(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559013
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】シート貼付装置および貼付方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-163056(P2015-163056)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-41562(P2017-41562A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和紀
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−301613(JP,A)
【文献】
特開2009−295846(JP,A)
【文献】
特開2003−300255(JP,A)
【文献】
特開平03−056216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
B65B 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体を保持する第1保持手段と、
前記第1保持手段に保持された被着体に接着シートの一方の面を対向させて当該接着シートの外縁部を保持する第2保持手段と、
流体を供給する流体供給手段と、
前記第1保持手段で保持された被着体に前記第2保持手段で保持された接着シートを押圧して貼付する押圧手段とを備え、
前記第2保持手段は、前記接着シートを含めて前記第1保持手段を囲む閉塞空間を形成可能に設けられ、
前記流体供給手段は、前記閉塞空間に流体を供給し、前記接着シートを前記被着体から離間する方向に変形させ、
前記押圧手段は、前記変形した接着シートを前記被着体に押圧し、前記接着シートと前記被着体との間に供給された流体を追い出すようにして貼付することを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記第1保持手段は、前記被着体の被着面の位置を調整する調整手段を備え、
前記調整手段は、前記被着体の被着面が前記接着シートの外縁部における前記一方の面よりも前記押圧手段側に位置するように、前記被着体の被着面の位置を調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート貼付装置。
【請求項3】
被着体を第1保持手段で保持する工程と、
前記第1保持手段に保持された被着体に接着シートの一方の面を対向させて当該接着シートの外縁部を第2保持手段で保持する工程と、
前記接着シートを含めて前記第2保持手段で前記第1保持手段を囲む閉塞空間を形成する工程と、
前記閉塞空間に流体を供給し、前記接着シートを前記被着体から離間する方向に変形させる工程と、
前記第1保持手段で保持された被着体に前記第2保持手段で保持された接着シートを押圧し、前記接着シートと前記被着体との間に供給された流体を追い出すようにして貼付する工程とを備えていることを特徴とするシート貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置および貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ(以下、単にウエハという場合がある)等の被着体に対向配置した接着シートを当該被着体に貼付するシート貼付装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−27081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のシート貼付装置は、流体である気体を開放空間で接着シートに吹き付けて、ウエハから一定の距離を保った状態の当該接着シートをウエハに貼付するため、貼付動作が終了するまで流体を供給し続けなければならず、流体の消費が激しいという問題がある。
また、接着シートとウエハとの距離を一定に保つ必要があるため、流体を供給するための制御が複雑化するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、流体の消費を抑制することができるシート貼付装置および貼付方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、流体の供給制御の複雑化を防止することができるシート貼付装置および貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート貼付装置は、被着体を保持する第1保持手段と、前記第1保持手段に保持された被着体に接着シートの一方の面を対向させて当該接着シートの外縁部を保持する第2保持手段と、流体を供給する流体供給手段と、前記第1保持手段で保持された被着体に前記第2保持手段で保持された接着シートを押圧して貼付する押圧手段とを備え、前記第2保持手段は、前記接着シートを含めて前記第1保持手段を囲む閉塞空間を形成可能に設けられ、前記流体供給手段は、前記閉塞空間に流体を供給し、前記接着シートを前記被着体から離間する方向に変形させ、前記押圧手段は、前記変形した接着シートを前記被着体に押圧し
、前記接着シートと前記被着体との間に供給された流体を追い出すようにして貼付することを特徴とする。
【0007】
