(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニッケル粉末の表面に存在する硫黄のうち、硫酸イオンとして存在する硫黄と硫化物イオンとして存在する硫黄のモル比が0.10以下であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末に代表される携帯通信端末は、多機能化、高機能化に伴い消費電力が大きくなり、バッテリーの容量も大きくなるため、限られた筐体内で電子部品が搭載されるメイン基板は小さくなる傾向がある。一方、メイン基板に搭載される電子部品の数は増加する傾向にある。このため、メイン基板に搭載される積層セラミックコンデンサは小型かつ大容量であることが求められる。
【0003】
積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化に伴い、積層セラミックコンデンサの内部電極も薄層化・低抵抗化等が要求されている。このため、内部電極に使用されるニッケル粉末は、一次粒子の個数50%径が0.3μm以下は勿論のこと、0.2μm以下、更には0.1μm以下の超微粉が要望されている。
【0004】
一般に、ニッケル粉末は積層セラミックコンデンサの誘電体に用いられるセラミック粉末よりも焼結開始温度が低く、熱収縮が大きい。このため、積層セラミックコンデンサの製造工程で焼成する際、電極層と誘電体層の間の剥離や電極層でのクラックの発生といった欠陥が発生し易いという問題がある。また、ニッケル粉末中に一次粒子の個数50%径の3倍を超える粗大粒子や粒子どうしが凝結した凝集粒子が存在すると電極層表面の凹凸が大きくなり、電極層間のショートや積層セラミックコンデンサの耐電圧の低下の原因となる。
【0005】
上記のような焼成時の欠陥の発生に対応する手段として、例えば特許文献1には、硫黄含有率が0.02〜1.0重量%であるニッケル粉末が開示されている。また、特許文献2には、表面に硫化ニッケル又は硫酸ニッケルの被覆膜が形成されているニッケル粉末が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術では、ニッケル粉末の個数50%径が0.1μmよりも小さくなるとニッケル粉末の焼成時の欠陥発生の防止効果が十分ではなく、さらなる改善が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のニッケル粉末には、種々の製造方法によって製造されたニッケル粉末とニッケルを主成分とするニッケル合金粉末が含まれる。ニッケル合金粉末としてはニッケルに耐酸化性等の付与や電気伝導率向上のためクロム、珪素、ホウ素、リンや希土類元素、貴金属元素等が添加された合金粉末がある。
【0015】
本発明のニッケル粉末の個数50%径は、0.09μm以下である。本発明のニッケル粉末の個数50%径の下限については、特に制限されるものではないが、通常のニッケル粉末の生産コストや用途の観点から0.01μm以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のニッケル粉末の個数50%径は、走査電子顕微鏡によりニッケル粉末の写真を撮影し、その写真から画像解析ソフトを使用して、粒子約1,000個の粒径を測定し、得られたニッケル粉末の粒度分布より、その個数50%径を算出したものである。この場合において、粒径は粒子を包み込む最小円の直径である。
【0017】
本発明のニッケル粉末は、硫黄を1.0〜5.0重量%含有する。硫黄濃度を1.0重量%以上にすることにより、ニッケル粉末の焼結挙動を改善することができる。一方、硫黄濃度が、5.0重量%を超えると、焼結時に腐食性ガスを発生して積層セラミックコンデンサの特性を劣化させる等の問題が生じる。ニッケル粉末中の硫黄濃度は、より好ましくは1.2〜4.0重量%、さらに好ましくは1.5〜3.0重量%である。
【0018】
