(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559108
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】切り替え弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 15/18 20060101AFI20190805BHJP
F16K 11/14 20060101ALI20190805BHJP
F15B 11/08 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
F16K15/18 Z
F16K11/14 Z
!F15B11/08 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-179374(P2016-179374)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-44600(P2018-44600A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】100086933
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125117
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 悠
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−194352(JP,A)
【文献】
特開平02−309073(JP,A)
【文献】
実開昭52−121801(JP,U)
【文献】
特許第4183632(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/18
F16K 11/14
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられた孔に装着され、一方の弁体が弁座に当接して閉じた状態で他方の弁体が弁座から離れて開くことが可能なようにシャトルを介して対向して配置された2つのチェック弁と、を備え、
前記シャトルは、
円柱状のロッド部と、前記ロッド部よりも径の大きい鍔部と、を有し、
前記弁体は、
前記ロッド部が貫通して摺動するロッド摺動孔と、前記鍔部が摺動するシャトル室と、を有し、
2つの前記チェック弁のいずれか片方の前記弁体に対し閉じる方向に液圧が加わったときに、当該液圧が前記鍔部に作用して前記ロッド部を押し、これにより前記シャトルが他の片方のチェック弁の前記弁体を押して当該チェック弁を開くものであり、
前記鍔部は、外周面が前記シャトル室の内周面を密に摺動し、
前記鍔部には、前記シャトル室における前記ロッド摺動孔に連通する側の内端面と当接する側の面に、前記内端面との間で当接したときにシール性を得るための円環状の突起部が、前記鍔部の外周縁から内側に設けられている、
ことを特徴とする切り替え弁装置。
【請求項2】
前記シャトル室の前記内周面の内径と前記弁座の内径との比が1対1に形成されている、
請求項1または2記載の切り替え弁装置。
【請求項3】
前記弁体は、
前記シャトル室が形成されてその一方の端面が開放された主弁体部と、
前記主弁体部の開放された端面を塞ぐように配置されて一体的に結合した副弁体部と、を有し、
前記シャトルの端部が前記副弁体部の端面に当接して押すことにより当該チェック弁が開かれる、
請求項1または2記載の切り替え弁装置。
【請求項4】
前記副弁体部は、円筒状のガイド部を有しており、
前記ガイド部は、その外周面が前記ハウジングに対して固定的に設けられたガイド孔の内周面を摺動し、その内周面側には当該弁体を閉じる方向に付勢するバネ部材が設けられている、
請求項3記載の切り替え弁装置。
【請求項5】
前記ハウジングに設けられた孔には、先端部に前記弁座が形成された円筒状の弁座部材が嵌まり込んで固定されており、
前記弁座部材の内周面には、前記ガイド孔が形成された栓部材が嵌まり込んで固定されており、
前記栓部材と前記副弁体部との間に、前記バネ部材が設けられている、
請求項4記載の切り替え弁装置。
【請求項6】
前記弁座部材の周面には当該弁座部材の内側と外側とを連通する孔が設けられ、
前記弁座部材の前記弁座につながる内周面と前記主弁体部の外周面との間に間隙を有する、
請求項5記載の切り替え弁装置。
【請求項7】
