特許第6559110号(P6559110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559110
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ディスク駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 17/043 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G11B17/043
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-191934(P2016-191934)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-55751(P2018-55751A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 裕志
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−293586(JP,A)
【文献】 特開2008−293589(JP,A)
【文献】 特開2004−319026(JP,A)
【文献】 特開2006−209862(JP,A)
【文献】 特開2007−066353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 17/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部を有する筐体内に、ディスクを回転駆動する回転駆動部と、前記挿入部と前記回転駆動部との間に位置する搬送機構と、前記回転駆動部に装填されたディスクからの再生信号を読み取るヘッドと、制御部と、が設けられたディスク駆動装置において、
前記搬送機構によってディスクが前記回転駆動部に搬入されている途中で第1の検知状態から第2の検知状態となり、ディスクが前記回転駆動部に装填されると第1の検知状態となる挿入検知部と、
ディスクが前記回転駆動部に装填されると、第2の検知状態から第1の検知状態に切替わる装填検知部と、を有し、
前記制御部では、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態で、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に切替えられたときに、前記搬送機構をディスク搬入方向へ駆動して、ディスク搬入動作を行うことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態で、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に最初に切替えられたときには前記ディスク搬入動作を行なわず、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に再度切替えられたときに前記ディスク搬入動作を行なう請求項1記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記挿入部にシャッタが設けられており、ディスクの挿入を待機しているとき、前記シャッタが前記挿入部を閉鎖しておらず、ディスクが前記回転駆動部に装填されているときに、前記シャッタで前記挿入部が閉鎖される請求項1または2記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記制御部では、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態となっている状態でディスク再生ができず、その後に、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に切替えられたときに、前記搬送機構をディスク搬入方向へ駆動して、ディスク搬入動作を行う請求項1ないし3のいずれかに記載のディスク駆動装置。
【請求項5】
前記制御部では、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態となっている状態で、イジェクト操作が行われてもディスク排出が検知されず、その後に、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に切替えられたときに、前記搬送機構をディスク搬入方向へ駆動して、ディスク搬入動作を行う請求項1ないし4のいずれかに記載のディスク駆動装置。
【請求項6】
