【実施例】
【0113】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を如何にして作製および使用するかの説明を当業者に提供するために示されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。使用される数(例えば、量、温度など)の精度を守るための努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差を考慮すべきである。特に示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセルシウス度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
(実施例1)
背景。
【0114】
眼球運動は、神経学的完全性についての臨床的に重要な情報を含んでいる。臨床的デバイスは、臨床的介入後の回復を評価するなどの適用のために、自動眼球運動追跡の相対的容易さを利用し得る。本発明者らは、最初の空間的較正なしに正確に眼球運動を確実に測定できる技法を設計した。本発明者らは、神経学的に損傷のない成人および神経外科的患者において、彼らが220秒間にわたりスクリーンの外周の周囲を動く短いミュージックビデオを見ている時に、空間的較正なしに眼球運動を追跡した。本発明者らは、精度または速度などの伝統的な空間的尺度ではなく、データの時間的特徴を測定した。
【0115】
本発明者らは、これらの較正していない測定値を使用して、神経学的機能損傷の存在と非存在との間を確実に識別した。本発明者らの結果は、この技法が、単に患者にテレビを見させることによって、神経学的完全性を評価し、欠陥を定量するために拡張され得ることを示している。
【0116】
これらの方法は、潜在的に神経学的に傷害された個人の迅速な評価、機能損傷と回復との間を振動し得る状態を有する患者のモニタリング、およびリハビリテーションまたは介入の効力を測定することを含む、多数の文脈において有用である。
【0117】
眼球運動は、神経学的完全性についての臨床的に意義のある情報を含んでいることが、長く知られてきた。眼筋運動の評価は、容易でありかつ情報を提供するので、任意の神経学的検査の標準的な部分である。しかし、専門家によって通常投与され、一般に定性的であるにすぎず、定量的ではないことを含め、標準的な臨床検査にはいくつかの問題がある。
【0118】
自動眼球運動追跡デバイスの相対的容易さ、携帯性および非侵襲性は、この自動眼球運動追跡デバイスを、運動場で脳振盪について試験するおよび臨床的介入後の回復を評価するなどの適用のために、トランスレーショナルリサーチの見込みのある領域にしている。眼球運動研究は、精神医学から外傷性脳傷害(TBI)およびリハビリテーションまでの臨床的分野についての洞察を提供している(Trojanoら、J Neurol.、2012年、259巻(9号):1888〜95頁;Gitchelら、Arch Neurol.、2012年、69巻(8号):1011〜7頁;Qiuら、PLoS One、2011年、6巻(10号):e25805頁;Plowら、PMR、3巻(9号):825〜35頁;Heitgerら、Brain.、2009年、132巻(10号):2850〜70頁;Pearsonら、Br J Sports Med.、2007年、41巻(9号):610〜2頁;Heitgerら、J Neurol Sci.、2007年、15;253(1〜39 2):34〜47頁;Suhら、Neurosci Lett.、2006年、401巻(1〜2号):108〜13頁;Suhら、Neurosci Lett.、2006年、410巻(3号):203〜7頁;Heitgerら、Brain Inj.、2006年、20巻(8号):807〜24頁;Yangら、Image and Vision Computing、2002年、20巻(4号):273〜87頁;およびHeitgerら、Prog Brain Res.、2002年、40巻:433〜1248頁)。研究は、空間的固視の精度、特定の固視標的に費やされる時間、およびサッケードカウントを一般に測定する(Trojanoら、J Neurol.、2012年、259巻(9号):1888〜95頁およびFoulshamら、Vision Res.、2011年、51巻(17号):1920〜31頁)。有望さにもかかわらず、眼球運動の定量的測定値に基づく臨床的適用を開発することは困難であることが証明されているが(Heitgerら、Prog Brain Res.、2002年、40巻:433〜1248頁およびFoulshamら、Vision Res.、2011年、51巻(17号):1920〜31頁)、この理由は場合によっては、空間的較正が臨床的設定では困難であり得るから、および空間的較正が、機能不全の眼筋運動の検出のための眼球追跡の使用を除外するからである。
【0119】
眼球追跡器の標準的な使用は、全ての測定セッションの開始時に、全ての観察者についてシステムが個々に較正されることを必要とする。較正は、コンピュータモニタ上に表示される一連の高コントラストのドットを見るように観察者に頼むことを含む。較正プロセスは、十分な精度が達成されるまで数回反復され得る。そこで初めて眼球運動が記録され得る。
【0120】
この較正プロセスが困難(例えば、多くの反復を要する)または不可能である観察者での臨床的適用では、眼球追跡を使用することは困難であった。較正は、命令に確実に従うことのできる意欲的な観察者を必要とする。神経の完全性の喪失を生じる多くの臨床的状態、例えば脳卒中または脳傷害もまた、観察者を、指示に従う意思がないまたは指示に従うことができないようにする。
【0121】
脳傷害または脳卒中の患者に対して眼球追跡方法を使用することにも問題があり、較正プロセス自体が、眼球追跡試験の感度を低減させ得る。例えば、機能損傷された垂直眼筋運動を有する患者を考慮されたい。較正プロセスは、眼が、較正ポイントによって綿密に計画された位置の全範囲をカバーすることを前提とするので、不正確に上昇および下降する最大瞳孔角を、モニタのそれぞれ「上部」および「底部」に割り当てる。かかる場合には、その観察者についての全ての未来の測定値は、その不正確な割り当てと整合するように調整される。従って、機能損傷された眼筋運動は、眼球追跡器の空間的較正で始まる試験では検出されない可能性がある。
【0122】
眼球運動の測定値は、脳に対する損傷の重症度ならびに臨床的介入後の回復を反映し得る。本明細書に記載される方法を使用して、神経外科クリニックからの35人の患者ならびに健康な志願者の対照セットを試験した。この方法の成功は、2つの特徴を含む。第1に、本明細書に記載される方法は、目的の変数として精度の空間的尺度を使用しない。空間領域ではなく時間領域において眼球運動軌跡を見ることによって、空間的較正に依存しない尺度を定量することが可能である。第2に、これらの尺度は、容易に可視化および評価され、これらの方法を臨床医または研究者にとって即座に有用なものにしている。
方法
【0123】
対象。24人の健康な観察者を、University Committee on Activities Involving Human Subjects(UCAIHS)によって決定されたように、IRB承認されたプロトコルに従って、New York Universityにおいて採用した。全ての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを提供し、その同意書はUCAIHSによって承認された。神経学的欠陥を有する35人の試験患者を、New York Harbor Healthcare System(NYHHS)において神経外科的診療から採用した。対象または彼らの法定代理人からの書面によるインフォームドコンセントを、VA New York Harbor Healthcare System Research and Development Subcommittee for Human Studiesによって確立されたガイドラインに従って、前向きデータ収集のために取得し、その同意書は、このIRBによって承認された。この研究は、このIRBによって承認された。
【0124】
