特許第6559019号(P6559019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559019採取装置、採取装置連結体及びソイルセメント改良体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559019
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】採取装置、採取装置連結体及びソイルセメント改良体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20190805BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   E02D1/04
   E02D3/12 102
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-170184(P2015-170184)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-48508(P2017-48508A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】509235545
【氏名又は名称】株式会社SEET
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 真
(72)【発明者】
【氏名】水本 実
(72)【発明者】
【氏名】秋山 仁
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−030113(JP,A)
【文献】 特開平03−229127(JP,A)
【文献】 特開2012−102557(JP,A)
【文献】 特開2011−219969(JP,A)
【文献】 特開平10−204861(JP,A)
【文献】 特開2002−054129(JP,A)
【文献】 特開2012−237192(JP,A)
【文献】 特開2001−234687(JP,A)
【文献】 特開2004−045081(JP,A)
【文献】 米国特許第01896106(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/04
E02D 3/12
G01N 1/04
G01N 1/08
G01N 1/12
G01N 1/22
G01N 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内の流動物に進入して、前記流動物の一部をサンプルとして採取する採取装置において、
両端が閉塞され、採取孔及び通気孔が軸方向に離れた位置に形成されたシリンダーと、
前記シリンダー内に配され、軸方向に移動可能なピストンと、
前記通気孔側の前記シリンダーの一端に連結された保護ケースと、
前記ピストンを軸方向に駆動する駆動部と、
前記通気孔に設けられた逆止弁と、を備え、
前記駆動部が、前記保護ケースに内に収容されたシリンダーチューブと、前記シリンダーチューブから前記シリンダー内に挿入されて前記ピストンに連結され、前記シリンダーチューブに対して軸方向に進退するピストンロッドと、を有する油圧シリンダーであり、
前記逆止弁が、前記シリンダーの外側から前記通気孔を通って内側に向かう流体の流れを阻止するとともにその逆の流れを許容することを特徴とする採取装置。
【請求項2】
前記採取孔に設けられた弁を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の採取装置。
【請求項3】
前記弁が、前記シリンダーの内側から前記採取孔を通って外側に向かう流体の流れを阻止するとともにその逆の流れを許容する逆止弁であることを特徴とする請求項2に記載の採取装置。
【請求項4】
前記弁が、前記採取孔を覆うように設けられた弾性材と、前記弾性材の前記採取孔に重なる位置に形成された切り込みと、を有することを特徴とする請求項2に記載の採取装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の採取装置を複数備え、これら採取装置が軸方向に配列されて連結された採取装置連結体。
【請求項6】
地盤に孔又は溝を掘削しつつその孔又は溝に固化液を供給して、その孔又は溝内にて固化液と掘削土を攪拌することでその孔又は溝にソイルセメントを充填する工程と、
請求項1から4の何れか一項に記載の採取装置の軸方向を上下方向にして、前記採取装置を前記流動物に進入させる工程と、