前記挿入検知部は、OFFが第1の検知状態で、ONが第2の検知状態であり、前記装填検知部は、OFFが第1の検知状態で、ONが第2の検知状態である請求項1ないし5のいずれかに記載のディスク駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクが挿入されたことを検知する挿入検知部と、ディスクが回転駆動部に装填されたことを検知する装填検知部が設けられたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にディスク再生装置に関する発明が記載されている。
このディスク再生装置には、挿入検知部に相当する第1のセンサと、装填検知部に相当する第2のセンサが設けられている。第1のセンサがON信号を出力すると、ローディングモータがディスク挿入方向に回転する。ディスクが送り込まれて、第2のセンサがディスクを検知しON信号を出力すると、ローディングモータが停止する。
【0003】
特許文献1には、第1のセンサと第2のセンサが故障したときの対処方法が記載されている。
【0004】
第1のセンサと第2のセンサが故障し、共にOFF信号しか出力できない状態で、筐体内からディスクを取り出すことが必要なときは、イジェクトボタンを長押しすると、ローディングモータが始動して、ディスクが排出される。また、ディスクを挿入するときも、イジェクトボタンを長押しすることで、ローディングモータが始動して、ディスクが挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−209862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のされたディスク再生装置は、センサが故障したときの対処を使用者が知っていれば、イジェクトボタンを長押しすることで、ディスクの排出や挿入を行うことができるが、使用者が対処方法を知らない場合には対応することはできない。また、イジェクトボタンの長押しという特殊な操作を行うことなく、ディスクの挿入を受け付けるなどの、自動的な対処を行うことはできない。
【0007】
例えば、ディスクが筐体の内部に装填されたときに、センサまたはスイッチがONからOFFに切替わる方式を採用した場合において、センサまたはスイッチが故障してONにならないことがあり得る。特に、スイッチの場合には、長期間使用していないようなときに、接点の接触部に硫化被膜が形成されて、接点が接触しているにもかかわらず、OFFの出力となることがある。
【0008】
このように、センサやスイッチが故障し、センサやスイッチがOFFのままであると、筐体の内部にディスクが存在していないにもかかわらず、制御部では筐体の内部にディスクが存在していると誤判断することになり、その後に新たなディスクを挿入しても、筐体の内部に搬入されないという現象が生じる。この場合に、特許文献1のような対処を採用したとしても、使用者がその対応を知らないと、ディスクを装填することができなくなる。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、検知部に誤動作や故障が生じたような場合であっても、ディスクの挿入動作などを開始することができるディスク駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、挿入部を有する筐体内に、ディスクを回転駆動する回転駆動部と、前記挿入部と前記回転駆動部との間に位置する搬送機構と、前記回転駆動部に装填されたディスクからの再生信号を読み取るヘッドと、制御部と、が設けられたディスク駆動装置において、
前記搬送機構によってディスクが前記回転駆動部に搬入されている途中で第1の検知状態から第2の検知状態となり、ディスクが前記回転駆動部に装填されると第1の検知状態となる挿入検知部と、
ディスクが前記回転駆動部に装填されると、第2の検知状態から第1の検知状態に切替わる装填検知部と、を有し、
前記制御部では、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態で、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に切替えられたときに、前記搬送機構をディスク搬入方向へ駆動して、ディスク搬入動作を行うことを特徴とするものである。
【0011】
本発明のディスク駆動装置は、前記制御部は、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態で、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に最初に切替えられたときには前記ディスク搬入動作を行なわず、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に再度切替えられたときに前記ディスク搬入動作を行なうものである。
【0012】
本発明のディスク駆動装置は、前記挿入部にシャッタが設けられており、ディスクの挿入を待機しているとき、前記シャッタが前記挿入部を閉鎖しておらず、ディスクが前記回転駆動部に装填されているときに、前記シャッタで前記挿入部が閉鎖されることが好ましい。
