好ましくは、10質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。また、該ポリマーの割合は、99質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以下であり、更に好ましくは、80質量%以下であり、特に好ましくは、70質量%以下である。
なお、上記絶縁層における、ポリマーと無機化合物との好ましい配合割合は、上記導電層における、ポリマーと無機化合物との配合割合として上述したものと同様である。
【0048】
本発明のセパレータの調製方法としては、従来公知の方法で適宜調製できるが、例えば次のような方法が挙げられる。
導電物質、ポリマー、及び、無機化合物等と共に、必要に応じて、上記その他の成分を混合する。また、別途、ポリマー、及び、無機化合物等と共に、必要に応じて、上記その他の成分を混合し、上記導電物質、ポリマー、及び、無機化合物等の混合物と重ね合わせたうえで圧延処理を行う。混合には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、レディミル、ボールミル等を使用することができる。混合の際、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤を加えても良い。
【0049】
<本発明の電池>
本発明は、本発明のセパレータ、電極、及び、電解質を含んで構成される電池でもある。
本発明の電池では、セパレータが電極に沿っていることが重要である。上記(1)、(2)の特徴を有するセパレータを電極に沿わせて配置した構成の電池とすることで、負極面内の電流分布をより均一にすることができ、本発明の効果を顕著に発揮できる。
本発明の電池を構成するのに用いるセパレータの好ましい形態は、上述した本発明のセパレータの好ましい形態と同様である。本発明の電池は、セパレータとして本発明のセパレータを1種でも2種以上でも使用することができ、また、セパレータとして本発明のセパレータを使用する限り、本発明のセパレータ以外の不織布及び/又は微多孔膜を用いてもよい。すなわち、抵抗が上昇したり、電池性能が低下したりしなければ、任意の枚数の膜を使用することができる。例えば、本発明のセパレータが導電層と導電層の一方側だけに積層された絶縁層とから構成される場合は、導電層の他方側は、高抵抗の部材(不織布、微多孔膜等の絶縁性部材等)を配置して導電層と電極とを隔離できる。
【0050】
本発明の電池が亜鉛負極、カドミウム負極、又は、リチウム負極を含んで構成される電池である場合は、絶縁層の少なくとも1層が上記アニオン伝導性膜であるセパレータを用いて、セパレータの導電層の負極側にアニオン伝導性膜が配置されたものとすることが好ましい。これにより、デンドライトを充分に抑えることができる。また本発明の電池が亜鉛負極、カドミウム負極、リチウム負極のいずれも含まず、これら負極以外の電極を含んで構成される電池である場合は、セパレータの導電層の負極側は、アニオン伝導性膜、不織布、微多孔膜等の高抵抗部材のいずれかが配置されればよい。なお、セパレータの導電層の正極側には、アニオン伝導性膜、不織布、微多孔膜等の高抵抗部材のいずれかが配置されればよい。
【0051】
上記導電層が電極に沿って配置されているとは、導電層が電極の一面に沿って配置されていることを言う。通常は、上記導電層が、正極と負極とが互いに対向する面のそれぞれに沿って配置される。導電層が正極、負極等の電極面に沿って配置されているとは、導電層と該電極面とのなす角度が10°以下であることを言う。中でも、上記導電層が、上記面に対して平行に配置されていることが好ましい。
すなわち、本発明のセパレータは、正極と負極との間に、正極から負極へと流れる電流と交差するように配置されるものである。セパレータが正極から負極へと流れる電流と交差するとは、セパレータと該電流とのなす角度が80°以上であることを言う。中でも、正極から負極へと流れる電流に対して直交するように配置されることが好ましい。また導電層は、正極の負極と対向する面から負極の正極と対向する面へと電流が直線的に流れる経路を少なくとも部分的に覆うように配置されていることが好ましく、完全に覆うように配置されていることがより好ましい。これにより、電流を正極から負極に向かって偏り無く流すことができ、シェイプチェンジ等を抑制する効果をより顕著に発揮できる。
【0052】
本発明の電池としては、本発明のセパレータを含んで構成される種々の電池が挙げられ、例えば、アルカリ(蓄)電池、ニッケル水素(蓄)電池、ニッケル亜鉛(蓄)電池、ニッケルカドミウム(蓄)電池、ニッケルリチウム(蓄)電池、亜鉛イオン(蓄)電池、銀亜鉛(蓄)電池、空気(蓄)電池、燃料電池等が好適なものとして挙げられる。上述したとおり、本発明の電池は、デンドライトやシェイプチェンジを抑制して電池を長寿命化する効果を顕著に発揮できる点から、亜鉛負極、カドミウム負極、又は、リチウム負極を含むことが好ましく、亜鉛負極又は、カドミウム負極を含むことがより好ましく、亜鉛負極を含むことが更に好ましい。また本発明は、本発明のセパレータを含んで構成される二次電池や燃料電池でもある。すなわち、本発明の電池が二次電池であることが本発明の好ましい形態の1つである。また、本発明の電池が燃料電池であることもまた本発明の好ましい形態の1つである。
【0053】
本発明の電池における上記電極としては、正極、負極が挙げられる。
上記正極及び/又は負極(好ましくは、負極)の端部(正極と負極とがそれぞれ対向する面の周辺に位置する側面部分をいう。)は、上述したアニオン伝導性材料が含むポリマー(例えば、ポリエチレン)等から構成される絶縁性膜で被覆し、セパレータと直交する方向にのみ電流が流れるようにすることが好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に発揮できる。
上記絶縁性膜が上記正極及び/又は負極の端部を被覆することにより、正極及び/又は負極が他の一方の電極と対向する面の少なくとも一部は絶縁性膜の開口部となる。開口している面積は、電極の表面積全体に対して、10%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。
