(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559072
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】軸方向スイッチを含む回転センサモジュール
(51)【国際特許分類】
G01D 5/252 20060101AFI20190805BHJP
H01H 19/08 20060101ALI20190805BHJP
H01H 89/00 20060101ALI20190805BHJP
H01H 13/10 20060101ALI20190805BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
G01D5/252 B
H01H19/08 D
H01H89/00
H01H13/10
A61M5/315 550N
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-557472(P2015-557472)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公表番号】特表2016-514249(P2016-514249A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2014053220
(87)【国際公開番号】WO2014128156
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年1月24日
(31)【優先権主張番号】13155802.5
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/767,818
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マスン, ジョン オスタゴー
(72)【発明者】
【氏名】オーレスン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンダム, イェスパー ピーター
【審査官】
菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−507314(JP,A)
【文献】
特表平10−511183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/252
A61M 5/315
H01H 13/10
H01H 19/08
H01H 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(20)に組み合わされる、回転軸を画定する回転センサアセンブリ(300)であって、
(i)第1回転センサ部(320)を備える第1部分(310)であって、前記第1回転センサ部は、複数の個別の導電センサ領域(322,323)がパターン状に配置された表面を有する、第1部分(310)と、
(ii)前記第1部分に対して回転可能に配置された第2回転センサ部(330)を備える第2部分(339)であって、前記第2回転センサ部は、前記第1回転センサ部の導電センサ領域と接触可能な複数の接触構造(332,333)を備え、
前記接触構造(332)の少なくとも一部分は、前記回転センサの前記第1部分と前記第2部分が相対して回転するときに異なるセンサ領域に係合して接続するように構成され、形成された接続は、前記第1部分と前記第2部分との間の回転位置関係を示し、
前記接触構造の少なくとも1つは、前記第1部分に対して軸方向に移動可能な作動可能接触構造(333)であって、前記作動可能接触構造(333)は、センサ領域と接触する接続位置と、センサ領域と接触していない切断位置とを有する、第2部分(339)と、
(iii)少なくとも1つの作動可能接触構造を前記接続位置と前記切断位置との間において軸方向に移動させるアクチュエータ手段(334)と
を備え、
前記第1部分は、前記ハウジングに対して回転可能に配置され、
前記第2部分は、前記ハウジングに対して回転不能に配置され、
前記第1部分および前記第2部分の少なくとも1つは、前記ハウジングに対して軸方向に移動可能に配置され、
前記アクチュエータ手段は、前記ハウジングと前記第2部分との間に配置される、
回転センサアセンブリ。
【請求項2】
前記第2回転センサ部は、金属性ディスク部材(330)で構成され、前記金属性ディスク部材(330)は、前記接触構造を形成する複数の一体形成された可撓性スイッチアーム(332,333)を備え、前記可撓性スイッチアーム(333)の少なくとも1つは、軸方向に移動可能であり、これによって前記作動可能接触構造を形成する、請求項1に記載の回転センサアセンブリ。
【請求項3】
形成された接続のパターンに基づいて前記第1部分と前記第2部分との間の回転位置関係を決定する電子回路(340)をさらに備える、請求項1または2に記載の回転センサアセンブリ。
【請求項4】
前記アクチュエータ手段は、前記ハウジングと前記可撓性スイッチアームとの間に形成される機械的接続の形態であり、前記ハウジングと前記可撓性スイッチアームとの間の相対的軸方向移動により、スイッチ接点が前記接続位置と前記切断位置との間で移動する、前記ハウジング(220)と組み合わされる請求項2に記載の回転センサアセンブリ。
【請求項5】
請求項3に記載の回転センサアセンブリ(300)を備える薬剤送達装置(100)であって、
ハウジング(220,121)と、
軸方向に変位可能なピストンと遠位出口部分とを備える薬剤入りカートリッジ(180)または薬剤入りカートリッジ収納手段と、
薬剤放出手段であって、
放出される薬剤の用量をユーザ側で設定可能な用量設定手段(125)、
カートリッジの前記ピストンを遠位方向へ移動させることにより、前記カートリッジから薬剤を放出させるための軸方向に変位可能なピストンロッド(128)、
設定および/または放出された用量に対応して回転する回転部材(210)、及び
前記薬剤放出手段を作動させることにより、設定された用量の薬剤を放出するための軸方向に移動可能な作動部材(127)を備える薬剤放出手段と
を備え、
前記第1回転センサ部と前記第2回転センサ部は、薬剤の用量の設定および/または放出の間に相互に回転し、
前記少なくとも1つの作動可能接触構造(333)は、前記作動部材が軸方向に移動した場合に、第1の位置と第2の位置の間で作動する、薬剤送達装置。
【請求項6】
