(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一方の漏洩同軸ケーブルによりカバーされる通信エリアの境界ラインと、前記他方の漏洩同軸ケーブルによりカバーされる通信エリアの境界ラインとが互いに接するように、前記一方の漏洩同軸ケーブルと前記他方の漏洩同軸ケーブルとの間の間隔が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1に示す無線通信システム100及びその設計方法について説明する。なお、
図1は、無線通信システム100が構築された複層階建物200を示す斜視図である。
【0025】
本実施形態の無線通信システム100は、
図1に示すように、例えばオフィスビルなどの複層階建物200において、各階のフロア201の間を貫通した状態で、互いに並行する複数の漏洩同軸ケーブル(以下、LCXという。)1を高さ方向(縦方向)に敷設することによって、建物全体に無線LAN通信環境を構築するものである。
【0026】
ここで、本実施形態で用いられるLCX1について、
図2を参照して説明する。なお、
図2は、本実施形態で用いられるLCX1の断面構造を示す斜視図である。
【0027】
LCX1は、
図2に示すように、線状の中心導体2と、中心導体2を同心円状に被覆する絶縁体3と、絶縁体3を同心円状に覆うと共に、延長方向に周期的に並ぶ複数のスロット4が開口して設けられた外部導体5と、外部導体5を同心円状に被覆するシース6とを有している。
【0028】
中心導体2及び外部導体5には、伝送損失を低く抑えるために電気抵抗の低い銅が多く用いられているが、アルミニウムや銀などが用いられることもある。また、中心導体2として、銅被覆アルミニウム線を用いてもよい。また、中心導体2は、単線又は撚り線であってもよい。絶縁体3には、高周波帯域での伝送損失の低減を目的に誘電体損失(tanδ)の低いポリエチレンが用いられている。さらに、tanδを低くするために、絶縁体3の内部に細かな気泡を含む発泡性のポリエチレンが用いられてもよい。シース6は、LCX1への外傷を防止するため、ポリエチレンや塩化ビニル、難燃性のポリエチレンなどが用いられている。また、耐熱型のLCX1として、仮に燃焼しても中心導体2と外部導体5とが直ちに短絡しないように、絶縁体3の周囲にガラス繊維製のテープを巻き付けた構造(図示せず。)を採用してもよい。
【0029】
複数のスロット4は、LCX1の延長方向において一定のピッチPで直線状に並んで配置されると共に、それぞれが同じ方向に向かって開口している。スロット4の形状については、特に限定されるものではなく、例えば丸孔であっても長孔でもよい。本実施形態では、ジグザグ型のスロット4として、延長方向に対して斜めとなる長孔が、その斜めとなる向きを交互に変えながら並んで配置されている。また、垂直型のスロット4として、延長方向に対して垂直となる長孔が並んで配置された構成(図示せず。)としてもよい。
【0030】
また、LCX1は、
図3に示すように、このLCX1を支持する支持線7と共通のシース6により一体に被覆された構造を有していてもよい。なお、
図3は、支持線7と一体化されたLCX1の断面構造を示す
平面図である。
【0031】
本実施形態の無線通信システム100では、
図4に示すように、LCX1の一端側又は他端側をアクセスポイント(以下、APという。)50に接続することによって、LCX1が無線LANアクセスポイント用のアンテナ(ケーブル型アンテナ)として機能する。具体的に、LCX1の一端(又は他端)側には、AP50のアンテナ端子に接続するためのコネクタ8が取り付けられている。また、LCX1の他端(又は一端)側には、終端抵抗9が取り付けられている。
【0032】
本実施形態の無線通信システム100では、
図1及び
図4に示すように、LCX1のコネクタ8とAP50のアンテナ端子との間を接続用ケーブル20を介して接続している。また、本実施形態の無線通信システム100では、分配器30を介して2本以上のLCX1をAP50に接続する構成としてもよい。
【0033】
AP50は、通信ケーブル40を介してハブ(HUB)31に接続され、更にハブ31から上位回線(図示せず。)に接続されている。なお、本実施形態の無線通信システム100では、ハブ(HUB)31に替えて、ルータを使用してもよい。
【0034】
通信ケーブル40については、例えば、ANSI/TIA/EIA−568、ISO/IEC 11801、又はJIS X 5150に準拠するカテゴリー5、カテゴリー6、カテゴリー6A、カテゴリー7のLANケーブルなどを用いることができる。
【0035】
また、本実施形態の無線通信システム100では、
図5に示すように、LCX1と通信ケーブル40とが一体化された複合ケーブル60を用いてもよい。複合ケーブル60は、LCX1と通信ケーブル40とが互いに並列した状態で共通のシース6により一体に被覆された構造を有している。
