特許第6559037号(P6559037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559037
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】経路推定装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20190805BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20190805BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20190805BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20190805BHJP
【FI】
   G06Q30/02
   G01C21/26 P
   G01S1/68
   G01S5/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-199125(P2015-199125)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-72968(P2017-72968A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博之
(72)【発明者】
【氏名】川崎 仁嗣
(72)【発明者】
【氏名】塚本 昌克
【審査官】 海江田 章裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−040719(JP,A)
【文献】 特開2008−292237(JP,A)
【文献】 特開2009−042051(JP,A)
【文献】 特開2012−168677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00−99/00
G01C 21/26
G01S 1/68
G01S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末が通過した経路を前記ユーザ端末において取得された位置情報に基づき推定する経路推定装置であって、
抽象化された位置を示すノードの位置情報、及び、ノード間をつなぐリンクのユーザ属性情報毎のリンクコストを、それぞれ複数記憶するノードリンクデータ記憶手段と、
前記ノードリンクデータ記憶手段に記憶されている各リンクコストを、リンク及びユーザ属性情報の相関性に基づき補正する補正手段と、
前記ユーザ端末から、該ユーザ端末において取得された該ユーザ端末の位置情報、及び、該ユーザ端末に係るユーザ属性情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記ユーザ端末の位置情報、及び、前記ノードリンクデータ記憶手段に記憶されているノードの位置情報に基づき、前記ユーザ端末の位置を示すノードを推定する位置推定手段と、
前記位置推定手段により連続して推定された前記ユーザ端末の位置を示す2つのノードが他のノードを介して互いに接続された一対の間接接続ノードである場合に、該間接接続ノード間を接続する複数のリンクにより構成されたノード間経路候補を複数特定し、各ノード間経路候補の複数のリンクの、前記取得手段により取得されたユーザ属性情報に応じたリンクコストを、前記ノードリンクデータ記憶手段に記憶されているリンクコストより導出する導出手段と、
前記導出手段により導出されたリンクコストに基づいて、複数のノード間経路候補の中から、前記間接接続ノードを結ぶ補間経路を推定する経路推定手段と、を備える、経路推定装置。
【請求項2】
ユーザ端末が通過したリンクを示す情報と、ユーザ端末に係るユーザ属性情報とを含んだユーザ端末の移動履歴を記憶する移動履歴記憶手段を更に備え、
前記補正手段は、前記移動履歴記憶手段に記憶された移動履歴から、各リンクのユーザ属性情報毎の通過数を導出し、該通過数に基づいて各リンク及びユーザ属性情報の前記相関性を決定する、請求項1記載の経路推定装置。
【請求項3】
前記補正手段は、各リンクコストについて、リンク及びユーザ属性情報の相関性が高いほど低くなるように補正し、
前記経路推定手段は、前記複数のノード間経路候補のうち、ノード間経路候補を構成している複数のリンクのリンクコストの総和が最も低いノード間経路候補を、前記補間経路と推定する、請求項1又は2に記載の経路推定装置。
【請求項4】
ユーザ端末に係るユーザが購入した商品を示す情報と、ユーザ端末に係るユーザを示す情報とを含んだ購買履歴を記憶する購買履歴記憶手段を更に備え、
前記ノードリンクデータ記憶手段は、リンクのユーザ毎のリンクコストを記憶するとともに、各リンクに対応付けて前記商品を示す情報を記憶しており、
前記補正手段は、前記購買履歴記憶手段に記憶された購買履歴と、前記ノードリンクデータ記憶手段に記憶された情報とから、ユーザが購入した商品を示す情報に対応付けられたリンクを特定し、特定したリンクの該ユーザのリンクコストを補正する、請求項1〜3のいずれか一項記載の経路推定装置。
【請求項5】
前記位置推定手段により推定されたノード、及び、ノード間のリンクを、地図情報と対応付けて表示する表示手段を更に備え、
前記表示手段は、ノード間のリンクのうち前記経路推定手段により推定された補間経路を構成するリンクを、その他のリンクと区別して表示する、請求項1〜4のいずれか一項記載の経路推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設などにおいて、ユーザの携帯端末(以下、ユーザ端末と記載する場合がある)の位置に応じて店舗のクーポン等のコンテンツを配信する情報配信システムの普及が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。このような情報配信システムにおいては、例えばコンテンツ配信の有効性確認等の観点から、事後的にユーザ端末が通過した経路を再現したい場合がある。しかしながら、ユーザ端末の位置測位に失敗しているエリアについては、ユーザ端末が通過した経路を特定することが難しい。このような経路を特定する技術として、経路補間技術が知られている。例えば特許文献2に記載されたプログラムでは、補間対象となる区間の始点から終点に至る経路のうち確率分布密度に基づくスコア(リンクスコア)が最小となる経路を、補間経路として特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−186760号公報
