特許第6558907号(P6558907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新コスモス電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000006
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000007
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000008
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000009
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000010
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000011
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000012
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000013
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000014
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000015
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000016
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000017
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000018
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000019
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000020
  • 特許6558907-ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558907
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G01N27/12 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-22495(P2015-22495)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-145738(P2016-145738A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】久世 恭
(72)【発明者】
【氏名】大石 達也
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−075532(JP,A)
【文献】 特開2002−286668(JP,A)
【文献】 特開2003−232760(JP,A)
【文献】 特開2002−286669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0168772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体式ガスセンサを備えるガス濃度測定装置において、
前記半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定手段と、
判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出手段と、
前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正手段と、
補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、を備え
前記被毒度判定手段が、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間によってシリコーン被毒度を判定することを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
半導体式ガスセンサを備えるガス濃度測定装置において、
前記半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定手段と、
判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出手段と、
前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正手段と、
補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、を備え、
前記被毒度判定手段が、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間までの第1所定時間と第2所定時間のそれぞれに出力された第1出力値と第2出力値との差によってシリコーン被毒度を判定することを特徴とするガス濃度測定装置
【請求項3】
半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定ステップと、
判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出ステップと、
前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正ステップと、
補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出ステップと、を包含し、
前記被毒度判定ステップが、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間によってシリコーン被毒度を判定することを特徴とするガス濃度測定方法。
【請求項4】
半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定ステップと、
判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出ステップと、
前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正ステップと、
補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出ステップと、を包含し、