前記回転センサアセンブリの前記第1部分(310)は、前記回転部材に取り付けられて共転し、前記第1部分は電子回路(340)を備え、前記電子回路(340)は、設定および/または放出された用量に対応する前記第1部分と前記第2部分との間の回転移動の検出に基づいて、放出された薬剤の量を推定する、請求項5に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記回転部材(210)は、初期位置と作動位置との間で軸方向に移動するように構成され、前記回転センサアセンブリの前記第1部分(310)は、前記回転部材と共に軸方向に移動するように取り付けられている、請求項5または6に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記第2部分(335)は、前記回転部材と共に軸方向に移動するように取り付けられている、請求項7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記電子回路は、前記薬剤放出手段によってカートリッジから放出された薬剤の用量のログを作成するためのロギング手段を含み、前記用量は、薬剤の用量の設定および/または放出の際に、前記第1回転センサ部と前記第2回転センサ部との間の相対回転に基づいて算出される、請求項5から8のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記第1部分は、ディスプレイ(370,530)を備える、請求項5から9のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記ディスプレイは、前記第1部分の回転中はオフにされる、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記電子回路は、保存されたデータを外部受信機へ送信するための送信機手段をさらに備える、請求項5から11のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
薬剤送達装置(100)であって、
ハウジング(121)と、
軸方向に変位可能なピストンと遠位出口部分とを備える薬剤入りカートリッジ(180)または薬剤入りカートリッジ収納手段と、
薬剤放出手段であって、
放出される薬剤の用量をユーザ側で設定可能にする用量設定手段(125)、
前記カートリッジの前記ピストンを遠位方向へ移動させることにより、前記カートリッジから薬剤を放出させるための軸方向に変位可能なピストンロッド(128)、
設定および/または放出された用量に対応して回転する回転部材(210)、及び
前記薬剤放出手段を作動させることにより、設定された用量の薬剤を放出させるための軸方向に移動可能な作動部材(127)を備える薬剤放出手段と、
設定および/または放出された用量を検出するためのセンサ手段(320,330,340)であって、
(i)第1回転センサ部(320)を備える第1部分(310)であって、前記第1回転センサ部は、複数の個別の導電センサ領域(322,323)がパターン状に配置された表面を有する、第1部分(310)と、
(ii)前記第1部分に対して回転可能に配置された第2回転センサ部(330)を備える第2部分(339)であって、前記第2回転センサ部は、前記第1回転センサ部の導電センサ領域と接触可能な複数の接触構造(332,333)を備え、
前記接触構造(332)の少なくとも一部分は、前記回転センサの前記第1部分と前記第2部分が相対して回転するときに異なるセンサ領域に係合して接続するように構成され、形成された接続は、前記第1部分と前記第2部分との間の回転位置関係を示し、
前記接触構造の少なくとも1つは、前記第1部分に対して軸方向に移動可能な作動可能接触構造(333)であって、前記作動可能接触構造(333)は、センサ領域と接触する接続位置と、センサ領域と接触していない切断位置とを有する、第2部分(339)と
を備え、
前記第1回転センサ部と前記第2回転センサ部は、薬剤の用量の設定および/または放出の間に相互に回転し、
前記少なくとも1つの作動可能接触構造は、前記作動部材が軸方向に移動した場合に、第1の位置と第2の位置の間で作動する、センサ手段(320,330,340)とを備え、
前記第1部分は、前記ハウジングに対して回転可能に配置され、
前記第2部分は、前記ハウジングに対して回転不能に配置され、
前記第1部分および前記第2部分の少なくとも1つは、前記ハウジングに対して軸方向に移動可能に配置され、
前記アクチュエータ手段は、前記ハウジングと前記第2部分との間に配置される、
薬剤送達装置。
【請求項14】
作成された接続のパターンに基づいて前記第1部分と前記第2部分との間の回転位置関係を決定するための電子回路(340)をさらに備え、前記電子回路は、前記薬剤放出手段によってカートリッジから放出された薬剤の用量のログを作成するためのロギング手段を備え、
前記用量は、薬剤の用量の設定および/または放出の際に、前記第1回転センサ部と前記第2回転センサ部との間の相対回転に基づいて算出される、
請求項13に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転移動と軸方向移動の両方についての情報を取得するための装置、アセンブリ、およびシステムに関する。特定の態様では、本発明は、薬剤送達装置における電子的な用量データ取得に関する問題に対処する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に糖尿病の治療のために、薬剤送達装置からインスリンを送達する場合を説明しているが、これは、本発明の使用例に過ぎない。
【0003】
薬剤や生物剤の自己投与が必要な患者の生活は、薬剤注入装置により大幅に改善されてきた。薬剤注入装置には様々な形態があり、注入手段を有するアンプルと大差ない、手軽な使い捨て装置のようなものから、あらかじめ充填されたカートリッジで使用するのに適した耐久性のある装置のようなものがある。形状や種類にかかわらず、薬剤注入装置は、注射剤や生物剤を自己投与する患者の支援に大きく役立ってきた。薬剤注入装置は、自己投与ができない人に注入可能な薬剤を投与するうえで介護者にも重宝である。
【0004】
糖尿病の管理では、正しい時刻に必要な適量のインスリン注射を行うことが肝要である。すなわち、処方されたインスリン療法を順守することが重要である。処方した用量パターンの有効性を医療スタッフ側で判断できるように、糖尿病患者は、各注射の用量と時刻の記録をつけるように促される。しかし、このような投与日誌は、通常は手書きのノートに記録されるため、記録された情報をデータ処理コンピュータへ容易にアップロードすることができない。さらに、患者のつけた事象のみが記録されていることから、患者の疾病を治療するうえで何らかの価値を記録情報にもたせるような場合、患者が忘れずに各注入を記録することがノートブックシステムでは必要となる。投与日誌から欠落したあるいは誤った記録は、投与履歴の紛らわしい事態を生み出し、ひいては、医療関係者が今後の薬物療法を決定する際に、惑わせる原因となる。したがって、投与情報の記録は薬物送達システム側で自動化することが望ましい。
