(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構造では、ハンドルの手で握る部分だけが取り外せる構造であるが、当該ハンドルの取り外しおよび取り付けに工具が必要とされる。測量現場で工具を用いた作業は煩雑であり、より簡単な方法でハンドルの着脱が行う構造が求められている。
【0005】
ところで、トータルステーションの機能として、作業者が手にする位置決め用のターゲットである反射プリズムとの間で光通信を行う機能がある。この機能を利用すると、トータルステーションから見た反射プリズムの方向を自律的に探索することができる。この機能を得るためにトータルステーションは、光信号を受光する受光部を備えている。この受光部は、受光範囲を確保するためにトータルステーションの上部に設置する必要がある。他方で、受光部は周辺回路として光信号を電気信号に変換する電子回路を必要とし、この電子回路からは、接続配線が引き出され、トータルステーション本体内部の制御部に接続されている。
【0006】
従来の構造では、本体への着脱が可能なハンドルは、手で握る部分とこの手で握る部分を両側から保持する保持部により構成され、この保持部に光通信用の受光部および当該受光部に係る電子回路が配置されていた。
【0007】
この構造では、ハンドルを本体から取り外せるように、ハンドル側と本体側に上記の接続配線の接続を行うためのコネクタが配置されている。この構造では、ハンドルの着脱を繰り返すと、上記のコネクタの接続と切断が繰り返されるので、コネクタの接触不良が生じ易い。特に、ハンドルの着脱は野外で行われる場合が多いので、この接触不良の問題が生じ易い。
【0008】
以上のような背景において、本発明は、持ち運び用のハンドルおよび光通信機能を備えた測量装置において、下記の要求を満たす測量装置を提供することを目的とする。
(1)持ち運び用のハンドルの取り外しが簡単な操作で可能である。
(2)光通信を行うための受光部をなるべく上部の高い位置に配置する。
(3)ハンドルの取り外し時に受光部の取り外しを行う必要がない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、棒状の握る部分および前記握る部分の一端を支える第1の支持部を備えた片持ち構造のハンドルと、上方に延在する第1の部分および第2の部分で構成された双頭構造を有した上部構造を持つ本体とを備え、光通信用の受光部を備え、前記棒状の握る部分が着脱可能な状態で固定された第2の支持部が前記第2の部分の上部に固定され、前記第1の部分の上部には、前記第1の支持部が着脱可能な状態で固定されていることを特徴とする測量装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2の支持部が前記第2の部分に着脱可能な状態で固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の支持部は、前記第1の部分に係合する係合部材を可動させる第1のボタンを備え、前記第2の支持部は、前記棒状の握る部分に係合する係合部材を可動させる第2のボタンを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の支持部と前記第2の支持部は同じ高さの位置に固定され、前記棒状の部分は水平であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、持ち運び用のハンドルおよび光通信機能を備えた測量装置において、(1)持ち運び用のハンドルの取り外しが簡単な操作で可能である。
(2)光通信を行うための受光部をなるべく上部の高い位置に配置する。
(3)ハンドルの取り外し時に受光部の取り外しが行われない。
といった要求を満たす測量装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(概要)
図1および
図6には、測量装置100が示されている。測量装置100は、トータルステーションであり、レーザ光を用いた測距や位置決めを行う機能を有している。測量装置100の機能は、通常のトータルステーションと同じである。測量装置100は、本体101を有している。本体101は、三脚等によって支持された基台部118の上に水平面内での回転が可能な状態で取り付けられている。本体100は、上方に延在した二つの本体部101a,101bを有した双頭構造を有している。本体部101aと101bの間には、可動光学部119(