前記被毒度判定ステップが、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間までの第1所定時間と第2所定時間のそれぞれに前記半導体式ガスセンサから出力された第1出力値と第2出力値との差によってシリコーン被毒度を判定することを特徴とするガス濃度測定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知対象となるガス成分を検知する半導体式ガスセンサの出力値に基づいて、当該ガス成分の濃度を測定するガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検知対象となるガス成分の濃度を測定する従来のガス濃度測定装置として、半導体式ガスセンサを備えるものが知られている。
【0003】
半導体式ガスセンサは、そのガス感応部にガス成分が接触したときに発生する抵抗値変化を検出し、ガス成分の濃度に応じた出力値を出力するものである。
【0004】
従来、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDS)等の有機シリコーンガスに半導体式ガスセンサが曝されて被毒すると、図1に示すように、検知対象となるガス成分を含んでいないか、あるいは検知対象となるガス成分の濃度が一定であっても、被毒時間が長くなるほど半導体式ガスセンサの出力値が増加する傾向を示すようになり、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することが困難になるという問題を抱えていた。
【0005】
この問題を解決するため、半導体式ガスセンサのガス感応部に被覆層を設けてシリコーン被毒を防止するという方法がこれまで一般的に行われていた。
【0006】
尚、この様な従来技術に関しては、当業者の間で広く知られているものであるため、先行技術文献を示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガス感応部に被覆層を設ける方法は、シリコーン被毒を必ずしも十分に防ぎ得るものではなく、またひび割れや剥離が当該被覆層に生じていないかなどを定期的に点検してメンテナンスを行う必要もあり、面倒な作業をユーザーに強いるものであった。
【0008】
本発明の目的は、シリコーン被毒の影響を受けずに、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することができ、しかもシリコーン被毒に対するメンテナンスを行う必要のないガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のガス濃度測定装置に係る特徴構成は、半導体式ガスセンサを備えるガス濃度測定装置において、前記半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定手段と、判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出手段と、前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正手段と、補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、を備え、前記被毒度判定手段が、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間によってシリコーン被毒度を判定する点にある。
【0012】
本構成のごとく、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定し、当該シリコーン被毒度に対応する補正係数を用いて出力値を補正することにより、シリコーン被毒の影響を排除することができる。従って、半導体式ガスセンサのガス感応部に被覆層を設けなくとも、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することができると共に、シリコーン被毒に対する面倒なメンテナンスを行う必要もない
また本構成によれば、半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間を測定することによって、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を正確に判定することが可能となる。その結果、より正確な補正係数が算出されるため、検知対象となるガス成分の濃度をより正確に測定することができる。
【0013】
本発明のガス濃度測定装置に係る特徴構成は、半導体式ガスセンサを備えるガス濃度測定装置において、前記半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定手段と、判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出手段と、前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正手段と、補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、を備え、前記被毒度判定手段が、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間までの第1所定時間と第2所定時間のそれぞれに出力された第1出力値と第2出力値との差によってシリコーン被毒度を判定する点にある。
【0014】
本構成のごとく、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定し、当該シリコーン被毒度に対応する補正係数を用いて出力値を補正することにより、シリコーン被毒の影響を排除することができる。従って、半導体式ガスセンサのガス感応部に被覆層を設けなくとも、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することができると共に、シリコーン被毒に対する面倒なメンテナンスを行う必要もない
また本構成によれば、半導体式ガスセンサの出力値が安定化するのを待たずに、そのシリコーン被毒度を判定することができる。従って、検知対象となるガス成分の濃度をより迅速に測定することができる。
【0017】
本発明のガス濃度測定方法に係る特徴構成は、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定ステップと、判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出ステップと、前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正ステップと、補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出ステップと、を包含し、前記被毒度判定ステップが、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間によってシリコーン被毒度を判定する点にある。
【0018】
本構成のごとく、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定し、当該シリコーン被毒度に対応する補正係数を用いて出力値を補正することにより、シリコーン被毒の影響を排除することができる。従って、半導体式ガスセンサのガス感応部に被覆層を設けなくとも、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することができると共に、シリコーン被毒に対する面倒なメンテナンスを行う必要もない。
