特許第6558996号(P6558996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558996
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】静電誘導型発電器
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/08 20060101AFI20190805BHJP
   G04G 19/00 20060101ALN20190805BHJP
   G04C 10/00 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   H02N1/08
   !G04G19/00 Y
   !G04C10/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-146922(P2015-146922)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-28910(P2017-28910A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】塩田 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真
(72)【発明者】
【氏名】和泉 輝
(72)【発明者】
【氏名】伊原 隆史
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−219478(JP,A)
【文献】 特開2013−135544(JP,A)
【文献】 特開2013−123337(JP,A)
【文献】 特開2013−059149(JP,A)
【文献】 特開2011−072070(JP,A)
【文献】 特開2008−264507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/08
G04C 10/00
G04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに固定された第1基板と、前記ハウジングに回転自在に軸支された軸を有する第2基板と、帯電膜と、対向電極と、前記帯電膜及び前記対向電極間で発生した電力を出力する出力部と、を有し、
前記対向電極を第1基板の第1対向面に設置し、前記帯電膜を前記第1対向面に対向する前記第2基板の第2対向面に設置し、
前記第2基板の前記第2対向面には、所定角度毎に、前記帯電膜と、前記帯電膜が設置されていない間隔部とが交互に配置されており、
前記間隔部において、外周縁から内周側に向けて、切欠き及び溝の何れか一方が形成されている、静電誘導型発電器。
【請求項2】
前記対向電極は、前記第1対向面に分離して設けられた複数の第1電極と第2電極から構成され、前記第1電極と前記第2電極は、前記回転方向に沿って交互に、所定角度毎に配置され、前記第1電極同士と前記第2電極同士が接続されるとともに、前記第1電極と前記第2電極はそれぞれ前記出力部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の静電誘導型発電器。
【請求項3】
ハウジングと、前記ハウジングに固定された第1基板と、前記ハウジングに回転自在に軸支された軸を有する第2基板と、帯電膜と、対向電極と、前記帯電膜及び前記対向電極間で発生した電力を出力する出力部と、を有し、
前記帯電膜を第1基板の第1対向面に設置し、前記対向電極を前記第1対向面に対向する前記第2基板の第2対向面に設置し、
前記第2基板の前記第2対向面には、所定角度毎に、前記対向電極と、前記対向電極が設置されていない間隔部とが交互に配置されており、
前記間隔部において、外周縁から内周側に向けて、切欠き及び溝の何れか一方が形成されている、静電誘導型発電器。
【請求項4】
前記対向電極と前記帯電膜は、それぞれ前記出力部に接続されていることを特徴とする請求項1又は3に記載の静電誘導型発電器。
【請求項5】
前記間隔部において、外周縁から内周側に向けて切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の静電誘導型発電器。
【請求項6】
前記第2基板の回転方向の前縁が、内周側から外周縁に向かって、反回転方向に後退したことを特徴とする請求項5に記載の静電誘導型発電器。
【請求項7】
前記第2基板の回転方向の前縁の断面が、先鋭形状に形成されたことを特徴とする請求項5又は6に記載の静電誘導型発電器。
【請求項8】
前記第2基板の断面が、流線形で形成されたことを特徴とする請求項5又は6に記載の静電誘導型発電器。
【請求項9】
前記間隔部において、外周縁から内周側に向けて溝が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の静電誘導型発電器。
【請求項10】
前記間隔部において前記外周部を除いて穴が形成されており、前記外周部に前記溝が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の静電誘導型発電器。
【請求項11】
前記軸若しくは前記第2基板は、重量バランスの偏りを有する回転錘が直接設置されているか、又は、回転錘の回転が歯車列を介して前記軸に回転伝動されるように構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の静電誘導型発電器。