【0036】
具体的に、シース6は、通信ケーブル40側を被覆する第1の被覆部6aと、LCX1側を被覆する第2の被覆部6bと、第1の被覆部6aと第2の被覆部6bとを連結する連結部6cとを有している。
【0037】
本実施形態の複合ケーブル60では、LCX1の複数のスロット4が通信ケーブル40に向かう方向とは異なる方向に向かって開口している。特に、複数のスロット4は、通信ケーブル40に向かう方向とは反対方向に向かって開口していることが好ましい。これにより、本実施形態の複合ケーブル60では、LCX1のスロット4側に通信ケーブル40が重なることがないため、スロット4を通して送受信される電磁波が通信ケーブル40によって遮られず、LCX1のアンテナ性能に通信ケーブル40が悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0038】
また、一般的なLCXでは、外部導体を被覆するシースによりスロットの位置を確認することができない。これに対して、本実施形態の複合ケーブル60では、LCX1と通信ケーブル40との位置関係から、第2の被覆部6bで被覆されたスロット4の位置を認識することができる。
【0039】
ここで、複合ケーブル60では、AP50と接続する側の端部において、LCX1側の端部よりも通信ケーブル40側の端部の方が長いことが好ましい。この場合、通信ケーブル40は、LCX1よりも曲げ剛性が低く曲げ易いことから、この通信ケーブル
40側の端部を長くすることで、AP50との接続が容易となる。
【0040】
一方、LCX1は、通信ケーブル40よりも曲げ剛性が高く曲げ難いことから、LCX1とAP50との間は、上述したLCX1よりも曲げ剛性の低い(曲げ易い)接続用ケーブル20を介して接続すればよい。なお、接続用ケーブル20は、必ずしも必須な構成ではなく、LCX1のコネクタ8をAP50に直接接続できる場合は省略することも可能である。
【0041】
LCX1とAP50との接続形態は、ARIB標準規格において、ARIB STD−T33、ARIB STD−T66、ARIB STD−T71等に定められている。また、LCX1とAP50との接続形態としては、
図6(a)〜(c)に示す接続形態を例示することができる。なお、
図6(a)〜(c)は、LCX1とAP50との接続形態の例を示す平面図である。
【0042】
具体的に、
図6(a)に示す接続形態は、1つのAP50に1本のLCX1を接続した「単一構成」である。一方、
図6(b)に示す接続形態は、1つのAP50に分配器30を介して複数(本実施形態では2本)のLCX1を接続した「分岐構成」である。一方、
図6(c)に示す接続形態は、1つのAP50に複数のLCX1を直列に接続した「グレーディング構成」である。
【0043】
ここで、1台のAP50についてLCX1を接続した構成を1システムと定義すると、1システムのLCX1から放射される電波の強度が所定値以上となる領域(以下、単に「通信エリア」という。)は、LCX1の長さに依存することになる。LCX1の長さは、このLCX1の伝送損失によって制限される。すなわち、LCX1の伝送損失が大きい場合は、LCX1の使用限界長が短くなる。逆に、LCX1の伝送損失が小さい場合は、LCX1の使用限界長が長くなる。したがって、無線通信システム100におけるシステム長は、LCX1の特性により制限される。
【0044】
単一構成の無線通信システム100におけるシステム長の一例を示すと、LCX1が5D(Dの前の数字は絶縁体3の概略外径[単位:mm]を示す。)サイズの場合のシステム長は約30m、10Dサイズの場合のシステム長は約70m、20Dサイズの場合のシステム長は約110mである。一方、分岐構成の無線通信システム100におけるシステム長の一例を示すと、LCX1が5Dサイズの場合のシステム長は約40m、10Dサイズの場合のシステム長は約110m、20Dサイズの場合のシステム長は約150mである。
【0045】
また、10Dサイズの場合、20Dサイズの場合、33Dサイズの場合のそれぞれについて、LCX1のケーブル断面視における指向性をシミュレーションにより計算した結果を
図7、
図8、
図9に示す。なお、
図7、
図8、
図9に示すグラフにおいて、円周軸は角度、縦軸は正規化した放射強度の変動(dB)を示す。また、本シミュレーションで使用した周波数は2.4GHzである。また、
図7に示す10Dサイズの場合におけるLCX1の外径は約16mm、
図8に示す20Dサイズの場合におけるLCX1の外径は約29mm、
図9に示す33Dサイズの場合におけるLCX1の外径は約41mmである。
【0046】
図7、
図8及び
図9に示すように、LCX1は、サイズが大きくなるほど、ケーブル断面視における指向性が強くなることがわかる。
