特許第6559083号(P6559083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559083
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】駐車支援装置および駐車支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20190805BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B60R99/00 321
   B60R99/00 351
   B60R1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-36483(P2016-36483)
(22)【出願日】2016年2月27日
(65)【公開番号】特開2017-149397(P2017-149397A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】須田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】棟方 康介
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 千絵
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/135672(WO,A1)
【文献】 特開2007−090939(JP,A)
【文献】 特開2010−100267(JP,A)
【文献】 特開2011−015549(JP,A)
【文献】 特開2004−114977(JP,A)
【文献】 特開2007−043530(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0132208(US,A1)
【文献】 特開2011−230615(JP,A)
【文献】 特開2005−335444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
B60R 1/00
B60R 21/00−21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を含む自車両の後方を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像によって得られた撮像画像に含まれる駐車枠を抽出する駐車枠抽出手段と、
自車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、自車両が後退する際の後輪の移動軌跡を予測する移動軌跡予測手段と、
前記移動軌跡上であって、前記駐車枠を構成する左右の白線と自車両とが平行になる後輪の位置を特定する平行位置特定手段と、
自車両が前記移動軌跡に沿って後退した際に、前記平行位置特定手段によって特定された位置が前記撮像画像に含まれる路面から消失した後に、前記後輪が前記平行位置特定手段によって特定された位置に至るまでの案内情報を提示する案内情報提示手段と、
を備え、前記案内情報提示手段は、前記平行位置特定手段によって特定された位置が前記撮像画像に含まれる路面から消失した時点から着目時点までの前記後輪の移動距離である第1の移動距離と、前記着目時点における前記後輪の位置から前記平行位置特定手段によって特定された位置までの距離である第2の移動距離との比を示す案内画像を描画することにより、前記案内情報の提示を行うことを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
請求項において、
前記移動軌跡を描画する移動軌跡描画手段と、
前記撮像手段による撮像によって得られた撮像画像上に、前記移動軌跡描画手段によって描画された前記移動軌跡と、前記案内情報提示手段によって描画された前記案内画像とを重ねて表示する後方画像表示処理手段と、
をさらに備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項3】
請求項またはにおいて、
前記案内画像は、車両の後輪から後部の車両形状の輪郭を模した形状を有するバックラインであって、前記第1の移動距離と前記第2の移動距離の比を示すバックラインであることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項4】
請求項のいずれか一項において、
前記案内画像は、前記第1の移動距離に対応する長さおよび色を有する第1の指標と、前記第2の移動距離に対応する長さおよび色を有する第2の指標とを含んでいることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項5】
