(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559006
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】超音波振動伝達機構部の保持構造
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20190805BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
B23K20/10
B29C65/08
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-156073(P2015-156073)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-30045(P2017-30045A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501410126
【氏名又は名称】ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】玉本 修
(72)【発明者】
【氏名】▲ボウ▼ 俊
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−38291(JP,A)
【文献】
特開平10−230378(JP,A)
【文献】
特開2011−578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動に共振するホーンから超音波機械振動エネルギーを被溶着部材に加えて被溶着部材による摩擦熱により被溶着部材を溶着等できる超音波振動溶着装置において、
ホーン本体と、保持体と、平板状薄板状つなぎ体と、S字状薄板状つなぎ体とが一体加工されたものであって、
前記保持体の一端と前記ホーン本体上の第1位置との間に平板状薄板状つなぎ体を介在させ、かつ前記保持体の他端と前記ホーン本体上の第2位置との間にS字状薄板状つなぎ体を介在させて前記ホーン本体と前記保持体との間隔を保ち、前記保持体で前記ホーン本体を固定する保持構造であって、
前記ホーン本体は、加えられる超音波のほぼ半波長の長さの角柱状に形成されており、
前記平板状薄板状つなぎ体を介在させる第1位置は、前記ホーン本体の一方の端部であって、前記ホーン本体に超音波が加えられたときに前記ホーン本体上に現れる腹部位置であり、
前記S字状薄板状つなぎ体を介在させる第2位置は、前記ホーン本体の一方の端部から他方の端部方向に所定の距離離れた位置であって、前記ホーン本体に超音波が加えられたときに前記ホーン本体上に現れる節部位置であることを特徴とする超音波振動伝達機構部の保持構造。
【請求項2】
前記S字状薄板状つなぎ体は、伝達する超音波の一波長の約100分の5以下の所定の厚みに構成し、前記平板状薄板状つなぎ体は、伝達する超音波の一波長の約100分の3以下の所定の厚みに構成し、かつ前記S字状薄板状つなぎ体及び前記平板状薄板状つなぎ体の平板面を縦振動超音波の波面に平行に配置したことを特徴とする請求項1記載の超音波振動伝達機構部の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被溶着部材に超音波を加えて被溶着部材を溶着する超音波溶着装置において、超音波の伝達を担う超音波振動伝達機構部の保持構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波溶着装置は、超音波発振器からの超音波電気エネルギーをコンバータ(超音波振動子)で機械振動エネルギーに変換し、その機械振動エネルギーをブースタで増幅した後に超音波振動伝達体(ホーン)に供給し、当該ホーンで機械振動に共振させた後に、その共振状態の機械振動エネルギーを被溶着部材に与えることにより被溶着部材に摩擦熱を発生させ、この被溶着部材に発生させた摩擦熱でもって被溶着部材を溶着させる装置として知られている。この超音波溶着装置は、プラスチック溶着を行わせるものと、メタル溶着を行わせるものとに大別できる。また、上記超音波溶着装置において、前記ブースタと、前記ホーンとにより超音波振動伝達機構部(超音波スタック)が構成されている。なお、超音波振動伝達機構部(超音波スタック)は、前記ブースタ及び前記ホーンに前記コンバータを加えて構成したものを含む場合もある。
【0003】
この超音波振動伝達機構部(超音波スタック)を保持する構造は、従来から、プラスチック溶着に使用されるもの、あるいは、メタル溶着に使用されるものによって、種々の構造のものが提案されている。
【0004】
