特許第6559116号(P6559116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559116センサと一体化された電子発光素子および当該素子の発光を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559116
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】センサと一体化された電子発光素子および当該素子の発光を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20190805BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20190805BHJP
   H01L 33/04 20100101ALI20190805BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01L33/00 JZNM
   H01L33/08
   H01L33/04
   H01L33/32
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-504622(P2016-504622)
(86)(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公表番号】特表2016-518020(P2016-518020A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2014055907
(87)【国際公開番号】WO2014154657
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】1352811
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515151273
【氏名又は名称】アレディア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カッリ,カルロ
(72)【発明者】
【氏名】アナニア,ジョルジオ
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−004661(JP,A)
【文献】 特開平06−224470(JP,A)
【文献】 特開2011−135058(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0033561(US,A1)
【文献】 特開2006−332650(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0148149(US,A1)
【文献】 特開2005−228936(JP,A)
【文献】 特開昭53−094883(JP,A)
【文献】 特表2011−527825(JP,A)
【文献】 特開平09−193461(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/036124(WO,A1)
【文献】 特開2011−040228(JP,A)
【文献】 特開2001−332764(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/156620(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上にナノワイヤの組を含む構造を含む電子発光素子であって、
−第1の電気的接点に接続されていて、いわゆる順電圧または電流源からの第1のいわゆる順電圧の作用の下で発光可能なナノワイヤを含む第1の一連のいわゆる発光用一次ナノワイヤ(NTi)と、
−第2の電気的接点に接続されていて、電圧または電流源からの第2のいわゆる逆電圧の制御下で、周辺光および/または前記一次ナノワイヤの一部により発せられた光の一部の作用の下で光電流を生成可能である、前記一次ナノワイヤに隣接する第2の一連のいわゆる検出用二次ナノワイヤ(NTi)と、
−前記いわゆる順電圧を前記光電流の関数として制御する手段とを含み、
前記ナノワイヤが、前記第1の電気的接点の1個を前記第2の電気的接点の1個から電気的に絶縁すべく前記一次ナノワイヤと前記二次ナノワイヤとの間で不連続である透明な導電層で覆われており、
前記基板の表面は、全体にわたって平坦であることを特徴とする電子発光素子。
【請求項2】
