特許第6558992号(P6558992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558992ヤンキードライヤのコーティング管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558992
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ヤンキードライヤのコーティング管理装置
(51)【国際特許分類】
   D21F 5/02 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   D21F5/02
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-145832(P2015-145832)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-25439(P2017-25439A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100091591
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 秀人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
(72)【発明者】
【氏名】山本 准司
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 良雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭男
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−505322(JP,A)
【文献】 特表2006−501377(JP,A)
【文献】 特開2007−177377(JP,A)
【文献】 特表2014−524520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B−D21J
A47K7/00,10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤンキードライヤのヤンキーシリンダの表面にコーティング剤によるコーティング層を形成し、該コーティング層に押圧してヤンキーシリンダに巻回させて乾燥されたウェブをクレーピングドクタで剥離させて該ウェブにクレープ加工を施すヤンキードライヤのコーティング管理装置において、
前記ヤンキーシリンダの表面温度を測定する温度計を備え、
前記温度計に、データ出力頻度が100〜1000回/秒のものを用いて、
前記ヤンキーシリンダの一周期に対する温度変化による温度変動幅を前記温度計で測定し、変動幅が予め定めた値よりも大きくなった場合に、コーティングが不良と判断することを特徴とするヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項2】
前記温度計に非接触型のものを用いていることを特徴とする請求項1に記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項3】
前記温度計に赤外線反射測定式を用いたことを特徴とする請求項2に記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項4】
前記温度計をヤンキーシリンダの軸方向の一箇所もしくは複数箇所に配したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項5】
前記温度計をヤンキーシリンダの軸方向に移動自在に配設し、該軸方向の任意の箇所の温度を測定できることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項6】
前記温度計にデータロガーと記録用パーソナルコンピュータとを接続して、前記温度計による温度データを収集し、保存することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項7】
前記温度計のセンサー部を保護部材で保護して外乱光を遮断し、
前記保護部材に圧縮空気を供給して紙粉と水蒸気とを飛散させてこれら紙粉と水蒸気の堆積を防止したことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項8】
前記温度計に、測定波長1〜15μm、測定可能温度50〜400℃のものを用いたことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項9】
前記温度計の測定部を、前記ヤンキーシリンダの表面に対して垂直であって、該表面から測定部までの距離は、外乱光等の影響を受けずに、かつ正常に測定できる距離に固定して設置してあることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項10】