【0005】
これに関して、用量の監視/取得機能を有する種々の注入装置が提案されている。例えば米国特許出願公開第2009/0318865号明細書、国際公開第2010/052275号および米国特許第7,008,399号明細書を参照されたい。しかし、今日のほとんどの装置には付いていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0318865号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/052275号
【特許文献3】米国特許第7,008,399号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、本発明の目的は、薬剤送達装置の使用に係る用量データの検出や保存を費用効率よく、確実に行えるようにした薬剤送達装置、その構成要素およびアセンブリを提供することである。さらなる目的は、この種の入力を持つその他の用途において使用可能なこの種の構成要素およびアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示では、実施形態および態様を説明するが、これらは、上記目的の1つ以上に、あるいは、以下の開示および例示的な実施形態の説明から明らかな目的に対処している。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様では、第1部分と第2部分を備えるセンサアセンブリが提供される。第1部分は第1回転センサ部を備え、第1回転センサ部の表面には、複数の個別の導電センサ領域がパターン状に配置され、第2部分は第2回転センサ部を備え、第2回転センサ部は第1部分に対して回転可能に配置されて、回転軸が画定される。第2回転センサ部は、第1センサ回転部の導電センサ領域と接触可能な複数の接触構造を含む。接触構造の少なくとも一部は、回転センサの第1部分と第2部分が相対して回転する際に異なるセンサ領域に係合して接続するように構成され、形成された接続は、第1部分と第2部分との間の回転位置関係を示す。接触構造のうち少なくとも1つは、第1部分に対して(回転軸によって画定される)軸方向に移動可能な作動作動可能接触構造である。作動可能接触構造には、センサ領域と接触する接続位置と、センサ領域と接触していない切断位置とがある。センサアセンブリはさらにアクチュエータ手段を備え、アクチュエータ手段により、少なくとも1つの作動可能接触構造を接続位置と切断位置との間で軸方向に移動させる。「作動可能接触構造が第1部分に対して軸方向に移動可能である」と定義する場合、この定義は、2つの構造のうちいずれかまたは両方が基準に対して移動することを含意している。
【0010】
このような構成をとることにより、回転センサアセンブリは、所与の装置に費用効率よく組み込み可能となる。この場合、回転センサと軸方向の作動接触構造との組み合わせをコンパクトで費用効率の良く実施することが望ましく、例えば医療、研究所または自動車分野など、様々な技術分野における電気・電子機器向けに利用できる。軸方向に作動可動な接触構造がもたらす接触形態は、略して「軸方向スイッチ」ということができる。
【0011】
第2回転センサ部は金属性ディスク部材の形態であってもよく、金属性ディスク部材は接触構造を形成する複数の一体形成された可撓性アームを備え、可撓性アーム(333)の少なくとも1つは、軸方向に移動可能であって作動可能接触構造を形成する。センサアセンブリに備えた電子回路により、接触位置のパターンに基づいて第1部分と第2部分との間の回転位置関係を決定するようにしてもよい。回転の決定は、増分回転(計数式)での検出方式、所与の角度範囲内での絶対的角度決定方式または全回転の範囲での完全に絶対的角度決定方式のいずれであってもよい。回路は、一般的にはマイクロプロセッサ形式のプロセッサ、マイクロコントローラまたはCPUを含み、汎用的な設計、または実際の装置に合わせた特定の設計であってもよい。
【0012】
例示的な実施形態では、センサアセンブリはハウジングと組み合わせて提供され、第1部分はハウジングに対して回転可能に配置され、、第2部分はハウジングに対して非回転に配置され、第1部分と第2部分のうち少なくとも1つはハウジングに対して軸方向に移動可能に配置され、アクチュエータ手段は、ハウジングと第2部分との間に配置される。アクチュエータ手段は、ハウジングと前記可撓性スイッチアームとの間に形成される機械的接続の形態であってもよく、これにより、ハウジングと可撓性スイッチアームとの間の相対的軸方向移動は、スイッチ接点を接続位置と切断位置との間で移動させる。
【0013】
例示的な応用例では、回転センサアセンブリを、回転部材を備える薬剤送達装置に費用効率よく確実に組み込むことができる。この回転部材は、設定および/または放出された用量に対応して回転し、装置の動作中に軸方向に変位する構成要素を備える。軸方向の変位は、設定または放出された用量の検出に対して、装置の状態の変化量を示す。例えば、軸方向の移動は、薬剤放出機構を解放させた解放部材の作動に関連することがある。センサアセンブリは、その他の装置に同様な効果で実装可能であり、その場合、費用効率のよい方法で回転および軸方向の検出を行うセンサが適切となる。
【0014】
これに関連して、例示的な実施形態では、上述のセンサアセンブリを備えた薬剤送達装置が提供される。薬剤送達装置は、さらに、ハウジングと、薬剤入りカートリッジまたは薬剤入りカートリッジ収納手段と、薬剤放出手段とを備え、カートリッジは、軸方向に変位可能なピストンと遠位出口部分を有する。薬剤放出手段は、放出される薬剤の用量をユーザ側で設定可能にする用量設定手段と、カートリッジのピストンを遠位方向へ移動させて、カートリッジから薬剤を放出させるための、軸方向に変位可能なピストンロッドと、設定および/または放出された用量に対応して回転する回転部材と、薬剤放出手段を作動させて、設定された用量の薬剤を放出するための、軸方向に移動可能な作動部材とを備える。このような構成では、第1回転センサ部と第2回転センサ部は、薬剤の用量の設定および/または放出の際に互いに回転し、作動可能接触構造は、作動部材が軸方向へ移動した場合に、自身の2つの位置の間で作動する。
【0015】
