特許第6559085号(P6559085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一工業製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559085
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】水性組成物およびコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20190805BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20190805BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20190805BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20190805BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20190805BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20190805BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C08G18/00 C
   C08G18/00 030
   C08G18/08 019
   C08G18/10
   C08G18/42
   C08G18/44
   C08G18/48
   C08G18/75
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-59392(P2016-59392)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-171782(P2017-171782A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年11月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】圓田 安美
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 聡哉
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−227528(JP,A)
【文献】 特表2013−511615(JP,A)
【文献】 特開2002−146181(JP,A)
【文献】 特開2003−231733(JP,A)
【文献】 特開2008−295932(JP,A)
【文献】 特開2013−151666(JP,A)
【文献】 特開2013−241539(JP,A)
【文献】 特開2009−067891(JP,A)
【文献】 特開2005−272592(JP,A)
【文献】 特開2010−065211(JP,A)
【文献】 特開2007−076005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0214939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(イ)ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールから選択される少なくとも1種(ロ)4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−トおよびイソホロンジイソシアネ−トから選択された少なくとも1種および(ハ)ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、乳酸およびグリシンから選択された少なくとも1種を反応させて重合体を得た後前記重合体のカルボキシル基を中和することによりウレタンプレポリマー(a)を合成する工程、
前記ウレタンプレポリマー(a)に一般式(1)で表されるモノグリシジルエーテル化合物(B)を添加する工程、
前記モノグリシジルエーテル化合物(B)添加と同時またはその後に、前記ウレタンプレポリマー(a)とモノグリシジルエーテル化合物(B)の混合物を乳化して乳化物を得る工程、
並びに、前記乳化物に含まれるウレタンプレポリマー(a)を水または/およびポリアミンで鎖伸長し、中和されたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)およびモノグリシジルエーテル化合物(B)を含有する水性組成物を得る工程、
を有する水性組成物の製造方法であって、
前記中和されたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)の酸価が10〜50mgKOH/gであり、
前記モノグリシジルエーテル化合物(B)が一般式(1)で表されるものであり、
中和されたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)/モノグリシジルエーテル化合物(B)=100/0.5〜6(質量比)である、
水性組成物の製造方法。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物およびコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対応型の素材として水性のポリウレタン樹脂は幅広く用いられている。コーティング剤としても用いられており、例えば水性樹脂エマルションに水性エポキシ樹脂を配合してなるもの等が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−170538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献記載のフィルムでは水性エポキシ樹脂を使用しているため、皮膜の耐アルカリ性を初めとする性能が十分ではなかった。保存安定性が良好であり、かつ得られる皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性が良好な水分散体が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らが検討した結果、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)およびモノグリシジルエーテル化合物(B)を含有する水性組成物により上記課題を解決できることを見出した。そのメカニズムは明らかではないが、以下のとおり推察される。モノグリシジルエーテル化合物のグリシジル基は、水性組成物中では未反応のまま存在しているが、硬化時にカルボキシル基と反応し、自由度が高い側鎖として樹脂に導入される。このモノグリシジルエーテル由来の疎水性側鎖は自由度が高いため、側鎖が樹脂表面に集積し、硬化後も膜の疎水性が維持される。そのため、皮膜の耐アルカリ性、耐食性が十分なものとなる。また、好ましい実施形態においては、モノグリシジルエーテル化合物を好適量とすることにより、保存安定性が良好であり、かつ得られる皮膜の加工性が良好なものとなる。