ところで、前記超音波振動伝達機構部には、金属表面上、振動ゼロのポイントが存在せず、全ての表面が振動している。ノーダルポイントと呼ばれる振動ゼロポイントは軸上1ポイント(つまりホーン材料内部)にしか存在せず、ここでは軸方向、直角方向で全ての方向に振動がゼロである。一般的にここは軸方向の節部と呼ばれるが、表面の膨らみ振動の量でいえば最大である。この量はホーン形状に大きく左右され丸棒形状の場合、径が大きいほど、板状の場合、板厚が厚いほどポアソン比の関係で振幅が大きくなる。そのため、超音波振動伝達機構部の保持は節部といえども単純に行うことができず、従前より様々な保持方法が提案されている。
【0005】
また、プラスチック溶着における超音波振動伝達機構部の代表的な保持構造は、特許文献2の段落番号「0040」、「0041」に記載されているように、ホーンまたはブースタに一体的にフランジを設け、ゴム状Oリング、または、耐熱性プラスチックシート等の弾性部材を利用し、前記フランジの片面または両面を前記弾性部材で挟み込むことにより、ホーンまたはブースタを支持枠体に保持した保持構造としたものが提案されている。この保持構造は、要するに、軸方向1点支持でホーンまたはブースタを支持枠体に保持する構造をしている。ここで、軸方向1点支持とは、保持する位置が軸方向の一つの位置であるという意味であり、その位置で保持している場合には、仮に複数の支持部材でその位置を支持する構造であっても1点支持と称する。
なお、超音波振動伝達機構部の軸方向1点支持という保持構造の他の例としては、ブースタ等にS字状フランジを設け、ブースタ等をS字状フランジで枠体に保持するようにした保持構造のものも提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【0006】
図7は、上記従来のS字状フランジによる保持構造を模式的に示す斜視図である。
図8は、同S字状フランジによる保持構造を模式的に示す側面図である。
図7及び
図8において、ホーン50は所定の長さを有していて、そのほぼ中間位置より
図7では図示上側が、
図8では図示上側が四角柱状に形成されていて、そのほぼ中間位置より
図7では図示下側が、
図8では図示下側が所定の長さだけ徐々に薄くなってゆってき、所定の厚さに達してからは一定の厚さに形成された形状となっている。ホーン50のほぼ中間位置に、
図7及び
図8に示すように、S字状フランジ60が設けられている。ホーン50は、この一組のS字状フランジ60により図示しないホルダー部に取り付けられることにより保持構造を構成している。
【0007】
一方、メタル溶着における超音波振動伝達機構部の保持構造としては、前述したプラスチックシートのような弾性部材での支持では不十分であり、金属接触による保持が望まれている。しかしながら、その金属接触による保持であっても、保持部にはふくらみ振動等を吸収するスプリング構造が必要とされている。その理由は、保持部をアクチェーターに取り付ける上での漏れ振動を減少させる必要があるためである。しかも、メタル溶着の場合は、ホーンへの加圧(被溶着材に加える圧力)方向が軸方向に対して直角方向となるため、軸方向の離れた2箇所で支持するようにしたものが一般的である。
【0008】
具体的には、特許文献5に記載されているように、ホーン(共振器)に発生する振動の腹部の二箇所、即ちホーン上の超音波振動の一波長の距離の腹部二箇所に支持部材でもって支持体に固定するようにした保持構造や、特許文献6に記載されているように、ブースタ上の腹部二箇所、即ちブースタ上で超音波振動の半波長の距離の腹部二箇所にダイヤフラムと呼ばれる円盤状金属板を挟むことにより構成した保持構造が提案されている。
【0009】
また、特許文献7に記載されているように、超音波ホーンの振幅ゼロ付近(半波長の長さ)にS字状のスプリング構造を設け、当該S字状のスプリング構造により枠体に固定した保持構造が提案されている。
【0010】
さらに、特許文献8に示すように、一波長のホーンの前後にブースタを設け、前後各ブースタ上の節(1波長半(1.5波長)の位置)においてフランジを介して支持部材に保持した保持構造のものも提案されている。
【0011】
いずれの保持構造も、軸方向に半波長又は1.5波長離れた2箇所でもってホーンあるいはブースタを支持体等に保持する構造として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2984225号公報
【特許文献2】特開2001−334494号公報
【特許文献3】米国特許公開20130306219号公報
【特許文献4】特許第5167129号公報
【特許文献5】特開昭49−2753号公報
【特許文献6】特許第2915340号公報
【特許文献7】特許第3373810号公報