センサアセンブリの第1部分は、回転部材に取り付けられて共転してもよく、第1部分は電子回路を備えてよく、電子回路は、設定および/または放出された用量に対応する第1部分と第2部分との間の回転移動の検出に基づいて、放出された薬剤の量を推定する。回転部材は、初期位置と作動位置との間で軸方向に移動するように構成してもよい。センサアセンブリの第1部分は、回転部材と共に軸方向に移動するように取り付けられる。また、第2部分を、回転部材と共に軸方向に移動するように取り付けてもよい。このような設計では、本発明のセンサアセンブリによって、回転部材に固有の動きを単純かつ効果的に検出することができる。
【0016】
電子回路は、薬剤放出手段によってカートリッジから放出された薬剤の用量のログを作成するロギング手段を備えてもよく、この用量は、薬剤の用量の設定および/または放出の間に、第1回転センサ部と第2回転センサ部との間の相対回転に基づいて算出される。電子回路は、保存されたデータを外部受信機へ送信するための送信機手段をさらに備えてもよい。代替的に、またはこれに加えて、第1部分は、ディスプレイを含んでもよく、ディスプレイは、第1部分の回転中はオフにされるように制御されてもよい。
【0017】
本発明の特定の実施形態では、薬剤送達装置が、ハウジングと、薬剤入りカートリッジまたは薬剤入りカートリッジ収納手段と、薬剤放出手段とを備えて提供され、カートリッジは、軸方向に変位可能なピストンと遠位出口部分を有する。薬剤放出手段は、放出される薬剤の用量をユーザ側で設定可能にする用量設定手段と、カートリッジのピストンを遠位方向へ移動させて、カートリッジから薬剤を放出させるための、軸方向に変位可能なピストンロッドと、設定および/または放出された用量に対応して回転する回転部材と、薬剤放出手段を作動させて、設定された用量の薬剤を放出するための軸方向に移動可能な作動部材とを備える。薬剤送達装置は、設定および/または放出された用量を検出するためのセンサ手段をさらに備え、センサ手段は、
(i)第1回転センサ部を備える第1部分を備え、第1回転センサ部は、複数の個別の導電センサ領域がパターン状に配置された表面を有し、(ii)第1部分に対して回転可能に配置される第2回転センサ部を備える第2部分を備え、第2回転センサ部は、第1センサ回転部の導電センサ領域と接触可能な複数の接触構造を備える。接触構造の少なくとも一部は、回転センサの第1部分と第2部分が相対して回転する際に異なるセンサ領域に係合して接続するように構成され、形成された接続は、第1部分と第2部分との間の回転位置関係を示す。接触構造のうち少なくとも1つは、第1部分に対して軸方向に移動可能な作動可能接触構造であり、作動可能接触構造は、センサ領域と接触する接続位置と、センサ領域と接触していない切断位置とを有する。第1回転センサ部と第2回転センサ部は、薬剤の用量の設定および/または放出の間に互いに回転し、少なくとも1つの作動可能接触構造は、作動部材が軸方向へ移動した場合に、自身の2つの位置の間で作動する。
【0018】
電子回路は、形成された接続のパターンに基づいて第1部分と第2部分との間の回転位置関係を決定するように構成されてもよく、電子回路は、薬剤放出手段によってカートリッジから放出された薬剤の用量のログを作成するためのロギング手段を含んでよく、この用量は、薬剤の用量の設定および/または放出の間に、第1回転センサ部と第2回転センサ部との間の相対回転に基づいて算出される。薬剤送達装置は、上述のような追加の特徴を含んでもよい。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」は、任意の流動可能な医薬製剤を包含し、この製剤は、カニューレまたは中空針などの送達手段を制御された態様で通過することが可能で、1つ以上の薬剤を含有する液体、溶液、ゲルまたは微細懸濁物などである。薬剤は、単一の容器から、単一の薬剤化合物あるいは予混合または共調合された複数の薬剤化合物の薬剤であってもよい。代表的な薬剤は、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP−1含有薬剤、およびそれらの誘導体)、プロテインおよびホルモン、生物学的な誘導剤または活性剤、ホルモンおよび遺伝子系薬剤、栄養剤、および(調剤された)固体または液体の形態の両方におけるその他の物質などの医薬品を含む。例示的な実施形態の説明において、インスリンおよびGLP−1含有薬剤の使用を参照し、この薬剤は、それらの類似体および1つ以上のその他の薬剤との組み合わせを含む。
【0020】
以下では、図面を参照して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】薬剤カートリッジを搭載して前方装填された、薬剤送達装置を示す。
【
図2】薬剤カートリッジを搭載することなく前方装填された、薬剤送達装置を示す。
【
図3】ロギングモジュールを備える薬剤送達装置サブアセンブリの分解図である。
【
図5】
図3のモジュールの第1回転センサ部を示す。
【
図6】
図3のモジュールの第2回転センサ部を示す。
【
図7】組立状態の
図4のロギングモジュールを示す。
【
図8】組立状態の
図3のサブアセンブリの横断面図である。
【
図9A】異なる動作状態におけるロギングモジュールの軸方向スイッチの動作を示す。
【
図9B】異なる動作状態におけるロギングモジュールの軸方向スイッチの他の動作を示す。
【
図9C】異なる動作状態におけるロギングモジュールの軸方向スイッチのその他の動作を示す。
【
図10】ロギングモジュールを備え、スマートフォンと通信する薬剤送達ペンを示す。
【0022】
図面において、同様の構造は主に同様の参照番号によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の「上側」および「下側」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」のなどの用語、または類似の相対的な表現が使用される場合、これらは、添付の図面を参照するに過ぎず、必ずしも実際の使用状況を参照するものではない。示されている図面は概略図であり、そのため、異なる構造の構成およびそれらの相対的寸法は、例示の目的を果たすように意図されているに過ぎない。部材または要素の用語が所定の構成要素のために使用される場合、一般的に、説明した実施形態において構成要素は単一の構成要素であることを示しているが、同じ部材または要素は従属部品を代替的に含むことができ、同様に、記載の構成要素の2つまたはそれ以上を、例えば単一の射出成形部品として製造される単一の構成要素として提供することができる。用語「アセンブリ」および「サブアセンブリ」は、所定の組立手順の間に、記載の構成要素を、必ず単一または機能的アセンブリまたはサブアセンブリを提供するように組み立てることができるが、単に、機能的に、より密接に関連しているとしてグループ化された構成要素を説明するために使用されることを意味するものではない。