【0054】
上記正極の活物質としては、一次電池や二次電池の正極活物質として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、酸素;オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等のニッケル含有化合物;二酸化マンガン等のマンガン含有化合物;酸化銀;コバルト酸リチウム等のリチウム含有化合物;鉄含有化合物等が挙げられる。これらの中でも、正極活物質がニッケル含有化合物であることが、本発明の好適な実施形態の1つである。
また本発明の電池が燃料電池である場合は、正極活物質が酸素であることが本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、本発明の燃料電池の、正極が酸素還元能を有する極であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0055】
本発明の電池における上記負極の活物質としては、炭素・リチウム・ナトリウム・マグネシウム・亜鉛・カドミウム・錫・シリコン含有材料等、電池の負極活物質として通常用いられるものを用いることができるが、中でもリチウム・亜鉛・カドミウムが好ましく、亜鉛・カドミウムがより好ましく、亜鉛が更に好ましい。
また本発明の電池が燃料電池である場合は、上記負極の活物質としては、燃料電池の負極活物質として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アンモニア等が挙げられる。
【0056】
上記正極及び/又は負極は、更に、バインダーを含んでいてもよい。
上記バインダーは、例えば、炭化水素部位含有ポリマー;芳香族基含有ポリマー;エーテル基含有ポリマー;水酸基含有ポリマー;アミド基含有ポリマー;イミド基含有ポリマー;カルボキシル基含有ポリマー;カルボン酸塩含有ポリマー;ハロゲン含有ポリマー;エポキシ樹脂等のエポキシ基が開環することにより結合したポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;天然ゴム;人工ゴム;糖類;アミン基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマー;低分子量界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
本発明の電池における上記電極中の酸素以外の活物質と、バインダーとの質量割合は、100:1〜1:100であることが好ましく、90:1〜1:1であることがより好ましく、80:1〜10:1であることがより好ましく、50:1〜20:1であることが特に好ましい。
【0058】
上記正極及び/又は負極は、更に、導電助剤を含んでいてもよい。該導電助剤としては、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックや、亜鉛・亜鉛末・亜鉛合金・(アルカリ)乾電池や空気電池に使用される亜鉛(以下、纏めて金属亜鉛とも称する)等を用いることができる。導電性カーボンとしては、黒鉛、グラッシーカーボン、アモルファス炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、炭素繊維、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、バルカン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0059】
本発明の電池における正極及び/又は負極は、通常、電極を構成する上記各成分を混合して調製した電池用電極組成物を用いて集電体上に活物質層を形成して得られるものである。各成分の混合には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、レディミル、ボールミル等を使用することができる。
また、混合した後、粒子を所望の粒子径に揃えるために、ふるいにかける等の操作を行ってもよい。
【0060】
上記集電体としては、電池に集電体や容器として使用される材料等が挙げられ、例えば、銅箔、電解銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、ニッケルメッシュ、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、鋼板、パンチング鋼板、銀等が挙げられる。これらは、Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl等を更に添加したり、Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl等によりメッキしたりしたものであってもよい。
【0061】
本発明の電池における電解質は、電池の電解質として通常用いられるものであれば特に制限されず、例えば、水含有電解液、有機溶剤系電解液等が挙げられ、水含有電解液が好ましい。水含有電解液とは、水のみを電解液原料として使用する電解液(水系電解液)や、水に有機溶剤を加えた液を電解液原料として使用する電解液を指す。
【0062】
上記水系電解液としては、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等のアルカリ性電解液や、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等が挙げられる。上記水系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。
また、上記水含有電解液は、有機溶剤系電解液に用いられる有機溶剤を含んでいてもよい。該有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、イオン性液体、フッ素含有カーボネート類、フッ素含有エーテル類、ポリエチレングリコール類、フッ素含有ポリエチレングリコール類等が挙げられる。上記有機溶剤系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。上記有機溶剤系電解液の電解質としては、特に制限はないが、LiPF、LiBF、LiB(CN)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)等が好ましい。
