特許第6559082号(P6559082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559082イソプロピルアルコールの回収装置及び回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559082
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】イソプロピルアルコールの回収装置及び回収方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/36 20060101AFI20190805BHJP
   B01D 17/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C02F1/36
   B01D17/00 502
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-29725(P2016-29725)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-144410(P2017-144410A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−279457(JP,A)
【文献】 米国特許第04599459(US,A)
【文献】 特開2012−192367(JP,A)
【文献】 特開平10−167720(JP,A)
【文献】 特開平06−216105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00−1/38
B01D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水からのイソプロピルアルコールの回収装置であって、
前記イソプロピルアルコール含有水に酸を添加する酸添加手段と、
前記酸を添加したイソプロピルアルコール含有水のミストを生成する超音波霧化手段と、
前記ミストの凝縮によりイソプロピルアルコール濃縮液を得るミスト凝縮手段と、
を有し、
前記塩基性不純物がアンモニアである
ことを特徴とするイソプロピルアルコールの回収装置。
【請求項2】
前記被処理水のイソプロピルアルコールの濃度が0.1〜50質量%である請求項1に記載の回収装置。
【請求項3】
前記被処理水のアンモニア濃度が、1mg/L〜100mg/Lである請求項1または2に記載の回収装置。
【請求項4】
前記酸が、硫酸、硝酸及び塩酸の少なくとも1種である請求項1乃至のいずれか1項に記載の回収装置。
【請求項5】
塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水からのイソプロピルアルコールの回収方法であって、
前記イソプロピルアルコール含有水に酸を添加する酸添加工程と、
前記酸を添加したイソプロピルアルコール含有水のミストを生成する超音波霧化工程と、
前記ミストの凝縮によりイソプロピルアルコール濃縮液を得るミスト凝縮工程と、
を有し、
前記塩基性不純物がアンモニアである
ことを特徴とするイソプロピルアルコールの回収方法。
【請求項6】
前記塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水のイソプロピルアルコールの濃度が0.1〜50質量%である請求項に記載の回収方法。
【請求項7】
前記塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水のアンモニア濃度が、1mg/L〜100mg/Lである請求項5または6に記載の回収方法。
【請求項8】
前記酸が、硫酸、硝酸及び塩酸の少なくとも1種である請求項5乃至7のいずれか1項に記載の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水からのイソプロピルアルコールの回収装置及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソプロピルアルコール(IPA)は、化学工業用の洗浄剤や溶剤、合成原料として多量に用いられている。特に、半導体デバイスの製造における半導体製造工程では、洗浄及び乾燥等の用途で多量のIPAが使用されている。例えば、半導体デバイスに対して純水洗浄を行った後にその水分除去を行うためのIPAを用いた乾燥法は、水分除去を行う工程として効果的である。この水分除去工程には、高純度のIPAが使用される。
高純度のIPAの製造原価は高く、半導体デバイスの製造コストの上昇の一因となる場合があった。
