特許第6559062号(P6559062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559062中枢神経系の完全性を評価するための方法およびキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559062
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】中枢神経系の完全性を評価するための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20190805BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   A61B5/11
   A61B3/113
【請求項の数】17
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2015-503430(P2015-503430)
(86)(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公表番号】特表2015-512299(P2015-512299A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】US2013033672
(87)【国際公開番号】WO2013148557
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年4月9日
【審判番号】不服2018-5086(P2018-5086/J1)
【審判請求日】2018年4月12日
(31)【優先権主張番号】61/615,463
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/710,213
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056986
【氏名又は名称】ニューヨーク ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】513171172
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ レプリゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サマダニ, ウズマ
(72)【発明者】
【氏名】オッフェン, シャニ
(72)【発明者】
【氏名】カラスコ−ケイヘイロ, マリサ
(72)【発明者】
【氏名】ヒーガー, デイビッド
【合議体】
【審判長】 伊藤 昌哉
【審判官】 渡戸 正義
【審判官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−038443(JP,A)
【文献】 特表2002−541959(JP,A)
【文献】 特開昭62−249637(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0277693(US,A1)
【文献】 Beedie et al.,Smooth pursuit and visual scanpaths: Independence of two candidate oculomotor risk markers for schizophrenia,World Journal of Biological Psychiatry,英国,INFORMA HEALTHCARE,2012年 1月 1日,vol. 13,p. 200−210
【文献】 Salman et al.,Smooth ocular pursuit in Chiari type II malformation,Developmental Medicine & Child Neurology,2007年 3月,vol. 49, no. 4,p. 289−293
【文献】 Heitger et al.,Impaired eye movements in post−concussion syndrome indicate suboptimal brain function beyond the influence of depression, malingering or intellectual ability,Brain,2009年 7月16日,vol.132, no 10,p. 2850−2870
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B3/00-3/18
A61B5/06-5/22
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における中枢神経系の完全性の指標を提供するためのコンピューティングデバイスの作動方法であって、
前記コンピューティングデバイスは、プロセッサ、ディスプレイ及び眼球運動/視線追跡器コンポーネントを備え、
前記コンピューティングデバイスの作動方法は、
a)前記ディスプレイ上に視覚刺激を表示する工程であって、前記視覚刺激は、前記ディスプレイ上の一部分の表示領域に表示される継続的に再生される動画であり、前記表示領域を、開口部を有する経路上を周回するように移動させる、工程、
b)前記視覚刺激を見ている前記対象の眼球運動のデータを前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得する工程であって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントによる測定値と前記対象の視線位置との較正を行わずに、前記視覚刺激が前記経路上を複数回周回する期間にわたって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより前記対象の眼球運動を追跡し、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)をサンプリングする、工程、及び、
c)前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得した前記対象の眼球運動のデータを出力する工程であって、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)に対応する平面座標上の2つの値(x、y)を生成し、前記ディスプレイ上にプロットして散布図を表示する、工程、
を備える、コンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項2】
対象における低減されたまたは機能損傷された脳神経の機能または伝導の指標を提供するためのコンピューティングデバイスの作動方法であって、
前記コンピューティングデバイスは、プロセッサ、ディスプレイ及び眼球運動/視線追跡器コンポーネントを備え、
前記コンピューティングデバイスの作動方法は、
a)前記ディスプレイ上に視覚刺激を表示する工程であって、前記視覚刺激は、前記ディスプレイ上の一部分の表示領域に表示される継続的に再生される動画であり、前記表示領域を、開口部を有する経路上を周回するように移動させる、工程、
b)前記視覚刺激を見ている前記対象の眼球運動のデータを前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得する工程であって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントによる測定値と前記対象の視線位置との較正を行わずに、前記視覚刺激が前記経路上を複数回周回する期間にわたって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより前記対象の眼球運動を追跡し、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)をサンプリングする、工程、及び、
c)前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得した前記対象の眼球運動のデータを出力する工程であって、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)に対応する平面座標上の2つの値(x、y)を生成し、前記ディスプレイ上にプロットして散布図を表示する、工程、
を備える、コンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項3】
前記脳神経が、第II脳神経、第III脳神経、第IV脳神経および第VI脳神経からなる群から選択される、請求項2に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項4】
b)の工程において、少なくとも約100,000サンプルの瞳孔の向きの瞬間角が取得される、請求項2に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項5】
b)の工程において、前記対象の眼球運動が、約30秒間から約500秒間までの期間にわたって追跡される、請求項2に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項6】
c)の工程において、平面座標上の2つの値(x、y)を生成する際、水平成分および垂直成分について、独立して平均値を差引き、標準偏差によって除算することを含む、請求項2に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、あらかじめ取得されて記憶されている正常対照における瞳孔の向きの瞬間角のデータを用いて、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角のデータのzスコアを算出し、2を上回るzスコアを有する場合に、前記対象は前記正常対照とは有意に異なる眼球運動を有すると同定する工程、を更に含む、請求項2に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項8】
対象における増加した頭蓋内圧の指標を提供するためのコンピューティングデバイスの作動方法であって、
前記コンピューティングデバイスは、プロセッサ、ディスプレイ及び眼球運動/視線追跡器コンポーネントを備え、
前記コンピューティングデバイスの作動方法は、
a)前記ディスプレイ上に視覚刺激を表示する工程であって、前記視覚刺激は、前記ディスプレイ上の一部分の表示領域に表示される継続的に再生される動画であり、前記表示領域を、開口部を有する経路上を周回するように移動させる、工程、
b)前記視覚刺激を見ている前記対象の眼球運動のデータを前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得する工程であって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントによる測定値と前記対象の視線位置との較正を行わずに、前記視覚刺激が前記経路上を複数回周回する期間にわたって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより前記対象の眼球運動を追跡し、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)をサンプリングする、工程、及び、
c)前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得した前記対象の眼球運動のデータを出力する工程であって、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)に対応する平面座標上の2つの値(x、y)を生成し、前記ディスプレイ上にプロットして散布図を表示する、工程、
を備える、コンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項9】
b)の工程において、少なくとも約100,000サンプルの瞳孔の向きの瞬間角が取得される、請求項8に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項10】
b)の工程において、前記対象の眼球運動が、約30秒間から約500秒間までの期間にわたって追跡される、請求項8に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項11】
c)の工程において、平面座標上の2つの値(x、y)を生成する際、水平成分および垂直成分について、独立して平均値を差引き、標準偏差によって除算することを含む、請求項8に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項12】
前記プロセッサが、あらかじめ取得されて記憶されている正常対照における瞳孔の向きの瞬間角のデータを用いて、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角のデータのzスコアを算出し、2を上回るzスコアを有する場合に、前記対象は前記正常対照とは有意に異なる眼球運動を有すると同定する工程、を更に含む、請求項8に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項13】
対象における増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患または状態の指標を提供するためのコンピューティングデバイスの作動方法であって、
前記コンピューティングデバイスは、プロセッサ、ディスプレイ及び眼球運動/視線追跡器コンポーネントを備え、
前記コンピューティングデバイスの作動方法は、
a)前記ディスプレイ上に視覚刺激を表示する工程であって、前記視覚刺激は、前記ディスプレイ上の一部分の表示領域に表示される継続的に再生される動画であり、前記表示領域を、開口部を有する経路上を周回するように移動させる、工程、
b)前記視覚刺激を見ている前記対象の眼球運動のデータを前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得する工程であって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントによる測定値と前記対象の視線位置との較正を行わずに、前記視覚刺激が前記経路上を複数回周回する期間にわたって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより前記対象の眼球運動を追跡し、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)をサンプリングする、工程、及び、
c)前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得した前記対象の眼球運動のデータを出力する工程であって、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)に対応する平面座標上の2つの値(x、y)を生成し、前記ディスプレイ上にプロットして散布図を表示する、工程、
を備える、コンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項14】
前記増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患または状態が、外傷、脳血管発作(CVA)、動脈瘤、血管病変、腫瘍、感染プロセス、炎症性疾患、静脈ドレナージの破壊、偽腫瘍、水頭症または特発性からなる群から選択される、請求項13に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【請求項15】
対象における、低減されたもしくは機能損傷された脳神経の機能もしくは伝導を検出し、もしくはそれについてスクリーニングするために有用であるか、増加した頭蓋内圧を検出し、診断し、もしくはそれについてスクリーニングするために有用であるか、または増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患もしくは状態を検出し、診断し、その進行をモニタリングし、もしくはそれについてスクリーニングするために有用なキットであって、
前記キットは、眼球運動を追跡するためのデバイス、アルゴリズムまたはコンピュータプログラムによって眼球運動追跡データを処理するための1つまたは複数の手段、および指示書を含み、
前記デバイスは、測定値と前記対象の視線位置との較正を行わずにかつサッケードカウントを使用せずに、前記対象の眼球運動を追跡して前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)をサンプリングするように作動するものであり、
前記眼球運動追跡データを処理するための手段は、
ディスプレイ上に視覚刺激を表示させることであって、前記視覚刺激は、前記ディスプレイ上の一部分の表示領域に表示される継続的に再生される動画であり、前記表示領域を、開口部を有する経路上を周回するように移動させること、及び、
前記視覚刺激が前記経路上を複数回周回する期間にわたって前記デバイスがサンプリングした前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)に対応する平面座標上の2つの値(x、y)を生成し、前記ディスプレイ上にプロットして散布図を表示すること、
を行うものである、
キット。
【請求項16】
対象を評価するための情報を提示するためのアルゴリズムまたはコンピュータプログラムが保存された非一時的コンピュータ可読媒体であって、
前記アルゴリズムまたはコンピュータプログラムは、ハードウェアプロセッサによって実行される場合、
a)ディスプレイ上に視覚刺激を表示する工程であって、前記視覚刺激は、前記ディスプレイ上の一部分の表示領域に表示される継続的に再生される動画であり、前記表示領域を、開口部を有する経路上を周回するように移動させる、工程、
b)前記視覚刺激を見ている前記対象の眼球運動のデータを眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得する工程であって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントによる測定値と前記対象の視線位置との較正を行わずに、前記視覚刺激が前記経路上を複数回周回する期間にわたって、前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより前記対象の眼球運動を追跡し、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)をサンプリングする、工程、及び、
c)前記眼球運動/視線追跡器コンポーネントにより取得した前記対象の眼球運動のデータを出力する工程であって、サッケードカウントを使用せずに、前記対象の瞳孔の向きの瞬間角の2つの成分(水平、垂直)に対応する平面座標上の2つの値(x、y)を生成し、前記ディスプレイ上にプロットして散布図を表示する、工程、
を実施する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
サッケードカウントを使用しない、請求項1〜14のいずれか1項に記載のコンピューティングデバイスの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、脳神経の生理学的機能を評価し、上昇した頭蓋内圧、第III脳神経麻痺を呈するテント切痕ヘルニア、脳振盪、正常圧水頭症、第VI脳神経麻痺を呈する後頭蓋窩腫瘤効果、視神経症についてスクリーニングし、それらを診断し、それらの程度を定量し、頭蓋内病変および疾患プロセスの進行を位置付けおよびモニタリングするための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
処置しない場合、水頭症、脳傷害、脳卒中または腫瘤病変に起因した頭蓋内圧(ICP)の急性の上昇は、永久的な神経学的な機能損傷または死を生じ得る。世界で最も一般的な小児科神経外科的状態である水頭症は、上昇したICPの影響を理解するためのモデルとして十分に研究されてきた。水頭症に関連する視覚障害および複視は、およそ紀元前400年にヒポクラテスによって最初に記載された(Aronyk、Neurosurg Clin N Am. 1993年;4巻(4号):599〜609頁)。うっ血乳頭、即ち視神経乳頭の膨張および上昇したICPとのその関連は、1860年にAlbrecht von Graefeによって記載された(Pearce、European neurology 2009年;61巻(4号):244〜249頁)。X線撮影後の時代になり、視神経および視神経乳頭(第II脳神経)ならびに眼筋運動(第III、第IVおよび第VI脳神経)の急性および慢性の病理は、水頭症の小児において十分に特徴付けられている(Dennisら、Arch Neurol. 1981年10月;38巻(10号):607〜615頁;Zeinerら、Childs Nerv Syst. 1985年;1巻(2号):115〜122頁およびAltintasら、Graefe’s archive for clinical and experimental ophthalmology = Albrecht von Graefes Archiv fur klinische und experimentelle Ophthalmologie. 2005年;243巻(12号):1213〜1217頁)。視野は、処置された水頭症において機能損傷され得(Zeinerら、Childs Nerv Syst. 1985年;1巻(2号):115〜122頁)、処置後の状態と比較して、急性に水頭症の小児における光フラッシュにより惹起された応答における増加した潜時が存在する(Sjostromら、Childs Nerv Syst. 1995年;11巻(7号):381〜387頁)。眼筋運動の臨床的に明らかな破壊は、ある急性水頭症患者におけるコンピュータ断層撮影(CT)知見に先行し得る(Tzekovら、Pediatric Neurosurgery 1991年;17巻(6号):317〜320頁およびChouら、Neurosurgery Clinics of North America 1999年;10巻(4号):587〜608頁)。