また、本発明のニッケル粉末は、粉末の表面に存在する硫黄の内、硫酸イオンとして存在する硫黄と硫化物として存在する硫黄のモル比(硫酸イオン/硫化物イオン比)が、0.10以下であることが好ましく、0.05以下であればより好ましい。硫酸イオンとして存在する硫黄と硫化物イオンとして存在する硫黄のモル比を上記範囲にすることで、ニッケル粉末ペースト製造時の凝集粒子の発生を防止することができる。なお、ニッケル粉末表面の硫酸イオンとして存在する硫黄と硫化物イオンとして存在する硫黄の比(硫酸イオン/硫化物イオン比)は、X線光電子分光装置を使用して測定したS
2pスペクトルの168eVのピークと162eVのピークの強度比から算出する。
【0019】
また、本発明のニッケル粉末は、ニッケル粉末中に含まれる個数50%径の3倍以上の粒径を有する粒子(以下、「粗大粒子」と記載することもある)の存在率は個数基準で100ppm以下が好ましく、50ppm以下であればより好ましい。粒度分布をこの範囲とすることで、積層セラミックコンデンサの製造時に電極層を平滑にすることができる。なお、粗大粒子の存在率の評価は、前記と同様に走査電子顕微鏡によりニッケル粉末の写真を撮影し、その写真から画像解析ソフトを使用して、粒子約100,000個のうち、粒径が前記で求めた個数50%径の3倍を超える粒子の数を数えて算出する。
【0020】
本発明のニッケル粉末は例えば、気相法や液相法など既知の方法で製造することができる。特に塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触させることによりニッケル粉末を生成する気相還元法、あるいは熱分解性のニッケル化合物を噴霧して熱分解する噴霧熱分解法は、生成する金属微粉末の粒径を容易に制御することができ、さらに球状の粒子を効率よく製造することができるという点において好ましい。特に、塩化ニッケルガスを還元性ガスと接触させることによる気相還元法は、生成するニッケル粉末の粒径を精密に制御でき、さらに粗大粒子の発生を防止できる点から好ましい。
【0021】
気相還元法においては、気化させた塩化ニッケルのガスと水素等の還元性ガスとを反応させる。この場合に固体の塩化ニッケルを加熱し蒸発させて塩化ニッケルガスを生成してもよい。しかしながら、塩化ニッケルの酸化または吸湿防止、およびエネルギー効率を考慮すると、金属ニッケルに塩素ガスを接触させて塩化ニッケルガスを連続的に発生させ、この塩化ニッケルガスを還元工程に直接供給し、次いで還元性ガスと接触させ塩化ニッケルガスを連続的に還元してニッケル微粉末を製造する方法が有利である。
【0022】
ニッケルを主成分とする合金粉末の製造方法に使用される場合の塩化ニッケルガス以外のガスは、三塩化珪素(III)ガス、四塩化珪素(IV)ガス、モノシランガス、塩化銅(I)ガス、塩化銅(II)ガス、塩化銀ガス、塩化モリブデンガス(III)ガス、塩化モリブデン(V)ガス、塩化鉄(II)ガス、塩化鉄(III)ガス、塩化クロム(III)ガス、塩化クロム(VI)ガス、塩化タングステン(II)ガス、塩化タングステン(III)ガス、塩化タングステン(IV)ガス、塩化タングステン(V)ガス、塩化タングステン(VI)ガス、塩化タンタル(III)ガス、塩化タンタル(V)ガス、塩化コバルトガス、塩化レニウム(III)ガス、塩化レニウム(IV)ガス、塩化レニウム(V)ガス、ジボランガス、ホスフィンガス等及びこれらの混合ガスが挙げられる。
【0023】
また還元性ガスには、水素ガス、硫化水素ガス、アンモニアガス、一酸化炭素ガス、メタンガスおよびこれらの混合ガスが挙げられる。特に好ましくは、水素ガス、硫化水素ガス、アンモニアガス、およびこれらの混合ガスである。
【0024】
気相還元反応によるニッケル粉末の製造過程では、塩化ニッケルガスと還元性ガスとが接触した瞬間にニッケル原子が生成し、ニッケル原子どうしが衝突・凝集することによってニッケル粒子が生成し、成長する。そして、還元工程での塩化ニッケルガスの分圧や温度等の条件によって、生成するニッケル粉末の粒径が決まる。上記のようなニッケル粉末の製造方法によれば、塩素ガスの供給量に応じた量の塩化ニッケルガスが発生するから、塩素ガスの供給量を制御することで還元工程へ供給する塩化ニッケルガスの量を調整することができ、これによって生成するニッケル粉末の粒径を制御することができる。