そこで、半導体製造工程から排出されるIPA含有水からIPAを濃縮して回収して、精製工程に供給して再利用することができれば、高純度のIPAの購入費を下げることができ、半導体デバイスの製造コストの低減を図ることが可能となる。更には、IPAの再利用は、各種用途でのIPAの使用にかかるコストの低減に寄与することができる。
アルコール含有水溶液からアルコール濃縮液を得る方法としては、超音波霧化法による方法が知られている。特許文献1には、アルコール含有水溶液を超音波振動によりミスト化して、アルコール濃度の高いミストを生成させ、このミストを分離回収することにより高濃度のアルコールを含むアルコール濃縮液を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−118005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種の製造プロセスにおいて洗浄剤や溶剤として利用されたイソプロピルアルコールを含む排液中には、アンモニア等の塩基性不純物が含まれることがある。
従って、本発明の目的は、塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水からイソプロピルアルコールを効率良く回収する装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるイソプロピルアルコールの回収装置は、
塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水からのイソプロピルアルコールの回収装置であって、
前記イソプロピルアルコール含有水に酸を添加する酸添加手段と、
前記酸を添加したイソプロピルアルコール含有水のミストを生成する超音波霧化手段と、
前記ミストの凝縮によりイソプロピルアルコール濃縮液を得るミスト凝縮手段と、
を有する。
本発明にかかるイソプロピルアルコールの回収方法は、
塩基性不純物を含むイソプロピルアルコール含有水からのイソプロピルアルコールの回収方法であって、
前記イソプロピルアルコール含有水に酸を添加する酸添加工程と、
前記酸を添加したイソプロピルアルコール含有水のミストを生成する超音波霧化工程と、
前記ミストの凝縮によりイソプロピルアルコール濃縮液を得るミスト凝縮工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、塩基性不純物を含むIPA含有水からイソプロピルアルコールを効率良く回収する装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明にかかるイソプロピルアルコール回収装置を半導体デバイス製造装置に適用した場合の装置構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明にかかるイソプロピルアルコール(IPA)回収装置は、塩基性不純物を含むIPA含有水からのIPAの回収を行う装置であり、塩基性不純物を含むIPA含有水に酸を添加する酸添加手段と、酸を添加したIPA含有水からミストを生成する超音波霧化手段と、ミストの凝縮によりIPA濃縮液を得るミスト凝縮手段と、を少なくとも有して構成される。
酸添加手段は、塩基性不純物を含むIPA含有水と酸を混合する混合領域と、混合領域に塩基性不純物を含むIPA含有水を供給する供給系と、混合領域に酸を供給する供給系により構成することができる。例えば、酸添加処理に必要な量の酸を混合領域に供給するためのポンプ及び流量制御装置を配管で接続した構成とすることができる。
酸添加手段により酸が添加されることにより塩基性不純物の塩を含むIPA含有水は、超音波霧化手段に被処理水として供給される。
【0009】
超音波霧化手段としては、超音波により被処理水のミストを生成可能な超音波霧化装置が利用でき、被処理水としての塩基性不純物の塩を含むIPA含有水からミストを生成できる装置であれば、その構成は限定されない。例えば、超音波振動子を有する超音波発生器から被処理水に超音波を付与してミストを発生させるための液相領域と、発生したミストを取り出し可能な状態で保持し得る気相領域を形成する超音波霧化槽を有する装置を用いることができる。
ミスト中のIPA濃度を高めるために、複数の超音波霧化槽を直列した多段式の超音波霧化装置を用いることもできる。
なお、超音波霧化槽を、塩基性不純物を含むIPA含有水への酸添加用の混合領域として利用してもよい。
超音波霧化手段により被処理水から発生したミストを凝縮手段に搬送して、凝縮により液化することで、被処理水よりもIPAの濃度が高く、かつ塩基性不純物の濃度が低いIPA濃縮液を得ることができる。