【請求項12】
前記回転錘の正逆回転の一方回転のみが、前記第2基板に常に一方向に回転伝動されることを特徴とする請求項11に記載の静電誘導型発電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電誘導を利用した発電装置、発電器、携帯型電気機器、携帯型時計等に関する。本発明の発電器のエネルギ源としては、人体の運動、機械等の振動、その他環境に広く存在する運動エネルギを利用することができる。特に、回転部材の空気抵抗を減らして発電効率を上げた発電器に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレット材料による静電誘導を利用した実用的発電装置が、特許文献1〜4などに開示されている。静電誘導とは、帯電した物体を導体に接近させると、帯電した物体とは逆の極性の電荷が引き寄せられる現象のことである。静電誘導現象を利用した発電装置とは、「電荷を保持する膜」(以下、帯電膜という)と対向電極を配置した構造において、この現象を利用して、両者を相対移動させて誘導された電荷を取り出す発電のことである。
【0003】
図1は、静電誘導現象を利用した発電の原理を模式的に説明する説明図である。図1では、対向電極側を移動させているが、帯電膜側を移動させても良い。
【0004】
エレクトレット材料による場合を例にとると、エレクトレットは、誘電体に電荷を打ち込んだものであり、半永久的に静電場を発生させる帯電膜の一種である。このエレクトレットによる発電では、図1にみられるように、エレクトレットにより形成される静電場によって対向電極に誘導電荷が生じ、エレクトレットと対向電極の重なりの面積を変化(振動等)させれば、外部電気回路において交流電流を発生させることができる。このエレクトレットによる発電は、構造が比較的簡単で、電磁誘導によるものより、低周波領域において高い出力が得られ有利であって、近年いわゆる「環境発電(Energy Harvesting)」として注目されている。
【0005】
図16は、従来技術の回転部材を示す斜視図である。図17は、従来技術の回転部材の空気抵抗(風切抵抗)を説明する説明図である。
【0006】
特許文献1には、エレクトレット膜と電極の往復周期回動を行う静電誘導を利用した発電装置が開示されている。この装置において、回転錘又は回転部材の軸は、軸とケーシングと間にヒゲゼンマイ(時計用語、渦巻きバネ)を介して支持し、往復周期回動を行う。
特許文献2には、機械式自動巻き腕時計に用いられるような回転錘の回転を、歯車機構を介して増速伝動させて、エレクトレット膜と電極の相対的な回転を行う静電誘導を利用した発電装置が開示されている。これらの従来技術では、回転部材を軽量化して発電効率を上げることができない。特許文献3には、高分子体やセラミックスをエレクトレット化した肉厚体の回転子で発電をするものが開示されているが、複数電極の形成は難しく発電効率が悪いものであった。
【0007】
特許文献4には、帯電膜と対向電極の往復周期回動を行う発電装置が開示されている。特許文献4の回転部材は軸に対してヒゲゼンマイを介して支持され、往復周期回動を行う。このような従来技術においては、図16に示すように、回転部材4には、穴40が設けられており、穴40と穴40との間の放射状の回転部材4の裏面に帯電膜3が設けられている。回転部材4において、帯電膜3が塗布されている部分は、回転部材4の基材自体を残し、帯電膜3が塗布されていない部分は、基材の軽量化のために穴40にみられるように中抜きにしている。穴40の外周部材45’は、放射状の回転部材同士の連結部分となっている。この従来技術では、穴40の設置により回転部材4を軽量化することができる。しかしながら、図17に示すように、中抜きにした構造では、回転部材の回転動作時に発生する空気が、外周部材45’から抜けず、高い回転数では大きな抵抗となって発電効率を低下させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−059149号公報
【特許文献2】特開2011−072070号公報
【特許文献3】特開平02−219478号公報
【特許文献4】特開2013−135544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、静電誘導型発電器において、回転部材の外周部に空気抜け部を設けて空気が側方に抜けるような構造にして、回転部材が移動するときの空気抵抗を大きく減少させるとともに、基材の軽量化を図り発電効率を上げることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに固定された第1基板と、前記ハウジングに回転自在に軸支された軸を有する第2基板と、帯電膜と、対向電極と、前記帯電膜及び前記対向電極間で発生した電力を出力する出力部と、を有し、前記対向電極を第1基板の第1対向面に設置し、前記帯電膜を前記第1対向面に対向する第2基板の第2対向面に設置し、第2基板の第2対向面には、所定角度毎に、前記帯電膜と、前記帯電膜が設置されていない間隔部とが交互に配置されており、前記間隔部の外周部には空気の通り抜け部が設けられている静電誘導型発電器である。
【発明の効果】
【0011】