【0024】
図1を参照して、ペン状の薬剤送達装置100を説明する。装置は、本発明の実施形態が使用されることを意図する、設定および/または放出された薬剤の用量に対応して回転するのに適した回転部材を備える装置などと組み合わせた装置の例を提供する、「包括的な」薬剤送達装置を表している。
【0025】
より具体的には、ペン装置は、キャップ部(図示せず)と、近位本体を有する主部、または薬剤放出機構が配置または一体化されるハウジング121を含む駆動アセンブリ部120と、近位部分に取り付けられたカートリッジホルダ110によって、遠位針穿通可能セプタムを含む薬剤入り透明カートリッジ180を所定位置に配置および保持することができる遠位カートリッジ部とを備え、カートリッジホルダは、カートリッジの一部分を調べることを可能にする開口部を有する。カートリッジは、例えばインスリン、GLP−1または成長ホルモン製剤を含んでもよい。装置は、ユーザが、遠位受入開口部を介してカートリッジホルダに新しいカートリッジを装填するように設計されており、カートリッジは、放出機構の一部を形成するピストンロッド128によって駆動されるピストンを備える。最近位の回転可能用量リング部材125は、表示窓126に示される所望の用量の薬剤を手動で設定するのに役立ち、薬剤はその後、解放ボタン127が作動するときに放出され得る。薬剤送達装置において具体化された放出機構の型に応じて、放出機構は、用量設定中に張り、その後、解放ボタンが作動する場合に解放されてピストンロッドを駆動するバネを含んでもよい。また、放出機構は完全に手動であってもよく、ここでは、用量リング部材および解放ボタンが、設定用量サイズに対応して用量設定中に近位方向に移動し、その後、ユーザによって遠位方向に移動されて設定用量を放出する。カートリッジは、針ハブ装着部182の形状の遠位連結手段を備え、針ハブ装着部182は、図示の例において、針アセンブリの対応ハブの雌ねじを係合するのに適した雄ねじ185を有する。代替実施形態では、ねじ山をその他の接続手段、例えばバヨネットカップリングと組み合わせるか、あるいは置き換えてもよい。
【0026】
カートリッジホルダは、カートリッジを受け入れるのに適した遠位開口部を含む。より具体的には、カートリッジホルダは、把持手段の移動を制御して、これにより、カートリッジを把持および保持するように構成された把持肩部145を開閉するために、ユーザが操作する外側回転可能管状部材170を含む。
図2は、取り除かれたカートリッジおよびロックが解除された「開放」位置における把持肩部を有する装置を示しており、ここで、カートリッジは取り除かれて新たに挿入されてもよい。
【0027】
図示の通り、
図1は、前倒し型の薬剤送達装置を示しており、ここで、カートリッジは、遠位開口部を介して、装置の主部に取り外し不能に取り付けられるカートリッジホルダへ挿入されるが、薬剤送達装置は、装置の主部から取り除かれるのに適したカートリッジホルダを代替的に備えてもよく、ここで、カートリッジは、近位開口部を介して受け入れられて取り除かれる。
【0028】
図3を参照して、薬剤送達装置用のサブアセンブリ200を説明する。サブアセンブリは、薬剤送達装置の部品と組み合わせたロギングモジュールを含み、ロギングモジュールは、ロギングユニットの組み込みおよび操作に直接的かつ機能的に関連している。より具体的には、サブアセンブリは、電子制御されたロギングモジュール300と、内側管状部材210と、略円筒状内側ハウジング材220と、ダイヤルリング部材230と、ボタンリング240と、ボタン窓241とボタンバネ242とを備えるボタンアセンブリとを備える。内側ハウジング材は、薬剤送達装置の外装を提供する外側ハウジング材の内側に配置されるように構成される。
【0029】
ロギングモジュール300の異なる構成要素は、
図4に示されている。より具体的には、ロギングモジュールは、遠位方向に延びる管部312を含む樽型の近位主部311を有するハウジング材310と、取付箔部材313と、第1コネクタ329が取り付けられるディスク状の第1回転センサ部320と、ディスク状の第2回転センサ部330と、側方突出部337を含む回転センサホルダ339と、多層スタック状に折り畳まれ、第2コネクタ349が取り付けられるフレキシブルPCB340と、バッテリ345およびバッテリクリップ346と、多数の取付リング350、351および352と、アンテナ360と、LCD370と、LCDフレーム371とを備える。あるいは、OLEDまたは他の望ましい表示技術を使用してもよい。PCBには、例えばマイクロコントローラ、ディスプレイドライバ、メモリおよび無線通信手段などの電子回路部品が取り付けられている。以下により詳細に述べるように、第1回転センサ部320は、複数の弧状に形成されたディスクリート接触領域を含み、第2回転センサ部330は、複数の可撓性コンタクトアームを含み、そのうち1つは横方向に延びる突出部334を有する軸方向スイッチを提供する。
【0030】
図5は、回路基板材料から形成されるリング状のディスクを含む第1回転センサ部320を示し、このディスク上では、多数の接触領域(またはセグメント)がめっきされ、3つの同心リングである、内側リング、中間リング、外側リングを形成する。図示の実施形態では、内側リングは、グランド(つまり基準)として使用される単一の接触セグメント321であり、中間リングは、一定の円周距離で間に配置される4つのディスクリート弧状位置接触セグメント322を含み、外側リングは、わずかな周方向の間隔で間に配置される3つのディスクリート弧状スイッチ接触セグメント323を含み、セグメントは、ディスクの背面(近位面)に取り付けられた多端子コネクタ329の所与の接触端子に個別に接続される。所定のセグメントが端子に接続されていない場合、受動セグメントが考慮されてもよい。
【0031】
図6に示す第2回転センサ部330は、近位方向に突出した多数の可撓性弧状コンタクトアームを含む金属ディスク状であり、各コンタクトアームの遠位端は、所定の接触セグメントとガルバニック接続するのに適した(図中、下方を向いた)ドーム状の接触点335を含む。コンタクトアームは、第1回転センサ部の3つの同心リングに対応して配置される。より具体的には、第2回転センサ部は、2つの内側コンタクトアーム331と、3つの中間コンタクトアーム332と、2つの外側コンタクトアーム333とを含む。
【0032】