観察者。較正していない眼球追跡が最初のスクリーニングとして機能する可能性があるので、患者集団は、特定の病理に制限しなかった。むしろ、クリニックに立ち寄った患者の自由裁量のサンプルを採用した。得られたサンプルは、このクリニックで見られた障害の範囲を代表した。22パーセントは、脊椎の障害を有し、この群の残りは、中枢神経系腫瘍、出血、血管病変および/または外傷を有した。この不均一な群を、集合的に「試験患者」と呼ぶ。
【0125】
眼球運動追跡。観察者の眼球運動を、Eyelink 1000単眼眼球追跡器(500Hzでのサンプリング、SR Research)を使用して記録した。全ての観察者は、スクリーンからおよそ55cmの場所に腰かけた。幾人かの試験患者を、診断、手術および回復の異なる段階で、複数の来診で追跡した。これは、試験患者集団について合計77の眼球運動経時変化を生じた。神経学的に損傷のない対照集団については、45の眼球運動経時変化が存在した。
【0126】
視覚刺激。視覚刺激は、コンピュータモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、継続的に再生されたミュージックビデオとして提供した。観察者には、ビデオを見るように指示した。この刺激は、観察者がビデオに目を通した時に、円滑追跡眼球運動ならびに起こり得るサッケードおよびマイクロサッケードを惹起すると予測された。このビデオを、スクリーンのサイズのおよそ1/8の面積を有する正方形開口部中に表示した(約16°の視角)。この正方形開口部は、スクリーンの左上角から開始して、モニタの各縁を行き来するのに10秒間かかる一定の速度で動いた。フルサイクルは40秒間かかり、5回のフルサイクルを、合計200秒間にわたって再生した。ミュージックビデオが始まる前に10秒間にわたって開始位置でカウントダウンビデオを再生して、刺激に向かうための時間を観察者に与えた。200秒間のミュージックビデオだけを分析に使用した。眼球追跡器は、500Hzで眼位をサンプリングし、200秒間にわたって100,000サンプルの眼位を得た。
【0127】
軸配向。カメラおよびモニタを、カメラにとっての「水平」がモニタにとっての「水平」と同じになるように、しっかりと取り付けた。従って、用語「水平」および「垂直」は、モニタに関して規定されるのであって、頭位傾斜に関して規定されるのではない。しかし、頭部は、典型的にはモニタと整列させ、チンレストを、全ての対照および約半数の患者に使用して、継続的な整列を確実にした。眼球追跡器は、モニタおよびカメラの結合された配向に起因して、瞳孔角の変化を、xおよびyと表示され、次に水平変化および垂直変化と呼ばれる2つの直交成分に転換した。従って、本発明者らは、水平成分および垂直成分をそれぞれxおよびyとも呼ぶ。
【0128】
データ事前処理。空間的較正は行わなかったので、生の経時変化の単位は限定的な値になった。従って、各観察者について、経時変化を、平均を差し引き、標準偏差によって除算することによって正規化した。これを、各経時変化について独立して行った。異なる経時変化を、同じ試験患者または神経学的に損傷のない対照からの別個のデータセットとして扱った。
【0129】
経時変化。正規化されたxおよびyの経時変化を、時間を追ってプロットした(
図1a)。視覚刺激の時計回りの動きは、水平変化と垂直変化との間で行ったり来たりし、神経学的に損傷のない観察者におけるxおよびyの経時変化は同じ行き来を示した。
【0130】
視覚化:散布図。視覚化のために、時系列全体の散布図を、200秒間にわたって瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対をプロットすることによって創出した。神経学的に損傷のない対照では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の視覚刺激のタイミングを反映して、ボックスのように見える(
図1d)。
【0131】
定量的データ分析および統計学。xおよびyの軌跡を、正弦関数とフィットさせた。視覚刺激の水平挙動および垂直挙動における行き来は、xおよびyについて異なる位相ではあるが、40秒間の期間でおよそ正弦である眼球運動軌跡を生じると考えられた。本発明者らは、(1)xとyとの間の位相差は、水平眼球運動および垂直眼球運動の1/4サイクルの行き来を反映して、神経学的に損傷のない対照について45度のはずであること;および(2)このモデルは、患者群からのデータとフィットする時よりも、神経学的に損傷のない対照観察者からのデータとフィットする、とさらに仮説を立てた。
【0132】
正弦との相関度(r)を、各1つの経時変化について計算した。この値の平方(r2)は、データへのモデルのフィットの良好さの尺度である。この相関値は、統計的分析により適しているために使用した。本文を通じて、「モデルフィット」とは、この相関値(r)を指す。
【0133】
位相を、データと最良にフィットする正弦関数の位相として計算した。8つの以下の補完的手順を使用して、神経学的に損傷のない対照観察者と試験患者観察者との間で比較した場合の、これら2つの尺度(位相差およびモデルフィット)における任意の差異の統計的有意性を評価した。
【0134】
(i)統計的分析1:仮説検定。各尺度について、統計的試験を実施して、試験患者集団からのデータが、神経学的に損傷のない対照集団からのデータと同じ基礎分布に由来し得るかどうかを決定した。位相尺度について、対応のないt検定を使用した。正弦フィット尺度について、正規分布しないデータについてより適当な、分散のKruskal−Wallis分析(ANOVA)を使用した。
【0135】
(ii)統計的分析2:Fisher変換。各経時変化についての最良にフィットする正弦との相関(r)値を、Fisher変換((1/2)
*ln((1+r)/(1−r))を使用して、zスコアに転換した。この正規化により、分析の第3工程を完了することが可能である。
【0136】
(iii)統計的分析3:分類。Fisherのzスコアは、経時変化の基礎集団がゼロ平均相関(帰無仮説)を有した場合、所与の経時変化にわたって特定の相関値を見る確率の概算を提供した。この帰無仮説は、正弦によって十分フィットされなかった経時変化、例えば機能損傷された観察者からの経時変化について当てはまると予測された。ゼロを有意に上回るzスコアを有する経時変化(例えば、刺激軌跡に十分一致している)は、機能損傷されていない観察者に由来すると予測された。z=2の閾値(アルファ=0.05の有意性レベルに対応する)を使用して、以下の結果に報告するように、この試験の特異性および感度を計算した。
結果
【0137】
眼球運動は、信頼性が高く、神経学的に損傷のない対照観察者の群にわたって一貫していた(
図1a、d;表1)。試験患者は、多様なパターンの眼球運動を示した(
図1b、c、e、f)。神経学的に損傷のない対照観察者は、5サイクルの開口部回転にわたって、xおよびyの眼球運動の一貫した行き来を示した(
図1a)。幾人かの試験患者は、類似の行き来を示したが(
図1b)、その他は示さなかった(
図1c)。神経学的に損傷のない対照観察者(
図1d)および幾人かの試験患者(
図1e)では、眼球運動は、5サイクルにわたる未変化な開口部軌跡を反映して、ボックスの痕跡を描いた。ボックスからの偏差は、眼球運動における機能損傷を示した(
図1f)。
表1:モデルフィットおよび位相差は、神経学的に損傷のない対照集団と試験患者との間を識別できる。
【表1】
【0138】
試験患者における正常からの偏差のパターンを定量するために、2つの尺度を規定した:位相差およびモデルフィット(方法を参照のこと)。結果は、両方の仮説と一致していた:(1)正弦モデルは、患者よりも健康な観察者でよりよく、1のデータとフィットした(p<0.001;表1);および(2)健康な観察者は、水平軌跡と垂直軌跡との間に、視覚刺激の動きのパターンを反映して、仮説が立てられた45度の位相差を示した;試験患者は示さなかった(p<0.01;表1)。
【0139】
これらの眼球運動が診断に使用され得るかどうかを試験するために、モデルフィットを使用して、神経学的に損傷のない対照の群 対 試験患者の群に由来するとして個々の経時変化を分類した。統計的閾値を、Fisher変換を使用して、相関係数を正規分布したzスコアに転換することによって規定した。全ての観察者からの各経時変化を、それが帰無分布(null distribution)に由来する確率に基づいて分類した(方法を参照のこと)。分類結果は、96%の特異性および52%の感度を示した。試験患者が、末梢神経系および中枢神経系のいずれかまたは両方に対する損傷を有し得る患者を処置する神経外科クリニックから選択された不均一群であったことを考慮すると、眼球−運動(ocular−motor)系に影響を与える問題を集団全体が有すると予測する理由はない。従って、52%の感度は、この試験患者集団について高いとみなすことができた。
