特許第6558951号(P6558951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パスコの特許一覧

特許6558951トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラム
<>
  • 特許6558951-トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラム 図000002
  • 特許6558951-トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラム 図000003
  • 特許6558951-トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラム 図000004
  • 特許6558951-トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラム 図000005
  • 特許6558951-トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558951
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G01N25/72 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-107444(P2015-107444)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-223796(P2016-223796A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】崔 載永
(72)【発明者】
【氏名】朱 林
(72)【発明者】
【氏名】島村 秀樹
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−202859(JP,A)
【文献】 特開2012−221486(JP,A)
【文献】 特開2011−179897(JP,A)
【文献】 特開2004−117194(JP,A)
【文献】 特開2011−133322(JP,A)
【文献】 特開2007−300191(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/046967(WO,A1)
【文献】 特開平06−201625(JP,A)
【文献】 特開2005−346387(JP,A)
【文献】 特表2014−504410(JP,A)
【文献】 特開2014−071046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線熱カメラの出力データを取得してトンネル壁面の熱画像を生成する熱画像生成手段と、
前記熱画像に対して低分解能化処理を実行する低分解能化処理手段と、
前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値に対して動的閾値を設定する動的閾値設定手段と、
前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値と前記動的閾値とに基づき温度異常箇所を検出する異常検出手段と、
を備え、前記動的閾値設定手段は、横及び縦の画素数が予め決定された数の枠内の画素値の中央値を当該枠内における画素値の閾値とし、前記枠を1画素分ずつ横及び縦に移動して各画素についての閾値を設定する、トンネル壁面の損傷検出装置。
【請求項2】
前記トンネル壁面が升状ブロックにより形成されている場合に、熱画像を升状ブロックの凸部と凹部とに分離して前記低分解能化処理、動的閾値の設定、温度異常箇所の検出を行う、請求項1に記載のトンネル壁面の損傷検出装置。
【請求項3】
前記低分解能化処理手段は、平滑化フィルタにより画素値を平滑化する手段である、請求項1または2に記載のトンネル壁面の損傷検出装置。
【請求項4】
コンピュータを、
赤外線熱カメラの出力データを取得してトンネル壁面の熱画像を生成する熱画像生成 手段、
前記熱画像に対して低分解能化処理を実行する低分解能化処理手段、
前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値に対して動的閾値を設定する動的閾値設定手段、
前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値と前記動的閾値とに基づき温度異常箇所を検出する異常検出手段
して機能させ、前記動的閾値設定手段は、横及び縦の画素数が予め決定された数の枠内の画素値の中央値を当該枠内における画素値の閾値とし、前記枠を1画素分ずつ横及び縦に移動して各画素についての閾値を設定する、トンネル壁面の損傷検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会インフラの整備の重要性が認識されているが、トンネルの点検、整備も安全な交通の確保と使用可能期間の延長によるトータルコストの縮減を図る為に重要な項目の一つである。