前記ヤンキーシリンダ表面へコーティング剤を噴霧してコーティング層を形成するコーティング装置を備えている場合には、該コーティング装置によりコーティング剤が付与される前に前記温度計で温度を計測することを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項11】
前記ヤンキーシリンダは、家庭紙製造用ヤンキードライヤのヤンキーシリンダであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載のヤンキードライヤのコーティング管理装置。
【請求項12】
ヤンキードライヤのヤンキーシリンダの表面にコーティング剤によるコーティング層を形成し、該コーティング層に押圧してヤンキーシリンダに巻回させて乾燥されたウェブをクレーピングドクタで剥離させて該ウェブにクレープ加工を施すヤンキードライヤのコーティング管理方法であって、
前記コーティング層を形成する装置の上流側にヤンキーシリンダの表面温度を測定する温度計を備え、
前記ヤンキーシリンダの一周期に対する温度変化による温度変動幅を前記温度計で測定し、変動幅が予め定めた値よりも大きくなった場合に、コーティングが不良と判断することを特徴とするヤンキードライヤのコーティング管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抄紙機、特に、トイレットペーパーやティッシュペーパー等の家庭紙を製造する家庭紙用抄紙機に設備されているヤンキードライヤのヤンキーシリンダ表面に接着剤や剥離剤等のコーティング剤が塗布されて形成されるコーティングの状態を管理して、所望の家庭紙を製造できるようにするヤンキードライヤのコーティング管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーやティッシュペーパー等の家庭紙では、人体に接触させて用いられることから、肌触りや柔軟性、吸水性、嵩高性等が具備されることが好ましく、これらの家庭紙にはクレープ加工が施されている。
【0003】
これら家庭紙を製造する抄紙機には、大径のヤンキーシリンダからなるヤンキードライヤが用いられている。プレスパートを経由して搾水されたウェブを前記ヤンキーシリンダに巻回させて乾燥させ、クレーピングドクタでウェブにクレープを付与しながら該ヤンキーシリンダから剥離させ、所望の幅員に切断された後にリールに巻き取れて家庭紙の巻取が形成される。
【0004】
家庭紙、特にティッシュペーパーの品質として、「柔軟性と表面性に起因するソフトネス」と「吸水能と使用感に影響する嵩」が要求されるが、これには前述したクレープ加工の良否に影響される。前記クレーピングドクタでクレープを付与するためには、ヤンキーシリンダ表面にコーティング剤が塗布されてコーティング層が形成されてヤンキーコーティングされ、このコーティング層が表面に形成されたヤンキーシリンダに前記ウェブが巻回されて乾燥されて剥離される。このため、ヤンキーコーティングには、ヤンキーシリンダ表面に対して、シートに均一な密着力を持たせるとともに、クレーピングドクタによる均一に剥離させることが要求される。
【0005】
また、前記クレーピングドクタの下流にはクリーニングドクタが配されており、ドライヤの表面に残存したコーティング層が掻き落とされてドライヤ表面が清掃されると共に、適切なコーティング皮膜の維持が図られている。
【0006】
前記コーティングのためのコーティング剤の付与は、ウェットエンドでウェブに添加する内添法や直接シリンダ表面に噴霧する外添法、ウェット状態のウェブのシートに噴霧する方法その他がある。
【0007】
特許文献1には、抄造工程の白水を汚すことなく、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの着色家庭用薄葉紙の製造方法を提供するものとして、家庭用薄葉紙抄造時のサクションプレッシャーロールとドクター間のヤンキードライヤー表面に、温水に水溶性ポリマーと油脂分を混合したコーテイング溶液を噴霧してメタルタッチ防止用被膜を形成させる薄葉紙の製造方法において、前記コーテイング溶液に所定の色を発色する染料を添加混合し、この混合液を前記ヤンキードライヤー表面上に噴霧するようにした着色家庭用薄葉紙の製造方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、複数以上からなる前後に摺動可能な広角噴霧ノズルを備えることにより、ヤンキードライヤーロール表面と紙との剥離性を向上させ、より安全性のある作業を行うことができるように、ウェブの乾燥・平滑性付与後、該ウェブを剥離させるヤンキードライヤーロールの表面に剥離剤を噴霧・被覆する剥離剤被覆装置であって、該ヤンキードライヤーロール近傍の幅方向に設けた固定式架台上に、複数以上からなる前後に摺動可能な広角噴霧ノズルを備えるヤンキードライヤーロールへの剥離剤被覆装置が提案されている。
【0009】