静電誘導型発電器において、第2基板(以下、回転部材ともいう)の外周部に空気抜け部を設けて空気が側方に抜けるような構造にしたので、第2基板が回転するときに、空気の残留をなくし空気抵抗を大きく減少させることができる。これにより、回転部材の回転数が上がっても発電効率が減少しない。また、第2基板の基材の軽量化を図り、発電効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】静電誘導現象を利用した発電の原理を模式的に説明する説明図である。
図2】本発明の第1実施形態のX−X線(図3)に関する模式的断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の内部構造を示す概要である。
図4】本発明の第1実施形態の回転部材(第2基板)、帯電膜、対向電極、対向基板(第1基板)の概要を示す説明図である。
図5】(a)は、図16の従来技術の全負荷トルクの内訳を示したグラフである。(b)は、本発明の第1実施形態の回転部材の風切抵抗を、従来技術の風切抵抗Dに対する割合で示したグラフである。
図6】(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の対向電極と帯電膜の発電を説明する説明図である。
図7】本発明の第1実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。
図8】本発明の第1実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。
図9】本発明の第2実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。
図10】本発明の第3実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。
図11】(a)〜(f)は、回転部材の断面図である。
図12】回転錘の正逆回転の一方回転のみを回転部材に伝動する機構(本発明において「ワンウェイクラッチ」と称する)の一例である。(a)は、平面図であり、(b)は側面図である。
図13】本発明の第4実施形態の回転部材を示す斜視図である。
図14】本発明の第5実施形態の回転部材を示す斜視図である。
図15】本発明の第6実施形態の回転部材を示す斜視図である。
図16】従来技術の回転部材を示す斜視図である。
図17】(a)は、従来技術の風切抵抗を説明する説明図である。(b)は、回転部材の回転時に、空気による摩擦抗力と風切抵抗を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。以下の各実施形態では、一例として腕時計で説明するが、必ずしも腕時計に限定されるものではない。携帯用の静電誘導発電器付き電子電気機器などにも適用可能である。
【0014】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態のX−X線(図3)に関する模式的断面図である。図3は、本発明の第1実施形態の内部構造を示す概要である。図4は、本発明の第1実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。図5(b)は、本発明の第1実施形態の回転部材の風切抵抗を、図5(a)の従来技術の風切抵抗Dに対する割合で示したグラフである。図6は、本発明の第1実施形態の対向電極と帯電膜の発電を説明する説明図である。図7は、本発明の第1実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。
【0015】
以下、第1実施形態を、各図面を参照して説明する。第1実施形態は、腕時計などの携帯用電子時計に適用した場合である。
携帯用電子時計は、図2に示すように、風防24を含む外装ケーシング41、42(裏蓋42)と、文字板25と、ハウジング33、34と、このハウジング内に配置されたクオーツムーブメントと、ハウジング内に配置された静電誘導発電器とを有している。風防24は、パッキン43を介して外装ケーシング41に嵌めこまれている。風防24は、透明材料で形成されている。
【0016】
ハウジングは、以下において腕時計の場合によくつかわれる呼称、すなわち、地板33、受け板34として説明する。地板33は、ハウジングの一種であって、様々なパーツを組み込む土台、支持板、内装ケーシングなどを意味している。また、受け板とは、回転体の軸を支えたり、部品を固定・保持する役割を果たす場合に良くつかわれる用語である。
【0017】
クオーツムーブメントは、ここでは、水晶振動子28と、回路基板5と、コイル26及びモータ用のロータ・ステータを備えたステップモータと、運針用歯車と、2次電池22などを含むものとして定義される。回路基板5には、発振回路、分周回路、ステップモータの駆動回路、整流回路、電源回路などが組み込まれている。歯車駆動部21には、クオーツムーブメントの一部である、コイル26、ステップモータ、運針用歯車などが含まれている。図2にみられるように、歯車駆動部21からは、指針軸が、文字板25の上方に突き出て時針、分針、秒針(秒針図示せず)などの指針23が取り付けられている。指針23は、時針、分針しか表示していないが、時針、分針の他に秒針を備えていても良い。図3は、クオーツムーブメントと静電誘導発電器などの時計内部構造の概要を示しており、図3のZ部分は、地板やクオーツムーブメントの一部が適宜レイアウトされた概略領域である。27はりゅうずを示している。Z部分には、クオーツムーブメントのうち歯車駆動部21や回路基板5などが配置されるが、そのレイアウトは適宜設計的に定めればよい。