また本構成によれば、半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間を測定することによって、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を正確に判定することが可能となる。その結果、より正確な補正係数が算出されるため、検知対象となるガス成分の濃度をより正確に測定することができる。
【0019】
本発明のガス濃度測定方法に係る特徴構成は、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定ステップと、判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数を算出する補正係数算出ステップと、前記補正係数を用いて、前記半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正ステップと、補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出ステップと、を包含し、前記被毒度判定ステップが、前記半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間までの第1所定時間と第2所定時間のそれぞれに前記半導体式ガスセンサから出力された第1出力値と第2出力値との差によってシリコーン被毒度を判定する点にある。
【0020】
本構成のごとく、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定し、当該シリコーン被毒度に対応する補正係数を用いて出力値を補正することにより、シリコーン被毒の影響を排除することができる。従って、半導体式ガスセンサのガス感応部に被覆層を設けなくとも、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することができると共に、シリコーン被毒に対する面倒なメンテナンスを行う必要もない。
また本構成によれば、半導体式ガスセンサの出力値が安定化するのを待たずに、そのシリコーン被毒度を判定することができる。従って、検知対象となるガス成分の濃度をより迅速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを曝露したときの曝露時間と、検知対象となる種々のガス成分に対する当該半導体式ガスセンサの生出力値との関係を示すグラフである。
図2】半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を模式的に示したグラフである。
図3】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを曝露する前の、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図4】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを2時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図5】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを5時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図6】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを10時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図7】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを18時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図8】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを30時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図9】有機シリコーンガスに曝露する前の半導体式ガスセンサ、及び有機シリコーンガスに2時間、5時間、10時間、18時間、30時間曝露した半導体式ガスセンサにおける、検知対象となるガス成分の濃度と、出力値(当該ガス成分の濃度が0ppmのときの生出力値を0mVとして換算したときの換算出力値)との関係を示すグラフである。
図10】有機シリコーンガス中にそれぞれ2時間、5時間、10時間、18時間、30時間曝露した半導体式ガスセンサにおける、出力値(検知対象となるガス成分の濃度が0ppmのときの生出力値を0mVとして換算したときの換算出力値)と、補正係数との関係を示すグラフである。
図11】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを曝露する前の、当該半導体式ガスセンサに通電したときの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図12】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを2時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサに通電したときの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図13】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを5時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサに通電したときの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図14】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを10時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサに通電したときの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図15】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを18時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサに通電したときの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
図16】有機シリコーンガス中に半導体式ガスセンサを30時間曝露した後の、当該半導体式ガスセンサに通電したときの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
