(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。本発明における再剥離性重ね合わせ接着シートは、重ね合わせ接着する以前のシート、及び、重ね合わせ接着後のシートの両方を含む概念である。本実施形態では、再剥離性重ね合わせ接着シートについて、隠蔽ハガキに適用した場合を例として示すが、その他封書用シートや帳票シートにおいても適用することができるものである。なお、本実施形態では、発明を理解しやすいようにシートの厚さをデフォルメして示している。
【0011】
図1に本発明に係る再剥離性重ね合わせ接着シートの構成図を示すと共に、
図2に
図1の再剥離性重ね合わせ接着シートの使用形態の説明図を示す。
図1(A)〜(D)に示す再剥離性重ね合わせ接着シート11は、一例として、2つ折り用の返信ハガキであって、シート状で送られ、所定の記載事項を記載した後に重ね合わせ接着させて投函させるものを対象としたもので、
図1(A)は表面11Aを示し、
図1(B)は裏面である重ね合わせ面11Bを示し、
図1(C)はそのA−A断面を示し、
図1(D)は剥離残存部の部分を拡大した図である。
【0012】
再剥離性重ね合わせ接着シート11は、シート基材12に重ね合わせ時に対象となる折り線13を介して同大の第1片14と第2片15とが連接されたもので、第1片14の一つの角部に切欠き部20が形成される。当該切欠き部20は、重ね合わせ接着後に14を第2片15より剥離する際の取っ掛かりとさせるためであると共に、後述の剥離紙18をも剥離し易くさせるためのものである。なお、第1片14を第2片15より剥離する際の取っ掛かりとさせるため、切欠き部20に替えて
第1片又は第2片のいずれかの連接方向の長さを長く構成することとしてもよい。切り欠き部20を形成しなくてもよい。そして、当該シート11における第1片14の表面11Aには返信用ハガキとして予め宛名などが形成される。
【0013】
再剥離性重ね合わせ接着シート11の裏面であって、重ね合わせ面(裏面11B)には、
図1(B)、(C)に示すように、シート基材12における第2片15に隠蔽対象となる情報記入領域16が予め印刷され、第1片14の全面に再剥離性接着層17が形成される。そして、再剥離性接着層17上には剥離紙18が設けられる。当該再剥離性接着層17は、従前より知られているもので、再剥離粘着剤により形成された層であり、シーラなどの器具を使用せずに接着することが可能なものである。
【0014】
また、第2片15の一の角部の近傍に剥離残存部19が形成される。当該剥離残存部19は、
図1(C)、(D)に示すように、内側に向かって尖端形状の第1スリット部21Aが形成され、角部に向かって尖端2辺形状の第2スリット部21Bが形成される。当該第1スリット部21Aの各線端と第2スリット部21Bの各線端との間がタイ部22A,22Bであり、これらで面領域が形成されることとなる。当該剥離残存部19は、第2片15が第1片14より剥離する際に、タイ部22A,22Bが破断されることで当該面領域が第1片14の重ね合わせ面上(再剥離性接着層17上)に残存され、当該破断による破断部が剥離痕跡として形成される(
図3で説明する)。ところで、上記第1スリット部21A及び第2スリット部21Bは、第1片14が第2片15などと接着されておらず剥き出しになり、ひっかかりやすくなってしまうことから、タイ部22A,22Bを長く残すことが好ましいが、タイ部22A,22Bが長くなると破断しにくくなる虞があるため、この場合にはタイ部22A,22Bの接着面側にはハーフスリット(紙片を完全に貫通しない程度のスリット)を形成させておくことが好ましい。なお、上記第1スリット部21A及び第2スリット部21Bの形成時期は再剥離性接着層17の塗布形成の時期に拘わらず、何れの段階であってもよい。
【0015】
上記のような返信ハガキ(再剥離性重ね合わせ接着シート11)においては、
図2(A)に示すように、第2片15の裏面11Bに形成された情報記入領域16に、所定の情報を記載した後、剥離紙18を剥離する。そして、
図2(B)、(C)に示すように、折り線13より第2片15の重ね合わせ面(裏面11B)を第1片14側に折り合わせて再剥離性接着層17上に重ね合わせ接着して投函されるものである。なお、第1片14の重ね合わせ面(裏面11B)を第2片15側に折り合わせてもよい。
【0016】
そこで、
図3に、
図2の重ね合わされたシートにおける剥離する状態の説明図を示す。
図2に示す返信ハガキ(再剥離性重ね合わせ接着シート11)において、第2片15における、例えば剥離残存部19が形成された近傍の角部を(
図2(C))、第1片14に形成された切欠き部20側より剥離していくと、
図3(A)に示すように、剥離残存部19の面領域における第2スリット部21Bの尖端側から分離していく。
