特許第6559097号(P6559097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559097
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】エンジンのオイル冷却構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/08 20060101AFI20190805BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20190805BHJP
   F01P 5/02 20060101ALI20190805BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20190805BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   F01P11/08 B
   F01P3/18 A
   F01P5/02
   F01P5/06 507
   F01M5/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-130715(P2016-130715)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-3683(P2018-3683A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆志
(72)【発明者】
【氏名】金子 莉菜
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−148920(JP,A)
【文献】 特開2016−070114(JP,A)
【文献】 特開平05−033779(JP,A)
【文献】 実開昭56−154584(JP,U)
【文献】 特開2010−236521(JP,A)
【文献】 特開2002−227648(JP,A)
【文献】 特開平08−135426(JP,A)
【文献】 特開2003−097239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/08
F01M 5/00
F01P 3/18
F01P 5/02
F01P 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体の一端壁に伝動ケースが取付けられ、前記伝動ケースに補機駆動用の伝動機構が設けられているエンジンのオイル冷却構造であって、
前記伝動ケースは、複数のリブ壁を有する伏鍋状の構造体に形成され、前記伝動ケースにおける前記リブ壁により仕切られているケース内室部が、オイルポンプにより循環されるオイルの移送通路となる状態に構成され、
前記伝動ケースに、前記伝動機構より駆動される前記オイルポンプが設けられ、前記ケース内室部は、前記オイルポンプに対する吐出オイルの移送通路又は/及び戻りオイルの移送通路に設定され、
前記リブ壁のうちのチャンバリブ壁により仕切られて前記伝動ケースに凹入形成されているポンプチャンバと、前記チャンバリブ壁の先端面に取付けられるポンプカバーとにより囲まれるスペースに、前記オイルポンプが配置され、
前記リブ壁のうちの前記ケース内室部を形成するための内周リブ壁、第1仕切りリブ壁、及び第2仕切りリブ壁のそれぞれの先端面が、前記チャンバリブ壁の先端面と同一面となる状態に構成され、
単一の平板材よりなる前記ポンプカバーは、前記チャンバリブ壁、前記内周リブ壁、第1仕切りリブ壁、及び第2仕切りリブ壁それぞれの先端に当接させて装着されているエンジンのオイル冷却構造。
【請求項2】
前記ポンプカバーは、前記移送通路となるケース内室部の一端壁側を塞ぐ閉塞部材を兼ねる構成とされている請求項1に記載のエンジンのオイル冷却構造。
【請求項3】
前記伝動ケースは、前記エンジン本体におけるエンジン冷却ファンが配備されている前壁に取付けられている請求項1又は2に記載のエンジンのオイル冷却構造。
【請求項4】
前記一端壁と前記伝動ケースとがガスケットを介して組み付けられており、前記ガスケットは、前記伝動ケースの外郭ラインより外部にはみ出るフィン付の形状に設定されている請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンのオイル冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのオイル冷却構造に係り、詳しくは、エンジン本体の一端壁に伝動ケースが取付けられ、伝動ケースに補機駆動用の伝動機構が設けられているエンジンのオイル冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、エンジンには、動弁装置などの各伝動部やシリンダとピストンとの摺動部に必要となる潤滑用のエンジンオイル(以下、単にオイルと呼ぶ)を圧送するために、クランク軸になどにより駆動されるオイルポンプが装備されている。オイルポンプからのオイルは、各部を潤滑するだけでなく、同時に熱吸収によって冷却も行えることになるので、エンジン稼動中のオイルは高温となっている。