【特許文献2】特開2012−42287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載された技術によって事後的な経路補間が行われるものの、ユーザ端末が通過した経路を高精度に再現することができていない。本発明は当該実情に鑑みてなされたものであり、ユーザ端末が通過した経路を高精度に再現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る経路推定装置は、ユーザ端末が通過した経路をユーザ端末において取得された位置情報に基づき推定する経路推定装置であって、抽象化された位置を示すノードの位置情報、及び、ノード間をつなぐリンクのユーザ属性情報毎のリンクコストを、それぞれ複数記憶するノードリンクデータ記憶手段と、ノードリンクデータ記憶手段に記憶されている各リンクコストを、リンク及びユーザ属性情報の相関性に基づき補正する補正手段と、ユーザ端末から、該ユーザ端末において取得された該ユーザ端末の位置情報、及び、該ユーザ端末に係るユーザ属性情報を取得する取得手段と、取得手段により取得されたユーザ端末の位置情報、及び、ノードリンクデータ記憶手段に記憶されているノードの位置情報に基づき、ユーザ端末の位置を示すノードを推定する位置推定手段と、位置推定手段により連続して推定されたユーザ端末の位置を示す2つのノードが他のノードを介して互いに接続された一対の間接接続ノードである場合に、該間接接続ノード間を接続する複数のリンクにより構成されたノード間経路候補を複数特定し、各ノード間経路候補の複数のリンクの、取得手段により取得されたユーザ属性情報に応じたリンクコストを、ノードリンクデータ記憶手段に記憶されているリンクコストより導出する導出手段と、導出手段により導出されたリンクコストに基づいて、複数のノード間経路候補の中から、間接接続ノードを結ぶ補間経路を推定する経路推定手段と、を備える。
【0006】
この経路推定装置では、各リンクそれぞれについてユーザの属性情報毎にリンクコストが記憶されている。そして、推定された間接接続ノード間を接続する複数のノード間経路候補の中から、ノード間経路候補を構成するリンクのリンクコストを考慮して、間接接続ノードを結ぶ補間経路が推定される。ここで、この経路推定装置では、リンクとユーザ属性情報との相関性に基づき、各リンクコストが補正されている。このため、リンクとユーザ属性情報との相関性が考慮されて、補間経路が推定されることとなる。これにより、ユーザ属性を考慮した場合にユーザが選択する可能性が高いと考えられる経路(リンク)を補間経路とすることができ、ユーザ端末が通過した経路を高精度に再現することができる。
【0007】
また、ユーザ端末が通過したリンクを示す情報と、ユーザ端末に係るユーザ属性情報とを含んだユーザ端末の移動履歴を記憶する移動履歴記憶手段を更に備え、補正手段は、移動履歴記憶手段に記憶された移動履歴から、各リンクのユーザ属性情報毎の通過数を導出し、該通過数に基づいて各リンク及びユーザ属性情報の相関性を決定してもよい。これにより、ユーザの実際の移動履歴に基づいて各リンク及びユーザ属性情報の相関性が決定され、各リンクコストが補正される。このことで、過去の実データに応じて、ユーザが選択する可能性が高いと考えられる経路(リンク)を補間経路とすることができ、ユーザ端末が通過した経路を高精度に再現することができる。
【0008】
また、補正手段は、各リンクコストについて、リンク及びユーザ属性情報の相関性が高いほど低くなるように補正し、経路推定手段は、複数のノード間経路候補のうち、ノード間経路候補を構成している複数のリンクのリンクコストの総和が最も低いノード間経路候補を、補間経路と推定してもよい。これにより、リンクコストに応じて確実且つ簡易に補間経路を推定することができる。
【0009】
また、ユーザ端末に係るユーザが購入した商品を示す情報と、ユーザ端末に係るユーザを示す情報とを含んだ購買履歴を記憶する購買履歴記憶手段を更に備え、ノードリンクデータ記憶手段は、リンクのユーザ毎のリンクコストを記憶するとともに、各リンクに対応付けて商品を示す情報を記憶しており、補正手段は、購買履歴記憶手段に記憶された購買履歴と、ノードリンクデータ記憶手段に記憶された情報とから、ユーザが購入した商品を示す情報に対応付けられたリンクを特定し、特定したリンクの該ユーザのリンクコストを補正してもよい。ユーザ属性に応じた補正に加えて、ユーザの購買履歴に応じた補正を行うことにより、補間経路の推定精度を向上させることができ、ユーザ端末が通過した経路をより高精度に再現することができる。
【0010】
また、位置推定手段により推定されたノード、及び、ノード間のリンクを、地図情報と対応付けて表示する表示手段を更に備え、表示手段は、ノード間のリンクのうち経路推定手段により推定された補間経路を構成するリンクを、その他のリンクと区別して表示してもよい。これにより、補間経路を視覚的に簡易に把握することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザ端末が通過した経路を高精度に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る経路推定装置の機能構成を示す図である。
図2図1に示した経路推定装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】ノードリンクデータ記憶部において記憶されている情報の一例を示す図であり、図3(a)はノードデータの一例を、図3(b)はリンクデータの一例をそれぞれ示している。
図4】履歴記憶部において記憶されている移動履歴データの一例を示す図である。
図5】表示部によって出力された情報の、表示装置における表示イメージを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る経路推定装置の経路推定処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係るリンクコスト更新処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の変形例に係るリンクデータの一例を示す図である。
図9】本発明の変形例に係る購買履歴データの一例を示す図である。