前記主弁体部における前記シャトル室の底部に、当該シャトル室の内部と外部とを連通する孔が設けられている、
請求項3ないし6のいずれかに記載の切り替え弁装置。
【請求項8】
前記シャトルは、
前記ロッド部と前記鍔部とをそれぞれ有する2つのシャトル片が同軸状に配置され、それぞれのロッド部の端部が互いに当接して押し合うことが可能となっている、
請求項1ないし7のいずれかに記載の切り替え弁装置。
【請求項9】
前記主弁体部における前記シャトル室の前記内周面および前記ロッド摺動孔によって、前記シャトル片が摺動可能に支持されている、
請求項8記載の切り替え弁装置。
【請求項10】
2つの前記チェック弁の双方の前記弁体に対し閉じる方向に液圧が加わっていないときに、2つの前記チェック弁の双方の前記弁体がそれぞれに対応する前記弁座に当接して2つの前記チェック弁の双方を閉じる、
請求項1ないし9のいずれかに記載の切り替え弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧を受けて2つの流路の一方を開き他方を閉じる切り替え弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのチェック弁を機械的に結合して連動させる切り替え弁装置が各種の液圧回路において用いられている。例えば、双方向ポンプとモータとを用いて複動片ロッド型の油圧シリンダを駆動する油圧回路において、シリンダヘッド側の流路とシリンダロッド側の流路とのロッド体積分の流量差を補うために差分の作動油をタンクから流路へ供給したりタンクへ戻したりするのに切り替え弁装置が用いられる。
【0003】
この種の切り替え弁装置に関して様々な構造が提案されている。特許文献1には、棒状のシャトルによって2つのチェック弁を結合する構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、油圧が加わっていないときの2つのチェック弁がいずれも閉じた状態となる構造の切り替え弁装置が開示されている。
【0005】
すなわち、従来の切り替え弁装置201の構造を示す
図5において、切り替え弁装置201は、2つのチェック弁203,204およびこれら2つのチェック弁203,204を機械的に結合する円柱状のシャトルロッド209を有している。2つのチェック弁203,204は、開閉すべき流路に油圧が加わっていない非加圧状態において、図のように両方とも閉じる。一方に油圧が加わった加圧状態(一方に他方より大きい圧力が加わった状態を含む)では、油圧が加わった一方は閉じたままで他方が開く。
【0006】
図5において、ハウジング202は、左右方向の全長にわたる貫通孔220を有する。貫通孔220は、シャトルロッド209が摺動する小径部221と、小径部221の両側に形成されて小径部221と連なる2つの中径部222a,222bと、2つの中径部222a,222bのそれぞれと連なる2つの大径部223a,223bとを有する。中径部222a,222bの内径はシャトルロッド209の外径よりも大きくかつ弁体205,206の外径よりも小さい。大径部223a,223bの内径は弁体205,206の外径よりも大きい。弁体205,206は、コイルばね207,208によって弁座側へ付勢されている。
【0007】
そして、弁体205,206に大径部256,266と小径部257,267とが連なる透孔255,265を設け、それぞれの大径部256,266にシャトルロッド209の端部を嵌入し、2つのチェック弁203,204のいずれか片方の弁体205,206における小径部257,267内に油圧が加わったときに、シャトルロッド209が残る片方のチェック弁の弁体205,206を押して当該チェック弁を開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4183632号公報
【特許文献2】特許第5700449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に示す従来の切り替え弁装置201において次の問題があった。
【0010】
すなわち、各弁体205,206を閉じる方向に作用する油圧の有効面積は、弁座231,232の内径である中径部222a,222bの内径によって決まる。他方、相手の弁体205,206を開ける方向に作用する油圧の有効面積は、シャトルロッド209の外径つまり大径部256,266の内径によって決まる。
【0011】
従来の構造では、中径部222a,222bの内径は大径部256,266の内径よりもかなり大きく、その有効面積比が例えば5倍程度と大きい。