【0140】
数人の試験患者を、例えば、手術の前および後に、ならびに/または手術からの回復中に、眼球運動測定を反復して、長期的に追跡した(
図2)。これらの結果は、眼球運動の痕跡が、神経学的機能損傷および回復のマーカーとして潜在的に使用され得ることを示唆した。
考察
【0141】
較正していない追跡は、刺激を固視する、刺激に注意を向ける、および刺激を追いかける能力の定量的尺度を提供し得る。これらのデータは、各観察者について最初に空間的較正を完了することなしに、信頼性のある高頻度眼球運動データを収集することが可能であることを示す。多くの患者は、較正された眼球追跡を行うことが不可能である。これらの集団において眼球運動を追跡する能力は、脳傷害、脳卒中および精神障害が含まれるがこれらに限定されない、眼球−運動系を乱す種々の障害についての新たな洞察を提供する。可能な適用には、臨床的スクリーニング、診断、処置の効力のモニタリング、ならびに機能損傷および回復の進行の追跡が含まれる。
(実施例2)
材料および方法
【0142】
対象。健康な対象を、IRB承認されたプロトコルに従って、大学環境で採用した。全ての他の対象は、本発明者らの神経外科的診療から直接採用した。IRBガイドラインに従って、全ての症例において前向きデータ収集のために、対象または彼らの法定代理人からインフォームドコンセントを取得した。
【0143】
眼球運動追跡。対象の眼球運動を、Eyelink 1000単眼眼球追跡器(500Hzでのサンプリング、SR Research)を使用して記録した。健康な志願者は、スクリーンから55cmの場所に腰かけ、チンレストを使用して頭部を安定化した。対象は、椅子、病院用ベッドまたはストレッチャー上に、腰かけることも横たわることもできた。刺激を、患者の眼から平均55cmの場所に提示し、提示モニタを、視線の方向を一致させるために調整した。幾人かの対象は、そうすることが自分にとって快適な場合には、チンレストを使用した。
【0144】
患者を追跡するための革新。患者集団において眼筋運動を測定するために、2つの革新を提供した。第1は、刺激と生眼位データの解釈を可能にする分析ストリームとからなるパラダイムであった。ほとんど例外なく、眼球運動研究は、情報の喪失を含み、研究から多くの患者を排除する、変換された視線位置を分析する。瞳孔位置を直接見て、眼筋運動についての情報を得るための新規アルゴリズムを開発した。患者にもたらされ得るデバイスを提供した。ほとんど例外なく、眼球運動データは、変化しない場所に固定された眼球追跡器を使用して収集され、対照が追跡器のところまで移動し、それと共に椅子およびチンレストのセットアップを使用することを要求する。SR ResearchのEyelink 1000を、データの質を犠牲にすることなしに、場所および対象位置における柔軟性を可能にする新規モバイルシステムに適合させた。
【0145】
視覚刺激。スクリーンの左上角から開始してコンピュータモニタの外縁に沿って時計回りに動くミュージックビデオを提供した。空間的較正は実施せず、角度での刺激のサイズが近似だけされ得るように、対象間で距離を変動させた。良好な空間的較正を伴い、スクリーンから55cmの場所に腰かけた健康な対象について、刺激を、およそ16度の面積(スクリーンのサイズのおよそ1/8)を有する正方形開口部中に提示した。ミュージックビデオが継続的に再生されるこの正方形開口部は、一定速度でスクリーンを横断して動き、モニタの各縁をカバーするのに10秒間かかった。フルサイクルは40秒間かかり、5回のフルサイクルを、合計200秒間にわたって再生した。ミュージックビデオが始まる前に10秒間にわたって開始位置でカウントダウンビデオを再生して、刺激に向かうための時間を全ての対象に提供した。200秒間の試験後さらに10秒間にわたって動画を継続して、境界効果がデータを汚染するのを回避した。各40秒間の5サイクルを含む200秒間のミュージックビデオだけを、全ての分析において使用した。500Hzの速度で、これは、200秒間にわたって100,000サンプルの眼位を得た。
【0146】
データ分析:(1)可視化。個々の対象の眼筋運動が健康な対照の眼筋運動と異なるかどうかの鮮明な指標を提供した全試験からデータのスナップショットを創出するために、時系列全体の散布図を、1つの軸に沿った水平眼位および直交軸に沿った垂直眼位をプロットすることによって創出した。200秒間にわたり瞳孔反射の瞬間角の2つの成分(水平、垂直)を示す100,000対の値(x、y)をプロットした。健康な対照では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンを横断して動く場合、開口部が移動する軌跡を反映するボックスのように見える(
図3)。これらの可視化により、生の眼球痕跡が、神経学的損傷の場合を除き、刺激の正方形の空間軌跡と整合したことが確認された。
【0147】
データ分析:(2)時間対空間。空間的較正がないと、空間領域における誤差の正確な測定は不可能である。この問題を、空間領域ではなく時間領域において眼球運動軌跡を見ることによって回避した。周期的なエンベロープ(開口部の軌跡)を用いた常に変化する刺激(継続的に再生される動画)を使用することによって、相対的眼球運動を経時的に見ることができた。効果的なことに、開口部の通路にわたる各対象の平均軌跡は、それ自体の較正として機能した。
【0148】
データ分析:(3)統計学。本発明者らの結果の統計的有意性を定量的に評価するために、対照集団におけるある特定の測定値の分布を決定し、各対象を、各尺度についてこれらの対照分布と比較した。刺激軌跡を、4つの時間成分に分割した:第1のアームは、各回転サイクルの最初の10秒間の5回の反復からなった(例えば、秒数1:10、41:50、81:90、121:130および161:170)。第2、第3および第4のアームをしかるべく規定した。2つの変数を評価した:各アームにおける相対的分散、および各アームの相対的完全性。相対的分散を、経時変化全体の分散によって除算されたアーム内の5回の反復にわたる平均分散として計算した。完全性を、各アームにおける欠測値のパーセントとして計算した。本発明者らは、これらの測定値に基づいて2つの試験を規定し、対照および患者において同じ試験を実施した。対照集団におけるこれらの試験の結果を使用して、対照分布を決定した。各患者についてのこれらの試験の結果を、適当な対照分布と比較し、信頼区間を以下のように規定した。
【0149】
完全性。完全性の尺度について、アーム1(ボックスの上部)およびアーム3(ボックスの底部)からの各患者の値の対を、対照集団から計算された平均および標準偏差を使用してzスコア付けした。得られたスコアは、患者の値が、標準偏差の単位で対照値と比較してどれほど異なるかを示した。正規分布では全ての値の95%が平均の2標準偏差内に入るので、2のzスコアを、有意性の閾値として使用した。従って、いずれかまたは両方のアームにおいて、2を上回るzスコアを有する患者を、眼筋運動の有意な障害を有すると判断した。
【0150】
相対的分散。相対的分散は比率であるので、zスコアを使用して分析することはできないが、この理由は、正規分布の仮説が比率に関して有効でないからである。その代わりに、5,000ポイントの分布を、45の対照値から交換でランダムに選択された25の値から5,000のサンプルを採取するブートストラッピング法を使用して生成した。各対象について、アーム1およびアーム3における相対的分散を、対応する対照分布とそれぞれ比較し、試験値の分散を下回る分散を有する対照分布のパーセントを決定した。0.05のp値(統計的有意性の広く受容された尺度)は、試験値を下回る対照値の95%に対応する。従って、対照分布中の値の95%よりも高い分散を有する対象を、眼筋運動の有意な障害を有すると決定した。
【0151】
単位。相対的分散の単位は、視角の角度でのサイズに関するが、空間的較正は行わなかったので、視角の角度と正確に同一ではない。これらは、時間−角度単位とも呼ばれ得る。
結果
【0152】
首尾よい追跡。健康な対照および患者に及ぶ眼球運動軌跡の可視化により、この方法が、伝統的な較正技法に頼ることなく、眼球運動を首尾よく測定したことが確認された(
図1)。
【0153】