固体(ゲル)電解質や、上記電解液を有する本発明のアニオン伝導性膜を固体(ゲル)電解質として使用することもできる。
【0063】
また、電池の形態としては、一次電池、充放電が可能な二次電池、メカニカルチャージ(例えば亜鉛負極の機械的な交換)の利用、負極と正極とは別の第3極(例えば、充放電中に発生する酸素や水素を除去する極)の利用等、いずれの形態であっても良いが、上述したように、本発明の電池が二次電池であることが本発明における好ましい形態の1つである。
【発明の効果】
【0064】
本発明のセパレータは、上述の構成よりなり、電池に用いた場合に、電池の長期使用に伴う活物質のシェイプチェンジを抑制でき、電池を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】実施例2の2D静的電場シミュレーション結果である。
図2】導電層を挿入していない以外は実施例2と同様の2D静的電場シミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(比較例1)
ハイドロタルサイトとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を4:6の質量割合で混練し、平均厚み300μmの単層アニオン伝導性膜を作製した。活物質としての酸化亜鉛とバインダーとしてのPTFEを質量比96:4で混練した電極合剤組成物をパンチングニッケルに張り付けて作製した亜鉛負極の表面にこの単層アニオン伝導性膜を配置し、端部はポリエチレンフィルムで被覆してアニオン伝導性膜を貫通する方向にのみ電流が流れる負極を構成した。ポリエチレンフィルムが開口している面積は2cmである。対極としてニッケル正極、参照極として水銀極を用い、充放電電流10mA/cm、充電深度50%で、この負極に対してサンプル数N=4で充放電試験を実施した。その結果、200サイクル〜500サイクルの間で4つのサンプルすべてが頓死した。
【0068】
(実施例1)
比較例1と同じ組成のアニオン伝導性膜を、天然黒鉛:ハイドロタルサイト:PTFE=10:40:50(質量割合)を混ぜ合わせた電気伝導性のあるアニオン伝導性膜の両面に重ね合わせたうえで圧延し層状構造を作製した。それについて、比較例1と同様に充放電試験を試みた。この結果、400〜600サイクル程度まで長寿命化した。
【0069】
(実施例2)
導電層による電流集中抑制効果を調べるために、2D(2次元)静的電場シミュレーションを行った。1セグメントのサイズを10μmとし、電解液抵抗を10Ω・cm、集電体抵抗を0.001Ω・cm、導体層(導電層)抵抗を0.1Ω・cmとして、電場分布ができるように正極を点電極、負極を線電極とし、正極と負極との間に図1に示すように導電層を挿入して抵抗マップを作製した。その抵抗マップに対し、キルヒホッフの法則を用いた電位分布計算を行い、正極と負極との間に形成される電位マップを作製したのち、その電位勾配から電界強度マップの作成をおこなった。結果を図1に示す。
【0070】
(比較例2)
導電層を挿入していない以外は実施例2と同様の条件にて、電界強度マップの作成をおこなった。結果を図2に示す。
【0071】
図1及び図2中、「電界強度が非常に強い領域」として指し示されている箇所が最も電界強度が強く、該箇所から「電界強度が非常に弱い領域」として指し示されている箇所に向かうほど電界強度が弱くなることを、等値線を用いて示している。これを見ると、導電層が無い比較例2(図2)では、正極から発生する電場は、広がりながら負極に向かい、負極面上の電界強度に強弱のまだらがあり、負極面における電流分布が不均一である。一方、実施例2(図1)では、正極、負極のいずれとも絶縁した導電層が有ることにより、一度導電層が有る箇所で拡散し、導電層と負極との間の領域において平行電場(電界が均一)になって負極に向かい、負極面における電流分布が均一である。なお、図1のシミュレーション結果に示されるように正極、負極のいずれとも絶縁した導電層を電池中に配置するために、絶縁層と導電層とを含む多層構造をもつ本発明のセパレータを用いることができる。
【0072】
実施例1及び比較例1より、絶縁層と導電層とを重ね合わせたセパレータとすることにより、電池を長寿命化できることが分かった。また、実施例2及び比較例2より、図1に示すように正極、負極のいずれとも絶縁した導電層を挿入することにより、負極面内の電流分布をより均一にすることができることが分かった。これにより、デンドライトの発生や、活物質のシェイプチェンジを抑制することができ、電池を長寿命化できると考えられる。
【0073】
以上を纏めると、上記実施例及び比較例の結果から以下のことが分かった。本発明のセパレータを用いて構成される電池において、電池における負極面の電流分布をより均一にすることができ、デンドライトの発生や、活物質のシェイプチェンジを抑制することができる。これにより、電池を長寿命化できる。
【0074】
なお、上記実施例1においては、絶縁層及び導電層として特定の材料を使用しているが、電池における負極面の電流分布をより均一にすることができ、デンドライトの発生や、活物質のシェイプチェンジを抑制することができることは、セパレータが絶縁層と導電層とを含む多層構造をもち、該絶縁層を介して電極と電気的に絶縁した状態で導電層を電池中に配置した場合には全て同様であると評価できる。
【0075】
また上記実施例1は、亜鉛負極を用いたニッケル・亜鉛電池に係るものであり、これが本発明の1つの好適な形態であるが、その他の種々の電極・電池においても、本発明のセパレータを用いるものであれば、電池における負極面の電流分布をより均一にすることができ、活物質のシェイプチェンジ等を抑制することができるため、本発明の作用効果を発揮することが可能である。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮できることが実証されている。
図1
図2