【0013】
本発明のディスク駆動装置は、前記制御部では、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態となっている状態でディスク再生ができず、その後に、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に切替えられたときに、前記搬送機構をディスク搬入方向へ駆動して、ディスク搬入動作を行うものとして構成できる。
【0014】
また、本発明のディスク駆動装置は、前記制御部では、前記挿入検知部と前記装填検知部が共に第1の検知状態となっている状態で、イジェクト操作が行われてもディスク排出が検知されず、その後に、前記挿入検知部が第1の検知状態から第2の検知状態に切替えられたときに、前記搬送機構をディスク搬入方向へ駆動して、ディスク搬入動作を行うものとして構成できる。
【0015】
本発明のディスク駆動装置は、例えば、前記挿入検知部は、OFFが第1の検知状態で、ONが第2の検知状態であり、前記装填検知部は、OFFが第1の検知状態で、ONが第2の検知状態である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のディスク駆動装置は、装填検知部の動作に異常が生じ、例えば装填検知部を構成するスイッチの接点に硫化被膜が形成されてOFFのままとなり、筐体内にディスクが存在していないにもかかわらず、装填検知部が第1の検知状態となっているときであっても、使用者がディスクを挿入しようとする操作を認識して、ディスクを自動的に搬入できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態のディスク駆動装置の内部構造を示す平面図、
図2図1に示すディスク駆動装置の内部構造を示す左側面図、
図3図1に示すディスク駆動装置の機構部の構造を示す平面図、
図4図1に示すディスク駆動装置のディスク挿入動作を平面で示す説明図、
図5図1に示すディスク駆動装置のディスク挿入完了動作を平面で示す説明図、
図6】ディスク駆動装置に付随する回路のブロック図、
図7】装填検知部に異常が生じたときの、リカバリー動作を示すフローチャート、
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ディスク駆動装置の構造>
図1図2にディスクDが装填された状態のディスク駆動装置1が示されている。ディスク駆動装置1は車載用であり、CDやDVDあるいはブルーレイディスク(登録商標)への情報の記録や情報の再生のために使用される。
【0019】
図1に示すように、ディスク駆動装置1は、金属製の筐体2を有している。図2は、筐体2の図示を省略し、内部構造のみを示している。図1に示すように、筐体2は、下側に底板部2aを有し、上側に天井部を有している。図1は天井板を除去した状態を示している。筐体2は、Y2方向の向く前面部1bとY1方向に向く背面部2c、ならびにX1方向に向く左側面部2dとX2方向に向く右側面部2eを有している。筐体2は、いわゆる1DINの容積を有しており、車載用として使用されるときは、筐体2が自動車のインストルメントパネルの内部に設置され、前面部1bが、車室内に向けられる。
【0020】
筐体2の前面部2bに挿入部3が設けられている。挿入部3は、X1−X2方向に開口幅Wを有して開口している。開口幅WはディスクDの直径よりもやや広く形成されている。筐体2の前面部2bには、化粧パネルが設置され、化粧パネルに、前記挿入部3に通じるスリット状に開口した挿入・排出口が形成されている。また化粧パネルのY2方向に向く前面には、表示画面やイジェクトキーを含む各種操作釦が配置されている。
【0021】
図1図2に示すように、筐体2の内部に、金属板で形成された駆動シャーシ10が収納されている。駆動シャーシ10は、X−Y平面とほぼ平行となる駆動板部10aと、X1側で下向きに折り曲げられた駆動側板10bと、X2側で下向きに折り曲げられた駆動側板10cとを有している。筐体2の底板部2aの上に、ダンパー5と圧縮コイルばね6が組み合わされた弾性支持部が設けられており、駆動シャーシ10の駆動板部10aが、弾性支持部に支持されている。
【0022】
図2に示すように、駆動シャーシ10の駆動板部10aの下面にスピンドルモータ11が固定されている。図3には、筐体2の内部構造が駆動シャーシ10を除去した状態で示されているが、スピンドルモータ11の駆動軸11aは、駆動板部10aよりも上方に突出し、駆動軸11aにターンテーブル12が固定されている。スピンドルモータ11とターンテーブル12とで、ディスクDを回転駆動する回転駆動部が構成されている。
【0023】