【0003】
いくつかの可能性のある機構が、水頭症に起因する脳神経機能不全に寄与し得る。視神経(II)は、検眼鏡検査で直接的におよび超音波で間接的に可視化できるので、最も頻繁に分析される。視神経の浮腫は、眼底の変化よりも早く現れ、上昇したICPの処置後に消散する(Gangemiら、Neurochirurgia 1987年;30巻(2号):53〜55頁)。振動性の上昇した神経圧力は、ウサギモデルにおいて30分間の短い時間の後に、視神経に沿った機能損傷された軸索輸送を導く(Balaratnasingamら、Brain Research 2011年;1417巻:67〜76頁)。軸索流のうっ滞およびニューロン内虚血が、慢性に上昇したICPに曝露された視神経において生じ得る(Leeら、Current Neurology and Neuroscience Reports. 2012年2月23日)。
【0004】
今日、上昇した頭蓋内圧の診断は、履歴、身体検査、X線撮影画像化に依存し、場合により、シャントのカニューレ装着されたニードルタップまたはモニタリングデバイスの配置を介して、クモ膜下腔またはクモ膜下腔と近接した構造の直接的侵襲性評価に依存する。うっ血乳頭について評価するための瞳孔の化学物質による散大は、被検者にとって不快であり得、試験者の経験に依存し、瞳孔反射のさらなる検査を曖昧にする。うっ血乳頭は、常に水頭症に対する高感度マーカーであるわけではなく、1つの研究では、第IIIおよび第IV脳神経と比較して、第II脳神経の比較的短い頭蓋内走路と一致して、シャント機能障害を有する患者のうち14%の僅かな患者に存在した(Nazirら、J Aapos 2009年;13巻(1号):63〜66頁)。クモ膜下腔の区画化は、うっ血乳頭が上昇したICPを有さない患者に存在し得、上昇したICPを有する患者では生じないのがなぜかを説明すると仮定されている(Killerら、Clinical & Experimental Ophthalmology 2009年;37巻(5号):444〜447頁)。
【0005】
自動眼球運動追跡は、市場調査および広告調査、運動不能の個人のための支援デバイスの開発、ならびにテレビゲームのために使用されてきた。デバイスの較正は、対象が、第II脳神経(視神経)、第III脳神経(動眼神経)、第IV脳神経(滑車神経)および第VI脳神経(外転神経)ならびにそれらの関連する核の機能、ならびに較正のための認知および意志を可能にするのに十分な大脳機能を暗示する比較的損傷がない眼筋運動を有することを必要とする。較正された眼球運動追跡は、軽度の外傷性脳傷害後の軸索剪断に対して二次的な認知機能損傷を検出するために利用されてきた(Leeら、Brain research. 2011年;1399巻:59〜65頁;Contrerasら、Brain Research 2011年;1398巻:55〜63頁およびMarutaら、The Journal of Head Trauma Rehabilitation 2010年;25巻(4号):293〜305頁)。
【0006】
他の研究者は、眼球運動データの臨床適用を首尾よく実証している(Leeら、Brain Research. 2011年;1399巻:59〜65頁;Contrerasら、Brain Research 2011年;1398巻:55〜63頁;Marutaら、The Journal of Head Trauma Rehabilitation 2010年;25巻(4号):293〜305頁)。Trojanoら、J Neurol 2012年;(オンラインで公開;印刷前)は最近、最小に意識のあるおよび持続的に植物状態の患者の集団における、較正されていない眼球運動測定値を記載した。彼らは、11人の健康な対照対象からのデータを報告し、意識の慢性障害を評価し、頭蓋内圧における急性変化を評価していない。彼らは、500Hzではなく60Hzで眼球運動をサンプリングして、そのデータの力を効率的に100分の1に低減させ、空間的に較正されたデータなしに群間のオンターゲットおよびオフターゲット固視における差異を報告している。さらに、彼らは、準周期的な方法で静的刺激移動を使用している。
言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献資料は、その全体が参照により組み込まれる。さらに、材料、方法および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図しない。本明細書中の参考文献の引用は、その参考文献が本発明の先行技術であるという告白として解釈すべきではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Aronyk、Neurosurg Clin N Am. 1993年;4巻(4号):599〜609頁
【非特許文献2】Pearce、European neurology 2009年;61巻(4号):244〜249頁
【非特許文献3】Dennisら、Arch Neurol. 1981年10月;38巻(10号):607〜615頁
【非特許文献4】Zeinerら、Childs Nerv Syst. 1985年;1巻(2号):115〜122頁
【非特許文献5】Altintasら、Graefe’s archive for clinical and experimental ophthalmology = Albrecht von Graefes Archiv fur klinische und experimentelle Ophthalmologie. 2005年;243巻(12号):1213〜1217頁
【非特許文献6】Zeinerら、Childs Nerv Syst. 1985年;1巻(2号):115〜122頁
【非特許文献7】Sjostromら、Childs Nerv Syst. 1995年;11巻(7号):381〜387頁
【非特許文献8】Tzekovら、Pediatric Neurosurgery 1991年;17巻(6号):317〜320頁
【非特許文献9】Chouら、Neurosurgery Clinics of North America 1999年;10巻(4号):587〜608頁
【非特許文献10】Leeら、Brain research. 2011年;1399巻:59〜65頁;
【非特許文献11】Contrerasら、Brain Research 2011年;1398巻:55〜63頁
【非特許文献12】Marutaら、The Journal of Head Trauma Rehabilitation 2010年;25巻(4号):293〜305頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
第1の態様では、本発明は、対象において中枢神経系の完全性を評価するための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、対象における低減されたまたは機能損傷された脳神経の機能または伝導を検出し、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0010】
脳神経は、例えば、第II、第III、第IVまたは第VIのうち1つまたは複数であり得る。低減されたまたは機能損傷された脳神経の機能または伝導は、一側性または両側性であり得、増加した頭蓋内圧によって全てまたは一部が引き起こされ得、限局性またはびまん性の病変または疾患プロセスによって全てまたは一部が引き起こされ得る。脳神経の低減された機能は、神経自体、その関連する核または核上性インプットに影響を与える病理に起因し得る。
【0011】
第3の態様では、本発明は、対象における増加した頭蓋内圧を検出し、診断し、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0012】
増加した頭蓋内圧は、例えば、正常よりも10%、20%、30%、50%、100%、200%、300%またはそれ以上高い可能性がある。
【0013】
第4の態様では、本発明は、増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患または状態を検出し、診断し、その進行をモニタリングし、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0014】
増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患または状態は、例えば、外傷、脳血管発作(CVA)、動脈瘤もしくは他の血管病変、悪性であれ良性であれ腫瘍、感染プロセス(infectious process)、炎症性疾患、静脈ドレナージ(venous drainage)の破壊、偽腫瘍、水頭症または特発性であり得る。
【0015】
第5の態様では、本発明は、脳振盪を検出し、診断し、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0016】
第6の態様では、本発明は、テント切痕ヘルニアを検出し、診断し、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0017】
第7の態様では、本発明は、正常圧水頭症の重症度を定量し、シャント機能障害を検出し、もしくはそれについてスクリーニングし、または正常圧水頭症を処置するために弁圧力を最適化するための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0018】
第8の態様では、本発明は、後頭蓋窩腫瘤効果を検出または評価するための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0019】
第9の態様では、本発明は、視神経乳頭または視神経を介した伝導性を妨害する障害を検出し、それについてスクリーニングし、またはそれを診断するための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)対象の眼球運動を分析する工程;
c)対象の眼球運動を、対照の眼球運動または対象のベースライン規範的眼球運動と比較する工程;および
d)対照または対象のベースライン規範的眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程
による、方法を提供する。
【0020】
第10の態様では、本発明は、低減されたまたは機能損傷された脳神経の機能または伝導を検出し、またはそれについてスクリーニングするために有用なキット、増加した頭蓋内圧を検出し、診断し、またはそれについてスクリーニングするために有用なキット、あるいは増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患または状態を検出し、診断し、その進行をモニタリングし、またはそれについてスクリーニングするために有用なキットであって、眼球運動を追跡するためのデバイス、眼球運動追跡データを分析するための1つまたは複数の手段、例えばアルゴリズムまたはコンピュータプログラムなど、および指示書を含む、キットを提供する。眼球運動観察を処理すること、眼球運動観察の測定を行うこと、測定された値の分布を決定すること、および統計的試験を実施することは、全て、かかるキット中に含まれ得る適切なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。
【0021】
第11の態様では、本発明は、コンピュータシステムを提供する。このコンピュータシステムまたはコンピューティングデバイス1000は、プロセッサ106およびディスプレイ108、眼球運動/視線追跡器コンポーネント104などを含むデバイスを実装するために使用され得る。コンピューティングシステム1000は、情報を伝えるためのバス1005または他のコミュニケーションコンポーネントと、情報を処理するためにバス1005に連結されたプロセッサ1010または処理回路とを含む。コンピューティングシステム1000は、情報を処理するためにバスに連結された1つまたは複数のプロセッサ1010または処理回路を含んでいてもよい。コンピューティングシステム1000は、情報およびプロセッサ1010によって実行される指示を記憶するためにバス1005に連結されたメインメモリ1015、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスもまた含む。メインメモリ1015は、プロセッサ1010による指示の実行の間に、位置情報、一時的変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。コンピューティングシステム1000は、静的情報およびプロセッサ1010のための指示を記憶するためにバス1005に連結された読み出し専用メモリ(ROM)1010または他の静的記憶デバイスをさらに含み得る。記憶デバイス1025、例えばソリッドステートデバイス、磁気ディスクまたは光ディスクは、情報および指示を持続的に記憶するためにバス1005に連結される。
【0022】
コンピューティングシステム1000は、使用者に情報を表示するために、バス1005を介して、ディスプレイ1035、例えば液晶ディスプレイまたはアクティブマトリックスディスプレイに連結され得る。インプットデバイス1030、例えば、英数字および他のキーを含むキーボードは、プロセッサ1010に情報および命令選択を伝えるためにバス1005に連結され得る。別の実装では、インプットデバイス1030は、タッチスクリーンディスプレイ1035を有する。インプットデバイス1030は、プロセッサ1010に方向情報および命令選択を伝えるためならびにディスプレイ1035のカーソルの動きを制御するための、カーソル制御、例えばマウス、トラックボールまたはカーソル指向キー(cursor direction key)を含み得る。
【0023】
種々の実装によれば、本明細書に記載されるプロセスは、メインメモリ1015中に含まれる指示の配列を実行するプロセッサ1010に応答して、コンピューティングシステム1000によって実装され得る。かかる指示は、別のコンピュータ可読媒体、例えば記憶デバイス1025から、メインメモリ1015中に読み込まれ得る。メインメモリ1015中に含まれる指示の配列の実行は、コンピューティングシステム1000に、本明細書に記載される例示的プロセスを実施させる。多重処理配列中の1つまたは複数のプロセッサもまた、メインメモリ1015中に含まれる指示を実行するために使用され得る。代替的実装では、ハードワイヤード回路が、例示的実装をもたらすために、ソフトウェア指示の代わりに、またはソフトウェア指示と組み合わせて、使用され得る。従って、実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0024】
記載される方法によれば、眼球運動を追跡する工程は、任意の適切なデバイス、例えばEyelink(登録商標)1000単眼眼球追跡器(500Hzでのサンプリング、SR Research)などを使用して実施され得る。眼球追跡運動サンプルは、任意の適切な頻度で、例えば10Hz〜10,000Hzまたはそれ以上などで取得され得る。対象は、デバイスから適当な距離に、例えば、デバイススクリーンから10、20、30、40、50、55、60、70、80、90cmもしくはそれ以上、またはさらには1メートルもしくはそれ以上の距離に、位置付けられ得る。ある例では、対象の頭部が、例えば、チンレスト(chinrest)または類似の安定化機構を使用することなどによって、安定化され得る。対象は、腰かけていてもよく、リクライニングしていてもよい。好ましくは、デバイスの提示モニタは、対象の視線の方向を実質的に一致させるために調整される。眼球運動を追跡する工程は、合計で例えば30、60、90、120、150、180、200、220、240、270、300、330、360、400、450、500秒間またはそれ以上にわたって実施され得る。このように、提供される方法によれば、1,000、5,000、10,000、20,000、25,000、50,000、75,000、100,000、150,000、200,000、250,000、300,000またはそれ以上のサンプルの眼位が取得され得る。
【0025】
記載される方法によれば、眼球運動を分析する工程は、任意の適切な手段によって実施され得る。ある例では、生眼位データの解釈を可能にする刺激および分析ストリームが提供される。ある例では、瞳孔位置を調査するためのアルゴリズムが提供され得、それにより、眼筋運動についての情報を直接得ることができる。好ましくは、デバイスは、時間的に近接して、または眼球運動自体と実質的に同時発生的に眼球運動を分析し得る新規モバイルシステムに適合される。
【0026】
記載される方法によれば、視覚刺激に応答した眼球運動が追跡され得る。ある例では、視覚刺激は、例えば、コンピュータモニタの外縁に沿って例えば時計回りに動き得る、ミュージックビデオなどのビデオであり得る。ある例では、スクリーンの上部または下部の、左側または右側の角で開始するかかるビデオが、提供され得る。視覚刺激、例えばビデオ、例えばミュージックビデオは、およそ10、12、14、16、18、20、25の面積、または例えば、スクリーンのサイズのおよそ1/10、1/8、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2ほどの角度で、実質的に正方形の開口部中に提供され得る。この視覚刺激、例えばミュージックビデオなどは、眼球運動追跡の間に実質的に継続的に再生され得、ある場合には、相対的にまたは実質的に一定の速度で、スクリーンを横断して動き得る。例えば、かかる視覚刺激、例えばミュージックビデオは、約2、5、10、15、20、30、45または60秒間ほどで、モニタの各縁をカバーし得る。従って、ある例では、フルサイクルは、例えば、10、20、30、40、50、60、75、100、120、150、180秒間ほどかかり得る。複数サイクルのかかる視覚刺激、例えばミュージックビデオは、例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、12回、15回、20回またはそれ以上のフルサイクルで再生され得る。このように、視覚刺激が提供され得、眼球運動が追跡され得、事実上、ある場合には、ビデオが、合計で例えば30、60、90、120、150、180、200、220、240、270、300、330、360、400、450、500秒間またはそれ以上にわたって再生され得る。視覚刺激がビデオの形態である場合、カウントダウンビデオは、視覚刺激の方に向くのに十分な時間を対象に提供するために、視覚刺激、例えばビデオを開始する前に、例えば、5、10、15、20、25または30秒間またはそれ以上にわたって、開始位置において再生され得る。同様に、視覚刺激、例えばビデオは、境界効果を低減するためまたは実質的に回避するために、眼球運動追跡が実施された後に、追加の2、5、10、15、20、30、45または60秒間ほどにわたって継続され得る。
【0027】
記載される方法によれば、対象の眼球運動を対照と比較する工程は、データを分析することによって実施され得る。眼球運動を追跡する工程からのデータは、個々の対象の眼筋運動が健康な対照の眼筋運動とは異なるかどうかの指標を提供し得る。対象の眼球運動を対照と比較する工程は、散布図を生成することを特徴とし得る。対象の眼球運動を対照と比較する工程は、1つの軸に沿った水平眼位および直交軸に沿った垂直眼位をプロットすることを特徴とし得る。このように対象の眼球運動を対照と比較する工程は、(x、y)値の対、例えば50,000、100,000またはそれ以上の対の値(x、y)を生成し、プロットすることを特徴とし得る。例えば、所与の時間、例えば100または200秒間またはそれ以上にわたり瞳孔反射の瞬間角(instantaneous angle)の2つの成分(水平、垂直)を示す値(x、y)のかかる対が、プロットされ得る。
【0028】
このように、対象の眼球運動を対照と比較する工程は、例えば、視覚刺激がスクリーンを横断して動く場合、視覚刺激が移動する軌跡を反映するボックスと実質的に類似した図形を生成することを特徴とし得る。健康な対照では、ボックスと実質的に類似したこれらの図形は、例えば、スクリーンを横断する視覚刺激が移動する軌跡を反映する、実質的に等辺の矩形または正方形のように見え得る。神経学的損傷または増加した頭蓋内圧の場合、かかる図形は、ボックス、矩形または正方形と実質的に類似していない可能性がある。実際、ある例では、低減されたまたは機能損傷された機能または伝導を有する脳神経が同定され得る。ある例では、視覚刺激が移動する軌跡を反映する生成された図形は、特定の領域における正常なプロッティング対の異常な分布または非存在を示し得る。y軸に沿った増加した変動性は、例えば第II脳神経の機能不全を反映し得る。y軸に沿った減少した変動性、または減少した高さ対幅の比率は、CN IIIの機能不全を反映し得る。増加した高さ対幅の比率は、CN IVまたはVIの機能不全を反映し得る。ボックスの高さは、提示された視覚刺激の上部および底部をビデオが行き来する際の瞳孔の位置を評価することによって、数学的に決定され得る。この「実際の」高さは、数学的に把握された高さとは異なり得るが、この理由は、この把握された高さが、患者の眼筋運動の機能不全に起因する異常な瞳孔挙動を示し得るからである。ボックス壁の完全性もまた、他の型の機能不全の指標であり得る。脳神経麻痺および腫瘤効果の両方が、ボックス軌跡における欠損を引き起こし得る。テント上腫瘤病変およびCN III欠損は、ボックスの上部および/または底部に影響を与え得る。テント下腫瘤病変またはCN VI麻痺は、ボックスの辺に影響を与え得る。例えば、左眼の場合、図形の左上象限は、第IIIおよび第VI脳神経の活動性、機能または伝導を反映し得、図形の左下象限は、第IIIおよび第IV脳神経の活動性、機能または伝導を反映し得るが、右上象限および右下象限は、第III脳神経の活動性、機能または伝導を反映し得る。右眼の場合、図形の左上および左下象限は、第III脳神経の活動性、機能または伝導を反映し得、図形の右下象限は、第III脳神経の活動性、機能または伝導を反映し得るが、右上象限および右下象限は、第IVおよび第VI脳神経の活動性、機能または伝導を反映し得る。