前記電圧を調整すべく前記光電流を前記順電圧または電流源に注入する手段を含み、前記手段が、前記構造の外部にあって前記二次ナノワイヤにより生じた光電流(Iph)を所与の基準電流(Iref)と比較すると共に前記一次ナノワイヤの電圧を制御すべく前記順電圧または電流源の電源調整器(11)に作用する電流コンパレータ(10)を含む回路を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の電子発光素子。
【請求項3】
−前記第2の一連のいわゆる検出用二次ナノワイヤが、前記周辺光の存在下で、ゼロまたは逆電圧の制御下で光電流(Iph)を生成可能な検出ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットを含み、
−前記素子が、前記構造の外部にあって前記二次ナノワイヤにより生じた光電流を閾値電流(Iph.s)と比較して前記光電流値(Iph)が前記閾値電流値(Iph.s)未満である場合は、スイッチを備えた電源(21)を介して前記電子発光素子を起動する電流コンパレータ(20)を含む回路を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の電子発光素子。
【請求項4】
前記基板が、前記ナノワイヤを含む表面の反対側として定義される裏面に、前記第1の電気的接点の1個および前記第2の電気的接点の1個に共通の接点層を含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子発光素子。
【請求項5】
前記基板上に分布された二次ナノワイヤのサブセットを含んでいることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子発光素子。
【請求項6】
異なる波長λiで光子を発光しやすい一次ナノワイヤの複数のサブセットを含み、前記素子が、異なる波長λiでの発光の総和から生じた合成光を発することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子発光素子。
【請求項7】
二次ナノワイヤの複数のサブセットを含み、二次ナノワイヤの各サブセットが、前記波長λiで前記光子を捕捉可能なように波長λiで光子を発する一次ナノワイヤのサブセットに隣接していることを特徴とする、請求項6に記載の電子発光素子。
【請求項8】
前記ナノワイヤが、III−V族材料のヘテロ接合に基づく構造を有していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子発光素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子発光素子を制御する方法であって、
−電圧または電流源からの第2のいわゆる逆電圧の制御下で、周辺光および/または前記一次ナノワイヤの一部により発せられた光の一部の作用の下で二次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットからの少なくとも1個の光電流を検出するステップと、
−いわゆる順電圧の作用の下で一次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットを前記光電流の関数として制御するステップとを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記検出ステップの前に、前記二次ナノワイヤにより自身の発光が部分的に捕捉されるいわゆる発光用一次ナノワイヤ(NTi)の少なくとも1個のサブセットを制御するステップを含んでいることを特徴とする、請求項9に記載の電子発光素子制御方法。
【請求項11】
電子発光素子の輝度を制御することをさらに含み、
前記輝度を制御することは、
−一次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットに第1の初期電圧を印加するステップと、
−光電流を検出すべく二次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記素子の輝度を調整すべく前記一次ナノワイヤに印加する制御電圧の決定に際して前記光電流を加味するステップとを含んでいることを特徴とする、請求項10に記載の電子発光素子制御方法。
【請求項12】
電子発光素子の表面輝度の分布を制御することをさらに含み、
前記分布を制御することは、
−一次ナノワイヤの複数のサブセットに第1の初期電圧を印加するステップと、
−二次ナノワイヤの各サブセットが、ある波長で光子を発光している一次ナノワイヤのサブセットに隣接し、前記二次ナノワイヤが、二次ナノワイヤのサブセット毎の光電流を検出すべく前記基板の全体にわたり分布されている状態で、二次ナノワイヤの複数のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記素子の輝度の表面分布を調整すべく前記二次ナノワイヤのサブセットに各々関連付けられた前記一次ナノワイヤのサブセットに印加する制御電圧の決定に際して前記光電流を加味するステップとを含んでいることを特徴とする、請求項10に記載の電子発光素子制御方法。