図10】本発明の変形例に係る経路推定処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の変形例に係るリンクコスト更新処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る経路推定装置の機能構成を示す図である。図1に示されるように、経路推定装置10は、経路推定システム1に含まれている。経路推定システム1は、経路推定装置10と、経路推定装置10と通信可能な携帯端末20(ユーザ端末)と、無線電波装置30と、表示装置40とを備えている。経路推定システム1は、例えば、スーパーマーケット等の店舗(商業施設)内において、携帯端末20が通過した経路を推定(再現)する用途で用いられる。このようにして推定された携帯端末20の経路を示す情報は、例えば、携帯端末20の位置に応じたコンテンツの配信に利用される。すなわち、リアルタイムに携帯端末20の経路を再現することにより、例えば携帯端末20の移動距離や通過ルートに応じたコンテンツ配信が可能になる。或いは、事後的に携帯端末20の経路を再現することにより、コンテンツ配信の有効性を確認することができる。コンテンツ配信の有効性を確認するとは、例えば位置に応じてクーポンを配信するなどの場合に、どのような経路を通過したユーザがクーポンを利用したかを確認すること等をいう。更に、事後的に携帯端末20の経路を再現することに加えて、当該経路を可視化することにより、商業施設等に対して、位置に応じたコンテンツ配信の有用性を示すことができる。
【0015】
経路推定装置10は、携帯端末20において取得された位置情報に基づき携帯端末20が通過した経路を推定するサーバである。経路推定装置10の詳細については後述する。表示装置40は、経路推定装置10によって出力された情報を表示するディスプレイである。表示装置40の詳細については後述する。
【0016】
無線電波装置30は、携帯端末20によって受信可能な電波を送出する無線電波装置である。無線電波装置30は、受信可能な電波として、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)信号、光ビーコン信号、又はWiFi(Wireless Fidelity)(登録商標)信号を送出する。以下では、無線電波装置30がBLE信号を送出するとして説明する。無線電波装置30は、予め、携帯端末20がBLE信号を受信することができる範囲に、固定されて複数設けられている。例えばスーパーマーケット等であれば、無線電波装置30は、携帯端末20を所持するユーザが通過する箇所の近傍である、商品陳列棚等に複数設けられる。無線電波装置30により送出されるBLE信号には、無線電波装置30を一意に特定する情報、及び電波の受信強度を示す情報が含まれている。無線電波装置30を一意に特定する情報としては、各無線電波装置30に予め設定されたBSSID(Basic Service Set Identifier)を用いることができる。なお、BSSIDは、一般的にはMACアドレスとも呼ばれている。また、電波の受信強度を示す情報としては、RSSI(Received Signal Strength Indication,ReceivedSignalStrength Indicator)を用いることができる。
【0017】
携帯端末20は、無線電波装置30からの電波に基づき携帯端末20の位置情報を取得する装置である。携帯端末20はユーザに所持(携帯)されて用いられる。携帯端末20は、例えばスマートホン等の携帯電話機、又は、タブレット端末等である。携帯端末20は、継続的(連続的)に、繰り返し位置情報を取得する。具体的には、携帯端末20は、無線電波装置30からBLE信号を受信することにより自端末の位置情報を取得する。携帯端末20は、例えば、BLE信号に含まれている、BSSIDを、自端末の位置情報(位置を示す情報)として取得する。すなわち、携帯端末20は、BSSIDを取得することにより、当該BSSIDで特定される無線電波装置30の位置を、自端末の位置情報として取得することができる。なお、携帯端末20は、同時(或いは短い時間間隔において連続的)に複数の無線電波装置30からBLE信号を受信することがある。この場合、携帯端末20は、例えばRSSIが最も大きいBLE信号に係るBSSIDを、自端末の位置情報としてもよい。携帯端末20は、取得した位置情報(すなわち、BSSID)を、当該位置情報が取得された日時を示す情報、及び、携帯端末20の所持者であるユーザを一意に特定するユーザIDと共に、経路推定装置10に送信する。当該送信は、位置情報が取得される度に行われてもよいし、所定の時間間隔で行われてもよい。
【0018】
また、携帯端末20は、所持者であるユーザのデモグラ(デモグラフィック)情報(ユーザ属性情報)を記憶している。デモグラ情報とは、人口統計学的属性を示す情報であり、性別、年齢、住んでいる地域、所得、職業、学歴、家族構成等の、ユーザの持つ社会経済的な特質データである。携帯端末20は、上述した位置情報とともに、ユーザのデモグラ情報を経路推定装置10に送信する。より詳細には、携帯端末20は、デモグラ情報を示すデモグラ情報を一意に特定するためのID番号であるデモグラIDを、経路推定装置10に送信する。
【0019】
次に、経路推定装置10の機能の詳細について図1を参照して説明する。図1に示されるように、経路推定装置10は、ノードリンクデータ記憶部11(ノードリンクデータ記憶手段)と、補正部12(補正手段)と、履歴記憶部13(移動履歴記憶手段)と、ユーザ情報取得部14(取得手段)と、位置推定部15(位置推定手段)と、導出部16(導出手段)と、経路推定部17(経路推定手段)と、表示部18(表示手段)と、を備えている。
【0020】
図2は、図1に示した経路推定装置10のハードウェア構成を示す図である。経路推定装置10は、物理的には、図2に示すように、1又は複数のCPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、半導体メモリ等の補助記憶装置107等を含むコンピュータとして構成されている。
【0021】
経路推定装置10の各機能は、図2に示すCPU101、RAM102等のハードウェア上に1又は複数の所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置104、出力装置105、通信モジュール106を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0022】
