特許第6559078号(P6559078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559078
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H04B7/08 372B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-24210(P2016-24210)
(22)【出願日】2016年2月11日
(65)【公開番号】特開2017-143447(P2017-143447A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 正廉
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−153033(JP,A)
【文献】 特開2012−175674(JP,A)
【文献】 特開2006−180419(JP,A)
【文献】 特開2000−252900(JP,A)
【文献】 特開2008−78971(JP,A)
【文献】 特開2007−60624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
別々のアンテナを用いて放送信号を受信する複数のチューナ部と、
前記複数のチューナ部の各出力信号の位相を調整して合成する合成手段と、
入力される信号に対して復調処理を行う復調処理手段と、
前記合成手段の合成出力に含まれる所定のノイズ成分を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された前記所定のノイズ成分が第1のしきい値を超えている場合に、前記合成手段による合成前の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定し、前記所定のノイズ成分が前記第1のしきい値を超えていない場合に、前記合成手段による合成後の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定する切替手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記放送信号の電界強度を検出する電界強度検出手段をさらに備え、
前記切替手段は、前記電界強度検出手段によって電界強度が第2のしきい値以下であって、前記第1の検出手段によって検出された前記所定のノイズ成分が前記第1のしきい値を超えている場合に、前記合成手段による合成前の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定することを特徴とする受信装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記所定のノイズ成分は、復調対象となる信号成分の高域側に含まれるノイズ成分であることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記所定のノイズ成分は、復調信号の高域成分としてのウルトラソニックノイズであることを特徴とする受信装置。
【請求項5】
別々のアンテナを用いて放送信号を受信する複数のチューナ部と、
前記複数のチューナ部の各出力信号の位相を調整して合成する合成手段と、
入力される信号に対して復調処理を行う復調処理手段と、
前記合成手段の合成出力に含まれる所定の信号成分を検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段によって検出された前記所定の信号成分が第3のしきい値を超えていない場合に、前記合成手段による合成前の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定し、前記所定の信号成分が前記第3のしきい値を超えている場合に、前記合成手段による合成後の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定する切替手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記放送信号の電界強度を検出する電界強度検出手段をさらに備え、
前記切替手段は、前記電界強度検出手段によって電界強度が第2のしきい値以下であって、前記第2の検出手段によって検出された前記所定の信号成分が前記第3のしきい値を超えていない場合に、前記合成手段による合成前の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定することを特徴とする受信装置。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記所定の信号成分は、FM放送の放送信号に含まれるパイロット信号であることを特徴とする受信装置。
【請求項8】
別々のアンテナを用いて放送信号を受信する複数のチューナ部と、
前記複数のチューナ部の各出力信号の位相を調整して合成する合成手段と、
入力される信号に対して復調処理を行う復調処理手段と、
前記チューナ部において設定されている受信周波数と前記チューナ部において実際に受信した信号の周波数の差である周波数オフセットを検出する第3の検出手段と、