凝縮手段としては、冷却装置を内蔵するコンデンサ等の各種の凝縮装置を利用することができる。
超音波霧化手段から凝縮手段へのミストの搬送は、例えば、ブロアーポンプ等の気流発生手段によって発生させた気流にミストを載せることにより行うことができる。
【0010】
特許文献1にはアルコール含有水溶液からのアルコールの回収に超音波霧化法が利用可能であることが開示されている。アンモニア等の水溶性の塩基性不純物は、水との親和性が高く、超音波霧化槽内の気相に発生するミスト側よりも被処理水相側に相対的に多く残留すると考えられた。しかしながら、本発明者の検討によれば、アンモニア等の塩基性不純物の場合には、IPAとともにミスト中に移行して塩基性不純物の量が十分に低減されていないミストが気相中に生じることが見出された。更に、本発明者の検討によれば、被処理水相中の塩基性不純物を塩の状態、すなわち、IPA含有水を塩基性不純物と酸の塩を含む状態とすることによって、塩基性不純物の被処理水相中から気相に放出されるミスト側への移行が抑制されることが見出された。その理由としては、塩基性不純物が水分子との結び付が強くなり、塩基性不純物と水分子が結びついた部分は、塩基性不純物に対してフリーであるIPA分子や水分子に比べて気相中へミストとして放出され難いためと考えられる。このような理由から、塩基性不純物の塩を形成するための酸添加によって、ミストへの塩基性不純物の移行を抑えることが可能となると考えられる。
【0011】
超音波霧化手段において発生したミストを分級する気流分級手段を、必要に応じて超音波霧化手段と凝縮手段との間に配置することができる。
超音波霧化手段において発生したミストには粒径(質量)の異なるミストが含まれる。本発明者の検討によれば、IPA濃度が高いミスト中において塩基性不純物の含有割合が低くなることが見出された。
そこで、被処理水から得られるミストを、被処理水よりも高濃度のIPAを含み、かつ塩基性不純物の含有割合が低減されている小粒径ミストと、小粒径ミストよりも低濃度のIPAと高濃度の塩基性不純物を含み、かつ粒径の大きな大粒径のミストを分級し、小粒径ミストを回収し、凝縮により液化することによって高濃度のIPAを含み、塩基性不純物の含有割合が低減されたIPA濃縮水を得ることができる。
気流分級手段としては、各種の気流分級装置を用いることができ、上述した分級が可能であればその構成は限定されない。小粒径ミストを、より効率良く凝縮手段に供給し、IPA濃度の低い被処理水に対しても効率良く濃縮が可能である、という観点からは、サイクロン式の分級装置が好ましい。
なお、超音波霧化手段から凝縮手段までの経路中における目的とするミストの凝縮を防ぐために、必要に応じて経路を構成する装置の温度制御を行うことができる。
【0012】
本発明にかかるIPA回収装置の実施形態を図1に示す。
図1に示すIPA回収装置は、半導体製造装置に接続された形態をとる。
図1(A)に示すIPA回収装置は、半導体製造装置1から回収したIPA含有水を貯留する回収タンク2、酸水溶液の供給系4、超音波霧化槽5、ブロアーポンプ9、サイクロン6、コンデンサ7及び濃縮液回収タンク8を有する。
酸水溶液の供給手段4は、酸水溶液を貯留するタンク(不図示)と、タンクから酸水溶液を、IPA含有水に添加混合する混合領域に供給する供給系を有する。酸水溶液の供給系には、送液ポンプ及び流量制御装置を設けることができる。送液ポンプ3により送液されるIPA含有水には塩基性の不純物が含まれており、酸水溶液の添加によってIPA含有水中で塩基性不純物と酸との塩が形成される。すなわち、塩基性不純物の少なくとも一部(好ましくは塩基性不純物全量の90質量%以上)は添加した酸との塩の状態でIPA含有水中に含まれる。
超音波霧化槽5は超音波霧化手段を構成する。超音波霧化槽5には、酸水溶液が添加されることより生成した塩基性不純物と酸との塩を含むIPA含有水が被処理水として供給される。超音波霧化槽5に供給された被処理水に超音波が付与されることにより、ミストが発生する。
更に、ミストには、被処理水よりも高濃度のIPAを含み、かつ塩基性不純物と酸との塩の含有割合が低減されている小粒径ミストと、小粒径ミストよりも低濃度のIPAと高濃度の塩基性不純物を含み、かつ粒径の大きな大粒径のミストが含まれる。これらの小粒径ミストと大粒径ミストをブロアーポンプ9とサイクロン6によって分級し、分級された小粒径ミストを凝縮手段であるコンデンサ7に供給して、小粒径ミストの凝縮、液化を行い、IPA濃縮液として濃縮液回収タンク8に回収する。