図1に戻り、ノードリンクデータ記憶部11は、抽象化された位置を示すノードの位置情報、及び、ノード間をつなぐリンクのデモグラ情報毎のリンクコストをそれぞれ複数記憶するデータベースである。ノードとは、ある範囲をもった建物内の位置や屋外の位置を抽象化したものである。例えば図5に示されるような店舗内において、各商品コーナーの棚の前の領域が1つのノードNである。1つのノードNは、例えば1つの無線電波装置の位置に対応付いた位置である。そして、各ノードN間にはリンク(接続関係、繋がり)Lが設定される。リンクLは、例えばユーザが移動できるか否かに基づいて設定される。すなわち、ノードN間の通路であって、ユーザが移動することができる通路が、リンクLとして設定される。
【0023】
図3は、ノードリンクデータ記憶部11において記憶されている情報の一例を示す図であり、図3(a)はノードデータ111の一例を、図3(b)はリンクデータ112の一例をそれぞれ示している。図3(a)に示されるように、ノードデータ111においては、ノード毎に、ノードID、中心緯度経度、半径(m)、及びBSSIDが対応付けられている。ノードIDは、ノードを一意に特定するためのID番号である。中心緯度経度は、当該ノードの中心の位置の緯度及び経度を示す情報(ノードの位置情報)である。半径(m)は、当該ノードの範囲を示す当該ノードの中心からの半径を示す情報である。BSSIDは、当該ノードに対応付けられる無線電波装置のBSSIDである。なお、必ずしも、ノードに対して無線電波装置が対応付けられて設けられていなくてもよい。この場合、ノードデータ111においては、BSSIDと対応付けられていないノードIDが存在することとなる。
【0024】
図3(b)に示されるように、リンクデータ112においては、リンク毎に、リンクID、ノードID、隣接ノードID、デモグラID、ユークリッド距離(m)、相関性重み、及びリンクコストが対応付けられている。リンクIDは、リンクを一意に特定するためのID番号である。ノードIDは、当該リンクに係る一方のノードを一意に特定するためのID番号である。隣接ノードIDは、ノードIDで示されるノードに隣接するノードであって当該リンクに係る他方のノードを一意に特定するためのID番号である。デモグラIDは、デモグラ情報を一意に特定するためのID番号である。ユークリッド距離(m)は、リンクIDで示されるリンクの距離、すなわち、ノードID及び隣接ノードIDによって示される2つのノードの中心緯度経度間の距離(m)を示す情報である。相関性重みは、リンクIDで示されるリンクとデモグラIDで示されるデモグラ情報との相関性を示す値である。相関性重みは、リンクとデモグラ情報との相関性が高いほど大きな値とされる。リンクコストは、ユークリッド距離及び相関性重みに応じて定まる、リンクの選択されにくさを示す値である(詳細は後述)。
【0025】
上述したように、ユークリッド距離に応じて、各リンクそれぞれのデモグラ情報毎のリンクコストが定まる。より詳細には、ユークリッド距離及び相関性重みに応じて、各リンクそれぞれのデモグラ情報毎のリンクコストが定まる。リンクコストは、リンクの選択されにくさを示す値である。リンクコストは、ユークリッド距離が大きいほど高くなる。これは、ユークリッド距離が大きいすなわちリンクの長さが長いほど、連続的に位置情報が取得される環境下において、当該リンクに係るノードID及び隣接ノードIDで示されるノードが携帯端末20の連続する位置となりにくいとの考えに基づくものである。また、リンクコストは、相関性重みが小さいほど高くなる。これは、相関性重みが小さい、すなわちリンクとデモグラ情報との相関性が低いほど、該デモグラ情報に係るユーザが該リンクを選択する確率が低いとの考えに基づくものである。このように、ノードリンクデータ記憶部11は、リンクに関する情報として、リンクのユークリッド距離及び相関性重みに応じて定まるリンクコストを、各リンクそれぞれについてデモグラ情報毎に記憶している。
【0026】
図1に戻り、補正部12は、ノードリンクデータ記憶部11に記憶されている各リンクコストを、リンク及びデモグラ情報の相関性に基づき補正する。具体的には、補正部12は、各リンクコストについて、リンクとの相関性が低いデモグラ情報のリンクコストほど高くなるように(リンクとの相関性が高いデモグラ情報のリンクコストほど低くなるように)補正する。補正部12は、履歴記憶部13に記憶された移動履歴から、各リンクのデモグラ情報毎の通過数(移動総数)を導出する。更に、補正部12は、該通過数が少ないリンク及びデモグラ情報の組合せほど、互いの相関性が低いとみなし、ノードリンクデータ記憶部11に記憶されている相関性重みを小さくする。これにより、各リンクコストについて、リンクとの相関性が低いデモグラ情報のリンクコストほど高くなるように補正される。補正部12は、例えば履歴記憶部13の移動履歴が更新される度に、上記補正を行う。なお、補正部12は、所定の時間間隔で上記補正を行ってもよい。
【0027】
履歴記憶部13は、携帯端末20が通過したリンクを示す情報と、携帯端末20に係るデモグラ情報とを含んだ携帯端末20の移動履歴を記憶している。履歴記憶部13は、位置推定部15によって格納された、携帯端末20が存在するノードに関する情報を、上記移動履歴として記憶している(詳細は後述)。
【0028】
図4は、履歴記憶部13において記憶されている移動履歴データ131の一例を示す図である。図4に示されるように、移動履歴データ131においては、移動履歴毎に、移動ID、ユーザID、デモグラID、ノードID、直前ノードID、リンクID、及び日時が対応付けられている。移動IDは、移動履歴を一意に特定するためのID番号である。ユーザIDは、移動履歴に係るユーザを一意に特定するためのID番号である。デモグラIDは、ユーザIDで示されるユーザに係るデモグラ情報を一意に特定するためのID番号である。ノードIDは、携帯端末20が存在するノードとして位置推定部15に推定されたノード(詳細は後述)を一意に特定するためのID番号である。直前ノードIDは、携帯端末20が存在するノードとして、直前(1つ前)に位置推定部15に推定されたノードを一意に特定するためのID番号である。リンクIDは、ノードID及び直前ノードIDによって示されるノード間のリンクを一意に特定するためのID番号である。日時は、位置推定部15によるノードの推定に用いられた、携帯端末20の位置情報が取得された日時である。