また、特許文献3には、家庭用薄葉紙の品質を安定的に維持しつつ、クレーピングドクター装置の交換頻度を低減させるよう、ウェブが付着され、一定の乾燥を経た後、クレーピングドクター装置により表面から該ウェブが引き剥がされるヤンキードライヤーの表面に臨む位置に設けられ、このヤンキードライヤーの表面に施されたコーティングを均すクリーニングドクター装置であって、該クリーニングドクター装置のブレードをセラミックブレードで構成したクリーニングドクター装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−55897号公報
【特許文献2】特開2001−226891号公報
【特許文献3】特開2007−177377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記クレーピングドクタが長時間使用されるとそのブレードが摩耗してコーティング層の均一性を損なわせ、ヤンキーシリンダからのウェブの剥離が不良となって、紙の表面性の低下や紙質のばらつき等、品質面を低下させ、安定したクレープの形成を行えなくなると共に、断紙を発生させて生産性を低下させるおそれがある。
【0012】
このため、ヤンキーシリンダの表面を監視してコーティング層の変化を把握し、不適切なコーティング層形成されるようになると、コーティング層を正常状態に回復させるため、クレーピングドクタを交換することになる。このコーティング層の変化の監視は、熟練したオペレータの目視により行われているが、クレーピングドクタの最適交換時期を見極められるようになるには、長年の経験を要し、また、オペレータの判断に委ねられるところが大である。
【0013】
また、摩耗したクレーピングドクタの交換時には、ウェブを一旦切らなくてはならないために紙を生産できず、過度な交換作業は生産性の低下につながるために極力避けることが要求されている。
【0014】
また、ドクタの摩耗具合は、日により、あるいは時間により異なるため、一定時間経過によってクレーピングドクタを交換しようとする時間管理も十分な効果が得られない。
【0015】
他方、前述した特許文献1と特許文献2に開示された発明では、コーティング剤を噴霧する装置に関するものであって、ヤンキーシリンダの表面を監視するものではない。
【0016】
また、前記特許文献3に開示された発明は、ドクターブレードの材質に関するものであって、ブレードをセラミックブレードで構成してクリーニングドクターの長寿命化を図ろうとするものである。
【0017】
前述したように、ヤンキーシリンダの表面状態の変化を、オペレータの熟練等によらずに確実に把握することができれば、クレーピングドクタの交換時期を最適なものとすることができる。そこで、この発明は、ヤンキーシリンダのヤンキーコーティングの状態を監視して、コーティングに不具合が発生した場合に迅速に対応できることを可能とするヤンキードライヤのコーティング管理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、ヤンキードライヤのヤンキーシリンダの表面にコーティング剤によるコーティング層を形成し、該コーティング層に押圧してヤンキーシリンダに巻回させて乾燥されたウェブをクレーピングドクタで剥離させて該ウェブにクレープ加工を施すヤンキードライヤのコーティング管理装置において、前記ヤンキーシリンダの表面温度を測定する温度計を備え、前記温度計に、データ出力頻度が100〜1000回/秒のものを用いて、前記ヤンキーシリンダの一周期に対する温度変化による温度変動幅を前記温度計で測定し、変動幅が予め定めた値よりも大きくなった場合に、コーティングが不良と判断することを特徴としている。
【0019】
すなわち、ヤンキーシリンダの表面温度の変動によってコーティングの状態を把握しようとするものである。コーティング状態が適切であれば、ヤンキーシリンダの表面温度は周回によっても殆ど変化が見られず、不適切となれば大きく変動するから、この温度変動の変動幅を監視するものである。
【0020】
また、請求項2の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計に非接触型のものを用いていることを特徴としている。
【0021】
前記温度計は、ヤンキーシリンダの表面に接触させることで温度を測定するものでも構わないが、その場合にはコーティング層を損傷させるおそれがある。そこで、非接触型の温度計を用いることによってコーティングを損傷させないようにしたものである。
【0022】
また、請求項3の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計に赤外線反射測定式を用いたことを特徴としている。
【0023】
すなわち、非接触型の温度計として赤外線反射測定式のものを用いたものである。
【0024】
また、請求項4の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計をヤンキーシリンダの軸方向の一箇所もしくは複数箇所に配したことを特徴としている。
【0025】