対照分布。予測されるように、完全性の測定のための対照分布は、0.2の平均および0.05の平均標準偏差(5%偏差)で、正規分布した。相対的分散の対照分布は、0.25でピークに達した(4つのアームにわたる等しい分布を反映している)。
【0154】
患者測定値。上記対照分布と比較した、標準偏差の単位での、各対象について軌跡の「上部」アーム対「底部」アームに関する完全性の尺度を計算した。脳神経麻痺または腫瘤効果を有する対象は、眼球痕跡ボックス軌跡の完全性において欠損を示した。圧迫またはうっ血乳頭のいずれかに起因する比較的程度の高い第II脳神経麻痺を有する対象は、走査する視覚に起因して引かれた垂直線を示した。
(実施例2)
第III脳神経麻痺を呈するテント切痕ヘルニアの早期検出および脳振盪の検出
考察
【0155】
神経精神医学的研究および脳傷害研究のための眼球運動追跡(Marutaら、Journal of Head Trauma Rehabilitation(2010年)25巻:293〜305頁;Heitgerら、Brain(2009年)132巻:2850〜2870頁)は、伝統的に空間的較正に基づいている。較正を用いて、眼球追跡器は、約400〜800ミリ秒の期間にわたり、瞳孔の相対的位置および角膜反射を測定し、対象は、引き続く瞳孔の動きの間に、既知の位置の標的(単数または複数)を見て、有意義な空間座標を生成する。較正は、対象の協力を必要とし、解剖学的に機能不全の眼筋運動の検出を除外する。本発明者らは、空間的較正なしに、動眼神経(第III脳神経)の機能を理論的には評価できる、眼球運動追跡のための新規技法を開発した。この技法の他の機能のうち、動眼神経は、眼窩の上直筋および下直筋を神経支配し、瞳孔を上げたり下げたりする。側頭葉に対して内側のテント切痕を通って走る間の神経の圧迫は、腫瘍、脳卒中、出血または外傷に起因するテント上腫瘤効果からの死亡の共通の機構である切迫テント切痕ヘルニアと共に生じる(Adlerら、Journal of Neurosurgery(2002年)96巻:1103〜1112頁)。これらのデータは、200秒間の動くミュージックビデオを見ている間の対象眼球運動の記録が、第III神経が橋中脳接合部から出た後かつ海綿静脈洞に入る前に第III神経のX線撮影的圧迫を生じるテント上腫瘤病変を有する患者において、減少した垂直瞳孔運動の振幅を検出したことを実証している。垂直振幅におけるこれらの減少は無症候性であり、第III神経に対する腫瘤効果を有さない対照対象または手術患者においては見られず、腫瘤効果の調和した容積測定的排除を伴う原因テント上病変の切除の際に、可逆的でもあった。これらの結果は、空間的に較正されていない眼球運動追跡が、テント上腫瘤病変を有する覚醒患者におけるテント切痕ヘルニアの検出に有用であり得ることを実証している。
方法
【0156】
空間的較正の制約を克服するために、対象の眼球運動を、固定された所与の時間にわたり、コンピュータモニタから相対的に固定された距離で、Eyelink 1000眼球追跡器で記録した。提供した視覚刺激は、各40秒間の5回の完全サイクルにわたってモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、およそ1/8スクリーンサイズの面積を有する正方形開口部において継続的に再生されたShakiraミュージックビデオWaka−Wakaであった。眼球追跡器は、500Hzで瞳孔位置をサンプリングして、200秒間にわたって100,000サンプルを得た。時系列全体の散布図を、瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対を経時的にプロットすることによって創出して、瞳孔運動の時間的性質を反映した「ボックス軌跡」を創出した。対照対象では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の開口部のタイミングを反映して、ボックスのように見える(
図20)。
【0157】
既知の病変を有する人々の追跡を、正常対照と比較した。その眼に光知覚を生じない、一側性視神経を圧迫する腫瘍を有する患者は、損傷がない両側性追跡を有したが、この理由は、対側性の眼球からの求心性が、両方の眼において眼筋運動を駆動するのに十分であったからである(第2行、
図20)。海綿静脈洞を侵襲する大きい腫瘍に起因した一側性眼筋麻痺を有する患者は、垂直および水平の両方で振幅を減少させた(第3行、
図20)。細隙灯検査で脳橋周囲腫瘤および肉眼で損傷がない眼筋運動を有するが、眼瞼下垂を有する、複視を否定する患者もまた、減少した垂直振幅を示した(
図20)。この患者における眼瞼下垂は、上眼瞼挙筋に至る途中の動眼神経の上部の破壊の結果であり得る。既知の第III麻痺を有さないが、5年前に一過的な複視を生じた下眼窩壁骨折の履歴を有する患者もまた、眼球追跡上で減少した垂直振幅を有した(
図20、下の行)。
【0158】
任意の欠陥を有する眼球追跡された全ての患者において、異常な眼球追跡の知見は、解剖学的病理に対して対側性の眼球を追跡している間に生じた。これは、患者のデータベース全体において一貫して生じた。
【0159】
これらのデータは、X線撮影画像化で明らかなテント上腫瘤病変の組み入れ基準、外科的切除の臨床的必要を有し、眼球追跡に同意でき参加できる患者の、前向き観察研究を示す。排除基準は以下のとおりであった:光知覚よりも悪い視力、神経学的または血行動態不安定、視神経のうっ血乳頭または伝導異常、視力低下を生じる視神経の両側性圧迫、視野欠陥、トルコ鞍病変、ならびに海綿静脈洞浸潤および認知症。テント上腫瘤病変を有する7人の患者のうち5人は、X線撮影で低減された中脳周囲容積を有し、術後に自分自身と比較して、および未変化の中脳周囲槽容積を有するテント上病変を有する7人の患者のうち2人と比較して、眼球追跡上で低減された垂直瞳孔振幅を実証した(
図21、左パネル)。橋中脳接合部において脚間槽から海綿静脈洞に走る際の第III神経の周りの実際の空間は、大きい精度で定量することが困難であるので、本発明者らは、MRI分析から元々適合された確立された方法論(Yangら、Brain Inj(2012年)を使用したCTスキャンのアルゴリズム的容積測定的分析によって測定されるような最大容積の術後スキャンと比較した中脳周囲槽容積における低減に関して、患者フィルムを評価した(Mikheevら、J Magn Reson Imaging 2008年;27巻:1235〜1241頁)。手術対照患者は、減少した中脳周囲槽容積を生じないテント上腫瘤病変を有する患者(n=2)および小脳橋角腫瘍の切除を受けている患者(n=5)であった。非手術対照患者は、眼科クリニックでの評価の際に損傷がない眼筋運動、瞳孔反応および視神経機能を有することを立証した、顕著な神経学的疾患を有さない年齢がほぼ等しい志願者対象であった(n=11)。中脳周囲槽の除圧は、アスペクト比における改善と関連していた(眼球追跡軌跡の高さ/幅;
図21、右パネル、および
図30)。
【0160】
容積測定的分析がX線撮影知見と一致することを確認するために、眼球追跡結果に関して盲検にした2人の経験豊富な神経放射線科医が、第III神経圧迫の証拠に関して患者の術前CTスキャンを評価した(補足情報)。両方の放射線科医が、容積測定的分析を介して圧迫を有さない、テント上病変を有する2人の患者が、画像化の直接的検討においても圧迫を有さなかったことに関して一致していた。
【0161】
術前中脳周囲槽圧迫または鉤ヘルニア形成のいずれの証拠も有さない、テント上腫瘤病変の切除を受けている患者は、術後の自分自身または眼科対照と比較して、より減少したアスペクト比に僅かに傾く傾向があった。動眼神経の直接的圧迫以外の複数の要因が、これらの患者において眼筋運動に影響を与えている可能性がある。上昇した頭蓋内圧は、実験的研究において、第II脳神経に沿った軸索原形質輸送を遅延させる(Balaratnasingamら、Brain Research 2011年;1417巻:67〜76頁)。病変からの腫瘤効果は、眼筋運動に影響を与える脳神経に沿った軸索原形質輸送を遅延させるのに十分な頭蓋内圧における上昇を引き起こしている可能性がある。
【0162】
このシリーズの1人の患者は、クリニックへの最初の提示の後に、臨床的に悪化した。外科的排出を介した、提示から腫瘤効果の増悪までの左慢性硬膜下血腫を有するこの患者の連続眼球運動追跡を実施した。側頭葉の内側面による第III神経に対する影響は、減少した垂直振幅を生じ、これは、硬膜下血腫からの腫瘤効果の増悪と共により頻繁に発生し、その処置によって消散した(