【0029】
上述したように、補正部12は、履歴記憶部13に記憶された移動履歴から、各リンクのデモグラ情報毎の通過数を導出し、該通過数が少ないリンク及びデモグラ情報の組合せほど、ノードリンクデータ記憶部11に記憶されている相関性重みを小さくする。例えば、図4に示す移動履歴データ131においては、リンクID「15」、デモグラID「3」の組合せについて、通過数(移動履歴数)が「4」である。また、リンクID「16」、デモグラID「3」の組合せについて、通過数が「2」である。この場合、補正部12は、通過数が「2」であるリンクID「16」、デモグラID「3」の組合せの相関性重みを、通過数が「4」であるリンクID「15」、デモグラID「3」の組合せの相関性重みよりも小さくする。具体的には、補正部12は、下記(1)式により、相関性重みを導出する。なお、下記(1)式において、hはあるリンク及びデモグラ情報の組合せの相関性重みを、Tyは図4の移動履歴データ131において日時が所定の期間(例えば3ヶ月)内である全通過数を、LDyは上記リンク及びデモグラ情報の組合せの通過数を、αは任意に変更可能な重み付け係数を、それぞれ示している。
h=1+Ty/LDy*α…(1)
【0030】
補正部12は、上述した(1)式により導出した相関性重みを、図3(b)のリンクデータ112に入力する。更に、補正部12は、図3(b)に示すユークリッド距離と相関性重みとから、各リンクのデモグラ情報毎のリンクコストを更新する。具体的には、補正部12は、下記(2)式により、リンクコストを更新する。なお、下記(2)式において、Lcはあるリンク及びデモグラ情報の組合せのリンクコストを、Edは上記リンクのユークリッド距離を、hはあるリンク及びデモグラ情報の組合せの相関性重みを、それぞれ示している。
Lc=Ed*h…(2)
【0031】
ユーザ情報取得部14は、携帯端末20において取得された携帯端末20の位置情報(すなわち、BSSID)、及び、携帯端末20に係るデモグラ情報(すなわち、デモグラID)を、携帯端末20から連続的に取得する。より詳細には、ユーザ情報取得部14は、携帯端末20の所持者であるユーザの情報(ユーザ情報)として、上記位置情報及びデモグラ情報に加えて、位置情報が取得された日時を示す情報及びユーザIDを連続的に取得する。ユーザ情報取得部14は、当該ユーザ情報を位置推定部15に出力する。
【0032】
位置推定部15は、ユーザ情報取得部14により連続的に取得される携帯端末20のユーザ情報、並びに、ノードリンクデータ記憶部11に記憶されているノードデータ111及びリンクデータ112に基づき、携帯端末20が位置する(存在する)ノードを連続的に推定する。位置推定部15は、ユーザ情報取得部14からユーザ情報が入力されるたびにノードの推定を行ってもよいし、所定の時間間隔で複数のノードの推定をまとめて行ってもよい。以下では、位置推定部15は、ユーザ情報が入力されるたびにノードの推定を行うとして説明する。
【0033】
位置推定部15は、ユーザ情報取得部14からユーザ情報の入力を受けると、ノードリンクデータ記憶部11のノードデータ111を参照する。そして、位置推定部15は、ノードデータ111において、ユーザ情報に含まれているBSSIDと一致するBSSIDが対応付いたノードIDを特定する。更に、位置推定部15は、履歴記憶部13の移動履歴データ131を参照し、ユーザ情報に含まれているユーザID及び日時を示す情報に基づいて、当該ユーザIDで示されるユーザのノードIDとして直近(直前)に特定されたノードを示す直前ノードIDを特定する。そして、位置推定部15は、ノードリンクデータ記憶部11のリンクデータ112を参照し、上述したノードID及び直前ノードIDの組合せと一致する、ノードID及び隣接ノードIDの組合せに係るリンクを示すリンクIDを特定する。
【0034】
ここで、携帯端末20においては、無線電波装置30からの電波が人や物によって遮蔽され、正しく位置情報を取得できない場合がある。この場合、上述したノードIDで示されるノード及び直前ノードIDで示されるノードは、互いに直接接続されずに1つ以上の他のノードを介して接続される一対のノード(間接接続ノード)となることがある。この場合、リンクデータ112においてノードID及び直前ノードIDの組み合わせと一致するノードID及び隣接ノードIDの組み合わせがないので、位置推定部15は、リンクIDをnull値とする。すなわち、位置推定部15は、連続して推定した携帯端末20の位置を示す2つのノードが一対の間接接続ノードである場合には、リンクIDがnull値であると特定する。
【0035】
位置推定部15は、ユーザ情報に含まれたユーザID、デモグラID、及び日時を示す情報と、特定したノードID、直前ノードID、及びリンクIDと、移動履歴を一意に特定する移動IDとを対応付けた移動履歴を、履歴記憶部13の移動履歴データ131に格納する。上記処理後、位置推定部15は、移動IDを導出部16に出力する。
【0036】
導出部16は、位置推定部15により連続的に推定されたノード間のリンクのリンクコストであってユーザ情報取得部14によって取得されたデモグラ情報に応じたリンクコストを、ノードリンクデータ記憶部11のリンクデータ112に基づき導出する。より詳細には、まず、導出部16は、位置推定部15により連続して推定された携帯端末20の位置を示す2つのノードが、少なくとも1つの他のノードを介して互いに接続された一対の間接接続ノードであるか否かを判定する。具体的には、導出部16は、位置推定部15から移動IDの入力を受けると、履歴記憶部13の移動履歴データ131を参照し、該移動IDと対応付けられたリンクIDを取得する。当該リンクIDがnull値である場合には、導出部16は、該移動IDに係る2つのノードが一対の間接接続ノードであると判定する。一方で、当該リンクIDがnull値でない場合には、導出部16は、該移動IDに係る2つのノードが間接接続ノードではないと判定する。
【0037】
上記判定結果によって、導出部16の処理が異なる。間接接続ノードではないと判定された場合(すなわち、2つのノードが1つのリンクにより直接接続されている場合)には、導出部16は、リンクIDを経路推定部17に出力する。
【0038】