図1では取り外されている)が仰角および俯角方向に回動が可能な状態で取り付けられている。可動光学部119は、レーザ光の照射部と受光部、光学レンズを備えている。
図1の符号120は、
図6の可動光学部119を回動可能な状態で保持するための穴である。
【0016】
本体部101aの上部には、把手支持部102が着脱可能な状態で取り付けられている。把手支持部102の本体部101aへの固定は、図示されていない締結部材(ネジ)によって行われている。符号104は、ターゲットやタブレットと無線通信を行うためのアンテナである。
【0017】
把手支持部102には、光通信用の受光部103(
図2,
図6参照)が配置されている。把手支持部102の内部には、受光部103の周辺回路が内蔵されている。把手支持部102の本体部101aへの接触部分には、上記周辺回路に接続される信号ケーブルや電源ケーブルが接続された把手支持部側電極が配置されている。本体部101aには、この把手支持部側電極と接触する本体側電極が配置されており、把手支持部102を本体部101aに取り付けると、把手支持部102と本体101との電気的な接続が行われる構造となっている。
【0018】
本体101の上部には、測量装置100の運搬等に用いられるハンドル105が着脱可能状態で取り付けられている。ハンドル105は、略円筒形状の握り部106と把手支持部107が一体化された片持ち構造を有している。把手支持部107は、把手支持部102と対となる部材である(
図2参照)。ハンドル105は、ドライバ等の器具を用いずにボタンを用いた簡単な操作で本体101への着脱ができるようにされている。
図3には、ハンドル105を本体101から取り外した状態の斜視図が示されている。
【0019】
ハンドル105は、握り部106の先端108の部分が把手支持部102の内部に係合し、且つ、把手支持部107の底部が本体部101b上部の係合部109に係合することで、本体101に取り付けられ固定される。なお、
図1に示す構造から明らかなように、ハンドル105を本体101に取り付けるには、本体101に把手支持部102を取り付けた状態とする必要がある。
【0020】
以下、円柱形状(棒形状)の握り部106の先端108の把手支持部102への係合の原理を説明する。
図4は、先端108の把手支持部102への係合の原理を示す概念図である。
図4において、
図4(A)のA−A’の線で切断した断面が
図4(B)に示され、
図4(C)のB−B’の線で切断した断面が
図4(D)に示されている。
【0021】
把手支持部102の内部には、Y軸方向にスライド可能な係合部材111が配置されている。係合部材111は、把手支持部102に設けられたボタン112を押すとY軸正の方向に移動する。係合部材111は、バネ等の付勢手段により、Y軸負の方向に付勢されており、ボタン112を押さない状態で
図4(A)および
図4(B)の状態にあり、ボタン112を押した状態で
図4(C)および
図4(D)の状態となる。なお、ボタン112を押した状態からボタン112を押さない状態にすると、上記の付勢手段の作用により、係合部材111がY軸負の方向に動き、
図4(C)および
図4(D)の状態から
図4(A)および
図4(B)の状態に移行する。
【0022】
まず、ハンドル105を把手支持部102に取り付ける場合を説明する。この場合、ボタン112を押した状態で、先端108を把手支持部102に押し込む。これにより、
図4(C)および(D)の状態となる。この状態でボタン112を離すと、付勢手段の作用で係合部材111がY軸負の方向に動き、
図4(A)および(B)の状態となる。この状態では、L字形状とされた引っ掛かり部111aが先端108の溝110に引っ掛かり、先端108(ハンドル105)をX軸正方向に動かすことができない。つまり、ハンドル105を把手支持部102から取り外すことができない。
【0023】
次に、ハンドル105を把手支持部102から取り外す場合を説明する。ハンドル105を把手支持部102に取り付けた状態、すなわち
図4(A)および(B)の状態において、ボタン112を押すと、係合部材111がY軸正の方向に動き、
図4(C)および(D)の状態となり、引っ掛かり部111aの先端108の溝110への係合状態が解除される。この状態で、先端108(ハンドル105)をX軸正方向に動かす、すなわち、ハンドル105を把手支持部102から引き抜く。