【0017】
そして、剥離作業を続けると剥離残存部19の面領域は、再剥離性接着層17上に接着状態であって第1スリット部21Aによって第2片15より分離されていることから、剥離力によりタイ部22A,22Bの部分が破断され、
図3(B)に示すように、裂けた状態の破断部23A,23Bとなって当該剥離残存部19の面領域が再剥離性接着層17上に残存することとなる。このことは、正規の人による開封剥離であっても、第三者による不正な開封剥離であっても同様である。
【0018】
例えば、不正な開封剥離の場合、開封後(情報の盗み見)に、
図3(C)に示すように第2片15を元に戻して第1片14の再剥離性接着層17上に再び重ね合わせ接着させることが可能であるが、
図3(D)、(E)に示すように、第2片15上における剥離残存部19のタイ部22A,22Bでは破断部23A,23Bが表面上に現れて剥離痕跡として視認可能となる。そのため、不正に開封剥離されたことを容易に判別することができるものである。
【0019】
次に、
図4に、本発明に係る他の再剥離性重ね合わせ接着シートの構成図を示す。上記実施形態は、再剥離性重ね合わせ接着シート11について返信ハガキとして説明したが、ここでは、発送用のハガキに適用した場合として説明する。
図4(A)に示すように、第1片14と第2片15とが折り線13で連接されていることは上記同様であるが、第1片14の表面11Aには発送先の宛名が形成され、第1片14及び第2片15の各裏面11Bには、発送先個人に対する個人宛て情報16A,16Bが形成される。
【0020】
また、第1片14及び第2片15の各裏面11Bの全域には、
図4(B)に示すように、再剥離性接着層17が形成される。当該再剥離性接着層17は、シーラーなどの器具による強い圧力により接着することが可能となるものである。そして、第2片15の一の角部の近傍に剥離残存部19が形成されることは、上記同様である。そこで、折り線13より第2片15の重ね合わせ面(裏面11B)が第1片14側に折り合わされて再剥離性接着層17上に重ね合わせ接着され、
図4(C)に示すハガキとして発送されるものである(第1片14の重ね合わせ面(裏面11B)を第2片15側に折り合わせてもよい)。
【0021】
ここで、上記発送用のハガキについては、個人宛て情報16A,16Bの形成後に再剥離性接着層17を形成塗布し、重ね合わせ接着する前に剥離残存部19を形成させることが望ましい。なお、剥離による剥離残存部19に残存、再接着による破断部23A,23Bの形成については
図3と同様である。
【0022】
次に、
図5に、
図1及び
図4の重ね合わせ接着シートの他の形態の説明図を示す。
図5(A)は
図1(A)に対応した返信ハガキとしての再剥離性重ね合わせ接着シート11を示し、
図5(B)は
図4(A)に対応した発送用のハガキとしての再剥離性重ね合わせ接着シート11を示したものである。
【0023】
図5(A)、(B)の何れも同様に、第2片15であって、両角部の近傍にそれぞれ
図1(D)と同様の構成の剥離残存部19A、19Bを形成したものである。すなわち、第2片15の両角部の何れから剥離させたとしても、
図3に示すように第2片15を一度剥離されることでタイ部22A、22Bが破断されて破断部23A,23Bが形成されることとなり、再度の重ね合わせ接着に対しても破断部23A、23Bが表面化されるものである。
【0024】
次に、
図6及び
図7に、本発明に係る再剥離性重ね合わせ接着シートに形成される剥離残存部の他の形態の説明図を示す。上記各実施形態では、剥離残存部19,19A,19Bを、内側に向かって尖端2辺形状の第1スリット部21A及び角部に向かって尖端2辺形状の第2スリット部21Bを形成し、これらとタイ部22A,22Bで面領域を形成させた場合を示したが、第1スリット部21A及び第2スリット部21Bの形状に限定されるものでなく、
図6及び
図7に示すように、種々設定することができる(これらの例の形状についても限定されるものではない)。
【0025】
図6に2つのスリット部による2か所のタイ部22A、22Bを有する剥離残存部19を示し、
図7に1つのスリット部による1か所のタイ部22Aを有する剥離残存部19を示している。
図6に示す2か所のタイ部22A、22Bを形成する剥離残存部19の形態は(
図1及び
図4も同様)、剥離残存部19を再剥離性接着層17の塗布後に形成する場合に特に有効である。
【0026】
図6(A)は、第1スリット部21Aを半楕円形状(半円形状でもよい)とし、第2スリット部21Bを同大の半楕円形状として剥離方向で両線端の間隙をタイ部22A,22Bとして対向させたものであり、第1片14に形成された切欠き部20側を剥離開始端とする剥離に対して各線端間同士のタイ部22A,22Bでの破断部23A,23Bを伴う面領域の剥離残存部19となり、再接着に対して破断部23A,23Bが剥離痕跡となるものである。