図22)。提示の際に、5回の視覚刺激サイクルのうち1回だけが、第III神経麻痺を示唆する圧迫を実証したことに注目されたい。槽における増加した圧力の一過的な波は、第III神経の機能に、直ちにかつ一時的に影響を与える可能性がある。
【0163】
術前CTスキャンと術後CTスキャンとの間で中脳周囲容積において最大の定量的差異を有した患者は、眼球追跡で瞳孔垂直振幅における両側性の減少を有した。この患者は、転倒を示し、ほぼ皆無の大脳鎌下(subfalcine)ヘルニア形成を引き起こす右前頭頭頂頭蓋骨骨折および小さい硬膜外血腫を生じたが(
図23、上のCT画像)、右側で術後容積の27%および左側で術後容積の35%まで、中脳周囲槽容積における低減を生じた(下のCT画像)。
【0164】
眼球追跡で制限された垂直振幅を有することが見出された、テント上病変を有する患者のだれも、複視または非共役性視線の他の症状を報告しなかった。これらの患者は全て、検査では、神経外科医によってまたは眼科細隙灯によって、正常な眼筋運動を有することが報告され、これは、麻痺が無症候性であることを示唆している。
【0165】
これらのデータは、本明細書に記載される方法が、テント切痕ヘルニアの検出に臨床的に有用であり得る、無症候性第III神経麻痺を検出するためのアルゴリズムを提供することを実証している。第III神経は内側直筋を神経支配し、X線撮影による中脳周囲圧迫を有する患者において正常な幅の眼球ボックス軌跡が存在するので、第IV神経は、瞳孔の内側回転に十分である可能性がある。注目された眼球追跡変化を第III神経が担うことのさらなる証拠は、定常瞳孔サイズデータを評価することによって将来得られるであろう。
【0166】
本明細書に記載される方法は、眼を開いた最小に意識のあるおよび持続的に植物状態の患者の集団におけるオンターゲットおよびオフターゲット固視のために静的刺激を使用した較正していない追跡の報告とは異なっている(Trojanoら、J Neurol、(2012年))。周期的に動く開口部内に示される動く画像は、対照および神経学的に機能損傷した対象の両方において、粗い眼球運動および微細な眼球運動の両方の特徴の評価を可能にする。他の研究(Marutaら、Journal of Head Trauma Rehabilitation 2010年;25巻:293〜305頁;Trojanoら、J Neurol、2012年;Contrerasら、Brain Research 2011年;1398巻:55〜63頁;Contrerasら、Journal of Biological Physics 2008年;34巻:381〜392頁)とは異なり、本発明で記載された方法は、対象が正確な命令に確実に従う能力にその有効性が依存する一連の縮尺変更および回転のプロセスによる生データの変換を必要とするサッケードカウントまたは空間精度を使用しなかった。本明細書に記載される方法は、瞳孔を限局化させるために固定された頭部位置または複数の光供給源およびカメラのいずれかを必要とする視線概算とも異なる(Guestrinら、IEEE Transactions on Bio−Medical Engineering 2006年;53巻:1124〜1133頁)。
【0167】
ビデオを見るのには非常に多くの異なる皮質機能が必要とされるので、包括的な頭蓋機能または特定の脳神経機能を妨害する任意のプロセスが、この技法によって明らかにされる可能性が高い。追跡は、以前の脳損傷の履歴を有する、中毒したまたは薬理学的薬剤の影響下にある患者において、攪乱し得る。患者の認知能力、注意持続時間および転導性は、眼筋運動データの質に影響を与え得る。水頭症患者の眼の病理の多様なベースラインを考慮すると(Dennis, M.ら、Archives of Neurology 1981年;38巻:607〜615頁;Zeinerら、Childs Nerv Syst 1985年;1巻:115〜122頁;Altintasら、Graefe’s archive for clinical and experimental ophthalmology = Albrecht von Graefes Archiv fur klinische und experimentelle Ophthalmologie 2005年;243巻:1213〜1217頁)、追跡結果は、各患者自身の規範的データと比較され得る。まだ追跡できない若年の乳児は、眼球運動追跡ベースの評価の候補にはならない可能性がある。
【0168】
本明細書に記載される方法は、中枢神経系の生理学的機能を評価し、従って、脳の解剖学の可視化を可能にする画像化技術とは異なる。較正していない眼筋運動追跡評価は、中枢神経系機能の評価の前に追跡されることに対象が明確に同意していることを必要とせず、従って、倫理的配慮を高める。眼球運動追跡技術を使用して検出可能な特徴的な異常を伴う多数の疾患のなかでは、とりわけ認知症、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症、自閉症および脆弱Xである(Sharmaら、Archives of Neurology(2011年)68巻:857〜861頁;Pelak、Current Neurology and Neuroscience Reports 2010年;10巻:440〜447頁;Hicksら、Progress in Brain Research 2008年;171巻:555〜558頁;Kennedyら、Neuropsychologia 2010年;48巻:3392〜3398頁;Levyら、Current Topics in Behavioral Neurosciences 2010年;4巻:311〜347頁)。
【0169】
アスペクト比。経過時間の定量は、眼位の測定の間のビデオ開口部の限局化を可能にする。ボックス高さ=ビデオが上部および底部を行き来する間の中央上部値−中央底部値。同様に、ボックスの幅は、ビデオ開口部が右側および左側にある時の瞳孔の位置に基づいて計算される。アスペクト比=高さ/幅(
図28)。
【0170】
中脳周囲槽容積。スキャン間の頭部の誤整列によって導入され得る、軸位断面、冠状断面および矢状断面に関する可変のアンギュレーションについて補正するために、各CT容積を、左眼レンズ(LE)、右眼レンズ(RE)および上丘の接合部(C)を3D空間中でマークすることによって、再整列させ、標準(テンプレート)座標系に対して再サンプリングした。テンプレート空間では、これら3つの対応する構造LE’ RE’ C’を、脳幹の主軸がz方向(断面を横切る)になるように、対称的に位置付けた。次いで、三角形<LE RE C>を三角形<LE’ RE’ C’>に最良にマッピングする剛体(容積保存的)変換Tを算出した。変換Tを使用して、テンプレート空間に対してCT容積を再サンプリングした。松果体から鞍結節へと延びる脳幹の中心に集中した半径20ピクセルの円筒を配置することによって、槽をテンプレート空間中に小分けにした。円筒内の各ボクセルについて、本発明者らは、Hounsefield単位(Hu):Pv=(A_脳−A)/(A_脳−A_水)において測定されたその減衰Aに従って、CSFのボクセルの部分容積Pvを算出した。式中、A_脳=48Hu、A_水=0Huである。Pvは[0−1]に制約された。槽容積を、鞍上槽を排除するボクセル容積によって乗算された円筒内のPv値の合計として算出した。
【0171】
患者症例の詳細および放射線科医の解釈。この研究の目的のために、放射線科医に、術前CT画像を見るように依頼し、第III神経に対する腫瘤効果が存在するか否かについてコメントを求めた。
統計的分析
【0172】
アスペクト比を、1つの眼球運動軌跡当たり100,000のデータポイントの管理のためにMATLABプログラミングを使用して、上記方法の概要に記載したように計算した。術前対術後データ比較のために両側スチューデントt検定、対応あり、2サンプルを使用し、手術患者対眼科クリニック対照の不等n群間の比較のために対応のないt検定を使用して、比率を比較した。
【0173】
平均瞳孔サイズを、MATLABプログラミングを使用して、1つの眼球追跡軌跡当たり平均で100,000のデータポイントを取得することによって計算した。平均を、術前データと術後データとの間の比較のために、対応のある両側t検定を使用して比較した。
中脳周囲圧迫を有するテント上症例。
【0174】
症例1:(