温度測定は1点よりも複数点で測定した方が温度変動を把握しやすいが、予め温度変動の生じやすい箇所を把握できていれば、当該箇所の温度を測定することで温度変動を迅速に検出できる。
【0026】
また、請求項5の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計をヤンキーシリンダの軸方向に移動自在に配設し、該軸方向の任意の箇所の温度を測定できることを特徴としている。
【0027】
温度計測は、ヤンキーシリンダの軸方向の最も温度変動が大きくなる位置で行うようにすることで十分であるが、軸方向に移動させることで、家庭紙の抄造条件やコーティング剤等に変更があった場合等で温度変動が大きくなる位置が変化した場合に対応できるようにしたものである。なお、複数個の温度計を備えさせて、それぞれを移動自在とすることも可能である。
【0028】
また、請求項6の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計にデータロガーと記録用パーソナルコンピュータとを接続して、前記温度計による温度データを収集し、保存することを特徴としている。
【0029】
すなわち、前記温度計によって取得された温度データを前記データロガーで記録し、さらに当該温度データを前記パーソナルコンピュータで保存するようにしたものである。
【0030】
また、請求項7の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計のセンサー部を保護部材で保護して外乱光を遮断し、前記保護部材に圧縮空気を供給して紙粉と水蒸気とを飛散させてこれら紙粉と水蒸気の堆積を防止したことを特徴としている。
【0031】
前記温度計による測定データを安定させるもので、外乱光による影響を受けることがないよう保護部材で保護すると共に、ヤンキーシリンダの表面から飛散する紙粉や水蒸気を前記圧縮空気で保護部材の外に排出させるようにしたものである。
【0032】
また、請求項8の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計に、測定波長1〜15μm、測定可能温度50〜400℃のものを用いたことを特徴としている。
【0033】
また、請求項9の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記温度計の測定部を、前記ヤンキーシリンダの表面に対して垂直であって、該表面から測定部までの距離は、外乱光等の影響を受けず、かつ正常に測定できる距離に固定して設置してあることを特徴としている。
【0034】
また、請求項10の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記ヤンキーシリンダ表面へコーティング剤を噴霧してコーティング層を形成するコーティング装置を備えている場合には、該コーティング装置によりコーティング剤が付与される前に前記温度計で温度を計測することを特徴としている。
【0035】
前述したように、ヤンキーシリンダにコーティングする方法には種々のものがあるが、シリンダ表面にコーティング剤を噴霧する方法による場合には、そのためのコーティング装置の配設位置よりもヤンキーシリンダの上流側、すなわち、コーティング剤を付与する前に前記温度計を設置したものである。前述したクリーニングドクタでコーティング剤が除去されて清浄となったシリンダ表面の温度を測定するようにしたものである。なお、このコーティング装置の下流側で測定することも可能である。
【0036】
また、請求項11の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置は、前記ヤンキーシリンダは、家庭紙製造用ヤンキードライヤのヤンキーシリンダであることを特徴としている。
【0037】
このコーディング管理装置を、トイレットペーパーやティッシュペーパー等の家庭紙を抄造するヤンキードライヤが備えているヤンキーシリンダに具備させたものである。
【0038】
また、請求項12の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理方法は、ヤンキードライヤのヤンキーシリンダの表面にコーティング剤によるコーティング層を形成し、該コーティング層に押圧してヤンキーシリンダに巻回させて乾燥されたウェブをクレーピングドクタで剥離させて該ウェブにクレープ加工を施すヤンキードライヤのコーティング管理方法であって、前記コーティング層を形成する装置の上流側にヤンキーシリンダの表面温度を測定する温度計を備え、前記ヤンキーシリンダの一周期に対する温度変化による温度変動幅を前記温度計で測定し、変動幅が予め定めた値よりも大きくなった場合に、コーティングが不良と判断することを特徴としている。
【0039】
ヤンキーシリンダの表面温度の変動によってコーティングの状態を監視して、その良否を把握するものである。ヤンキーシリンダが一周すると新たなコーティング剤が供給されるから、一周期に対する温度変化を監視することで、コーティング層の良否を判断する。このとき、温度変化の変動幅が予め定めた値よりも大きくなった場合に、コーティング不良と判断するものである。