【0027】
図6(B)は、第1スリット部21Aを半楕円形状(半円形状でもよい)であってその両線端に例えば「く」の字状の破断誘導スリット21A−1,21A−2を形成し、第2スリット部21Bを同大の半楕円形状として、破断誘導スリット21A−1,21A−2と第2スリット部21Bとの間隙をタイ部22A,22Bとして剥離方向で対向させたものであり、第1片14に形成された切欠き部20側を剥離開始端とする剥離に対して当該タイ部22A,22Bでの破断部23A,23Bを伴う面領域の剥離残存部19となり、再接着に対して破断部23A,23Bが剥離痕跡となるものである。
【0028】
図6(C)は、第1スリット部21Aを半楕円形状(半円形状でもよい)とし、第2スリット部21Bを当該第1スリット部21Aより小の半楕円形状として、第1スリット部21Aの内側における両線端の間隙をタイ部22A,22Bとして剥離方向で対向させたものであり、第1片14に形成された切欠き部20側を剥離開始端とする剥離に対して当該タイ部22A,22Bでの破断部23A,23Bを伴う面領域の剥離残存部19となり、再接着に対して破断部23A,23Bが剥離痕跡となるものである。
【0029】
図6(D)は、第1スリット部21Aを半楕円形状(半円形状でもよい)として開放側を角部側(切欠き部20側)とし、第2スリット部21Bをその線端間で直線状として両線端の間隙を微小間隔のタイ部22A,22Bとさせたものであり、第1片14に形成された切欠き部20側を剥離開始端とする剥離に対して各線端間同士のタイ部22A,22Bでの破断部23A,23Bを伴う面領域の剥離残存部19となり、再接着に対して破断部23A,23Bが剥離痕跡となるものである。なお、微小とは、破断部23A、23Bが目視可能な程度の間隔である。
【0030】
一方、
図7(A)は、第1スリット部21Aを、円形状(楕円形状でもよい)であって、第2片15の内側方向の一部を不連続として、その間をタイ部22Aとしたものであり、第1片14に形成された切欠き部20側を剥離開始端とする剥離に対してタイ部22Aから第2片15の内側に引き裂かれて破断片23Cを伴う面領域の剥離残存部19となり、再接着に対して破断部23A,23Bが剥離痕跡となるものである。なお、タイ部22Aの幅が広いと情報が形成された位置まで残存部が形成されてしまう虞があるため、上述のようにその間隔を微小とすることが望ましい。
【0031】
図7(B)は、第1スリット部21Aを、一巻きの渦巻形状であって、第2片15の内側方向の一部を間隙として線端間をタイ部22Aとしたものであり、第1片14に形成された切欠き部20側を剥離開始端とする剥離に対してタイ部22Aでの破断部23A,23Bを伴う面領域の剥離残存部19となり、再接着に対して破断部23A,23Bが剥離痕跡となるものである。
【0032】
上記のように、確実に剥離残存部19を残存させるための形状として、剥離開始端側からみて剥離方向に対して最初にタイ部が存在しないことが望ましく、また、タイ部に至るまでにスリット部による面領域の一部が再剥離性接着層17上に残存させる形状が望ましい。なお、剥離方向に対して最初にタイ部を存在させる場合には、上述のようにその間隔を微小とすることが望ましい。
【0033】
また、タイ部22A,22Bが破断したことを視認しやすくする手段として、各実施形態において当該タイ部22A,22Bに着色を施すことも可能である。着色されたタイ部22A,22Bは、破断により形成された破断部が着色されているため、破断したことを視認しやすくなる。このような手段は、タイ部を短く形成した際により効果的である。
【0034】
なお、剥離残存部19の形成位置は、第2片15の一の角部の近傍に形成されるが、当該剥離残存部19を形成するスリットが紙片の各辺に繋がっていないものとしている。このように各辺に繋がらないことで、スリットを形成した際に第2片15の辺側(側端部)よりスリットにかけて裂けてしまうことを防止することができるものである。また、特に
図1の形態においては、スリットが形成された第2片15が他の基材等で保持されていないため、各辺と繋がったスリットを形成した場合は、よりスリットから裂ける可能性が高くなってしまうことから、各辺に繋がらないスリットを形成することでスリットを形成した第2片15の破断を防止することが可能となるものである。
【0035】
このように、切り取って廃棄する領域がなく、1種のみの再剥離性接着層17で構成させる場合であっても、剥離時のタイ部22A(22B)の破断による破断部(23A(23B)や破断片23Cにより剥離後の再接着に対して剥離の事実を判別することができ、2種の接着層を形成することなくコスト低減を図ることができるものである。