【0018】
次に、図2を参照して静電誘導発電器の全体構成について述べる。
回転軸8には回転部材4が固定されており、回転部材4の下面(第2対向面)には帯電膜3が配置されている。回転部材4は第2基板ともいう。一方、帯電膜3に対向するように、上部表面(第1対向面)に対向電極2が配置された対向基板1が、受け板34に設置固定されている。対向基板1を第1基板ともいう。回転部材4は、地板33と受け板34間で軸支され、文字板25、地板33、回転部材4、対向基板1、受け板34の順序で配置されているが、これに限定されるものではなく、文字板25、地板33、対向基板1、回転部材4、受け板34の順序で配置されていても良い。後述の他の実施形態においても同様である。
【0019】
図2において、クオーツムーブメントの回路基板5も、対向基板と同様に受け板34に設置固定されている。ここでは、対向基板1と帯電膜3とのギャップを精密に管理するため、対向基板1と回路基板5を別体で作製しているが、同様の位置精度が満たされるなら回路基板5と対向基板1を同一の基板に形成することも可能である。回路基板5と対向基板1とが別基板の場合は接続コネクタ、導通バネ、接続端子などで導通を行う。これらは、後述の実施形態においても同様である。
【0020】
回転錘10は腕の動きなどを捉えて回転する。回転部材4が回転すると、静電誘導発電が引き起こされ、帯電膜3と対向電極2間で発生した電力を、クオーツムーブメント(回路基板5)に出力する。本実施形態では、回転錘10の伝動に歯車伝動機構を介しているので、上部から下部に向かって、文字板25、地板33、歯車14、回転部材4、帯電膜3、対向電極2、対向基板1、受け板34の順序で配置されているが、これに限定されない。
【0021】
対向基板1には、図4に示すように、第1電極Aと第2電極NAが交互に配置されている。全ての第1電極A、全ての第2電極NAはそれぞれ連結されて、1相の交流を形成して、整流回路20に入力される。第1電極A電極列と第2電極NAの電極列の両者合わせて、対向電極2と総称する。
【0022】
回転部材4の下面の帯電膜3は、図4に示すように、それぞれ、放射状に形成され、放射状の帯電膜3の一片と一片との間隔部は、外周縁から内周側に向けてV字形切欠き(V-shaped cutout)6が形成されている。放射状の帯電膜3の一片を、以下「翼」ともいう。回転軸8は、上側は地板33の軸受50、下側は受け板34に設けた軸受50(軸受50は、耐震装置、一例としてパラショックなどであっても良い)で軸支されている。回転部材4の切欠きの形状は、必ずしもV字形に限定されるものではなく、その他の形状であっても良い。本実施形態では、回転部材4の外周が、空気の通り抜け部として機能するように、切り抜かれて開放されていれば任意の形状であって良い。
【0023】
本実施形態では、放射状の帯電膜3の一片(翼)と一片(翼)との間隔部は、外周縁から内周側に向けて切欠き6が形成されており、図16の従来技術の外周部材45’がなくなっている。従来技術の例で説明すると、図17(b)は、回転部材4が回転したときの、空気による摩擦抗力と風切抵抗を示している。摩擦抗力は粘性抵抗とも呼ばれ、回転部材4の移動方向と平行方向に回転部材4の表面に沿い発生する抗力であり、図17(b)に矢印Qとして示している。また、風切抵抗は圧力抗力とも呼ばれ、回転部材4の移動方向と垂直方向に回転部材4の表面に沿い発生する抗力であり、図17(b)では矢印Pとして示している。回転部材4が矢印の方向に回転すると、回転部材4の穴40(図16)の空気は、翼の回転方向の壁に押し当たり、矢印Pの挙動を示す。
図16の従来技術では、回転部材4が、軸8回りに回転する際に、外周部材45’が邪魔になって穴40の空気が抜け難かったが、本実施形態においては、外周縁から内周側に向けて、空気の通り抜け部としての切欠き6が形成されており、回転部材の回転に伴い切欠き6内の空気が、内周側から外周側に放出される。このため、空気の残留をなくし、空気抵抗(風切抵抗)を低減することができる。外周部材45’がなくなるので、回転部材4の慣性モーメントを減少させるとともに、回転部材4の軽量化にも役立つ。
【0024】
回転部材4の中心部分は、強度を保つために、図4にみられるように、切欠き6が、軸8に近い中心部には存在しないようにすると良い。帯電膜3は等角度毎に配置しないと発電効率が落ちるため、中心部分には帯電膜3がある部分とない部分(基板のみ)に分かれる。各帯電膜3、第1電極A、第2電極NAの面積は等しくすると良い。中心部分(切欠き6の達していない部分)は、径が太くなっても体積的には少ないため、回転部材4の全体の自重への影響は小さい。
【0025】
図5(a)は、外周部材45’を有する図16の従来技術の回転部材に対する、全負荷トルクと各負荷の割合を示している。横軸は回転部材の回転数で、縦軸は回転数200rpsにおける回転部材の全負荷トルクを100%としたときの各負荷トルクの割合である。ここで言う負荷とは、回転部材に連結する歯車機構の機械摩擦抵抗、回転部材で駆動する発電機構の静電抵抗、回転部材の軸受の摩擦抵抗、回転部材に生じる空気による摩擦抗力と風切抵抗のことである。図5(a)のAは全負荷トルク、Bは機械摩擦抵抗と静電抵抗の合計、Cは摩擦抗力、Dは風切抵抗である。回転部材4の回転数が向上するほど、全負荷に対して風切抵抗の占める割合は大きく、発電効率向上のためにこの風切抵抗を低減する必要があった。