前記第3の検出手段によって検出された前記周波数オフセットが第4のしきい値を超えている場合に、前記合成手段による合成前の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定し、前記周波数オフセットが前記第4のしきい値を超えていない場合に、前記合成手段による合成後の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定する切替手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記放送信号の電界強度を検出する電界強度検出手段をさらに備え、
前記切替手段は、前記電界強度検出手段によって電界強度が第2のしきい値以下であって、前記第3の検出手段によって検出された前記周波数オフセットが前記第4のしきい値を超えている場合に、前記合成手段による合成前の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定することを特徴とする受信装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
所定の繰り返しタイミングで一時的に前記合成手段による合成動作を停止し、前記複数のチューナ部のそれぞれにおいて別々の受信動作を行わせた後に、前記合成手段による合成動作を再開する制御手段をさらに備えることを特徴とする受信装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項において、
前記切替手段は、前記合成手段による合成前の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定した後、所定のタイミングで、前記合成手段による合成後の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定することを特徴とする受信装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記切替手段は、前記合成手段による合成動作が前記制御手段によって再開されたときに、前記合成手段による合成後の信号を前記復調処理手段による復調処理の対象として設定することを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチューナを用いたフェーズダイバーシティによって放送信号を受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、受信信号の受信強度がしきい値以上で受信状態が良好なときに、メインチューナーとサブチューナーをそれぞれ独立して動作させ、電界強度がしきい値よりも小さくて受信状態が良好でないときに、メインチューナーおよびサブチューナーをフェーズダイバーシティ受信モードに移行させるようにした受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−60624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された受信装置では、受信状態が悪化したときにフェーズダイバーシティ受信に移行して受信感度を向上させることができるが、受信状態がさらに悪化して放送信号をかろうじて捕捉できる領域では以下の2つの状態が繰り返されることになる。
(1)放送信号を捕捉できている場合:フェーズダイバーシティを行うことにより、合成後の放送信号の感度を向上させることができる。
(2)放送信号を正常に捕捉できない場合:フェーズダイバーシティを行うことにより、放送信号を打ち消しあう方向で合成が行われ、ノイズ成分だけが残る。
このような2つの状態が交互に現れることにより、音声の出力が断続的になる音揺れが発生し、聴感上の違和感が大きくなって受信品質が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、受信状態悪化時の音揺れの発生を抑制し、受信品質を向上させることができる受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の受信装置は、別々のアンテナを用いて放送信号を受信する複数のチューナ部と、複数のチューナ部の各出力信号の位相を調整して合成する合成手段と、入力される信号に対して復調処理を行う復調処理手段と、合成手段の合成出力に含まれる所定のノイズ成分を検出する第1の検出手段と、第1の検出手段によって検出された所定のノイズ成分が第1のしきい値を超えている場合に、合成手段による合成前の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定し、所定のノイズ成分が第1のしきい値を超えていない場合に、合成手段による合成後の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定する切替手段とを備えている。
【0007】
受信状態が悪化して、合成動作によって放送信号が互いに打ち消し合い、合成後の信号に復調対象の信号成分が含まれず、ノイズ成分だけが残ることになった場合に、この合成動作を解除することにより、放送信号に含まれる弱い信号成分を合成して感度を上げる動作の合間に、このノイズ成分だけが残る状態が頻繁に現れることを防止することができ、音揺れの発生を抑制して受信品質を向上させることが可能となる。
【0008】