【0006】
本発明は、少なくとも、(イ)ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールから選択される少なくとも1種(ロ)4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−トおよびイソホロンジイソシアネ−トから選択された少なくとも1種(ハ)ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、乳酸およびグリシンから選択された少なくとも1種を反応させて重合体を得た後前記重合体のカルボキシル基を中和することによりウレタンプレポリマー(a)を合成する工程、前記ウレタンプレポリマー(a)に一般式(1)で表されるモノグリシジルエーテル化合物(B)を添加する工程、前記モノグリシジルエーテル化合物(B)添加と同時またはその後に、前記ウレタンプレポリマー(a)とモノグリシジルエーテル化合物(B)の混合物を乳化して乳化物を得る工程、並びに、前記乳化物に含まれるウレタンプレポリマー(a)を水または/およびポリアミンで鎖伸長し、中和されたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)およびモノグリシジルエーテル化合物(B)を含有する水性組成物を得る工程、を有する水性組成物の製造方法であって、前記中和されたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)の酸価が10〜50mgKOH/gであり、前記モノグリシジルエーテル化合物(B)が一般式(1)で表されるものであり、中和されたカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)/モノグリシジルエーテル化合物(B)=100/0.5〜6(質量比)である、水性組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保存安定性が良好であり、かつ得られる皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性が良好な水分散体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0009】
本実施形態の水性組成物は、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)およびモノグリシジルエーテル化合物(B)を含有する。
【0010】
<カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)>
本発明において、ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物であれば、特に限定されない。例えば、従来公知の方法で製造することができ、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール、イソシアネート化合物およびカルボキシル基含有化合物を反応させ、カルボキシル基を中和することでウレタンプレポリマー(a)を得、水または/およびポリアミンで鎖伸長反応することにより得られる。
【0011】
本発明において、前記ポリオールとしては、分子中に水酸基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、多価アルコ−ル、ポリエ−テルポリオ−ル、ポリエステルポリオ−ル、ポリエ−テルエステルポリオ−ル、ポリカ−ボネ−トポリオ−ル、ポリオレフィンポリオ−ル、ポリアクリルポリオ−ル、ポリアセタ−ルポリオ−ル、ポリブタジエンポリオ−ル、ポリシロキサンポリオ−ル、フッ素ポリオ−ル等の分子末端または分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物などがあげられる。多価アルコ−ルとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ブタンジオ−ル、プロピレングリ−ル、ヘキサンジオ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルB、ビスフェノ−ルS、水素添加ビスフェノ−ルA,ジブロムビスフェノ−ルA,1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ジヒドロキシエチルテレフタレ−ト、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエ−テル、トリメチロ−ルプロパン、グリセリン、ペンタエリスリト−ルなどがあげられる。ポリエ−テルポリオ−ルとしては、特に限定されないが、例えば、多価アルコ−ルのアルキレン誘導体、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリチオエ−テルポリオ−ルなどがあげられる。ポリエステルポリオ−ル、ポリエ−テルエステルポリオ−ルとしては特に限定されないが、例えば、多価アルコ−ル、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、ポリエ−テルポリオ−ル、多価カルボン酸エステルからのエステル化物、ヒマシ油ポリオ−ル、ポリカプロラクトンポリオ−ルなどがあげられる。ポリオレフィンポリオ−ルとしては特に限定されないが、例えば、ポリブタジエンポリオ−ル、ポリイソプレンポリオ−ルやこれらの水素添加ポリオ−ルなどがあげられる。これらのうち、ポリエ−テルポリオ−ル、ポリエステルポリオ−ルが好ましい。これらは一種または二種以上を使用することができる。また、水酸基を1つの化合物と併用しても良い。
【0012】