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、構造物の背後又は内部に冷媒又は熱媒を供給しながら、上記構造物の表面温度分布を赤外線サーモグラフィによって計測し、得られた熱画像の経時的変化を解析することにより構造物の健全性を推測する構造物の非破壊検査方法が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、コンクリート構造物の表面を加熱し、加熱後のコンクリート構造物の表面から放射される赤外線エネルギ量の変化(温度変化)を赤外線カメラで撮像し、その赤外線熱画像から得られた温度分布を集計、分析して、コンクリート構造物の健全部、異常箇所の識別、判定を行う方法が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、被測定物内の金属物体に熱を加える加熱手段と、上記加熱手段により加熱された上記金属物体からの熱画像情報をサーモグラフィ装置を介して導出し、該金属物体及び上記被測定物の熱伝導解析を行なうことで該金属物体の欠陥部位を得る熱伝導解析手段とを具備して成ることを特徴とするサーモグラフィ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−189410号公報
【特許文献2】特開2005−172664号公報
【特許文献3】特開2003−139731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の技術においては、いずれも測定対象物を加熱あるいは冷却する必要があり、迅速な測定が困難であるという問題があった。これは、トンネル内が一種の閉空間であり、トンネル壁面の温度はほぼ一定となっているので、壁面の損傷箇所(ひび割れ、壁面内部の空洞や滞水等の変状箇所)と損傷がない正常箇所との温度差が微少となるため、測定精度を上げるために測定対象物を加熱あるいは冷却し、損傷箇所と正常箇所との温度差を大きくする必要があるためである。
【0008】
本発明の目的は、測定対象物を加熱あるいは冷却しなくても、迅速且つ高精度にトンネル壁面の損傷箇所を検出することができるトンネル壁面の損傷検出装置及びトンネル壁面の損傷検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、トンネル壁面の損傷検出装置であって、赤外線熱カメラの出力データを取得してトンネル壁面の熱画像を生成する熱画像生成手段と、前記熱画像に対して低分解能化処理を実行する低分解能化処理手段と、前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値に対して動的閾値を設定する動的閾値設定手段と、前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値と前記動的閾値とに基づき温度異常箇所を検出する異常検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記トンネル壁面が升状ブロックにより形成されている場合には、熱画像を升状ブロックの凸部と凹部とに分離して前記低分解能化処理、動的閾値の設定、温度異常箇所の検出を行うのが好適である。
【0011】
また、上記低分解能化処理手段は、平滑化フィルタにより画素値を平滑化する手段であるのが好適である。
【0012】
また、上記動的閾値設定手段は、横及び縦の画素数が予め決定された数の枠内の画素値の中央値を当該枠内における画素値の閾値とし、前記枠を1画素分ずつ横及び縦に移動して各画素についての閾値を設定するのが好適である。
【0013】
本発明の他の実施形態は、トンネル壁面の損傷検出プログラムであって、コンピュータを、赤外線熱カメラの出力データを取得してトンネル壁面の熱画像を生成する熱画像生成手段、前記熱画像に対して低分解能化処理を実行する低分解能化処理手段、前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値に対して動的閾値を設定する動的閾値設定手段、前記低分解能化処理を行った熱画像の各画素値と前記動的閾値とに基づき温度異常箇所を検出する異常検出手段、前記予測手段が前記リスクの発生を予測したときに警報を発生する警報手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定対象物を加熱あるいは冷却しなくても、迅速且つ高精度にトンネル壁面の損傷箇所を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態にかかるトンネル壁面の損傷検出装置の構成例を示す図である。
図2】実施形態にかかるトンネル壁面の損傷検出装置を構成するデータ処理装置の例の機能ブロック図である。
図3】トンネルの内側壁面(トンネル内面)側に凹凸を有する升状ブロック及びその熱画像の例を示す図である。
図4】動的閾値の設定方法の例の説明図である。
図5】実施形態にかかるトンネル壁面の損傷検出装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0017】
図1には、トンネル壁面の損傷検出装置の構成例が示される。図1において、トンネル壁面の損傷検出装置は、赤外線熱カメラ100と、赤外線熱カメラ100の出力データを処理して、トンネル壁面の損傷箇所を検出するデータ処理装置200とを含んで構成されている。
【0018】
赤外線熱カメラ100は、撮影対象(本件ではトンネルの壁面)の表面から放射されている赤外線を検出し、赤外線のエネルギ量を表すデータを出力する。赤外線熱カメラ100は、車両に載値して、車両がトンネル内を走行する際にトンネル壁面を撮影する構成とすることができる。なお、使用者が赤外線熱カメラ100を持ってトンネル壁面を撮影する構成としてもよい。
【0019】