【0047】
ところで、AP50に接続されたLCX1では、
図4に示すように、その基端(入力端末)側から先端(反対端末)側に向かうほど、このLCX1によりカバーされる通信エリアWが狭くなる。
【0048】
ここで、通信エリアWとは、無線通信システム100で使用される通信機器において、通信可能な電波強度の最小値を境界ラインとして、この境界ラインの内側の通信可能な領域のことを言う。すなわち、この通信エリアWは、通信機器が無線通信を行うのに必要な電波強度を満たす領域である。LCX1によりカバーされる通信エリアWは、上述したLCX1の長さに依存するため、AP50との接続位置からLCX1の先端に向かって狭くなっている。
【0049】
そこで、本実施形態の無線通信システム100及びその設計方法では、
図10、
図11及び
図12に示すように、複数のLCX1のうち、互いに隣り合う一方のLCX1(以下、第1のLCX1Aという。)の一端側と、他方のLCX1(以下、第2のLCX1Bという。)の他端側とに、それぞれAP50を接続し、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとが、少なくとも第1のLCX1Aと第2のLCX1Bと間の通信エリアをカバーするように、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間の間隔Dを設定している。
【0050】
なお、
図10は、複層階建物200の各フロア201内における第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの通信エリアW1,W2を模式的に示す側面図である。
図11は、複層階建物200の最下階における第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの通信エリアW1,W2を模式的に示す平面図である。
図12は、複層階建物200の最上階における第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの通信エリアW1,W2を模式的に示す平面図である。
【0051】
以下の説明では、第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアを、第1のLCX1Aの通信エリアW1とし、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアを、第2のLCX1Bの通信エリアW2として、第1のLCX1Aの通信エリアW1と第2のLCX1Bの通信エリアW2とでカバーされる通信エリアについて説明するものとする。
【0052】
また、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間の間隔Dとは、互いに隣り合うLCX1のうち、最も至近な位置関係にあるLCX1A,1Bの間の距離のことを言う。そして、以下の説明では、その一方のLCX1を第1のLCX1Aとし、他方のLCX1を第2のLCX1Bとして区別するものとする。
【0053】
本実施形態の無線通信システム100及びその設計方法では、
図10、
図11及び
図12に示すように、複数のLCX1のうち、各第1のLCX1Aの一端側に接続されたAP50が最下階に設置され、各第2のLCX1Bの他端側に接続されたAP50が最上階に設置されている。また、最上階に設置されたAP50は、各階のフロア201の間を貫通した状態で敷設された通信ケーブル40を介して最下階側に設定されたハブ31(又はルータ)に接続されている。したがって、最上階に設置されたAP50には、上述したLCX1(第2のLCX1B)と通信ケーブル40とが一体化された複合ケーブル60を接続して用いることができる。
【0054】
この場合、第1のLCX1Aの通信エリアW1は、最下階から最上階に向かって狭くなっている。逆に、第2のLCX1Bの通信エリアW2は、最上階から最下階に向かって狭くなっている。したがって、互いの通信エリアW1,W2を重ね合わせるのに必要な重複エリアを小さくできるため、互いに隣り合う第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間の間隔Dを大きく確保することが可能である。
【0055】
一方、本実施形態の無線通信システム100との比較を行うため、
図13、
図14及び
図15に示す比較例となる無線通信システム100’について説明する。なお、
図13、
図14及び
図15は、比較例となる無線通信システム100’である。
図13、
図14及び
図15は、本実施形態の無線通信システム100について示した
図10、
図11及び
図12に各々対応した図面である。
【0056】