本発明において、前記ポリオ−ル成分の数平均分子量としては、特に限定されないが、皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性の観点から50〜10,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。
【0013】
本発明において、前記ポリイソシアネ−トとしては、特に限定されないが、例えば芳香族、脂肪族、脂環族、芳香脂肪等の有機ポリイソシアネ−トがあげられる。これらのうち、皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性の観点から、脂肪族、脂環族、芳香脂肪等の有機ポリイソシアネ−ト、およびこれらの多量変性体(二量体、三量体等)や、あるいは上記した有機ポリイソシアネ−トと水との反応により生成するビウレット変性体等が好ましい。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、水素添加キシリレンジイソシアネ−ト〔ビス(イソシアネナトメチル)シクロヘキサン〕、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、ノルボルナンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等の有機ポリイソシアネ−ト、これらの変性体がより好ましい。また4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−トがより好ましい。これらは一種または二種以上を使用することができる。
【0014】
本発明において、ウレタンプレポリマー(a)を得るために用いるイソシアネ−ト基と水酸基の割合(モル当量比)は(イソシアネ−ト基:水酸基=)1.1以上:1であれば特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(a)を低粘度とし、また安定な乳化物を得ることができることから1.5〜3.0:1が好ましく、1.6〜2.2:1であることがより好ましい。これらの範囲であれば、皮膜の特性が良好である。
【0015】
本発明において、ウレタンプレポリマー(a)の平均分子量は、乳化性や乳化安定性の観点から、5000以下が好ましく、4000以下が、より好ましい。ここでいう平均分子量とは、仕込み原料の数平均分子量から算出される理論値をいう。
【0016】
前記カルボキシル基含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、乳酸、グリシン等のカルボン酸化合物が挙げられる。
【0017】
前記ウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基の含有量は、特に限定されない。例えば、かかる含有量は、0.07〜2.10mmol/gが好ましく、0.12〜1.80mmol/gがより好ましく、0.17〜1.60mmol/gがさらに好ましい。上記範囲であれば保存安定性、皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性の観点から好ましい。
【0018】
前記ウレタンプレポリマー(a)は、さらに鎖伸長をすることで、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)を得ることができる。前記鎖伸長としては特に限定されないが、水および/またはポリアミンを用いて行うことができる。皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性の観点から、少なくともポリアミンを用いることが好ましい。前記ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドのようなポリヒドラジド等が使用できる。前記ポリアミン化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)の酸価としては10〜50mgKOH/gであることが好ましく、15〜30mgKOH/gであることがより好ましい。これらの範囲であれば、保存安定性、皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性の観点から好ましい。ここでの酸価は、JISK0070−1992に準拠して、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)の固形分1g中に含まれる遊離カルボキシル基を中和するのに要するKOHのmg数より求めた。
【0020】
<モノグリシジルエーテル化合物(B)>
本発明のモノグリシジルエーテル化合物(B)としては、下記式(1)で表される化合物であれば特に限定されない。モノグリシジルエーテル化合物(B)を含有することによって、1分子中に2以上のグリシジル基を有する化合物を使用する場合と比較して、保存安定性、皮膜の耐食性、および加工性が向上する効果が得られる。このメカニズムについては明らかではないが、モノグリシジルエーテル化合物のグリシジル基は、水性組成物中では未反応のまま存在していると考えられ、皮膜の表面に比較的疎水性のモノグリシジルエーテル化合物を集積することができる。塗布後の加熱により、グリシジル基はポリウレタン樹脂のカルボン酸と反応するが、モノグリシジルエーテル化合物はポリウレタン主鎖に絡まることも少なく、硬化後も膜の疎水性が維持される。そのため、皮膜の耐アルカリ性、耐食性が十分なものとなる。
【0021】
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を表す)
【0022】
上記式(1)中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を表すが、このような炭化水素基としては、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0023】
モノグリシジルエーテル化合物としては、直鎖状、分岐状の飽和若しくは不飽和の脂肪族モノアルコール、脂環式モノアルコール又はフェノール、アルキルフェノールのグリシジルエーテルが好ましい。直鎖状、分岐状の飽和若しくは不飽和の脂肪族モノアルコール、脂環式モノアルコール又はフェノール、アルキルフェノール等のモノアルコールの炭素数は、通常3〜30であり、4〜24であることが好ましく、6〜20であることがより好ましい。
【0024】