【0026】
図5(b)は、従来技術と本実施形態による回転部材の風切抵抗をシミュレーションにより比較したもので、従来技術の風切抵抗を100%としたときの本実施形態による回転部材4の風切抵抗の割合を示している。横軸は、回転部材の1秒あたりの回転数(rps)である。図5(b)から分かるように100rps以上の高回転数領域では、本実施形態における回転部材4の構造にすることで30から40%の低減効果が得られている。エレクトレットによる発電構造では、帯電膜と対向電極の相対速度と、発電電力は、比例関係にあり、多くの電力を発電するために回転部材を高速回転させる必要があるが、風切抵抗も増加し回転を阻害してしまう。本実施形態によれば、風切抵抗を大きく減少させることができ、低負荷で回転部材を高速回転できるため、発電効率を向上させることが可能になる。
【0027】
図2に示すように、回転軸8の回転部材4の上側において歯車14が回転軸8に固定されている。また、軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構(歯車列)として、軸9に固定された歯車15と、回転軸8に固定された歯車14とが設けられている。ここでは、歯車列は、歯車15、14を指している。この場合、回転錘10の回転が増速されて回転軸8を回転させると、回転部材に設置された帯電膜(エレクトレット膜)3を、対向基板1(受け板34の固定)に静止した対向電極2に対して、増速回転させることができる。従って、回転部材4の回転数が高まると、発電量を上昇させることができる。なお、歯車列としては、2枚の歯車に限らず、3枚以上の歯車を組み合わせても良く、また、特殊歯車、カム、リンク、一方向クラッチ等を途中に介在させたものもここでの歯車伝動機構に含まれる。軸9は、ここでは、受け板34にベアリング16を介して軸支されている。軸9の軸支については、地板33と受け板34で軸支することも可能である。
【0028】
軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構としては、機械式腕時計においてこれまで公知の自動巻きの回転駆動技術を転用することが可能である。たとえば、腕の運動などの振動による、軸9に固定された回転錘10の正逆両方向の回転を、歯車伝動機構に内在した変換クラッチ機構によって、それぞれの回転を常に一方向の回転に変換するようにしても良い。回転錘10の正逆両方向の回転の内で、一方向の回転だけを伝動するようにしても良い。このようなものを、両者含めてここでは時計用のワンウェイクラッチと呼び、一例として図12のようなものが挙げられる。図12の説明は後述する。
【0029】
このような変換クラッチ機構は、機械式自動巻き腕時計の公知技術として、よく知られているので、これらの公知技術などを適用することが可能である。また、回転錘10による軸9の回転や揺動の正逆一方向のみを、ワンウェイクラッチで回転軸8に伝動すると、回転錘10の軸9(回転部材4の回転軸8)の回転が逆回転する時であっても、回転部材4に動きを阻害する力が加わることがなくなるので運動エネルギの無駄がなくなり、発電効率を高めることができる。以上述べた回転部材4と回転錘10との歯車伝動機構は、以下に述べる実施形態においても適宜適用することができる。本実施形態において、回転錘10は直接回転軸8に設けることも可能である。さらには、回転部材4に錘を設け、回転部材4の回転中心と重心位置とが異なる構成にして、回転錘の代わりにしても良い。これらの場合には歯車伝動機構15、14が不要である。また、上記変換クラッチにツーウェイクラッチを用いて、回転錘10による軸9の正逆両方向における回転や揺動を回転軸8に伝動する機構にしても良い。これにより、ワンウェイクラッチでは無視されていた回転錘10の回転による動力も、回転電極群を回転させるために用いられることになる。そのため、回転錘10の回転動力を無駄なく発電に用いることができ、発電効率を高めることができる。
【0030】
続いて、本実施形態の詳細について以下に説明する。
本発明で帯電膜として用いられるエレクトレット材料には、帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などを用いる。具体的には一例としてマイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。
【0031】
さらに、その他にもエレクトレット材料としては、高分子材料としてポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などがあり、無機材料としては前述したシリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiN)なども使用することができる。その他、周知の帯電膜を使用することができる。
【0032】
図4を参照して、本実施形態での帯電膜3と対向電極2による発電を説明する。固定された対向基板(第1基板)には、第1電極Aと第2電極NAが交互に配置されて電極列を構成している。回転部材4の下面の帯電膜3は、図4に示すように、それぞれ、放射状に形成され、放射状の帯電膜3の一片と一片との間隔部は、外周縁から内周側に向けて切欠き6が形成されている。
【0033】
第1電極Aと第2電極NAにおいて、次のように電流が生成される。複数の第1電極Aを連結した配線をA配線といい、複数の第2電極NAを連結した配線をNA配線という。第1電極Aと第2電極NAは、回転方向に沿って交互に、一定間隔(ここでは一定角度間隔)で一列に配置されている。