請求項のいずれか一項において、
前記案内情報提示手段は、前記後輪が前記平行位置特定手段によって特定された位置に到達したときに、前記案内情報の提示を終了することを特徴とする駐車支援装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項において、
前記案内情報提示手段は、前記平行位置特定手段によって特定された位置に前記後輪が接近していることと、この位置に前記後輪が到達することを示す音声を出力することにより、前記案内情報の提示を行うことを特徴とする駐車支援装置。
【請求項7】
路面を含む自車両の後方を撮像する撮像手段による撮像によって得られた撮像画像に含まれる駐車枠を駐車枠抽出手段によって抽出する駐車枠抽出ステップと、
自車両の操舵角を操舵角検出手段によって検出する操舵角検出ステップと、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、自車両が後退する際の後輪の移動軌跡を移動軌跡予測手段によって予測する移動軌跡予測ステップと、
前記移動軌跡上であって、前記駐車枠を構成する左右の白線と自車両とが平行になる後輪の位置を平行位置特定手段によって特定する平行位置特定ステップと、
自車両が前記移動軌跡に沿って後退した際に、前記平行位置特定手段によって特定された位置が前記撮像画像に含まれる路面から消失した後に、前記後輪が前記平行位置特定手段によって特定された位置に至るまでの案内情報を案内情報提示手段によって提示する案内情報提示ステップと、
を有し、前記案内情報提示手段は、前記平行位置特定手段によって特定された位置が前記撮像画像に含まれる路面から消失した時点から着目時点までの前記後輪の移動距離である第1の移動距離と、前記着目時点における前記後輪の位置から前記平行位置特定手段によって特定された位置までの距離である第2の移動距離との比を示す案内画像を描画することにより、前記案内情報の提示を行うことを特徴とする駐車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後退時に後方を撮像した画像を表示するようにした駐車支援装置および駐車支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両を後退させたときに、駐車枠の左右の白線に対して車両が平行になるまで車両の予想軌跡を表示し、平行になったときにこの予想軌跡の表示を中止するとともに、その時点でのハンドルの操舵角と車輪を車体に対して平行にするためのハンドルの操舵方向を表示するようにした駐車支援装置が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、車両を後退させて駐車枠に平行に駐車させる際に、車両の後方方向と駐車枠とが平行に近づいたときに車両の予測軌跡を後方画像に重ねて表示するようにした補助情報提示装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−230615号公報
【特許文献2】特開2005−335444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に開示された駐車支援装置では、車両を後退させた際に、駐車枠の左右の白線と車両とが平行になったときに、車両の予想軌跡の表示が消えるとともにハンドルの操舵角や操舵方向の表示が開始されるため、その時点でハンドルを操作しても車両が平行になった位置を超えてしまう。このため、車両の向きや位置を微調整する必要があり、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることができないという問題があった。
【0006】
また、上述した特許文献1や特許文献2に開示された装置では、駐車枠の左右の白線に対して平行になるように車両を後退させる運転自体は運転者の経験や勘に頼っており、白線に対して車両が平行に至るまでの案内情報が提供されるわけではないため、この点からも、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることができる駐車支援装置および駐車支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の駐車支援装置は、路面を含む自車両の後方を撮像する撮像手段と、撮像手段による撮像によって得られた撮像画像に含まれる駐車枠を抽出する駐車枠抽出手段と、自車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、自車両が後退する際の後輪の移動軌跡を予測する移動軌跡予測手段と、移動軌跡上であって、駐車枠を構成する左右の白線と自車両とが平行になる後輪の位置を特定する平行位置特定手段と、自車両が移動軌跡に沿って後退した際に、平行位置特定手段によって特定された位置が撮像画像に含まれる路面から消失した後に、後輪が平行位置特定手段によって特定された位置に至るまでの案内情報を提示する案内情報提示手段とを備えている。