以下の説明では、第1のLCX1A’によりカバーされる通信エリアを、第1のLCX1A’の通信エリアW1’とし、第2のLCX1B’によりカバーされる通信エリアを、第2のLCX1B’の通信エリアW2’として、第1のLCX1A’の通信エリアW1’と第2のLCX1B’の通信エリアW2’とでカバーされる通信エリアについて説明するものとする。
【0057】
また、第1のLCX1A’と第2のLCX1B’との間の間隔D’とは、互いに隣り合うLCX1のうち、最も至近な位置関係にあるLCX1A’,1B’の間の距離のことを言う。そして、以下の説明では、その一方のLCX1を第1のLCX1A’とし、他方のLCX1を第2のLCX1B’として区別するものとする。
【0058】
比較例となる無線通信システム100’は、
図13、
図14及び
図15に示すように、複数のLCX1’のうち、互いに隣り合う第1のLCX1A’の一端側と、第2のLCX1B’の一端側とに、それぞれAP50を接続し、第1のLCX1A’の通信エリアW1’と、第2のLCX1B’の通信エリアW2’とが互いに重なり合うように、第1のLCX1A’と第2のLCX1B’との間の間隔D’を設定した場合である。
【0059】
このため、比較例となる無線通信システム100’では、複数のLCX1’のうち、各第1のLCX1A’の一端側に接続されたAP50と、各第2のLCX1B’の一端側に接続されたAP50とが、それぞれ最下階(同一階)に設置されている。
【0060】
この場合、第1のLCX1A’の通信エリアW1’と、第2のLCX1B’の通信エリアW2’とは、それぞれ最下階から最上階に向かって狭くなっている。したがって、不感地帯が生じないように互いの通信エリアW1’,W2’を重ね合わせるためには、最上階側の狭い通信エリアW1’,W2’に合わせて、互いに隣り合う第1のLCX1A’と第2のLCX1B’との間の間隔D’を互いに近づける方向に調整しなければならない。
【0061】
その結果、最下階では逆に、互いの通信エリアW1’,W2’を重ね合わせた重複エリアが大きくなってしまい、それぞれの通信エリアW1’,W2’を効率良く利用することができなくなる。また、複層階建物200の建物全体に無線LAN通信環境を構築するのに必要なLCX1’の使用本数も増加してしまう。
【0062】
以上のように、本実施形態の無線通信システム100及びその設計方法では、上述した互いに隣り合う第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間の間隔Dを大きく確保しながら、互いの通信エリアW1,W2を重ね合わせるのに必要な重複エリアを小さくできるため、それぞれの通信エリアW1,W2を効率良く利用することが可能である。また、複層階建物200の建物全体に無線LAN通信環境を構築するのに必要なLCX1の使用本数も削減することが可能である。したがって、AP50の設置台数を削減できるため、システム全体の導入コストを低減することが可能である。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記無線通信システム100及びその設計方法では、
図16に示すように、複数のLCX1のうち、各第1のLCX1Aの一端側に接続されたAP50と、各第2のLCX1Bの他端側に接続されたAP50とが、それぞれ同一階(本実施形態では最下階)に設置された構成とすることも可能である。
【0064】
この場合、最上階に位置する各第2のLCX1Bの他端側と、最下階に設置されたAP50との間を接続用ケーブル20を介して接続する。また、図示を省略するものの、LCX1(第2のLCX1B)と接続ケーブル20とが一体化された複合ケーブルを接続して用いてもよい。
【0065】
図16に示す構成の場合、最下階に複数のAP50をまとめて設置できるため、AP50の取付作業やメンテナンス作業の点で有利となる。
【0066】
また、上記実施形態では、通信ケーブル40としてLANケーブルを用いた構成となっているが、それ以外にも様々な通信ケーブルを用いることができる。例えば、LANケーブル以外の通信ケーブルとしては、光ケーブルや同軸ケーブルなどを挙げることができる。これらの通信ケーブルをAP50に接続する場合は、AP50に直接接続することができないため、メディアコンバータなどを用いて、LANケーブルに変換した後、AP50に接続することが可能である。
【0067】
また、本発明を適用した無線通信システム及びその設計方法は、上述した無線LAN環境を構築する場合に限定するものではなく、LCX1を使った無線通信全般に適用可能である。このため例えば無線LANとは異なる用途、周波数帯域、敷設形態(例えば建物の外部であったり、横方向に敷設する場合など。)であっても、同様の効果を得ることが可能である。
【0068】