本発明に係るガス濃度測定装置は、検知対象となるガス成分を検知する半導体式ガスセンサを備え、その出力値に基づいて当該ガス成分の濃度を測定するガス濃度測定装置であって、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度を判定する被毒度判定手段と、判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数Cを算出する補正係数算出手段と、補正係数Cを用いて、半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正手段と、補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出手段とを備えるものである。
【0023】
本発明において検知対象となるガス成分は、特に限定されるものではないが、例えば、水素、エタノール、トルエン等の可燃性ガス、酸素等の支燃性ガス、さらに窒素、二酸化炭素等の不燃性ガスが挙げられる。
【0024】
本実施形態における被毒度判定手段は、通電後の安定化時間Tを測定する時間測定機能と、種々の曝露時間と当該曝露時間に対応する安定化時間Tと被曝レベルとに関するデータを蓄積する第1データテーブルと、時間測定機能により測定された安定化時間Tを、第1データテーブルに入力して被曝レベルを判定する被曝度判定機能とを備える。
【0025】
本実施形態における補正係数算出手段は、出力値と補正係数Cとの関係を示す検量線に関するデータを被曝レベル毎に蓄積する第2データテーブルと、被毒度判定手段にて選択された被曝レベルと、半導体式ガスセンサの出力値とを第2データテーブルに入力することによって補正係数を導き出す補正係数算出機能とを備える。
【0026】
本実施形態における出力値補正手段は、以下の式1により、半導体式ガスセンサの出力値を補正する。
[式1]
補正出力値=出力値/補正係数C
【0027】
本実施形態におけるガス濃度算出手段は、検知対象となるガス成分の所定のガス濃度と、被曝していない半導体式ガスセンサにおける出力値との関係を示す検量線に関するデータを蓄積する第3データテーブルと、出力値補正手段により算出された補正出力値を第3データテーブルに入力することによってガス濃度を導き出すガス濃度算出機能とを備える。
【0028】
本願明細書における「シリコーン被毒度」とは、シリコーン被毒の程度を意味するものである。本願明細書におけるシリコーン被毒度は、半導体式ガスセンサが、所定濃度の有機シリコーンガスに曝された曝露時間によって評価されるものとし、当該曝露時間が長ければ長いほど、シリコーン被毒度が高いと判断される。
【0029】
本願明細書における「安定化時間」とは、半導体式ガスセンサに通電してから、その出力値が安定するまでの時間、即ち、出力値がフラットな状態になるまでに要する時間を意味する(図2参照)。
【0030】
図3は、シリコーンガスに曝露していない半導体式ガスセンサについて、検知対象となるガス成分を含まない気体中において通電したときの、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
【0031】
図4図8のそれぞれは、半導体式ガスセンサを、有機シリコーンガスの一例としての10ppmのHMDS中に2時間、5時間、10時間、18時間、30時間曝露した後、検知対象となるガス成分を含まない気体中において通電したときの、当該半導体式ガスセンサの出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
【0032】
尚、図3図8における半導体式ガスセンサの出力値はいずれも、当該半導体式ガスセンサに通電して安定したときの生出力値を0mVとして換算したときの換算出力値である。
【0033】
図3に示すように、曝露前の安定化時間Tが約1分であるのに対して、図4図8に示すように、曝露時間が2時間、5時間、10時間、18時間、30時間と長くなるほど、安定化時間Tも、約2分、約3分、約5分、約6分、約9分と長くなる傾向がある。
【0034】
このような事実を踏まえ、本発明者らは、シリコーン被毒度が、半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間Tに反映されることを見出した。そして、シリコーン被毒度を安定化時間Tによって判定し、当該シリコーン被毒度に対応する補正係数Cを用いて出力値を補正すれば、シリコーン被毒の影響を受けずに、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することができるとして、本発明に至った。
【0035】
以下、本発明に係るガス濃度測定方法について、具体例を交えながら説明する。
本発明に係るガス濃度測定方法は、半導体式ガスセンサのシリコーン被毒度(被曝レベル)を判定する被毒度判定ステップと、判定されたシリコーン被毒度に対応する補正係数Cを算出する補正係数算出ステップと、補正係数Cを用いて、半導体式ガスセンサの出力値を補正する出力値補正ステップと、補正された出力値に基づいてガス濃度を算出するガス濃度算出ステップと、を包含する。
【0036】
初めに、第1〜第3データテーブルを作成する。
第1データテーブルを作成するために、半導体式ガスセンサに対する有機シリコーンガスの種々の曝露時間と、当該曝露時間のそれぞれに対応する安定化時間Tに関するデータを採取する。
【0037】
ここでは有機シリコーンガスの一例として10ppmのHMDSを使用し、さらにHMDS曝露前の半導体式ガスセンサ、及びHMDS中に2時間、5時間、10時間、18時間、30時間それぞれ曝露させた半導体式ガスセンサを用いる。
【0038】
上記半導体式ガスセンサのそれぞれを、検知対象となるガス成分を含まない気体中において12分間通電し、その出力値が安定となる安定化時間Tを測定する。
【0039】
図3図8に示すように、HMDS曝露前の安定化時間Tが約1分であるのに対して、曝露時間が2時間、5時間、10時間、18時間、30時間のそれぞれの安定化時間Tが、約2分、約3分、約5分、約6分、約9分と測定された。
【0040】
そのような結果に基づき、安定化時間T、曝露時間P、及び被曝レベルの各データを備える第1データテーブルを例えば以下の表1のように作成する。
【0041】
【表1】
【0042】
次に、上記半導体式ガスセンサのそれぞれを、検知対象となるガス成分を所定濃度で含む気体中に置いて、その出力値を測定する。ここでは、検知対象となるガス成分としてエタノールを使用した例を説明する。例えば10ppm、50ppm、200ppmのエタノールを含む気体のそれぞれを予め調製し、それらの気体について上記半導体式ガスセンサのそれぞれの出力値を測定する。出力値の測定結果を以下の表2及び図9に示す。尚、表2及び図9における出力値(mV)は、エタノールの濃度が0ppmのときの生出力値を0mVとして換算したときの換算出力値である。
【0043】
【表2】
【0044】
次いで、表2の結果から、以下の[式2]により、補正係数Cを算出する。補正係数Cの計算結果を表3に示す。