【0009】
また、本発明の駐車支援方法は、路面を含む自車両の後方を撮像する撮像手段による撮像によって得られた撮像画像に含まれる駐車枠を駐車枠抽出手段によって抽出する駐車枠抽出ステップと、自車両の操舵角を操舵角検出手段によって検出する操舵角検出ステップと、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、自車両が後退する際の後輪の移動軌跡を移動軌跡予測手段によって予測する移動軌跡予測ステップと、移動軌跡上であって、駐車枠を構成する左右の白線と自車両とが平行になる後輪の位置を平行位置特定手段によって特定する平行位置特定ステップと、自車両が移動軌跡に沿って後退した際に、平行位置特定手段によって特定された位置が撮像画像に含まれる路面から消失した後に、後輪が平行位置特定手段によって特定された位置に至るまでの案内情報を案内情報提示手段によって提示する案内情報提示ステップとを有している。
【0010】
駐車枠の左右の白線と自車両が平行になる位置(平行位置)に至るまでの案内情報が提示されるため、自車両が後退して平行位置に近づいた際に撮像画像内の路面から平行位置が消失した場合であっても、運転者は、車両をどの程度後退させれば平行位置に達するかを知ることができ、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることが可能となる。
【0011】
また、上述した案内情報提示手段は、前記平行位置特定手段によって特定された位置が前記撮像画像に含まれる路面から消失した時点から着目時点までの前記後輪の移動距離である第1の移動距離と、前記着目時点における前記後輪の位置から前記平行位置特定手段によって特定された位置までの距離である第2の移動距離との比を示す案内画像を描画することにより、案内情報の提示を行う。これにより、平行位置までの自車両の接近の程度をわかりやすく運転者に提示することが可能となる。
【0012】
また、上述した移動軌跡を描画する移動軌跡描画手段と、撮像手段による撮像によって得られた撮像画像上に、移動軌跡描画手段によって描画された移動軌跡と、案内情報提示手段によって描画された案内画像とを重ねて表示する後方画像表示処理手段とをさらに備えることが望ましい。撮像画像に移動軌跡と案内情報を重ねて表示することにより、平行位置までの自車両の接近の程度だけでなく、後退時の車両後方の状況を運転者に知らせることが可能となる。
【0013】
また、上述した案内画像は、車両の後輪から後部の車両形状の輪郭を模した形状を有するバックラインであって、第1の移動距離と第2の移動距離の比を示すバックラインであることが望ましい。後方画像に重ねてバックラインを表示する手法は一般に用いられており、このようなバックラインを本発明の案内画像として用いることにより、新たな表示要素を追加することなく、有効な情報を運転者に提示することが可能となる。
【0014】
また、上述した案内画像は、第1の移動距離に対応する長さおよび色を有する第1の指標と、第2の移動距離に対応する長さおよび色を有する第2の指標とを含んでいることが望ましい。これにより、平行位置までの自車両の接近の程度を、運転者は目視により迅速に把握することが可能となる。
【0015】
また、上述した案内情報提示手段は、後輪が平行位置特定手段によって特定された位置に到達したときに、案内情報の提示を終了することが望ましい。これにより、運転者に自車両が平行位置に到達したことを確実に知らせることができ、その時点でハンドルの操舵角を元(直進状態)に戻すことにより、それ以後、駐車枠の左右の白線に沿って平行に車両を後退させることができる。
【0016】
また、上述した案内情報提示手段は、平行位置特定手段によって特定された位置に後輪が接近していることと、この位置に後輪が到達することを示す音声を出力することにより、案内情報の提示を行うことが望ましい。平行位置に自車両が接近して到達する時点を音声で知らせることにより、運転者は、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の駐車支援装置の構成を示す図である。
図2】移動軌跡の描画例を示す図である。
図3】バックラインの描画例を示す図である。
図4】シフトレバーの位置をリアにセットした際の後方画像の表示処理の動作手順を示す流れ図である。