【0034】
図6(a)の第1電極Aには、帯電膜3が重なり合っている(A期間という)。このとき、帯電膜3(エレクトレット膜)には、負電荷が保持されているので、第1電極Aには、静電誘導により正電荷が引き寄せられる。正電荷が引き寄せられる際に電流が流れる。一方、回転部材4の回転に伴い、図6(b)のように帯電膜3が、隣の第2電極NAに重なる(NA期間という)。第2電極NAには、静電誘導により正電荷が引き寄せられる。正電荷が引き寄せられる際に電流が流れる。これに対して、第1電極Aには、切欠き6が重なるので、引き寄せられた正電荷が消散して逆方向に電流が流れる。回転部材4の回転に伴い、A期間とNA期間が交互に繰り返されることになる。
【0035】
回転錘10によって、回転軸8に固定された回転部材4が回転すると、帯電膜(エレクトレット膜)3と、対向電極2の第1電極A、第2電極NAとの重なり面積が増減し、これらに引き寄せられる正電荷が増減して、対向電極2に交流電流を発生させる。出力部として出力された交流波形は、整流回路20により直流に変換され、降圧回路30を経て2次電池22に充電されるとともに、クオーツムーブメントに出力する。整流回路20は、ブリッジ式であり、4個のダイオードを備えている。回転部材4に対向電極2を配置すると、対向電極2の出力配線を設けることができず、対向電極2に接続した回転軸8から発電電流を取り出すことになるが、図4の本実施形態においては、回転軸8からは電流を取り出す必要はなく、固定された対向基板に対向電極2の出力配線を設けて電流を取り出せばよいので、回路構成が極めて簡易なものにすることができる。
【0036】
本実施形態において、回転部材4、帯電膜3、対向電極2、対向基板1の配置を、図4の代わりに、図7のようにしても良い。図7の場合では、回転部材4、帯電膜3の配置は、図4と同じであるが、対向基板1上の対向電極2の配置が、第1電極Aのみが等間隔で電極のない部分と交互に配置されている。全ての第1電極Aは軸8側で連結されている。回転部材4の帯電膜3は軸8側で連結されて、導電部材の軸8に電気接点を介して接続されて整流回路20に出力されている。一方、対向基板1の第1電極Aも、軸8側の連結部から整流回路20に出力が取り出される。軸8からの電流の取り出し方については、ブラシ電極や軸受部の導電体構成部を利用して回転しながら電気的接続を行えばよい。その他の構成及び作用効果は、上述した第1実施形態と同じである。
【0037】
本実施形態において、回転部材4、帯電膜3、対向電極2、対向基板1の配置を、図7のようにする場合には、回転部材4(第2基板)の裏面に設置した帯電膜3の代わりに、第1電極Aを設置し、対向基板(第1基板)の表面に設置した第1電極Aの代わりに、帯電膜3を設置しても良い。すなわち、図7の帯電膜3と第1電極Aを逆に配置して、図8のように配置するようにしても良い。この場合には、回転部材4の第1電極Aは軸8側で連結されて、導電部材の軸8に電気接点を介して接続されて整流回路20に出力されている。一方、対向基板1の帯電膜3も、軸8側の連結部から整流回路20に出力が取り出される。軸8からの電流の取り出し方については、ブラシ電極や軸受部の導電体構成部を利用して回転しながら電気的接続を行えばよい。
【0038】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。
【0039】
第2実施形態は、図4の放射状の帯電膜3の形状の代わりに、帯電膜3の形状を、回転部材4の回転方向の前縁が、内周側から外周縁に向かって反回転方向に次第に後退するような形状に形成した実施形態である。これまでの実施形態と同様に、帯電膜3の一片と一片との間隔部は切欠き6となっている。これにより、送風機の羽根の後退翼と同様に、径方向の外側に空気流が滑らかに押し出されて排出されるので、空気抵抗を低減させることができる。
対向電極2は、第1電極Aと第2電極NAを絶縁されて隙間なく配置するため、後縁形状を前縁と同じ形状にしている。また帯電膜3も、対向電極2との対向面積を最大にして発電効果を高めるため、翼の後縁と前縁の形状を対向電極2と同じ曲線に形成している。)
【0040】
対向基板1については、図4と同様に(電極形状は異なる)、第1電極Aと第2電極NAが、上述の帯電膜3の形状と同じにして、交互に絶縁されて隙間なく配置されている。全ての第1電極A、全ての第2電極NAはそれぞれ連結されて、1相の交流を形成して、整流回路20に入力される。その他の構成は、図4の第1実施形態と同じである。作用効果についても同様であるが、より一層の空気抵抗の低減率が得られる。なお、本実施形態においても、上述の帯電膜3の形状にして、回転部材4、帯電膜3、対向電極2、対向基板1の配置を、図7、8のようにしても良い。すなわち、回転部材4の帯電膜3(又は第1電極A)は軸8側で連結されて、導電部材の軸8に電気接点を介して接続されて整流回路20に出力されている。一方、対向基板1の第1電極A(又は帯電膜3)も、軸8側の連結部から整流回路20に出力が取り出される。これらの場合でも回転部材4の形状は、図9と同じである。
【0041】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態の回転部材、帯電膜、対向電極、対向基板の概要を示す説明図である。
【0042】