ブロアーポンプ9により超音波霧化槽5の気相域に供給されたブロアーガスによる気流は、サイクロン6、コンデンサ7を通ってブロアーポンプ9に戻され、ブロアーガスの循環系を形成する。また、超音波霧化槽5、サイクロン6の残液は、回収タンク2に戻される。
【0013】
図1(B)に示す回収装置は、図1(A)に示す回収装置における濃縮液回収タンク8に脱水膜10を接続し、脱水膜10による脱水処理を経て高純度化されたIPAを送液ポンプ12により半導体製造装置1への供給タンク11に送る送液系が付加された構成を有する。
脱水膜10は、濃縮液回収タンク8に回収されたIPA濃縮液に対して浸透気化(PV)あるいは蒸気透過(VP)による膜脱水を行う膜であり、脱水膜を通すことによりIPAの更なる濃縮を行うことができる。脱水膜10は、例えば、透水性膜モジュールの形態を採ることができる。膜を構成する材料としては、ポリイミド系、セルロース系、ポリビニルアルコール系等の高分子系材料もしくはゼオライト等の無機系の材料を挙げることができる。機械的強度、脱水性能、耐熱性などの観点から、ゼオライト膜が好ましい。
【0014】
超音波霧化槽を有する超音波霧化装置は、複数の超音波音波霧化槽、コンデンサをそれぞれ介して直列に連結した多段式の構成とすることができる。
また、サイクロン式分級装置についても複数段のサイクロン塔を直列に連結した多段式としてもよい。
図1(A)及び図1(B)に示す回収装置では、回分式または連続式でIPAの回収を行うことができる。また、IPAは揮発性のため、回収装置のIPAを含有する被処理水、ミスト、濃縮液等を処理する部分は閉鎖系とすることが好ましい。
【0015】
上記の構成のIPA回収装置を用いるIPAの回収方法について以下に説明する。
本発明にかかるIPAの回収方法は、以下の工程を有することができる。
(A)塩基性不純物と酸の塩と、IPAを含む被処理水からミストを生成する超音波霧化工程。
工程(B)ミストの凝縮によりIPA濃縮液を得るミスト凝縮工程。
塩基性不純物を含むIPA含有水としては、洗浄剤、乾燥剤、溶剤等として使用したIPAを回収した各種工程からの排液を挙げることができる。中でも、半導体製造工程において洗浄乾燥工程から排出されるIPA含有水を挙げることができる。
工程(A)において超音波霧化処理される被処理水は、塩基性不純物を含むIPA含有水に酸を添加して塩基性不純物の塩を含む状態となったIPA含有水である。
塩基性不純物の塩をIPA含有水中に形成させるために添加する酸としては、目的とする塩形成が可能であれば特に限定されないが、硫酸、硝酸、塩酸等、塩基性不純物が水との親和性の高い塩を形成できる酸を挙げることができる。これらの酸の少なくとも1種を塩形成に好適な濃度として水溶液として用いることができる。
例えば、アンモニアを含むIPA含有水に硫酸を添加すると、アンモニアとの反応により硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウムが形成され、IPA含有水中に存在することになる。硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウムは、水との親和性が高いため、超音波霧化により被処理水から生成するIPA濃度の高いミストへのこれらの塩の分配が抑制され、被処理水よりもIPA濃度が高く、アンモニア濃度が低いミストが得られるものと考えられる。
【0016】
塩基性不純物を含むIPA含有水への酸の添加量は、塩基性不純物の全量の少なくとも90質量%が、添加した酸との塩の状態となる量とすることが好ましい。このような観点から、IPA含有水における想定される塩基性不純物の含有量の全量を塩とすることを想定した量の酸を加えることが好ましい。
塩基性不純物を含むIPA含有水の酸を添加する酸添加工程は、本発明の回収方法に対して別途おこなっても、本発明の回収方法が有する工程として、工程(A)の前段に組み込んでもよい。なお、超音波霧化槽を酸添加用の混合領域として利用してもよい。
【0017】
本発明の回収方法においては、IPA濃度が0.1〜50質量%のIPA含有水のIPA濃縮に好適に用いることができる。また、水分含有量が45質量%以上のIPA含有水を処理対象とすることができる。
なお、IPA含有水のIPAの濃度が0.1質量%未満である場合には、酸添加処理の前に、逆浸透膜濾過装置による処理によってIPA濃度を0.1質量%以上として酸添加による被処理水調製用として利用することができる。
塩基性不純物としてはアンモニアを挙げることができる。本発明の回収方法は、1mg/L〜100mg/Lのアンモニアを含むIPA含有水の処理に好適に利用することができる。
超音波霧化を行うための超音波の周波数や出力は、特に限定されず、目的とするミストを生じさせることができるように設定すればよい。