【発明の効果】
【0040】
この発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、ヤンキーシリンダの表面温度の変動幅を監視することによりコーティング状態の良否を判断できるから、簡単な構造の装置で抄造される紙の品質を向上させることができる。しかも、温度計を設置することによるから、既存のヤンキードライヤにも容易に具備させることができる。
【0041】
また、請求項2の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、ヤンキーシリンダに温度計の測定部を接触させる必要がないから、ヤンキーシリンダの表面やコーティング層を損傷することがない。
【0042】
また、請求項3の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、ヤンキーシリンダの表面温度の測定をより正確に行うことができる。
【0043】
また、請求項4の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、複数箇所における温度変動を測定することにより、より確実にコーティング状態を把握することができる。
【0044】
また、請求項5の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、所望の箇所の温度を測定できるので、損傷箇所の把握を容易に行うことができる。
【0045】
また、請求項6の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、記録された温度データに基づいて、クレーピングドクタの交換後からの温度変動を確実に把握できるので、該クレーピングドクタの交換時期を確実に判断することができる。
【0046】
また、請求項7の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、温度計による測定を安定させられるから、取得された温度変動に関するデータの信頼性を向上させることができる。
【0047】
また、請求項9の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、温度計の位置が一定となるから、常に同一条件で温度データを取得することができる。
【0048】
また、請求項10の発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、コーティングされる前のヤンキーシリンダの表面温度を監視するので、クレーピングドクタの状態を確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】この発明に係るコーティング管理装置の概略の構成を説明する図であり、図2に示すヤンキーシリンダ周りを拡大して示している。
図2】この発明に係るコーティング管理装置を備えたヤンキードライヤを有する抄紙機の概略の構造を示す側面図である。
図3】このコーティング管理装置の要部の部品を説明する斜視図である。
図4】この発明に係るコーティング管理装置によりヤンキーシリンダの表面温度の変動を測定した実施例について評価した表である。
図5】この発明に係るコーティング管理装置によりヤンキーシリンダの表面温度の変動を測定した実施例1に係る結果を示すグラフである。
図6】この発明に係るコーティング管理装置によりヤンキーシリンダの表面温度の変動を測定した実施例2に係る結果を示すグラフである。
図7】この発明に係るコーティング管理装置によりヤンキーシリンダの表面温度の変動を測定した実施例3に係る結果を示すグラフである。
図8】この発明に係るコーティング管理装置によりヤンキーシリンダの表面温度の変動を測定した実施例4に係る結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置を具体的に説明する。なお、この実施形態では、家庭を製造する家庭紙用抄紙機に設備されているヤンキードライヤのコーティング管理装置を例示している。
【0051】
図2には、この発明に係るコーティング管理装置を具備したヤンキードライヤ装置20による抄紙機1の概略の構造を示している。抄紙原料はヘッドボックス11からワイヤーパート12のワイヤー12a上に拡散されて該ワイヤー12a上にウェブが形成される。このワイヤー12aの走行中に該ウェブから脱水される。脱水されたウェブはプレスパート13に給送されて、プレスロール13a、13bにフェルト13cと共に圧潰されて搾水される。搾水されたウェブはフェルト13aの走行と共に一対に設けられたプレッシャロール13d、13eに順次給送される。
【0052】