このようにして、所定の一対のコンタクトアームは、2つの接触セグメントの間で電気的に接続するのに適した複合接触構造を提供する。図示の実施形態では、内側同心リングの単一のグランド接触セグメント321と接触するように2つの内側グランドコンタクトアーム331が提供され、中間同心リングの4つの位置接触セグメント322との接触をもたらすように3つの位置コンタクトアーム332が提供され、外側同心リングの3つのスイッチ接触セグメント323と接触するように2つの外側スイッチコンタクトアーム333が提供され、外側スイッチコンタクトアームは、横方向に延びる突出部334を支持する。実際に、中間コンタクトアームおよび外側コンタクトアームのために、2つのセンサ部分の間の回転位置関係は、どの接触セグメントが所与のコンタクトアームと係合するかを決定する。2つの外側スイッチコンタクトアーム333は、軸方向のスイッチに冗長性をもたらすために使用される実施形態に示されるが、これらのアームを、外側リングのスイッチ接触セグメントと協働して、さらに回転情報を提供するために使用することができる。
【0033】
第2回転センサ部は、回転センサホルダ339上で突出部337と係合して両者間の回転移動を防ぐのに適した把持部336をさらに含む。
【0034】
図示の実施形態では、中間アームおよび接触セグメントは、回転センサの接点を提供する一方で、外側アームおよび接触セグメントは、以下により詳細に説明するような軸方向のスイッチを提供する。
【0035】
4つの位置接触セグメント322は、グランドセグメントと組み合わせて、グランドコンタクトアーム331および任意の位置コンタクトアームによって接続されない場合の「オフ」状態と、グランドコンタクトアームおよび所与の位置コンタクトアームによって接続される場合の「オン」状態とを有する4つの位置接点を表す。
【0036】
所定の回転位置のために、電気的に接続されたアームは、所定の一対の接触セグメント間で多数の「オン」のガルバニック接続をもたらし、その他の切断領域は、「オフ」の接触状態を表す。図示の回転センサは15度の解像度、つまり、全回転に対して24段階を有し、これによって、個々の位置の回転接点がオンおよびオフとなる15度の回転毎に既定の変化がもたらされる。図示の接触セグメントの各々は電子回路340に接続されているので、2つの回転センサ部の間の相対回転位置関係を決定することが可能である。
【0037】
図7は、組立状態のロギングモジュール300を示している。取り付けられた部品およびアンテナを含むフレキシブルPCB340は、取付リング350、351および352と共にサンドイッチ構成で取り付けられ、例えば接着または接着剤を介して必要な間隔および取り付けを提供し、バッテリ345は、バッテリクリップ346を介してPCBに取り付けられる。PCBサンドイッチは、ハウジング311のボタン部分内の遠位開口部に通される「トング」と共に取り付けられ、組立て中に接着取付箔部材325(
図4参照)と共に適所に保持される。第1回転センサ部320は、管部312に非回転に取り付けられ、かつ、コネクタ329および349を介してPCBに接続される。第2回転センサ部330は、回転センサホルダ339に非回転に取り付けられ、かつ軸方向に固定され、回転センサホルダ339は、管部312に回転自在に取り付けられるが軸方向に固定される。この配置によって、可撓性回転センサアームが接触面と摺接して保持される。LCD370は、PCBサンドイッチの上部に取り付けられると同時に、例えば溶接によってハウジングに永久に取り付けられた表示フレーム371によって、ハウジングバレル内に適所に保持される。図示の通り、このように、電子ロギングモジュールが遠位方向に配置された回転可能センサ部を含んで提供される。
図4に示すように、ハウジング主部311は、多数の近位方向に突出した歯部314および周方向に隣接した溝部315を有する周状遠位フランジ313を含む。管部312は、内側管状部材210内の対応する開口部211を係合するのに適した遠位スナップコネクタ316を備える。
【0038】
図8は、組立状態のサブアセンブリ200の横断面図を示す。「サブアセンブリ」の用語は、図示の必要な部分が図示のサブアセンブリを提供するために組み立てられ、かつ、所与の薬剤送達装置のための組立工程において使用されてもよいことを意味するものではない。これに対して、
図7に示すロギングモジュールを、「実際の」サブアセンブリとして図示の形態で提供してもよい。
図3および
図4に示す部品を参照して、内側管状部材210は、ロギングモジュールの遠位方向管部312に回転接続され、かつ、軸方向に係止される。この配置は、主に成形およびその後の組立を目的とする。ダイヤルリング部材230は、ハウジング材220の近位部分に取り付けられ、ここでは、自由に回転することが可能であるが軸方向には移動しない。ダイヤルリング部材230は、複数の遠位方向を向いた歯部を有する内周連結フランジ231を含み、このフランジ231は、ロギングモジュールの近位方向を向いた歯部314を係合し、これにより係合中の2つの構成要素を回転係止するのに適している。ハウジング材220は、それぞれ回転センサホルダの側方突出部337および軸方向スイッチの側方突出部334を係合するのに適した、第1開口部または切欠き部および第2開口部または切欠き部221、222(
図3参照)を含み、これは、第2回転センサ部とハウジングとの間の非回転係合を確実にし、さらに軸方向の移動を可能にする。
【0039】
窓241が取り付けられたボタン240は、周状溝部315と共に把持係合でモジュールハウジングに取り付けられ、これは、ボタンがモジュールハウジングに対して回転することを可能にする。軸方向に圧縮されたボタンアセンブリのバネ242は、モジュールハウジングとダイヤルリング部材との間の周方向の隙間に配置され、かつ、ボタンリングの遠位方向を向いたリング部分と連結フランジの近位方向を向いた部分との間の適所に保持される。このようにして、バネは、連結フランジを介して、ダイヤルリング部材230と非回転係合するように近位方向へモジュールを付勢する軸力を提供するが、遠位方向に向けられた力が、ボタンを介してモジュールに付与される場合、モジュールを遠位方向へ移動させ、これによりダイヤルリング部材との回転連結部の外側へ移動させることができる。これは、ロギングモジュールの主ハウジングが、ダイヤルリング部材に対して回転することを可能にする。
【0040】
上述の通り、図示の回転センサは、軸方向スイッチを含み、このスイッチは、(本明細書では)ハウジング材220に対するロギングモジュールの軸方向位置を検出するのに役立つ。より具体的には、
図9Aは、ボタンバネ242によって初期近位位置へ付勢されるロギングモジュール300を示し、
図9Bは、距離H
1だけ遠位方向へ移動する中間位置のロギングモジュールを示し、
図9Cは、距離H