【0018】
超音波霧化法では、被処理液のIPA濃度に応じて濃縮液に含まれるIPAの濃度が概ね決まると考えられる。例えば、被処理液のIPA濃度が20質量%の場合、超音波霧化法で濃縮した後の濃縮液のIPA濃度は50〜80質量%程度となる。
IPAの濃縮率を更に上げたい場合、例えば90質量%程度までに上げたい場合には、多段式の超音波霧化装置を用いることができる。
工程(A)における超音波の振動数、超音波霧化槽の温度、気相の圧力等は特に限定されず、被処理水のIPA濃度、塩基性不純物の種類やその濃度等に応じて設定することができる。超音波の振動数としては、15kHz〜400MHzの範囲から選択することができる。
【0019】
工程(B)は、各種のミスト凝縮手段を用いて行うことができる。ミスト凝縮手段としては冷却装置を内蔵するコンデンサ等の各種の凝縮装置を利用することができる。
工程(A)から工程(B)へのミストの搬送は、例えば、ブロアーポンプ等の気流発生手段によって発生させた気流にミストを載せることによる行うことができる。
工程(A)と工程(B)の間に、工程(A)において得られたミストを、被処理水よりも高いIPA濃度の小粒径ミストと、小粒径ミストよりも粒径の大きなミストに気流分級する分級工程を追加することができる。分級工程において用いる気流分級方法としては各種の方法が利用可能である。中でも、サイクロン式分級装置を用いた分級方法を用いることが好ましい。被処理水よりも高いIPA濃度の小粒径ミストを分級して分離し、凝縮液化することによって、IPA濃度をより高め、塩基性不純物の濃度を大幅に低下させたIPA濃縮液を得ることができる。
こうして得られたIPA濃縮液のIPA濃度を更に上げるために、IPA濃縮液に対して脱水膜による脱水処理工程を行うことができる。脱水処理工程を追加することによって、例えばIPAの含有量を99.9質量%程度まで上げることが可能となる。
脱水膜としては、先に挙げた材料からなる脱水膜を用いることができる。
【0020】
本発明の回収方法によれば、IPA濃縮液中の塩基性不純物の濃度を大幅に低下させることができる。例えば、塩基性不純物がアンモニアの場合には、IPA濃縮液中のアンモニアの含有量を10mg/L未満で、かつ被処理水よりも低い量に低下させることができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
図1(A)に示した回収タンク2、酸水溶液の供給系4、超音波霧化槽5、送液ポンプ3、ブロアーポンプ9、サイクロン6、コンデンサ7及び濃縮液回収タンク8を有するユニット部分からなる回収装置を用いて、アンモニアを含有するIPA排水の分離濃縮処理を行った。IPA排水を回収タンク2に供給し、IPA排水に含まれていたアンモニアは、酸水溶液の供給系4からのHSO水溶液の添加により(NHSOとした状態で、超音波霧化槽5に送液する被処理水(HSO水溶液添加後)として用いた。被処理水のIPA濃度は20.3質量%、アンモニア濃度(NH−N)は60mg/Lであった。被処理水のpHは4.1であった。
被処理水(HSO水溶液添加添後)を送液ポンプ3にて超音波霧化槽5へ送り、内部に備えられた超音波振動子により生じる超音波振動により、ミストを発生させた。発生したミストはブロアーポンプ9により後段のサイクロン6に送り、IPA濃度の高い小さな粒径のミストはさらに後段のコンデンサ7で冷却回収し、濃縮液回収タンク8に送液し、水分濃度の高い大きな粒径のミストはサイクロン6で分離して回収タンク2へ返送した。
結果を表1に示す。上記処理により濃縮液回収タンク8に回収された濃縮液中のIPA濃度は76.3質量%、アンモニア濃度(NH−N)<5mg/Lであり、IPAは濃縮され、アンモニアは大幅に低減される結果が得られた。また、濃縮液回収タンク8に回収されたIPA濃縮液の硫酸イオンをイオンクロマトグラフにより分析したところ、硫酸イオン濃度は<1mg/Lであり、IPA濃縮側に混入しなかった。
【0022】
【表1】
【0023】
(比較例1)
実施例1で用いたのと同様のアンモニアを含有するIPA排水をそのまま(HSO水溶液を添加しない)の状態で用いる以外は実施例1と同様にしてIPA濃縮液を得て濃縮液回収タンク8に回収した。
結果を表2に示す。
SO水溶液を添加しない場合は、IPA濃縮側にアンモニアが大幅に濃縮される結果となった。
【0024】
【表2】
【符号の説明】
【0025】
1 半導体製造装置
2 回収タンク
3 送液ポンプ
4 酸水溶液供給系
5 超音波霧化槽
6 サイクロン
7 コンデンサ
8 濃縮液回収タンク
9 ブロアーポンプ
10 脱水膜
11 供給タンク
12 送液ポンプ
図1