また、データ処理装置200は、赤外線熱カメラ100からの赤外線のエネルギ量を表す出力データを受け取り、このデータを処理することによりトンネル壁面の熱画像を生成し、この熱画像を解析してトンネル壁面の損傷箇所を検出する。解析処理については後述する。なお、データ処理装置200は、適宜なコンピュータにより実現することができる。
【0020】
図2には、本実施形態にかかるトンネル壁面の損傷検出装置を構成するデータ処理装置200の例の機能ブロック図の例が示される。図2において、データ処理装置200は、熱画像生成部10、低分解能化処理部12、動的閾値設定部14、異常検出部16、通信部18、記憶部20、画像領域分割部22及びCPU24を含んで構成されている。このデータ処理装置200は、CPU24、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU24とCPU24の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0021】
熱画像生成部10は、赤外線熱カメラ100が出力する、トンネル壁面における赤外線のエネルギ量を表すデータを取得し、トンネル壁面の熱画像を生成する。生成した熱画像は、記憶部20に記憶させる。
【0022】
低分解能化処理部12は、熱画像生成部10が生成した熱画像を記憶部20から読み出し、この熱画像に対して低分解能化処理を実行する。低分解能化処理後の熱画像も、低分解能化処理部12が記憶部20に記憶させる。ここで、低分解能化処理とは、熱画像の画素値(本例ではトンネル壁面の温度値)を平滑化する処理であり、平滑化フィルタを使用して実行される。これにより、微少な温度差しかないトンネル壁面の温度測定結果に含まれるノイズ成分を排除することができる。
【0023】
平滑化フィルタとしては、例えば移動平均フィルタ(平均化フィルタ)、ガウシアンフィルタ等が挙げられる。移動平均フィルタは、複数画素(例えば横縦が3×3=9画素、5×5=25画素等のウィンドウ枠)の画素値(温度値)を平均し、平均値を上記フィルタの中心画素(下記注目画素)の画素値とするフィルタである。また、ガウシアンフィルタは、注目画素と注目画素の周囲の画素(画素数としては、注目画素を中心として横縦が3×3=9画素、5×5=25画素等のウィンドウ枠)に、上記画素の位置に応じて重みをつけて(例えば、注目画素を一番大きい重みとし、注目画素に近い画素ほど重みを大きくする)計算した加重平均値を注目画素の画素値とするフィルタである。
【0024】
動的閾値設定部14は、低分解能化処理部12が低分解能化処理を行った熱画像を記憶部20から読み出し、この熱画像の各画素値に対して動的閾値を設定する。ここで、動的閾値とは、1画素毎に設定した閾値であり、画素毎に変化し得る閾値である。動的閾値の設定方法は後述する。また、設定した動的閾値は、動的閾値設定部14が記憶部20に記憶させる。
【0025】
異常検出部16は、低分解能化処理部12が低分解能化処理を行った熱画像と動的閾値設定部14が設定した動的閾値とを記憶部20から読み出し、上記熱画像の各画素値と動的閾値とに基づき、トンネル壁面の温度異常箇所を検出する。ここで、温度異常とは、熱画像の各画素値と動的閾値との差の絶対値が予め定めた範囲(以後、閾値範囲という)を外れた場合をいう。このようにして検出したトンネル壁面の温度異常箇所が損傷箇所(変状箇所)であると推定できる。検出した温度異常箇所のデータ(位置データ、壁面の温度データ等)は、記憶部20に記憶させるとともに、LCD等の適宜な表示手段に表示させる。
【0026】
通信部18は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介してCPU24が外部のサーバー等とデータをやり取りするために使用する。
【0027】
記憶部20は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記熱画像のデータ、低分解能化処理後の熱画像のデータ、動的閾値、温度異常箇所のデータ等の各種情報等、及びCPU24の動作プログラム等の、トンネル壁面の損傷検出装置が行う各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部20としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部20には、主としてCPU24の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU24が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0028】
画像領域分割部22は、トンネル壁面の熱画像を記憶部20から読み出し、この熱画像を予め設定した条件に基づき、複数の領域に分割する。例えば、トンネル壁面が、図3(a)、(b)に示される升状ブロックで形成されている場合等には、熱画像を壁面の凸領域と凹領域とに分割する。升状ブロックでは、凸部と凹部とでコンクリートの厚さが異なるため、背面が同じ温度の土に接していても、凸部と凹部の表面(土に接している面と反対の表面)で温度差が発生しやすい。そこで、画像領域分割部22より熱画像を壁面の凸領域と凹領域とに分割し、これらの領域毎に上記低分解能化処理部12、動的閾値設定部14及び異常検出部16の処理を実行する。これにより、温度異常箇所の検出精度をより向上させることができる。
【0029】