【請求項13】
異なる波長λiで発光するナノワイヤの複数のサブセットの発光から生じる合成光を発する請求項6および7のいずれか1項に記載の電子発光素子の色を制御する方法であって、
−前記一次ナノワイヤのサブセットに第1の初期電圧を印加するステップと、
−二次ナノワイヤの各サブセットが、波長λiで光子を発する一次ナノワイヤのサブセットに、前記波長λiで前記光子を捕捉可能なように隣接している状態で、二次ナノワイヤの複数のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記素子の前記合成色を調整すべく前記二次ナノワイヤのサブセットに各々関連付けられた前記一次ナノワイヤのサブセットに印加する制御電圧の決定に際して前記光電流を加味するステップとを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9に記載の電子発光素子を制御する方法であって、
−光電流(Iph)を検出すべく二次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記光電流を電流閾値(Iph.s)と比較するステップと、
−前記光電流値(Iph)が前記閾値電流(Iph.s)未満である場合、前記電子発光素子を起動すべく一次ナノワイヤに順電圧の印加するステップとを含んでいることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、一般に略語でLEDと呼ばれる発光ダイオードである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
現在直面している問題は、この種の素子の信頼性が高めるべく、輝度の観点から一定の性能レベルを、特に長時間にわたり如何に保証するかである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は従って、有利な特徴として横方向寸法(直径)が例えば数百ナノメートルのオーダーであり、垂直方向寸法が最大約10マイクロメートルであって、高さ/直径比が1〜30の範囲、典型的には約10であるナノワイヤ等のナノカラム型の個別素子を有するLEDの場合における輝度性能の観点から変動性を減らすことを意図している。
【0004】
近年、可視発光ダイオードが、例えばp−n接合を含み、且つ集合的に並列接続された垂直なInGaN/GaNナノワイヤに基づいている。
【0005】
ナノワイヤは、その潜在的な固有特性(良好な結晶品質、垂直自由表面における制約の緩和、良好な光抽出効率等)により、平面(2D)構造内で形成される従来のGaN系LEDで現在生じている困難さを緩和する極めて興味深い候補と考えられている。
【0006】
異なる成長技術に基づく2通りのナノワイヤLED方式が当業者に知られている。
【0007】
第1の方式は、分子線エピタキシ(MBE)により、軸構成にInGaN量子井戸を含むGaNナノワイヤをエピタキシ化するものである。これらのナノワイヤで作成された素子は、緑色スペクトル領域で興味深い結果を与える。1mmの処理済みチップは、100mAの直流電流に対して550nmで約10のμWを発光可能である。
【0008】
分子線(MBE)成長技術では、ランダムな核形成機構による若干の不均一性が生じるが、典型的には50nWの光電力が550nmで発光する単一ワイヤで得られ、これはすなわち1mm当たり10万個程度の発光ナノワイヤでは5mW/mmに相当する。
【0009】
より最近では、MOCVD(金属有機化学蒸着)成長技術により、ラジアルLED構造(核/殻構成)を含むInGaN/GaNナノワイヤの製造が可能になった。
【0010】
図1に、例えばシリコン基板とGaNナノワイヤとの間でメッシュ適合を生じさせることが可能な核形成層21で覆われた基板20の表面にナノワイヤNTが製造されるこの種の構成を示す。
【0011】
光導電部分を有するナノワイヤの構造は、典型的には1019cm−3のドーピング率でnドープされたGaN内の核22、各々が非ドープGaNおよびInGaNを交互になす層23、24を有する量子井戸構造、および最後に、典型的には1019cm−3のドーピング率でpドープされたGaN層25を含んでいる。核22と上部接点を絶縁するために絶縁誘電層26が設けられている。上部接点は、光導電構造の発光波長に対して透過的な導電性上層27により保護されている。