【0003】
そのため、エンジンの機種によっては、オイルの温度を下げるために別体のオイルクーラを設けたり、空冷作用が見込める冷却フィンをオイル通路周辺に設けたりする手段が採られていた。例えば、特許文献1においては、フロントケース(40)の前面に円弧状のオイルクーラ(80)を設ける構成を開示している。
【0004】
また、特許文献2においては、圧送油路を備えたフロントケース(2)の前面に、圧送油路(6)の前側や横側に位置させた多数の冷却フィン(7)が形成されており、それら冷却フィン(7)に送風機(10)による冷却風が当たるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−138621号公報
【特許文献2】特開2003−097239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2が開示する手段では、オイルの冷却効果をある程度は見込める。しかしながら、そのための配置スペースが必要になって寸法面で大型化するとともに、専用のオイルクーラや送風機などが必要であり、部品点数が増加するため、改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明の目的は、さらなる構造工夫により、部品点数の増加や必要スペースの増大を極力伴うことがないようにしながら、オイルの冷却性能を向上させることができるエンジンのオイル冷却構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、エンジン本体1の一端壁1aに伝動ケース9が取付けられ、前記伝動ケース9に補機駆動用の伝動機構2Aが設けられているエンジンのオイル冷却構造において、
前記伝動ケース9は、複数のリブ壁9B〜9Hを有する伏鍋状の構造体に形成され、前記伝動ケース9における前記リブ壁9B〜9Hにより仕切られているケース内室部20,22,24,30が、オイルポンプPにより循環されるオイルの移送通路Wとなる状態に構成され
前記伝動ケース9に、前記伝動機構2Aより駆動される前記オイルポンプPが設けられ、前記ケース内室部20,22,24,30は、前記オイルポンプPに対する吐出オイルの移送通路W又は/及び戻りオイルの移送通路Wに設定され、
前記リブ壁9B〜9Hのうちのチャンバリブ壁9Fにより仕切られて前記伝動ケース9に凹入形成されているポンプチャンバ17と、前記チャンバリブ壁9Fの先端面に取付けられるポンプカバー18とにより囲まれるスペースに、前記オイルポンプPが配置され、
前記リブ壁9B〜9Hのうちの前記ケース内室部20,22,30を形成するための内周リブ壁9C、第1仕切りリブ壁9G、及び第2仕切りリブ壁9Hのそれぞれの先端面が、前記チャンバリブ壁9Fの先端面と同一面となる状態に構成され、
単一の平板材よりなる前記ポンプカバー18は、前記チャンバリブ壁9F、前記内周リブ壁9C、第1仕切りリブ壁9G、及び第2仕切りリブ壁9Hそれぞれの先端に当接させて装着されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のエンジンのオイル冷却構造において、
前記ポンプカバー18は、前記移送通路Wとなるケース内室部20,22,30の一端壁1a側を塞ぐ閉塞部材を兼ねる構成とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のエンジンのオイル冷却構造において、
前記伝動ケース9は、前記エンジン本体1におけるエンジン冷却ファン6が配備されている前壁1aに取付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンのオイル冷却構造において、
前記一端壁1aと前記伝動ケース9とがガスケット35を介して組み付けられており、前記ガスケット35は、前記伝動ケース9の外郭ラインより外部にはみ出るフィン35a付の形状に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、リブ壁を適宜に設ける構造工夫により、伝動ケースのデッドスペースをオイルの貯留箇所及び通り道に利用し、伝動ケースをオイルの大容量な放熱器として機能させることができる。
【0013】