【特許文献8】特許第2911394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の超音波振動溶着装置において、軸方向1点支持の保持構造にあっては、メタル溶着かどうかを問わず、軸方向に対して直角方向に対する剛性が弱いという欠点がある。
【0014】
また、軸方向1点支持の保持構造における他の保持構造であって、一点支持位置において複数の支持部材により支持したものは、支持部材が配置されている横方向の剛性は強いものの、正面からの軸方向に対して直角方向に対する剛性が充分ではないという欠点があった。
【0015】
また、上記従来の超音波振動溶着装置において、一波長ホーンにおける振動腹部の2箇所で保持する保持構造にあっては、一波長ホーンが必要となって、構造が大きくなるという欠点があった。
【0016】
さらに、上記従来の超音波振動溶着装置において、ブースタ上の半波長の距離2箇所で支持する保持構造のものは、軸方向の直角方向の加圧に対する剛性は有利なものの、ブースタ部に2箇所も保持を必要とするため、上記2箇所保持構造と同様に構造が大きくなってしまうという欠点があった。
【0017】
また、上記従来の超音波振動溶着装置において、ホーン上の半波長の距離2箇所で支持する保持構造のものも、他との干渉が発生する他、上記2箇所保持構造と同様に構造が大きくなってしまうという欠点があった。
【0018】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、保持剛性を高めるとともに振動伝達の効率化を図り、さらに構成部品の破損を防止できる超音波振動伝達機構の保持構造を提供することを目的とするものである。即ち、超音波ホーンの腹部,節部近辺の二箇所に薄板状つなぎ部を加工し、その薄板状つなぎ部において節部の膨らみ振動及び腹部の縦振動のたわみ振動を吸収し、保持部ブロックへ至る間に膨らみ振動、たわみ振動等の漏れ振動をなくすものである。尚、加工自体はワイヤー加工を用いるのが一般的である。このとき、支持部距離は約1/4波長となる。また、保持部が本体と一体化による加工であること、補助部から溶着部までの距離が小さいことなどにより、トータル的な保持剛性が上がることにより、高加圧プラスチック溶着、メタル溶着の両方に応用が可能である。また、ブースタによる保持も必要としない。
【0019】
薄板状つなぎ部の厚みは保持部への漏れ振動と静加圧剛性に関係がある。これが薄くなれば、漏れ振動は小さくなるが静加圧剛性が下がり、逆に厚ければ漏れ振動は大きくなるが静加圧剛性が大きくなる。実際に加える静加圧力を考慮し、薄板状つなぎ部の厚みを決定することになる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る超音波振動伝達機構部の保持構造は、超音波振動に共振するホーンから超音波機械振動エネルギーを被溶着部材に加えて被溶着部材による摩擦熱により被溶着部材を溶着等できる超音波振動溶着装置において、
ホーン本体と、保持体と、平板状薄板状つなぎ体と、S字状薄板状つなぎ体とが一体加工されたものであって、
前記保持体の一端と前記ホーン本体上の第1位置との間に平板状薄板状つなぎ体を介在させ、かつ前記保持体の他端と前記ホーン本体上の第2位置との間にS字状薄板状つなぎ体を介在させて前記ホーン本体と前記保持体との間隔を保ち、前記保持体で前記ホーン本体を固定する保持構造であって、
前記ホーン本体は、加えられる超音波のほぼ半波長の長さの角柱状に形成されており、
前記平板状薄板状つなぎ体を介在させる第1位置は、前記ホーン本体の一方の端部であって、前記ホーン本体に超音波が加えられたときに前記ホーン本体上に現れる腹部位置であり、
前記S字状薄板状つなぎ体を介在させる第2位置は、前記ホーン本体の一方の端部から他方の端部方向に所定の距離離れた位置であって、前記ホーン本体に超音波が加えられたときに前記ホーン本体上に現れる節部位置であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項2記載の発明に係る超音波振動伝達機構部の保持構造は、請求項1において、前記S字状薄板状つなぎ体は、伝達する超音波の一波長の約100分の5以下の所定の厚みに構成し、前記平板状薄板状つなぎ体は、伝達する超音波の一波長の約100分の3以下の所定の厚みに構成し、かつ
前記S字状薄板状つなぎ体及び前記平板状薄板状つなぎ体の平板面を縦振動超音波の波面に平行に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る超音波振動伝達機構の保持構造によれば、超音波振動伝達体を伝搬する縦振動超音波の伝搬方向における超音波振動伝達体上の異なる二つ以上の部位を、薄板状つなぎ体を介して前記ホルダー部に固定して保持されているので、次のような効果がある。
