(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る基礎杭の設置方法について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0015】
図1及び
図2は、本実施形態に係る基礎杭の設置方法を説明するための図である。
最初に、
図1(a)に示されるように、地面20における基礎を設置する箇所の上に円管状の基礎杭31を立設すると共に、基礎杭31の上方に打ち込み部材10を配置する。
ここで、打ち込み部材10は、基礎杭31の上端の円形状の開口33の幅(直径)D1よりも小さな幅(直径)D2の幅狭部12を下端に有すると共に開口33よりも大きな幅(直径)D3の幅広部11を幅狭部12の上方に有する治具である。幅狭部12及び幅広部11は共に円盤状の板材であり、主面が平行になるように配置された状態で連結されている。
【0016】
また、打ち込み部材10は、さらに、幅狭部12及び幅広部11の間に配置され、幅狭部12及び幅広部11の重心同士を連結する棒材13と、幅広部11の上方に配置され、下端が幅広部11と連結された棒材14とを有している。棒材13は、幅狭部12の幅D2と比較して更に小さい径を持つため、幅狭部12と共に基礎杭31の上端の開口33内に挿入可能である。棒材14は、打ち込み部材10を所定の位置に配置する際に、作業者が手で掴む把持部である。なお、棒材13及び14は、別々の棒材ではなく、幅広部11を貫通する1つの棒材とされてもよい。
【0017】
次に、
図1(b)に示されるように、基礎杭31の上端の開口33内に、打ち込み部材10の幅狭部12及び棒材13を挿入し、幅広部11の周縁が基礎杭31の上端に引っ掛かるまで下方に向かって押し入れる。この引っ掛かった状態では、幅広部11の下面が基礎杭31上端の開口端面に当接して基礎杭31の上端の開口33が幅広部11で蓋されている。そして、幅狭部12は、基礎杭31の下端の開口から突き出ることなく基礎杭31内に位置し、基礎杭31内の空間を上部空間及び下部空間の2つに隔てている。
【0018】
次に、
図1(c)及び
図1(d)に示されるように、打ち込み部材10の棒材14の上端をハンマー等の工具30により下方に向けて叩いて、打ち込み部材10の幅広部11を基礎杭31上端の開口端面に押し付けることにより、基礎杭31を地面20に押し付けて打ち込む。そして、基礎杭31の上端部32が少しだけ地面20から突き出た状態となったときに(
図1(d))、基礎杭31の打ち込みを終える。なお、幅広部11を把持して打ち込み部材10を所定の位置に配置できる場合、打ち込み部材10に棒材14は設けられなくてもよく、この構成においては工具30により幅広部11の上面が叩かれて基礎杭31の打ち込みが行われる。
【0019】
ここで、基礎杭31の打ち込みにおいて、基礎杭31が地中の深くに侵入するにしたがって基礎杭31の下端の開口より地中の土が基礎杭31内に徐々に侵入していく。しかしながら、
図1(c)に示されるように、地中の土が幅狭部12まで侵入すると、侵入した土を幅狭部12が下方に押さえ付けるため、地中の土はこれ以上基礎杭31内に侵入しなくなる。その結果、
図1(d)に示されるように、地面20への打ち込みが終了した基礎杭31において、基礎杭31内の幅狭部12で隔たれた下部空間及び上部空間のうち下部空間は全て地面20より下方に位置して地中の土で充填される一方、上部空間は一部が地面20より下方に位置して地中の土で充填されない。
また、基礎杭31の打ち込みにおいて、打ち込み部材10の幅広部11は、基礎杭31上端の開口端面に強く押し付けられる。従って、この押し付けにより大きな打撃音が発生したり、基礎杭31上端の開口端面が損傷を受けたりしないよう、幅広部11の基礎杭31上端の開口端面と当接する下面は、樹脂等の弾性や可撓性を有する軟性の材料により構成されることが好ましい。
【0020】
次に、
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、基礎杭31内から打ち込み部材10を引き抜いた後、基礎杭31の地面20から突き出た上端部32に、上方から被せるようにキャップ41を嵌め込む。