また、本発明を適用した無線通信システム及びその設計方法は、例えば、ビル向けエネルギー監視システム(BEMS:Building Energy Management System)や住宅向けエネルギー監視システム(HEMS:Home Energy Management System)などのエネルギー監視システム(EMS)を構築する場合にも適用可能である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0070】
(第1の実施例)
第1の実施例では、
図17に示すような標準モデルを設定した。
図17は、(X,Y)=(0,0)を原点とするX−Y座標系を示しており、この座標系に第1のLCX1Aと第2のLCX1Bを互いに平行に配置したものである。第1のLCX1Aは長さがH(m)であり、一端が原点、他端が座標(0,H)に位置し、原点から座標(0,H)までY軸に沿って配置されている。第2のLCX1Bも長さはH(m)であり、その一端が座標(D,0)に、他端が座標(D,H)に位置し、X=Dの線上に沿って配置されている。第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとは互いに隣り合う位置関係であり、双方の間隔は、D(m)である。
【0071】
第1のLCX1Aの信号源は原点(0,0)であり、原点(0,0)から座標(0,H)に向けて信号が入力される。第2のLCX1Bの信号源は(D,H)であり、座標(D,H)から座標(D,0)に向けて信号が入力される。したがって、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bに対する信号の入力方向は、
図17中の矢印で示すように、互いに逆方向である。
【0072】
このようなモデルにおいて、以下のパラメータを設定した。
<パラメータ>
Pd(dBm):座標P(X,Y)における第1のLCX1Aから放射された電波の強度。
Pu(dBm):座標P(X,Y)における第2のLCX1Bから放射された電波の強度。
P
in(dB):第1のLCX1A及び第2のLCX1Bへ入力される信号のパワー。
P
CL(dB):第1のLCX1A及び第2のLCX1Bから1.5m離れた地点における結合損失。
α(dB/m):第1のLCX1A及び第2のLCX1Bの伝送損失。
【0073】
理想空間において、第1のLCX1Aの座標Pにおける電波強度は、下記式(1)で表される。
【0074】
【数1】
【0075】
一方、第2のLCX1Bの座標Pにおける電波強度は、下記式(2)で表される。
【0076】
【数2】
【0077】
ここで、上記式(1),(2)を各々整理すると、下記式(3),(4)となる。
【0078】
【数3】
【0079】
【数4】
【0080】
良好な無線LAN通信を行うための条件は、送受信するデータの種類や大きさ、受信限界の電波強度により異なる。本実施例では、通信機器が通信可能な電波強度の最小値が−70dBmである場合を一例として挙げて説明する。すなわち、本実施例では、電波強度が−70dBm以上である領域を通信エリアとして定義する。
【0081】
具体的に、本実施例では、座標Pにおける電波強度Pd,Puを−70dBmと仮定し、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間の間隔D(m)を、100、50、20として変化させたときの通信エリアを計算した。その計算結果を
図18、
図19、
図20に示す。なお、本計算で使用した第1のLCX1A及び第2のLCX1Bは、10DサイズのLCXとし、各パラメータは、以下のように設定した。
H=70m
P
in=+5dBm
P
CL=58dB
α=0.18dB/m
【0082】
図18は、X=0の位置に第1のLCX1Aが配置され、X=100の位置に第2のLCX1Bが配置された場合であり、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間隔Dは、100mである。
【0083】
図18に示すように、D=100mの場合には、第1のLCX1Aの通信エリアW1と、第2のLCX1Bの通信エリアW2とが重複しなかった。この場合、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間で通信環境が不安定となる。
【0084】
図19は、X=0の位置に第1のLCX1Aが配置され、X=50の位置に第2のLCX1Bが配置された場合である。第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間隔Dは、50mである。
【0085】
図19に示すように、D=50mの場合には、第1のLCX1Aの通信エリアW1と、第2のLCX1Bの通信エリアW2とが重複する領域と、重複しない領域とが発生する。この場合、重複する領域では良好な通信環境となるが、重複しない領域では通信環境が不安定となる。
【0086】