本発明のシート貼付装置において、前記第1保持手段は、前記被着体の被着面の位置を調整する調整手段を備え、前記調整手段は、前記被着体の被着面が前記接着シートの外縁部における前記一方の面よりも前記押圧手段側に位置するように、前記被着体の被着面の位置を調整可能に設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明のシート貼付方法は、被着体を第1保持手段で保持する工程と、前記第1保持手段に保持された被着体に接着シートの一方の面を対向させて当該接着シートの外縁部を第2保持手段で保持する工程と、前記接着シートを含めて前記第2保持手段で前記第1保持手段を囲む閉塞空間を形成する工程と、前記閉塞空間に流体を供給し、前記接着シートを前記被着体から離間する方向に変形させる工程と、前記第1保持手段で保持された被着体に前記第2保持手段で保持された接着シートを押圧し
、前記接着シートと前記被着体との間に供給された流体を追い出すようにして貼付する工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明によれば、閉塞空間に流体を供給するため、一定量の流体を供給するだけで接着シートを被着体から離間する方向に変形させることができ、流体の消費を抑制することができる。
また、一定量の流体を供給すればよいため、流体の供給制御の複雑化を防止することができる。
【0010】
さらに、被着体の被着面が接着シートの外縁部における一方の面よりも押圧手段側に位置するように、被着体の被着面の位置を調整可能とすれば、被着体に接着シートを確実に押し付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシート貼付装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な
図1中手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0013】
図1において、シート貼付装置10は、被着体としてのウエハWFを保持する第1保持手段20と、第1保持手段20に保持されたウエハWFに接着シートASの一方の面AS1を対向させて当該接着シートASの外縁部を保持する第2保持手段30と、流体としての気体を供給する流体供給手段40と、第1保持手段20で保持されたウエハWFに第2保持手段30で保持された接着シートASを押圧して貼付する押圧手段50とを備えている。なお、接着シートASは、予めフレームとしてのリングフレームRFの開口部RF1を閉塞するように当該リングフレームRFに貼付されている。
【0014】
第1保持手段20は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段によってウエハWFを吸着保持可能な保持面21Aを有する内側テーブル21と、出力軸22Aで内側テーブル21を支持し、ウエハWFの被着面WF1の位置を調整する調整手段であって駆動機器としての直動モータ22とを備えている。
【0015】
第2保持手段30は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段によってリングフレームRFを吸着することで接着シートASの外縁部を保持可能な保持面31と、保持面31に開口し、その底面部32Aで直動モータ22支持する凹部32とを備えている。これにより、第2保持手段30は、接着シートASを含めて(接着シートASとリングフレームRFとで)第1保持手段20を囲む閉塞空間SPを形成可能に設けられている。
【0016】
流体供給手段40は、閉塞空間SPに配管41Aを介して接続され、当該閉塞空間SPに気体を供給する加圧ポンプやタービン等の加圧手段41と、配管41Aに設けられ、閉塞空間SP内の圧力を調整する電磁弁や仕切弁等の圧力調整手段42とを備えている。
【0017】
押圧手段50は、駆動機器としてのリニアモータ51と、リニアモータ51のスライダ51Aに支持された駆動機器としての直動モータ52と、直動モータ52の出力軸52Aにブラケット53を介して支持された押圧部材としての押圧ローラ54とを備えている。
【0018】
以上のシート貼付装置10において、ウエハWFに接着シートASを貼付する手順について説明する。
先ず、各部材が初期位置に配置された
図1中実線で示す状態のシート貼付装置10に対し、作業者または多関節ロボット等の図示しない搬送手段が、ウエハWFを保持面21A上の所定位置に載置する。次に、第1保持手段20が図示しない減圧手段を駆動し、保持面21AでウエハWFを吸着保持する。そして、図示しない搬送手段が接着シートASを上側にしてリングフレームRFを保持面31上の所定位置に載置する。次いで、第1保持手段20が図示しない減圧手段を駆動し、保持面31でリングフレームRFを吸着保持する。
【0019】
その後、流体供給手段40が加圧手段41を駆動し、閉塞空間SPに所定量の気体を供給して、
図1中二点鎖線で示すように、接着シートASの中央部を押圧手段50側に膨出させ、当該接着シートASをウエハWFから離間する方向に変形させる。次いで、第1保持手段20が直動モータ22を駆動し、ウエハWFの被着面WF1が接着シートASの外縁部における一方の面AS1よりも僅かに押圧手段50側に位置するように、内側テーブル21の位置を調整する。そして、押圧手段50が直動モータ52およびリニアモータ51を駆動し、押圧ローラ54を下降させて接着シートASを押圧した後、