一方で、間接接続ノードであると判定された場合には、導出部16は、間接接続ノード間を接続する複数のリンクにより構成されたノード間経路候補を複数特定し、複数のノード間経路候補それぞれの複数のリンクのリンクコストを導出する。すなわち、導出部16は、まずリンクデータ112を参照し、間接接続ノード間を接続するノード間経路候補を特定する。ノード間経路候補は、間接接続ノードの一方のノード(直前ノードIDで示されるノード)を始点とし、間接接続ノードの他方のノード(ノードIDで示されるノード)を終点とした、複数のリンクによって構成される経路である。例えば図5に示した例において、間接接続ノードがノードN4及びノードN15であるとすると、ノードN4からリンクL16、ノードN5、及びリンクL31を経てノードN15に到達する経路が、一のノード間経路候補である。同様に、ノードN4からリンクL41、ノードN12、及びリンクL51を経てノードN15に到達する経路が、別の一のノード間経路候補である。
【0039】
導出部16は、ノード間経路候補を複数特定すると、リンクデータ112を参照し、各ノード間経路候補それぞれを構成する複数のリンクのリンクコストを導出する。例えば図5に示した例において、間接接続ノードがノードN4及びノードN15である場合、一のノード間経路候補を構成するリンクL16,L31のリンクコストをそれぞれ導出する。同様に、別の一のノード間経路候補を構成するリンクL41,L51のリンクコストをそれぞれ導出する。
【0040】
より詳細には、導出部16は、ノード間経路候補それぞれの複数のリンクのリンクコストであってユーザ情報取得部14によって取得されたデモグラ情報に応じたリンクコストを導出する。すなわち、導出部16は、移動履歴データ131を参照して、位置推定部15により入力された移動IDに対応付けられたリンクID及びデモグラIDを特定する。そして、導出部16は、リンクデータ112を参照し、ノード間経路候補を構成する複数のリンクのリンクコストのうち、上記リンクID及びデモグラIDの組み合わせに対応付けられたリンクコストを導出する。導出部16は、位置推定部15により入力された移動IDと、導出したリンクコスト及び該リンクコストに係るリンクIDとを経路推定部17に出力する。
【0041】
経路推定部17は、導出部16から入力された情報に基づいて、ノード間を結ぶ経路を推定する。経路推定部17は、位置推定部15により推定された2つのノードが間接接続ノードでない場合には、導出部16からリンクIDの入力を受け、当該リンクIDで示されるリンクを上記2つのノード間の経路であると推定する。
【0042】
一方、位置推定部15により推定された2つのノードが間接接続ノードである場合には、経路推定部17は、導出部16により導出されたリンクコストに基づいて、複数のノード間経路候補のうち1つのノード間経路候補を、間接接続ノードを結ぶ補間経路と推定する。具体的には、経路推定部17は、複数のノード間経路候補のうち、ノード間経路候補を構成している複数のリンクのリンクコストの総和が最も低いノード間経路候補を、補間経路と推定する。すなわち、経路推定部17は、導出部16から入力された移動IDにより、間接接続ノードを示すノードID及び直前ノードIDを特定する。また、経路推定部17は、上記間接接続ノードを示す情報と、導出部16から入力されたリンクコスト及び該リンクコストに係るリンクIDとに基づいて、複数のノード間経路候補を特定するとともに、各ノード間経路候補を構成するリンクのリンクコストの総和をそれぞれ算出し、補間経路を推定する。
【0043】
経路推定部17は、推定した経路を特定する情報を、携帯端末20及び外部装置(図示せず)に送信する。当該外部装置は、例えば携帯端末20の経路に応じたコンテンツを配信する装置である。推定した経路を特定する情報とは、例えばリンクを示すリンクIDである。経路推定部17は、推定した経路が補間経路である場合には、その旨の情報を、経路を特定する情報とともに送信してもよい。また、経路推定部17は、推定した経路が補間経路である場合に、当該補間経路の情報を履歴記憶部13の移動履歴データ131に格納してもよい。この場合、経路推定部17は、新たに格納する移動履歴が補間経路である旨を示す情報と、新たに格納する移動履歴がいずれの間接接続ノードの補間経路に係るものであるかを示す情報を、併せて移動履歴データ131に格納する。
【0044】
表示部18は、位置推定部15により推定されたノード、及び、ノード間のリンクを、マップ(地図情報)と対応付けて表示装置40に表示する。表示部18は、例えば、店舗内の各商品コーナーのマップをマップDB(図示せず)から取得し、該マップに、ノード及びリンクの位置を対応付けて表示する。表示部18は、マップにノード及びリンク(すなわち経路)を対応付けて表示する際、ノード間のリンクのうち経路推定部17により推定された補間経路を構成するリンクを、その他のリンクと区別して表示してもよい。表示部18は、当該表示を、履歴記憶部13の移動履歴データ131を参照することにより行う。
【0045】
図5は、表示部18によって出力された情報の表示装置40における表示イメージを示す図である。表示部18は、例えば経路推定装置10のオペレータから、日時及びユーザIDの指定を受ける。当該指定を受けた表示部18は、履歴記憶部13の移動履歴データ131を参照し、指定を受けた日時及びユーザIDの移動履歴を抽出する。例えば、図5では、ノードN3からリンクL15、ノードN4、リンクL16、ノードN5、リンクL31、及びノードN15を、マップMi上にハイライト表示している。当該ノードN3〜ノードN15の経路が、ユーザIDで示されるユーザの移動経路である。また、図5では、上記ユーザの移動経路のうち、移動履歴データ131において補間経路を構成するリンクとされているリンクL16及びリンクL31が、その他のリンクと区別して表示されている。
【0046】
次に、経路推定装置10の位置推定処理を説明する。図6は、経路推定装置10の経路推定処理を示すフローチャートである。
【0047】
経路推定処理では、最初に、ユーザ情報取得部14により、携帯端末20からユーザ情報が取得される(ステップS1)。当該ユーザ情報には、携帯端末20の位置情報、ユーザのデモグラ情報、位置情報が取得された日時を示す情報、及びユーザIDが含まれている。
【0048】
つづいて、位置推定部15により、携帯端末20の位置(ノード)が推定される(ステップS2)。位置推定部15は、ユーザ情報取得部14により連続的に取得される携帯端末20のユーザ情報、並びに、ノードリンクデータ記憶部11に記憶されているノードデータ111及びリンクデータ112に基づき、携帯端末20が位置する(存在する)ノードを連続的に推定する。