【0021】
ここで、キャップ41は、リング状の円板とその外周縁から垂下する垂下片とから構成されるキャップであり、円板が基礎杭31上端の開口端面上に接して位置すると共に、垂下片が基礎杭31の上端部32の外周面上に接して位置するように基礎杭31に嵌め込まれる。これにより、打ち込み部材10の幅広部11に押し付けられて損傷し易い基礎杭31上端の開口端面をキャップ41により被覆し、雨水等により基礎杭31上端の開口端面に錆が発生することを抑制することができる。
【0022】
また、キャップ41の垂下片の外面には、光を反射する反射体43が垂下片の周方向に沿って複数取り付けられている。これにより、基礎杭31の上端部32の位置の認識を容易にし、基礎杭31内への支柱42の挿入を容易にすることができる。また、支柱42の挿入後は、支柱42の存在が明確となり、支柱42に衝突する等の事故の発生を抑制することができる。
【0023】
次に、
図2(c)に示されているように、基礎杭31内の上部空間と基礎杭31外の外部空間とを連通するキャップ41の平面視略円形の貫通孔41aを介して、基礎杭31内の上部空間内に設置物の支柱42が挿入される。
【0024】
次に、
図2(d)に示されているように、キャップ41の貫通孔41aを介して基礎杭31内の上部空間に、支柱42と基礎杭31の内壁との間の隙間(空洞)を埋めるように液状のセメントモルタル等の充填剤を流し込み、基礎杭31内の上部空間を充填剤で充填する。この上部空間に充填された充填剤を硬化させることにより、支柱42を地面20に強固に立設することができる。なお、基礎杭31内の上部空間への充填剤の充填時期については、基礎杭31内から打ち込み部材10が引き抜かれた後であれば、どのタイミングで行われてもよい。
【0025】
以上のように本実施形態の基礎杭31の設置方法は、管状の基礎杭31を地面20上に立設する設置工程(
図1(a))を含む。基礎杭31の設置方法は、さらに、基礎杭31の上端の開口33内に、開口33の幅D1よりも小さな幅D2を持つ幅狭部12を下方に有すると共に開口33よりも大きな幅D3の幅広部11を幅狭部12の上方に有する打ち込み部材10の幅狭部12を幅広部11が基礎杭31の上端に引っ掛かるまで下方に挿入する挿入工程(
図1(b))を含む。基礎杭31の設置方法は、さらに、基礎杭31の上端に引っ掛かった状態の幅広部11を基礎杭31の上端に押し付けることにより基礎杭31を地面20に打ち込む打ち込み工程(
図1(c)及び
図1(d))を含む。
【0026】
この構成により、基礎杭31の地面20への打ち込みにおいて、基礎杭31内に侵入する土は基礎杭31内の幅狭部12により押さえ付けられるため、基礎杭31の打ち込みが終わった後でも基礎杭31内の上部に土で充填されない空間を形成することができる。従って、基礎杭31内への支柱42の挿入に先立ち、土で充填されず支柱42が挿入可能な空間を確保するため基礎杭31内の土を除去する必要がない。その結果、容易に基礎を設置することが可能な基礎杭31の設置方法を実現することができる。
【0027】
また、本実施形態の基礎杭31の設置方法では、打ち込み部材10の幅広部11は、開口33の幅D1よりも大きな幅D3を持つ板材から構成される。そして、打ち込み部材10の幅狭部12は、開口33の幅D3よりも小さな幅D2を持ち、主面が幅広部11の板材の主面と対向するように配置された板材から構成される。そして、打ち込み部材10は、さらに、幅狭部12の板材と幅広部11の板材とを連結する棒材13を有し、棒材13の長さは、基礎杭31の長さD4より短く、棒材13の最大径は、幅狭部12の板材の幅D2より小さい。
【0028】
この構成により、基礎杭31の上端に引っ掛かる部分としての幅広部11と、基礎杭31内に侵入する土を押さえ付ける部分としての幅狭部12とが径の小さな棒材13により連結される。従って、基礎杭31内に挿入された状態において棒材13と基礎杭31の内面との間に大きな隙間を形成することができる。その結果、基礎杭31の地面20への打ち込みにおいて、打ち込み部材10と基礎杭31の内面との間に多少土が入った場合でも、土を棒材13と基礎杭31の内面との隙間に逃がして、打ち込み終了後に基礎杭31から容易に打ち込み部材10を引き抜くことができる。また、打ち込み部材10の軽量化を実現することもできる。