【0025】
さらに、塩化ニッケルガスは、塩素ガスと金属との反応で発生するから、固体塩化ニッケルの加熱蒸発により塩化ニッケルガスを発生させる方法とは異なり、キャリアガスの使用を少なくすることができるばかりでなく、製造条件によっては使用しないことも可能である。したがって、気相還元反応の方が、キャリアガスの使用量低減とそれに伴う加熱エネルギーの低減により、製造コストの削減を図ることができる。
【0026】
また、塩化工程で発生した塩化ニッケルガスに不活性ガスを混合することにより、還元工程における塩化ニッケルガスの分圧を制御することができる。このように、塩素ガスの供給量もしくは還元工程に供給する塩化ニッケルガスの分圧を制御することにより、ニッケル粉末の粒径を制御することができ、粒径のばらつきを抑えることができるとともに、粒径を任意に設定することができる。
【0027】
上記のような気相還元法によるニッケル粉末の製造条件は、個数50%径が0.09μm以下になるように任意に設定するが、例えば、出発原料である金属ニッケルの粒径は約5〜20mmの粒状、塊状、板状等が好ましく、また、その純度は概して99.5%以上が好ましい。この金属ニッケルを、まず塩素ガスと反応させて塩化ニッケルガスを生成させるが、その際の温度は、反応を十分進めるために800℃以上とし、かつニッケルの融点である1453℃以下とする。反応速度と塩化炉の耐久性を考慮すると、実用的には900℃〜1100℃の範囲が好ましい。
【0028】
次いで、この塩化ニッケルガスを還元工程に直接供給し、水素ガス等の還元性ガスと接触反応させる。その際に、塩化ニッケルガスを適宜アルゴン、窒素等の不活性ガスで希釈して塩化ニッケルガスの分圧を制御することができる。塩化ニッケルガスの分圧を制御することにより、還元部で生成する金属粉末の粒度分布等の品質を制御することができる。これにより生成する金属粉末の品質を任意に設定できるとともに、品質を安定させることができる。通常、個数50%径が0.09μm以下のニッケル粉末を得るためには塩化ニッケルガスの分圧を30kPa以下に制御する。還元反応の温度は反応完結に十分な温度以上であればよい。固体状のニッケル粉末を生成する方が、取扱いが容易であるので、ニッケルの融点以下が好ましく、経済性を考慮すると900℃〜1100℃が実用的である。
【0029】
このように還元反応を行なったニッケル粉末を生成したら、生成したニッケル粉末を冷却する。冷却の際、生成したニッケルの一次粒子同士の凝集による二次粒子の生成を防止して所望の粒径のニッケル粉末を得るために、窒素ガス等の不活性ガスを吹き込むことにより、還元反応を終えた1000℃付近のガス流を400〜800℃程度までに急速冷却することが望ましい。その後、生成したニッケル粉末を、例えばバグフィルタ等により分離、回収する。
【0030】
噴霧熱分解法によるニッケル粉末の製造方法では、熱分解性のニッケル化合物を原料とする。具体的には、硝酸塩、硫酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸塩、塩化物、アンモニウム錯体、リン酸塩、カルボン酸塩、アルコキシ化合物などの1種または2種以上が含まれる。このニッケル化合物を含む溶液を噴霧して、微細な液滴を作る。このときの溶媒としては、水、アルコール、アセトン、エーテル等が用いられる。また、噴霧の方法は、超音波または二重ジェットノズル等の噴霧方法により行う。このようにして微細な液滴とし、高温で加熱して金属化合物を熱分解し、ニッケル粉末を生成する。このときの加熱温度は、使用される特定のニッケル化合物が熱分解する温度以上であり、好ましくは金属の融点付近である。
【0031】
液相法によるニッケル粉末の製造方法では、硫酸ニッケル、塩化ニッケルあるいはニッケル錯体を含むニッケル水溶液を、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物中に添加するなどして接触させてニッケル水酸化物を生成し、次いでヒドラジンなどの還元剤でニッケル水酸化物を還元し金属ニッケル粉末を得る。このようにして生成した金属ニッケル粉末は、均一な粒子を得るために必要に応じて解砕処理を行う。