【0029】
対象の眼球運動を対照と比較する工程は、対照集団におけるある特定の測定値の分布を決定し、対象をこれらの対照分布と比較することを特徴とし得る。かかる場合には、視覚刺激軌跡は、4つの時間成分、例えば、各回転サイクルの最初の数秒間、例えば、2、5、10、15、20秒間ほどの、2、3、4、5、6またはそれ以上の反復に分割され得る。かかる場合には、対象の眼球運動を対照と比較する工程は、各アームにおける相対的分散および各アームの相対的完全性として、かかる変数を評価することを特徴とし得る。
【0030】
対象の眼球運動を対照と比較する工程は、各対象の値の完全性を測定することも特徴とし得る。視覚刺激が移動する軌跡を反映するボックスと実質的に類似した図形を生成することを特徴とする場合、例えば、視覚刺激がスクリーンを横断して動く場合、図形の辺またはアーム(例えば、ボックスの上部およびボックスの底部)は、対照集団から計算された平均および標準偏差を使用してzスコア付けされ得る。得られたスコアは、対象の値が、例えば標準偏差の単位などで対照値と比較してどれほど異なるかを示し得る。
【0031】
記載される方法によれば、対照とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程は、zスコアを使用して実施され得る。正規分布では全ての値の95%が平均の2標準偏差内に入るので、2のzスコアは、有意性の閾値として使用され得る。例えば、図形のいずれかもしくは両方の辺もしくはアームにおいて、または1、2、3もしくは4の辺もしくはアームにおいて、例えば2を上回るzスコアを有する対象は、眼筋運動の有意な障害を有すると判断され得る。
【0032】
対照とは有意に異なる眼球運動を有する対象を同定する工程は、相対的分散を決定することを特徴とし得る。ある例では、多数の、例えば1,000、2,000、3,000、5,000、10,000、20,000またはそれ以上の点の分布は、例えば、複数の対照値から交換でランダムに選択された複数の数の値から複数のサンプルを採取することによって、生成され得る。各対象について、図形のいずれかもしくは両方の辺もしくはアームにおいて、または1、2、3もしくは4の辺もしくはアームにおける相対的分散が、対応する対照分布とそれぞれ比較され得、試験値の分散を下回る分散を有する対照分布のパーセントが決定され得る。統計的有意性の広く受容された尺度である0.05のp値は、試験値を下回る対照値の95%に対応する。かかる場合には、対照分布中の値の95%より高い分散を有する対象が、眼筋運動の有意な障害を有すると決定され得る。ビデオは、矩形と類似していない他の軌跡、例えば三角形、円または直線状もしくは非直線状の軌跡でも動き得る。軌跡が、デカルト座標(水平垂直またはx、y)に沿ったベクトルへと分解できる限り、同じ原則が当てはまる。簡潔に述べると、経時的に研究される任意の軌跡(例えば、任意の形状、または線、または曲線など)は、中枢神経系の機能または機能不全についての情報を提供し得る。
本発明の好ましい実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
中枢神経系の完全性を評価するための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)前記対象の眼球運動を分析する工程;
c)前記対象の眼球運動を、対照の眼球運動または前記対象自身のベースライン眼球運動と比較する工程;
d)前記対照または前記対象自身のベースライン眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する前記対象を同定する工程
を含む、方法。
(項目2)
対象における低減されたまたは機能損傷された脳神経の機能または伝導を検出し、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
e)前記対象の眼球運動を追跡する工程;
f)前記対象の眼球運動を分析する工程;
g)前記対象の眼球運動を、対照の眼球運動または前記対象自身のベースライン眼球運動と比較する工程;
h)前記対照または前記対象自身のベースライン眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する前記対象を同定する工程
を含む、方法。
(項目3)
前記脳神経が、第II脳神経、第III脳神経、第IV脳神経および第VI脳神経からなる群から選択される、項目2に記載の方法。
(項目4)
少なくとも約100,000サンプルの眼位が取得される、項目2に記載の方法。
(項目5)
視覚刺激に応答した眼球運動が追跡される、項目2に記載の方法。
(項目6)
眼球運動が、約30秒間から約500秒間までの期間にわたって追跡される、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記対象の眼球運動を対照と比較する工程が、所与の時間にわたり瞳孔反射の瞬間角の2つの成分(水平、垂直)を示す(x、y)値の対を生成し、そしてプロットすることによって実施される、項目2に記載の方法。
(項目8)
前記対象の眼球運動を対照と比較する工程が、視覚刺激が移動する軌跡を反映するボックスと実質的に類似した図形を生成することによって実施される、項目2に記載の方法。
(項目9)
前記対照とは有意に異なる眼球運動を有する前記対象を同定する工程が、2を上回るzスコアを有する対象を同定することを含む、項目2に記載の方法。
(項目10)
増加した頭蓋内圧を検出し、診断し、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)前記対象の眼球運動を分析する工程;
c)前記対象の眼球運動を、対照の眼球運動または前記対象自身のベースライン眼球運動と比較する工程;
d)前記対照または前記対象自身のベースライン眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する前記対象を同定する工程
を含む、方法。
(項目11)
少なくとも約100,000サンプルの眼位が取得される、項目10に記載の方法。
(項目12)
視覚刺激に応答した眼球運動が追跡される、項目10に記載の方法。
(項目13)
眼球運動が、約30秒間から約500秒間までの期間にわたって追跡される、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記対象の眼球運動を対照と比較する工程が、所与の時間にわたり瞳孔反射の瞬間角の2つの成分(水平、垂直)を示す(x、y)値の対を生成し、プロットすることによって実施される、項目10に記載の方法。
(項目15)
前記対象の眼球運動を対照と比較する工程が、視覚刺激が移動する軌跡を反映するボックスと実質的に類似した図形を生成することによって実施される、項目10に記載の方法。
(項目16)
前記対照とは有意に異なる眼球運動を有する前記対象を同定する工程が、2を上回るzスコアを有する対象を同定することを含む、項目10に記載の方法。
(項目17)
増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患または状態を検出し、診断し、その進行をモニタリングし、またはそれについてスクリーニングするための方法であって、
a)対象の眼球運動を追跡する工程;
b)前記対象の眼球運動を分析する工程;
c)前記対象の眼球運動を、対照の眼球運動または前記対象自身のベースライン眼球運動と比較する工程;
d)前記対照または前記対象自身のベースライン眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する前記対象を同定する工程
を含む、方法。
(項目18)
前記増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患または状態が、外傷、脳血管発作(CVA)、動脈瘤、血管病変、腫瘍、感染プロセス、炎症性疾患、静脈ドレナージの破壊、偽腫瘍、水頭症または特発性からなる群から選択される、項目17に記載の方法。
(項目19)
低減されたもしくは機能損傷された脳神経の機能もしくは伝導を検出し、もしくはそれについてスクリーニングするために有用であるか、増加した頭蓋内圧を検出し、診断し、もしくはそれについてスクリーニングするために有用であるか、または増加した頭蓋内圧を特徴とする疾患もしくは状態を検出し、診断し、その進行をモニタリングし、もしくはそれについてスクリーニングするために有用なキットであって、眼球運動を追跡するためのデバイス、眼球運動追跡データを分析するための1つまたは複数の手段、および指示書を含む、キット。
(項目20)
対象を評価するための指示が保存された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記指示は、ハードウェアプロセッサによって実行される場合、
a)前記対象の眼球運動に関するデータを受信する工程;
b)前記対象の前記眼球運動データを分析する工程;
c)前記対象の眼球運動データを、対照の眼球運動データまたは前記対象自身のベースライン眼球運動データと比較する工程;および
d)前記対照または前記対象自身のベースライン眼球運動とは有意に異なる眼球運動を有する前記対象を同定する工程
を実施する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、眼球運動の特徴付けを示す図である。図1a、bおよびcは、経時的なフルランにわたる眼球運動の経時変化を提供する。青色、水平(x)位。緑色、垂直(y)位。図1d、eおよびfは、眼位の散布図を提供する(x対y、中心からの正規化された相対距離の単位)。図1aおよびdは、標準的な神経の対照観察者から得られた結果である。図1b、c、eおよびfは、試験患者から得られた結果である。
【0034】
図2図2は、経時的に同じ患者による反復鑑賞の間に採取された眼球運動記録の例を提供する図である。第1列は日付を示す。第2列は、その日付における患者の脳の軸位断スライスの画像を提供する。第3および第4の列は、それぞれ左眼および右眼において記録された眼球運動についての散布図を提供する。図2aは、転倒後の最初の来院時の、左硬膜下血腫を有する患者のものである。図2bは、1週間後の同じ患者のものである。図2cは、外科的介入後の、2週間後の同じ患者のものである。
【0035】
図3図3は、眼球挙動が、特定の視野を参照して、および特定の脳神経による制御を参照して分析され得るような、第III、第IVおよび第VI脳神経が眼球を正方形に効率的に動かすことを示す図である。
【0036】
図4図4は、上昇した頭蓋内圧を有さない、遠隔外傷由来の右第VI神経麻痺を有する患者における左眼の眼球運動追跡を示す図である。
【0037】
図5図5は、視神経における軸索輸送プロセスに対する振動性および持続性の神経圧力の攪乱の比較を示す図である。Balaratnasingamaaら、Brain Research、2011年;1417巻:67〜76頁。
【0038】
図6図6は、クモ膜下腔において曝露された第IV脳神経を示す図である。
【0039】
図7図7は、転倒を生じた2回の失神エピソード後に入院した77歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。男性は、頭痛を否定し、救急治療室の周囲を歩き回り、流暢な発話で話していた。男性は、人物、場所および時間を正しく認識していた。男性の外眼運動は損傷がないように見えた。頭部CTは、一側性水頭症を伴うMonroe出血の左側孔を明らかにした。
【0040】
図8図8は、転倒の6週間後に頭痛を示した86歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。
【0041】
図9図9は、頭蓋内病変を有する患者の眼球運動追跡を示す図である。
【0042】
図10図10は、頭蓋内病変を有する患者の眼球運動追跡を示す図である。第III神経が直接的な圧力下に置かれて麻痺を経験し、図表のボックス高さにおいて視覚的に明らかな大量の喪失を実証している。
【0043】
図11図11は、発話困難を示した86歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。眼球追跡において下ボックス壁の完全性を減少させる腫瘤効果を生じる皮質病変が存在する。
【0044】
図12図12は、上昇した頭蓋内圧を示す頭蓋内病変を有する患者の眼球運動追跡が、病変を限局化するために使用され得ることを示す図である。
【0045】
図13図13は、水頭症患者の頭部CTスキャンを示す図であり、62歳の男性 OSHにおける2002年の胸部上衣腫のs/p切除、化学療法およびXRT;結果としての対麻痺、2010年に再発;2011年12月にUE機能の悪化および減少した自発的発話が発症するまで外科的介入を辞退した。
【0046】
図14図14は、図13に記載される患者のCTスキャンを示す図である。患者は、上衣腫の再切除および脳室開窓術による留置を受け、精神状態はベースラインに戻り、脳室開窓術を断ち切った。この患者は、自発的発話の欠乏を再提示した;シャントを必要とする水頭症。
【0047】
図15図15は、失語症および昏睡から回復している患者の眼球運動追跡を示す図であり、眼球運動追跡が、失語症および最小に意識のある状態からの回復の定量的アウトカム尺度として使用できることを示唆している。
【0048】
図16図16は、指示に従わない患者において眼球運動追跡が実施できることを実証する、失語症患者の眼球運動追跡を示す図である。
【0049】
図17図17は、対象または患者および対照の両方の眼球運動追跡が如何にして試験され比較され得るかを示すフローチャートを示す図である。眼球追跡器デバイスが、所定の時間期間にわたって、視覚刺激に応答した生瞳孔角を測定するために提供される。測定が行われ、測定された値の分布が生成され得る。統計的試験が、低減された神経の伝導性および機能ならびに増加した頭蓋内圧について診断を決定しまたはスクリーニングするために、この分布に対して実施され得る。眼球運動観察を処理すること、測定を行うこと、測定された値の分布を決定すること、および統計的試験を実施することは、全て、適切なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。
【0050】
図18図18は、例示的実装に従うコンピュータシステムのブロック図を示す図である。
【0051】
図19図19は、図18に示されるようなコンピュータシステムによって、対象の眼球運動が如何にして測定、分析および表示されるかの立体配置を示す模式図を示す図である。
【0052】
図20-1】図20は、眼筋運動不全を検出するために眼球運動を追跡することを示す図である。ボックスプロットは、異なる色、順に赤色、緑色、シアン、マゼンダおよび青色として各サイクルを示す。経時変化は、デカルト座標を経時的にプロットして、5回の40秒間サイクルの各々について眼位におけるパーセント変化を示す。上の行は正常な対照である。引き続く行は、眼瞼下垂あり、複視なしおよび正常な運動性の患者における、CN II、海綿静脈洞および脳橋周囲領域を圧迫する腫瘍を示す。最後の行は、外科的修復の1年以内に消散した一過的な複視を伴う、下眼窩周縁部の骨折を持続させた、神経麻痺のいずれの証拠もない患者である。
図20-2】図20は、眼筋運動不全を検出するために眼球運動を追跡することを示す図である。ボックスプロットは、異なる色、順に赤色、緑色、シアン、マゼンダおよび青色として各サイクルを示す。経時変化は、デカルト座標を経時的にプロットして、5回の40秒間サイクルの各々について眼位におけるパーセント変化を示す。上の行は正常な対照である。引き続く行は、眼瞼下垂あり、複視なしおよび正常な運動性の患者における、CN II、海綿静脈洞および脳橋周囲領域を圧迫する腫瘍を示す。最後の行は、外科的修復の1年以内に消散した一過的な複視を伴う、下眼窩周縁部の骨折を持続させた、神経麻痺のいずれの証拠もない患者である。
【0053】
図21A図21は、減少した中脳周囲容積が、テント上腫瘤病変を有する5人の患者における眼球運動追跡における減少した垂直振幅と関連することを示す図である。減少した中脳周囲容積を有する5人全ての患者が、2人の独立した放射線科医によって、増加した鉤腫瘤効果を有することが確認された。A.これらの患者の術前追跡は、術後のその患者自身と比較して(p=0.008)、容積測定的に中脳周囲圧迫を有さないまたはX線撮影上の鉤腫瘤効果を有さないテント上腫瘤病変を示す2人の患者と比較して、前庭神経鞘腫を有する5人の患者と比較して、および11人の眼科クリニック対照患者と比較して、減少したアスペクト比(高さ/幅)と統計的に有意に関連していた。B.術後から術前までの中脳周囲圧迫におけるパーセント減少とアスペクト比におけるパーセント減少との間には、線形の関係が存在した(p=0.009)。
図21B図21は、減少した中脳周囲容積が、テント上腫瘤病変を有する5人の患者における眼球運動追跡における減少した垂直振幅と関連することを示す図である。減少した中脳周囲容積を有する5人全ての患者が、2人の独立した放射線科医によって、増加した鉤腫瘤効果を有することが確認された。A.これらの患者の術前追跡は、術後のその患者自身と比較して(p=0.008)、容積測定的に中脳周囲圧迫を有さないまたはX線撮影上の鉤腫瘤効果を有さないテント上腫瘤病変を示す2人の患者と比較して、前庭神経鞘腫を有する5人の患者と比較して、および11人の眼科クリニック対照患者と比較して、減少したアスペクト比(高さ/幅)と統計的に有意に関連していた。B.術後から術前までの中脳周囲圧迫におけるパーセント減少とアスペクト比におけるパーセント減少との間には、線形の関係が存在した(p=0.009)。
【0054】
図22-1】図22は、硬膜下血腫を有する患者における瞳孔垂直振幅の増悪および可逆性を示す図である。A.白内障の履歴を有する86歳の男性は、転倒の数週間後に頭痛を示した。最初の軸位CTは、開いた中脳周囲槽(赤色矢印)と共に小さい硬膜下血腫(上の行、左)を示した。B.8日後、男性の頭痛は増悪し、反復画像化により、硬膜下血腫が拡大して脳に対する腫瘤効果を創出し、側頭葉の内側面を中脳周囲槽中に押し込んでいることが実証された(中央の行、赤色矢印)。C.ツイストドリルドレーンを配置し、100ccの硬膜下液を排出し、中脳周囲槽に対する腫瘤効果の消散を生じた(下の行、赤色矢印)。
図22-2】図22は、硬膜下血腫を有する患者における瞳孔垂直振幅の増悪および可逆性を示す図である。A.白内障の履歴を有する86歳の男性は、転倒の数週間後に頭痛を示した。最初の軸位CTは、開いた中脳周囲槽(赤色矢印)と共に小さい硬膜下血腫(上の行、左)を示した。B.8日後、男性の頭痛は増悪し、反復画像化により、硬膜下血腫が拡大して脳に対する腫瘤効果を創出し、側頭葉の内側面を中脳周囲槽中に押し込んでいることが実証された(中央の行、赤色矢印)。C.ツイストドリルドレーンを配置し、100ccの硬膜下液を排出し、中脳周囲槽に対する腫瘤効果の消散を生じた(下の行、赤色矢印)。
【0055】
図23A図23は、転倒後に急性硬膜外血腫および両側性中脳周囲圧迫を有する62歳の患者の眼球運動追跡を示す図である。この患者は、小さい右前頭頭頂硬膜外血腫および転位のない頭蓋骨骨折を示す、神経学的に非局所的な検査およびCTスキャンを示す。提示の時点で、患者は、局所的な神経学的欠陥がなく、言語的に適当であった。A.瞳孔サイズは、肉眼検査によって同一であり、外眼運動は、眼球運動追跡を実施した場合損傷がないように見えた。4時間後、この患者は、左前腕の回内および間欠性の構音障害を発症した。硬膜外血腫排出および骨折修復を実施した。B.患者は、術後7日目に反復眼球運動追跡を受け、眼球ボックス軌跡の同じ部分において、術前より低い持続的な異常を示した。C.術前CT画像が提供される。
図23B図23は、転倒後に急性硬膜外血腫および両側性中脳周囲圧迫を有する62歳の患者の眼球運動追跡を示す図である。この患者は、小さい右前頭頭頂硬膜外血腫および転位のない頭蓋骨骨折を示す、神経学的に非局所的な検査およびCTスキャンを示す。提示の時点で、患者は、局所的な神経学的欠陥がなく、言語的に適当であった。A.瞳孔サイズは、肉眼検査によって同一であり、外眼運動は、眼球運動追跡を実施した場合損傷がないように見えた。4時間後、この患者は、左前腕の回内および間欠性の構音障害を発症した。硬膜外血腫排出および骨折修復を実施した。B.患者は、術後7日目に反復眼球運動追跡を受け、眼球ボックス軌跡の同じ部分において、術前より低い持続的な異常を示した。C.術前CT画像が提供される。
図23C図23は、転倒後に急性硬膜外血腫および両側性中脳周囲圧迫を有する62歳の患者の眼球運動追跡を示す図である。この患者は、小さい右前頭頭頂硬膜外血腫および転位のない頭蓋骨骨折を示す、神経学的に非局所的な検査およびCTスキャンを示す。提示の時点で、患者は、局所的な神経学的欠陥がなく、言語的に適当であった。A.瞳孔サイズは、肉眼検査によって同一であり、外眼運動は、眼球運動追跡を実施した場合損傷がないように見えた。4時間後、この患者は、左前腕の回内および間欠性の構音障害を発症した。硬膜外血腫排出および骨折修復を実施した。B.患者は、術後7日目に反復眼球運動追跡を受け、眼球ボックス軌跡の同じ部分において、術前より低い持続的な異常を示した。C.術前CT画像が提供される。
【0056】
図24図24もまた、転倒後に急性硬膜外血腫および両側性中脳周囲圧迫を有する62歳の患者の眼球運動追跡を示す図である。A.正常な対照におけるボックス高さを含む眼球運動追跡を示す。B.この患者における眼球運動追跡を示す。
【0057】