前記ピストンロッドを前記シリンダーチューブに引き込むように前記駆動部を作動させて、前記ピストンを前記採取孔から前記通気孔に向けて移動させることによって、前記流動物の一部をサンプルとして前記採取孔から前記ピストン内に取り込むとともに、前記シリンダーの中空のうち前記ピストンよりも前記通気孔側の領域内の空気を前記逆止弁及び前記通気孔により排出する工程と、
前記採取装置を前記流動物から地上へ引き上げる工程と、
前記ソイルセメントを固結させる工程と、を備えることを特徴とするソイルセメント改良体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内に流動物の一部をサンプルとして採取する採取装置及び採取装置連結体に関するとともに、前記採取装置を利用したソイルセメント改良体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の施工に際して、杭孔内に充填されたソイルセメントを採取してその発現強度を強度試験により確認すること、及び、ソイルセメントに進入してソイルセメントの一部を採取する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の採取装置では、円筒形状のケーシングの側部にソイルセメントを取り込む取込口が設けられ、ケーシング内に上下2室に隔てる連通孔の仕切板が設けられており、この仕切板の上下に連通孔を開閉する栓が昇降可能に設けられている。ここで、上下の栓は操作ロッドに接続されており、操作ロッドによる微調整により、下側の室、即ち採取タンクがケーシング外に対して開放されたり閉塞されたりする。そして、栓が開けられると、ソイルセメントの圧力によってソイルセメントがケーシング内の下側の室に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−237192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の採取装置では、ソイルセメントの粘性が高いと、ソイルセメントがケーシング内に流入しづらいので、ソイルセメントの採取に時間を要し、ひいてはソイルセメントの採取を行えない虞もある。また、ソイルセメントが取込口等に詰まる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。本発明が解決しようとする課題は、ソイルセメント等の流動物が高粘度であっても流動物を採取できるようにするとともに、流動物の詰まりを抑えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するべく、地盤内の流動物に進入して、前記流動物の一部をサンプルとして採取する採取装置が、両端が閉塞され、採取孔及び通気孔が軸方向に離れた位置に形成されたシリンダーと、前記シリンダー内に配され、軸方向に移動可能なピストンと、前記通気孔側の前記シリンダーの一端に連結された保護ケースと、前記ピストンを軸方向に駆動する駆動部と、前記通気孔に設けられた逆止弁と、を備え、前記駆動部が、前記保護ケースに内に収容されたシリンダーチューブと、前記シリンダーチューブから前記シリンダー内に挿入されて前記ピストンに連結され、前記シリンダーチューブに対して軸方向に進退するピストンロッドと、を有する油圧シリンダーであり、前記逆止弁が、前記シリンダーの外側から前記通気孔を通って内側に向かう流体の流れを阻止するとともにその逆の流れを許容する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駆動部が作動して、駆動部のピストンロッドがシリンダーチューブに引き込まれると、ピストンが採取孔から通気孔に向かって移動されるので、シリンダーの中空のうちピストンと採取孔との間の領域が減圧され、その領域の圧力によって流動物の一部がシリンダー内に引き込まれる。よって、たとえ流動物の粘性が高くても、シリンダーの外側の流動物が採取孔を通ってシリンダー内に流れやすい。また、流動物が採取孔に詰まり難い。
また、逆止弁が通気孔に設けられているので、シリンダーの外の流動物がシリンダーの中空のうちピストンと通気孔との間の領域に侵入しない。そのため、駆動部のピストンロッドをシリンダーの外の流動物から保護することができる。
また、駆動部のシリンダーチューブが保護ケース内に配されているので、シリンダーチューブをシリンダー及び保護ケースの外の流動物から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】採取装置連結体の正面図である。
図2】下段の採取装置の縦断面図である。
図3】下段の採取装置の縦断面図である。