伝動ケースにはデッドスペースが多いことに着目して、伝動ケースの内側をリブ壁によって仕切ってケース内室部を形成し、ケース内室部をオイルの貯留や通り道となるように構成したものである。従って、オイルは大容量を有するケース内室部から伝動ケースに効率よく熱伝導でき、外部露出している伝動ケースを放熱器として機能させることが可能になる。
【0014】
その結果、さらなる構造工夫により、部品点数の増加や必要スペースの増大を極力伴うことがないようにしながら、オイルの冷却性能を向上させることができるエンジンのオイル冷却構造を提供することができる。
【0015】
請求項1の発明によれば、伝動ケースに、吐出オイルの移送通路や戻りオイルの移送通路だけでなくオイルポンプ自体も設けられているので、オイルの冷却作用が強化されるとともに、オイルポンプが別の場所に設けられている場合に比べて、伝動ケースの移送通路とオイルポンプとを連通させる経路を設ける必要がなく、部品点数の削減やコスト削減が可能となる利点がある。
【0016】
この場合、請求項1の発明のように、チャンバリブ壁により仕切られて伝動ケースに凹入形成されたポンプチャンバと、チャンバリブ壁の先端面に取付けられたポンプカバーとにより囲まれるスペースにオイルポンプが配置される構成とすれば、2部品でポンプの装備が行えて好都合である。
【0017】
請求項1の発明によれば、ケース内室部を形成するための内周リブ壁、第1仕切りリブ壁、及び第2仕切りリブ壁のそれぞれの先端面とチャンバリブ壁の先端面とが同一面として、一枚の平板材により、2つの機能を有するポンプカバーを簡単廉価に構成できる効果がある。
【0018】
請求項2の発明によれば、ポンプカバーが、移送通路となるケース内室部の一端壁側を塞ぐ閉塞部材を兼ねており、一つの部品で2つの機能を発揮できる合理化が行える利点がある。
【0019】
請求項3の発明によれば、伝動ケースが、エンジン本体におけるエンジン冷却ファンが装備される前壁に取付けられているので、伝動ケースは自然放熱(輻射熱)だけでなく、冷却風の空冷作用による強制放熱も行われるようになり、オイルの冷却効果がより一層良好なものとなる利点がある。
【0020】
請求項4の発明によれば、伝動ケースが、エンジン本体におけるエンジン冷却ファンが装備される前壁に取付けられているので、伝動ケースは自然放熱(輻射熱)だけでなく、冷却風の空冷作用による強制放熱も行われるようになり、オイルの冷却効果がより一層良好なものとなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ディーゼルエンジンの正面図
図2図1のディーゼルエンジン前端部の右側面図
図3】フロントカバー単品の背面図
図4図3のフロントカバーであって、ケース内室部を示す背面図
図5図4のA−A線で切ったエンジン前部の概略の断面図
図6図3のフロントカバーの正面図
図7】ポンプカバー単品の平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明によるエンジンのオイル冷却構造の実施の形態を、農機や建機に用いられる立形水冷直列ディーゼルエンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。なお、本エンジンにおいては、クランク軸方向でエンジン冷却ファンが装備されている側を前、その反対側を後、オルタネータ側を右、その反対側を左と定義する。
【0023】
立形水冷直列ディーゼルエンジンEは、図1図2に示されるように、クランク軸2を備えるエンジン本体1、エンジン本体1の下側に組付けられているオイルパン3、クランク軸2に装備されている補機駆動プーリ4、クランク軸2の後端部に装備されているフライホイール5、エンジン本体1の前側に配備されているエンジン冷却ファン6、オルタネータ7などを備えて構成されている。なお、符記は省略するが、エンジン本体1の一例は、クランクケース部とその上側のシリンダ部とを備えるシリンダブロックであり、その上にシリンダヘッドが組み付けられている。
【0024】
補機駆動プーリ4と、エンジン冷却ファン6のファンプーリ6aと、オルタネータ7のオルタネータプーリ7aとに亘って無端ベルト8を巻回してあり、エンジン冷却ファン6とオルタネータ7とが駆動回転されるように構成されている。クランク軸2は、エンジン本体1の前壁(一端壁の一例)1aに組み付けられているフロントカバー(伝動ケース)9を貫通して前に突出する軸前端部(「補機駆動用の伝動機構」の一例)2Aを有しており、その軸前端部2Aに補機駆動プーリ4が取付けられている。ファンプーリ6aには、冷却水を循環させるウォータポンプ13が伝動連結されている。
【0025】
ここで、図1,2中の符号10はオイル(エンジンオイル)の冷却装置、Pはオイルを圧送するオイルポンプ、11はオイルフィルタ、12はラジエータ(図示省略)からの冷却水戻り管、14はラジエータへの冷却水圧送管、15はシリンダヘッドの上に組付けられているシリンダヘッドカバー、16は燃料噴射ポンプをそれぞれ示す。