また、上述した放送信号の電界強度を検出する電界強度検出手段をさらに備え、切替手段は、電界強度検出手段によって電界強度が第2のしきい値以下であって、第1の検出手段によって検出された所定のノイズ成分が第1のしきい値を超えている場合に、合成手段による合成前の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定することが望ましい。これにより、受信電界強度が低下した場合に現れる音揺れの発生を確実に防止することができる。
【0009】
また、上述した所定のノイズ成分は、復調対象となる信号成分の高域側に含まれるノイズ成分であることが望ましい。特に、上述した所定のノイズ成分は、復調信号の高域成分としてのウルトラソニックノイズであることが望ましい。復調対象となる信号成分の高域側(例えば、ウルトラソニックノイズ)であれば、ハイパスフィルタ等を用いて容易に抽出することができるため、処理の簡略化が可能となる。
【0010】
また、本発明の受信装置は、別々のアンテナを用いて放送信号を受信する複数のチューナ部と、複数のチューナ部の各出力信号の位相を調整して合成する合成手段と、入力される信号に対して復調処理を行う復調処理手段と、合成手段の合成出力に含まれる所定の信号成分を検出する第2の検出手段と、第2の検出手段によって検出された所定の信号成分が第3のしきい値を超えていない場合に、合成手段による合成前の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定し、所定の信号成分が第3のしきい値を超えている場合に、合成手段による合成後の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定する切替手段とを備えている。
【0011】
受信状態が悪化して、合成動作によって放送信号が互いに打ち消し合った場合には、所定の信号成分も消失することになるため、このような場合に、この合成動作を解除することにより、放送信号に含まれる弱い信号成分を合成して感度を上げる動作の合間に、ノイズ成分だけが残る状態が頻繁に現れることを防止することができ、音揺れの発生を抑制して受信品質を向上させることが可能となる。
【0012】
また、上述した放送信号の電界強度を検出する電界強度検出手段をさらに備え、切替手段は、電界強度検出手段によって電界強度が第2のしきい値以下であって、第2の検出手段によって検出された所定の信号成分が第3のしきい値を超えていない場合に、合成手段による合成前の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定することが望ましい。これにより、受信電界強度が低下した場合に現れる音揺れの発生を確実に防止することができる。
【0013】
また、上述した所定の信号成分は、FM放送の放送信号に含まれるパイロット信号であることが望ましい。放送信号に含まれるパイロット信号のような特徴的な信号成分を調べることにより、合成出力から信号成分がなくなったことを確実に判定することができる。
【0014】
また、本発明の受信装置は、別々のアンテナを用いて放送信号を受信する複数のチューナ部と、複数のチューナ部の各出力信号の位相を調整して合成する合成手段と、入力される信号に対して復調処理を行う復調処理手段と、チューナ部において設定されている受信周波数とチューナ部において実際に受信した信号の周波数の差である周波数オフセットを検出する第3の検出手段と、第3の検出手段によって検出された周波数オフセットが第4のしきい値を超えている場合に、合成手段による合成前の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定し、周波数オフセットが第4のしきい値を超えていない場合に、合成手段による合成後の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定する切替手段とを備えている。
【0015】
合成動作によって復調対象の放送信号が互いに打ち消される場合とは、合成前の信号において放送信号を捕捉することができなくなったときであり、このような場合には実際に受信した信号と、設定されている受信周波数との差である周波数オフセットが大きくなる。したがって、周波数オフセットを調べることにより、放送信号に含まれる弱い信号成分を合成して感度を上げる動作の合間に、このノイズ成分だけが残る状態が頻繁に現れることを防止することができ、音揺れの発生を抑制して受信品質を向上させることが可能となる。
【0016】
また、上述した放送信号の電界強度を検出する電界強度検出手段をさらに備え、切替手段は、電界強度検出手段によって電界強度が第2のしきい値以下であって、第3の検出手段によって検出された周波数オフセットが第4のしきい値を超えている場合に、合成手段による合成前の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定することが望ましい。これにより、受信電界強度が低下した場合に現れる音揺れの発生を確実に防止することができる。
【0017】
また、所定の繰り返しタイミングで一時的に合成手段による合成動作を停止し、複数のチューナ部のそれぞれにおいて別々の受信動作を行わせた後に、合成手段による合成動作を再開する制御手段をさらに備えることが望ましい。複数のチューナ部の出力を合成した結果を用いて復調処理を行う動作と、複数のチューナ部のそれぞれを個別に用いて受信処理を行う動作とを交互に切り替える場合であっても、この切り替えによって発生する音揺れを防止することができる。