【0012】
このアプローチでは、LED構造が核/殻構成をなしていて、能動ゾーンの表面は2DナノワイヤLED方式よりも大きい。
【0013】
この特性から二つの利点が得られる。すなわち、発光面が拡大すると共に能動ゾーンにおける電流密度が減少する。技術的進歩の結果、MOCVDナノワイヤLEDの完全な構造がシリコン基板上に形成され、青色スペクトル領域(450nm)における電子発光が一体化されたナノワイヤの組で得られている。
【0014】
ナノワイヤ成長技術により、チップの表面ゾーンに、典型的には1mmの表面ゾーンの上に数十万個のカラムを形成することができる。
【0015】
ナノテクノロジーを利用するこのような本来の構造は、発光表面ゾーン、従って光束を増大させる利点をもたらす。
【0016】
サイズが極めて小さい、典型的には数百ナノメートルから最大10マイクロメートル程度のオーダーの個別素子を有するLEDの上述の状況において、本発明は、特に素子の輝度を調整可能にする一体型フォトダイオードセンサを含み、当該一体型センサから能動電子発光要素の制御電圧をきめ細かく制御する手段が設けられた電子発光素子を提案する。
【0017】
より具体的には、本発明の主題は、基板の表面上にナノワイヤの組を含む構造を含む電子発光素子であって、
−第1の電気的接点に接続されていて、いわゆる順電圧または電流源からの第1のいわゆる順電圧の作用の下で発光可能なナノワイヤを含む第1の一連のいわゆる発光用一次ナノワイヤと、
−第2の電気的接点に接続されていて、電圧または電流源からの第2のいわゆる逆電圧の制御下で、周辺光および/または前記一次ナノワイヤの一部により発せられた光の一部の作用の下で光電流を生成可能である、前記一次ナノワイヤに隣接する第2の一連のいわゆる検出用二次ナノワイヤと、
−前記いわゆる順電圧を前記光電流の関数として制御する手段とを含んでいることを特徴とする。
【0018】
好適には、第2のいわゆる逆電圧は電圧源から得られる。
【0019】
一次ナノワイヤに電力供給する電流源の場合、一次ナノワイヤは固定電流を生成し、生成された電流は典型的には約3Vであり得る所与の可変電圧に変換される。しかし、二次ナノワイヤの電源は通常、二次ナノワイヤにより生成された電流を測定すべく所与の電圧(典型的には0Vの以下)に維持される。
【0020】
本発明の一変型例によれば、当該素子は、前記電圧を調整すべく前記光電流を順電圧または電流源に注入する手段を含み、前記手段は、前記構造の外部にあって二次ナノワイヤにより生じた光電流Iphを所与の基準電流Irefと比較すると共に一次ナノワイヤの電圧を制御すべく前記順電圧または電流源に作用する電流コンパレータを含む回路を含んでいる。
【0021】
本発明の一変型例によれば、前記第2の一連のいわゆる検出用二次ナノワイヤは、周辺光の存在下で、ゼロまたは逆電圧の制御下で光電流Iphを生成可能な検出ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットを含み、前記素子は、前記構造の外部にあって二次ナノワイヤにより生じた光電流を閾値電流Iph.sと比較して前記光電流値Iphが前記閾値電流値Iph.s未満である場合は、スイッチを備えた電源を介して前記電子発光素子を起動する電流コンパレータを含む回路を含んでいる。
【0022】
本発明の一変型例によれば、前記ナノワイヤは、前記第1の電気的接点の1個を前記第2の電気的接点の1個から電気的に絶縁すべく前記一次ナノワイヤと前記二次ナノワイヤとの間で不連続である透明な導電層で覆われている。
【0023】
本発明の一変型例によれば、基板は、前記ナノワイヤを含む表面の反対側として定義される裏面に、前記第1の電気的接点の1個および前記第2の電気的接点の1個に共通の接点層を含んでいる。
【0024】
本発明の一変型例によれば、当該素子は、前記基板上に分布された二次ナノワイヤのサブセットを含んでいる。
【0025】
本発明の一変型例によれば、当該素子は、異なる波長λiで光子を発光しやすい一次ナノワイヤの複数のサブセットを含み、前記素子は、異なる波長λiでの発光の総和から生じた合成光を発する。
【0026】
本発明の一変型例によれば、当該素子は、二次ナノワイヤの複数のサブセットを含み、二次ナノワイヤの各サブセットは、前記波長λiで前記光子を捕捉可能なように波長λiで光子を発する一次ナノワイヤのサブセットに隣接している。
【0027】
本発明の一変型例によれば、前記ナノワイヤは、III−V族材料のヘテロ接合に基づく構造を有している。
【0028】
本発明の別の主題は、本発明による電子発光素子を制御する方法であって、