第3実施形態は、図4の放射状の帯電膜3の形状の代わりに、帯電膜3の形状を、回転部材4の回転方向の前縁が、内周側から外周縁に向かって、反回転方向に直線で後退するような形状に形成した実施形態である。回転部材4の翼の形状も、帯電膜の形状と同じにする。図10に示すように、一例として、中心部の想像円Wから略三角形の帯電膜3の形状が、等間隔で反回転方向に後退するように配置されている。なお、略三角形の帯電膜3の形状の前縁、後縁を、間隔を置いて想像円Wから接線方向に後退するようにすると、等面積で隙間なく配置しやすい。これまでの実施形態と同様に、帯電膜3の一片と一片との間隔部は切欠き6となっている。これにより、径方向の外側に空気流が滑らかに押し出されて排出されるので、空気抵抗を低減させることができる。回転部材4の回転方向の後縁の帯電膜3の形状も前縁形状と同じ直線で形成している。
【0043】
対向基板1については、第1電極Aと第2電極NAが、上述の帯電膜3の三角形状と同じにして、交互に絶縁されて隙間なく配置されている。全ての第1電極A、全ての第2電極NAはそれぞれ連結されて、1相の交流を形成して、整流回路20に入力される。その他の構成は、第2実施形態と同じである。作用効果についても同様であり、より一層の空気抵抗の低減率が得られる。なお、本実施形態においても、上述の帯電膜3の形状にして、回転部材4、帯電膜3、対向電極2、対向基板1の配置を、図7、8のようにしても良い。すなわち、回転部材4の帯電膜3(又は第1電極A)は軸8側で連結されて、導電部材の軸8に電気接点を介して接続されて整流回路20に出力されている。一方、対向基板1の第1電極A(又は帯電膜3)も、軸8側の連結部から整流回路20に出力が取り出される。これらの場合でも回転部材4の形状は、図10と同じである。
【0044】
図11(a)〜(f)は、回転部材の翼の周方向に見た断面図である。
【0045】
これまで述べてきた実施形態では、前縁部の断面形状が図17にみられるような回転部材4の回転面に垂直方向となっていた。図11(a)では、回転部材4の前縁が、回転方向に向いて下方に尖った形状となっている。回転部材の翼の下面には帯電膜3が配置されており、対向基板1の対向電極2に対向している。帯電膜3と対向電極2の間隙は狭いので、回転部材4の前縁で空気が上方に抜けるようにすることができる。図11(b)では、回転部材4の前縁が、流線型に形成されている。図11(c)では、回転部材4の前縁が、三角断面に形成されている。図11(d)〜(f)は、前縁と後縁の断面形状を同形状にしたものである。このようにすると、回転部材4の回転方向がいずれの方向であっても空気抵抗を減少させることができる。図11(a)〜(f)の回転部材4の翼の断面形状は、本発明の全ての実施形態に適用することができる。
【0046】
図12は、回転錘の正逆回転の一方回転のみを回転部材に伝動する機構の一例である。(a)は、平面図であり、(b)は側面図である。
【0047】
第1実施形態では、回転部材4が正逆どちらの方向に回転しても、受ける空気抵抗は同じである。しかし、上述の第2、3実施形態では、回転部材4の回転方向の前縁が、内周側から外周縁に向かって、反回転方向に曲線や直線で後退するような形状に形成している(空気抵抗の少ない方を正回転という)。このため、回転錘10の回転が、常に正回転となるように、ワンウェイクラッチを、図2の回転錘10の伝動機構の途中(歯車15と、14の間など)に挿入して、回転錘10の回転が、回転部材4を正回転する時だけ伝動するようにすると良い。回転錘10の正逆両回転が、回転部材4を常に正回転するようにしても良い。このような時計用のワンウェイクラッチは、ラチェット爪を使用したクラッチなどとは異なり、ラチェット爪による回転摩擦がかからないようになっている。図12のワンウェイクラッチは、次のような構造になっている。
【0048】
歯車15と、14の間には、入力側の歯車15に噛合う歯車61が、軸60回りに、回転自在に嵌合して軸60とは無関係に回転する。歯車61には星形歯車64が、歯車61の突起軸65に回転自在に嵌めこまれている。歯車61は、特殊歯車63に対して、S方向の回転には両歯車の相互関係が不動状態に固定されて、歯車61に固定された突起軸65が軸60の回りに公転すると、その回転を特殊歯車63に伝動することになる。特殊歯車63は軸60に固定されているので、カナ歯車62から、歯車15の回転が、出力側の歯車14に伝動されることになる。
【0049】
一方、T方向の回転時には、歯車61が回転して、星形歯車64が軸60回りに公転しても、星形歯車64は、突起軸65に回転自在に嵌めこまれているので、特殊歯車63に対して空回りしてしまう。したがって、入力側の歯車15の回転は、出力側の歯車14に伝動されない。このような時計用のワンウェイクラッチは、図12の機構に限定されず、逆転時の回転摩擦がない機構であれば適用しても良い。
【0050】
(第4実施形態)
図13は、本発明の第4実施形態の回転部材を示す斜視図である。
【0051】
第1実施形態では、図16の従来技術の外周部材45’がなくなっていたが、本実施形態では、回転部材4の厚みより薄い薄肉外周部材44が存在する。回転部材4が、軸8回りに回転する際に、薄肉外周部材44により、穴40の空気を外部に通り抜けさせることができる。本実施形態では、回転部材4の厚みと薄肉外周部材44との厚みの段差部が、空気の通り抜け部に該当する。また薄肉外周部材44は、次のような利点を有する。従来技術の外周部材45’を回転部材4から無くすると、図4のように放射状の帯電膜3の翼は、細い根元部分でのみ回転部材に保持されるため、外部からの衝撃が加わったときに、根元に応力が集中して折れる可能性がある。薄肉外周部材44により放射状の翼の外周同士がつながることで、外部からの衝撃による応力を分散することができ、穴40の空気を抜けやすくするとともに翼の破損を防止する効果が得られる。