図3(a)、(b)には、トンネルの内側壁面(トンネル内面)側に凹凸を有する升状ブロック及びその熱画像の例が示される。図3(a)が升状ブロックの平面図であり、図3(b)が升状ブロックの表面の熱画像である。なお、図3(a)、(b)とも升状ブロック4個分が示されているが、これはトンネル壁面に設置された升状ブロックの一部を示しているものである。
【0030】
図3(a)において、升状ブロックは底面を形成する凹部Bと凹部Bを囲む周縁を形成する凸部Cとで構成されており、凹部Bの厚さは凸部Cの厚さより薄くなっている。ここで、厚さとは、紙面の表裏方向の厚さである。このため、升状ブロックによりトンネルの壁面を形成した場合には、凹部Bの表面温度(トンネルの内部側表面の温度)が凸部Cの表面温度より、升状ブロックが上記トンネルの内部側表面と反対側の表面で接するトンネル周囲の土の温度に近くなる。このため、凹部Bの表面温度と凸部Cの表面温度とに差が出る。
【0031】
図3(b)に示されるように、升状ブロックの凹部Bと凸部Cとに発生した表面温度の差が、熱画像の色の濃淡として表現される。画像領域分割部22は、図3(b)に示された熱画像のデータに対して、例えば大津の判別分析法等を使用して熱画像中の凹部Bと凸部Cとに対応する領域を分離する。なお、図3(b)に示される熱画像は、熱画像生成部10が生成した熱画像でもよいし、低分解能化処理部12が低分解能化処理を行った後の熱画像でもよい。
【0032】
図4には、動的閾値の設定方法の例の説明図が示される。図4において、動的閾値設定部14が、記憶部20から読み出した熱画像26の左上にウィンドウ枠(移動テンプレート)28を設定する。ウィンドウ枠28の大きさ(横及び縦の画素数)は適宜決定できるが、本例では、横縦が120×60画素の大きさのウィンドウ枠28が例示されている。
【0033】
動的閾値設定部14は、上記ウィンドウ枠28に含まれる全画素の画素値から中央値を求め、この中央値をウィンドウ枠の中心画素の画素値として設定し、記憶部20に記憶させる。続いて、動的閾値設定部14は、上記ウィンドウ枠28を、図3の右方向に1画素ずつ移動させ、得られる中央値を各ウィンドウ枠の中心画素値として設定して行き、閾値マップを作成する。このような手順により、各画素に対する動的閾値が設定される。なお、上記方法では、熱画像の外周領域(120×60の枠では、左右60画素の列、上下30画素の行)には閾値が設定されない。
【0034】
図5には、本実施形態にかかるトンネル壁面の損傷検出装置の動作例のフロー図が示される。図5において、熱画像生成部10が赤外線熱カメラ100の出力データを取得してトンネル壁面の熱画像を生成し、記憶部20に記憶させると(S1)、低分解能化処理部12が、その熱画像を記憶部20から読み出し、熱画像に対して低分解能化処理を実行する(S2)。低分解能化処理を実行した熱画像は、記憶部20に記憶させる。
【0035】
次に、画像領域分割部22は、測定対象であるトンネル壁面が、升状ブロック等の凹凸がある物であるか否かを判断する(S3)。なお、この判断は、使用者が外部からトンネル壁面のタイプに関する情報を入力することにより行うことができる。
【0036】
トンネル壁面に凹凸がある場合(S3においてY)には、画像領域分割部22がトンネル壁面の熱画像(低分解能化処理後の熱画像)を記憶部20から読み出し、この熱画像を凸領域と凹領域とに分割し、記憶部20に記憶させる。
【0037】
一方、トンネル壁面に凹凸がない場合(S3においてN)には、画像領域分割部22は上記分割処理を実行しない。
【0038】
次に、動的閾値設定部14は、熱画像を記憶部20から読み出し、この熱画像の各画素値に対して動的閾値を設定する(S5)。なお、動的閾値設定部14が記憶部20から読み出す熱画像は、S3においてYの場合には画像領域分割部22が上記分割処理を行った熱画像であり、S3においてNの場合には画像領域分割部22が上記分割処理を行っていない(低分解能化処理部12が低分解能化処理を行っただけの)熱画像である。
【0039】
異常検出部16は、動的閾値設定部14が記憶部20から読み出した熱画像と動的閾値設定部14が設定した動的閾値との差が、上記閾値範囲を超えるか否かに基づき、トンネル壁面の温度異常箇所を検出する(S6)。閾値範囲を超える場合には温度異常箇所と判断し、閾値範囲以内である場合には正常と判断する。
【0040】
以上のステップにより検出した温度異常箇所がトンネル壁面の損傷箇所であると推定されるので、異常検出部16は、温度異常箇所を表す画像を生成して適宜な表示手段に表示する構成とするのが好適である。また、上記温度異常箇所を表す画像は、通信部18を介して、外部に送信する構成としてもよい。
【0041】
上述した、図5の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【0042】
本実施形態では、上述したように、低分解能化処理によりトンネル壁面の温度測定結果に含まれるノイズ成分を排除するとともに、温度異常箇所の検出に動的閾値を使用して、トンネル壁面の温度測定結果(赤外線熱カメラ100の出力データ)のゆらぎ(白色ノイズ)の影響を排除することができる。これにより、トンネル壁面を加熱あるいは冷却しなくても、トンネル壁面の温度異常箇所(トンネル壁面の損傷箇所)を迅速且つ高精度に検出することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 熱画像生成部、12 低分解能化処理部、14 動的閾値設定部、16 異常検出部、18 通信部、20 記憶部、22 画像領域分割部、24 CPU、26 熱画像、28 ウィンドウ枠、100 赤外線熱カメラ、200 データ処理装置。
図1
図2
図3
図4
図5