−電圧または電流源からの第2のいわゆる逆電圧の制御下で、周辺光および/または前記一次ナノワイヤの一部により発せられた光の一部の作用の下で二次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットからの少なくとも1個の光電流を検出するステップと、
−いわゆる順電圧の作用の下で一次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットを前記光電流の関数として制御するステップとを含んでいることを特徴とする。
【0029】
本発明の更に別の主題は、本発明による電子発光素子を制御する方法であって、前記検出ステップの前に、前記二次ナノワイヤにより自身の発光が部分的に捕捉されるいわゆる発光用一次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットを制御するステップを含んでいることを特徴とする。
【0030】
本発明の別の主題は、本発明による電子発光素子の輝度を制御する方法であって、
−一次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットに第1の初期電圧を印加するステップと、
−光電流を検出すべく二次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記素子の輝度を調整すべく前記一次ナノワイヤに印加する制御電圧の決定に際して前記光電流を加味するステップとを含んでいることを特徴とする。
【0031】
本発明の更に別の主題は、本発明による電子発光素子の表面輝度の分布を制御する方法であって、
−一次ナノワイヤの複数のサブセットに第1の初期電圧を印加するステップと、
−二次ナノワイヤの各サブセットが、ある波長で光子を発光している一次ナノワイヤのサブセットに隣接し、前記二次ナノワイヤが、二次ナノワイヤのサブセット毎の光電流を検出すべく前記基板の全体にわたり分布されている状態で、二次ナノワイヤの複数のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記素子の輝度の表面分布を調整すべく前記二次ナノワイヤのサブセットに各々関連付けられた前記一次ナノワイヤのサブセットに印加する制御電圧の決定に際して前記光電流を加味するステップとを含んでいることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の主題は、異なる波長λiで発光するナノワイヤの複数のサブセットの発光から生じる合成光を発する本発明による電子発光素子の色を制御する方法であって、
−前記一次ナノワイヤのサブセットに第1の初期電圧を印加するステップと、
−二次ナノワイヤの各サブセットが、波長λiで光子を発する一次ナノワイヤのサブセットに、前記波長λiで前記光子を捕捉可能なように隣接している状態で、二次ナノワイヤの複数のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記素子の前記合成色を調整すべく前記二次ナノワイヤのサブセットに各々関連付けられた前記一次ナノワイヤのサブセットに印加する制御電圧の決定に際して前記光電流を加味するステップとを含んでいることを特徴とする。
【0033】
本発明の更に別の主題は、本発明による電子発光素子を制御する方法であって、
−光電流Iphを検出すべく二次ナノワイヤの少なくとも1個のサブセットに逆電圧を印加するステップと、
−前記光電流を電流閾値Iph.sと比較するステップと、
−前記光電流値Iphが前記閾値電流Iph.s未満である場合、前記電子発光素子を起動すべく一次ナノワイヤに順電圧の印加するステップとを含んでいることを特徴とする。
【0034】
非限定的な例および添付の図面で示す以下の説明を精査することにより本発明に対する理解が深まると共に他の利点も明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】公知の技術による放射構造を有するナノワイヤを用いるLED構成を示す。
図2】本発明の素子における前記一次ナノワイヤに隣接する一次ナノワイヤにより発せられた光子の二次ナノワイヤによる捕捉の現象を示す。
図3】本発明の素子の第1の一変型例を示す。
図4a】本発明による第1の典型的な素子の4a(断面図)を示す。
図4b】本発明による第1の典型的な素子の4b(平面図)を示す。
図5】センサ部の光電流の増幅を可能にする一次ナノワイヤおよび二次ナノワイヤの第1の例示的な分布を示す。
図6】本発明の素子の第2の変型例を示す。