図5】案内画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した一実施形態の駐車支援装置について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、一実施形態の駐車支援装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の駐車支援装置1は、後方カメラ10、画像メモリ12、駐車枠抽出部20、操舵角検出部22、移動軌跡予測部24、平行位置特定部26、平行位置消失判定部28、移動距離算出部30、移動軌跡描画部32、バックライン描画部34、後方画像表示処理部36、表示装置38を備えている。
【0020】
この駐車支援装置1は、車両に搭載されており、シフトレバーの位置がリアにセットされたときに、車両後方を撮像した後方画像を車室内の画面に表示するとともに、車両を後退させる際に、移動軌跡や駐車枠の左右の白線と車両とが平行になる位置まで車両の誘導を行う案内情報などを、この後方画像に表示する動作を行う。
【0021】
後方カメラ10は、車両後方に取り付けられており、路面を含む自車両後方の撮像範囲を撮像する。例えば、CCD撮像素子やCMOS撮像素子を用いるとともに、魚眼レンズ等の広角レンズを取り付けて画角を広くしたカメラを用いることが望ましい。画像メモリ12は、後方カメラ10の撮像によって得られた画像を所定のフレームレート(例えば、30フレーム/秒)で格納する。
【0022】
駐車枠抽出部20は、画像メモリ12に格納された後方画像に含まれる駐車枠を抽出する。この駐車枠には、車両を駐車させた際に車両の左右で平行な白線が少なくとも含まれている。
【0023】
操舵角検出部22は、車両の操舵角(ハンドルの操作角度)を検出する。
【0024】
移動軌跡予測部24は、操舵角検出部22によって検出された操舵角や、自車両のホイールベース長などに基づいて、車両を後退させた際の後輪の移動軌跡を予測(算出)する。
【0025】
平行位置特定部26は、移動軌跡予測部24によって算出された移動軌跡上であって、駐車枠抽出部20によって抽出された駐車枠を構成する左右の白線と自車両とが平行になる後輪の位置(以後、この位置を「平行位置」と称する)を特定する。
【0026】
平行位置消失判定部28は、移動軌跡予測部24によって算出された移動軌跡に沿って自車両が後退した際に、画像メモリ12に格納された後方画像に含まれる路面から平行位置が消失したか否かを判定する。
【0027】
移動距離算出部30は、平行位置消失判定部28によって平行位置が消失した旨の判定が行われた後に、消失した時点から着目時点までの後輪の移動距離(第1の移動距離)と、着目時点における後輪位置から平行位置までの距離(第2の移動距離)と、これらの比を算出する。
【0028】
移動軌跡描画部32は、画像メモリ12に格納された後方画像を表示する際に、この後方画像に含まれる路面上に、移動軌跡予測部24によって算出された移動軌跡を描画する。例えば、この移動軌跡は、背景となる後方画像と識別可能な色(例えば赤色)の線を用いて描画される。また、この移動軌跡上に平行位置が含まれる場合には、平行位置に特定の指標となる画像(以後、この画像を「平行マーク」と称する)が付加された移動軌跡が描画される。
【0029】
図2は、移動軌跡の描画例を示す図である。図2では、後方画像に重ねて表示される移動軌跡の描画例が示されている。この後方画像には、駐車枠を構成する左右の白線W1、W2が含まれており、平行マークP1が含まれる移動軌跡T1と、平行マークP2が含まれる移動軌跡T2とが重ねて描画されている。
【0030】
バックライン描画部34は、画像メモリ12に格納された後方画像を表示する際に、車両の後輪から後部の車両形状の輪郭を模した形状を有するバックライン(案内情報)を描画する。例えば、このバックラインは、車両後方の約90cmの位置を示すコの字型の線が用いられる。また、このコの字型の線の車両寄りの第1の領域を上述した第1の移動距離に、車両から遠い第2の領域を上述した第2の移動距離に対応させた色分けを行うことにより、第1および第2の移動距離の比がわかるようになっている。
【0031】
図3は、バックラインの描画例を示す図である。図3では、後方画像に重ねて表示される移動軌跡T1、T2とバックラインBの描画例が示されている。この後方画像に、第1の領域b1と第2の領域b2を含むバックラインが重ねて描画されている。バックラインBに含まれる第1の領域b1が第1の指標に、第2の領域b2が第2の指標に対応する。運転者は、このバックラインBに第2の領域b2が含まれていることを確認することで、自車両の後輪が平行マークP1、P2の位置に未到達であることを知ることができるとともに、これ以後どの程度自車両を後退させれば後輪が平行マークP1、P2の位置に到達するかを知ることができる。
【0032】