図1図2に示すように、Y1方向の左側(X1側)には、駆動シャーシ10を形成している金属板が上向きに折り曲げられた左側支持片13aが一体に形成されている。左側支持片13aには右方向(X2方向)に延びる支持軸14aが絞り成形などで一体に形成されている。Y1方向の右側(X2側)には、同じく駆動シャーシ10を形成している金属板が上向きに折り曲げられた右側支持片13bが一体に形成されており、右側支持片13bに軸支持穴が一体に形成されている。
【0024】
駆動シャーシ10の駆動板部10aの上にはクランプアーム15が配置されている。クランプアーム15は金属板で形成されている。図1図2に示すように、クランプアーム15には、Y1方向の左側(X1側)に、左アーム側板15aが下向きに折り曲げられて一体に形成されている。左アーム側板15aに軸支持穴が形成されており、この軸支持穴が前記左側支持片13aの支持軸14aに回動自在に支持されている。
クランプアーム15には、Y1方向の右側(X2側)に、右アーム側板15bが下向きに折り曲げられて一体に形成されている。右アーム側板15bには左方向(X1方向)へ延びる支持軸14bが絞り成形などによって一体に形成されている。この支持軸14bが、右側支持片13bに形成された軸支持穴に回動自在に支持されている。
【0025】
左側(X1側)の支持軸14aと、右側(X2側)の支持軸14bは、X1−X2方向に沿って同軸上に位置している。クランプアーム15は、支持軸14aと支持軸14bを支点として、駆動シャーシ10上において、クランプ解除方向(図2に示すα2方向)と、クランプ方向(図2に示すα1方向)へ回動自在に支持されている。
【0026】
図1図2に示すように、クランプアーム15にはY2側に支持板ばね16が固定されており、支持板ばね16にクランパ17が回転自在に支持されている。クランパ17はターンテーブル12の上方に対向している。
【0027】
図1図2に示すように、クランプアーム15の左側(X1側)の側部にクランプばね18が支持されている。クランプばね18はトーションばねである。クランプばね18の一方の腕部はクランプアーム15に掛けられ、他方の腕部が駆動板部10aに掛けられており、クランプばね18の弾性力によって、クランプアーム15が常にクランプ方向(α1方向)に付勢されている。
【0028】
図1図2に示すように、左側(X1側)に切換えスライダ20が搭載されている。切換えスライダ20は、駆動シャーシ10の左側(X1側)に設けられた駆動側板10bの内側において、Y1−Y2方向へ直線移動自在に支持されている。
【0029】
図2に示すように、切換えスライダ20にクランプ解除部21が上向きに突出して一体に形成されている。クランプアーム15の左側(X1側 )の側部には、下向きに折り曲げられたクランプ制御部15cが一体に形成されている。切換えスライダ20が、Y1方向へ移動すると、クランプ解除部21でクランプ制御部15cが上向きに持ち上げられ、クランプアーム15がクランプ解除方向(図2のα2方向)へ回動させられて、クランパ17がディスクDから離れ、ディスクDの保持が解除される。図1図2に示すように、切換えスライダ20がY2方向へ移動すると、クランプ解除部21がクランプ制御部15cから離れ、クランプアーム15がクランプばね18の付勢力でクランプ方向(図2のα1方向)へ回動させられて、ディスクDの中心部が、ターンテーブル12とクランパ17とで挟持される。
【0030】
筐体2の前面部2bの内側に搬送機構30が設けられている。図2に示すように、搬送機構30にローラブラケット31が設けられている。ローラブラケット31は、駆動シャーシ10の左側の駆動側板10bと右側の駆動側板10cに支持軸32によって回動自在に支持されている。ローラブラケット31にローラ軸33が回転自在に支持されている。ローラ軸33は、図1図3に示されている。図3に示すように、ローラ軸33の外周に合成ゴム材料で形成された搬送ローラ34が装着されている。
【0031】
図1図2に示すように、搬送機構30では、筐体2の天井部の下側に対向部材35が固定されている。対向部材35は摩擦係数の小さい合成樹脂材料で形成されている。ローラブラケット31は図示しないローラ付勢ばねによって搬送ローラ34を持ち上げる方向へ付勢されている。
【0032】
図2に示すように切換えスライダ20のY2側の端部に、持ち上げカム部22が一体に形成されている。図2に示すように、切換えスライダ20がY2方向へ移動していると、持ち上げカム部22で、ロータブラケット31に設けられた突出部36が持ち上げられ、ローラブラケット31は、搬送ローラ34が対向部材35から下側へ離れる方向へ回動させられる。逆に、切換えスライダ20が、Y1方向へ移動すると、持ち上げカム部22が突出部36から離れ、ローラ付勢ばねの付勢力によって、ローラブラケット31が、搬送ローラ34を持ち上げる方向へ回動させられ、対向部材35と搬送ローラ34とでディスクDを挟持することが可能になる。
【0033】