図25図25は、右下肢脱力に起因する機能損傷された運動性を示した、腎機能不全、両側性白内障および両側性で20/25の視力を有する74歳の糖尿病高血圧症男性の眼球運動追跡を示す図である。男性は、頭部外傷を否定したが、頭部を打たずに3か月前に転倒したことを報告した。検査では、男性は、覚醒しており、右前腕の回内と、上肢および下肢の4/5右側不全片麻痺を届け出た。男性の左側は損傷がなかった。男性の瞳孔は同一であるように見え、男性は検査では損傷のない外眼筋運動を有した。A.硬膜下血腫および鉤膨満を示す術前CTスキャンを提供する。眼球運動追跡を実施し、結果をBに提供した。硬膜下血腫のツイストドリルドレナージを実施し、130ccの体液を抽出した。男性は、入院患者のリハビリテーション後に退院して帰宅した。
【0058】
図26図26は、成人期の持続時間にわたって医師の診察を辞退してきた、従って、関連する病歴も眼科履歴も報告していない、咳およびインフルエンザ様の病気で救急治療室に来た、63歳の、1年に100パック喫煙する男性の眼球運動追跡を示す図である。検査では、男性は、見当識障害であり、軽度の左不全片麻痺を有することが注目された。瞳孔は、同一で反応性であり、外眼運動は損傷がないように見えた。A.頭部CTは、右前頭腫瘤を示し、胸部X線写真は、大きい左上葉胸部腫瘤を示した。この患者に、デカドロン10mgを6時間毎に経口投与し、CT胸部/腹部/骨盤および脳MRI(示される)を取得した。B.眼球運動追跡を、中程度に高分化型の扁平上皮癌腫転移の切除のための右前頭開頭術の直前に、入院の48時間後に実施した。X線撮影肉眼総切除を実施した。この患者は、開頭術の1週間後に帰宅し、最終的に全脳に対する放射線療法を受けた。C.術後2週間目での眼球運動追跡の結果を提供する。患者は、肺腫瘤に対する処置を辞退し、最初の診断後7か月が経過した。
【0059】
図27図27は、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症、クマジン服用中の心房細動(atrial fibrilliation)、うっ血性心不全、外傷後ストレス障害、透析中の腎不全、慢性閉塞性肺疾患および冠状動脈疾患を有する63歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。男性は、腎不全のために血液透析を受けながら、錯乱を示した。眼科履歴は、増殖性網膜症が顕著だった。男性は、右眼20/25および左眼20/40の視力を有した。身体検査では、提示の時点において、男性は、神経学的に良好であり、無視も前腕の回内もなかった。外眼運動は損傷がなく、瞳孔は同一であった。A.頭部CTは、右側混合密度硬膜下出血を示した。B.眼球運動追跡を実施した。クマジンを停止させ、新鮮な凍結血漿を投与した。提示の2日後、ツイストドリルドレナージを実施し、176ccの硬膜下液を排出させた。この患者は、神経学的に良好のままであり、2日後に自分の老人ホームに戻った。
【0060】
図28図28は、前立腺癌、高血圧症、高脂血症、寛解期におけるアルコール依存症、および銃弾の断片が残った左肩への銃創の過去の病歴を有する67歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。男性の眼科ベースラインは、右眼20/40および左眼20/50の視力であった。男性は、2か月間の吃音症ならびに右腕および手の脱力を示した。男性は、提示の日に、右上肢の震えから始まった、証拠となるけいれんを有し、全身性の強直間代性の活動性に進行した。検査では、男性は、損傷のない瞳孔および外眼運動を有した。男性の発話は、錯語的な誤りならびに反復および命名の困難を伴って、ゆっくりであった。A.コントラストのある頭部CTは、左前頭側頭嚢胞性腫瘤を明らかにした。B.眼球運動追跡を、左眼および右眼の両方に対して実施した。この患者は、壊死性細胞を明らかにし、悪性腫瘍について非診断的であった嚢胞の覚醒定位ドレナージを受け、その後、多形神経膠芽腫の切除のためにスピーチマッピング(speech mapping)を伴う覚醒定位開頭術を受けた。肉眼総切除を、X線撮影により達成した。この患者は、維持された発話を有したが、術後に軽度の不全片麻痺を有し、退院帰宅前にリハビリテーションに参加した。男性は、外来患者としてテモダールおよび放射線療法を受け、術後4か月目の時点において腫瘍再発なしに、日常生活の活動性において自立したままであった。C.眼球運動追跡を、腫瘍切除の1か月後に、左眼および右眼の両方に対して実施した。
【0061】
図29図29は、高血圧症、高脂血症、冠状動脈疾患および外傷後ストレス障害の過去の病歴を有し、既知の眼科障害を有さず、視力が両側性で20/20の、外部外科医による食道接合部転移に対する左頭頂開頭術の2週間後に、悪化した右手協調および運動失調を示した、65歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。検査では、この患者は、右前腕の回内および半側無視を有した。A.CTは、手術部位における浮腫を明らかにし、MRIは、以前の腫瘍腔における末梢増強集積を明らかにした。B.眼球追跡を実施し、次いでこの患者を、再診査開頭術および硬膜に対し深部の膿瘍の排出のために手術室に運んだ。患者は、術後12週間にわたって抗生物質で処置された。C.眼球追跡を、術後1週間目に再度実施した。
【0062】
図30-1】図30は、前庭神経鞘腫手術対照症例の眼球運動追跡を示す図である。3人の患者(A、BおよびE)は切除を受け、1人は、前庭神経鞘腫腫瘍に対するガンマナイフ放射線を受けた(C)。左および右の両方の眼球運動追跡が左および中央の列に提供され、MRIフィルムが右の列に提供される。
図30-2】図30は、前庭神経鞘腫手術対照症例の眼球運動追跡を示す図である。3人の患者(A、BおよびE)は切除を受け、1人は、前庭神経鞘腫腫瘍に対するガンマナイフ放射線を受けた(C)。左および右の両方の眼球運動追跡が左および中央の列に提供され、MRIフィルムが右の列に提供される。
【0063】
図31図31は、HIV感染、糖尿病、高血圧症、および2回の転倒後に神経学者に示された脳卒中の過去の病歴を有する68歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。大量腰椎穿刺を実施した。開口圧力は3cmであった。この患者の歩行は、タップによって劇的に改善した。4に設定したCertasプログラム可能弁を有するCodmanシャントを配置したところ、この患者は、進行性の改善を臨床的に示し続けた。連続追跡を実施したところ、歩行における臨床的改善と並行していた。
【0064】
図32図32は、5年間にわたって進行性の漸増する歩行障害および記憶の問題を示した57歳の建設作業員の眼球運動追跡を示す図である。この患者は、勤務中の落下後に建設作業員としての職から解雇された。この患者のミニメンタルステート検査は、大量腰椎穿刺後に、歩行と同様、3ポイント改善した。5に設定したCertasプログラム可能弁を有するCodmanシャントを配置したところ、この患者は、進行性の改善を臨床的に示し続けた。連続追跡を実施したところ、歩行における臨床的改善と並行していた。
【0065】
図33図33は、歩行失行のために、73歳の時に正常圧水頭症のためにシャントを受けた、喘息、高血圧症、外傷後ストレス障害および良性前立腺肥大症の過去の病歴を有する、87歳の男性、第2次世界大戦の退役軍人の眼球運動追跡を示す図である。中間圧PS医療用弁がその時に配置された。男性は、弁の交換なしに、3回の後の遠位シャント修正を受けた。男性は現在、進行性の歩行失行を再度示しており、シャントグラム(shuntogram)は遠位機能障害を示している。男性は既に3回の腹腔内シャントを失敗しているので、シャントを直ちに修正し、胸膜腔中に配置した。弁もシャントチュービングも交換しなかった。この患者は、追跡における改善と並行して歩行における改善を示した。
【0066】
図34図34は、多発性硬化症および両側性視神経症を有する57歳の男性の連続追跡の結果を示す図である。この追跡は連続的な改善を示さない。
【0067】
図35図35は、複視を生じ、眼科医によって検出され正常対照と比較された、既知の第VI神経麻痺を有する人物の眼球運動追跡を示す図である。ボックス軌跡は平らに見えたが(図35左)、アスペクト比の計算により、ボックスは、対照軌跡よりも実際にはより高くかつ狭いことが明らかになった(図35右)。
【0068】
図36図36は、頭の背部に圧痛のある腫瘤を示し、進行性の頭痛を示した、低分化型乳頭癌腫を有する54歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。画像化により、第四脳室をほぼ閉塞させている頭蓋冠ベースの転移が明らかになった。MRIでは、水頭症を示唆する脳室上皮を横切る流れは存在しなかった(図36右)。眼球追跡は、CN VI麻痺と一致する、以前の広さよりも狭いボックス(増加したアスペクト比)を示した。
【0069】
図37図37は、腫瘤を切除した後の図36の患者の眼球運動追跡を示す図である。術後1日目の反復画像化により、ボックスが、正常なアスペクト比を有するまでに戻ったことが示された。
【0070】
図38図38は、肺腫瘤および頭痛を示した56歳の男性の眼球運動追跡を示す図である。MRIでは、水頭症を示唆する脳室上皮を横切る流れは存在しなかった(図38右)。右眼の眼球追跡は、CN VI麻痺と一致する、以前の広さよりも狭いボックス(増加したアスペクト比)を示した。
【0071】
図39図39は、術後の図38の患者を示す図である。アスペクト比は正常に戻った。
【0072】
図40図40は、うっ血乳頭はないが、MRIスキャンで脳室上皮を横切る流れを有する水頭症を有することが見出された、眩暈および頭痛を示している59歳の女性の眼球運動追跡を示す図である。女性はシャントされ、そのアスペクト比は術後に正常に戻った(図40下)。
【0073】
図41図41は、中枢性視神経萎縮症を生じ、大規模なy変動性を示す、眼のヒストプラスマ症を有する患者の眼球運動追跡を示す図である。
【0074】
図42図42は、視神経炎について評価され、増加したy変動性もまた示す、25歳の女性患者の眼球運動追跡を示す図である。
【0075】
図43図43は、多発性脳神経障害を示した、多発性硬化症に起因して非共同注視を有する患者の眼球運動追跡を示す図である。このパターンは、健康な対照対象においても、視神経、視交叉もしくは視索に影響する腫瘍を有する数人の患者、または既知の眼の非神経性の病理に起因した低い視力を有する数人の患者を含む他の患者においても、見られなかった。
【0076】
図44図44は、中枢性視神経萎縮症および眼のヒストプラスマ症患者において見られたものと類似の屋根も床も有さない、増加した垂直範囲のボックス軌跡を実証した、うっ血乳頭と一致する検査を示す、大きい右前頭脳腫瘍を有する患者の左眼の眼球運動追跡を示す図である。
【0077】
図45図45は、y変動性におけるこの統計的に有意な偏差が、24時間にわたるステロイドで消散したことを示す図である。患者のボックス軌跡の高さは、ステロイド後かつ切除前に減少したままであり、第III神経麻痺の成分を示唆している。
【0078】
図46図46は、図44および45に示される患者の眼球追跡軌跡が、切除の1週間後までに正常に戻ったことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
発明の詳細な説明
本発明の方法を記載する前に、本発明は、記載される特定の方法および実験条件に限定されず、かかる方法および条件が変動し得ることを理解すべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される術語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定することを意図しないこともまた理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形の指示対象を含む。従って、例えば、「方法(the method)」に対する言及は、1つもしくは複数の方法、ならびに/または本明細書に記載されるおよび/もしくは本開示などの全体を読んだ当業者に明らかな型の工程、を含む。
【0080】
特に規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と類似または等価な任意の方法および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料がここに記載されている。本明細書で言及される全ての刊行物は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
定義
【0081】
本明細書で使用される用語は、当業者に認識された公知の意味を有するが、簡便さおよび完全さのために、特定の用語およびその意味を以下に示す。
【0082】
「対象」または「患者」とは、例えば増加した頭蓋内圧などの状態、障害もしくは疾患の処置の必要性がある、または処置を受けている、あるいはかかる状態、障害もしくは疾患についてのスクリーニングの必要性がある、またはスクリーニングを受けている、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0083】
「中枢神経系の完全性を評価する」とは、中枢神経系の病理もしくは中枢神経系に影響を与える病理を示し得る1つもしくは複数の症状を同定すること、または中枢神経系の病理を同定、評価、定量もしくは診断することを意味する。この病理は、例えば、増加した頭蓋内圧、水頭症、脳振盪、認知症、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症、筋硬化症(muscular sclerosis)、自閉症および脆弱X疾患のうち1つまたは複数であり得る。
【0084】
本明細書に記載される方法は、従来の方法とは別個である。頭蓋内圧を決定するために適用される場合、従来のICPモニタは、1つのスポットで脳の圧力数を決定し、Oモニタは、1つのスポットで酸素化数を決定し、画像化により脳がどのように見えるかが明らかになるが、本明細書に記載される方法は、上昇した頭蓋内圧などの、軸索原形質輸送を遅延させ得る要因を反映し得る脳神経の生理学的機能について試験するための方法を提供する。
【0085】
本明細書に記載される方法は、上昇した頭蓋内圧を検出し、上昇した頭蓋内圧の重症度を評価または決定するために使用され得る。同様に、本明細書に記載される方法は、かかる頭蓋内圧の頭蓋内の原因を限局化し、頭蓋内の病変またはびまん性プロセスの進行をモニタリングするために使用され得る。
【0086】
本明細書に記載される方法は、高い感度を提供する。上昇したICPと一致する異常な身体検査またはフィルムを有すると評価された患者で、正常な眼球運動追跡を有したものはまだ存在しなかった。本明細書に記載される方法は、潜在的なシャント機能障害患者、上昇した頭蓋内圧を引き起こす病変を有する患者においてCTスキャンの必要性を低減させるために使用され得、上昇した頭蓋内圧に罹患するリスクがある、救急治療室ER集団、スポーツ参加者、兵士もしくは他の戦闘員、介護施設入居者または他の集団などの患者集団をスクリーニングするために使用され得る。
【0087】
例えば約220秒間にわたって行われる高分解能自動眼球運動追跡は、無症候性に明らかな眼筋運動機能不全を検出するための強力なツールであり、従って、上昇した頭蓋内圧の迅速な診断において助けになる。
【0088】
第II、第III、第IVおよび第VI脳神経の麻痺は、急性水頭症を有する患者において全て記載されているが(Tzekovら、Pediatric Neurosurgery 1991年;17巻(6号):317〜320頁およびChouら、Neurosurgery Clinics of North America 1999年;10巻(4号):587〜608頁)、各神経の相対的脆弱性は、十分確立されていない。クモ膜下腔への曝露の長さが頭蓋内圧上昇に対する唯一の脆弱性の予測因子であるとすると、第IV神経が最も脆弱であり(中央値長さ33mm(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁))、第III神経が2番目に脆弱であり(26mm(Adlerら、Journal of Neurosurgery 2002年;96巻(6号):1103〜1112頁))、第IIおよび第VIは、およそ等しく、最も脆弱性が低い(IIについて5〜16mm(Murali, R.、Injuries of the Cranial Nerves. In: Golfinos PCaJ編、Head Injury.第4版.New York: McGraw Hill;2000年)、VIについて11mmの中央値長さ(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁))。
【0089】
外転神経(VI)は、延髄橋(medullopontine)接合部においてその係留から脳幹を出て、Dorello管に入る前に頭蓋内を走り、この場所で、線維状構造および骨様構造によって再度係留される。テント上ICPの上昇は、テントの自由縁を通って海馬傍回を押し下げ、一方で、第VI神経が係留された脳幹は、大後頭孔に向かって尾側を動き、神経を伸ばし、この場所でDorello管に入る(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁)。小脳および脳幹を前方に押す後頭蓋窩病変は、斜台に対して第VI神経を直接圧迫し得る(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁)。第VI神経麻痺の報告の増加は、第IIIおよび第IV神経麻痺よりも、臨床検査においてそれらがより容易に検出されることに起因し得る可能性もある。
【0090】
本明細書に示されるデータは、眼球運動追跡における較正工程を特徴としない。従って、患者は、指示に確実に従う必要はなく、データは、脳神経障害の可能性のある影響を排除しない。他の研究(Contrerasら、Brain research 2011年;1398巻:55〜63頁;Marutaら、The Journal of Head Trauma Rehabilitation 2010年;25巻(4号):293〜305頁;Contrerasら、Journal of Biological Physics 2008年;34巻(3〜4号):381〜392頁およびTrojanoら、J Neurol 2012年;(オンラインで公開;印刷前))とは異なり、本明細書に示されるデータは、尺度としてサッケードカウントも空間精度も使用しない。この論文で示された開口部の周期的なエンベロープの動きに基づく結果に加えて、この方法論は、動画自体の連続フレームに応答した眼球運動を示す非常に微細なスケールのデータもまた与える。
【0091】
本明細書に記載される方法は、臨床的問題に対処するために損傷のない眼筋運動に依存する既存の方法の上に築かれている(Leeら、Brain research. 2011年;1399巻:59〜65頁;Contrerasら、Brain research 2011年;1398巻:55〜63頁;Marutaら、The Journal of Head Trauma Rehabilitation 2010年;25巻(4号):293〜305頁)。本明細書に記載される方法は、いくつかの点で異なっている。第1に、本発明の方法は、主に皮質の軽度から中程度の外傷性脳傷害に起因する認知機能損傷を測定するのではなく、第II、第III、第IV、第VI脳神経および関連する核の機能を反映する視覚および眼筋運動に関する特定の臨床的状態を診断することを特徴とする。第2に、本発明の方法は、サッケードへの速度尺度のいくらか自由裁量の閾値化を介して喪失され得る僅かな差異を引き出すために、例えば約100,000の測定値を使用する、より微細なスケールの情報を使用する。第3に、本発明の方法は、対象が正確な命令に確実に従う能力にその有効性が依存する一連の縮尺変更および回転のプロセスによって生データを変換することを必要とする空間精度の測定を使用しない。かかる以前に使用された方法では、神経学的に障害のある患者の圧倒的多数を排除する必要がある。さらに、かかる以前に使用された方法は、第II、第III、第IVおよび第VI脳神経の機能に関する任意の情報を喪失するが、この理由は、これらの神経に対する損傷から生じると予測される空間歪みが、空間的較正のプロセスにおいて反転されるからである。
【0092】
Trojanoら、J Neurol 2012年;(オンラインで公開;印刷前)は最近、最小に意識のあるおよび持続的に植物状態の患者の集団における、較正されていない眼球運動測定値を記載した。本明細書に記載される方法は、いくつかの点で異なっている。第1に、Trojanoらは、25人ではなく11人の健康な対照対象からのデータを報告している。第2に、Trojanoらは、頭蓋内圧における急性変化ではなく、意識の慢性障害を評価している。第3に、Trojanoらは、500Hzではなく60Hzで眼球運動をサンプリングして、そのデータの力を効率的に100分の1に低減させている。第4に、Trojanoらは、空間的に較正されたデータを有さず、これらの値をノイズの多いものにしているにもかかわらず、群間のオンターゲットおよびオフターゲット固視における差異を報告している。最後に、Trojanoらは、準周期的な方法で静的刺激移動を使用している。本明細書に記載される方法は、周期的に動く開口部内に示される動く画像を使用し、対照および患者の両方において、粗い眼球運動および微細な眼球運動の両方の特徴の評価を可能にする。
臨床的意義。
【0093】