【0018】
また、上述した切替手段は、合成手段による合成前の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定した後、所定のタイミングで、合成手段による合成後の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定することが望ましい。あるいは、上述した切替手段は、合成手段による合成動作が制御手段によって再開されたときに、合成手段による合成後の信号を復調処理手段による復調処理の対象として設定することが望ましい。これにより、合成処理を解除した後適当なタイミングで合成処理を再開することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態のラジオ受信機の構成を示す図である。
図2】フェーズダイバーシティ受信動作とAFアップデート処理の基本的な関係を示す図である。
図3】本実施形態のラジオ受信機の受信動作手順を示す流れ図である。
図4】電界強度検出部およびノイズ成分検出部による検出結果とフェーズダイバーシティによる受信動作の有効/無効の関係を示す設定テーブルの説明図である。
図5】AFアップデート処理を組み合わせた変形例の動作手順を示す流れ図である。
図6】本発明を適用した場合の出力波形を示す図である。
図7】本発明を適用しない場合の出力波形を示す図である。
図8】電界強度検出部およびパイロット信号検出部による検出結果とフェーズダイバーシティによる受信動作の有効/無効の関係を示す設定テーブルの説明図である。
図9】電界強度検出部および周波数オフセット検出部による検出結果とフェーズダイバーシティによる受信動作の有効/無効の関係を示す設定テーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した一実施形態のラジオ受信機について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、一実施形態のラジオ受信機の構成を示す図である。図1に示すラジオ受信機は、車両に搭載されてRDS放送を受信するためのものであり、アンテナ10、20、チューナ部12、22、移相器14、24、加算器30、フェーズダイバシティ処理部(PD処理部)32、復調部40、増幅器44、スピーカ46、RDSデコーダ48、電界強度検出部50、ノイズ成分検出部52、制御部60、表示部70、操作部72を含んで構成されている。例えば、本実施形態では、これらの構成の中で、移相器14、24、加算器30、フェーズダイバシティ処理部32、復調部40、RDSデコーダ48、電界強度検出部50、ノイズ成分検出部52がデジタル信号処理プロセッサ(DSP)90によって実現されている。
【0022】
RDS放送は、19kHzのステレオパイロット信号の3次高調波である57kHzを副搬送波とし、フィルタリングおよび2相コード化された番組関連情報や交通情報関連等のデータを示すデータ信号により、副搬送波を振幅変調してラジオデータ(RDSデータ)とし、この振幅変調された副搬送波を主搬送波に周波数変調して放送している。
【0023】
チューナ部12は、アンテナ10を用いて放送信号を受信して局部発振信号を混合することにより中間周波信号に変換するフロントエンド部(F/E)である。例えば、チューナ部12は、所定の放送帯域に含まれるFM放送信号を受信して所定の中間周波信号IF1に変換する。チューナ部22も基本的にチューナ部12と同じ構成を有しており、所定の放送帯域に含まれるFM放送信号をアンテナ20を介して受信して所定の中間周波信号IF2に変換する。
【0024】
移相器14は、一方のチューナ部12から出力された中間周波信号IF1に対して位相をシフトさせる。移相器24は、他方のチューナ部22から出力された中間周波信号IF2に対して位相をシフトさせる。加算器30は、移相器14、24を通した後の2種類の中間周波信号IF1、IF2を加算(合成)する。フェーズダイバーシティ処理部32は、この加算器30から出力される合成後の中間周波信号IF3の振幅が最大となるように、移相器14、24の少なくとも一方の位相シフト量を設定する。なお、本実施形態では、2つの移相器14、24を備えるようにしたが、これらは2種類の中間周波信号IF1、IF2の相対的な位相差を調整するために用いられるため、いずれか一方を用いて位相差の調整が可能な場合には他方を省略するようにしてもよい。
【0025】
復調部40は、加算器30から出力される合成後の中間周波信号IF3、あるいは、移相器14、24から出力される合成前の中間周波信号IF1、IF2に基づいてFM復調処理およびステレオ復調処理を行う。FM復調された後のデータには、PIコードや番組内容識別データ(TYP)、代替周波数(AF)データなどを含むRDSデータが重畳されている。復調部40によってステレオ復調されたオーディオ信号は、増幅器44によって増幅されてスピーカ46からオーディオ音が出力される。
【0026】