図22)この患者は、高血圧症、高脂血症 軽度の慢性腎機能不全の病歴、ならびに両側性白内障手術(2年前および8年前)、偽水晶体および強膜バックリング術の眼科履歴を有する、86歳の右利き男性である。この患者は、20/25(右眼)および20/30(左眼)のベースライン視力を有した。この患者は、1日81mgのアスピリンを予防的に摂取した。この患者は、転倒し、数週間後に頭痛を示したが、他の点では神経学的に良好であった。頭部CTを実施したところ、小さい左側硬膜下血腫が示された。アスピリンを中断し、血小板を輸血した。頭痛は自然に消散し、患者はこの病変を観察することを選択した。8日後、頭痛は増悪し、反復CTスキャンにより、血腫の拡大が示された。この患者は、神経学的検査では、損傷がないままであり続け、無視も前腕の回内も示さなかった。この患者は、対称的なままの手術瞳孔を有した。この患者は、硬膜下血腫ドレナージを受け、その間に、100ccの体液を、閉鎖型ツイストドリルドレナージシステムを使用して抽出した。この患者は、頭痛は消散し、無症状になった。この患者は、理学療法に参加した後に、退院して帰宅した。
【0175】
中脳周囲槽圧迫(手術直前のCTスキャン上):右槽 ベースラインの80%、左槽 ベースラインの61%。
放射線科医#1:「脳幹は右にシフトし、鉤の内側化(medialization)が存在し、槽のCN IIIにほとんど触れない可能性がある。別に、鉤による左海綿静脈洞に対する腫瘤効果が存在する(CSF裂の喪失)。」
放射線科医#2:「この患者は、内側変位を伴う完全鉤を有する。槽に対する腫瘤効果が存在するが、CN IIIの顕性の圧迫は存在しない。」
【0176】
症例2:(
図23および
図24)この患者は、甲状腺腫/医原性甲状腺機能低下症、高血圧症および高脂血症の過去の病歴、ならびにラタノプロスト(latonoprost)点眼薬で制御された緑内障の眼科履歴を有する、62歳の右利き男性である。男性は、両側性で20/20の視力を有した。男性は、転倒および数分間持続する意識の喪失を示した。提示の時点で、男性は覚醒しており、機敏で、流暢な発話を有した。男性の瞳孔は同一であり、外眼運動は損傷がないままであった。男性の頭部CTは、星状頭蓋骨骨折の根本にある小さい前頭頭頂硬膜外血腫を示した。眼球運動追跡を実施した。5時間後、男性の検査は悪化し、男性は傾眠、構音障害、左側無視および左前腕の回内を発症した。男性の瞳孔は同一のままであり、外眼運動は検査により損傷がないままであった。男性は、開頭術および硬膜外血腫の排出ならびに頭蓋骨骨折の頭蓋プレーティングのために、手術室に運ばれた。術後に、男性の左側無視および前腕の回内は、引き続く48時間にわたって消散した。男性は、術後4日目にExecutive Interview 25 Assessment Test(EXIT)で13/50のスコアを付けた。眼球追跡を、術後7日目に反復した。男性は、1週間の入院患者リハビリテーションの後に退院して帰宅した。
【0177】
中脳周囲槽圧迫(術前CTスキャン上):右槽 ベースラインの27%、左槽 ベースラインの35%。
放射線科医#1:「右側にCN IIIとの接触が存在する。」
放射線科医#2:「顕性のCN III圧迫の証拠は存在しない。」
【0178】
症例3:(
図25)右下肢脱力に起因する機能損傷された運動性を示した、腎機能不全、両側性白内障および両側性で20/25の視力を有する74歳の糖尿病高血圧症男性。男性は、頭部外傷を否定したが、頭部を打たずに3か月前に転倒したことを報告した。検査では、男性は、覚醒しており、右前腕の回内と、上肢および下肢の4/5右側不全片麻痺を届け出た。男性の左側は損傷がなかった。男性の瞳孔は同一であるように見え、男性は検査では損傷のない外眼筋運動を有した。眼球運動追跡を実施した。硬膜下血腫のツイストドリルドレナージを実施し、130ccの体液を抽出した。男性は、入院患者のリハビリテーション後に退院して帰宅した。
【0179】
中脳周囲槽圧迫(手術直前CTスキャン上):右槽 ベースラインの86%、左槽 ベースラインの70%。
放射線科医#1:「左鉤は、僅かに内側にシフトし、CNIIIと接触している可能性がある。」
放射線科医#2:「鉤は内側に逸れている;顕性の圧迫は存在しない。」
【0180】
症例4(
図26)成人期の持続時間にわたって医師の診察を辞退してきた、従って、関連する病歴も眼科履歴も報告していない、咳およびインフルエンザ様の病気で救急治療室に来た、63歳の、1年に100パック喫煙する男性。検査では、男性は、見当識障害であり、軽度の左不全片麻痺を有することが注目された。瞳孔は、同一で反応性であり、外眼運動は損傷がないように見えた。頭部CTは、右前頭腫瘤を示し、胸部X線写真は、大きい左上葉胸部腫瘤を示した。この患者に、デカドロン10mgを6時間毎に経口投与し、CT胸部/腹部/骨盤および脳MRI(示される)を取得した。眼球運動追跡を、中程度に高分化型の扁平上皮癌腫転移の切除のための右前頭開頭術の直前に、入院の48時間後に実施した。X線撮影肉眼総切除を実施した。この患者は、開頭術の1週間後に帰宅し、最終的に全脳に対する放射線療法を受けた。この患者は、肺腫瘤に対する処置を辞退し、最初の診断後7か月が経過した。
【0181】
中脳周囲槽圧迫(手術直前CTスキャン上):右槽 ベースラインの77%、左槽 ベースラインの73%。
放射線科医#1:「正中に向かう鉤の僅かなシフトが存在する。これは、槽のCNIIIと接触していない可能性が高いが、同側性の海綿静脈洞を圧迫している可能性があり、この理由は、洞に隣接するCSF裂が消失しているからである。」
放射線科医#2:「鉤は内側に逸れている;CN IIIに対する顕性の圧迫は存在しない。」
【0182】
症例5(
図27)この患者は、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症、クマジン服用中の心房細動、うっ血性心不全、外傷後ストレス障害、透析中の腎不全、慢性閉塞性肺疾患および冠状動脈疾患を有する63歳の男性である。男性は、腎不全のために血液透析を受けながら、錯乱を示した。眼科履歴は、増殖性網膜症が顕著だった。男性は、右眼20/25および左眼20/40の視力を有した。身体検査では、提示の時点において、男性は、神経学的に良好であり、無視も前腕の回内もなかった。外眼運動は損傷がなく、瞳孔は同一であった。頭部CTは、右側混合密度硬膜下出血を示した。眼球追跡を実施した。クマジンを停止させ、新鮮な凍結血漿を投与した。提示の2日後、ツイストドリルドレナージを実施し、176ccの硬膜下液を排出させた。この患者は、神経学的に良好のままであり、2日後に自分の老人ホームに戻った。
【0183】
中脳周囲槽圧迫(手術直前CTスキャン上):右槽 ベースラインの36%、左槽 ベースラインの29%。
放射線科医#1:「右鉤はシフトし、錐体斜台部(petroclival)靭帯の下を通過する前に、CN IIIの槽部分に影響を与えている。」
放射線科医#2:「鉤は内側に逸れ、完全である。」
容積測定的分析により中脳周囲圧迫を有さないテント上症例。
【0184】
症例6(
図28)前立腺癌、高血圧症、高脂血症、寛解期におけるアルコール依存症、および銃弾の断片が残った左肩への銃創の過去の病歴を有する67歳の男性。男性の眼科ベースラインは、右眼20/40および左眼20/50の視力であった。男性は、2か月間の吃音症ならびに右腕および手の脱力を示した。男性は、提示の日に、右上肢の震えから始まった、証拠となるけいれんを有し、全身性の強直間代性の活動性に進行した。検査では、男性は、損傷のない瞳孔および外眼運動を有した。男性の発話は、錯語的な誤りならびに反復および命名の困難を伴って、ゆっくりであった。コントラストのある頭部CTは、左前頭側頭嚢胞性腫瘤を明らかにした。この患者は、壊死性細胞を明らかにし、悪性腫瘍について非診断的であった嚢胞の覚醒定位ドレナージを受け、その後、多形神経膠芽腫の切除のためにスピーチマッピングを伴う覚醒定位開頭術を受けた。肉眼総切除を、X線撮影により達成した。この患者は、維持された発話を有したが、術後に軽度の不全片麻痺を有し、退院帰宅前にリハビリテーションに参加した。この患者は、外来患者としてテモダールおよび放射線療法を受け、術後4か月目の時点において腫瘍再発なしに、日常生活の活動性において自立したままであった。
放射線科医#1:「槽開存性。鉤のシフトなし。CN IIIとの接触なし。」
放射線科医#2:「CN III圧迫の証拠なし。」
【0185】