切換えスライダ20と筐体2との間に拘束機構が設けられている。図1図2に示すように、切換えスライダ20がY2方向へ移動し、ターンテーブル12とクランパ17との間でディスクDがクランプされているときは、拘束機構が解除されて、駆動シャーシ10が、弾性支持部であるダンパー5と圧縮コイルばね6で弾性支持され、筐体2の内部で動けるようになっている。切換えスライダ20がY1方向へ移動し、クランパ17が上方に離れてディスクDのクランプが解除され、且つ搬送ローラ34が対向部材35に圧接して、ディスクDの搬送が可能になっているときには、拘束機構によって、筐体2の内部で駆動シャーシ10が動かないように拘束される。
【0034】
駆動シャーシ10の駆動板部10aの下面に、図3に示す各機構が取り付けられている。駆動板部10aの下面に、X1−X2方向とY1−Y2方向の双方に傾斜して案内軸45と案内レール46が設けられている。案内軸45と案内レール46は互いに平行である。案内軸45と案内レール46にヘッドベース47が摺動自在に支持されている。ヘッドベース47には光ヘッド48が搭載されている。光ヘッド48はディスクDの記録面に対向する対物レンズ48aを有している。また光ヘッド48には、記録面から情報を読み取り、または記録面に情報を書き込むための各種光学素子が搭載されている。
【0035】
ヘッドベース47は、案内軸45と案内レール46に案内されて、ディスクDの内周側(S1側)と外周側(S2側)へ移動できるようになっている。
【0036】
図3図4に示すように、筐体2のY1方向の奥に、トリガーアーム51が設けられている。トリガーアーム51は、駆動板部10aの上面において、支持軸52によって回動自在に支持されている。
【0037】
駆動板部10aの下面に駆動・切替え機構60が設けられている。駆動・切替え機構60に1個のモータ61が設けられている。モータ61の出力軸にウオーム62が固定されており、ウオーム62の回転力はウオーム歯車63を介して減速歯車列64に伝達される。ウオーム歯車63と減速歯車列64との間に切替え部65が設けられており、切替え部65はトリガーアーム51によって動作させられる。前記ローラ軸33にローラ歯車66が固定されており、前記減速歯車列64の最終段の歯車からローラ歯車66に動力が伝達可能となっている。
【0038】
駆動・切替え機構60では、1個のモータ61の駆動力で、切替えスライダ20とローラ軸33およびヘッドベース47に動力が与えられる。
【0039】
<検知部の構造>
図3に示すように、筐体2の前面部2bの内側に挿入検知部70が設けられている。挿入検知部70では、左側(X1側)に検知アーム71aが、右側(X2側)に検知アーム71bが設けられている。検知アーム71aは、駆動板部10aに支持軸72aによって回動自在に支持されている。左側(X1側)の検知アーム71aは、検知ばね74aによって反時計方向へ付勢されており、外力が作用していないときは、図3図5に示す初期姿勢となる。右側(X2側)の検知アーム71bは、駆動板部10aに支持軸72bによって回動自在に支持されている。検知アーム71bは、検知ばね74bによって時計方向へ付勢されており、外力が作用していないときは、図3図5に示す初期姿勢となる。
【0040】
挿入検知部70では、駆動板部10aに、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が設けられている。検知アーム71aによって第1の検知スイッチ(SW−A)が動作させられ、検知アーム検知71bによって第2の検知スイッチ(SW−B)が動作させられる。
【0041】
図3図4に示すように、ヘッドベース47の移動領域に装填検知部75が設けられている。装填検知部75には第3の検知スイッチ(SW−C)が設けられている。ヘッドベース47に、スイッチ押圧部47aが設けられており、ヘッドベース47がS1側に移動すると、スイッチ押圧部47aによって第3の検知スイッチ(SW−C)が押されて、第2の検知状態であるOFFに切替えられる。
【0042】
図6に、ディスク駆動装置1に付随する回路構成のブロック図が示されている。制御部41は、CPUとメモリとを有しており、所定のファームウエアにしたがって制御動作を実行する。制御部41によりモータドライバ42が制御されてモータ61が駆動される。また、挿入検知部70と装填検知部75の検知出力が制御部41に与えられる。
【0043】
次に、ディスク駆動装置1の動作を説明する。
<正常なときの一連の動作>
ディスクDの挿入を待機する待機状態では、切換えスライダ20がY1方向へ移動し、クランプ解除部21によってクランプ制御部15cが持ち上げられ、クランプアーム15が図2に示すα2方向へ回動させられて、クランパ17がターンテーブル12から上方へ離れる。また、切換えスライダ20の持ち上げカム部22が、突出部36から離れ、ローラブラケット31がローラ付勢ばねの付勢力によって回動させられ、搬送ローラ34が持ち上げられて対向部材35に圧接させられる。