モノグリシジルエーテル化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族系のモノグリシジルエーテル化合物および芳香族系のモノグリシジルエーテル化合物が挙げられる。これらの化合物は比較的疎水性であり、コーティング剤として用いた場合、皮膜の表面を疎水化させることが可能であるため、皮膜の耐アルカリ性、耐食性を十分なものにすることができることから好ましい。具体的には、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、2−メチル−オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル、ヘプタデカシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ノナデシルグリシジルエーテル、エイコシルグリシジルエーテル、オレイルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、o−/m−/p−フェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o/m/p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−/m−/p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、o−/m−/p−トリルグリシジルエーテル、o−/m−/p−ビフェニルグリシジルエーテル、o−/m−/p−tert−クメニルグリシジルエーテル、1−/2−ナフチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
<水性組成物>
本発明におけるカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)およびモノグリシジルエーテル化合物(B)の含有量としては、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)/モノグリシジルエーテル化合物(B)=100/0.5〜6(質量比)であることが好ましく、100/1〜5(質量比)であることがより好ましい。これらの範囲であれば保存安定性が良好であり、皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性の観点からも好ましい。
【0026】
本発明におけるモノグリシジルエーテル化合物(B)中のグリシジル基が、全て、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)中のカルボキシル基と反応したと仮定した場合の、理論上の未反応のカルボキシル基量は、酸価として8〜20mgKOH/gであることが好ましく、10〜18mgKOH/gであることがより好ましい。ここでの酸価は、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)の固形分1g中に含まれる、理論上未反応の遊離カルボキシル基を中和するのに要するKOHのmg数を原料の仕込み量から算出することで求めた。8mgKOH/g以上であれば保存安定性が良好であり、20mgKOH/g以下であれば皮膜の耐アルカリ性が良好となることから、好ましい。
【0027】
本発明における水性組成物中のカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)の固形分としては、特に限定されないが、例えば水性組成物に対して、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、4〜50質量%がさらに好ましい。これらの範囲であれば、安定性および加工性の観点から好ましい。本発明における水性組成物中のモノグリシジルエーテル化合物(B)の固形分としては、特に限定されないが、例えば水性組成物に対して、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、0.15〜4質量%がさらに好ましい。これらの範囲であれば、保存安定性、および加工性の観点から好ましい。
【0028】
さらに、本発明の水分散体には、必要に応じて一般的に使用される各種添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、例えば、耐候剤、抗菌剤、抗カビ剤、顔料、充填材、防錆剤、顔料、染料、造膜助剤、無機架橋剤、有機架橋剤( 例えばブロックドイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤) 、シランカップリング剤、ブロッキング防止剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機、有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0029】
<水性組成物の製造方法>
本発明の水性組成物の製造方法としては少なくとも、
(1)ウレタンプレポリマー(a)を合成する工程、
(2)ウレタンプレポリマー(a)にモノグリシジルエーテル化合物(B)を添加する工程、
(3)モノグリシジルエーテル化合物(B)添加と同時またはその後に、乳化工程、
および、(4)前記乳化物を鎖伸長しカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)を得る工程、
を有する。
【0030】
本発明の前記(1)ウレタンプレポリマー(a)を合成する工程としては公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、ポリオール、イソシアネート化合物および必要に応じて親水基含有化合物を30℃〜130℃で0.5時間〜10時間程度の反応条件で反応させ、必要に応じてこれを5℃〜55℃に冷却して含まれる親水基を中和、または四級化剤で四級化することでウレタンプレポリマー(a)を得る。尚、溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの任意の有機溶媒を使用することができる。
【0031】
本発明の前記(2)ウレタンプレポリマー(a)にモノグリシジルエーテル化合物(B)を添加する工程としては公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
【0032】