図7】自身の輝度マッピングの生成を可能にする、本発明の素子の全てのナノワイヤにおける二次ナノワイヤの第2の例示的な分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一般に、本発明の電子発光素子は、電気的制御の下で、典型的には以下で順電源電圧と称するバイアス電圧の作用の下で光照射を発することを意図された第1の一連の一次ナノワイヤ、および光電流を生成すべく一次ナノワイヤにより発せられた光子を捕捉することを意図された第2の一連のいわゆる検出用二次ナノワイヤを含んでいる。
【0037】
半導体材料を主成分とするナノワイヤは、いわゆる固有の非ドープ半導体領域Iにより分離されているかまたはされていないPN型のまたは好適にはPIN型、すなわちPドープ領域およびNドープ領域の接合部を含んでいる。PおよびN領域のキャリア間の濃度の差により、領域同士のキャリアの濃度を均等化させる傾向を有する拡散電流の循環が生じる。P領域の正孔はN領域に拡散し、同数の固定負電荷を構成するイオン化された原子が後に残る。同様に、N領域の電子がP領域に拡散して正電荷が後に残る。また、接合部において、正および負の固定電荷を含むゾーンが生じる。これらの電荷から電場Eが生じ、従って電気的平衡が確立するようにキャリアの拡散に対抗する内部電圧Vintが生じる。
【0038】
接合部に電圧Vdirect未満のバイアスが掛かっている場合、バリア高が低くなって(Vint−Vdirect)となる。従ってN領域からの電子およびP領域からの正孔が多数この電位障壁を越えることができ、次いで「敵対的媒体」(電子に対するPおよび正孔に対するN)に到達して、再び結合される。バランスを回復すべく、P型中立領域の正孔は、再結合が生じる(正孔欠陥)ゾーンまで動かされる。N型中性領域の電子も同様の現象にさらされる。局所再結合の当該現象により接合部における順電流の循環が説明できる。
【0039】
更に、逆バイアスが掛かったPNまたはPIN接合部が光放射に晒された際に、光放射により電子が価電子帯から導電帯まで移るため多数の電子正孔対を生成可能である。空乏領域およびその直近傍で完全に自由にされた光キャリアは、光誘起電流Iphと呼ばれる入射光の強度に比例する逆電流を生じさせる接合部の電場により制御される。
【0040】
図2に、核/殻型構造のナノワイヤの場合における、二次ナノワイヤ内での光子の捕捉現象を示し、N、IおよびP型領域において、各々eおよびhと表記する電子正孔輸送現象が出現している。領域Z、すなわち光子捕捉ゾーンが拡大している。
【0041】
領域Nからの正孔の移動を模式的に示していて、当該移動は光子の吸収により生じた光電流の発生源であり、本来の非ドープ領域は例えば図1に示すような量子井戸構造を含んでいる。
【0042】
従って、本発明の素子が動作しているとき、前記素子のセンサ部は、周辺光から受光された光子に当該光子を生成すべく電気的に制御された一次ナノワイヤにより生じた光子を加えた全ての光子に起因する光電流を測定する。
【0043】
本発明によれば、特に反応ループを用いて前記素子の動作を調整すべく、当該光電流検出の利用を提案するものであり、当然様々な要因で変動し得る中で一定した光電力を保証すべく光誘起電流を用いて電子発光素子の制御電圧を調整する。図3に、電気的制御の下で、典型的には以下で順電源電圧または電流と表記するバイアス電圧の作用の下で光照射を発することを意図された第1の一連の一次ナノワイヤNTi、および光電流を生成すべく一次ナノワイヤにより発せられた光子を捕捉することを意図された第2の一連のいわゆる検出用二次ナノワイヤNTiを含んでいる。生じた光電流Iphは、一次ナノワイヤの電源調整器11に所与の電流または電圧を導入すべく電流コンパレータ10を介して基準電流Irefと比較される。そのような素子は特に、調整された輝度特性を保証可能にし、一次ナノワイヤの電圧制御が、検出ナノワイヤの少なくとも一部により先に検出された発光用一次ナノワイヤの発光出力に応じて増減可能である。
【0044】
第1の例示的電子発光素子:
第1の例示的な素子を図4a、4bに示す。本例によれば、センサ部は基板の周囲に配置されている。ナノワイヤは、例えば上で記述して図1に示すような、450nmの青色領域で発光しやすい、GaNを主体とする核/殻型、且つInGaN系の1個または複数の量子井戸の構造を有している。
【0045】
発光用一次ナノワイヤNTiは、不連続な透明導電層27により、第2の検出ナノワイヤNTiから電気的に絶縁されている。
【0046】
本発明で用いる原理によれば、二次ナノワイヤは、負電圧の印加の下で、正の制御電圧Valimが掛かけられた自身に隣接する一次ナノワイヤにより生じた放射を受ける。
【0047】
450nmの青色領域での吸光が可能な電子発光ナノワイヤの場合、出願人は、
n=1.5(nはナノワイヤ間の媒体の屈折率)から、およびシミュレーションの実行により、隣接する一次ナノワイヤにより発せられた光子の約30%が、注目する前記二次ナノワイヤを通過できたものと考える。