【0044】
ディスク挿入待機状態では、挿入検知部70が図3図5に示すのと同じ状態であり、検知アーム71aが第1の検知スイッチ(SW−A)から離れ、検知アーム71bが第2の検知スイッチ(SW−B)から離れ、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)がともにOFFとなっている。第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)は、第1の検知状態がOFFであり、第2の検知状態がONである。
【0045】
ディスク挿入待機状態では、ヘッドベース47がS1側の終端まで移動しており、装填検知部75では、ヘッドベース47のスイッチ押圧部47aによって第3の検知スイッチ(SW−C)が押されて、ONになっている。第3の検知スイッチ(SW−C)は、ONが第2の検知状態であり、OFFが第1の検知状態である。
【0046】
筐体2の挿入部3からディスクDが挿入されると、図4に示すように、検知アーム71aの先端部73aと検知アーム71bの先端部73bにディスクDの外周縁が当たり、検知アーム71aと検知アーム71bは、先端部73aと先端部73bとがX1方向とX2方向へ互いに離れる方向へ回動させられる。
【0047】
このとき、検知アーム71aと検知アーム71bで第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が押され、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が、第1の検知状態のOFFから第2の検知状態のONに切り替えられる。このとき、制御部41からモータドライバ42に始動指令が与えられ、モータ61が始動する。
【0048】
モータ61の動力は、ウオーム22からウオーム歯車63へ、さらに減速歯車列64からローラ歯車66へ伝達され、ローラ軸33がディスクDの搬入方向へ回転させられる。挿入部3に挿入されたディスクDは、搬送ローラ34と対向部材35とで挟まれて、筐体2の内部に向けて搬入される。
【0049】
搬入されたディスクDの中心部がターンテーブル12付近まで移動すると、図5に示すように、ディスクDの外周縁でトリガーアーム51の先端部51aが押され、トリガーアーム51が反時計方向へ回動する。トリガーアーム51の回動により、図3に示す駆動・切替え機構60の切替え部65が動作し、切替え部65によって、ウオーム歯車63の回転力が切換えスライダ20に伝達され、切換えスライダ20がY2方向へ移動し始める。
【0050】
切換えスライダ20がY2方向への移動する過程で、図1図2に示すように、切換えスライダ20のクランプ解除部21がクランプ制御部15cから離れ、クランプアーム15がクランプばね18の付勢力でα1方向へ回動させられて、クランパ17でディスクDの中心部がターンテーブル12に押し付けられて、回転駆動部でディスクDが保持される。
【0051】
切換えスライダ20がY2方向へ向けて図2の位置まで移動すると、持ち上げカム部22で突出部36が持ち上げられ、ローラブラケット31が回動させられて、搬送ローラ34が下降してディスクDから離れる。
【0052】
図3図4に示すように、ヘッドベース47の側部に差動スライダ68が設けられ、差動スライダ68にラック部68aが形成されている。図3に示すウオーム歯車63の下部にピニオン歯車63aが一体に設けられており、ピニオン歯車63aがラック部68aに噛みあっている。差動スライダ68とヘッドベース47との間に差動ばねが設けられ、ヘッドベース47において差動スライダ68が常にS2方向へ引き付けられている。
【0053】
ディスクの挿入待機状態からモータ61が始動し、搬送ローラ34が回転してディスクDがY1方向へ搬入され、さらに、切換えスライダ20がY2方向へ移動して、ターンテーブル12にディスクDがクランプされ、搬送ローラ34がディスクDから離れる間、ウオーム歯車63と共にピニオン歯車63aは反時計方向へ回転し続けている。この間は、ヘッドベース47が移動することがなく、差動スライダ68のみがS2方向へ移動する。そして、ディスクDのクランプが完了した後に、差動スライダ68とヘッドベース47が作動ばねで引き付けらられて一緒に移動できるようになる。その後は、ウオーム歯車63の動力が切換えスライダ20に伝達されることなく、ウオーム歯車63の回転力で、ヘッドベース47が案内軸45と案内レール46に沿ってS1−S2方向へ移動させられる。
【0054】
ターンテーブル12上でのディスクDのクランプが完了した直後に、モータ61の動力でヘッドベース47がS2方向へ移動させられるため、ヘッドベース47のスイッチ押圧部47aが第3の検知スイッチ(SW−C)から離れ、装填検知部75の検知出力が、第2の検知状態であるOFFから第1の検知状態であるONに切替えられる。また、図5に示すように、ディスクDが装填されたときは、ディスクDが検知アーム71a,71bから離れるため、検知アーム71a,71bが初期姿勢となり、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)も第1の検知状態のOFFになっている。