幾人かの患者は、脳の一方の側で上昇したICPを示すが他方の側では示さないので、本明細書に示されるデータは、クモ膜下腔の区画化と一致している。本発明に記載されるICP評価のための方法は、従来のX線撮影研究を上回る顕著な利点を示すが、この理由は、後者が脳がどのように見えるかを示すのに対し、本発明者らの技法は、それが如何に良好に機能するかを捕捉するからである。CTスキャンは、小児科集団において短期の鎮静状態を必要とし得、放射線曝露のリスクがあるが、MRは長期の鎮静状態を必要とし得る。脳の画像化は、T2強調MR画像化において脳室上皮を横切る流れなどの古典的な知見のない、慢性的に拡大された脳室を有する患者における上昇したICPについて診断的でない可能性がある(Mizrachiら、J Neuroophthalmol. 2006年;26巻(4号):260〜263頁)。非従順でスリット脳室を有する患者も、X線撮影異常の非存在下で、上昇したICPを有し得る(Engelら、Neurosurgery 1979年;5巻(5号):549〜552頁)。シャントタッピングは、特にスリット脳室を有する患者において、感染および機能障害のリスクがある。侵襲性のモニタリングは、頭蓋内出血のリスクがある。従って、水頭症または上昇したICPの評価のためのさらなる低リスクで迅速な技法が、これらの病理のリスクのある集団を評価する人々にとって有用であり得る。
【0094】
本明細書に記載される方法は、上昇したICPの診断およびその発症のリスクがあるかかる患者の前向きモニタリングのための有用な補助を提供する。履歴、身体検査および放射線医学により上昇したICPを有する患者で、正常な眼筋運動を示したものはなく、本明細書に記載される方法が高感度であることを実証している。本明細書に示されるデータは、身体検査で肉眼では損傷のない外眼運動を有し、病理において比較的最低限の変化を有する患者が、高分解能の追跡において深刻な破壊を有し得ることを示している。
【0095】
水頭症患者単独の眼の病理の多様なベースラインを考慮すると(Dennisら、Arch Neurol. 1981年10月;38巻(10号):607〜615頁;Zeinerら、Childs Nerv Syst. 1985年;1巻(2号):115〜122頁およびAltintasら、Graefe’s archive for clinical and experimental ophthalmology = Albrecht von Graefes Archiv fur klinische und experimentelle Ophthalmologie.2005年;243巻(12号):1213〜1217頁)、追跡結果は、各患者自身の規範的データと比較する必要があり得る。
【0096】
本明細書に示されるデータは、ビデオを見ている間の眼球運動の分析によって、上昇した頭蓋内圧を診断することが可能であることを、一部実証している。本明細書に記載される方法は、他の技術とは顕著に異なっているが、この理由は、画像化研究により、脳を見ることができ、侵襲性の技法により、自由裁量の圧力数または酸素化数の決定が可能になるからである。本明細書に記載される方法は、生理学的機能を実際に評価する。
【0097】
本明細書に記載される方法は、例えば以下を含む多くの臨床的適用を有する、i)第II、第III、第IVおよび第VI脳神経であるが、おそらくはさらには第VII、第VIIIおよび/または第X脳神経の機能を評価すること;ii)上記の機能を妨害または改善する任意のプロセスを検出し、定量的にモニタリングすること(例えば、動脈瘤、多発性硬化症、サルコイドーシス、腫瘍、加齢、アルコール乱用、中毒性物質/麻薬などに適用され得る、上昇したICPまたは増加した脳腫瘤効果を実証すること);iii)病理を限局化することおよび脳内のその病理の性質を同定すること(例えば、神経を圧迫する病変と、腫瘤効果を創出するまたはICPを大きく上昇させるだけの病変との間を識別すること);iv)定期的に「ニューロチェック(neuro−check)」を実施する家庭用コンピュータ/ウェブカメラ、院内または外来患者「テレビ番組」を介して患者をモニタリングすること;v)持続的に植物状態のおよび最小に意識のある状態、失語症、ならびに脳傷害からの回復の評価のためにアウトカムを定量的に測定すること;vi)失語症の型を特徴付け、病理を限局化すること;vii)認知症/認知機能を定量的に評価すること。同様に、本明細書に記載される方法は、例えば、全て比較的同時に、視覚を評価し、眼筋運動を評価し、認知機能不全を評価するためなどの、じかに行うスクリーニングのための手段を提供し得る(例えば、運転免許またはパイロット免許、雇用などのため)。さらに、本明細書に記載される方法は、認知の衰えと共に増加するように見える分散を評価するために使用され得る。これは、例えば、知能の層別化により広告の的を絞るために使用され得る。なおさらには、本明細書に記載される方法は、知能試験または神経学的機能試験に使用され得る。
【0098】
本発明に従うコンピューティングシステムは、図17〜19に記載されている。本明細書に記載される観察者マターおよび機能的演算の実装は、本明細書に開示される構造およびその構造的等価物、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせを含む、他の型のデジタル電子回路において、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェアもしくはハードウェアにおいて、実装され得る。コンピュータシステムまたはコンピューティングデバイス1000は、プロセッサ106およびディスプレイ108、眼球運動/視線追跡器コンポーネント104などを含むデバイスを実装するために使用され得る。コンピューティングシステム1000は、情報を伝えるためのバス1005または他のコミュニケーションコンポーネントと、情報を処理するためにバス1005に連結されたプロセッサ1010または処理回路とを含む。コンピューティングシステム1000は、情報を処理するためにバスに連結された1つまたは複数のプロセッサ1010または処理回路を含んでいてもよい。コンピューティングシステム1000は、情報およびプロセッサ1010によって実行される指示を記憶するためにバス1005に連結されたメインメモリ1015、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスもまた含む。メインメモリ1015は、プロセッサ1010による指示の実行の間に、位置情報、一時的変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。コンピューティングシステム1000は、静的情報およびプロセッサ1010のための指示を記憶するためにバス1005に連結された読み出し専用メモリ(ROM)1010または他の静的記憶デバイスをさらに含み得る。記憶デバイス1025、例えばソリッドステートデバイス、磁気ディスクまたは光ディスクは、情報および指示を持続的に記憶するためにバス1005に連結される。
【0099】
コンピューティングシステム1000は、使用者に情報を表示するために、バス1005を介して、ディスプレイ1035、例えば液晶ディスプレイまたはアクティブマトリックスディスプレイに連結され得る。インプットデバイス1030、例えば、英数字および他のキーを含むキーボードは、プロセッサ1010に情報および命令選択を伝えるためにバス1005に連結され得る。別の実装では、インプットデバイス1030は、タッチスクリーンディスプレイ1035を有する。インプットデバイス1030は、プロセッサ1010に方向情報および命令選択を伝えるためならびにディスプレイ1035のカーソルの動きを制御するための、カーソル制御、例えばマウス、トラックボールまたはカーソル指向キーを含み得る。
【0100】
種々の実装によれば、本明細書に記載されるプロセスは、メインメモリ1015中に含まれる指示の配列を実行するプロセッサ1010に応答して、コンピューティングシステム1000によって実装され得る。かかる指示は、別のコンピュータ可読媒体、例えば記憶デバイス1025から、メインメモリ1015中に読み込まれ得る。メインメモリ1015中に含まれる指示の配列の実行は、コンピューティングシステム1000に、本明細書に記載される例示的プロセスを実施させる。多重処理配列中の1つまたは複数のプロセッサもまた、メインメモリ1015中に含まれる指示を実行するために使用され得る。代替的実装では、ハードワイヤード回路が、例示的実装をもたらすために、ソフトウェア指示の代わりに、またはソフトウェア指示と組み合わせて、使用され得る。従って、実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0101】
本明細書に記載される観察者マターおよび演算の実装は、本明細書に開示される構造およびその構造的等価物、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせを含む、デジタル電子回路において、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェアもしくはハードウェアにおいて、実装され得る。本明細書に記載される観察者マターは、1つまたは複数のコンピュータプログラムとして、即ち、データ処理装置による実行のために、またはデータ処理装置の演算を制御するために、1つまたは複数のコンピュータ記憶媒体上にエンコードされたコンピュータプログラム指示の1つまたは複数のモジュールとして、実装され得る。あるいはまたはさらに、プログラム指示は、データ処理装置による実行のために適切な受信器装置への送信のために情報をエンコードするように生成された、人工的に生成された伝播された信号、例えば、機械生成された電気、光学または電磁気信号上にエンコードされ得る。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶デバイス、コンピュータ可読記憶基板、ランダムアクセスメモリもしくはシリアルアクセスメモリのアレイもしくはデバイス、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせであり得るか、あるいはそれらに含まれ得る。さらに、コンピュータ記憶媒体は、伝播された信号ではないものの、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成された伝播された信号中にエンコードされたコンピュータプログラム指示の供給源または宛先であり得る。コンピュータ記憶媒体は、1つまたは複数の別々のコンポーネントまたは媒体(例えば、複数のCD、ディスクまたは他の記憶デバイス)であり得る、あるいはそれらに含まれ得る。従って、このコンピュータ記憶媒体は、タンジブルおよび非一時的の両方である。
【0102】
本明細書に記載される演算は、1つもしくは複数のコンピュータ可読記憶デバイス上に記憶された、または他の供給源から受信されたデータに対して、データ処理装置によって実施され得る。
【0103】
用語「データ処理装置」または「コンピューティングデバイス」は、例として、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、チップ上のシステムもしくは複数のそれら、または上記の組み合わせを含む、データを処理するための全ての種類の装置、デバイスおよび機械を包含する。この装置は、特殊目的の論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)を含み得る。この装置は、ハードウェアに加えて、問題のコンピュータプログラムのための実行環境を創出するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、バーチャルマシン、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせを構成するコードもまた含み得る。装置および実行環境は、種々の異なるコンピューティングモデルインフラ、例えばウェブサービス、分散コンピューティングおよびグリッドコンピューティングインフラを実現し得る。
【0104】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプトまたはコードとしても公知である)は、コンパイラ型またはインタープリタ型言語、宣言型または手続き型言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書くことができ、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクトもしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてを含む任意の形態で配置され得る。コンピュータプログラムは、ファイルシステム中のファイルに対応し得るが、対応していなくてもよい。プログラムは、問題のプログラム専用の単一のファイル中または複数の協調的ファイル(例えば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部分を記憶するファイル)中に他のプログラムまたはデータ(例えば、マークアップ言語ドキュメント中に記憶された1つまたは複数のスクリプト)を保持するファイルの一部分中に、記憶され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つのサイトに位置付けられたもしくは複数のサイトを横断して分配され、コミュニケーションネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように、配置され得る。
【0105】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサには、例として、汎用および特殊目的の両方のマイクロプロセッサ、ならびに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサが含まれる。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリもしくはランダムアクセスメモリまたはそれら両方から、指示およびデータを受信する。コンピュータの必須要素は、指示に従って動作を実施するためのプロセッサ、ならびに指示およびデータを記憶するための1つまたは複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータはまた、データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶デバイス、例えば、磁気、光磁気ディスクまたは光ディスクを含むか、あるいはそこからデータを受信するもしくはそこにデータを転送する、またはその両方を行うように作動可能に連結される。しかし、コンピュータは、かかるデバイスを有さなくてもよい。さらに、コンピュータは、別のデバイス、例えば、ごく少数名前を挙げれば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、モバイルオーディオまたはビデオプレーヤー、ゲーム機、全地球測位システム(GPS)受信器または携帯型記憶デバイス(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)中に埋め込まれ得る。コンピュータプログラム指示およびデータを記憶するのに適したデバイスには、例として、半導体メモリデバイス、例えば、EPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク;光磁気ディスク;ならびにCD−ROMおよびDVD−ROMディスクを含む、全ての形態の不揮発性メモリ、媒体およびメモリデバイスが含まれる。プロセッサおよびメモリは、特殊目的の論理回路によって補完され得る、またはそこに組み込まれ得る。
【0106】
使用者との交流を提供するために、本明細書に記載される観察者マターの実装は、使用者に情報を表示するためのディスプレイデバイス、例えば、CRT(ブラウン管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、使用者がコンピュータにインプットを提供できるキーボードおよびポインティングデバイス、例えば、マウスまたはトラックボールとを有するコンピュータ上に実装され得る。使用者との交流を提供するために、他の種類のデバイスも同様に使用され得る;例えば、使用者に提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバックまたは触覚フィードバックであり得る;使用者からのインプットは、音響、会話または触覚インプットを含む任意の形態で受信され得る。
【0107】
本明細書には、多くの具体的な実装の詳細が記載されており、これらは、任意の発明の範囲または特許請求され得る発明の範囲に対する限定として解釈すべきではなく、特定の発明の特定の実装に特異的な特徴の説明として解釈すべきである。別々の実装に関して本明細書に記載されるある特定の特徴は、単一の実装において組み合わせて実装されることもできる。逆に、単一の実装に関して記載される種々の特徴は、別々にまたは任意の適切なサブコンビネーションにおいて、複数の実装で実装されることもできる。さらに、特徴は、ある特定の組み合わせで作用すると上記され得、さらにはそのようなものとして最初に特許請求され得るが、特許請求された組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、ある場合には、その組み合わせから削除され得、特許請求された組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションに関し得る。
【0108】
同様に、演算は、特定の順序で図面に示されるが、これは、所望の結果を達成するために、かかる演算が示された特定の順序でもしくは逐次的な順序で実施されること、または全ての例示された演算が実施されることを必要とすると理解すべきではない。ある特定の状況では、マルチタスク処理およびパラレル処理が有利であり得る。さらに、上記実装中の種々のシステムコンポーネントの分離は、全ての実装においてかかる分離を必要としていると理解すべきではなく、記載されたプログラムコンポーネントおよびシステムが一般に、単一のソフトウェア製品中に統合され得るまたは複数のソフトウェア製品へとパッケージングされ得ると理解すべきである。
【0109】
信号の尺度としてのアスペクト比と分散との関係。(x、y)対が「ボックスプロット」を示すためにプロットされる場合、これらは事前処理されているが、この理由は、経時的な信号における変化が最も重要であるために、生データの絶対値の使用が限定的だからである。平均による、標準偏差によるまたは分散による除算を含む、データを正規化するための多くの方法が存在する。さらに、標準偏差または分散は、全てのデータについて一度に算出され得、またはxはxの分散を使用して正規化され得、yはyの分散を使用して正規化され得る。周期的データのための任意の正規化手順は、平均を差し引くことを含む可能性があり、従って信号は、ゼロ付近で行ったり来たりする信号変化としてプロットされ得る。これらの変換の全ては、従来のものであり、当業者によってデータ分析において広く使用される。詳細は、尋ねられる質問および使用されているモデリングまたは統計的試験の型に依存する。
【0110】
本発明に記載されるボックスプロットを創出する際に、生データは以下のように事前処理される:x(水平)ベクトルおよびy(垂直)ベクトルについて独立して、平均が差し引かれ、標準偏差(分散の平方根)によって除算される。これは、同じ相対フレーム中に全てのデータを置く(ゼロ平均、最大および最小 約1および−1)。これが、ボックスが正方形に見える理由である(刺激提示モニタが正方形でない場合であっても)。
【0111】
これは、「長い」辺および「短い」辺が、相対的変動性を反映していることを意味する。この変動性が高い場合、分母が高く、尺度の値は低い。従って、例えば、水平(x)データの変動性が垂直(y)データの変動性と比較して高い場合、ボックスの水平アスペクトは相対的に小さく、結果は縦に細長いボックスになる(より高いアスペクト比)。逆に、垂直(y)データの変動性が水平(x)データの変動性と比較して高い場合、垂直範囲は低減され、結果は横に細長いボックスになる(より低いアスペクト比)。
【化1】
【0112】
このように、観察者マターの特定の実装が記載されてきた。他の実装は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。ある場合には、特許請求の範囲に列挙された作用は、異なる順序で実施され得るが、なおも所望の結果を達成する。さらに、添付の図面に示されるプロセスは、所望の結果を達成するために、示された特定の順序または逐次的な順序を必ずしも必要としない。ある特定の実装では、マルチタスク処理およびパラレル処理が有利であり得る。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を如何にして作製および使用するかの説明を当業者に提供するために示されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。使用される数(例えば、量、温度など)の精度を守るための努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差を考慮すべきである。特に示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセルシウス度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
(実施例1)
背景。
【0114】
眼球運動は、神経学的完全性についての臨床的に重要な情報を含んでいる。臨床的デバイスは、臨床的介入後の回復を評価するなどの適用のために、自動眼球運動追跡の相対的容易さを利用し得る。本発明者らは、最初の空間的較正なしに正確に眼球運動を確実に測定できる技法を設計した。本発明者らは、神経学的に損傷のない成人および神経外科的患者において、彼らが220秒間にわたりスクリーンの外周の周囲を動く短いミュージックビデオを見ている時に、空間的較正なしに眼球運動を追跡した。本発明者らは、精度または速度などの伝統的な空間的尺度ではなく、データの時間的特徴を測定した。
【0115】