図20は、X=0の位置に第1のLCX1Aが配置され、X=20の位置に第2のLCX1Bが配置された場合である。第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間隔Dは、20mである。
【0087】
図20に示すように、D=20mの場合には、第1のLCX1Aの通信エリアW1と、第2のLCX1Bの通信エリアW2とが全ての領域で重複し、不感地帯
が無い状態となる。この場合、全ての領域で良好な通信環境となるものの、第1のLCX1Aの通信エリアW1と第2のLCX1Bの通信エリアW2とを有効に利用しているとは言えない。
【0088】
以上の計算結果から、第1のLCX1Aの通信エリアW1と、第2のLCX1Bの通信エリアW2とが全ての領域で存在し、且つ、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの間の間隔Dが最大となる条件を求める。具体的には、第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアW1の境界ラインと、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアW2の境界ラインとが互いに接する場合の間隔Dを求める。これにより、不感地帯が生じることなく、全ての領域で良好な通信環境が得られる間隔Dの最適条件を求めることができる。
【0089】
間隔Dの最適条件を求めるため、上記式(3),(4)において、第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアW1の境界ラインと、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアW2の境界ラインとが互いに接する条件を下記(5),(6)により求めた。
【0090】
【数5】
【0091】
【数6】
【0092】
なお、式(5),(6)中に示すAは、下記式(7)に示すとおりである。
【0093】
【数7】
【0094】
上記式(5),(6)を微分すると、下記式(8),(9)となる。
【0095】
【数8】
【0096】
【数9】
【0097】
第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアW1の境界ラインと、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアW2の境界ラインとの接点のX座標をtとすると、下記式(10)の関係が得られる。
【0098】
【数10】
【0099】
これにより、第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアW1の境界ラインと、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアW2の境界ラインとが互いに接する場合の間隔Dを下記式(11)により求めることができる。
【0100】
【数11】
【0101】
一方、上記
式(5),(6)は、共通の接点を持つため、下記式(12)の関係が成り立つ。
【0102】
【数12】
【0103】
したがって、上記式(11),(12)から、tを消去して整理すると、下記式(13)が得られる。
【0104】
【数13】
【0105】
上記式(13)から、第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアW1の境界ラインと、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアW2の境界ラインとが互いに接する場合の間隔Dを計算により求めることができる。
【0106】
その結果、上記パラメータの条件では、D=35.2mのときに、第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアW1の境界ラインと、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアW2の境界ラインとが互いに接することがわかった。そのときの第1のLCX1Aの通信エリアW1と、第2のLCX1Bの通信エリアW2とを計算した結果を
図21に示す。
【0107】
次に、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bに対して互いに逆方向から信号を入力した場合の第1のLCX1Aによりカバーされる通信エリアW1の境界ラインと、第2のLCX1Bによりカバーされる通信エリアW2の境界ラインとが互いに接する間隔Dを、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bの長さH(m)を変更して計算した結果を