【0032】
以上の方法で得られたニッケル粉末は、残留する原料を除去するため、液相中に分散させ、洗浄を行うことが好ましい。たとえば、以上の方法で得られたニッケル粉末を、pHや温度を制御した特定の条件で炭酸水溶液中に懸濁させて処理を行う。炭酸水溶液で処理することにより、ニッケル粉末の表面に付着している塩素などの不純物が十分に除去されるとともに、ニッケル粉末の表面に存在する水酸化ニッケルなどの水酸化物や粒子同士の摩擦などにより表面から離間して形成された微粒子が除去されるため、表面に均一な酸化ニッケルの被膜を形成することができる。炭酸水溶液での処理方法としては、ニッケル粉末と炭酸水溶液を混合する方法、あるいはニッケル粉末を純水で一旦洗浄した後の水スラリー中に炭酸ガスを吹き込むか、あるいはニッケル粉末を純水で一旦洗浄した後の水スラリー中に炭酸水溶液を添加して処理することもできる。
【0033】
本発明のニッケル粉末に硫黄を含有させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば以下の方法を採用することができる。
(1)上記還元反応中に硫黄含有ガスを添加する方法
(2)ニッケル粉末を硫黄含有ガスと接触処理する方法
(3)ニッケル粉末と固体の硫黄含有化合物を乾式で混合する方法
(4)ニッケル粉末を液相中に分散させたスラリー中に硫黄含有化合物溶液を添加する方法
(5)ニッケル粉末を液相中に分散させたスラリー中に硫黄含有ガスをバブリングする方法
【0034】
特に、硫黄含有量を精密に制御できる点や硫黄を均一に添加できる観点から(1)および(4)の方法が好ましい。(1)、(2)、(5)の方法において使用される硫黄含有ガスは、特に限定されるものではなく、硫黄蒸気、二酸化硫黄ガス、硫化水素ガス等、還元工程の温度下において気体であるガスをそのまま、あるいは希釈して使用することができる。この中でも常温で気体であり流量の制御が容易な点や不純物の混入のおそれの低い点から二酸化硫黄ガス、および硫化水素ガスが有利である。
【0035】
(1)の方法では、これらのガスを塩化ニッケルガス、不活性ガス、還元性ガスのいずれかに混合することにより還元反応で生成するニッケル粉末に硫黄を均一に含有させることができる。また、塩化ニッケルガスと硫黄含有ガスの流量比を制御することでニッケル粉末の硫黄含有量を制御することができる。
【0036】
(3)、(4)の方法において使用される硫黄含有化合物は、特に限定されるのではなく、トリアジンチオール、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオ尿素等の硫黄含有化合物を使用することができる。中でもチオ尿素を使用する方法が最も効果的である。
【0037】
(4)の方法では、ニッケルスラリーと硫黄含有化合物の溶液を混合した後、撹拌、あるいは超音波処理等を行う。上記の処理の際の液温の範囲は20〜60℃、より好ましくは20〜40℃である。硫黄含有化合物の添加量を調整することでニッケル粉末の硫黄含有量を任意に調整することができる。気相還元法により得られたニッケル粉末に(4)の方法を適用する場合、前述の洗浄工程の後に硫黄添加処理を行うことが好ましい。
【0038】
前述の洗浄工程および硫黄添加工程の後、ニッケル粉末スラリーを乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、既知の方法を使用することができる。具体的には高温のガスと接触させ乾燥する気流乾燥、加熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。このうち、気流乾燥は粒子どうしの衝突による硫黄含有層の破壊がないため好ましい。
【0039】