【0055】
制御部41は、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)、および第3の検知スイッチ(SW−C)の全てが第1の検知状態のOFFであるとき、筐体の内部にディスクDが存在していると認識する。
【0056】
<検知部に誤動作や故障が生じたときのリカバリー処理>
図7に、制御部41で実行される処理動作の一部が示されている。
ST1(ステップ1)で電源がONされると、制御部41では、ST2で3か所のスイッチの状態を確認する。ここで、挿入検知部70の第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が共に第1の検知状態のOFFで、装填検知部75の第3の検知スイッチ(SW−C)が第2の検知状態であるONのときには、ST3がNOであり、ST4に移行してディスク挿入待機状態であると認識する。
【0057】
ST3において、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が共に第1の検知状態のOFFで、第3の検知スイッチ(SW−C)も第1の状態のOFFのときは、筐体2の内部にディスクDが装填されていると判断する。この条件下では、仮に新たなディスクDが挿入部から追加されて挿入され、そのディスクDで挿入検知部70の検知アーム71a,71bが回動させられて、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が共にONになったとしても、モータ61が始動することがなく、ローラ軸33が駆動されず、追加のディスクDが筐体2の内部に搬入されることはない。
【0058】
図2に示すように、筐体2の前面部2bに設けられた挿入部3の内側にシャッタ69が設けられている。シャッタ69は、駆動・切替え機構60によって動作させられ、切換えスライダ20がY2方向へ移動してディスクDがターンテーブル12にクランプされているときには、挿入部3がシャッタ69で閉鎖されている。そのため、ディスクDが筐体2の内部にあるときは、新たなディスクDが筐体2の内部に挿入されにくくなっている。ただし、挿入口3にディスクDが強引に押し込まれると、シャッタ69が動かされてディスクDが筐体2の内部に挿入されることがある。そこで、前記のように、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が共に第1の検知状態のOFFで、第3の検知スイッチ(SW−C)も第1の状態のOFFのときは、新たなディスクDが挿入部から追加されて挿入されても、モータ61が始動しないように設定されている。
【0059】
ST3で、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)および第3の検知スイッチ(SW−C)が全てOFFのときは、ディスクDが存在していると判断し、ST5に移行して、スピンドルモータ11を駆動してディスクDを回転させ、光ヘッド48で、ディスクDに記録されている情報を読み取る。
【0060】
ST5において、ディスクDに記録されている情報を読み取ることができないときには、ST6に移行し、制御部41では筐体2の内部にディスクが存在しておらずディスク再生ができないと判定する。
【0061】
この場合に、ただちに、ST10以降の処理に移行してもよいが、実施の形態では、ST7に移行して、化粧パネルに設けられたイジェクトキーが押されるのを待つ。イジェクトキーが押されると、モータ61が始動する。このとき、モータ61は、ディスクの挿入動作と逆の回転となり、ローラ軸33がディスク搬出方向へ回転させられ、ターンテーブル12上でのディスクDのクランプ解除動作が行われる。
【0062】
ST8では、ディスクDが排出されたか否かが判定される。ディスクDが排出されると、挿入検知部70の検知アーム71a,71bの先端部73a,73bがディスクDに押され、検知アーム71a,71bが回動させられて、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)がOFFからONとなり、さらにOFFとなる。この場合には、ディスクが排出されたと判断され、ST9でディスク挿入待機状態となる。
【0063】
ST7でイジェクトキーが押され、モータ61を始動しても、ST8で、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)がOFFのままであり、ディスクDが排出されたと検知できないときは、ST10に移行する。