本発明者らは、これらの較正していない測定値を使用して、神経学的機能損傷の存在と非存在との間を確実に識別した。本発明者らの結果は、この技法が、単に患者にテレビを見させることによって、神経学的完全性を評価し、欠陥を定量するために拡張され得ることを示している。
【0116】
これらの方法は、潜在的に神経学的に傷害された個人の迅速な評価、機能損傷と回復との間を振動し得る状態を有する患者のモニタリング、およびリハビリテーションまたは介入の効力を測定することを含む、多数の文脈において有用である。
【0117】
眼球運動は、神経学的完全性についての臨床的に意義のある情報を含んでいることが、長く知られてきた。眼筋運動の評価は、容易でありかつ情報を提供するので、任意の神経学的検査の標準的な部分である。しかし、専門家によって通常投与され、一般に定性的であるにすぎず、定量的ではないことを含め、標準的な臨床検査にはいくつかの問題がある。
【0118】
自動眼球運動追跡デバイスの相対的容易さ、携帯性および非侵襲性は、この自動眼球運動追跡デバイスを、運動場で脳振盪について試験するおよび臨床的介入後の回復を評価するなどの適用のために、トランスレーショナルリサーチの見込みのある領域にしている。眼球運動研究は、精神医学から外傷性脳傷害(TBI)およびリハビリテーションまでの臨床的分野についての洞察を提供している(Trojanoら、J Neurol.、2012年、259巻(9号):1888〜95頁;Gitchelら、Arch Neurol.、2012年、69巻(8号):1011〜7頁;Qiuら、PLoS One、2011年、6巻(10号):e25805頁;Plowら、PMR、3巻(9号):825〜35頁;Heitgerら、Brain.、2009年、132巻(10号):2850〜70頁;Pearsonら、Br J Sports Med.、2007年、41巻(9号):610〜2頁;Heitgerら、J Neurol Sci.、2007年、15;253(1〜39 2):34〜47頁;Suhら、Neurosci Lett.、2006年、401巻(1〜2号):108〜13頁;Suhら、Neurosci Lett.、2006年、410巻(3号):203〜7頁;Heitgerら、Brain Inj.、2006年、20巻(8号):807〜24頁;Yangら、Image and Vision Computing、2002年、20巻(4号):273〜87頁;およびHeitgerら、Prog Brain Res.、2002年、40巻:433〜1248頁)。研究は、空間的固視の精度、特定の固視標的に費やされる時間、およびサッケードカウントを一般に測定する(Trojanoら、J Neurol.、2012年、259巻(9号):1888〜95頁およびFoulshamら、Vision Res.、2011年、51巻(17号):1920〜31頁)。有望さにもかかわらず、眼球運動の定量的測定値に基づく臨床的適用を開発することは困難であることが証明されているが(Heitgerら、Prog Brain Res.、2002年、40巻:433〜1248頁およびFoulshamら、Vision Res.、2011年、51巻(17号):1920〜31頁)、この理由は場合によっては、空間的較正が臨床的設定では困難であり得るから、および空間的較正が、機能不全の眼筋運動の検出のための眼球追跡の使用を除外するからである。
【0119】
眼球追跡器の標準的な使用は、全ての測定セッションの開始時に、全ての観察者についてシステムが個々に較正されることを必要とする。較正は、コンピュータモニタ上に表示される一連の高コントラストのドットを見るように観察者に頼むことを含む。較正プロセスは、十分な精度が達成されるまで数回反復され得る。そこで初めて眼球運動が記録され得る。
【0120】
この較正プロセスが困難(例えば、多くの反復を要する)または不可能である観察者での臨床的適用では、眼球追跡を使用することは困難であった。較正は、命令に確実に従うことのできる意欲的な観察者を必要とする。神経の完全性の喪失を生じる多くの臨床的状態、例えば脳卒中または脳傷害もまた、観察者を、指示に従う意思がないまたは指示に従うことができないようにする。
【0121】
脳傷害または脳卒中の患者に対して眼球追跡方法を使用することにも問題があり、較正プロセス自体が、眼球追跡試験の感度を低減させ得る。例えば、機能損傷された垂直眼筋運動を有する患者を考慮されたい。較正プロセスは、眼が、較正ポイントによって綿密に計画された位置の全範囲をカバーすることを前提とするので、不正確に上昇および下降する最大瞳孔角を、モニタのそれぞれ「上部」および「底部」に割り当てる。かかる場合には、その観察者についての全ての未来の測定値は、その不正確な割り当てと整合するように調整される。従って、機能損傷された眼筋運動は、眼球追跡器の空間的較正で始まる試験では検出されない可能性がある。
【0122】
眼球運動の測定値は、脳に対する損傷の重症度ならびに臨床的介入後の回復を反映し得る。本明細書に記載される方法を使用して、神経外科クリニックからの35人の患者ならびに健康な志願者の対照セットを試験した。この方法の成功は、2つの特徴を含む。第1に、本明細書に記載される方法は、目的の変数として精度の空間的尺度を使用しない。空間領域ではなく時間領域において眼球運動軌跡を見ることによって、空間的較正に依存しない尺度を定量することが可能である。第2に、これらの尺度は、容易に可視化および評価され、これらの方法を臨床医または研究者にとって即座に有用なものにしている。
方法
【0123】
対象。24人の健康な観察者を、University Committee on Activities Involving Human Subjects(UCAIHS)によって決定されたように、IRB承認されたプロトコルに従って、New York Universityにおいて採用した。全ての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを提供し、その同意書はUCAIHSによって承認された。神経学的欠陥を有する35人の試験患者を、New York Harbor Healthcare System(NYHHS)において神経外科的診療から採用した。対象または彼らの法定代理人からの書面によるインフォームドコンセントを、VA New York Harbor Healthcare System Research and Development Subcommittee for Human Studiesによって確立されたガイドラインに従って、前向きデータ収集のために取得し、その同意書は、このIRBによって承認された。この研究は、このIRBによって承認された。
【0124】
観察者。較正していない眼球追跡が最初のスクリーニングとして機能する可能性があるので、患者集団は、特定の病理に制限しなかった。むしろ、クリニックに立ち寄った患者の自由裁量のサンプルを採用した。得られたサンプルは、このクリニックで見られた障害の範囲を代表した。22パーセントは、脊椎の障害を有し、この群の残りは、中枢神経系腫瘍、出血、血管病変および/または外傷を有した。この不均一な群を、集合的に「試験患者」と呼ぶ。
【0125】
眼球運動追跡。観察者の眼球運動を、Eyelink 1000単眼眼球追跡器(500Hzでのサンプリング、SR Research)を使用して記録した。全ての観察者は、スクリーンからおよそ55cmの場所に腰かけた。幾人かの試験患者を、診断、手術および回復の異なる段階で、複数の来診で追跡した。これは、試験患者集団について合計77の眼球運動経時変化を生じた。神経学的に損傷のない対照集団については、45の眼球運動経時変化が存在した。
【0126】
視覚刺激。視覚刺激は、コンピュータモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、継続的に再生されたミュージックビデオとして提供した。観察者には、ビデオを見るように指示した。この刺激は、観察者がビデオに目を通した時に、円滑追跡眼球運動ならびに起こり得るサッケードおよびマイクロサッケードを惹起すると予測された。このビデオを、スクリーンのサイズのおよそ1/8の面積を有する正方形開口部中に表示した(約16°の視角)。この正方形開口部は、スクリーンの左上角から開始して、モニタの各縁を行き来するのに10秒間かかる一定の速度で動いた。フルサイクルは40秒間かかり、5回のフルサイクルを、合計200秒間にわたって再生した。ミュージックビデオが始まる前に10秒間にわたって開始位置でカウントダウンビデオを再生して、刺激に向かうための時間を観察者に与えた。200秒間のミュージックビデオだけを分析に使用した。眼球追跡器は、500Hzで眼位をサンプリングし、200秒間にわたって100,000サンプルの眼位を得た。
【0127】
軸配向。カメラおよびモニタを、カメラにとっての「水平」がモニタにとっての「水平」と同じになるように、しっかりと取り付けた。従って、用語「水平」および「垂直」は、モニタに関して規定されるのであって、頭位傾斜に関して規定されるのではない。しかし、頭部は、典型的にはモニタと整列させ、チンレストを、全ての対照および約半数の患者に使用して、継続的な整列を確実にした。眼球追跡器は、モニタおよびカメラの結合された配向に起因して、瞳孔角の変化を、xおよびyと表示され、次に水平変化および垂直変化と呼ばれる2つの直交成分に転換した。従って、本発明者らは、水平成分および垂直成分をそれぞれxおよびyとも呼ぶ。
【0128】
データ事前処理。空間的較正は行わなかったので、生の経時変化の単位は限定的な値になった。従って、各観察者について、経時変化を、平均を差し引き、標準偏差によって除算することによって正規化した。これを、各経時変化について独立して行った。異なる経時変化を、同じ試験患者または神経学的に損傷のない対照からの別個のデータセットとして扱った。
【0129】
経時変化。正規化されたxおよびyの経時変化を、時間を追ってプロットした(図1a)。視覚刺激の時計回りの動きは、水平変化と垂直変化との間で行ったり来たりし、神経学的に損傷のない観察者におけるxおよびyの経時変化は同じ行き来を示した。
【0130】
視覚化:散布図。視覚化のために、時系列全体の散布図を、200秒間にわたって瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対をプロットすることによって創出した。神経学的に損傷のない対照では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の視覚刺激のタイミングを反映して、ボックスのように見える(図1d)。
【0131】
定量的データ分析および統計学。xおよびyの軌跡を、正弦関数とフィットさせた。視覚刺激の水平挙動および垂直挙動における行き来は、xおよびyについて異なる位相ではあるが、40秒間の期間でおよそ正弦である眼球運動軌跡を生じると考えられた。本発明者らは、(1)xとyとの間の位相差は、水平眼球運動および垂直眼球運動の1/4サイクルの行き来を反映して、神経学的に損傷のない対照について45度のはずであること;および(2)このモデルは、患者群からのデータとフィットする時よりも、神経学的に損傷のない対照観察者からのデータとフィットする、とさらに仮説を立てた。
【0132】
正弦との相関度(r)を、各1つの経時変化について計算した。この値の平方(r2)は、データへのモデルのフィットの良好さの尺度である。この相関値は、統計的分析により適しているために使用した。本文を通じて、「モデルフィット」とは、この相関値(r)を指す。
【0133】
位相を、データと最良にフィットする正弦関数の位相として計算した。8つの以下の補完的手順を使用して、神経学的に損傷のない対照観察者と試験患者観察者との間で比較した場合の、これら2つの尺度(位相差およびモデルフィット)における任意の差異の統計的有意性を評価した。
【0134】
(i)統計的分析1:仮説検定。各尺度について、統計的試験を実施して、試験患者集団からのデータが、神経学的に損傷のない対照集団からのデータと同じ基礎分布に由来し得るかどうかを決定した。位相尺度について、対応のないt検定を使用した。正弦フィット尺度について、正規分布しないデータについてより適当な、分散のKruskal−Wallis分析(ANOVA)を使用した。
【0135】
(ii)統計的分析2:Fisher変換。各経時変化についての最良にフィットする正弦との相関(r)値を、Fisher変換((1/2)ln((1+r)/(1−r))を使用して、zスコアに転換した。この正規化により、分析の第3工程を完了することが可能である。
【0136】
(iii)統計的分析3:分類。Fisherのzスコアは、経時変化の基礎集団がゼロ平均相関(帰無仮説)を有した場合、所与の経時変化にわたって特定の相関値を見る確率の概算を提供した。この帰無仮説は、正弦によって十分フィットされなかった経時変化、例えば機能損傷された観察者からの経時変化について当てはまると予測された。ゼロを有意に上回るzスコアを有する経時変化(例えば、刺激軌跡に十分一致している)は、機能損傷されていない観察者に由来すると予測された。z=2の閾値(アルファ=0.05の有意性レベルに対応する)を使用して、以下の結果に報告するように、この試験の特異性および感度を計算した。
結果
【0137】
眼球運動は、信頼性が高く、神経学的に損傷のない対照観察者の群にわたって一貫していた(図1a、d;表1)。試験患者は、多様なパターンの眼球運動を示した(図1b、c、e、f)。神経学的に損傷のない対照観察者は、5サイクルの開口部回転にわたって、xおよびyの眼球運動の一貫した行き来を示した(図1a)。幾人かの試験患者は、類似の行き来を示したが(図1b)、その他は示さなかった(図1c)。神経学的に損傷のない対照観察者(図1d)および幾人かの試験患者(図1e)では、眼球運動は、5サイクルにわたる未変化な開口部軌跡を反映して、ボックスの痕跡を描いた。ボックスからの偏差は、眼球運動における機能損傷を示した(図1f)。
表1:モデルフィットおよび位相差は、神経学的に損傷のない対照集団と試験患者との間を識別できる。
【表1】
【0138】
試験患者における正常からの偏差のパターンを定量するために、2つの尺度を規定した:位相差およびモデルフィット(方法を参照のこと)。結果は、両方の仮説と一致していた:(1)正弦モデルは、患者よりも健康な観察者でよりよく、1のデータとフィットした(p<0.001;表1);および(2)健康な観察者は、水平軌跡と垂直軌跡との間に、視覚刺激の動きのパターンを反映して、仮説が立てられた45度の位相差を示した;試験患者は示さなかった(p<0.01;表1)。
【0139】
これらの眼球運動が診断に使用され得るかどうかを試験するために、モデルフィットを使用して、神経学的に損傷のない対照の群 対 試験患者の群に由来するとして個々の経時変化を分類した。統計的閾値を、Fisher変換を使用して、相関係数を正規分布したzスコアに転換することによって規定した。全ての観察者からの各経時変化を、それが帰無分布(null distribution)に由来する確率に基づいて分類した(方法を参照のこと)。分類結果は、96%の特異性および52%の感度を示した。試験患者が、末梢神経系および中枢神経系のいずれかまたは両方に対する損傷を有し得る患者を処置する神経外科クリニックから選択された不均一群であったことを考慮すると、眼球−運動(ocular−motor)系に影響を与える問題を集団全体が有すると予測する理由はない。従って、52%の感度は、この試験患者集団について高いとみなすことができた。
【0140】
数人の試験患者を、例えば、手術の前および後に、ならびに/または手術からの回復中に、眼球運動測定を反復して、長期的に追跡した(図2)。これらの結果は、眼球運動の痕跡が、神経学的機能損傷および回復のマーカーとして潜在的に使用され得ることを示唆した。
考察
【0141】
較正していない追跡は、刺激を固視する、刺激に注意を向ける、および刺激を追いかける能力の定量的尺度を提供し得る。これらのデータは、各観察者について最初に空間的較正を完了することなしに、信頼性のある高頻度眼球運動データを収集することが可能であることを示す。多くの患者は、較正された眼球追跡を行うことが不可能である。これらの集団において眼球運動を追跡する能力は、脳傷害、脳卒中および精神障害が含まれるがこれらに限定されない、眼球−運動系を乱す種々の障害についての新たな洞察を提供する。可能な適用には、臨床的スクリーニング、診断、処置の効力のモニタリング、ならびに機能損傷および回復の進行の追跡が含まれる。
(実施例2)
材料および方法
【0142】
対象。健康な対象を、IRB承認されたプロトコルに従って、大学環境で採用した。全ての他の対象は、本発明者らの神経外科的診療から直接採用した。IRBガイドラインに従って、全ての症例において前向きデータ収集のために、対象または彼らの法定代理人からインフォームドコンセントを取得した。
【0143】
眼球運動追跡。対象の眼球運動を、Eyelink 1000単眼眼球追跡器(500Hzでのサンプリング、SR Research)を使用して記録した。健康な志願者は、スクリーンから55cmの場所に腰かけ、チンレストを使用して頭部を安定化した。対象は、椅子、病院用ベッドまたはストレッチャー上に、腰かけることも横たわることもできた。刺激を、患者の眼から平均55cmの場所に提示し、提示モニタを、視線の方向を一致させるために調整した。幾人かの対象は、そうすることが自分にとって快適な場合には、チンレストを使用した。
【0144】
患者を追跡するための革新。患者集団において眼筋運動を測定するために、2つの革新を提供した。第1は、刺激と生眼位データの解釈を可能にする分析ストリームとからなるパラダイムであった。ほとんど例外なく、眼球運動研究は、情報の喪失を含み、研究から多くの患者を排除する、変換された視線位置を分析する。瞳孔位置を直接見て、眼筋運動についての情報を得るための新規アルゴリズムを開発した。患者にもたらされ得るデバイスを提供した。ほとんど例外なく、眼球運動データは、変化しない場所に固定された眼球追跡器を使用して収集され、対照が追跡器のところまで移動し、それと共に椅子およびチンレストのセットアップを使用することを要求する。SR ResearchのEyelink 1000を、データの質を犠牲にすることなしに、場所および対象位置における柔軟性を可能にする新規モバイルシステムに適合させた。
【0145】
視覚刺激。スクリーンの左上角から開始してコンピュータモニタの外縁に沿って時計回りに動くミュージックビデオを提供した。空間的較正は実施せず、角度での刺激のサイズが近似だけされ得るように、対象間で距離を変動させた。良好な空間的較正を伴い、スクリーンから55cmの場所に腰かけた健康な対象について、刺激を、およそ16度の面積(スクリーンのサイズのおよそ1/8)を有する正方形開口部中に提示した。ミュージックビデオが継続的に再生されるこの正方形開口部は、一定速度でスクリーンを横断して動き、モニタの各縁をカバーするのに10秒間かかった。フルサイクルは40秒間かかり、5回のフルサイクルを、合計200秒間にわたって再生した。ミュージックビデオが始まる前に10秒間にわたって開始位置でカウントダウンビデオを再生して、刺激に向かうための時間を全ての対象に提供した。200秒間の試験後さらに10秒間にわたって動画を継続して、境界効果がデータを汚染するのを回避した。各40秒間の5サイクルを含む200秒間のミュージックビデオだけを、全ての分析において使用した。500Hzの速度で、これは、200秒間にわたって100,000サンプルの眼位を得た。
【0146】
データ分析:(1)可視化。個々の対象の眼筋運動が健康な対照の眼筋運動と異なるかどうかの鮮明な指標を提供した全試験からデータのスナップショットを創出するために、時系列全体の散布図を、1つの軸に沿った水平眼位および直交軸に沿った垂直眼位をプロットすることによって創出した。200秒間にわたり瞳孔反射の瞬間角の2つの成分(水平、垂直)を示す100,000対の値(x、y)をプロットした。健康な対照では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンを横断して動く場合、開口部が移動する軌跡を反映するボックスのように見える(図3)。これらの可視化により、生の眼球痕跡が、神経学的損傷の場合を除き、刺激の正方形の空間軌跡と整合したことが確認された。
【0147】
データ分析:(2)時間対空間。空間的較正がないと、空間領域における誤差の正確な測定は不可能である。この問題を、空間領域ではなく時間領域において眼球運動軌跡を見ることによって回避した。周期的なエンベロープ(開口部の軌跡)を用いた常に変化する刺激(継続的に再生される動画)を使用することによって、相対的眼球運動を経時的に見ることができた。効果的なことに、開口部の通路にわたる各対象の平均軌跡は、それ自体の較正として機能した。
【0148】
データ分析:(3)統計学。本発明者らの結果の統計的有意性を定量的に評価するために、対照集団におけるある特定の測定値の分布を決定し、各対象を、各尺度についてこれらの対照分布と比較した。刺激軌跡を、4つの時間成分に分割した:第1のアームは、各回転サイクルの最初の10秒間の5回の反復からなった(例えば、秒数1:10、41:50、81:90、121:130および161:170)。第2、第3および第4のアームをしかるべく規定した。2つの変数を評価した:各アームにおける相対的分散、および各アームの相対的完全性。相対的分散を、経時変化全体の分散によって除算されたアーム内の5回の反復にわたる平均分散として計算した。完全性を、各アームにおける欠測値のパーセントとして計算した。本発明者らは、これらの測定値に基づいて2つの試験を規定し、対照および患者において同じ試験を実施した。対照集団におけるこれらの試験の結果を使用して、対照分布を決定した。各患者についてのこれらの試験の結果を、適当な対照分布と比較し、信頼区間を以下のように規定した。
【0149】
完全性。完全性の尺度について、アーム1(ボックスの上部)およびアーム3(ボックスの底部)からの各患者の値の対を、対照集団から計算された平均および標準偏差を使用してzスコア付けした。得られたスコアは、患者の値が、標準偏差の単位で対照値と比較してどれほど異なるかを示した。正規分布では全ての値の95%が平均の2標準偏差内に入るので、2のzスコアを、有意性の閾値として使用した。従って、いずれかまたは両方のアームにおいて、2を上回るzスコアを有する患者を、眼筋運動の有意な障害を有すると判断した。