後方画像表示処理部36は、画像メモリ12に格納された後方画像を読み出して表示装置38の画面に表示するとともに、移動軌跡描画部32によって描画された移動軌跡や平行マーク、バックライン描画部34によって描画されたバックラインを後方画像に重ねて表示装置38の画面に表示する処理を行う。表示装置38は、運転席あるいは運転席と助手席の間の前方に備わっており、例えばLCDによって構成されている。この表示装置38は、ナビゲーション装置等に用いられているものを流用することが考えられるが、専用に設けるようにしてもよい。
【0033】
上述した後方カメラ10が撮像手段に、駐車枠抽出部20が駐車枠抽出手段に、操舵角検出部22が操舵角検出手段に、移動軌跡予測部24が移動軌跡予測手段に、平行位置特定部26が平行位置特定手段に、移動距離算出部30、バックライン描画部34が案内情報提示手段に、移動軌跡描画部32が移動軌跡描画手段に、後方画像表示処理部36が後方画像表示処理手段にそれぞれ対応する。
【0034】
実施形態の駐車支援装置1はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。
【0035】
図4は、シフトレバーの位置をリアにセットした際の後方画像の表示処理の動作手順を示す流れ図である。例えば、この動作手順は、後方カメラ10による撮像間隔(例えば、1/30秒)毎に繰り返される。
【0036】
後方カメラ10によって路面を含む自車両後方の撮像範囲が撮像され、撮像された後方画像が画像メモリ12に格納されると(ステップ100)、駐車枠抽出部20は、格納された後方画像に含まれる駐車枠を抽出する(ステップ102)。例えば、車両の幅を考慮した間隔を有し(180cm+α)、互いに平行な2本の白線が存在する場合に、これらの白線が駐車枠として抽出される。なお、後方画像は、広角レンズを通して路面を斜め下方向に撮像したものであって歪んでいるため、駐車枠抽出等を行う際にはこの歪みによる影響を除去するために、トップビュー画像に変換した後の画像に基づいて行うようにしてもよい。
【0037】
次に、操舵角検出部22は、車両の操舵角を検出する(ステップ104)。この検出動作は、上述したステップ100や102の動作と前後して、あるいは、並行して行うようにしてもよい。
【0038】
次に、移動軌跡予測部24は、現在の操舵角を維持した状態で自車両を後退させた際の後輪の移動軌跡を予測(算出)する(ステップ106)。また、平行位置特定部26は、ステップ102において抽出された駐車枠が存在するか否かを判定する(ステップ108)。駐車枠が存在する場合には肯定判断が行われる。次に、平行位置特定部26は、ステップ106において予測された移動軌跡上であって、ステップ102において抽出された駐車枠を構成する左右の白線と自車両とが平行になる後輪の位置(平行位置)を特定する(ステップ110)。また、平行位置特定部26は、特定した平行位置が駐車枠内にあるか否かを判定する(ステップ112)。平行位置が駐車枠内にある場合には肯定判断が行われる。次に、平行位置特定部26は、特定した平行位置が撮像範囲(後方画像)に含まれる路面から消失したか否かを判定する(ステップ114)。
【0039】
平行位置が撮像範囲内の路面から消失していない場合には否定判断が行われる。この場合は、移動軌跡描画部32は、2つの後輪のそれぞれに対応するように、平行マークP1が含まれる移動軌跡T1と、平行マークP2が含まれる移動軌跡T2を描画する(ステップ116)。後方画像表示処理部36は、図2に示すように、画像メモリ12に格納された後方画像に、ステップ116で描画された平行マークP1、P2付きの移動軌跡T1、T2を重ねて表示装置38の画面に表示する(ステップ124)。
【0040】
また、平行位置が撮像範囲内の路面から消失した場合にはステップ114の判定において肯定判断が行われる。この場合には、バックライン描画部34は、後輪が平行位置に達したか否かを判定する(ステップ118)。達していない場合には否定判断が行われる。
【0041】
次に、移動距離算出部30は、平行位置が路面から消失した時点から着目時点までの後輪の移動距離(第1の移動距離)と、着目時点における後輪位置から平行位置特定部26によって特定された平行位置までの距離(第2の移動距離)と、これらの比を算出し、バックライン描画部30は、これらの比を反映して着色したバックラインBを描画する(ステップ120)。また、移動軌跡描画部32は、2つの後輪のそれぞれに対応するように、平行マークP1が含まれない移動軌跡T1と、平行マークP2が含まれない移動軌跡T2を描画する(ステップ122)。後方画像表示処理部36は、図3に示すように、画像メモリ12に格納された後方画像に、ステップ120で描画されたバックラインBと、ステップ122で描画された平行マークP1、P2なしの移動軌跡T1、T2を重ねて表示装置38の画面に表示する(ステップ124)。
【0042】