【0052】
また、回転部材4から外周部材45’がなくなることで翼の根元に応力が集中するため、翼が変形して平面高さにバラつきが生じる可能性があり、これにより帯電膜3と対向電極2の距離もバラつくことになる。帯電膜3と対向電極2の距離により発電量が変わるので、発電電流の脈動が生じてノイズとなり、時計回路に悪影響を与えることになる。また、翼の平面高さのバラツキにより、外部からの衝撃等で回転部材が上下した際に、翼の帯電膜3と対向基板1の対向電極2が接触しやすくなり、帯電膜の破壊、あるいは帯電膜3の電荷喪失が発生する。薄肉外周部材44により放射状の翼の外周同士がつながることで、翼の平面高さを一定にすることができ、穴40の空気を抜けやすくするとともに、回転部材4の耐衝撃性を向上させ、発電電流を一定にする効果が得られる。その他の構成、作用効果は、第1実施形態と同じである。帯電膜と対向電極の配置及び翼の形状は、図4、7〜11と同様に適用することができる(以下の実態形態も同様)。
【0053】
(第5実施形態)
図14は、本発明の第5実施形態の回転部材を示す斜視図である。
【0054】
第4実施形態では、回転部材4の厚みより薄い薄肉外周部材44が、穴40の外周部全周に亘って存在したが、本実施形態では、図14に示すように、穴40の外周部の一部が、薄肉外周部材44’となっている。本実施形態においても、回転部材4が、軸8回りに回転する際に、薄肉外周部材44’により、穴40の空気を外部に通り抜けさせることができる。薄肉外周部材44’以外の回転部材4の外周部は、帯電膜3の翼と同じ厚みを保っているため、図13に比べて翼の強度が向上し、外部からの衝撃による翼の破損を防ぎつつ、穴40の空気を抜けやすくできる。その他の構成、作用効果は、第1実施形態と同じである。
【0055】
(第6実施形態)
図15は、本発明の第6実施形態の回転部材を示す斜視図である。
【0056】
第6実施形態では、放射状の帯電膜3の一片(翼)と一片(翼)との間隔部が、回転部材4の厚みより薄い、放射状の薄肉部46となっている。従来技術では、放射状の帯電膜3の一片(翼)と一片(翼)との間隔部が穴であり、この穴内の空気が回転部材4の外側に抜けにくいため回転を阻害する要因となっていたが、本実施形態では上記の穴を無くして翼の肉厚よりも薄い薄肉部46とすることで、回転を阻害する空気は薄肉部46と翼との段差部分に存在するだけとなり、回転部材4の負荷となる空気量を大幅に少なくすることができる。更に、回転部材4が軸8回りに回転する際に、放射状の薄肉部46により、空気を外部に通り抜けさせることができる。つまり、薄肉部46の上面、下面、またはその両面が、内周部から外周部にかけて平面または緩やかな曲面であるため、薄肉部46と翼との段差部分に存在する空気が、回転に応じて回転部材の外側へ移動しやすくなる。本実施形態では、回転部材4の厚みと放射状の薄肉部46との厚みの段差部が、空気の通り抜け部に該当する。翼は、薄肉部46により根元だけでなく側面全てが回転部材と一体に保持されるため、図14に比べて翼の強度が向上し、外部からの衝撃による翼の破損を防ぎつつ、薄肉部46と翼4との段差部分の空気を抜け易くできる。その他の構成、作用効果は、第1実施形態と同じである。
【0057】
本発明のその他の実施形態としては、回転錘10は直接回転軸8に設けることも可能である。さらには、回転部材4に錘を追加し、回転部材4の回転中心と重心位置とが異なる構成にして回転錘の代用としても良い。これらの場合には歯車伝動機構15、14が不要である。
【0058】
さらに、特許文献1、2のように、回転部材4に錘を設けて、軸8とハウジング33の間にヒゲゼンマイを設け、ヒゲゼンマイの一端はヒゲ持ち(時計用語、支持棒)でハウジングに固定され、ヒゲゼンマイの他端が、回転軸8にヒゲ玉(時計用語、環状リング)によって圧入や加締めで固定されるような実施形態に、第1〜3実施形態の対向電極と帯電膜の特徴を適用しても良い(この点は特許文献1、2を引用補充する)。この形態は、歯車14と回転軸8との間にベアリングを設けるとともに、ヒゲゼンマイの一端はヒゲ持ちで歯車14に固定され、ヒゲゼンマイの他端が、回転軸8にヒゲ玉によって圧入や加締めで固定するようにしても良い。さらには、回転部材4の下方側に設置した対向電極と帯電膜を、下方側でなく回転部材4の上方側に設けても、実施可能である。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的構成はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 第1基板、対向基板
2 対向電極
3 帯電膜
4 第2基板、回転部材
6 切欠き
8 軸
10 回転錘
14、15 歯車
20 整流回路
21 歯車駆動部
22 2次電池
24 風防
25 文字板
30 降圧回路
33、34 ハウジング
40 穴
A 第1電極
NA 第2電極
200 クオーツムーブメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17