2だけ遠位方向へ移動する遠位作動位置のロギングモジュールを示す。3つの全ての状態において、軸方向スイッチの側方突出部334は、対応するハウジング開口部221内に位置決めされ、回転センサホルダ339を介してハウジングに回転係止される。図示の通り、
図9Aでは、スイッチの突出部334は開口部の近位縁と係合し、接触点335を有する可撓性スイッチアーム333は、これによって第1回転センサ部320との接触の外に保持される。
図9Bでは、スイッチの突出部334は依然として開口部の近位縁と係合するが、ロギングモジュールは遠位方向へ移動され、これにより第1回転センサ部320が移動されてスイッチアーム333と接触する。これは、軸方向スイッチをロギングモジュール回路によって検出可能な「オン」状態にする。
図9Cでは、ロギングモジュールは、自身の遠位作動位置までさらに遠位方向へ移動される。スイッチの突出部334は、開口部の近位縁との係合から離れて移動され、軸方向スイッチは、こうして「オン」状態のまま残る。例示的な実施形態では、異なる位置の間の軸方向の移動は、例えば1.5mmであってもよく、これは、投与機構が実際に解放される前に、放出モードが軸方向スイッチによって安全に登録されることを確実にする。軸方向スイッチはまた、用量が全く設定されない場合、以下に参照するように、ロギングモジュールの機能を制御するために使用されてもよい。
【0041】
モジュール300は別として、サブアセンブリ200の部分は、
図3に示すように、本発明の実施形態の実施に関連する特性を有する薬剤放出機構の「包括的」部分を表している。より具体的には、図示のモジュール300は、ハウジングと、ユーザが放出される薬剤の用量を設定することを可能にする用量設定手段と、設定および/または放出された用量に対応して回転するのに適した回転部材とを有する薬剤送達装置において実装するのに適している。図示のサブアセンブリでは、内側管状部材210は、「包括的」回転部材を表している。
【0042】
本発明の一部ではないが、以下では、図示の内側管状部材210を統合することができる薬剤放出機構の簡単な説明を記載する。放出する用量を設定するとき、ユーザはダイヤルリング部材230を回転させ、これにより、内側管状部材210を所望の用量を表す所定の回転位置まで回転させる。これは、管状部材周りに配置され、ハウジングの近位部分に対する近位端に、および、管状部材の遠位部分に対する遠位端に取り付けられたねじりバネ部材を張る。内側管状部材の遠位端に配置されたラチェット継手は、今回、設定位置で回転付勢された管状部材を保持するのに役立つ。目盛ドラムは、管状部材に連結されて管状部材と共転する。目盛ドラムは、ハウジング(例えば
図3のねじ山226)を含むねじ接続部を有し、これにより、らせん状に配置された一連の数値が、ハウジング(例えば
図3の開口部225)内の窓に対して移動し、示される数は現在の設定用量を示す。設定および装填機構を解放するために、ユーザは近位解放ボタンを押し、これにより、内側管状部材が遠位方向へ移動される。この動作によって、(解放部材として機能する)ラチェット継手が解放され、内側管状部材は、直接的または間接的に、回転駆動部材と係合するように移動され、駆動部材はピストンロッドを回転させるように配置され、ハウジングとの螺合が原因で遠位方向へ移動し、これにより、用量を設定する。管状部材は逆方向に回転し、これにより、ピストンロッドを遠位方向に駆動するので、目盛ドラムもまた、逆方向に回転し、かつ、管状部材と共に初期の「ゼロ」位置に達する。この種の機構は、例えば、インスリン製剤の注射用でNovoNordiskから市販されている、FlexTouch(登録商標)薬剤送達ペン装置から公知である。
【0043】
図示の通り、記載の例示的な機構では、(ロギングモジュール300の主部が強固に取り付けられた)内側管状部材210は、所与の用量の設定中および放出中にハウジング220に対して回転する。第2回転センサ部330はハウジングに回転係止されるので、2つの回転センサ部320および330もまた、所与の用量の設定中および放出中に互いに対して回転する。これは、例示的な機構に過ぎないので、所定の部材が設定または放出中にのみ回転するその他の機構を想定することができる。
【0044】
これは、図示の実施形態では、ロギングモジュールが、設定用量および放出用量に対応する両方向の回転を検出するのに適していることを述べている。図示の実施形態では、ロギングモジュールは軸方向スイッチをさらに備え、このスイッチは、モジュールが、機構は設定モードまたは放出モードのいずれにあるかを検出することを可能にするが、これは任意の特徴である。図示の実施形態では、コードパターンは、所与の製剤と送達装置の組み合わせが1単位の(IU)インスリンに対応し得る、回転15度の段階「解像度」を有する。実際に、2倍の濃度を有する製剤のために、7.5度の回転解像度は、1IUのインスリンに対応する用量段階を登録する必要がある。回転接点を含む回転センサおよび関連する電子回路を、例えば各15度の増分を計数することができる多数の設計を使用して回転量を検出するように設計してもよく、あるいは、所与の位置を、120または360度の区域内で完全に検出してもよく、計数器は、完了した区域の数を登録する。このような計数器を、
図5および
図6を参照して説明したスイッチアームおよび外側接触領域を使用して実現することができる。「計数」設計では、第1の増分が登録されていることが重要であるが、現代の電子機器を低電力の「オン」状態で操作することができ、通常、「スリープ」状態から「オン」状態への状態のウェイクアップの変化に関連する遅延を回避する。
【0045】
例示的な実施形態では、回転センサは、設定の間の段階の数を計数し、放出の間の段階の数をカウントダウンするように設計され、放出段階は、放出される用量としてログに登録される。両方の方向に計数することで、ロギングモジュールの正確な登録および機能を高度に確保することができる。特に大量の薬剤の所定の用量は、一定の休止と共に分割かつ注入されてもよく、ロギングモジュールは、所定の時間窓内、例えば1用量として15分以内で放出された、2つの投与量を記録するようにプログラムされてもよい。
【0046】
ロギングモジュールは、異なる方法でデータを保存し、示すように構成されてもよい。多くのユーザにとって、最終投与からの時間、およびその用量のサイズは、最も重要な値である。その他ユーザおよび/または医師にとって、週または月などの一定期間のログ全体の概観は重要な場合がある。このような概観を可能にするために、ロギングモジュールは、例えばNFC転送によって、用量のログを外部ディスプレイ装置、例えば、以下に参照する良好なグラフィック概観のためのスマートフォンまたはコンピュータへ転送することを可能にする出力手段を備えてもよい。
【0047】