(1)各薄板状つなぎ体とホーンとが一体化しているため、ホーンが低い周波数で振動しようとしても、振動を抑えこむことが可能となって、ノーダル部によるホーンとの衝突がなくなり、磨耗を抑えることができるほか、安定した溶着が期待できる。
(2)ホーン上に現れるであろう腹部位置に平板状薄板状つなぎ体を介し、ホーン上に現れるであろう節部位置にS字状薄板状つなぎ体を介して前記ホーンが前記ホルダー部に保持されているので、軸方向に直角方向に対する剛性で大きく有利である。
また、一点支持位置において複数の支持部材により支持した従来の保持構造と比較して、正面からの軸方向の直角方向の剛性を充分に大きくできる。
(3)また、一波長の場合においては、腹部腹部の保持(特許文献6の
図8)及び節部節部の保持(特許文献7)で保持する従来の保持構造と比較し、構造が小さくなるという効果がある。
また、ホーン上の半波長の距離2箇所で支持する保持構造のものと比較しても、他との干渉が発生することがないばかりか、構造的に小さくできる利点がある。
【0024】
特に、本発明を従来の軸方向一点支持のものと比較した場合、メタル接触か否かを問わず、軸方向と平行の加圧に対する剛性は同じであっても、軸方向と直角方向に対する剛性で大きく有利である。また、特許文献2では軸方向、先端からの位置に支持箇所を増やしても、側面への軸方向の直角方向の剛性は充分ではない。また、特許文献5の
図11に示す距離二箇所支持と比較した場合、略軸方向直角加圧に対する剛性は有利である。また、ブースタ部の保持を必要としないため、必要に応じて全長を短くできる効果がある。
【0025】
また、特許文献7の一波長ホーン二箇所両側支持と比較した場合では、剛性の上では略対等であるが、工場等の実施形態ライン上では他との不干渉、省スペースにおいて大いに優位性がある。
【0026】
また、特許文献1のノーダルサポートは、溶着中の振動が超音波に限定された場合は一応効果は認められるが、ワークの共振等により、ワークが低周波数で暴れるようなケースには振動を完全に抑えることが困難である。そのため、ノーダル部によるホーンとの衝突も発生し、摩耗が避けられない。
【0027】
これに対し、本発明にあっては、薄板状つなぎ部がホーンと一体化しているため、ホーンが低い周波数で振動しようとしても、振動を抑え込むことが可能となり、安定した溶着が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る保持構造と超音波振動伝達機構を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る保持構造と超音波振動伝達機構を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る保持構造と超音波振動伝達機構を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る保持構造を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る保持構造を模式的に示す側面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る保持構造を示す斜視図である。
【
図7】従来の超音波振動溶着装置における超音波振動伝達機構の保持構造を示す斜視図である。
【
図8】従来の超音波振動溶着装置における超音波振動伝達機構の保持構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1ないし
図5は本発明の実施形態に係る超音波振動伝達機構の保持構造を説明するために示す図である。
【0030】
これらにおいて、
図1ないし
図3には、超音波振動溶着装置のうち、超音波振動伝達機構1と、保持構造2とが示されている。これらの図において、超音波振動伝達機構1は、超音波振動子(コンバータ)3と、前記コンバータ3の同軸上に設けたブースタ4と、ブースタ4の同軸上に設けた超音波振動伝達体(ホーン)5とから構成されている。また、前記保持構造2は、前記超音波振動伝達体(ホーン)5を、
図1、
図3に示すようにホルダー部8に固定している。
【0031】
さらに、
図1ないし
図3を含め
図4及び
図5も参照しながら、前記保持構造2について説明する。前記保持構造2は次のようである。即ち、前記ホーン本体51の一方の端部における第1位置Pbで薄板状つなぎ体6b、6bにより前記ホーン本体51と前記保持体7x、7yとの間隔を保ち、かつ、前記ホーン本体51の一方の端部から他方の端部方向に所定の距離離れた第2位置Paで第2薄板状つなぎ体6a、6aにより前記ホーン本体51と前記保持体7x、7yとの間隔を保つ構造を有し、当該ホーン本体51を前記各保持体7x、7yで前記ホルダー部8、8に固定したものである。
【0032】