本発明のニッケル粉末は上述の乾燥工程の後、雰囲気制御下で加熱処理を行う。加熱処理は、還元雰囲気中で100〜400℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃の温度下において0.5〜10時間の加熱処理を行う。還元雰囲気は、例えば窒素、アルゴン等の不活性ガスと水素ガスの混合ガスの雰囲気があげられる。還元雰囲気中の水素分圧は0.001〜0.01MPaである。この処理により、ニッケル粉末の表面に存在する硫酸イオンを硫化物イオンに変換し、ニッケル粉末表面の硫酸イオンとして存在する硫黄と硫化物イオンとして存在する硫黄のモル比(硫酸イオン/硫化物イオン比)を安定して0.10以下にすることができる。
【0040】
図1はニッケル粉末を製造するための装置を示す図である。
図1において符号10は還元炉である。還元炉10は有底円筒状をなし、その上流側には塩化ニッケルガスノズル11が取り付けられており、還元炉10内に塩化ニッケルガス、二酸化硫黄ガス、および濃度調整のための窒素ガスが供給されるようになっている。また、還元炉10の上流側側壁には水素ガスノズル12が取り付けられている。水素ガスノズル12から還元炉10内に供給される水素ガスにより塩化ニッケルが還元されてニッケル粉末Pが生成される。還元炉10の下流側側壁には、冷却ガスノズル13が取り付けられており、冷却ガスノズル13から還元炉10内に供給される窒素ガスなどの不活性ガスにより生成したニッケル粉末Pが迅速に冷却され、ニッケル粉末Pの粗大化を防止する。還元炉10の下流側には回収管14が取り付けられており、ニッケル粉末Pは回収管14を流通して回収装置に送られる。
【実施例】
【0041】
(実施例1,2、比較例1〜3)
個数50%径が0.03μm程度で硫黄含有率を種々変化させたニッケル粉末を
図1に示すニッケル粉末製造装置を用いて気相還元法で作製した。
【0042】
ヒーターにより1,100℃の雰囲気温度とした還元炉10内に、塩化ニッケルガスノズル11より、塩化ニッケルガス、二酸化硫黄ガス、および窒素ガスの混合ガスを、流速2.8m/秒(1,100℃換算)で導入した。同時に水素ガスノズル12から水素ガスを流速2.2m/秒(1,100℃換算)で還元炉10内に導入し、還元炉10内で塩化ニッケルガスを還元してニッケル粉末Pを得た。
【0043】
この場合において、塩化ニッケルガスと二酸化硫黄ガスの流量比を制御することで、ニッケル粉末の硫黄含有量を調整した。なお、ニッケル生成反応の際、反応熱により生成するニッケル粉末は1,200℃まで加熱され、生成したニッケル粉末を含むガス流はニッケル粉末の黒体輻射により炭化水素等の気体燃料の燃焼炎に似た輝炎Fとして観察された。生成されたニッケル粉末Pは、冷却ガスノズル13からニッケル粉末の単位時間あたり生成量の200倍の質量流量で導入される25℃の窒素ガスと混合され、400℃以下まで冷却された後、回収管14により図示しないバグフィルタに導き、ニッケル粉末を分離、回収した。比較例3については塩化ニッケルガスに二酸化硫黄ガスを添加せずにニッケル粉末を作製した。
【0044】
回収したニッケル粉末は水中に分散、沈降する洗浄工程を5回繰り返して残留する塩化ニッケルを取り除いた後に、気流乾燥装置で水分含有率が0.5%以下になるように乾燥処理を行った。次いで2体積%水素‐アルゴンの還元雰囲気下(水素分圧:2kPa)で150℃の熱処理を3時間行い、実施例1,2、および比較例1〜3のニッケル粉末を得た。
【0045】
得られたニッケル粉末につき、個数50%径、硫黄濃度、ニッケル粉末表面の硫酸イオン/硫化物イオン比、粗大粒子率、焼結挙動、および凝集挙動を以下の方法で評価した。
【0046】
a.個数50%径
走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名S−4700)により金属ニッケル粉末の写真を撮影し、その写真から画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、商品名MacView4.0)を使用して、粒子約1,000個の粒径を測定してその個数50%径を算出した。なお、粒径は粒子を包み込む最小円の直径とした。
【0047】
b.硫黄濃度
誘導結合プラズマ発光分光分析装置(SIIナノテクノロジー株式会社製、商品名SPS3100)を使用して測定した。
【0048】
c.ニッケル粉末表面の硫酸イオン/硫化物イオン比