なお、後輪が平行位置に達した場合にはステップ118の判定において肯定判断が行われる。この場合には、ステップ120におけるバックラインの描画は行われずに、平行マークP1、P2なしの移動軌跡T1、T2を重ねた後方画像が表示される(ステップ122、124)。すなわち、後輪が平行位置に到達するまではバックラインが表示されるが、到達した時点でバックラインの表示が消えるため、運転者は、バックラインの表示が消えた時点でハンドルを直進位置に戻すことができ、それ以後自車両と駐車枠の平行状態を維持しながら自車両を後退させることができる。
【0043】
また、撮像範囲内に駐車枠(左右の白線)がない場合(ステップ108の判定において否定判断)や、平行位置が駐車枠内にない場合(ステップ112の判定において否定判断)にも、ステップ120におけるバックラインの描画は行われずに、平行マークP1、P2なしの移動軌跡T1、T2を重ねた後方画像が表示される(ステップ122、124)。
【0044】
このように、本実施形態の駐車支援装置1では、駐車枠の左右の白線と自車両が平行になる位置(平行位置)に至るまでの案内情報としてのバックラインが提示されるため、自車両が後退して平行位置に近づいた際に撮像画像(後方画像)内の路面から平行位置が消失した場合であっても、運転者は、車両をどの程度後退させれば平行位置に達するかを知ることができ、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることが可能となる。
【0045】
また、バックラインとして、平行位置が撮像画像に含まれる路面から消失してから後輪までの第1の移動距離と、後輪から平行位置までの第2の移動距離との比を示す画像を用いることにより、平行位置までの自車両の接近の程度をわかりやすく運転者に提示することが可能となる。
【0046】
また、撮像画像に移動軌跡とバックラインを重ねて表示することにより、平行位置までの自車両の接近の程度だけでなく、後退時の車両後方の状況を運転者に知らせることが可能となる。
【0047】
特に、撮像画像(後方画像)に重ねてバックラインを表示する手法は一般に用いられており、このようなバックラインを本発明の案内画像として用いることにより、新たな表示要素を追加することなく、有効な情報を運転者に提示することが可能となる。
【0048】
また、バックラインは、自車両の後輪が平行位置に達するまでの状況を示すように着色(色分け)されているため、平行位置までの自車両の接近の程度を、運転者は目視により迅速に把握することが可能となる。
【0049】
また、自車両の後輪が平行位置に達したときにバックラインの表示が消えるため、運転者に自車両が平行位置に到達したことを確実に知らせることができ、その時点でハンドルの操舵角を元(直進状態)に戻すことにより、それ以後、駐車枠の左右の白線に沿って平行に車両を後退させることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、車両の後輪から後部の車両形状の輪郭を模したバックラインを用い、このバックラインに含まれる第1の領域と第2の領域を色分けしたが、バックライン以外の表示要素を案内画像として用いるようにしてもよい。
【0051】
図5は、案内画像の他の例を示す図である。図5に示す例では、画面左寄りに棒状の案内画像が含まれる。この案内画像は、図3に示した案内画像と同様に、第1の領域b1と第2の領域b2が含まれており、車両が後退するにつれて第1の領域と第2の領域の境界位置が移動し、車両の後輪が平行位置に達したときに、案内画像全体が第1の領域となる。
【0052】
また、上述した実施形態では、案内画像を用いたが、代わりに、あるいは、並行して、同様の提示内容を有する案内音声を用いるようにしてもよい。例えば、後輪が平行位置に近づくにつれて断続音の周期を短くし、後輪が平行位置に達したときに連続音を出力するようにすることにより、平行位置までの自車両の接近の程度をわかりやすく運転者に提示することが可能となる。これにより、運転者は、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述したように、本発明によれば、駐車枠の左右の白線と自車両が平行になる位置(平行位置)に至るまでの案内情報が提示されるため、自車両が後退して平行位置に近づいた際に撮像画像内の路面から平行位置が消失した場合であっても、運転者は、車両をどの程度後退させれば平行位置に達するかを知ることができ、迅速かつ正確に車両を駐車枠に駐車させることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 駐車支援装置
10 後方カメラ
12 画像メモリ
20 駐車枠抽出部
22 操舵角検出部
24 移動軌跡予測部
26 平行位置特定部
28 平行位置消失判定部
30 移動距離算出部
32 移動軌跡描画部
34 バックライン描画部
36 後方画像表示処理部
38 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5