【0049】
つづいて、導出部16により、位置推定部15が連続して推定した携帯端末20の位置を示す2つのノードが一対の間接接続ノードか否かが判定される(ステップS3)。ステップS3において間接接続ノードでないと判定された場合には、導出部16は2つのノード間のリンクを示すリンクIDを経路推定部17に出力し、経路推定部17により、当該リンクIDで示されたリンク(すなわち連続して推定された2つのノードを直接つなぐリンク)が、2つのノード間の経路である旨の情報が外部装置(図示せず)等に送信される(ステップS4)。
【0050】
一方で、ステップS3において間接接続ノードであると判定された場合には、導出部16により、間接接続ノード間を接続する複数のリンクにより構成されたノード間経路候補が複数特定され、各ノード間経路候補を構成する複数のリンクのリンクコストが導出される。より詳細には、導出部16は、ノード間経路候補それぞれの複数のリンクのリンクコストであってユーザ情報取得部14によって取得されたデモグラ情報に応じたリンクコストを導出する。そして、経路推定部17により、ノード間経路候補を構成している複数のリンクのリンクコストの総和が最も低いノード間経路候補(リンクの組み合わせ)が、補間経路と推定され、当該補間経路を特定する情報が外部装置(図示せず)等に送信される(ステップS5)。以上が経路推定処理である。
【0051】
次に、経路推定装置10のリンクコスト更新処理を説明する。図7は、リンクコスト更新処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
リンクコスト更新処理では、最初に、ノードリンクデータ記憶部11において記憶されるノードデータ111及びリンクデータ112が作成される(ステップS11)。当該ノードデータ111及びリンクデータ112は、例えばオペレータが各データを手入力することにより作成される。リンクデータ112においては、相関性重みは例えば「1」とされ、ユークリッド距離に応じてリンクコストが設定される(ステップS12)。
【0053】
つづいて、補正部12は、移動履歴データ131の移動履歴が更新されたか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13において移動履歴が更新されていない場合には、所定の時間が経過した後に、再度ステップS13の判定が行われる。一方で、ステップS13において移動履歴が更新されている場合には、補正部12により、移動履歴に基づいて各リンクのデモグラ情報毎の通過数が導出される(ステップS14)。そして、補正部12により、該通過数に基づいて、各リンクのデモグラ情報毎のリンクコストが更新される(ステップS15)。すなわち、補正部12は、通過数が少ないリンク及びデモグラ情報の組合せほどリンクデータ112の相関性重みを小さくし、リンクデータ112のユークリッド距離と相関性重みとから、各リンクのデモグラ情報毎のリンクコストを導出する。ステップS15の処理が完了すると、再度ステップS13の処理が行われる。以上がリンクコスト更新処理である。
【0054】
次に、上述した経路推定装置10の作用効果について説明する。
【0055】
この経路推定装置10では、リンクのユークリッド距離に応じて定まるリンクコストが、各リンクそれぞれについてユーザのデモグラ情報毎に記憶されている。そして、位置推定部15により推定された間接接続ノード間を接続する複数のノード間経路候補の中から、ノード間経路候補を構成するリンクのリンクコストを考慮して、間接接続ノードを結ぶ補間経路が推定される。ここで、この経路推定装置10では、リンクとデモグラ情報との相関性に基づき、各リンクコストが補正されている。このため、リンクとデモグラ情報との相関性が考慮されて、補間経路が推定されることとなる。これにより、ユーザ属性を考慮した場合にユーザが選択する可能性が高いと考えられる経路(リンク)を補間経路とすることができ、携帯端末20が通過した経路を高精度に再現することができる。
【0056】
また、携帯端末20が通過したリンクを示す情報と、携帯端末20に係るデモグラ情報とを含んだ携帯端末20の移動履歴を記憶する履歴記憶部13を備え、補正部12が、履歴記憶部13に記憶された移動履歴から、各リンクのデモグラ情報毎の通過数を導出し、該通過数に基づいて各リンク及びデモグラ情報の相関性を決定する。これにより、ユーザの実際の移動履歴に基づいて各リンク及びデモグラ情報の相関性が決定され、各リンクコストが補正される。このことで、過去の実データに応じて、ユーザが選択する可能性が高いと考えられる経路(リンク)を補間経路とすることができ、ユーザ端末が通過した経路を高精度に再現することができる。
【0057】
また、補正部12は、各リンクコストについて、リンク及びデモグラ情報の相関性が高いほど低くなるように補正し、経路推定部17は、複数のノード間経路候補のうち、ノード間経路候補を構成している複数のリンクのリンクコストの総和が最も低いノード間経路候補を、補間経路と推定する。これにより、リンクコストに応じて確実且つ簡易に補間経路を推定することができる。
【0058】
また、位置推定部15により推定されたノード、及び、ノード間のリンクを、マップ(地図情報)と対応付けて表示する表示部18を更に備え、表示部18は、ノード間のリンクのうち経路推定部17により推定された補間経路を構成するリンクを、その他のリンクと区別して表示する。これにより、補間経路を視覚的に簡易に把握することができる。このことで、補間経路であることを意識した上で、コンテンツ配信の分析や客の移動状況の分析を行うことができるようになり、ユーザビリティが向上する。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、補正部12は、履歴記憶部13の移動履歴データ131に記憶された移動履歴から、各リンクのデモグラ情報毎の通過数を導出し、該通過数が少ないリンク及びデモグラ情報の組合せほど、互いの相関性が低いとみなすとして説明したが、リンク及びデモグラ情報の相関性は、予め設定されていてもよい。
【0060】
また、携帯端末20は無線電波装置30からの無線電波に基づいて位置情報を取得するとして説明したがこれに限定されず、GPS(Global Positioning System)又は基地局測位等の他の測位方法により、位置情報を取得してもよい。