RDSデコーダ48は、復調部40によってFM復調されたデータに対して所定のデコード処理を行ってRDSデータを復元する。電界強度検出部50は、一方のチューナ部12(あるいは両方のチューナ部12、22でもよい)から出力される中間周波信号IF1に基づいて放送信号の電界強度を検出する。ノイズ成分検出部52は、加算器30から出力される中間周波信号IF3に含まれるウルトラソニックノイズ(USN)を検出する。このウルトラソニックノイズは、復調対象となる信号成分の高域側に含まれるノイズ成分である。本実施形態の場合は、57kHzのRDSデータよりも高域側に存在する、例えば80kHz近傍のノイズ成分をバンドバスフィルタ等によって抽出することにより、ウルトラソニックノイズの検出が行われる。
【0027】
制御部60は、ラジオ受信機全体を制御する。この制御部60は、CPUおよびRAM、ROM等によって構成されており、所定のプログラムを実行することにより、番組を選択して受信する選局動作等の各種の動作を行う。また、制御部60は、本発明の動作を実施するために、切替処理部64、AFアップデート処理部66を含んで構成されている。
【0028】
切替処理部64は、電界強度検出部50による検出結果と、ノイズ成分検出部52による検出結果とに基づいて、復調部40による復調処理の対象として、フェーズダイバーシティによって得られた加算器30の出力(中間周波信号IF3)と、フェーズダイバーシティを行わずに得られた移相器14の出力(中間周波信号IF1)のいずれを用いるかを設定する(切り替える)。
【0029】
AFアップデート処理部66は、受信中の放送信号に含まれるRDSデータ内の代替周波数データ(AFデータ)を取得し、取得したAFデータに含まれる受信周波数を抽出して代替周波数リスト(AFリスト)を作成する。また、AFアップデート処理部66は、所定のタイミング(例えば、一定時間間隔の繰り返しタイミング)で、加算器30を用いたフェーズダイバーシティ受信動作を停止する指示をフェーズダイバーシティ処理部32に指示した後、AFリストに含まれる各代替周波数の放送信号を受信する指示をチューナ部22に対して行うとともに、これらの各放送信号に対してクオリティチェックを行い、各放送信号の受信状態を判定する。本明細書では、AFリストの作成から代替周波数の放送信号の受信状態までの一連の動作を「AFアップデート」と称している。なお、フェーズダイバーシティ受信を停止している間は、復調部40は、移相器14から出力される中間周波信号IF1に基づいてFM復調処理およびステレオ復調処理を行う。これにより、スピーカ46からのオーディオ音出力が維持される。また、AFアップデート処理部66は、代替周波数の各放送信号の受信状態と、現在受信中の放送信号の受信状態とを比較し、代替周波数の放送信号の受信状態の方が良好な場合にこの放送信号に切り替える指示をチューナ部12、22に対して行う。
【0030】
上述した移相器14、24、加算器30、フェーズダイバーシティ処理部32が合成手段に、復調部40が復調処理手段に、ノイズ成分検出部52が第1の検出手段に、切替処理部64が切替手段に、電界強度検出部50が電界強度検出手段にそれぞれ対応する。
【0031】
本実施形態のラジオ受信機はこのような構成を有しており、次に、その動作を説明する。
【0032】
図2は、フェーズダイバーシティ受信動作とAFアップデート処理の基本的な関係を示す図である。通常は、図2(A)に示すように、2つのチューナ部12、22を用いたフェーズダイバーシティ受信動作を行い、加算器30から出力される合成信号(中間周波信号IF3)を用いた復調動作を行ってオーディオ音を出力する。また、図2(B)に示すように、所定周期(例えば、1行間隔)で、フェーズダイバーシティ受信を中断し、オーディオ音出力は一方のチューナ部12を用いて継続するとともに、他方のチューナ部22を用いたAFアップデート処理が所定時間だけ(例えば、数ms)行われる。
【0033】
本実施形態では、図2(A)に示すフェーズダイバーシティ受信動作と並行して、電界強度検出部50による検出結果とノイズ成分検出部52による検出結果に基づいて、フェーズダイバーシティの実施の有無を決定し、フェーズダイバーシティを実施しない場合には、一方のチューナ部12を用いた復調動作が行われる。
【0034】
図3は、本実施形態のラジオ受信機の受信動作手順を示す流れ図である。図3および後述する図4図5において、「PD=ON」はフェーズダイバーシティによる受信動作が有効(動作中)であることを、「PD=OFF」はフェーズダイバーシティによる受信動作が無効(動作停止中)であることを示している。
【0035】
ラジオ受信機が受信動作を開始すると、2つのチューナ部12、22を用いたフェーズダイバーシティによって放送信号を受信する(ステップ102)。次に、電界強度検出部50によって電界強度を検出する(ステップ104)。また、ノイズ成分検出部52は加算器30から出力される中間周波信号IF3に含まれるウルトラソニックノイズ(USN)を検出する(ステップ106)。
【0036】
次に、切替処理部64は、電界強度検出部50による検出結果と、ノイズ成分検出部52による検出結果とに基づいて、フェーズダイバーシティの受信動作を無効(PD=OFF)にするか否かを判定する(ステップ108)。
【0037】