【0064】
ST10以降のステップは、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)および第3の検知スイッチ(SW−C)がOFFであるにも関わらず、ST6でディスクの再生動作ができないとき、あるいはST8でディスクを排出できないときのリカバリー処理である。
【0065】
この現象が生じる原因として最も確率が高いのが、装填検知部75に設けられた第3の検知スイッチ(SW−C)の誤動作である。ディスク駆動装置1を長期間使用していないと、スイッチの接点に硫化被膜が形成されることがある。このときは、ディスクの挿入待機状態で、ヘッドベース47のスイッチ押圧部47aで第3の検知スイッチ(SW−C)が押されているにもかかわらず、接点が硫化被膜で絶縁されて、第1の検知状態のOFFのままとなる。
【0066】
この場合、筐体2の内部にディスクDが存在していないにも関わらず、すなわち、ディスクの挿入待機状態であるにもかかわらず、制御部41では、筐体2の内部にディスクDが存在しているものと判定する。そのため、従来の制御処理では、挿入待機状態のディスク駆動装置1に新たなディスクDを挿入しても、モータ61が始動せず、ディスク駆動装置1が動かない故障状態になってしまう。
【0067】
しかし、スイッチの接点の硫化被膜は、再度スイッチを動作させて接点どうしを接触させることで除去することが可能である。また、ディスク駆動装置1が挿入待機状態であるならば、駆動・切替え機構60によって図2に示すシャッタ69が移動させられ、挿入部3にシャッタが存在していないので、新たなディスクDを挿入部3から挿入可能な状態となっている。
【0068】
そこで、ST11では、挿入検知部70の第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)がOFFからONに変化するかを監視する。この変化がないときはST12に移行して、再生動作ができない状態を継続する。ST11で、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)がOFFからONに変化したら、ST15に移行する。ただし、図7のフローチャートでは、ST13に移行し、もう一度、挿入検知部70の第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)がOFFからONに変化するかを監視する。複数回の確認で、挿入検知部70の第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)がOFFからONに変化したら、ST15に移行する。
【0069】
すなわち、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)および第3の検知スイッチ(SW−C)が全てOFFの状態で、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が最初にOFFからONに切替えられたときにはST15には移行しないでディスク搬入動作を行なわず、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が再度OFFからONに切替えられたときにST15に移行してディスク搬入動作を行なうことが好ましい。ただし、変化しないときはST14に移行する。なお、第1の検知スイッチ(SW−A)と第2の検知スイッチ(SW−B)が最初にOFFからONに切替えられたときにディスク搬入動作を行なうと、二重装填のリスクがあるが、複数回確認することで、操作者のディスクを挿入しようとする意志を推定することができ、二重装填のリスクを減少させることができる。
【0070】
ST15では、モータ61を始動し、ディスクの搬入動作を行う。
上記リカバリー処理により、スイッチの動作に異常があったとしても、ディスクDの搬入が可能になる。
【0071】
なお、挿入検知部70では、第1の検知状態がONで、第2の検知状態がOFFであってもよい。同様に、装填検知部75でも、第1の検知状態がONで、第2の検知状態がOFFであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ディスク駆動装置
2 筐体
3 挿入部
10 駆動シャーシ
10a 駆動板部
11 スピンドルモータ
12 ターンテーブル
15 クランプアーム
20 切換えスライダ
34 搬送ローラ
41 制御部
42 モータドライバ
47 ヘッドベース
48 光ヘッド
60 駆動・切替え機構
61 モータ
70 挿入検知部
71a,71b 検知アーム
75 装填検知部
SW−A 第1の検知スイッチ
SW−B 第2の検知スイッチ
SW−C 第3の検知スイッチ
D ディスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7