プレッシャロール13d、13eはヤンキードライヤ20のヤンキーシリンダ21に押圧されて、ウェブはフェルト13aと共に、これらプレッシャロール13d、13eとヤンキーシリンダ21とに圧潰される。前段のプレッシャロール13dでウェブはフェルト13aから離脱した後はヤンキーシリンダ21に巻回され、後段のプレッシャロール13eで再びフェルト13aと共にヤンキーシリンダ21とに圧潰される。このヤンキーシリンダ21の上部はドライヤフード22に覆われて、このドライヤフード22内に熱風を供給することにより、ヤンキーシリンダ21と協働してウェブを乾燥させてティッシュペーパー等の家庭紙が製造される。乾燥されたウェブは、クレーピングドクタ23を通過する際にクレープ加工が施されると共にヤンキーシリンダ21から剥離される。剥離されたウェブはガイドローラ14により案内されてスリッターナイフ15を通過する際に幅方向の適宜位置で切断された小幅に形成され、リール16に巻き取られてティッシュペーパー等の家庭紙の巻取が形成される。
【0053】
前記クレーピングドクタ23の下流側、すなわちヤンキーシリンダ21の回転方向の前方側には、クリーニングドクタ24が設けられており、ヤンキーシリンダ21の表面の清掃と適切なコーティング皮膜の維持が図られている。このクリーニングドクタ24の下流側に、ヤンキーシリンダ21の表面温度を測定する温度計26が設置されており、ヤンキーシリンダ21の回転に応じて周方向における温度変動を測定している。この温度計26には非接触型のものが用いられており、赤外線温度計が好適である。また、この温度計26は、ヤンキーシリンダ21の軸方向の1箇所または2箇所以上の位置の表面温度を測定するよう、測定点ごとに設置されている。あるいは、1個または2個以上の温度計26をヤンキーシリンダ21の軸方向に移動自在に設けて、任意の箇所の温度を測定できるようにすることも可能である。
【0054】
また、前記温度計26の下流側には、コーティング装置25が配されており,コーティング剤がヤンキーシリンダ21の表面に噴射されて塗布され、シリンダ表面にコーティング層が形成される。
【0055】
そして、図1に示すように、前記温度計26により測定されたヤンキーシリンダ21の表面温度に関する出力信号はデータロガー27に入力されて、その温度変化が記録される。このデータロガー27に記録された前記表面温度の変化がグラフ化されて、パーソナルコンピュータ28の表示部28aに表示されるようにしてある。また、このパーソナルコンピュータ28には、前記データロガー27で記録された温度変動が保存される。
【0056】
図3には前記温度計26の保護部材30を示し、温度計26のセンサー部(図示せず)を鋼管等の円筒状の保護筒31に収容させてある。この保護筒31の中間部に枝管32を接続させ、この枝管32に圧力空気源を接続させて、圧縮空気を保護筒31内に供給してある。このため、図示しない前記センサー部は、保護筒31によって外乱光から遮断されて外乱光の影響を受けず、また、圧縮空気によって紙粉や水蒸気の堆積が防止される。
【0057】
次に、この発明に係るコーティング管理装置により家庭紙製造用ヤンキードライヤのヤンキーシリンダのコーティング状態を温度計26を用いて確認したので、その結果を次に説明する。なお、非接触型の温度計26には、ユーロトロン株式会社製のRayomatic14を用いた。また、表面コーティング状態の良否を、熟練オペレータにより判定した。
【0058】
図5図8に、実施例1〜実施例4について、ドクタ交換直後における状態と一定時間経過後における状態との温度変動を測定した結果を示すグラフであり、実施例1が7時間経過後を、実施例2が4.5時間経過後を、実施例3が4時間経過後を、実施例4が6.5時間経過後を、それぞれ示している。
【0059】
前記実施例1〜実施例4のそれぞれの温度変動と熟練オペレータによるコーティングに関する評価を図4の評価表に示してある。この評価表の熟練オペレータによるコーティングの状態の判定は、「○」が問題がない場合を、「△」が若干乱れている場合を、「×」が不良であってドクタの交換を要する場合を、それぞれ示している。
これらの判定の結果と一定時間経過後の温度変動の関係を考察すると、温度変動が5℃以上ある場合にはコーティング状態に乱れが見られ、10.0℃となる場合には不良となっている。
すなわち、温度変動を監視することによってヤンキーシリンダのコーティング状態を把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明に係るヤンキードライヤのコーティング管理装置によれば、ヤンキーシリンダの表面温度の変動幅の大きさを監視することによりコーティング状態の良否を判断できるので、簡単な構造でコーティング状態を簡便に把握でき、抄造される家庭紙の品質を良好なものに維持することに寄与する。
【符号の説明】
【0061】
1 抄紙機
12 ワイヤーパート
13 プレスパート
13d プレッシャロール
13e プレッシャロール
20 ヤンキードライヤ
21 ヤンキーシリンダ
22 ドライヤフード
23 クレーピングドクタ
24 クリーニングドクタ
25 コーティング装置
25a 駆動装置
26 温度計
27 データロガー
28 パーソナルコンピュータ
28a 表示部
30 保護部材
31 保護筒
32 枝管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8