【0061】
また、補正部12により、リンクとの相関性が低いデモグラ情報のリンクコストほど高くなるように補正するとして説明したが、別の基準に沿って、リンクコストが更に補正(更新)されてもよい。
【0062】
すなわち、履歴記憶部13が、携帯端末20に係るユーザが購入した商品を示す情報(商品ID)と、携帯端末20に係るユーザを示す情報(ユーザID)とを含んだ購買履歴を記憶する購買履歴記憶手段として機能し、ノードリンクデータ記憶部11がリンクのユーザ毎のリンクコストを記憶するとともに各リンクに対応付けて商品を示す情報(商品ID)を記憶し、補正部12が、履歴記憶部13に記憶された購買履歴と、ノードリンクデータ記憶部11が記憶する情報とから、ユーザが購入した商品を示す情報(商品ID)に対応付けられたリンクを特定し、特定したリンクの該ユーザのリンクコストを補正してもよい。以下、当該変形例に係る経路推定装置10について、図8図11を参照して説明する。
【0063】
図8は、当該変形例に係るリンクデータ112Aの一例を示す図である。当該変形例では、ノードリンクデータ記憶部11は、当該リンクデータ112Aを記憶している。上述したリンクデータ112ではデモグラ情報毎に各リンクのリンクコストが記憶されていたのに対し、リンクデータ112Aではユーザ毎に各リンクのリンクコストが記憶されている。また、リンクデータ112Aでは、各リンクに対応付けて商品を示す情報(商品ID)を記憶している。当該商品IDは、店舗内で販売されている商品を一意に特定するためのID番号である。リンクと商品IDとの対応付けは、当該商品IDで示される商品が置かれた棚がいずれのリンクに近接しているかに応じて行われている。例えば図8に示す例では、商品IDD1〜D20で示される各飲み物が、リンクID16で示されるリンクと対応付けられている。これは、飲み物コーナーがリンクID16で示されるリンクの近傍に設けられていることを示している。
【0064】
図9は、当該変形例に係る購買履歴データ132の一例を示す図である。当該変形例では、履歴記憶部13は、移動履歴データ131に加えて、購買履歴データ132を記憶している。購買履歴データ132においては、購買履歴毎に、購買ID、ユーザID、購買日時、購入商品、及び商品IDが対応付けられている。購買IDは、購買履歴を一意に特定するためのID番号である。ユーザIDは、購買に係るユーザを一意に特定するためのID番号である。購買日時は、購買した日時を示す情報である。購入商品は購入した商品名であり、商品IDは、購入した用品を一意に特定するためのID番号である。購買履歴は、例えばPOSシステムを利用して外部装置(図示せず)から経路推定装置10に送信される。なお、この場合、POSシステムにおいて購入ユーザを特定する情報(ユーザID)と、経路推定装置10においてユーザを特定する情報(ユーザID)とが統一されている必要がある。
【0065】
上記リンクデータ112A及び購買履歴データ132が記憶されている環境下において、補正部12は、ユーザが購入した商品を示す情報に対応付けられたリンクを特定し、特定したリンクの、該ユーザのリンクコストを補正する。すなわち、補正部12は、購買履歴データ132が更新されたタイミングで、履歴記憶部13の購買履歴データ132を参照し、購買IDに対応付けられたユーザID及び商品IDを特定する。そして、補正部12は、ノードリンクデータ記憶部11のリンクデータ112Aを参照し、上記ユーザIDで示されるユーザのリンクコストであって、上記商品IDが対応付けられたリンクのリンクコストを補正する。補正部12は、例えば、商品IDが対応付けられたリンクのリンクコストを「0」にする。これにより、補間経路の推定においては、当該補正されたリンクを含んで構成された補間経路が推定され易くなる。
【0066】
図10は、当該変形例に係る経路推定処理を示すフローチャートである。当該変形例では、ユーザの購買履歴をも考慮して補正されたリンクコストが用いられるため、経路推定は、携帯端末の位置情報が取得されたタイミング(リアルタイム)ではなく事後的に行われる。図10に示されるように、導出部16により履歴記憶部13の移動履歴データ131から、対象ユーザの移動履歴が取得される(ステップS101)。上述したステップS3〜S5と同様の処理が、ステップS102〜S104として行われる。そして、ステップS103(又はステップS104)の処理が完了すると、対象ユーザの未取得の移動履歴があるか否かが判定され(ステップS105)、移動履歴がある場合には再度ステップS101の処理が行われ、移動履歴がない場合には経路推定処理が完了する。
【0067】
図11は、変形例に係るリンクコスト更新処理を示すフローチャートである。なお、当該リンクコスト更新処理は、上述した図7のリンクコスト更新処理と並列に行うことができる。図11に示されるように、まず、補正部12により、購買履歴データ132が更新されたか否かが判定される(ステップS111)。ステップS111において購買履歴が更新されていない場合には、所定の時間が経過した後に、再度ステップS111の処理が行われる。一方で、ステップS111において購買履歴が更新されている場合には、補正部12により、履歴記憶部13の購買履歴データ132が参照され、購買IDに対応付けられたユーザID、商品ID、及び購入日時が特定される。そして、上記ユーザID及び購入日時が、リンクコスト補正対象のユーザ及び日時である場合には、補正部12により、ノードリンクデータ記憶部11のリンクデータ112Aが参照され、上記ユーザIDで示されるユーザのリンクコストであって、上記商品IDが対応付けられたリンクのリンクコストが「0」に補正される(ステップS112)。以上がリンクコスト更新処理である。
【0068】
上述した変形例では、デモグラ情報に応じた補正に加えて、ユーザの購買履歴すなわちユーザが確実に通過した情報に応じた補正を行うことにより、補間経路の推定精度を向上させることができ、携帯端末20が通過した経路をより高精度に再現することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…経路推定システム、10…経路推定装置、11…ノードリンクデータ記憶部、12…補正部、13…履歴記憶部、14…ユーザ情報取得部、15…位置推定部、16…導出部、17…経路推定部、18…表示部、20…携帯端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11