【0150】
相対的分散。相対的分散は比率であるので、zスコアを使用して分析することはできないが、この理由は、正規分布の仮説が比率に関して有効でないからである。その代わりに、5,000ポイントの分布を、45の対照値から交換でランダムに選択された25の値から5,000のサンプルを採取するブートストラッピング法を使用して生成した。各対象について、アーム1およびアーム3における相対的分散を、対応する対照分布とそれぞれ比較し、試験値の分散を下回る分散を有する対照分布のパーセントを決定した。0.05のp値(統計的有意性の広く受容された尺度)は、試験値を下回る対照値の95%に対応する。従って、対照分布中の値の95%よりも高い分散を有する対象を、眼筋運動の有意な障害を有すると決定した。
【0151】
単位。相対的分散の単位は、視角の角度でのサイズに関するが、空間的較正は行わなかったので、視角の角度と正確に同一ではない。これらは、時間−角度単位とも呼ばれ得る。
結果
【0152】
首尾よい追跡。健康な対照および患者に及ぶ眼球運動軌跡の可視化により、この方法が、伝統的な較正技法に頼ることなく、眼球運動を首尾よく測定したことが確認された(図1)。
【0153】
対照分布。予測されるように、完全性の測定のための対照分布は、0.2の平均および0.05の平均標準偏差(5%偏差)で、正規分布した。相対的分散の対照分布は、0.25でピークに達した(4つのアームにわたる等しい分布を反映している)。
【0154】
患者測定値。上記対照分布と比較した、標準偏差の単位での、各対象について軌跡の「上部」アーム対「底部」アームに関する完全性の尺度を計算した。脳神経麻痺または腫瘤効果を有する対象は、眼球痕跡ボックス軌跡の完全性において欠損を示した。圧迫またはうっ血乳頭のいずれかに起因する比較的程度の高い第II脳神経麻痺を有する対象は、走査する視覚に起因して引かれた垂直線を示した。
(実施例2)
第III脳神経麻痺を呈するテント切痕ヘルニアの早期検出および脳振盪の検出
考察
【0155】
神経精神医学的研究および脳傷害研究のための眼球運動追跡(Marutaら、Journal of Head Trauma Rehabilitation(2010年)25巻:293〜305頁;Heitgerら、Brain(2009年)132巻:2850〜2870頁)は、伝統的に空間的較正に基づいている。較正を用いて、眼球追跡器は、約400〜800ミリ秒の期間にわたり、瞳孔の相対的位置および角膜反射を測定し、対象は、引き続く瞳孔の動きの間に、既知の位置の標的(単数または複数)を見て、有意義な空間座標を生成する。較正は、対象の協力を必要とし、解剖学的に機能不全の眼筋運動の検出を除外する。本発明者らは、空間的較正なしに、動眼神経(第III脳神経)の機能を理論的には評価できる、眼球運動追跡のための新規技法を開発した。この技法の他の機能のうち、動眼神経は、眼窩の上直筋および下直筋を神経支配し、瞳孔を上げたり下げたりする。側頭葉に対して内側のテント切痕を通って走る間の神経の圧迫は、腫瘍、脳卒中、出血または外傷に起因するテント上腫瘤効果からの死亡の共通の機構である切迫テント切痕ヘルニアと共に生じる(Adlerら、Journal of Neurosurgery(2002年)96巻:1103〜1112頁)。これらのデータは、200秒間の動くミュージックビデオを見ている間の対象眼球運動の記録が、第III神経が橋中脳接合部から出た後かつ海綿静脈洞に入る前に第III神経のX線撮影的圧迫を生じるテント上腫瘤病変を有する患者において、減少した垂直瞳孔運動の振幅を検出したことを実証している。垂直振幅におけるこれらの減少は無症候性であり、第III神経に対する腫瘤効果を有さない対照対象または手術患者においては見られず、腫瘤効果の調和した容積測定的排除を伴う原因テント上病変の切除の際に、可逆的でもあった。これらの結果は、空間的に較正されていない眼球運動追跡が、テント上腫瘤病変を有する覚醒患者におけるテント切痕ヘルニアの検出に有用であり得ることを実証している。
方法
【0156】
空間的較正の制約を克服するために、対象の眼球運動を、固定された所与の時間にわたり、コンピュータモニタから相対的に固定された距離で、Eyelink 1000眼球追跡器で記録した。提供した視覚刺激は、各40秒間の5回の完全サイクルにわたってモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、およそ1/8スクリーンサイズの面積を有する正方形開口部において継続的に再生されたShakiraミュージックビデオWaka−Wakaであった。眼球追跡器は、500Hzで瞳孔位置をサンプリングして、200秒間にわたって100,000サンプルを得た。時系列全体の散布図を、瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対を経時的にプロットすることによって創出して、瞳孔運動の時間的性質を反映した「ボックス軌跡」を創出した。対照対象では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の開口部のタイミングを反映して、ボックスのように見える(図20)。
【0157】
既知の病変を有する人々の追跡を、正常対照と比較した。その眼に光知覚を生じない、一側性視神経を圧迫する腫瘍を有する患者は、損傷がない両側性追跡を有したが、この理由は、対側性の眼球からの求心性が、両方の眼において眼筋運動を駆動するのに十分であったからである(第2行、図20)。海綿静脈洞を侵襲する大きい腫瘍に起因した一側性眼筋麻痺を有する患者は、垂直および水平の両方で振幅を減少させた(第3行、図20)。細隙灯検査で脳橋周囲腫瘤および肉眼で損傷がない眼筋運動を有するが、眼瞼下垂を有する、複視を否定する患者もまた、減少した垂直振幅を示した(図20)。この患者における眼瞼下垂は、上眼瞼挙筋に至る途中の動眼神経の上部の破壊の結果であり得る。既知の第III麻痺を有さないが、5年前に一過的な複視を生じた下眼窩壁骨折の履歴を有する患者もまた、眼球追跡上で減少した垂直振幅を有した(図20、下の行)。
【0158】
任意の欠陥を有する眼球追跡された全ての患者において、異常な眼球追跡の知見は、解剖学的病理に対して対側性の眼球を追跡している間に生じた。これは、患者のデータベース全体において一貫して生じた。
【0159】
これらのデータは、X線撮影画像化で明らかなテント上腫瘤病変の組み入れ基準、外科的切除の臨床的必要を有し、眼球追跡に同意でき参加できる患者の、前向き観察研究を示す。排除基準は以下のとおりであった:光知覚よりも悪い視力、神経学的または血行動態不安定、視神経のうっ血乳頭または伝導異常、視力低下を生じる視神経の両側性圧迫、視野欠陥、トルコ鞍病変、ならびに海綿静脈洞浸潤および認知症。テント上腫瘤病変を有する7人の患者のうち5人は、X線撮影で低減された中脳周囲容積を有し、術後に自分自身と比較して、および未変化の中脳周囲槽容積を有するテント上病変を有する7人の患者のうち2人と比較して、眼球追跡上で低減された垂直瞳孔振幅を実証した(図21、左パネル)。橋中脳接合部において脚間槽から海綿静脈洞に走る際の第III神経の周りの実際の空間は、大きい精度で定量することが困難であるので、本発明者らは、MRI分析から元々適合された確立された方法論(Yangら、Brain Inj(2012年)を使用したCTスキャンのアルゴリズム的容積測定的分析によって測定されるような最大容積の術後スキャンと比較した中脳周囲槽容積における低減に関して、患者フィルムを評価した(Mikheevら、J Magn Reson Imaging 2008年;27巻:1235〜1241頁)。手術対照患者は、減少した中脳周囲槽容積を生じないテント上腫瘤病変を有する患者(n=2)および小脳橋角腫瘍の切除を受けている患者(n=5)であった。非手術対照患者は、眼科クリニックでの評価の際に損傷がない眼筋運動、瞳孔反応および視神経機能を有することを立証した、顕著な神経学的疾患を有さない年齢がほぼ等しい志願者対象であった(n=11)。中脳周囲槽の除圧は、アスペクト比における改善と関連していた(眼球追跡軌跡の高さ/幅;図21、右パネル、および図30)。
【0160】
容積測定的分析がX線撮影知見と一致することを確認するために、眼球追跡結果に関して盲検にした2人の経験豊富な神経放射線科医が、第III神経圧迫の証拠に関して患者の術前CTスキャンを評価した(補足情報)。両方の放射線科医が、容積測定的分析を介して圧迫を有さない、テント上病変を有する2人の患者が、画像化の直接的検討においても圧迫を有さなかったことに関して一致していた。
【0161】
術前中脳周囲槽圧迫または鉤ヘルニア形成のいずれの証拠も有さない、テント上腫瘤病変の切除を受けている患者は、術後の自分自身または眼科対照と比較して、より減少したアスペクト比に僅かに傾く傾向があった。動眼神経の直接的圧迫以外の複数の要因が、これらの患者において眼筋運動に影響を与えている可能性がある。上昇した頭蓋内圧は、実験的研究において、第II脳神経に沿った軸索原形質輸送を遅延させる(Balaratnasingamら、Brain Research 2011年;1417巻:67〜76頁)。病変からの腫瘤効果は、眼筋運動に影響を与える脳神経に沿った軸索原形質輸送を遅延させるのに十分な頭蓋内圧における上昇を引き起こしている可能性がある。
【0162】
このシリーズの1人の患者は、クリニックへの最初の提示の後に、臨床的に悪化した。外科的排出を介した、提示から腫瘤効果の増悪までの左慢性硬膜下血腫を有するこの患者の連続眼球運動追跡を実施した。側頭葉の内側面による第III神経に対する影響は、減少した垂直振幅を生じ、これは、硬膜下血腫からの腫瘤効果の増悪と共により頻繁に発生し、その処置によって消散した(図22)。提示の際に、5回の視覚刺激サイクルのうち1回だけが、第III神経麻痺を示唆する圧迫を実証したことに注目されたい。槽における増加した圧力の一過的な波は、第III神経の機能に、直ちにかつ一時的に影響を与える可能性がある。
【0163】
術前CTスキャンと術後CTスキャンとの間で中脳周囲容積において最大の定量的差異を有した患者は、眼球追跡で瞳孔垂直振幅における両側性の減少を有した。この患者は、転倒を示し、ほぼ皆無の大脳鎌下(subfalcine)ヘルニア形成を引き起こす右前頭頭頂頭蓋骨骨折および小さい硬膜外血腫を生じたが(図23、上のCT画像)、右側で術後容積の27%および左側で術後容積の35%まで、中脳周囲槽容積における低減を生じた(下のCT画像)。
【0164】
眼球追跡で制限された垂直振幅を有することが見出された、テント上病変を有する患者のだれも、複視または非共役性視線の他の症状を報告しなかった。これらの患者は全て、検査では、神経外科医によってまたは眼科細隙灯によって、正常な眼筋運動を有することが報告され、これは、麻痺が無症候性であることを示唆している。
【0165】
これらのデータは、本明細書に記載される方法が、テント切痕ヘルニアの検出に臨床的に有用であり得る、無症候性第III神経麻痺を検出するためのアルゴリズムを提供することを実証している。第III神経は内側直筋を神経支配し、X線撮影による中脳周囲圧迫を有する患者において正常な幅の眼球ボックス軌跡が存在するので、第IV神経は、瞳孔の内側回転に十分である可能性がある。注目された眼球追跡変化を第III神経が担うことのさらなる証拠は、定常瞳孔サイズデータを評価することによって将来得られるであろう。
【0166】
本明細書に記載される方法は、眼を開いた最小に意識のあるおよび持続的に植物状態の患者の集団におけるオンターゲットおよびオフターゲット固視のために静的刺激を使用した較正していない追跡の報告とは異なっている(Trojanoら、J Neurol、(2012年))。周期的に動く開口部内に示される動く画像は、対照および神経学的に機能損傷した対象の両方において、粗い眼球運動および微細な眼球運動の両方の特徴の評価を可能にする。他の研究(Marutaら、Journal of Head Trauma Rehabilitation 2010年;25巻:293〜305頁;Trojanoら、J Neurol、2012年;Contrerasら、Brain Research 2011年;1398巻:55〜63頁;Contrerasら、Journal of Biological Physics 2008年;34巻:381〜392頁)とは異なり、本発明で記載された方法は、対象が正確な命令に確実に従う能力にその有効性が依存する一連の縮尺変更および回転のプロセスによる生データの変換を必要とするサッケードカウントまたは空間精度を使用しなかった。本明細書に記載される方法は、瞳孔を限局化させるために固定された頭部位置または複数の光供給源およびカメラのいずれかを必要とする視線概算とも異なる(Guestrinら、IEEE Transactions on Bio−Medical Engineering 2006年;53巻:1124〜1133頁)。
【0167】
ビデオを見るのには非常に多くの異なる皮質機能が必要とされるので、包括的な頭蓋機能または特定の脳神経機能を妨害する任意のプロセスが、この技法によって明らかにされる可能性が高い。追跡は、以前の脳損傷の履歴を有する、中毒したまたは薬理学的薬剤の影響下にある患者において、攪乱し得る。患者の認知能力、注意持続時間および転導性は、眼筋運動データの質に影響を与え得る。水頭症患者の眼の病理の多様なベースラインを考慮すると(Dennis, M.ら、Archives of Neurology 1981年;38巻:607〜615頁;Zeinerら、Childs Nerv Syst 1985年;1巻:115〜122頁;Altintasら、Graefe’s archive for clinical and experimental ophthalmology = Albrecht von Graefes Archiv fur klinische und experimentelle Ophthalmologie 2005年;243巻:1213〜1217頁)、追跡結果は、各患者自身の規範的データと比較され得る。まだ追跡できない若年の乳児は、眼球運動追跡ベースの評価の候補にはならない可能性がある。
【0168】
本明細書に記載される方法は、中枢神経系の生理学的機能を評価し、従って、脳の解剖学の可視化を可能にする画像化技術とは異なる。較正していない眼筋運動追跡評価は、中枢神経系機能の評価の前に追跡されることに対象が明確に同意していることを必要とせず、従って、倫理的配慮を高める。眼球運動追跡技術を使用して検出可能な特徴的な異常を伴う多数の疾患のなかでは、とりわけ認知症、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症、自閉症および脆弱Xである(Sharmaら、Archives of Neurology(2011年)68巻:857〜861頁;Pelak、Current Neurology and Neuroscience Reports 2010年;10巻:440〜447頁;Hicksら、Progress in Brain Research 2008年;171巻:555〜558頁;Kennedyら、Neuropsychologia 2010年;48巻:3392〜3398頁;Levyら、Current Topics in Behavioral Neurosciences 2010年;4巻:311〜347頁)。
【0169】
アスペクト比。経過時間の定量は、眼位の測定の間のビデオ開口部の限局化を可能にする。ボックス高さ=ビデオが上部および底部を行き来する間の中央上部値−中央底部値。同様に、ボックスの幅は、ビデオ開口部が右側および左側にある時の瞳孔の位置に基づいて計算される。アスペクト比=高さ/幅(図28)。
【0170】
中脳周囲槽容積。スキャン間の頭部の誤整列によって導入され得る、軸位断面、冠状断面および矢状断面に関する可変のアンギュレーションについて補正するために、各CT容積を、左眼レンズ(LE)、右眼レンズ(RE)および上丘の接合部(C)を3D空間中でマークすることによって、再整列させ、標準(テンプレート)座標系に対して再サンプリングした。テンプレート空間では、これら3つの対応する構造LE’ RE’ C’を、脳幹の主軸がz方向(断面を横切る)になるように、対称的に位置付けた。次いで、三角形<LE RE C>を三角形<LE’ RE’ C’>に最良にマッピングする剛体(容積保存的)変換Tを算出した。変換Tを使用して、テンプレート空間に対してCT容積を再サンプリングした。松果体から鞍結節へと延びる脳幹の中心に集中した半径20ピクセルの円筒を配置することによって、槽をテンプレート空間中に小分けにした。円筒内の各ボクセルについて、本発明者らは、Hounsefield単位(Hu):Pv=(A_脳−A)/(A_脳−A_水)において測定されたその減衰Aに従って、CSFのボクセルの部分容積Pvを算出した。式中、A_脳=48Hu、A_水=0Huである。Pvは[0−1]に制約された。槽容積を、鞍上槽を排除するボクセル容積によって乗算された円筒内のPv値の合計として算出した。
【0171】
患者症例の詳細および放射線科医の解釈。この研究の目的のために、放射線科医に、術前CT画像を見るように依頼し、第III神経に対する腫瘤効果が存在するか否かについてコメントを求めた。
統計的分析
【0172】
アスペクト比を、1つの眼球運動軌跡当たり100,000のデータポイントの管理のためにMATLABプログラミングを使用して、上記方法の概要に記載したように計算した。術前対術後データ比較のために両側スチューデントt検定、対応あり、2サンプルを使用し、手術患者対眼科クリニック対照の不等n群間の比較のために対応のないt検定を使用して、比率を比較した。
【0173】
平均瞳孔サイズを、MATLABプログラミングを使用して、1つの眼球追跡軌跡当たり平均で100,000のデータポイントを取得することによって計算した。平均を、術前データと術後データとの間の比較のために、対応のある両側t検定を使用して比較した。
中脳周囲圧迫を有するテント上症例。
【0174】
症例1:(図22)この患者は、高血圧症、高脂血症 軽度の慢性腎機能不全の病歴、ならびに両側性白内障手術(2年前および8年前)、偽水晶体および強膜バックリング術の眼科履歴を有する、86歳の右利き男性である。この患者は、20/25(右眼)および20/30(左眼)のベースライン視力を有した。この患者は、1日81mgのアスピリンを予防的に摂取した。この患者は、転倒し、数週間後に頭痛を示したが、他の点では神経学的に良好であった。頭部CTを実施したところ、小さい左側硬膜下血腫が示された。アスピリンを中断し、血小板を輸血した。頭痛は自然に消散し、患者はこの病変を観察することを選択した。8日後、頭痛は増悪し、反復CTスキャンにより、血腫の拡大が示された。この患者は、神経学的検査では、損傷がないままであり続け、無視も前腕の回内も示さなかった。この患者は、対称的なままの手術瞳孔を有した。この患者は、硬膜下血腫ドレナージを受け、その間に、100ccの体液を、閉鎖型ツイストドリルドレナージシステムを使用して抽出した。この患者は、頭痛は消散し、無症状になった。この患者は、理学療法に参加した後に、退院して帰宅した。
【0175】
中脳周囲槽圧迫(手術直前のCTスキャン上):右槽 ベースラインの80%、左槽 ベースラインの61%。
放射線科医#1:「脳幹は右にシフトし、鉤の内側化(medialization)が存在し、槽のCN IIIにほとんど触れない可能性がある。別に、鉤による左海綿静脈洞に対する腫瘤効果が存在する(CSF裂の喪失)。」
放射線科医#2:「この患者は、内側変位を伴う完全鉤を有する。槽に対する腫瘤効果が存在するが、CN IIIの顕性の圧迫は存在しない。」
【0176】
症例2:(図23および図24)この患者は、甲状腺腫/医原性甲状腺機能低下症、高血圧症および高脂血症の過去の病歴、ならびにラタノプロスト(latonoprost)点眼薬で制御された緑内障の眼科履歴を有する、62歳の右利き男性である。男性は、両側性で20/20の視力を有した。男性は、転倒および数分間持続する意識の喪失を示した。提示の時点で、男性は覚醒しており、機敏で、流暢な発話を有した。男性の瞳孔は同一であり、外眼運動は損傷がないままであった。男性の頭部CTは、星状頭蓋骨骨折の根本にある小さい前頭頭頂硬膜外血腫を示した。眼球運動追跡を実施した。5時間後、男性の検査は悪化し、男性は傾眠、構音障害、左側無視および左前腕の回内を発症した。男性の瞳孔は同一のままであり、外眼運動は検査により損傷がないままであった。男性は、開頭術および硬膜外血腫の排出ならびに頭蓋骨骨折の頭蓋プレーティングのために、手術室に運ばれた。術後に、男性の左側無視および前腕の回内は、引き続く48時間にわたって消散した。男性は、術後4日目にExecutive Interview 25 Assessment Test(EXIT)で13/50のスコアを付けた。眼球追跡を、術後7日目に反復した。男性は、1週間の入院患者リハビリテーションの後に退院して帰宅した。
【0177】
中脳周囲槽圧迫(術前CTスキャン上):右槽 ベースラインの27%、左槽 ベースラインの35%。
放射線科医#1:「右側にCN IIIとの接触が存在する。」
放射線科医#2:「顕性のCN III圧迫の証拠は存在しない。」
【0178】
症例3:(図25)右下肢脱力に起因する機能損傷された運動性を示した、腎機能不全、両側性白内障および両側性で20/25の視力を有する74歳の糖尿病高血圧症男性。男性は、頭部外傷を否定したが、頭部を打たずに3か月前に転倒したことを報告した。検査では、男性は、覚醒しており、右前腕の回内と、上肢および下肢の4/5右側不全片麻痺を届け出た。男性の左側は損傷がなかった。男性の瞳孔は同一であるように見え、男性は検査では損傷のない外眼筋運動を有した。眼球運動追跡を実施した。硬膜下血腫のツイストドリルドレナージを実施し、130ccの体液を抽出した。男性は、入院患者のリハビリテーション後に退院して帰宅した。
【0179】