【0026】
次に、オイル冷却装置10及びオイル冷却構造について説明する。オイル冷却装置10は、図1図4に示されるように、オイルの移送通路Wが大容量のものとして内部形成されているフロントカバー9により構成されている。つまり、フロントカバー9の表面から大量に熱放散されること、及びエンジン冷却ファン6の風による空冷作用により、フロントカバー9内を流れるオイルを効率よく冷却できるオイル冷却装置10となっている。
【0027】
図3図6に示されるように、フロントカバー9は、左右上下に向く主壁9A、共に前後に向くリブである外周リブ壁9B及び内周リブ壁9Cを有するアルミ合金製で伏鍋状の構造体に形成されている。一般に、各種ポンプや動弁装置を駆動するための伝動機構を収容する伝動ケースは、アルミ合金や鋳鉄、鍛鉄などの金属製で、複数のリブ壁で補強された伏鍋状のものに形成されている。従って、本来的に伝動ケースには、伝動機構などの配置場所以外の部分に比較的デッドスペース(死空間)が多く存在している部品である。
【0028】
外周リブ壁9B及び内周リブ壁9Cは、エンジン本体1やポンプカバー18(後述)を取付ける平坦面に形成されている。外周リブ壁9Bの下部には、オイルの戻り経路を設けるためのループ状リブ壁9Eが形成されている。
また、フロントカバー9には、外周リブ壁9Bと内周リブ壁9Cとを同一平面状に連結する2箇所の連結リブ壁9Dや複数箇所の補強リブ9rなどが形成されているとともに、軸前端部2Aが通る部分に、トロコイド型のオイルポンプPを収容するためのポンプチャンバ17が凹入形成されている。
【0029】
内周リブ壁9Cは、ポンプチャンバ17を仕切るためのチャンバリブ壁9Fの一部を含んでおり、また、吐出路を形成するための第1及び第2仕切りリブ壁9G,9Hが、内周リブ壁9Cとチャンバリブ壁9Fとに跨る状態で形成されている。第1,第2仕切りリブ壁9G,9H及びチャンバリブ壁9Fは、内周リブ壁9Cと同一平面状のリブに形成されている。内周リブ壁9Cには、これと互いに同じ外郭形状を有する鋼板製のポンプカバー18がボルト止めされ、内周リブ壁9Cの内側部位を閉塞させる蓋として機能している。
【0030】
図3に示されるように、オイルポンプPから吐出されたオイルは、二つの移送通路W1,W2を通ってフロントカバー9から出てゆく。第1経路W1(W)は、図3に破線の矢印で示されるように、ポンプチャンバ17の吐出側部位17aに開口する状態でフロントカバー9に形成されている屈曲トンネル路26を通り、外周リブ壁9Bに形成されている取出し孔27から、エンジン本体1の各部(オイルギャラリなど)に流れてゆく。
【0031】
第2経路W2(W)は、図3に示されるように、実線の矢印で示す次のルートである。即ち、チャンバリブ壁9Fに形成されている吐出切欠き19→第1ケース内室部20→第1仕切りリブ壁9Gの第1切欠き21→第2ケース内室部22→内周リブ壁9Cに形成されている第3切欠き23→第3ケース内室部24→エンジン本体1のオイル受部25。また、オイルパン3のオイルはストレーナ28から、ループ状リブ壁9Eに形成されている戻し口29aを有する戻しトンネル路29(「移送通路W」の一例)を通ってポンプチャンバ17の吸入側部位17bに流れてゆく。なお、トンネル路29の右横は、リリーフバルブを組み込む管路用の突出部(符記省略)である。
【0032】
第1ケース内室部20は、内周リブ壁9C、第1及び第2仕切りリブ壁9G,9H、及びチャンバリブ壁9Fに囲まれた左右に細長いスペースである。第2ケース内室部22は、内周リブ壁9C、チャンバリブ壁9F、及び第1仕切りリブ壁9Gで囲まれた大面積で大容量のスペースである。第3ケース内室部24は、外周リブ壁9Bの右側部分と内周リブ壁9Cの右側部分との間に形成されている細長いスペースである。また、第2仕切りリブ壁9H、内周リブ壁9C、及びチャンバリブ壁9Fで囲まれた第4ケース内室部30が形成されており、第2仕切りリブ壁9Hに形成されている第2切欠き31により、第1ケース内室部20に連通されている。
【0033】
図3図4に示されるように、オイルポンプP(図1参照)は、チャンバリブ壁9Fにより仕切られてフロントカバー9に凹入形成されているポンプチャンバ17と、チャンバリブ壁9Fの先端面に取付けられるポンプカバー18とにより囲まれるスペースに配置されている。オイルポンプPは、一例として、図4に示されるように、軸前端部2Aで回転駆動されるインナロータ36と、インナロータ36と咬合するアウタロータ37とを有するトロコイド型のポンプに構成されている。なお、オイルポンプPは、図1,3においては、その外郭線のみ示すものとする。
【0034】