図4】中段の採取装置の縦断面図である。
図5】上段の採取装置の縦断面図である。
図6】採取装置連結体を用いて流動物の一部をサンプルとして採取する工程を示した図である。
図7】変形例の採取装置連結体の正面図である。
図8】変形例の採取装置連結体の正面図である。
図9】ソイルセメント改良体の斜視図である。
図10】ソイルセメント改良体を施工する際に用いる掘削混練装置を示した立面図である。
図11】ソイルセメント改良体の施工工程を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているので、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
〔第1の実施の形態〕
図1は、採取装置連結体1の正面図である。
図1に示すように、採取装置連結体1は、地盤の凹所内に施工された流動物に貫入されて、流動物の一部をサンプルとして採取する装置である。
【0011】
採取装置連結体1は3機の採取装置10A,10B,10Cを備え、これら採取装置10A,10B,10Cが上下に連結されることによって採取装置連結体1が構成される。
【0012】
図2及び図3は、下段の採取装置10Aの縦断面図である。図2では、採取装置10Aのピストン41Aが上昇した状態を示す。図3では、採取装置10Aのピストン41Aが下降するとともに流動物を採取する前の状態を示す。図2及び図3に示すように、採取装置10Aはシリンダー11A、保護ケース21A、ゴム板31A、ピストン41A、直動アクチュエータ51A、保護ケース62A及び油圧機器63A等を備える。シリンダー11Aは樹脂製、鋼製、ガラス製又はセラミック製の円筒材である。シリンダー11Aの下端がエンドプレート13Aによって閉塞され、エンドプレート13Aの周縁部がシリンダー11Aの外周面から径方向外方に延出している。シリンダー11Aの周面の上端には、フランジ14Aが設けられている。シリンダー11Aと同様に、保護ケース21Aも樹脂製、鋼製、ガラス製又はセラミック製の円筒材であり、保護ケース21Aの下端がエンドプレート23Aによって閉塞され、シリンダー11Aの周面の上端にフランジ24Aが設けられている。そして、エンドプレート23Aとフランジ14Aが当接してボルト及びナットによって締結されることによって、シリンダー11Aの上端と保護ケース21Aの下端が連結され、シリンダー11Aの上端がエンドプレート23Aによって閉塞されている。
【0013】
シリンダー11Aの周面の下部には、複数の採取孔12Aが周方向に所定間隔で設けられている。シリンダー11Aの下部には、採取孔12Aを覆うゴム板31Aが巻き付けられ、ゴム板31Aに巻かれた固定バンド33Aによってゴム板31Aとシリンダー11Aが固定されている。ゴム板31Aには、十字型の切り込み32Aが採取孔12Aに重なる位置に形成されている。シリンダー11Aの内側と外側との間で差圧が生じると、切り込み32Aの周囲部が弾性変形することによって切り込み32Aが開き、シリンダー11Aの内側と外側との間の差圧が解消されると、切り込み32Aが閉じる。従って、ゴム板31A及び切り込み32Aは、採取孔12Aを開閉する弁として機能する。なお、ゴム板31A及び切り込み32Aからなる弁を採用する代わりに、シリンダー11Aの内側から外側に向かう流動物の流れを阻止するとともにその逆の流動物の流れを許容するチェックバルブが採取孔12Aに設けられてもよい。
【0014】
シリンダー11A内には、ピストン41Aが軸方向に摺動可能に設けられている。
シリンダー11Aの周面の上部には、通気孔15Aが形成されている。この通気孔15Aには、シリンダー11Aの外側から内側に向かう流体の流れを阻止するとともにその逆の流れを許容する逆止弁16Aが着脱可能に取り付けられている。シリンダー11Aの内部空間のうちピストン41Aよりも上側の空間の圧力が所定閾値を超えると、逆止弁16Aが開き、その上側空間の圧力がその所定閾値以下であると、逆止弁16Aが閉じる。従って、ピストン41Aが上昇して、シリンダー11A内の上側空間の圧力が上昇すると、逆止弁16Aが開くので、シリンダー11A内の空気が逆止弁16Aを通って排出される。一方、ピストン41Aが停止している際には、逆止弁16Aが閉じるので、シリンダー11Aの外側の流動物がシリンダー11A内に浸入することはない。
【0015】
このピストン41Aは直動アクチュエータ51Aによって軸方向に駆動される。直動アクチュエータ51Aは油圧シリンダーであり、直動アクチュエータ51Aのシリンダーチューブ52Aが保護ケース21A内に取り付けられ、直動アクチュエータ51Aのピストンロッド53Aがシリンダーチューブ52Aから上下方向に進退する。ピストンロッド53Aはエンドプレート23Aを貫通して、その下端がピストン41Aに連結されている。