図4は、電界強度検出部50およびノイズ成分検出部52による検出結果とフェーズダイバーシティによる受信動作の有効/無効の関係を示す設定テーブルの説明図である。図4において、「S/M」は電界強度検出部50によって検出された電界強度を、「USN」はノイズ成分検出部52によって検出されたウルトラソニックノイズを示している。また、「S1」、「S2」は、電界強度に対応する2つのしきい値を示しており、S1>S2の関係を有する。一方のしきい値S2が第2のしきい値に対応している。また、「N1」、「N2」は、ウルトラソニックノイズに対応する2つのしきい値を示しており、N1>N2の関係を有する。一方のしきい値N1が第1のしきい値に対応する。さらに、「継続」はそれ以前の設定を維持し、フェーズダイバーシティの有効/無効の切り替えは行わないことを示している。
【0038】
図4に示す「PD=OFF」に該当する場合にはステップ108の判定において肯定判断が行われ、切替処理部64は、フェーズダイバーシティ処理部32にフェーズダイバーシティの受信動作を無効にする旨の指示を行う(ステップ110)。以後、移相器14の出力(中間周波信号IF1)を用いた復調処理が行われ、この復調処理によって得られたオーディオ音がスピーカ46から出力される。
【0039】
また、図4に示す「PD=ON」に該当する場合にはステップ108の判定において否定判断が行われ、切替処理部64は、フェーズダイバーシティ処理部32にフェーズダイバーシティの受信動作を有効にする旨の指示を行う(ステップ112)。以後、加算器30の出力(中間周波信号IF3)を用いた復調処理が行われ、この復調処理によって得られたオーディオ音がスピーカ46から出力される。
【0040】
なお、この時点では、ステップ106におけるウルトラソニックノイズの検出やステップ108の判定を行うために、フェーズダイバーシティの受信動作が有効になっており、ステップ112ではこの設定が維持される。また、図4に示す「継続」に該当する場合のステップ108の判定では、前回のステップ108の判定結果がそのまま維持される。
【0041】
次に、切替処理部64は、一定時間が経過したか否かを判定する(ステップ114)。経過していない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、一定時間が経過した場合にはステップ114の判定において肯定判断が行われ、ステップ102に戻ってフェーズダイバシティの受信動作を再開してウルトラソニックノイズの検出等の動作が繰り返される。
【0042】
図5は、AFアップデート処理を組み合わせた変形例の動作手順を示す流れ図である。図3に示した動作手順に対して、ステップ102の前にステップ100、101を追加した点が異なっている。以後、この追加されたステップ100、101について説明する。
【0043】
ステップ100では、AFアップデート処理部66は、AFアップデートのタイミングか否かを判定する。例えば、AFアップデート処理を1秒間隔で行うものとすると、この繰り返しタイミングが到来したか否かが判定される。AFアップデートのタイミングでない場合にはステップ100の判定において否定判断が行われ、ステップ102のフェーズダイバーシティの受信動作に移行する。
【0044】
また、AFアップデートのタイミングが到来すると、ステップ100の判定において肯定判断が行われる。この場合には、AFアップデート処理部66は、AFアップデート処理を行う(ステップ101)。AFアップデート処理が終了すると、ステップ102のフェーズダイバーシティの受信動作に移行する。
【0045】
このように、本実施形態のラジオ受信機では、受信状態が悪化して、復調信号の高域成分としてのウルトラソニックノイズが増加したときに、それまで行っていたフェーズダイバーシティの合成動作を解除することにより、放送信号に含まれる弱い信号成分を合成して感度を上げる動作の合間に、このノイズ成分だけが残る状態が頻繁に現れることを防止することができ、音揺れの発生を抑制して受信品質を向上させることが可能となる。特に、ウルトラソニックノイズだけでなく電界強度を組み合わせることにより、受信電界強度が低下した場合に現れる音揺れの発生を確実に防止することができる。
【0046】
また、AFアップデート処理を行う場合には一旦フェーズダイバーシティの受信動作を解除し、AFアップデート処理が終了したときにフェーズダイバーシティの受信動作を再開することになるが、このような場合であっても、フェーズダイバーシチティの受信動作の切り替えによって発生する音揺れを防止することができる。
【0047】
図6および図7は、音揺れの低減効果を示す図である。図6には、本発明を適用した出力波形が示されている。また、図7には、比較のために本発明を適用しない従来の出力波形が示されている。これらの図において、横軸は受信した放送信号の電界強度を、縦軸は信号あるいはノイズの出力レベルを示している。これらの図から明らかなように、本発明を適用することにより、電界強度が低下した場合の信号の出力レベルのふらつき(音揺れ)を大幅に低減することが可能となる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、ノイズ成分検出部52によってウルトラソニックノイズを検出するようにしたが、放送局から送られてくる変調信号(放送信号)以外の成分であれば、ウルトラソニックノイズ以外のノイズ成分を検出するようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、フェーズダイバーシティの合成によって復調対象の信号成分が互いに打ち消しあった状態を、ウルトラソニックノイズの増大によって判定したが、ウルトラソニックノイズ以外の現象に着目してこの状態を判定するようにしてもよい。