さらに説明すると、前記超音波振動伝達体(ホーン)5は所定の長さの立体形状(
角柱形状)に形成したホーン本体51を有している。このホーン本体51と、前記ホーン本体51を中心に対向させた保持体7x,7yと、前記ホーン本体51と前記各保持体7x,7yとの間隔を保つために前記ホーン本体51の軸方向の異なる位置Pa,Pbに設けられる二つの薄板状つなぎ体6a,6bとは、一体加工されたものである。
【0033】
前記ホーン本体51は、加えられる超音波の1波長λのほぼ半波長(λ/2)の長さの直方体に形成されている。前記ホーン本体51の一方の端部における第1位置Pbは、前記ホーン本体51に超音波が加えられたときに前記ホーン本体51上に現れる腹部位置であって、当該腹部位置で前記ホーン本体51と前記各保持体7x、7yとの間に平板状薄板状つなぎ体6b、6bが介在された状態にされている。また、前記保持体7x又は前記保持体7yは、それぞれ次のように構成されている。即ち、前記保持体7x又は前記保持体7yは、使用する超音波振動の約λ/4程度の長さでかつ所定の体積で所定の重量をもたせた角柱状に形成されており、これら保持体7x又は前記保持体7yにより前記ホルダー部8、8に固定できるように構成されている。
前記ホーン本体51の一方の端部から他方の端部方向に所定の距離離れた第2位置Paは、前記ホーン本体51上に現れる節部位置であって、当該節部位置で前記ホーン本体51と前記各保持体7x、7yとの間にS字状薄板状つなぎ体6a、6aが介在された状態にされたものである。
【0034】
さらに保持構造2について説明する。前記超音波振動伝達体(ホーン)5は縦振動超音波を伝達するものであって、
図4及び
図5に示すように、超音波の一波長λのほぼ半波長(λ/2)の長さのホーン本体51を有している。前記ホーン本体51は、前記ホーン本体51の一方の端部の位置、即ち超音波入力端側端部の第1位置Pbから他方の端部に向ってλ/4の距離の第2位置Pa付近までは角柱形状をしており、第2位置Paより、
図4及び
図5においてやや下側に向けて所定の長さLcだけ徐々に薄くなってゆき、所定の長さLcに達してからは他方の末端まで所定の長さLdにわたって一定の厚さDに形成された形状にされている。
【0035】
前記超音波入力端側端部位置である第1位置Pbは、前記ホーン5に超音波振動が入力されると、前記ホーン5上に現れる定在波の腹の位置となる。また、前記第2位置Paは、前記ホーン5に超音波振動が入力されると、前記ホーン5上に現れる定在波の節の位置になる。即ち、前記第1位置Paと前記第2位置Pbは、前記ホーン5のホーン本体51上においてλ/4の位置関係になる。
【0036】
ここで、前記S字状薄板状つなぎ体6aは、超音波の一波長λの約100分の5以下の所定の厚みで略S字状に構成してあり、かつ、前記略S字状薄板状つなぎ体6aの平面を縦振動超音波の波面に対して平行な配置になるようにしている。なお、縦振動超音波は疎密状態で伝搬方向に伝搬してゆくものとする。
【0037】
同様に、前記平板状薄板状つなぎ体6bは、伝達する超音波の一波長λの約100分の3以下の所定の厚みで平板状に構成し、かつ前記平板状薄板状つなぎ体6bの平板面は、縦振動超音波の波面に対して平行な配置になるようにしている。
【0038】
このように構成された超音波振動伝達機構1及び保持構造2を搭載する超音波振動溶着装置では、ワーク搭載部のアンビル9に被溶着部材(ワーク)W1、W2を載せ、超音波振動伝達機構1などを下降させて、ホーン5の先端とアンビル9とで被溶着部材(ワーク)W1、W2を加圧保持し、その状態で超音波振動をホーン5に与えて被溶着部材を溶着するようにしている。
【0039】
このとき、超音波振動溶着装置では次のように動作をしている。即ち、図視しない超音波発振器からの超音波電気エネルギーはコンバータ(超音波振動子)3において機械振動エネルギーに変換される。その機械振動エネルギーは、ブースタ4で増幅された後に超音波振動伝達体(ホーン)5に供給される。当該超音波振動伝達体(ホーン)5は機械振動に共振した後に、その共振状態の機械振動エネルギーを被溶着部材に与えている。これにより、ホーン5の先端とアンビル9との間にある被溶着部材(ワーク)W1、W2に摩擦熱を発生させる。これら被溶着部材(ワーク)W1、W2に発生させた摩擦熱でもって被溶着部材(ワーク)W1、W2を溶着させている。このようにして超音波振動に共振する超音波振動伝達体(ホーン)5から超音波機械振動エネルギーを被溶着部材(ワーク)W1、W2に加えて被溶着部材(ワーク)W1、W2による摩擦熱により被溶着部材(ワーク)W1、W2を溶着等することができる。
【0040】
そして、超音波振動伝達体(ホーン)5は、ホーン本体51と、薄板状つなぎ体6a、6bと、保持体7x、7yとが一体化加工されていて、薄板状つなぎ体6a、6bをλ/4の位置に位置させた構造にしているため、機械的な強度を強くした状態で超音波振動伝達体(ホーン)5を固定保持することができることになる。