症例7(
図29)高血圧症、高脂血症、冠状動脈疾患および外傷後ストレス障害の過去の病歴を有し、既知の眼科障害を有さず、視力が両側性で20/20の、外部外科医による食道接合部転移に対する左頭頂開頭術の2週間後に、悪化した右手協調および運動失調を示した、65歳の男性。検査では、この患者は、右前腕の回内および半側無視を有した。CTは、手術部位における浮腫を明らかにし、MRIは、以前の腫瘍腔における末梢増強集積を明らかにした。眼球追跡を実施し、次いでこの患者を、再診査開頭術および硬膜に対し深部の膿瘍の排出のために手術室に運んだ。この患者は、術後12週間にわたって抗生物質で処置された。
放射線科医#1:「槽開存性。鉤のシフトなし。CN IIIとの接触なし。」
放射線科医#2:「CN III圧迫の証拠なし。」
前庭神経鞘腫手術対照症例(
図36)
【0186】
3人の患者は切除を受け、1人は、前庭神経鞘腫腫瘍に対するガンマナイフ放射線を受けた。5番目の患者は連続観察を選択した。
眼科クリニック対照症例:
【0187】
56歳から87歳までの範囲の11人の患者を、眼科または神経眼科クリニックにおいて評価した。これらの患者を非手術対照として選択した。
(実施例3)
正常圧水頭症の処置のための、正常圧水頭症に関する疾患重症度の定量、およびシャント機能障害の診断/弁圧の最適化
【0188】
認知症は、多数の病因および壊滅的な結果を有する疾患である。認知症対象の空間的に較正された眼球運動追跡により、機能損傷された円滑追跡機能が明らかになる。本発明者らは、空間的較正に依存しない、動くビデオを見る間の眼球運動追跡のための新規技法を開発した。ここで、本発明者らは、正常圧水頭症を有する対象が、その術前状態と比較して、脳脊髄液迂回後に減少した追跡変動性を実証したことを示している。変動性におけるこの減少は、歩行における改善と相関し、正常圧水頭症を有さない手術患者でも、連続追跡した対照対象でも見られなかった。本発明者らの結果は、脳脊髄液迂回が、あまり可変でない空間的に較正されていない眼球運動追跡を正常圧水頭症が実施する能力を改善すること、および動画またはテレビを見ている間の眼球追跡が、シャント機能を評価するために使用できることを示唆している。
【0189】
機能損傷された円滑追跡眼球運動追跡は、認知症患者対正常な高齢対照において見られ(Huttonら、Neurology(1984年)34巻:99〜102頁)、初老期認知症およびアルツハイマー認知症の初期の指標であることが示されている(Mullerら、Int J Psychophysiol(1991年)11巻:167〜177頁;Mullerら、European archives of psychiatry and clinical neuroscience(1991年)241巻:46〜48頁)。認知症患者は、機能損傷された眼−手視覚運動協調(Verheijら、J Alzheimers Dis(2012年)30巻:131〜143頁)および機能損傷された視覚記憶(Lagunら、Journal of neuroscience methods(2011年)201巻:196〜203頁)もまた有する。
【0190】
正常圧水頭症(NPH)は、未知の病因を有する場合が多く、一般に、歩行障害、認知症および失禁の進行性の発生を特徴とする(Bretら、Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry(2002年)73巻:9〜12頁)。正常圧水頭症は、NPHに対するCSF迂回の時点で取得された、Aβおよびγタンパク質を明らかにする皮質生検標本からわかるように、アルツハイマーとの注目すべき重複を有する不均一な障害である(Leinonenら、Neuro−degenerative diseases 2012年;10巻:166〜169頁)。NPHを有する患者における眼球運動追跡の知見は、以前には報告されていない。
【0191】
機能損傷された円滑追跡眼球運動追跡が、アルツハイマー病を有する認知症患者において注目されるので、本発明者らは、機能損傷された追跡が、NPH認知症を有する患者においても注目されるという仮説および追跡がCSF迂回後に改善されるという仮説を立てた。一部の認知症患者は、眼球運動追跡に必要な空間的較正プロセスに関与するのに十分に活発にかつ一貫して指示に従う意思がないまたは指示に従うことができないので、本発明者らは、対象がテレビまたはそのビデオ等価物を見ている間に実施できる、空間的に較正されない追跡のための技法を開発した。
【0192】
本発明者らは、NPHに対するCSF迂回を受けている患者において、術前および術後に、この空間的に較正されない追跡を実施した。連続追跡からの学習効果がNPH集団での追跡における改善の原因にならなかったことを実証するために、本発明者らは、無関係の手術を受けているまたは全く手術を受けていない対照患者もまた、連続的に眼球追跡した。
方法
【0193】
較正を用いて、眼球追跡器は、約400〜800ミリ秒の期間にわたり、瞳孔の相対的位置および角膜反射を測定し、対象は、引き続く瞳孔の動きの間に、既知の位置の標的(単数または複数)を見て、有意義な空間座標を生成する。空間的較正の制約を克服するために、本発明者らは、固定された所与の時間にわたり、コンピュータモニタから相対的に固定された距離で、EyeLink眼球追跡カメラを用いて対象の眼球運動を記録した。視覚刺激は、各40秒間の5回の完全サイクルにわたってモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、およそ1/8スクリーンサイズの面積を有する正方形開口部において継続的に再生されたShakiraワールドカップサッカーミュージックビデオWaka−Wakaであった。眼球追跡器は、500Hzで瞳孔位置をサンプリングして、200秒間にわたって100,000サンプルを得た。
【0194】
本発明者らは、時系列全体の散布図を、瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対を経時的にプロットすることによって創出して、瞳孔運動の時間的性質を反映した「ボックス軌跡」を創出した。対照対象では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の開口部のタイミングを反映して、ボックスのように見える(
図3)。
結果
【0195】
本発明者らは、既知の認知欠陥を有さない36歳の神経外科のチーフレジデントならびに複数の医学上の問題および眼の問題を有するが既知の認知欠陥を有さない87歳の男性を含む正常志願者対象を追跡した。両方の正常志願者は、追跡において類似の変動性を示した。
【0196】
次いで、本発明者らは、正常圧水頭症について処置されている3人の対象を追跡した。
【0197】
症例1(
図31):HIV感染、糖尿病、高血圧症、および2回の転倒後に神経学者に示された脳卒中の過去の病歴を有する68歳の男性。大量腰椎穿刺を実施した。開口圧力は3cmであった。この患者の歩行は、タップによって劇的に改善した。4に設定したCertasプログラム可能弁を有するCodmanシャントを配置したところ、この患者は、進行性の改善を臨床的に示し続けた。連続追跡を実施したところ、歩行における臨床的改善と並行していた(
図29)。
【0198】
症例2(
図32):5年間にわたって進行性の漸増する歩行障害および記憶の問題を示した57歳の建設作業員。この患者は、勤務中の落下後に建設作業員としての職から解雇された。この患者のミニメンタルステート検査は、大量腰椎穿刺後に、歩行と同様、3ポイント改善した。5に設定したCertasプログラム可能弁を有するCodmanシャントを配置したところ、この患者は、進行性の改善を臨床的に示し続けた。連続追跡を実施したところ、歩行における臨床的改善と並行していた(
図3)。
【0199】
症例3(
図33):歩行失行のために、73歳の時に正常圧水頭症のためにシャントを受けた、喘息、高血圧症、外傷後ストレス障害および良性前立腺肥大症の過去の病歴を有する、87歳の男性、第2次世界大戦の退役軍人。中間圧PS医療用弁がその時に配置された。この患者は、弁の交換なしに、3回の後の遠位シャント修正を受けた。この患者は現在、進行性の歩行失行を再度示しており、シャントグラムは遠位機能障害を示している。この患者は既に3回の腹腔内シャントを失敗しているので、シャントを直ちに修正し、胸膜腔中に配置した。弁もシャントチュービングも交換しなかった。この患者は、追跡における改善と並行して歩行における改善を示した(