【0016】
保護ケース21Aの上端には、連結部61Aを介して第二保護ケース62Aが取り付けられている。第二保護ケース62A内には、直動アクチュエータ51Aを作動させる油圧機器(例えば、リリーフ弁、ソレノイド弁)63Aが設けられている。また、連結部61Aには作動油用ポートが設けられ、油圧ホースが作動油用ポートに接続され、油圧ホース及び作動油ポートによって油圧が油圧機器63Aに供給される。また、油圧機器63Aを電気的に制御するための配線が連結部61Aから引き出されている。
第二保護ケース62Aの上端には連結具65Aが設けられている。
【0017】
図4及び図5は、それぞれ中段及び上段の採取装置10B,10Cの縦断面図である。図4及び図5に示すように、中段及び上段の採取装置10B、10Cは下段の採取装置10Aと同様に構成されているので、採取装置10B,10Cの構成要素には、それに対応する採取装置10A,10Bの構成要素の符号と共通な数字にB,Cを添えた符号を付すことによって、採取装置10B,10Cの詳細な説明を省略する。
【0018】
図2及び図4に示すように、下段の採取装置10Aの連結具65Aと中段の採取装置10Bのエンドプレート13Bが当接した状態でボルト及びナットによって連結されている。図5に示すように、中段の採取装置10Bの連結具65Bと上段の採取装置10Cのエンドプレート13Cが当接した状態でボルト及びナットによって連結されている。図1及び図2に示すように、下段の採取装置10Aのエンドプレート13Aの下面には、円錐状又は角錐状のコーン2が取り付けられている。図5に示すように、上段の採取装置10Cの連結具65Cの上端には、クレーンの吊り具又はワイヤーロープ等に連結される治具3が取り付けられている。また、図2に示すように、締結具25Aは、コーン2とエンドプレート23Aとの間にエンドプレート13A、シリンダー11A及びフランジ14Aを挟み込むようにして、コーン2、エンドプレート13A、シリンダー11A、フランジ14A及びエンドプレート23Aを締結する。また、図4に示すように、締結具25Bは、連結具65Aとエンドプレート23Bとの間にエンドプレート13B、シリンダー11B及びフランジ14Bを挟み込むようにして、連結具65A、エンドプレート13B、シリンダー11B、フランジ14B及びエンドプレート23Bを締結する。また、図4に示すように、締結具25Cは、連結具65Bとエンドプレート23Cとの間にエンドプレート13C、シリンダー11C及びフランジ14Cを挟み込むようにして、連結具65B、エンドプレート13C、シリンダー11C、フランジ14C及びエンドプレート23Cを締結する。
【0019】
図6の工程図を参照して、採取装置連結体1を用いてサンプルを採取する方法について説明する。
ここで、図6(a)に示すように、採取装置連結体1の使用前に地盤91に孔92を掘削し、孔92に流動物(例えば未固結ソイルセメント、安定液、泥水)90を充填する。ここで、孔92の掘削中に流動性の添加剤(例えば、固化液)を孔92に供給して、添加剤と原位置土を攪拌することによって、添加剤と原位置土からなる流動物90を孔92に充填してもよいし、孔92の掘削後に流動物90を孔92に供給して、流動物90を孔92に充填してもよい。
【0020】
そして、以下のようにして、流動物90の一部をサンプルとして採取装置連結体1によって採取し、そのサンプルの調査、検査又は試験等を行う。なお、孔92の代わりに、溝を地盤91に掘削し、その溝に流動物90を充填して、溝内の流動物90の一部を採取装置連結体1によって採取してもよい。
【0021】
まず、地上において採取装置連結体1を組み立て、地上に油圧ユニット(油圧ポンプ)及び制御ユニットを設置し、連結部61A,61B,61Cの作動油用ポートと油圧ユニットとを油圧ホースによって連結するとともに、連結部61A,61B,61Cから制御ユニットまで配線を施す。
そして、逆止弁16Aを取り外すことによって、通気孔15Aを通じてピストン41Aの上側の空間に空気が流入するようにする。次に、直動アクチュエータ51Aを作動させて、直動アクチュエータ51Aによってピストン41Aをシリンダー11A内の下端まで移動させて、シリンダー11Aの内側から採取孔12Aをピストン41Aによって閉塞する(図3参照)。その後、逆止弁16Aを取り付ける。採取装置10B,10Cについても同様にする。
なお、採取装置連結体1の組立の際に、ピストン41A,41B,41Cをシリンダー11A,11B,11C内の下端に位置させてもよい。
【0022】