【0012】
そのため、シャトルロッド209の一方の端面に油圧が加わっても、相手側の弁体205,206に所定の油圧が作用している場合には相手側の弁体205,206を開くことができないことがあった。このような現象は、特に油圧シリンダの往動と復動とを切り替え時に発生することがあり、動作が不安定となっていた。
【0013】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、ある程度の油圧が相手側の弁体に作用している場合でも相手側の弁体を開くことができる、動作の安定した切り替え弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る実施形態の切り替え弁装置は、ハウジングと、前記ハウジングに設けられた孔に装着され、一方の弁体が弁座に当接して閉じた状態で他方の弁体が弁座から離れて開くことが可能なようにシャトルを介して対向して配置された2つのチェック弁と、を備え、前記シャトルは、円柱状のロッド部と、前記ロッド部よりも径の大きい鍔部と、を有し、前記弁体は、前記ロッド部が貫通して摺動するロッド摺動孔と、前記鍔部が摺動するシャトル室と、を有し、2つの前記チェック弁のいずれか片方の前記弁体に対し閉じる方向に液圧が加わったときに、当該液圧が前記鍔部に作用して前記ロッド部を押し、これにより前記シャトルが他の片方のチェック弁の前記弁体を押して当該チェック弁を開く。
【0015】
そして、前記鍔部は、外周面が前記シャトル室の内周面を密に摺動し、前記鍔部には、前記シャトル室における前記ロッド摺動孔に連通する側の内端面と当接する側の面に、前記内端面との間で当接したときにシール性を得るための円環状の突起部が
、前記鍔部の外周縁から内側に設けられている。
【0016】
また好ましくは、前記シャトル室の内周面の内径と前記弁座の内径との比が1対1に形成されている。
【0017】
好ましくは、前記弁体は、前記シャトル室が形成されてその一方の端面が開放された主弁体部と、前記主弁体部の開放された端面を塞ぐように配置されて一体的に結合した副弁体部と、を有し、前記シャトルの端部が前記副弁体部の端面に当接して押すことにより当該チェック弁が開かれる。
【0018】
好ましくは、前記副弁体部は、円筒状のガイド部を有しており、前記ガイド部は、その外周面が前記ハウジングに対して固定的に設けられたガイド孔の内周面を摺動し、その内周面側には当該弁体を閉じる方向に付勢するバネ部材が設けられている。
【0019】
好ましくは、前記ハウジングに設けられた孔には、前記弁座が形成された円筒状の弁座部材が嵌まり込んで固定されており、前記弁座部材の内周面には、前記ガイド孔が形成された栓部材が嵌まり込んで固定されており、前記栓部材と前記副弁体部との間に、前記バネ部材が設けられている。
【0020】
好ましくは、前記主弁体部における前記シャトル室の底部に、当該シャトル室の内部と外部とを連通する孔が設けられている。
【0021】
好ましくは、前記シャトルは、前記ロッド部と前記鍔部とをそれぞれ有する2つのシャトル片が同軸状に配置され、それぞれのロッド部の端部が互いに当接して押し合うことが可能となっている。
【0022】
好ましくは、前記主弁体部における前記シャトル室の内周面および前記ロッド摺動孔によって、前記シャトル片が摺動可能に支持されている。
【0023】
好ましくは、2つの前記チェック弁の双方の前記弁体に対し閉じる方向に液圧が加わっていないときに、2つの前記チェック弁の双方の前記弁体がそれぞれに対応する前記弁座に当接して2つの前記チェック弁の双方を閉じる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ある程度の油圧が相手側の弁体に作用している場合でも相手側の弁体を開くことができ、動作の安定した切り替え弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る切り替え弁装置の非加圧状態の断面正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る切り替え弁装置の加圧状態の断面正面図である。
【
図3】
図1における一方のチェック弁を拡大して示す図である。
【
図4】切り替え弁装置を有する油圧シリンダ装置の回路図の例である。
【
図5】従来の切り替え弁装置の構造を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜
図3には、本発明の実施形態に係る切り替え弁装置1の断面正面図が示されている。
図1は非加圧状態を示し、
図2は加圧状態を示す。
図3にはチェック弁3が詳しく示されているので、チェック弁3自体の説明においては
図3を参照するのがよい。
【0027】
図1および
図2において、切り替え弁装置1は、ハウジング2と、ハウジング2に設けられた孔20に装着された2つのチェック弁3,4を備える。孔20には、孔21,22a,23a,22b,23bが含まれる。
【0028】
ハウジング2には、孔21に連通する孔25、孔23aに連通する孔26,28、孔23bに連通する孔27,29が形成される。
【0029】
チェック弁3,4は、それぞれ弁体5,6を備える。一方の弁体5,6が弁座31に当接して閉じた状態で、他方の弁体6,5が弁座31から離れて開くことが可能なように、一直線状に配置された2つのシャトル片44a,44bからなるシャトル44を介して対向して配置されている。
【0030】
シャトル44は、ロッド部441と鍔部442とをそれぞれ有する2つのシャトル片44a,44bが同軸状に配置され、それぞれのロッド部441の端部が互いに当接して押し合うことが可能となっている。
【0031】
すなわち、シャトル片44a,44bは、それぞれ、円柱状のロッド部441と、ロッド部441よりも径の大きい鍔部442とを有する。鍔部442は、弁体5,6に設けられたシャトル室SH内を摺動する。鍔部442のロッド部441とは反対側に、ロッド部441と同径のロッド部445を有し、ロッド部445の端面が弁体5,6に当接してこれを押すことが可能である。
【0032】
2つのチェック弁3,4の双方の弁体5,6に対し閉じる方向に液圧が加わっていないときに、
図1に示すように、2つのチェック弁3,4の双方の弁体5,6がそれぞれに対応する弁座31に当接して2つのチェック弁3,4の双方を閉じる。
【0033】
つまり、孔26,28と孔25と孔27,29とのそれぞれの間が遮断される。なお、孔26,28同士、および孔27,29同士の間は常に連通する。また、孔25の液圧が孔26,28または孔27,29の液圧よりも高くなったときは、対応するチェック弁3,4が開く。
【0034】
他方、2つのチェック弁3,4のいずれか片方の弁体5,6、例えば弁体6に対し閉じる方向に液圧が加わったときに、
図2に示すように、当該液圧が鍔部442に作用してロッド部441を押し、これによりシャトル44が他の片方のチェック弁3の弁体5を押して当該チェック弁3を開く。
【0035】
つまり、孔27,29に液圧が加わったときに、シャトル片44bが
図1および
図2の左方向へ押され、これによりシャトル片44aが同様に押され、チェック弁3が開き、孔26,28と孔25との間が連通する。
【0036】
以下、切り替え弁装置1の構成を詳しく説明する。
【0037】
なお、2つのチェック弁3,4の構造は互いに同じであるので、特に必要のない場合には一方のチェック弁3のみについて主として説明する。また、チェック弁3,4における対応する構成要素について、チェック弁3については符号「a」を付加し、チェック弁4については符号「b」を付加して示すことがある。
【0038】
図1〜
図3に示すように、切り替え弁装置1のハウジング2は、左右方向の全長にわたって貫通する孔20を有する。孔20の一部が、上に述べた孔22a,23a,22b,23bである。孔20の両端の開口部にネジが形成されており、ここにチェック弁3,4がネジ込まれて固定されている。
【0039】
主に
図3を参照して、チェック弁3は、弁座部材41a、弁体5、シャトル片44a、および栓部材47aなどからなる。
【0040】
弁座部材41aは、円筒状であり、先端部の内側に弁座31が形成され、孔23aに嵌まり込み、孔20の開口部のネジとネジ結合により軸方向に位置調整され、ロックナット45aにより固定される。
【0041】
弁座部材41aの外周面と孔23aおよび孔22aとの間は、2つのパッキンによりそれぞれシールされる。弁座部材41aの周面の4ヵ所には孔411が設けられ、これによって弁座部材41aの内側と外側とが連通される。
【0042】
このように、孔20の開口部のネジには、弁座31が形成された円筒状の弁座部材41aが嵌まり込んでネジ結合により固定されている。
【0043】
弁体5は、シャトル室SHが形成されてその一方の端面が開放された主弁体部43aと、主弁体部43aの開放された端面を塞ぐように配置されてネジにより一体的に結合した副弁体部42aとを有する。
【0044】