中脳周囲槽圧迫(手術直前CTスキャン上):右槽 ベースラインの86%、左槽 ベースラインの70%。
放射線科医#1:「左鉤は、僅かに内側にシフトし、CNIIIと接触している可能性がある。」
放射線科医#2:「鉤は内側に逸れている;顕性の圧迫は存在しない。」
【0180】
症例4(図26)成人期の持続時間にわたって医師の診察を辞退してきた、従って、関連する病歴も眼科履歴も報告していない、咳およびインフルエンザ様の病気で救急治療室に来た、63歳の、1年に100パック喫煙する男性。検査では、男性は、見当識障害であり、軽度の左不全片麻痺を有することが注目された。瞳孔は、同一で反応性であり、外眼運動は損傷がないように見えた。頭部CTは、右前頭腫瘤を示し、胸部X線写真は、大きい左上葉胸部腫瘤を示した。この患者に、デカドロン10mgを6時間毎に経口投与し、CT胸部/腹部/骨盤および脳MRI(示される)を取得した。眼球運動追跡を、中程度に高分化型の扁平上皮癌腫転移の切除のための右前頭開頭術の直前に、入院の48時間後に実施した。X線撮影肉眼総切除を実施した。この患者は、開頭術の1週間後に帰宅し、最終的に全脳に対する放射線療法を受けた。この患者は、肺腫瘤に対する処置を辞退し、最初の診断後7か月が経過した。
【0181】
中脳周囲槽圧迫(手術直前CTスキャン上):右槽 ベースラインの77%、左槽 ベースラインの73%。
放射線科医#1:「正中に向かう鉤の僅かなシフトが存在する。これは、槽のCNIIIと接触していない可能性が高いが、同側性の海綿静脈洞を圧迫している可能性があり、この理由は、洞に隣接するCSF裂が消失しているからである。」
放射線科医#2:「鉤は内側に逸れている;CN IIIに対する顕性の圧迫は存在しない。」
【0182】
症例5(図27)この患者は、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症、クマジン服用中の心房細動、うっ血性心不全、外傷後ストレス障害、透析中の腎不全、慢性閉塞性肺疾患および冠状動脈疾患を有する63歳の男性である。男性は、腎不全のために血液透析を受けながら、錯乱を示した。眼科履歴は、増殖性網膜症が顕著だった。男性は、右眼20/25および左眼20/40の視力を有した。身体検査では、提示の時点において、男性は、神経学的に良好であり、無視も前腕の回内もなかった。外眼運動は損傷がなく、瞳孔は同一であった。頭部CTは、右側混合密度硬膜下出血を示した。眼球追跡を実施した。クマジンを停止させ、新鮮な凍結血漿を投与した。提示の2日後、ツイストドリルドレナージを実施し、176ccの硬膜下液を排出させた。この患者は、神経学的に良好のままであり、2日後に自分の老人ホームに戻った。
【0183】
中脳周囲槽圧迫(手術直前CTスキャン上):右槽 ベースラインの36%、左槽 ベースラインの29%。
放射線科医#1:「右鉤はシフトし、錐体斜台部(petroclival)靭帯の下を通過する前に、CN IIIの槽部分に影響を与えている。」
放射線科医#2:「鉤は内側に逸れ、完全である。」
容積測定的分析により中脳周囲圧迫を有さないテント上症例。
【0184】
症例6(図28)前立腺癌、高血圧症、高脂血症、寛解期におけるアルコール依存症、および銃弾の断片が残った左肩への銃創の過去の病歴を有する67歳の男性。男性の眼科ベースラインは、右眼20/40および左眼20/50の視力であった。男性は、2か月間の吃音症ならびに右腕および手の脱力を示した。男性は、提示の日に、右上肢の震えから始まった、証拠となるけいれんを有し、全身性の強直間代性の活動性に進行した。検査では、男性は、損傷のない瞳孔および外眼運動を有した。男性の発話は、錯語的な誤りならびに反復および命名の困難を伴って、ゆっくりであった。コントラストのある頭部CTは、左前頭側頭嚢胞性腫瘤を明らかにした。この患者は、壊死性細胞を明らかにし、悪性腫瘍について非診断的であった嚢胞の覚醒定位ドレナージを受け、その後、多形神経膠芽腫の切除のためにスピーチマッピングを伴う覚醒定位開頭術を受けた。肉眼総切除を、X線撮影により達成した。この患者は、維持された発話を有したが、術後に軽度の不全片麻痺を有し、退院帰宅前にリハビリテーションに参加した。この患者は、外来患者としてテモダールおよび放射線療法を受け、術後4か月目の時点において腫瘍再発なしに、日常生活の活動性において自立したままであった。
放射線科医#1:「槽開存性。鉤のシフトなし。CN IIIとの接触なし。」
放射線科医#2:「CN III圧迫の証拠なし。」
【0185】
症例7(図29)高血圧症、高脂血症、冠状動脈疾患および外傷後ストレス障害の過去の病歴を有し、既知の眼科障害を有さず、視力が両側性で20/20の、外部外科医による食道接合部転移に対する左頭頂開頭術の2週間後に、悪化した右手協調および運動失調を示した、65歳の男性。検査では、この患者は、右前腕の回内および半側無視を有した。CTは、手術部位における浮腫を明らかにし、MRIは、以前の腫瘍腔における末梢増強集積を明らかにした。眼球追跡を実施し、次いでこの患者を、再診査開頭術および硬膜に対し深部の膿瘍の排出のために手術室に運んだ。この患者は、術後12週間にわたって抗生物質で処置された。
放射線科医#1:「槽開存性。鉤のシフトなし。CN IIIとの接触なし。」
放射線科医#2:「CN III圧迫の証拠なし。」
前庭神経鞘腫手術対照症例(図36
【0186】
3人の患者は切除を受け、1人は、前庭神経鞘腫腫瘍に対するガンマナイフ放射線を受けた。5番目の患者は連続観察を選択した。
眼科クリニック対照症例:
【0187】
56歳から87歳までの範囲の11人の患者を、眼科または神経眼科クリニックにおいて評価した。これらの患者を非手術対照として選択した。
(実施例3)
正常圧水頭症の処置のための、正常圧水頭症に関する疾患重症度の定量、およびシャント機能障害の診断/弁圧の最適化
【0188】
認知症は、多数の病因および壊滅的な結果を有する疾患である。認知症対象の空間的に較正された眼球運動追跡により、機能損傷された円滑追跡機能が明らかになる。本発明者らは、空間的較正に依存しない、動くビデオを見る間の眼球運動追跡のための新規技法を開発した。ここで、本発明者らは、正常圧水頭症を有する対象が、その術前状態と比較して、脳脊髄液迂回後に減少した追跡変動性を実証したことを示している。変動性におけるこの減少は、歩行における改善と相関し、正常圧水頭症を有さない手術患者でも、連続追跡した対照対象でも見られなかった。本発明者らの結果は、脳脊髄液迂回が、あまり可変でない空間的に較正されていない眼球運動追跡を正常圧水頭症が実施する能力を改善すること、および動画またはテレビを見ている間の眼球追跡が、シャント機能を評価するために使用できることを示唆している。
【0189】
機能損傷された円滑追跡眼球運動追跡は、認知症患者対正常な高齢対照において見られ(Huttonら、Neurology(1984年)34巻:99〜102頁)、初老期認知症およびアルツハイマー認知症の初期の指標であることが示されている(Mullerら、Int J Psychophysiol(1991年)11巻:167〜177頁;Mullerら、European archives of psychiatry and clinical neuroscience(1991年)241巻:46〜48頁)。認知症患者は、機能損傷された眼−手視覚運動協調(Verheijら、J Alzheimers Dis(2012年)30巻:131〜143頁)および機能損傷された視覚記憶(Lagunら、Journal of neuroscience methods(2011年)201巻:196〜203頁)もまた有する。
【0190】
正常圧水頭症(NPH)は、未知の病因を有する場合が多く、一般に、歩行障害、認知症および失禁の進行性の発生を特徴とする(Bretら、Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry(2002年)73巻:9〜12頁)。正常圧水頭症は、NPHに対するCSF迂回の時点で取得された、Aβおよびγタンパク質を明らかにする皮質生検標本からわかるように、アルツハイマーとの注目すべき重複を有する不均一な障害である(Leinonenら、Neuro−degenerative diseases 2012年;10巻:166〜169頁)。NPHを有する患者における眼球運動追跡の知見は、以前には報告されていない。
【0191】
機能損傷された円滑追跡眼球運動追跡が、アルツハイマー病を有する認知症患者において注目されるので、本発明者らは、機能損傷された追跡が、NPH認知症を有する患者においても注目されるという仮説および追跡がCSF迂回後に改善されるという仮説を立てた。一部の認知症患者は、眼球運動追跡に必要な空間的較正プロセスに関与するのに十分に活発にかつ一貫して指示に従う意思がないまたは指示に従うことができないので、本発明者らは、対象がテレビまたはそのビデオ等価物を見ている間に実施できる、空間的に較正されない追跡のための技法を開発した。
【0192】
本発明者らは、NPHに対するCSF迂回を受けている患者において、術前および術後に、この空間的に較正されない追跡を実施した。連続追跡からの学習効果がNPH集団での追跡における改善の原因にならなかったことを実証するために、本発明者らは、無関係の手術を受けているまたは全く手術を受けていない対照患者もまた、連続的に眼球追跡した。
方法
【0193】
較正を用いて、眼球追跡器は、約400〜800ミリ秒の期間にわたり、瞳孔の相対的位置および角膜反射を測定し、対象は、引き続く瞳孔の動きの間に、既知の位置の標的(単数または複数)を見て、有意義な空間座標を生成する。空間的較正の制約を克服するために、本発明者らは、固定された所与の時間にわたり、コンピュータモニタから相対的に固定された距離で、EyeLink眼球追跡カメラを用いて対象の眼球運動を記録した。視覚刺激は、各40秒間の5回の完全サイクルにわたってモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、およそ1/8スクリーンサイズの面積を有する正方形開口部において継続的に再生されたShakiraワールドカップサッカーミュージックビデオWaka−Wakaであった。眼球追跡器は、500Hzで瞳孔位置をサンプリングして、200秒間にわたって100,000サンプルを得た。
【0194】
本発明者らは、時系列全体の散布図を、瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対を経時的にプロットすることによって創出して、瞳孔運動の時間的性質を反映した「ボックス軌跡」を創出した。対照対象では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の開口部のタイミングを反映して、ボックスのように見える(図3)。
結果
【0195】
本発明者らは、既知の認知欠陥を有さない36歳の神経外科のチーフレジデントならびに複数の医学上の問題および眼の問題を有するが既知の認知欠陥を有さない87歳の男性を含む正常志願者対象を追跡した。両方の正常志願者は、追跡において類似の変動性を示した。
【0196】
次いで、本発明者らは、正常圧水頭症について処置されている3人の対象を追跡した。
【0197】
症例1(図31):HIV感染、糖尿病、高血圧症、および2回の転倒後に神経学者に示された脳卒中の過去の病歴を有する68歳の男性。大量腰椎穿刺を実施した。開口圧力は3cmであった。この患者の歩行は、タップによって劇的に改善した。4に設定したCertasプログラム可能弁を有するCodmanシャントを配置したところ、この患者は、進行性の改善を臨床的に示し続けた。連続追跡を実施したところ、歩行における臨床的改善と並行していた(図29)。
【0198】
症例2(図32):5年間にわたって進行性の漸増する歩行障害および記憶の問題を示した57歳の建設作業員。この患者は、勤務中の落下後に建設作業員としての職から解雇された。この患者のミニメンタルステート検査は、大量腰椎穿刺後に、歩行と同様、3ポイント改善した。5に設定したCertasプログラム可能弁を有するCodmanシャントを配置したところ、この患者は、進行性の改善を臨床的に示し続けた。連続追跡を実施したところ、歩行における臨床的改善と並行していた(図3)。
【0199】
症例3(図33):歩行失行のために、73歳の時に正常圧水頭症のためにシャントを受けた、喘息、高血圧症、外傷後ストレス障害および良性前立腺肥大症の過去の病歴を有する、87歳の男性、第2次世界大戦の退役軍人。中間圧PS医療用弁がその時に配置された。この患者は、弁の交換なしに、3回の後の遠位シャント修正を受けた。この患者は現在、進行性の歩行失行を再度示しており、シャントグラムは遠位機能障害を示している。この患者は既に3回の腹腔内シャントを失敗しているので、シャントを直ちに修正し、胸膜腔中に配置した。弁もシャントチュービングも交換しなかった。この患者は、追跡における改善と並行して歩行における改善を示した(図31)。
【0200】
従って、本発明者らは、NPHのためのシャント後に追跡における改善の3つの実証された症例を有している。患者の追跡は、これらの患者が連続的に追跡され、ビデオを見ている際に「学習効果」を示したという理由のためだけに改善したと考えることができるが、多発性硬化症および両側性視神経症を有する57歳の男性の連続追跡は、かかる連続的な改善が存在しないことを示した(図32)。
考察
【0201】
これらの結果は、増加した変動性が対象の年齢に依存していないことを示している。追跡における増加した変動性は、正常圧水頭症に起因する増加した歩行障害と相関する。認知症を評価するための眼球運動追跡のコンセプトは新しくはないが、認知機能に測定可能な影響を与えない、シャント機能障害を評価するための眼球追跡の使用は新規である。追跡されている対象の協力を必要としない、テレビを見ている間の追跡の性能もまた、顕著な発展を示す。本発明者らの方法論は、中枢神経系の生理学的機能を評価し、従って、脳の解剖学の可視化を可能にする画像化技術とは異なる。脳の画像化は、NPHを伴うシャント機能障害の診断であってもなくてもよい。較正していない眼筋運動追跡評価は、中枢神経系機能の評価の前に追跡されることに対象が明確に同意していることを必要とせず、従って、倫理的配慮を高める。眼球運動追跡技術を使用して検出可能な特徴的な異常を伴う多数の疾患のなかでは、とりわけ認知症、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症、自閉症および脆弱Xである(Sharmaら、Archives of neurology(2011年)68巻:857〜861頁;Pelak、Current neurology and neuroscience reports(2010年)10巻:440〜447頁;Hicksら、Progress in brain research(2008年)171巻:555〜558頁;Kennedyら、Neuropsychologia(2010年)48巻:3392〜3398頁およびLevyら、Current topics in behavioral neurosciences(2010年)4巻:311〜347頁)。
(実施例4)
第VI脳神経麻痺を呈する後頭蓋窩腫瘤効果の評価
背景
【0202】
第VI脳神経は、その解剖学的脆弱性に起因して、神経障害に対して高度に感受性であるとみなされている(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁)。外転神経(VI)は、延髄橋接合部においてその係留から脳幹を出て、Dorello管に入る前に頭蓋内を走り、この場所で、線維状構造および骨様構造によって再度係留される。小脳および脳幹を前方に押す後頭蓋窩病変は、斜台に対して第VI神経を直接圧迫し得る(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁)。
方法
【0203】
対象の眼球運動を、固定された所与の時間にわたり、コンピュータモニタから相対的に固定された距離で、Eyelink 1000眼球追跡器で記録した。提供した視覚刺激は、各40秒間の5回の完全サイクルにわたってモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、およそ1/8スクリーンサイズの面積を有する正方形開口部において継続的に再生されたShakiraミュージックビデオWaka−Wakaであった。眼球追跡器は、500Hzで瞳孔位置をサンプリングして、200秒間にわたって100,000サンプルを得た。時系列全体の散布図を、瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対を経時的にプロットすることによって創出して、瞳孔運動の時間的性質を反映した「ボックス軌跡」を創出した。対照対象では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の開口部のタイミングを反映して、ボックスのように見える(図20)。
【0204】
アスペクト比。経過時間の定量は、眼位の測定の間のビデオ開口部の限局化を可能にする。ボックス高さ=ビデオが上部および底部を行き来する間の中央上部値−中央底部値。同様に、ボックスの幅は、ビデオ開口部が右側および左側にある時の瞳孔の位置に基づいて計算される。アスペクト比=高さ/幅(図24に示す計算)。
個人
【0205】
複視を生じ、眼科医によって検出された既知の第VI神経麻痺を有する人物の追跡を、正常な対照と比較した。ボックス軌跡は平らに見えたが(図35左)、アスペクト比の計算により、ボックスは、対照軌跡よりも実際にはより高くかつ狭いことが明らかになった(図35右)。
【0206】
2人の患者は、第四脳室を部分的に閉塞させた後頭蓋窩病変を示した。1人目は、頭の背部に圧痛のある腫瘤を示し、進行性の頭痛を示した、低分化型乳頭癌腫を有する54歳の男性であった。男性は、臨床検査ではうっ血乳頭を有さなかった。画像化により、第四脳室をほぼ閉塞させている頭蓋冠ベースの転移が明らかになった(図36)。MRIでは、水頭症を示唆する脳室上皮を横切る流れは存在しなかったことに注目されたい(図36右)。眼球追跡は、CN VI麻痺と一致する、以前の広さよりも狭いボックス(増加したアスペクト比)を示した。
【0207】
腫瘤を切除した。術後1日目の反復画像化(図35)により、ボックスが、正常なアスペクト比を有するまでに戻ったことが示された(図35)。
【0208】
2人目の患者は、肺腫瘤および頭痛を示した56歳の男性であった。男性は、臨床検査ではうっ血乳頭を有さなかった。MRIにより、小脳橋角の近傍で大きい軸内腫瘤が明らかになったが、興味深いことに、斜台に対して、脳幹の右ではなく左側を押し上げていた。MRIでは、水頭症を示唆する脳室上皮を横切る流れは存在しなかったことに注目されたい(図37右)。右眼の眼球追跡は、CN VI麻痺と一致する、以前の広さよりも狭いボックス(増加したアスペクト比)を示した。術後に、男性のアスペクト比は正常に戻った(図38)。
【0209】
眩暈および頭痛を示している59歳の女性は、うっ血乳頭はないが、MRIスキャンで脳室上皮を横切る流れを有する水頭症を有することが見出された(図38)。女性は、第VI神経麻痺を引き起こすことが一般に公知のサルコイドーシスについて、神経学によって評価されていた。女性は、増加したアスペクト比のボックスを有することも注目された。女性はシャントされ、そのアスペクト比は術後に正常に戻った(図40下)。
(実施例5)
視神経乳頭および視神経を介した伝導性を妨害する障害の評価
【0210】
視神経を圧迫し、視野のカットを生じる病変を有する患者の追跡は、その対象が少なくとも一方の眼に最低限の視力をなおも有する限り、眼筋運動においては検出可能な変化を生じなかった。
【0211】
しかし、視神経内の遅延した伝導を生じる病変は、健康な対照患者および神経欠陥または眼科的欠陥を有する患者のより大きい群の両方と比較して、x変動性の相対的な維持を伴うy変動性における統計的に有意なを引き起こす、増加した垂直範囲を有するパターンを生じ、屋根も床も有さないボックス軌跡を残した。
個人:
【0212】
中枢性視神経萎縮症を生じる眼のヒストプラスマ症を有する患者(図41)は、大規模なy変動性を示した。視神経炎について評価されている25歳の女性患者は、増加したy変動性もまた有した(図42)。多発性硬化症に起因して非共役性のを有する患者は、多発性脳神経障害を示した(図43)。このパターンは、健康な対照対象においても、視神経、視交叉もしくは視索に影響する腫瘍を有する数人の患者、または既知の眼の非神経性の病理に起因した低い視力を有する数人の患者を含む他の患者においても、見られなかった。
【0213】
うっ血乳頭、即ち視神経乳頭の膨張は、大きい脳腫瘍ならびに他の病理に起因する上昇した頭蓋内圧によって引き起こされる。これは、視神経に沿った軸索原形質輸送の遅延を示すと考えられている。うっ血乳頭と一致する検査を示す、大きい右前頭脳腫瘍を有する患者の左眼の眼球運動追跡は、中枢性視神経萎縮症および眼のヒストプラスマ症患者において見られたものと類似の屋根も床も有さない、増加した垂直範囲のボックス軌跡を実証した(図44)。y変動性におけるこの統計的に有意な偏差は、24時間にわたるステロイドで消散した(図45)。患者のボックス軌跡の高さは、ステロイド後かつ切除前に減少したままであり、第III神経麻痺の成分を示唆している。眼球追跡軌跡は、切除の1週間後までに正常に戻った(図46)。
図1
図2
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図5
図6
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図20-1】
図20-2】
図21A
図21B
図22-1】
図22-2】
図23A
図23B
図23C
図24
図25
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図30-1】
図30-2】
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