【0024】
次に、把手支持部107の本体部101bへの係合の原理を説明する。把手支持部197は、以下に説明するように係合部109(
図1参照)を利用して本体部101bに着脱可能な状態で固定される。
図1に示すように、係合部109は、縮径された形状のくびれた軸部分116と、その上部の拡径された円盤状のフランジ部115を有している。
【0025】
図5は、把手支持部107の本体部101bへの係合の原理を説明する概念図である。把手支持部107の内部には、上方(Z軸正の方向)から見た形状が凹型の係合部材113が配置されている。係合部材113は、凹部の内側114に本体部101bの係合部109のくびれた軸部分116(
図1参照)が入り込む構造とされている。係合部材113はY軸負の方向にバネ等の付勢手段により付勢されている。把手支持部107には、スライドボタン117が設けられている。係合部材113はスライドブタン117と連携して動く。具体的には、スライドボタン117をY軸正の方向にスライドさせると、係合部材113がY軸正の方向に動く。この状態が
図5(B)に示されている。スライドボタン117から手を離すと、付勢手段の作用により係合部材113がY軸負の方向に動き、
図5(A)の状態となる。
【0026】
まず、ハンドル105を本体部101bに取り付ける場合を説明する。この場合、スライドボタン117をY軸正方向に押した状態で、把手支持部107を本体部101bの上部に接触せる。この際、
図5(B)の位置関係となるように、把手支持部107と本体部101bの位置関係を調整する。次に、スライドボタン117から手を離す。すると、付勢手段の作用により、係合部材113がY軸負の方向の動き、
図5(B)の状態から
図5(A)の状態に移行する。
図5(A)の状態では、係合部材113が係合部109上部の円盤形状のフランジ部115(
図1参照)の外縁と重なり、係合部材113が係合部109に対してZ軸正方向(すなわち上方)に動かせない状態となる。こうして、ハンドル105が本体部101bに取り付けられる。
【0027】
実際には、ボタン112を押し、同時にスライドボタン117をY軸正の方向にスライドさせた状態で先端108を把手支持部102に押し込み、更に把手支持部107を本体部101bの上部に接触させ、その後にボタン112とスライドボタン117から手を離すことで、
図4(A)(B)および
図5(A)の状態、すなわちハンドル105が本体101に固定された状態を得る。
【0028】
逆に、本体101からハンドル105を取り外す場合は、ボタン112を押し、同時にスライドボタン117をY軸正の方向にスライドさせた状態で、先端108を把手支持部102から外し、同時に把手支持部107を本体部101bから離す。以上の操作は、工具を用いずに簡単に行える。
【0029】
以上述べたように、測量装置100は、棒状の握り部106および握り部106の一端を支える把手支持部107を備えた片持ち構造のハンドル105と、上方に延在する本体部101bおよび本体部101aで構成された双頭構造を有した上部構造を持つ本体101とを備え、光通信用の受光部103を備え、棒状の握り部106が着脱可能な状態で固定された把手支持部102が本体部101aの上部に固定され、本体部101bの上部には、把手支持部107が着脱可能な状態で固定されている。
【0030】
ここで、把手支持部102は、本体部101aに着脱可能な状態で固定されている。また、把手支持部107は、握り部106と一体(着脱できない一体化された構造)であり、本体部101bに係合する係合部材113を可動させるスライドボタン117を備え、把手支持部102は、握り部106の先端108に係合する係合部材111を可動させるボタン112を備えている。そして把手支持部102と107は略同じ高さの位置にあり、棒状の握り部106は略水平であり、手で持ち易い構造とされている。
【0031】
(優位性)
ハンドル105の取り外しが簡単な操作で可能である。また、受光部103をなるべく上部の高い位置に配置することができる。また、ハンドル105の取り外し時に受光部103は本体101の固定されたままであり、取り外す必要がない。
【0032】
(その他)
例えば、低コスト仕様として光通信機能を備えないタイプも考えられる。この場合、把手支持部102として光通信機能に係る装備を備えない構造が採用される。