主弁体部43aは、径小筒状部431、底板部432、および径大筒状部433を有する。
【0045】
径小筒状部431は、円筒状であり、ロッド摺動孔431aを有する。底板部432は、円環状であり、両面の間を貫通する複数の孔437を有する。孔437によって、空間SHbと孔25との間が連通する。底板部432の外面の端縁には、弁座31に当接してシールするための傾斜面を有するシール部32が設けられる。
【0046】
なお、弁座31も傾斜面を有し、弁座31の傾斜角とシール部32の傾斜角とは、例えば1度程度だけ僅かにずれており、弁座31の角縁にシール部32の面が当接したときの食い込みや摩耗を防いでいる。
【0047】
径大筒状部433は、その内周面側に上に述べたシャトル室SHが形成され、鍔部442が密に摺動する。径大筒状部433には、シャトル室SHにおける底板部432とは反対側の空間SHaに連通するよう、複数の孔436が設けられる。
【0048】
主弁体部43aにおけるシャトル室SHの内周面およびロッド摺動穴431aによって、シャトル片44aが摺動可能に支持される。
【0049】
シャトル片44aの鍔部442には、空間SHbに面する表面、つまり底板部432に対向する側の表面、言い換えれば、シャトル室SHにおけるロッド摺動孔431aに連通する側の内端面435と当接する側の面に、内端面435に当接したときにシール性を得るための円環状の突起部443が設けられる。
【0050】
突起部443は、鍔部442の外周縁から僅かに内側に設けられている。突起部443の寸法の例をあげると、高さ0.5〜1mm程度、幅1mm程度である。これ以外の寸法でもよい。なお、上に述べた孔437は、突起部443よりも半径方向の内側に設けられる。
【0051】
したがって、
図3において、孔26に液圧が加えられ、これによって弁体5が右方向に移動してシール部32が弁座31に当接することにより、チェック弁3が閉じる。このとき、液圧が孔436を介してシャトル室SHに流入し、液圧によって鍔部442を右方向へ押すことにより、シャトル片44aが同様に移動し、突起部443が内端面435に当接してこの部分をシールし、液圧の漏れを防ぐ。これによって、孔26と孔25との間が遮断される。
【0052】
副弁体部42aは、ガイド部421およびネジ込み部422を有する。
【0053】
ガイド部421は、円筒状であり、その外周面が、ハウジング2に対して固定的に設けられた栓部材47aのガイド孔471の内周面を摺動する。ガイド部421の内周面側はバネ室となっており、ここに弁体5を閉じる方向に付勢するバネ部材7aが設けられる。ガイド部421には、バネ室である内周面側と孔26に連通する外周面側とを連通するよう、複数の孔424が設けられる。
【0054】
ネジ込み部422は、外周面の一部にネジが設けられ、主弁体部43aの径大筒状部433の内周面に設けたネジと螺合し、これらが一体的に結合される。ネジ込み部422には、ガイド部421のバネ室とシャトル室SHとを連通する複数の孔425が設けられる。
【0055】
このように、弁座部材41aの内周面には、ガイド穴471が形成された栓部材47aが嵌まり込み、弁座部材41aの開口部のネジとネジ結合により軸方向に位置調整され、ロックナット46aにより固定される。栓部材47aを軸方向に位置調整することにより、バネ部材7aの強さを調整することが可能である。なお、栓部材47aの外周面と弁座部材41aの内周面との間は、パッキンによりシールされる。
【0056】
ところで、シャトル室SHの内周面の内径、つまり鍔部442の外径D1(
図3参照)と、弁座31の内径D2とは、ほぼ同じ、つまりその比D1:D2が1対1に形成されている。したがって、液圧によりシャトル片44aを押すための有効面積が従来よりも大きくなり、大きな推力で相手側のシャトル片44bを押すことができ、相手側のチェック弁4を確実に開くことができる。なお、シャトル片44aの有効面積と弁体5の有効面積とはほぼ同じであるので、液圧によってシャトル片44aを押す力は、同じ液圧によって弁体5を閉じる力とほぼ同じとなる。
【0057】
次に、切り替え弁装置1の作用および動作について説明する。
【0058】
図4は、切り替え弁装置1を有する油圧シリンダ装置100の回路図の例を示す。
【0059】
図4において、油圧シリンダ装置100は、片ロッド式複動型の油圧シリンダ110、油圧シリンダ110に対して油圧を供給する油圧ユニット120、タンク150、および切り替え弁装置1などからなる。油圧ユニット120は、ポンプ122、モータ123、および手動による駆動のためのウォームギヤ機構124を備える。