次に、治具3をクレーンの吊り具又はワイヤーロープに連結して、クレーンによって採取装置10A,10B,10C及びコーン2を流動物90の上方に吊り上げる(図6(a)参照)。
【0023】
次に、採取装置10A,10B,10Cを下降させて、コーン2を流動物90に浸漬する。そうすると、採取装置10A,10B,10C及びコーン2の重量によって、採取装置10A,10B,10C及びコーン2が流動物90に進入する。コーン2が円錐状又は角錐状に形成されているので、採取装置10A,10B,10C及びコーン2が流動物90に進入しやすい。
【0024】
ゴム板31Aの切り込み32Aが閉じており、切り込み32Aの周辺部が採取孔12Aを塞いでいるので、シリンダー11A内への流動物90の浸入を抑えられ、ピストンロッド53Aを流動物90から保護することができる。また、逆止弁16Aによってシリンダー11A内への流動物90の流入が阻止されている。採取装置10B,10Cについても同様である。
また、シリンダーチューブ52A.52B.52Cが保護ケース21A,21B,21C内に配されているので、シリンダーチューブ52A.52B.52Cを流動物90から保護することができる。
【0025】
その後、採取装置10A,10B,10C及びコーン2が所定の深さまで進入したら、その位置に採取装置10A,10B,10C及びコーン2を停止させる(図6(b)参照)。例えば、コーン2を孔92の底又はその近傍に停止させる。
【0026】
次に、下段の採取装置10Aの直動アクチュエータ51Aを作動させて、直動アクチュエータ51Aによってピストン41Aを上に移動させる。そうすると、シリンダー11Aの中空のうちピストン41Aの下側の空間が減圧されるので、ゴム板31Aの切り込み32Aが開く。そして、ピストン41Aの下側の空間の圧力によって、流動物90が切り込み32A及び採取孔12Aに浸入して、流動物90がシリンダー11A内に取り込まれる。このように、ピストン41Aの下側の空間が減圧されるので、たとえ流動物90の粘性が高くても、シリンダー11Aの外側の流動物90がシリンダー11A内に流れやすい。また、流動物90が採取孔12Aに詰まり難い。
また、ピストン41Aの上昇中、ピストン41Aの上側の空間内の空気が逆止弁16Aを通ってシリンダー11Aの外側の流動物90に排出される。
【0027】
その後、ピストン41Aを所定の位置(例えば、図2に示すようにシリンダー11Aの上端)にまで移動させたら、直動アクチュエータ51Aを停止させて、ピストン41Aをその位置に止める。ピストン41Aが止まっているので、ゴム板31Aの切り込み32Aが閉じるとともに、シリンダー11A内の流動物90のサンプルが採取孔12Aを通って流出しない。
【0028】
次に、クレーンによって採取装置10A,10B,10C及びコーン2を所定距離だけ上昇させる(図6(c)参照)。上段のピストン41Aが止まっているうえ、ゴム板31Aの切り込み32Aが閉じているので、シリンダー11A内への流動物90の浸入を防止できる。そのため、異なる深さのサンプルの混合を防止できる。
次に、中段の採取装置10Bの直動アクチュエータ51Bによってピストン41Bを上に移動させて、シリンダー11B内に流動物90を取り込む。
次に、クレーンによって採取装置10A,10B,10C及びコーン2を所定距離だけ上昇させる。
次に、上段の採取装置10Cの直動アクチュエータ51Cによってピストン41Cを上に移動させて、シリンダー11C内に流動物90を取り込む。
【0029】
次に、クレーンによって採取装置10A,10B,10C及びコーン2を流動物90から地上に引き上げる。ピストン41A,41B,41Cが止まっているので、シリンダー11A,11B,11C内の流動物90が採取孔12A,12B,12Cから流出することを防止できる。更に、ゴム板31A,31B,31Cの切り込み32A,32B,32Cが閉じ、採取孔12A,12B,12Cが切り込み32A,32B,32Cの周辺部によって塞がれているので、空気が採取孔12A,12B,12Cを通じてシリンダー11A,11B,11C内に流入することを防止でき、シリンダー11A,11B,11C内の流動物90が採取孔12A,12B,12Cを通って流出することも防止できる。
次に、逆止弁16Aを取り外す。そして、直動アクチュエータ51Aを作動させて、直動アクチュエータ51Aによってピストン41Aをシリンダー11Aの下端まで移動させることによって、シリンダー11A内の流動物90のサンプルを切り込み32A及び採取孔12Aを通じて排出する。採取装置10B,10Cについても同様にする。
そして、排出したサンプルの調査、検査又は試験等を行う。
【0030】