図22に示す。また、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bに対して互いに同一方向から信号を入力した場合について、同様に計算した結果を
図22に示す。
【0108】
図22に示すように、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bの長さHが、例えば50mのとき、互いに同一方向から信号を入力した場合は、間隔Dを18.9m以下とする必要がある。これに対して、互いに逆方向から信号を入力した場合は、間隔Dを53.3m以下とすればよい。
【0109】
次に、
図22に示す結果から、互いに同一方向から信号を入力した場合の間隔Dに対する互いに逆方向から信号を入力した場合の間隔Dの比率を計算した結果を
図23に示す。
【0110】
図23に示すように、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bの長さHが長くなるほど、その比率が大きくなることがわかる。10DサイズのLCXの場合、最大使用長は70mであるが、H=70mの場合の比率は、約4.3倍となっている。また、
図22示すように、H=70mの場合の間隔Dは、約35.2mである。
【0111】
以上のように、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとを互いに並行した状態で縦方向に敷設した場合に、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bに対して互いに逆方向から信号を入力することで、全ての領域で良好な通信環境が得られる間隔Dを広げることが可能である。これにより、1フロア当たりのLCX1の敷設密度を下げることでき、システム全体のコストを安価にすることが可能である。
【0112】
(第2の実施例)
第2の実施例では、上記
図10,11,12に示す実施例となる無線通信システム100と、上記
図13,14,15に示す比較例となる無線通信システム100’とについて、複層階建物200のフロア201内における電波強度を測定し、その強度分布についての評価を行った。
【0113】
具体的には、
図24に示すように、9階建ての建物200において、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bに対して逆方向から信号を入力した場合(実施例の無線通信システム100)と、第1のLCX1A’及び第2のLCX1B’に対して同一方向から信号を入力した場合(比較例の無線通信システム100’)の電波強度を3階と9階で測定し、その強度分布をグラフ化した。
【0114】
なお、
図24では、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bに対して逆方向から信号を入力した場合(実施例)を
図24中の右側に示し、第1のLCX1A’及び第2のLCX1B’に対して同一方向から信号を入力した場合(比較例)を
図24中の左側に示している。
【0115】
図24中の右側に示すように、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bに対して逆方向から信号を入力した場合(実施例)は、第1のLCX1A’及び第2のLCX1B’に対して同一方向から信号を入力した場合(比較例)に比べて、各階のフロア201における電波強度に差が少ないことがわかる。これは、3階と9階において第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの互いの通信エリアW1,W2を重ねた重複エリアがほぼ等しくなっているためと考えられる。
【0116】
これに対して、
図24中の左側に示すように、第1のLCX1A’及び第2のLCX1B’に対して同一方向から信号を入力した場合(比較例)は、3階において、第1のLCX1A’と第2のLCX1B’との中間で電波強度が高くなる領域が発生している。これは、第1のLCX1A’と第2のLCX1B’との互いの通信エリアW1’,W2’を重ね合わせた重複エリアが大きくなるためと考えられる。
【0117】
そして、9階においては、第1のLCX1A’と第2のLCX1B’との中間で電波強度が低くなる領域が発生している。これは、第1のLCX1A’と第2のLCX1B’との互いの通信エリアW1’,W2’が重ならない領域が発生したためと考えられる。
【0118】
以上のように、第1のLCX1A及び第2のLCX1Bに対して逆方向から信号を入力した場合(実施例)は、第1のLCX1A’及び第2のLCX1B’に対して同一方向から信号を入力した場合(比較例)に比べて、複層階建物200の各フロア201において、第1のLCX1Aと第2のLCX1Bとの互いの通信エリアW1,W2を効率良く利用することが可能である。