【0029】
また、本実施形態の基礎杭31の設置方法では、幅広部11の基礎杭31の上端に引っ掛かり当接する部分は、樹脂より構成されている。
【0030】
この構成により、基礎杭31の打ち込みにおいて幅広部11は基礎杭31上端の開口端面に強く押し付けられるが、幅広部11が樹脂という軟性の材料で構成されるため、大きな打撃音が発生したり、基礎杭31上端の開口端面が損傷を受けたりすることを抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態の基礎杭31の設置方法では、打ち込み工程(
図1(c)及び
図1(d))において、基礎杭31の上端が地面20から突き出るように、基礎杭31を地面20に打ち込む。そして、基礎杭31の設置方法は、さらに、突き出た基礎杭31の上端の開口33にキャップ41を被せるキャップ工程(
図2(a)及び
図2(b))を含む。
【0032】
この構成により、基礎杭31の打ち込みにおいて打ち込み部材10の幅広部11により押し付けられ損傷し易い基礎杭31上端の開口端面をキャップ41により被覆し、雨水等により基礎杭31上端の開口端面に錆が発生することを抑制することができる。その結果、基礎杭31として鋼管メーカでメッキされた鋼管等の低コストのものを使用することができる。
【0033】
また、本実施形態の基礎杭31の設置方法では、キャップ41には、光を反射する反射体が取り付けられている。
【0034】
この構成により、基礎杭31の開口33に取り付けられたキャップ41の一部が光を発することにより、作業者が基礎杭31の上端の位置を認識することを容易にし、基礎杭31内への支柱42の挿入が容易な基礎杭31の設置方法を実現することができる。また、支柱42の挿入後は、支柱42の存在が明確となり、支柱42に衝突する等の事故の発生を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態の基礎杭31の設置方法では、キャップ41には、基礎杭31の上端の開口33に被せられた状態で、基礎杭31の内部と連通する貫通孔41aが形成されている。
【0036】
この構成により、キャップ41の貫通孔41aに支柱42を挿通させて基礎杭31内に支柱42を挿入することができるので、キャップ41を取り付けた後でも基礎杭31内への支柱42の挿入を行うことができる。その結果、キャップ41の取り付け工程と支柱42の挿入工程との工程順の変更が可能となり、工程順の自由度の高い基礎杭31の設置方法を実現することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る基礎杭31の設置方法について、
図3を用いて説明する。以下、第1の実施形態の基礎杭31の設置方法と異なる点を中心に説明する。
【0038】
図3は、本実施形態に係る基礎杭31の設置方法を説明するための図である。
本実施形態に係る基礎杭31の設置方法は、キャップの構成及びキャップの基礎杭31への取り付け方法が第1の実施形態と異なるが、基礎杭31の地面20への打ち込みに至るまでの工程(
図1(a)〜
図1(d))については第1の実施形態と同様である。
【0039】
最初に、
図1(a)〜
図1(d)に示されるように、打ち込み部材10を基礎杭31内に挿入し、工具30で叩いて基礎杭31を地面20に打ち込む。
【0040】
次に、
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、基礎杭31内から打ち込み部材10を引き抜いた後、基礎杭31内の上部空間を充填剤で充填する。その後、基礎杭31の地面20から突き出た上端部32の左右に、半割キャップ51及び52を挟み込むように対向させて配置した後、上端部32の左側に半割キャップ51を左方から嵌め込むと共に上端部32の右側に半割キャップ52を右方から嵌め込む。これにより、基礎杭31の上端部32に、半割キャップ51及び52を組み合わせて構成されるキャップ53が嵌め込まれる。