【0041】
上述したように構成した超音波振動伝達機構の保持構造によれば、前記超音波振動伝達体(ホーン)5を超音波のほぼ半波長のホーン本体51に形成し、前記ホーン本体51の第2位置Paと第1位置Pbとにおいて、それぞれ薄板状つなぎ体6a、6bとを位置させて、ホーン本体51と薄板状つなぎ体6a、6bと保持体7x、7yとが一体加工してなり、かつ前記保持体7x、7yを前記ホルダー部8、8に固定してなり、かつ前記薄板状つなぎ体6a、6bの各平板面を縦振動超音波の波面に平行に配置しているので、次のような優れた効果を現すことになる。
【0042】
まず、このような構成を採用した実施形態によるので、前記超音波振動伝達体等の保持剛性を高くできる。
また、このような構成を採用した実施形態によるので、前記超音波振動伝達体等の耐荷重性を従来と比べて高くできる。
【0043】
さらに、このような構成を採用した実施形態によるので、前記超音波振動伝達体に横荷重を受けても、前記超音波振動伝達体を含む超音波振動伝達機構に与える変位を少なくできる。
【0044】
図6は、本発明の他の実施形態に係る超音波振動伝達機構の保持構造を説明するために示す図である。
図6において、
図1ないし
図5に示す実施形態に係る超音波振動伝達機構や保持構造と同一構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
本発明の他の実施形態に係る超音波振動伝達機構1xの保持構造2xは、
図6に示すように、上記実施の形態と全く同様な保持構造を有した第1の超音波振動伝達体(ホーン)5Aの先端Pcと、上記実施の形態と全く同様な構造を有する第2の超音波振動伝達体(ホーン)5Bの先端Pdとを突き合わせたような形状に一体化加工したものである。この超音波振動伝達機構1xでは、第1の超音波振動伝達体(ホーン)5Aの先端Pcと第2の超音波振動伝達体(ホーン)5Bの先端Pdとが突き合わされたような形状に一体的に加工したものであって、突き合わされた点に相当する部分55が作用点になり、超音波機械振動エネルギーは当該部分55から被溶着部材に供給されることになる。
【0046】
したがって、前記超音波振動伝達体(ホーン)5A、5Bを合わせた長さは、使用する超音波の一波長λに形成されている。前記各超音波振動伝達体(ホーン)5A、5Bの第1位置Pb、Pbが振幅の腹の部分となり、前記各超音波振動伝達体(ホーン)5A、5Bの第2位置Pa、Paが振幅の節の部分となり、突き合わされた点に相当する部分55が振幅の腹の部分となる。
【0047】
前記超音波振動伝達体(ホーン)5Aは、ホーン本体511と、ホーン本体511の一方の端部側に、前記ホーン本体511を中心に対向させた保持体7Ax、7Ayと、前記ホーン本体511と前記各保持体7Ax、7Ayとの間隔を保つために前記ホーン本体511の軸方向の異なる位置PAa、PAbに設けられる二つの薄板状つなぎ体6Aa、6Abとが一体加工されていて、同様に、前記超音波振動伝達体(ホーン)5Bも、ホーン本体511の他方の端部側に、前記ホーン本体511を中心に対向させた保持体7Bx、7Byと、前記ホーン本体511と前記各保持体7Bx、7Byとの間隔を保つために前記ホーン本体511の軸方向の異なる位置PBa、PBbに設けられる二つの薄板状つなぎ体6Ba、6Bbとが一体加工された構造となっている。
【0048】
このように本発明の他の実施形態に係る超音波振動伝達機構1xの保持構造2xは、ホーン本体511の両端側において、薄板状つなぎ体6a、6bと、保持体7x、7yとが設けられており、かつ前記ホーン本体511を中心として薄板状つなぎ体6a、6bと、保持体7x、7yとのそれぞれが対向した状態で設けられているため、次のような効果を奏することになる。
【0049】
本発明の他の実施形態に係る超音波振動伝達機構の保持構造によれば、ホーン本体の両側に保持構造があるため、前記超音波振動伝達体等の保持剛性を高くできる。
また、本発明の他の実施形態に係る超音波振動伝達機構の保持構造によれば、前記超音波振動伝達体等の耐荷重性を従来と比べて高くできる。
【0050】
さらに、本発明の他の実施形態に係る超音波振動伝達機構の保持構造によれば、前記超音波振動伝達体に横荷重を受けても、前記超音波振動伝達体を含む超音波振動伝達機構に与える変位を少なくできる。
【符号の説明】
【0051】
1、1x 超音波振動伝達機構
2、2x 保持構造
3 コンバータ
4 ブースタ
5 ホーン
51、511 ホーン本体
6a、6b、6Aa、6Ab、6Ba、6Bb 薄板状つなぎ体
7x、7y、7Ax、7Ay、7Bx、7By 保持体
8 ホルダー部