ポンプカバー18は、図4図5図7に示されるように、ほぼ内周リブ壁9Cの外郭形状に沿った形状を有する平坦な一枚の鋼板により構成され、複数のボルト通し孔18a、軸前端部2Aを通す大孔18b、ボルト頭逃げ孔18c、カバー隆起部逃げ孔18d、軸逃げ孔18eが形成されている。複数のボルト(図示省略)によりポンプカバー18が内周リブ壁9Cなどに取付けられた状態では、オイルポンプPの内側枠体として機能するだけでなく、移送通路W2(W)となる第1ケース内室部20、第2ケース内室部22、及び第4ケース内室部30の一端壁1a側の開口部を閉塞する蓋となる閉塞部材を兼ねる構成されている。
【0035】
複数のリブ壁9B〜9Hのうち、第1ケース内室部20、第2ケース内室部22、第4ケース内室部30を形成するための内周リブ壁9C、第1仕切りリブ壁9G、及び第2仕切りリブ壁9Hのそれぞれの先端面が、チャンバリブ壁9Fの先端面と同一面となる状態に構成されている。そして、単一の鋼板よりなるポンプカバー18は、チャンバリブ壁9F、内周リブ壁9C、第1仕切りリブ壁9G、及び第2仕切りリブ壁9Hそれぞれの先端に、ガスケット32を介して密接する状態でボルト止め装着されている。
【0036】
図5に示されるように、フロントカバー9は、その外周リブ壁9Bが前壁1aに、ガスケット35介してのシール状態でエンジン本体1にボルト止めされている。従って、ポンプカバー18による閉塞作用の及ばない第3ケース内室部24は、外周リブ壁9B、内周リブ壁9C、連結リブ壁9D、ループ状リブ壁9E、及びエンジン本体1により囲まれてなるスペース(移送通路W2)である。
なお、図5に示される33は、下側の給排気カムギヤと上側のアイドルギヤとが咬合する補機駆動用の伝動機構(燃料噴射ポンプや動弁装置などを駆動するギヤ伝動機構)であり、前壁1aに配備されてフロントカバー9により覆われている。また、34は、フロントカバー9におけるポンプチャンバ17から前側に突設される筒状の軸カバー部である。
【0037】
図4に仮想線で示されるように、前壁1aとフロントカバー9との間に介装されるガスケット35は、フロントカバー9の外郭ラインより外方にはみ出る外冷却フィン(フィンの一例)35a、及び/又は、外周リブ壁9Bの先端面より内側にはみ出る内冷却フィン(フィンの一例)35bを備えたものでも良い。加えて、そのフィン35a,35b付きのガスケット35を、熱伝導性に優れる銅製とすれば、よりオイルの冷却性向上に寄与できて好都合である。
また、図示は省略するが、フロントカバー9などに付設されるオイル給排用の接続パイプを、熱の放散性に優れるヒートシンク付ヒートパイプで構成すれば好都合である。
【0038】
オイルポンプPから吐出されたオイルは、第1ケース内室部20から第2ケース内室部22及び第3ケース内室部24を通るが、第4ケース内室部30にも吐出オイルが満たされる。オイルが、それら4つのケース内室部20,22,24,30に満たされるので、フロントカバー9にオイルの熱が素早く、効率よく熱伝導され、フロントカバー9自体が大容量の放熱器(オイルクーラ)として機能できるものとなる。なお、細長い湾曲したオイルの移送通路W2である第3ケース内室部24は、ポンプチャンバ17の向こう側までオイルが入り込み可能な形状になっている。
【0039】
第4ケース内室部30は、オイルが貯まるだけであるが、貯まっているオイルからの熱伝導により、フロントカバー9の良好な方熱作用が期待できる。なお、第1ケース内室部20と第4ケース内室部30とを連通する第2切欠き31を、互いに離して2箇所以上設け、第4ケース内室部30をオイルが流れて通過可能となる構成としても良い。
【0040】
従って、フロントカバー9の内部スペースを、オイルの貯留及び移送通路として有効利用することにより、フロントカバー9自体が放熱器になり、部品点数の増加や専用の油路を設けることなくオイルの冷却効果を高めることが可能になる。しかも、フロントカバー9の外表面には、エンジン冷却ファン6による冷却風が当り、空冷作用も加わってより一層オイルの冷却効果が増大する利点がある。
【0041】
〔別実施形態〕
例えば、オイルポンプPが前壁1aなど、フロントカバー以外の場所に設置され、そのオイルの移送通路がフロントカバーのケース内室部を通る構成でも良い。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジン本体
1a 一端壁(前壁)
2A 軸前端部(補機駆動用の伝動機構)
6 エンジン冷却ファン
9 フロントカバー(伝動ケース)
9B 外周リブ壁
9C 内周リブ壁
9C 連結リブ壁
9D 連結リブ壁
9E ループ状リブ壁
9F チャンバリブ壁
9G 第1仕切りリブ壁
9H 第2仕切りリブ壁
17 ポンプチャンバ
18 ポンプカバー
20 第1ケース内室部
22 第2ケース内室部
24 第3ケース内室部
30 第4ケース内室部
P オイルポンプ
W オイルの移送通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7