以上のように、採取装置10A,10B,10Cを流動物90に1回貫入するだけで、三箇所の深さで流動物90を採取することができる。また、クレーンによって採取装置10A,10B,10Cを流動物90内で昇降させたので、採取装置10A,10B,10Cを採取すべき深さに正確に位置決めすることができ、採取すべき深度の流動物90の採取を確実に行える。また、採取孔12Aがシリンダー11Aの周面の下部に形成されているので、孔92の底近傍の流動物90を採取することができる。
【0031】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。以上の実施形態からの変更点について以下に説明する。以下に説明する変形点は、可能な限り組み合わせて適用してもよい。
【0032】
(1) 上述の実施形態では、流動物90中で採取装置10A,10B,10Cを段階的に上昇させて、採取装置10A,10B,10Cの順でこれら採取装置10A,10B,10Cによって流動物90を採取した。それに対して、流動物90中で採取装置10A,10B,10Cを段階的に下降させて、採取装置10C,10B,10Aの順でこれら採取装置10C,10B,10Aによって流動物90を採取してもよい。また、採取装置10A,10B,10Cを段階的に上昇させずに、採取装置10A,10B,10Cの順でこれら採取装置10A,10B,10Cによって流動物90を採取してもよい。また、採取装置10A,10B,10Cの直動アクチュエータ51A,51B,51Cを同時に作動させて、これら採取装置10A,10B,10Cによって流動物90を同時に採取してもよい。
【0033】
(2) 採取装置10A,10B,10Cそれぞれが上下逆になって、採取装置10A,10B,10Cが上下に連結されてもよい。つまり、図7に示すように、下段の採取装置10Aの連結具65Aの下面に円錐状のコーン2が取り付けられ、下段の採取装置10Aのエンドプレート13Aと中段の採取装置10Bの連結具65Bが連結され、中段の採取装置10Bのエンドプレート13Bと上段の採取装置10Cの連結具65Cが連結され、上段の採取装置10Cのエンドプレート13Cの上面に治具3が取り付けられている。
【0034】
(3) 図8に示すように、上段の採取装置10Cの上端に、振動を発生させる起振装置4が設けられてもよい。起振装置4によって採取装置10A,10B,10C及びコーン2が振動すると、採取装置10A,10B,10C及びコーン2と流動物90との摩擦や抵抗が低下するので、採取装置10A,10B,10C及びコーン2が流動物90に進入しやすい。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
図9は、地下構造物としてのソイルセメント改良体110の斜視図である。図9に示すように、ソイルセメント改良体110は、複数の円柱状のソイルセメント柱112が地盤内に矩形枠状に配されて連結されたソイルセメント柱列壁である。ここで、隣り合ったソイルセメント柱112の中心間距離は、これらの直径よりも短くなっており、隣り合ったソイルセメント柱112は、互いに側部同士が重なり合った状態で接合されている。ソイルセメント柱112にはH形鋼等の芯材113が貫入されており、芯材113には複数のスタッドが設けられ、ソイルセメント柱112と芯材113の付着力がスタッドによって高められている。ソイルセメント柱112は地中の支持層に到達する深さまで構築されており、芯材113も支持層まで到達している。建物の下部(地下部分)がソイルセメント改良体110内側において地盤に埋設された状態で、その建物の上部(地上部分)が地盤上に構築されており、建物の下部がソイルセメント柱112及び芯材113に連結されている。このソイルセメント改良体110は、建物の施工時の山留め壁若しくは遮水壁として利用されるとともに、その建物を支持する本設杭として利用される。
【0036】
ソイルセメント改良体110を構築する際には、図10に示す掘削混練装置121を用いる。この掘削混練装置121は3本の削孔混練スクリュー122,122,122を有し、両側の削孔混練スクリュー122,122の下端に設けられた吐出口から固化液(セメントミルク)が吐出され、中央の削孔混練スクリュー122の下端に設けられた吐出口からエアーが吐出される。
【0037】
掘削混練装置121及び採取装置連結体1を用いたソイルセメント改良体110の製造方法について説明する。