【0050】
例えば、ノイズ成分検出部52の代わりにパイロット信号検出部を設け、加算器30の出力(中間周波信号IF3)に含まれる19kHzのパイロット信号を検出するようにしてもよい。図8は、電界強度検出部50およびパイロット信号検出部による検出結果とフェーズダイバーシティによる受信動作の有効/無効の関係を示す設定テーブルの説明図である。図8において、「PS」はパイロット信号の検出レベルを示している。また、「P1」、「P2」は、パイロット信号に対応する2つのしきい値を示しており、P1<P2の関係を有する。しきい値P1が第3のしきい値に対応している。
【0051】
受信状態が悪化して、フェーズダイバーシティの合成動作によって放送信号が互いに打ち消し合った場合には、パイロット信号等の所定の信号成分も消失することになるため、このような場合に、この合成動作を解除することにより、放送信号に含まれる弱い信号成分を合成して感度を上げる動作の合間に、ノイズ成分だけが残る状態が頻繁に現れることを防止することができ、音揺れの発生を抑制して受信品質を向上させることが可能となる。
【0052】
また、ウルトラソニックノイズ以外の現象として、チューナ部12あるいは22において設定されている受信周波数とこれらのチューナ部12あるいは22において実際に受信した信号の周波数の差である周波数オフセットを用いるようにしてもよい。
【0053】
例えば、ノイズ成分検出部52の代わりに、周波数オフセット検出部を設け、チューナ部12あるいは22から出力される周波数オフセットを検出するようにしてもよい。なお、周波数オフセットを検出する構成自体は従来から行われている手法をそのまま用いることができる。図9は、電界強度検出部50および周波数オフセット検出部による検出結果とフェーズダイバーシティによる受信動作の有効/無効の関係を示す設定テーブルの説明図である。図9において、「FO」は周波数オフセットの検出レベルを示している。また、「F1」、「F2」は、パイロット信号に対応する2つのしきい値を示しており、F1>F2の関係を有する。しきい値F1が第4のしきい値に対応している。
【0054】
フェーズダイバーシティの合成動作によって復調対象の放送信号が互いに打ち消される場合とは、合成前の信号において放送信号を捕捉することができなくなったときであり、このような場合には実際に受信した信号と、設定されている受信周波数との差である周波数オフセットが大きくなる。したがって、このような周波数オフセットを調べることにより、放送信号に含まれる弱い信号成分を合成して感度を上げる動作の合間に、このノイズ成分だけが残る状態が頻繁に現れることを防止することができ、音揺れの発生を抑制して受信品質を向上させることが可能となる。
【0055】
また、上述した実施形態では、ウルトラソニックノイズ、パイロット信号、周波数オフセットの検出結果と電界強度の検出結果とを組み合わせたが、ウルトラソニックノイズ、パイロット信号、周波数オフセットの検出結果のみに基づいて本発明の動作を行うようにしてもよい。具体的には、図4図8図9の設定テーブルにおいて最右欄の条件「S2≧S/M」のみを用いるようにしてもよい。また、これらの図に含まれる「継続」を「PD=ON」に置き換えることにより、これらの設定テーブルの内容を簡素化して、処理の簡略化を図るようにしてもよい。
【0056】
また、図5に示した動作手順では、ステップ100のAFアップデートのタイミング判定と、ステップ114の一定時間経過の判定とを別々に行うようにしたが、一定時間経過のタイミングとAFアップデート処理のタイミングを合わせることにより、ステップ100の判定を省略するようにしてもよい。この場合には、ステップ102の前にステップ101のAFアップデート処理を実施すればよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、RDS放送を受信するラジオ受信機について説明したが、2つのチューナ部あるいはそれ以上のチューナ部を備え、フェーズダイバーシティの受信動作を行うものであれば、RDSデータを含まないFM放送を受信するラジオ受信機やその他の受信装置に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上述したように、本発明によれば、受信状態が悪化して、合成動作によって放送信号が互いに打ち消し合い、合成後の信号に復調対象の信号成分が含まれず、ノイズ成分だけが残ることになった場合に、この合成動作を解除することにより、放送信号に含まれる弱い信号成分を合成して感度を上げる動作の合間に、このノイズ成分だけが残る状態が頻繁に現れることを防止することができ、音揺れの発生を抑制して受信品質を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
10、20 アンテナ
12、22 チューナ部
14、24 移相器
30 加算器
32 フェーズダイバシティ処理部
40 復調部
50 電界強度検出部
52 ノイズ成分検出部
60 制御部
64 切替処理部
66 AFアップデート処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9