必ず全用量が放出されるようにするために、放出機構がゼロに戻された場合のみ、最後に放出された用量を表示するようにロギングモジュールを構成してもよい。そうでない場合、所与の「半分の」用量がログに保存されるが、表示はされない。例えば、40IUの用量がダイヤルされ、その直後に20IUが放出される場合、ディスプレイはその送達のデータを示さない。用量をディスプレイに表示させるために、ユーザは残りの用量を放出してもよく、タイムスタンプと共に40IUの統合された用量がディスプレイに示される。あるいは、ユーザが放出機構をゼロになるまでダイヤルしてもよく、ディスプレイが20IUを示し、あるいは、ユーザが放出機構を10IUになるまでダイヤルして10IUを放出してもよく、ディスプレイが30IUを示す。実際に、統合される放出量のために、2つの(または2つ以上)用量は、上述の時間窓内、例えば15分以内に放出されなくてはならない。そうでない場合、用量の最後の部分のみが表示され、第1部分はログ内のエントリとして保存されるに過ぎない。
【0048】
ディスプレイは、データを異なる形式で示すように構成されてもよい。例えば、
図10のディスプレイ411は2行表示であり、ここでは、時間はHH:MM:SSストップウォッチデザインを使用して示される。これにより、示された情報が計測時間値としてユーザが容易に識別することを可能にする実行秒カウンタで、装置から放出された最後の投与からの時間を示すことができる。24時間後、ディスプレイは、HH:MM:SS形式で時間を表示し続けるか、あるいは、日時形式に変更してもよい。
【0049】
エネルギーを節約するために、ディスプレイは、既定の時間後、例えば30秒後に電源を切る。ディスプレイを再びオンにするために、ユーザは、例えばボタンを押して、これにより、軸方向スイッチを使用してディスプレイをオンにするか、あるいは、用量ダイヤルが、ゼロから離れてその後にゼロまで戻って回される場合に、ディスプレイはオンにされてもよい。
【0050】
ユーザは、用量ログをモジュールディスプレイ上で直接確認することを望んでもよい。用量ログの切替えはまた、軸方向スイッチによって制御されてもよく、例えばボタン412を2回早押しするとモジュールがログ表示モードになり、ボタンを連続して押す毎に次のログエントリをリコールする。モジュールは、所定の時間後、あるいは、ユーザが例えば上述の通り前後にダイヤルすることで、モジュールを通常表示モードにした後、ログ表示モードを自動的に終了してもよい。代替として、電子モジュールは、その他の型の入力手段を備えてもよい。この入力手段としては、例えば振るかタップすることでユーザがディスプレイをオンにすることを可能にする動きセンサ、または、例えばスマートフォンから公知のディスプレイに一体化されたタッチセンサが挙げられ、このタッチセンサは、ユーザが、ディスプレイを横切って指をスワイプすることで、ディスプレイをオンにすることを可能にする。
【0051】
図10は、上述のロギングモジュール410を備え、スマートフォン430に隣接して配置され、ロギングデータをロギングモジュールから無線通信、例えばNFCを介して受信するように構成される、薬剤送達ペン400を示している。図示の通り、ロギングモジュールはディスプレイを備えてもよく、このディスプレイは、ストップウォッチ表示モードを使用して、最後の用量サイズおよび最後の投与からの時間を示すように構成される。
【0052】
ロギングモジュールと通信するために、スマートフォンには特定の「インスリン日記」ソフトウェアが提供されている。データ転送を初期化するためにソフトウェアが起動されると、スマートフォンNFCトランスミッタは、特定のコードを送信する。このコードは、任意の近傍のロギングモジュールを起動し、このロギングモジュールは、その後に特定のモジュールを識別する固有のコードを再送信する。特定のコードが最初に受信されると、ユーザは組み合わせを確認するよう求められ、かつ、例えば示すように「Mix30]など、所定のロギングモジュールに関連付けられるべき所定の薬剤をリストから選択するよう求められる。このように、スマートフォンは、2つ以上の薬剤を対象とするインスリン日記を作成することができる。記載された単純な「手動」の設定では、ユーザは、正確なカートリッジ、例えばMix30インスリンを、その種の薬剤に関連付けられた薬剤送達ペンに確実に装填しなければならない。実際に、その他の設定を想定することができる。例えば所与のペンを、指定された種類の薬剤を含む所定の型のカートリッジを唯一受け入れるように(機械的に)符号化してもよく、あるいは、ペンおよびロギングモジュールは、異なる型のカートリッジ、ひいては薬剤の種類を識別する能力を備えてもよい。
【0053】
図示の実施形態では、Mix30インスリンに関連するロギングモジュールからのログデータが転送される。例示的なユーザインタフェースでは、ユーザは異なる日の表示間で前後に切り替えることができ、各日の表示は、リアルタイム値と共に送達される薬剤の異なる量を示す。
図10では、特定の日431について、Mix30の第1の量および第2の量432が、各送達に示される時間および量と共に配信される。
【0054】
図7の実施形態では、LCDが従来のACF(異方性導電膜)接合を用いてPCBに取り付けられているが、
図11では、LCDをPCBに取り付ける代替解決策が示されている。より具体的には、
図11は、PCB510を含むディスプレイアセンブリ500を分解図で示し、PCB510は、可撓性コネクタ511と、湾曲弾性コネクタ520(例えばZebra(登録商標)コネクタ)と、セグメント化LCD(例えば数字またはドットマトリクス)530と、取付リング540と、ハウジングリング550とを含む。LCDはコネクタ配列を備え、このコネクタ配列は、湾曲外周部の一部の長さで、例えば300度で第1湾曲形状に配置された複数のコネクタを含む。PCBは対応するコネクタ配列を含み、このコネクタ配列は、第1湾曲形状に対して少なくとも一部に対応する第2湾曲形状に配置された複数のコネクタを有する。湾曲弾性コネクタは、LCD、PCBおよび弾性コネクタが導電接触して配置される場合、2つのコネクタ配列のコネクタ間の複数の電気接続を確立するのに適している。組立状態では、ハウジングリングはPCBに取り付けられ、これにより、残りの構成要素が互いに強制的に係合されるように保持する。
【0055】
例示的な実施形態に関する以上の説明では、各種構造についてまた各種構成要素のために記載の機能を有する手段について、当業者には本発明の概念が明らかになる程度に記載されている。種々の構成要素に対する詳細な構成と仕様は、当業者であれば本明細書に記載された事項に沿って実施される通常の設計手順の対象と考えられる。