[式2]
補正係数C=所定エタノール濃度のレベル1〜5のそれぞれにおける出力値/所定エタノール濃度のレベル0における出力値
【0045】
【表3】
【0046】
次いで、表2及び表3より、被曝レベル1〜5毎に、出力値(mV)と補正係数Cとの関係を示す検量線に関する第2データテーブルを図10の如く作成する。
【0047】
また、所定濃度のエタノールを含む気体をいくつか調製し、エタノール濃度と、被曝されていない半導体式ガスセンサにおける出力値との関係を示す検量線を作成して第3データテーブルとする。
【0048】
次いで、上記第1〜第3データテーブルを用いて、検知対象のガス成分であるエタノールの濃度を測定する。
【0049】
まず、被毒度判定ステップにおいて、半導体式ガスセンサに通電した後の安定化時間Tを測定し、測定された安定化時間Tについて、第1データテーブルに基づいて被曝レベル0〜5を判定する。
【0050】
次いで、補正係数算出ステップにおいて、判定された被曝レベルに基づいて第2データテーブルにおける検量線のいずれかを選択し、選択した検量線と、半導体式ガスセンサから出力された出力値とから補正係数Cを算出する。
【0051】
次いで、出力値補正ステップにおいて、上記式1により、半導体式ガスセンサの出力値を補正して補正出力値を算出する。
【0052】
そして、ガス濃度算出ステップにおいて、補正出力値と第3データテーブルとを用いてエタノール濃度を算出する。
【0053】
尚、上記被毒度判定ステップにおいて被曝レベル0と判定された場合は、半導体式ガスセンサは被毒していないため、上記補正係数算出ステップと出力値補正ステップとを行わずに、ガス濃度算出ステップを行う。
【0054】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態についての説明を行うが、上記第1実施形態と第2実施形態とは、被毒度判定手段及び被毒度判定手ステップのみが異なるものであるため、それ以外の用語の定義・構成については説明を省略する。
【0055】
本実施形態における被毒度判定手段は、通電後の半導体式ガスセンサにおける出力値の安定化時間までの第1所定時間と第2所定時間のそれぞれに出力された第1出力値と第2出力値との差に基づいて勾配を算出する勾配算出機能と、種々の曝露時間と当該曝露時間に対応する勾配と被曝レベルとに関するデータを蓄積する第4データテーブルと、勾配算出機能により算出された勾配を第4データテーブルに入力して被曝レベルを判定する被曝度判定機能とを備える。
【0056】
図11は、シリコーンガスに曝露していない半導体式ガスセンサについて、検知対象となるガス成分を含まない気体中において通電したときの、当該半導体式ガスセンサの生出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
【0057】
図12図16は、半導体式ガスセンサを、有機シリコーンガスの一例としての10ppmのHMDS中に2時間、5時間、10時間、18時間、30時間曝露した後、検知対象となるガス成分を含まない気体中において通電したときの、当該半導体式ガスセンサの生出力値と通電時間との関係を示すグラフである。
【0058】
図11図16に示すように、曝露時間が0時間、2時間、5時間、10時間、18時間、30時間と長くなるにつれて、出力値と時間との関係を示したグラフにおける安定化時間までの所定時間(0.5分)での勾配が大きくなる傾向がある(図中の白丸箇所を参照)。
【0059】
尚、図11図16における半導体式ガスセンサの出力値はいずれも、当該半導体式ガスセンサに通電して安定したときの生出力値を0mVとして換算したときの換算出力値である。
【0060】
このような事実を踏まえ、本発明者らは、図2に示すように、半導体式ガスセンサの出力値の安定化時間Tまでの第1所定時間t1と第2所定時間t2のそれぞれに出力された第1出力値A1と第2出力値A2との差、即ち、出力値と時間との関係を示したグラフにおける安定化時間までの所定時間での勾配Sにシリコーン被毒度が反映されることについても見出した。そして、シリコーン被毒度を勾配Sによって判定し、当該シリコーン被毒度に対応する補正係数を用いて出力値を補正すれば、シリコーン被毒の影響を受けずに、検知対象となるガス成分の濃度を正確に測定することができるとして、本発明に至った。
【0061】
本実施形態に係るガス濃度測定方法は、上述の第1実施形態における第1データテーブルの替わりに、以下に説明する第4データテーブルを使用し、それ以外の工程は上記第1実施形態と同様である。
【0062】
第4データテーブルを作成するために、半導体式ガスセンサに対する有機シリコーンガスの種々の曝露時間と、当該曝露時間のそれぞれに対応する勾配に関するデータを採取する。
【0063】
ここでは有機シリコーンガスの一例として10ppmのHMDSを使用し、さらにHMDS曝露前の半導体式ガスセンサ、及びHMDS中に2時間、5時間、10時間、18時間、30時間それぞれ曝露させた半導体式ガスセンサを用いる。
【0064】
上記半導体式ガスセンサのそれぞれを、検知対象となるガス成分を含まない気体中において通電し、その出力値が安定となる安定化時間Tまでの第1所定時間t1における第1出力値A1と、第2所定時間t2における第2出力値A2とを得る。例えば、第1所定時間t1を30秒とし、第2所定時間t2を25秒と設定する。
【0065】
そして、以下の式3により勾配Sを算出する。
[式3]
勾配S=|(A1−A2)/(t1−t2)|
【0066】
次いで、勾配S、曝露時間P、及び被曝レベルの各データを備える第4データテーブルを例えば以下の表4のように作成する。
【0067】
【表4】
【0068】
〔その他の実施形態〕
1.上述の曝露時間、被曝レベル、第1所定時間t1及び第2所定時間t2に関しては、上述の実施形態に限定されるものではなく、適宜任意に設定して良い。
2.本発明については、ガス検知器やガス警報器等のような半導体式ガスセンサを備える機器において広く適用することができる。特にガス検知器については、携帯用及び定置式のいずれかを問わずに適用することができるが、携帯用ガス検知器がより好適である。
3.上述の被毒度判定手段及び被毒度判定ステップによる被曝レベルの判定については例えば、バンプテスト(機能検査)を行う際などの非使用時に実施するようにしても良いし、あるいは、検知対象となるガス成分の濃度を実際に現場で測定する直前に実施するようにしても良い。このように被曝レベルの判定を予め終えておくことによって、より迅速かつスムーズに現場でガス成分濃度を測定することが可能となり、いち早く作業者に警報を出すように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、ガス検知器やガス警報器等に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
T 安定化時間
t1 第1所定時間
t2 第2所定時間
A1 第1出力値
A2 第2出力値
S 勾配
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16