本発明の前記(3)モノグリシジルエーテル化合物(B)添加と同時またはその後に、行う乳化工程としては公知の方法を用いることができ、特に限定されない。この時期に乳化を行うことで、ウレタンプレポリマー(a)およびモノグリシジルエーテル化合物(B)をいずれも均一に分散させ、保存安定性が良好な水分散体を得ることができる。乳化の際に使用する水としては、特に限定されないが、均一に分散させ、保存安定性が良好な水分散体を得る観点から、ウレタンポリマー(a)100重量部に対して水を100〜900重量部を添加することが好ましい。
【0033】
本発明の前記(4)乳化物を鎖伸長しカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(A)を得る工程としては公知の方法を用いることができ、特に限定されない。前記鎖伸長としては特に限定されないが、水および/またはポリアミンを用いて行うことができる。皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性の観点から、少なくともポリアミンを用いることが好ましい。
【0034】
<物性等>
(保存安定性)
本発明の水分散体の実施例記載方法による保存安定性は沈殿などが生じないことが好ましく、沈殿が生じず、増粘しないことがより好ましい。
(耐アルカリ性)
本発明の水分散体から得られる皮膜の耐アルカリ性は、実施例記載方法において、一部で変色あり、または殆ど変色がないことが好ましく、殆ど変色がないことがより好ましい。
(耐食性)
本発明の水分散体から得られる皮膜の耐食性は、実施例記載方法において、錆発生率50%未満であることが好ましく、錆発生率10%未満であることがより好ましい。
(加工性)
本発明の水分散体から得られる皮膜の加工性は、実施例記載方法において、有機皮膜の割れが確認されないことが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにポリカーボネートポリオール(商品名:ETERNACOLL UH−100、宇部興産株式会社製)40.7重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール8.8重量部、ジメチロールプロピオン酸5.1重量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート45.3重量部、メチルエチルケトン90重量部、N−メチルピロリドン30重量部を加え、75℃で2時間反応させて、ポリウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は2.6%であった。次に、この溶液を45℃まで冷却してトリエチルアミン3.9重量部を添加することにより中和させた後、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:エポゴーセー2EH、四日市合成製)1.8重量部を添加し、水210重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化反応をさせた。得られた乳化分散体に、エチレンジアミン1.8重量部を水38重量部に溶解した水溶液を添加して1時間反応させた後、反応溶媒であるメチルエチルケトンを減圧蒸留することにより、不揮発分(固形分)濃度が30重量%である水性組成物を得た。
【0037】
(実施例2、3、6、7、比較例)
モノグリシジルエーテル化合物(B)および相当品(B’)の種類および量を表1の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行った。使用した原料のうち、モノグリシジルエーテル化合物(B)および相当品(B’)としては、セチルグリシジルエーテル(CE−EP、四日市合成社製)、ブチルグリシジルエーテル(DY−BP、四日市合成社製)、およびネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル (デナコールEX−211、ナガセケムテックス社製)を使用した。
【0040】
【表1】
【0041】
(耐アルカリ性)
得られた水性ポリウレタン樹脂組成物を、あらかじめ表面をイソプロパノールで脱脂した電気亜鉛メッキ鋼板(商品名:ノンクロメート処理 ユニジング、太佑機材株式会社製)に乾燥膜厚3μmになるように塗布し、120℃の乾燥機を用いて到達板温80℃まで焼き付けて試験片を作成した。
各試験片を1%NaOH水溶液に常温で5時間浸漬した後、その外観変色を観察し、以下のように評価した。
○:殆ど変色なし。
△:一部で変色あり。
×:変色多い。
【0042】
(耐食性)
得られた水性ポリウレタン樹脂組成物を、あらかじめ表面をイソプロパノールで脱脂した電気亜鉛メッキ鋼板(商品名:ノンクロメート処理 ユニジング、太佑機材株式会社製)に乾燥膜厚3μmになるように塗布し、120℃の乾燥機を用いて到達板温80℃まで焼き付けて試験片を作成した。
各試験片について、塩水噴霧試験を用いて錆発生の有無を目視にて確認し、以下のように評価した。
○:錆発生率10%未満
△:錆発生率10%以上〜50%未満
×:錆発生率50%以上
【0043】
(保存安定性)
得られた水性ポリウレタン樹脂組成物を40℃の恒温槽に保管し、1ヶ月後の変化を目視にて確認し、以下のように評価した。
○:ゲル化あるいは沈殿が生じず、増粘しない。
△:ゲル化あるいは沈殿が生じないが、増粘する。
×:ゲル化あるいは沈殿が生じる。
【0044】
(加工性)
得られた水性ポリウレタン樹脂組成物を、あらかじめ表面をイソプロパノールで脱脂した電気亜鉛メッキ鋼板(商品名:ノンクロメート処理 ユニジング、太佑機材株式会社製)に乾燥膜厚3μmになるように塗布し、120℃の乾燥機を用いて到達板温80℃まで焼き付けて試験片を作成した。
各試験片についてJIS Z2248に準拠し、試験板を室温で180°に折り曲げる1T曲げを行い、このときの曲げ加工部頂部を目視で観察し、以下のように評価した。
○:有機皮膜の割れが確認されない
×:有機皮膜の割れが確認される
【0045】
表1から明らかなとおり、本発明の水性組成物は、保存安定性が良好であり、かつ得られる皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性が良好であることが分かる。一方、モノグリシジルエーテル化合物(B)を含有しない比較例は、劣っていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の水性組成物は、コーティング剤として用いることができる。特に、保存安定性が良好であり、かつ得られる皮膜の耐アルカリ性、耐食性、および加工性が良好であることから、これらの性能が求められる分野に好適に用いることができる。