まず、図11(a)に示すように、掘削混練装置121の削孔混練スクリュー122,122,122によって地盤130を掘削することによって、丸孔131,132,133を横方向に連ねるように形成する。その掘削の際に、両側の削孔混練スクリュー122,122の下端の吐出口から丸孔131,132,133内に固化液(セメントミルク)を供給するとともに、中央の削孔混練スクリュー122の下端の吐出口から空気を吐出する。そうすると、原位置土と固化液が削孔混練スクリュー122,122,122によって攪拌されて、丸孔131,132,133内にソイルセメント(原位置土と固化液の混合物)が充填される。そして、丸孔131,132,133が支持層に到達するまで、丸孔131,132,133の削孔及びソイルセメントの混練を行ったら、削孔混練スクリュー122,122,122による掘削を停止した上で、削孔混練スクリュー122,122,122によるソイルセメントの混連を継続する。その後、削孔混練スクリュー122,122,122を丸孔131,132,133から引き上げる。
【0038】
次に、第1の実施の形態における流動物90の採取方法と同様にして、ソイルセメントの固結前に採取装置連結体1(図1)を丸孔131,132,133内のソイルセメントに浸漬して、ソイルセメントの一部をサンプルとして採取する。
【0039】
次に、図11(b)に示すように、丸孔131,132,133内のソイルセメントの固結前に、丸孔131,132,133の場合と同様にして、丸孔133から丸孔1個分を隔てて丸孔134,135,136を削孔しつつ、丸孔134,135,136内にソイルセメントを施工する。その後、採取装置連結体1を用いて、丸孔134,135,136のソイルセメントの一部をサンプルとして採取する。
【0040】
次に、図11(c)に示すように、丸孔131〜133のソイルセメントの固結前に、両側の削孔混練スクリュー122,122を丸孔133,134に挿入して、丸孔133,134の間を中央の削孔混練スクリュー122により掘削することによって丸孔137を形成しつつ、固化液を丸孔133,137,134に供給する。その後、丸孔133,137,134内のソイルセメントを採取する。
【0041】
以後、既に形成した端の丸孔136から丸孔1個分離れた3つの丸孔138,139,140の削孔及びソイルセメントの混練・充填・採取と(図11(d)参照)、丸孔136と丸孔138の間の丸孔141の削孔及びソイルセメントの混練・充填・採取と(図11(e)参照)とを繰り返して行うことによって、枠状のソイルセメントを地盤130に形成する。それと並行して、ソイルセメントの固結前に、各丸孔131〜141(図11(e)の工程の後に形成した丸孔も)内のソイルセメントに芯材113を貫入する。
【0042】
そして、ソイルセメントを養生して、ソイルセメントを固結させる。各丸孔131〜141(図11(e)の工程の後に形成した丸孔も)内のソイルセメントの固結体がソイルセメント柱112となる。
また、採取したソイルセメントのサンプルの調査、検査又は試験等を行う。例えば、採取したサンプルを固結させて、そのサンプルの固結体の強度試験を行う。
【0043】
上述の説明では、いわゆるSMW工法(登録商標)によりソイルセメント改良体110を施工した。それに対して、いわゆるTRD工法(Trench cutting Re-mixing Deep wall method)によりソイルセメント改良体110を施工してもよい。具体的には、地中に挿入したチェーンソー型カッターを回転させ、地盤をチェーンソー型カッターによって切削しながらチェーンソー型カッターを水平方向に移動させることによって、連続した溝を地盤に掘削し、溝の掘削と同時に固化液を溝に供給して、固化液と原位置土を混合・撹拌する。そして、ソイルセメントの固結前に採取装置連結体1(図1)を用いて溝内のソイルセメントをサンプルとして採取した後、H形鋼等の芯材をソイルセメントに貫入する。そして、ソイルセメントを固結させる。
【符号の説明】
【0044】
1…採取装置連結体, 2…コーン, 10A,10B,10C…採取装置, 11A,11B,11C…シリンダー, 12A,12B,12C…採取孔, 15A,15B,15C…通気孔, 16A,16B,16C…逆止弁, 21A,21B,21C…保護ケース, 31A,31B,31C…ゴム板(弾性材), 32A,32B,32C…切り込み, 41A,41B,41C…ピストン, 51A,51B,51C…直動アクチュエータ(駆動部), 52A,52B,52C…シリンダーチューブ, 53A,53B,53C…ピストンロッド, 90…流動物, 91…地盤, 92…孔, 110…ソイルセメント改良体, 112…ソイルセメント柱, 131〜141…丸孔
図1
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図11