【0060】
ポンプ122は、正逆の両方向に回転して吐出可能な双方向ポンプであり、油圧シリンダ110の往動側のポートPT1および復動側のポートPT2に対して流路L1,L2を介して油圧を給排する2つの給排ポートPA,PBを備える。サーボ制御されるモータ123はポンプ122を正方向および逆方向のいずれかに選択的に回転駆動させる。ポンプ122の回転方向に応じて、給排ポートPA,PBのいずれかに液圧(油圧)が発生する。
【0061】
油圧シリンダ110のピストンロッド114の中心に設けられた穴には測長センサ115が挿通され、ピストン113のストローク位置に応じた測長センサ115からの信号によりストローク位置が検出される。
【0062】
タンク150は、油圧シリンダ110のシリンダ室の有効面積の相違による圧油の過不足、回路の温度などによる容積変化分、および漏れによるロス分などを補う圧油を収容する。
【0063】
切り替え弁装置1は、孔27が往動側の流路L1に、孔26が復動側の流路L2に、孔25がタンク150に、それぞれ接続される。切り替え弁装置1が有する2つのチェック弁3,4のうち、一方のチェック弁3は流路L2とタンク150とを結ぶ分岐流路L3を開閉し、他方のチェック弁4は流路L1とタンク150とを結ぶ分岐流路L4を開閉する。
【0064】
このように構成される油圧シリンダ装置100では、ポンプ122の給排ポートPAに液圧が発生すると、油圧シリンダ110のピストンがロッド側へ移動する。このとき、切り替え弁装置1の孔27に液圧が加わり、チェック弁4は閉じ、シャトル44は
図1および
図2の左方向へ移動する。
【0065】
その結果、
図2に示すように、弁体5はシャトル44に押されて左方向へ移動し、チェック弁3は開く。これにより、タンク150の圧油が、分岐流路L3および流路L2を通ってポンプ122の給排ポートPBに流れ込む。
【0066】
また、ポンプ122の給排ポートPBに液圧が発生すると、油圧シリンダ110のピストンがヘッド側へ移動する。このとき、切り替え弁装置1の孔26に液圧が加わり、チェック弁3は閉じ、シャトル44は
図1および
図2の右方向へ移動する。
【0067】
その結果、弁体6はシャトル44に押されて右方向へ移動し、チェック弁4は開く。これにより、油圧シリンダ110ヘッド側室のポートPT1から流れ出た圧油の一部が、分岐流路L4を通ってタンク150に流れ込む。
【0068】
このような動作において、孔26または孔27に液圧が加わったときに、鍔部442の存在によって、シャトル片44aを押すための有効面積が鍔部442の無い場合よりも大きくなってシャトル44を移動させる大きな推力が生じ、相手側の弁体の状況に係わらずそれを押してチェック弁を確実に開くことができる。したがって、油圧シリンダ110の往動と復動との切り替え時においても、チェック弁3,4の開閉動作が確実であり、動作が安定である。
【0069】
また、ポンプ122を手動で駆動した場合には吐出流量が小さいが、小さな吐出流量であっても、切り替え弁装置1のチェック弁3,4の開閉動作は確実であり、動作が安定である。つまり、切り替え弁装置1は、チェック弁3,4の応答性が良く、ポンプ122が低速回転であっても容易に制御が可能である。したがって、無駄な流量の圧油が要らないので、発熱が低減し、効率が良い。
【0070】
上に述べたように、本実施形態による切り替え弁装置1は、手動駆動時のような微弱な圧力の変化にも応答して確実に動作することができる。切り替え弁装置1は、シリンダ室の有効面積の相違による圧油の過不足、回路の温度などによる容積変化分、および漏れによるロス分などを補うためのタンクに通じる流路の切り替えに有用である。
【0071】
上に述べた実施形態において、切り替え弁装置1の全体または各部の構成、形状、寸法、および材質などは、本発明の趣旨に沿って上述した以外の種々のものとすることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 切り替え弁装置
2 ハウジング
20 21,22a,23a,22b,23b 孔
3,4 チェック弁
5,6 弁体
31 弁座
32 シール部
41a 弁座部材
42a 副弁体部
421 ガイド部
422 ネジ込み部(底部)
425 孔
43a 主弁体部
431 径小筒状部
431a ロッド摺動孔
44 シャトル
44a,44b シャトル片
441 ロッド部
442 鍔部
443 突起部
47a 栓部材
471 ガイド穴
SH シャトル室
7 バネ部材