【0041】
ここで、半割キャップ51は、半円板とその弧状の外周縁から垂下する垂下片とから構成され、その半円板の直線状の外周縁には切り欠き51aが形成されている。この半割キャップ51は、その半円板が基礎杭31上端の開口端面上に接して位置すると共に、その垂下片が基礎杭31の上端部32の左側の外周面上に接して位置するように基礎杭31の左側に嵌め込まれる。半割キャップ51の垂下片の外面には、光を反射する反射体54がその垂下片の周方向に沿って複数取り付けられている。
【0042】
また、半割キャップ52は、半割キャップ51と同様の形態を有し、半円板とその弧状の外周縁から垂下する垂下片とから構成され、その半円板の直線状の外周縁には切り欠き52aが形成されている。この半割キャップ52も、その半円板が基礎杭31上端の開口端面上に接して位置すると共に、その垂下片が基礎杭31の上端部32の右側の外周面上に接して位置するように基礎杭31の右側に嵌め込まれる。半割キャップ52の垂下片の外面には、光を反射する反射体54がその垂下片の周方向に沿って複数取り付けられている。
【0043】
また、キャップ53は、
図3(b)に示されているように、半割キャップ51及び52を直線状の外周縁が互いに当接し、かつ外周縁の切り欠き51a及び52aが互いに対向するように組み合わせて構成される。キャップ53は、上部が蓋され、下部が開口された円筒状のキャップであり、キャップ53の上部の蓋には、2つの切り欠き51a及び52aにより構成される貫通孔53aが形成されている。貫通孔53aは基礎杭31に挿入される支柱42の断面形状と略同じとされているため、支柱42の挿入位置を貫通孔53aの位置に統一して作業者が異なることによる支柱42の設置位置のバラつきが低減されている。キャップ53により、打ち込み部材10の幅広部11に押し付けられて損傷し易い基礎杭31上端の開口端面を被覆し、雨水等により基礎杭31上端の開口端面に錆が発生することを抑制することができる。
【0044】
次に、
図3(c)及び
図3(d)に示されているように、基礎杭31内の上部空間と基礎杭31外の外部空間とを連通するキャップ53の貫通孔53aを介して、基礎杭31内の上部空間内に設置物の支柱42が挿入される。その後、上部空間に充填された充填剤を硬化させることにより、支柱42を地面20に強固に立設することができる。
【0045】
以上のように本実施形態の基礎杭31の設置方法は、第1の実施形態の基礎杭31の設置方法と同様の理由により、容易に基礎を設置することが可能な基礎杭の設置方法を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態の基礎杭31の設置方法では、キャップ53は、半割キャップ51及び52に分割されている。
【0047】
この構成により、基礎杭31内に支柱42を挿入した後でキャップ53を取り付けることが可能となり、工程順の自由度の高い基礎杭31の設置方法を実現することができる。
【0048】
以上、本発明の基礎杭の設置方法について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0049】
例えば、本実施形態の基礎杭の設置方法では、打ち込み部材10は、幅広部11及び幅狭部12が棒材13により連結される構成を有するとしたが、棒材13がなく、幅広部11及び幅狭部12が直接連結される構成を有してもよい。例えば、
図4に示されるように、打ち込み部材10において、幅広部11及び幅狭部12が上下方向に大きな厚みを有し、これらが直接連結されてもよい。
【0050】
また、本実施形態の基礎杭の設置方法では、打ち込み部材10の幅狭部12は、円盤状であるとしたが、基礎杭31の上端の開口13の幅D1よりも小さな幅D2を有すれば、例えば矩形の板状であってもよい。同様に、打ち込み部材10の幅広部11は、円盤状であるとしたが、基礎杭31の上端の開口13の幅D1よりも大きな幅D3を有すれば、例えば矩形の板状であってもよい。