【0048】
1Wopt(450nmで)のオーダーで1チップ当たりに発せられる総出力を考慮すれば、1ナノワイヤ当たりに発せられる光子流を6×1012ph/ナノワイヤ・秒と推定することができる。
【0049】
この例示的な構造(2nmのInGaN)で用いるような量子井戸の吸光係数は更に、α=10cm−1のオーダーであって、ナノワイヤの幅は約2nm、無視できる領域Pを介して吸光を考慮すれば、吸光比は典型的には1%のオーダーであり得る。
【0050】
六角形の分布に従う基板上のナノワイヤの分布の場合、中心のナノワイヤが6個の隣接するナノワイヤにより囲まれていて、隣接する一次ナノワイヤの発光に起因して、
6×6×1012×30%×1%、すなわち1011ph/秒の総捕捉能力が得られる。
【0051】
このように生じた電子の完全な集合体を考慮することにより、検出されやすい電流は、1011×1×6×10−19C、すなわち約10nAに等しく、すなわち完全に検出可能な電流である。
【0052】
上述の推論は、単一の二次ナノワイヤにより生じた電流に関係しており、より強い論拠として100個程度の二次ナノワイヤを考慮することにより、そのように検出されやすい約1μAの光電流の値が増幅される。
【0053】
例えば一次ナノワイヤおよび二次ナノワイヤの線形分布を考えれば、図5に示すように一次ナノワイヤのライン全体にわたり1個の二次ナノワイヤが4個の一次ナノワイヤに隣接するようにできる。この構成において、各々の二次ナノワイヤNTiは4個の隣接する一次ナノワイヤNTiから発せられた光子を受光しやすい。
【0054】
本発明によれば、フォトダイオード型のセンサ自身が周辺光の明度レベルに応じて電子発光素子の動作を起動するモードを提供することも有利な特徴である。この場合、処理は以下の通りである。
−光電流を検出すべく逆電圧が二次ナノワイヤに印加され、
−光電流が閾値Iph.s未満である場合、前記電子発光素子を起動すべく順電圧が一次ナノワイヤに印加される。
【0055】
図6に、構造Sが、周辺光から発せられた光子を検出すると共に光電流Iphを生成して有利な特徴として電流コンパレータ20を介して閾値電流Iph.sと比較可能にする検出ナノワイヤNTiを含むような素子を示す。検出された光電流が前記値Iph.s未満である場合、スイッチを備えた電源ブロック21を介して発光一次ナノワイヤNTiからなる発光部への電力供給が生起する。
【0056】
本発明の第2の例示的電子発光素子:
本発明の第2の例示的な素子によれば、二次ナノワイヤは、前記素子の輝度L(x,y)の表面分布を監視可能にする素子の異なる領域のサブセットにグループ化されている。図7に、基板全体にわたり分布する二次ナノワイヤのサブセットに隣接する一次ナノワイヤのサブセットを有するそのような構成を示す。所与の領域と関して輝度の総和が異なるいくつかの領域1、2および3を模式的に示す。これらの領域を合わせて、模式的以示す例において輝度の総和、すなわちΣL1i(xi,yi)+ΣL2i(xi,yi)+ΣL3i(xi,yi)が得られ、検出された各々の光電流により調整可能である。本例では、領域1、2および3のナノワイヤには独立に電力供給することができる。異なるセクター内の二次ナノワイヤのサブセットにより生じた光電流は、各々の一次ナノワイヤの正確な電源電圧をΣL1i=ΣL2i=ΣL3iであるように決定する。
【0057】
本発明による白色光発光するLED型の第3の例示的電子発光素子:
本発明の第3の例示的な素子によれば、RGB(赤、緑、青)成分から得られる白色光のような合成光の発光品質を監視することができる。
【0058】
実際には、現時点で白色光を発光するLEDの製造を可能にする多くの技術がある。直接的な実施方法は、各々赤、緑および青色を発光する3個のLEDを組み合せるものである。しかし、異なる光源を制御することは、赤、緑および青色放射が極めて正確な比率で、且つLEDの寿命を通じてまたは如何なる環境条件下でも再現的に混合する必要があるため、困難であることが分かっている。
【0059】
白色光を発するLEDに一体化されたフォトダイオード型の1個または複数のセンサにより、これらの目的を実現することが可能になる。
【0060】
従って、異なる波長、すなわち赤:λi、緑:λiおよび青:λiで各々発光する一次ナノワイヤのサブセットを有する図7に示したものと同様の構成を有することが可能である。二次ナノワイヤは独立に3個のRGB成分を測定し、正確且つ時間が経過しても一定である白色放射を決定すべく各セクターにおける一次ナノワイヤの電源電圧が監視される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7