図2に示すように、押圧ローラ54を右方向に移動させる。これにより、押圧ローラ54は、変形した接着シートASをウエハWFに押圧し、当該接着シートASとウエハWFとの間の空気を追い出すようにしてそれらを貼付することになる。この際、接着シートASがウエハWFから離間する方向に湾曲しているため、押圧ローラ54の移動よりも先に、接着シートASの右側がウエハWFに貼付してしまうことを防止することができる。ここで、上方に湾曲した接着シートASがウエハWFに貼付されることで、閉塞空間SPの体積が減少し、閉塞空間SP内の圧力が上昇すると、圧力スイッチやロードセル等の図示しない圧力検知手段がその圧力変化を検知する。そして、当該図示しない圧力検知手段の検知結果を基にして、流体供給手段40が圧力調整手段42を駆動し、閉塞空間SP内の圧力が一定になるように制御する。
【0020】
その後、押圧ローラ54が
図2中二点鎖線で示す位置に移動すると、押圧手段50がリニアモータ51および直動モータ52を駆動し、押圧ローラ54を初期位置に復帰させる。次いで、第1保持手段20および第2保持手段30が図示しない減圧手段の駆動を停止する。そして、作業者または図示しない搬送手段が、接着シートASを介してウエハWFとリングフレームRFとが一体化された一体物を次工程に搬送した後、第1保持手段20が直動モータ22を駆動し、内側テーブル21を初期位置に復帰させ、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0021】
以上のような実施形態によれば、閉塞空間SPに気体を供給するため、一定量の気体を供給するだけで接着シートASをウエハWFから離間する方向に変形させることができ、気体の消費を抑制することができる。
また、一定量の気体を供給すればよいため、気体の供給制御の複雑化を防止することができる。
【0022】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0023】
例えば、第1保持手段20は、メカチャックやチャックシリンダ等のチャック手段、クーロン力、接着剤、粘着剤、磁力、ベルヌーイ吸着等で被着体を保持する構成でもよい。
直動モータ22は、ウエハWFの被着面WF1を接着シートASの外縁部における一方の面AS1と同じ高さにしたり、被着面WF1を一方の面AS1よりも下方に位置したりするように、内側テーブル21の高さを調整してもよい。
【0024】
第2保持手段30は、メカチャックやチャックシリンダ等のチャック手段、クーロン力、接着剤、粘着剤、磁力、ベルヌーイ吸着等で接着シートASを保持する構成でもよい。
【0025】
流体供給手段40が供給する流体は、大気、単体ガスおよび混合ガス等の気体であってもよいし、ウエハWFに対する接着シートASの接着力を確保できるものであれば、水やオイル等の液体、ジェル状体等であってもよい。
流体供給手段40は、側面視で接着シートASをM型やW型等の波状に変形させるものであってもよい。
【0026】
押圧手段50は、丸棒、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等による押圧部材を採用することができ、エア噴き付けにより接着シートASを被着体に押圧する構成としてもよいし、接着シートASを中央部から外縁部にかけて押圧する構成としてもよい。
【0027】
接着シートASは、リングフレームRFに貼付されていなくてもよい。この場合、第2保持手段30は、接着シートASとで閉塞空間SPを形成することとなる。
フレームは、リングフレームRF以外に、環状でない(外周が繋がっていない)フレームや、円形、楕円形、三角形以上の多角形、その他の形状であってもよい。環状でないフレームの場合、保持面31に閉塞空間SPを形成可能な閉塞部材を設ければよい。
【0028】
また、本発明における接着シートASおよび被着体の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の接着シートASが採用された場合は、当該接着シートを加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプ等の加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、接着シートASは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材シートと接着剤層との間に中間層を有するもの、基材シートの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材シートを接着剤層から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂板等、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASを機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意の形状の任意のシート、フィルム、テープ等を前述のような任意の被着体に貼付することができる。
【0029】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、第1保持手段は、被着体を保持可能なものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(他の手段および工程についての説明は省略する)。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0030】
10 シート貼付装置
20 第1保持手段
22 直動モータ(調整手段)
30 第2保持手段
40 流体供給手段
50 押圧手段
AS 接着シート
AS1 一方の面
WF ウエハ(被着体)
WF1 被着面