図31)。
【0200】
従って、本発明者らは、NPHのためのシャント後に追跡における改善の3つの実証された症例を有している。患者の追跡は、これらの患者が連続的に追跡され、ビデオを見ている際に「学習効果」を示したという理由のためだけに改善したと考えることができるが、多発性硬化症および両側性視神経症を有する57歳の男性の連続追跡は、かかる連続的な改善が存在しないことを示した(
図32)。
考察
【0201】
これらの結果は、増加した変動性が対象の年齢に依存していないことを示している。追跡における増加した変動性は、正常圧水頭症に起因する増加した歩行障害と相関する。認知症を評価するための眼球運動追跡のコンセプトは新しくはないが、認知機能に測定可能な影響を与えない、シャント機能障害を評価するための眼球追跡の使用は新規である。追跡されている対象の協力を必要としない、テレビを見ている間の追跡の性能もまた、顕著な発展を示す。本発明者らの方法論は、中枢神経系の生理学的機能を評価し、従って、脳の解剖学の可視化を可能にする画像化技術とは異なる。脳の画像化は、NPHを伴うシャント機能障害の診断であってもなくてもよい。較正していない眼筋運動追跡評価は、中枢神経系機能の評価の前に追跡されることに対象が明確に同意していることを必要とせず、従って、倫理的配慮を高める。眼球運動追跡技術を使用して検出可能な特徴的な異常を伴う多数の疾患のなかでは、とりわけ認知症、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症、自閉症および脆弱Xである(Sharmaら、Archives of neurology(2011年)68巻:857〜861頁;Pelak、Current neurology and neuroscience reports(2010年)10巻:440〜447頁;Hicksら、Progress in brain research(2008年)171巻:555〜558頁;Kennedyら、Neuropsychologia(2010年)48巻:3392〜3398頁およびLevyら、Current topics in behavioral neurosciences(2010年)4巻:311〜347頁)。
(実施例4)
第VI脳神経麻痺を呈する後頭蓋窩腫瘤効果の評価
背景
【0202】
第VI脳神経は、その解剖学的脆弱性に起因して、神経障害に対して高度に感受性であるとみなされている(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁)。外転神経(VI)は、延髄橋接合部においてその係留から脳幹を出て、Dorello管に入る前に頭蓋内を走り、この場所で、線維状構造および骨様構造によって再度係留される。小脳および脳幹を前方に押す後頭蓋窩病変は、斜台に対して第VI神経を直接圧迫し得る(Hansonら、Neurology 2004年;62巻(1号):33〜36頁)。
方法
【0203】
対象の眼球運動を、固定された所与の時間にわたり、コンピュータモニタから相対的に固定された距離で、Eyelink 1000眼球追跡器で記録した。提供した視覚刺激は、各40秒間の5回の完全サイクルにわたってモニタの外縁に沿って時計回りに動きながら、およそ1/8スクリーンサイズの面積を有する正方形開口部において継続的に再生されたShakiraミュージックビデオWaka−Wakaであった。眼球追跡器は、500Hzで瞳孔位置をサンプリングして、200秒間にわたって100,000サンプルを得た。時系列全体の散布図を、瞳孔反射の瞬間角の2つの直交成分を示す100,000の(x、y)対を経時的にプロットすることによって創出して、瞳孔運動の時間的性質を反映した「ボックス軌跡」を創出した。対照対象では、これらの図形は、視覚刺激がスクリーンの周囲を動いた際の開口部のタイミングを反映して、ボックスのように見える(
図20)。
【0204】
アスペクト比。経過時間の定量は、眼位の測定の間のビデオ開口部の限局化を可能にする。ボックス高さ=ビデオが上部および底部を行き来する間の中央上部値−中央底部値。同様に、ボックスの幅は、ビデオ開口部が右側および左側にある時の瞳孔の位置に基づいて計算される。アスペクト比=高さ/幅(
図24に示す計算)。
個人
【0205】
複視を生じ、眼科医によって検出された既知の第VI神経麻痺を有する人物の追跡を、正常な対照と比較した。ボックス軌跡は平らに見えたが(
図35左)、アスペクト比の計算により、ボックスは、対照軌跡よりも実際にはより高くかつ狭いことが明らかになった(
図35右)。
【0206】
2人の患者は、第四脳室を部分的に閉塞させた後頭蓋窩病変を示した。1人目は、頭の背部に圧痛のある腫瘤を示し、進行性の頭痛を示した、低分化型乳頭癌腫を有する54歳の男性であった。男性は、臨床検査ではうっ血乳頭を有さなかった。画像化により、第四脳室をほぼ閉塞させている頭蓋冠ベースの転移が明らかになった(
図36)。MRIでは、水頭症を示唆する脳室上皮を横切る流れは存在しなかったことに注目されたい(
図36右)。眼球追跡は、CN VI麻痺と一致する、以前の広さよりも狭いボックス(増加したアスペクト比)を示した。
【0207】
腫瘤を切除した。術後1日目の反復画像化(
図35)により、ボックスが、正常なアスペクト比を有するまでに戻ったことが示された(
図35)。
【0208】
2人目の患者は、肺腫瘤および頭痛を示した56歳の男性であった。男性は、臨床検査ではうっ血乳頭を有さなかった。MRIにより、小脳橋角の近傍で大きい軸内腫瘤が明らかになったが、興味深いことに、斜台に対して、脳幹の右ではなく左側を押し上げていた。MRIでは、水頭症を示唆する脳室上皮を横切る流れは存在しなかったことに注目されたい(
図37右)。右眼の眼球追跡は、CN VI麻痺と一致する、以前の広さよりも狭いボックス(増加したアスペクト比)を示した。術後に、男性のアスペクト比は正常に戻った(
図38)。
【0209】
眩暈および頭痛を示している59歳の女性は、うっ血乳頭はないが、MRIスキャンで脳室上皮を横切る流れを有する水頭症を有することが見出された(
図38)。女性は、第VI神経麻痺を引き起こすことが一般に公知のサルコイドーシスについて、神経学によって評価されていた。女性は、増加したアスペクト比のボックスを有することも注目された。女性はシャントされ、そのアスペクト比は術後に正常に戻った(
図40下)。
(実施例5)
視神経乳頭および視神経を介した伝導性を妨害する障害の評価
【0210】
視神経を圧迫し、視野のカットを生じる病変を有する患者の追跡は、その対象が少なくとも一方の眼に最低限の視力をなおも有する限り、眼筋運動においては検出可能な変化を生じなかった。
【0211】
しかし、視神経内の遅延した伝導を生じる病変は、健康な対照患者および神経欠陥または眼科的欠陥を有する患者のより大きい群の両方と比較して、x変動性の相対的な維持を伴うy変動性における統計的に有意なを引き起こす、増加した垂直範囲を有するパターンを生じ、屋根も床も有さないボックス軌跡を残した。
個人:
【0212】
中枢性視神経萎縮症を生じる眼のヒストプラスマ症を有する患者(
図41)は、大規模なy変動性を示した。視神経炎について評価されている25歳の女性患者は、増加したy変動性もまた有した(
図42)。多発性硬化症に起因して非共役性のを有する患者は、多発性脳神経障害を示した(
図43)。このパターンは、健康な対照対象においても、視神経、視交叉もしくは視索に影響する腫瘍を有する数人の患者、または既知の眼の非神経性の病理に起因した低い視力を有する数人の患者を含む他の患者においても、見られなかった。
【0213】
うっ血乳頭、即ち視神経乳頭の膨張は、大きい脳腫瘍ならびに他の病理に起因する上昇した頭蓋内圧によって引き起こされる。これは、視神経に沿った軸索原形質輸送の遅延を示すと考えられている。うっ血乳頭と一致する検査を示す、大きい右前頭脳腫瘍を有する患者の左眼の眼球運動追跡は、中枢性視神経萎縮症および眼のヒストプラスマ症患者において見られたものと類似の屋根も床も有さない、増加した垂直範囲のボックス軌跡を実証した(
図44)。y変動性におけるこの統計的に有意な偏差は、24時間にわたるステロイドで消散した(
図45)。患者のボックス軌跡の高さは、ステロイド後かつ切除前に減少したままであり、第III神経麻痺の成分を示唆している。眼球追跡軌跡は、切除の1週間後までに正常に戻った(
図46)。