X線光電子分光装置(アルバック・ファイ株式会社製、商品名QVuantum2000)を使用して測定したS
2pスペクトルの168eVのピークと162eVのピークの強度比からニッケル粉末表面の硫酸イオン/硫化物イオン比を算出した。
【0049】
d.粗大粒子率
走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名S−4700)により金属ニッケル粉末の写真を撮影し、その写真から画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、商品名MacView4.0)を使用して、粒子約100,000個のうち、粒径が個数50%径の3倍以上の粗大粒子の数を測定して粗大粒子率を求めた。
【0050】
e.焼結挙動
ニッケル粉末1g、樟脳3重量%、及びアセトン3重量%を混合し、この混合物を内径5mm、長さ10mmの円柱状金属容器に充填し、500MPaで圧縮して試験ペレットを作製した。この試験ペレットの熱収縮挙動を、熱機械分析装置(株式会社リガク製、商品名TMA8310)を使用して1.5体積%水素‐窒素の還元雰囲気下で昇温速度5℃/分の条件で測定した。測定結果から5%収縮温度を求め、ニッケル粉末の焼結挙動を表1のように評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
f.凝集粒子
ニッケル粉末0.5gにポリカルボン酸系分散剤5重量%水溶液100mlを加え、超音波分散機(株式会社ギンセン製、商品名GSD600AT)を使用して出力600W、振幅幅30μmで60秒分散した。分散後、メンブレンフィルター(孔径1μm、フィルター径25mm)(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製、商品名ニュークリポアメンブレン)を使用して吸引圧0.1MPaで吸引ろ過を行い、その際の通過時間からニッケル粉末の凝集挙動を表2のように評価した。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1,2、比較例1〜3の測定結果および評価結果を表3に示す。なお比較例3は硫黄濃度が検出限界以下であり、ニッケル粉末表面の硫黄の状態についても評価することができなかった。
【0055】
(実施例3〜5)
個数50%径が0.09μm程度、硫黄含有率1.5%程度で、表面の硫黄の状態を種々変化させたニッケル粉末を作製した。
図1に示すニッケル粉末製造装置を用いて、塩化ニッケルガスに二酸化硫黄ガスを加えずに製造した硫黄を含まないニッケル粉末に対して、水中に分散、沈降する洗浄工程を5回繰り返して残留する塩化ニッケルを取り除いた。その後、ニッケル粉末に対して硫黄含有率が1.5%になるよう、チオ尿素のエタノール溶液を添加し、35℃で30分撹拌処理をした。次いで、気流乾燥装置で水分含有率が0.5%以下になるように乾燥処理を行った後、2体積%水素‐アルゴンの還元雰囲気下(水素分圧:2kPa)、200℃の熱処理を、ニッケル粉末表面の硫黄の状態を変えるため処理時間を0.5〜3時間に変化させて行い、実施例3〜5のニッケル粉末を得た。実施例3〜5の測定結果および評価結果を表3に示す。
【0056】
(比較例4)
実施例3の洗浄工程後のチオ尿素のエタノール溶液中での攪拌処理以降の工程を、洗浄工程後、気流乾燥装置で水分含有率が0.5%以下になるように乾燥処理を行った後、石英反応管中で1.5体積%水素−5体積%硫化水素−窒素雰囲気下(水素分圧:1.5kPa、硫化水素分圧:5kPa)、230℃で10分間の硫化処理を行ったこと以外は、実施例3と同様にニッケル粉末を得た。比較例4の測定結果および評価結果を表3に示す。
【0057】
得られたニッケル粉末につき、個数50%径、硫黄濃度、ニッケル粉末表面の硫酸イオン/硫化物イオン比、粗大粒子率、焼結挙動、および凝集粒子を先述の方法で評価した。その結果を表3に併記する。
【0058】
【表3】
【0059】
表3から明らかなように、実施例1、2のニッケル粉は、比較例1〜3と比較して個数50%径が同程度であるにもかかわらず、硫黄濃度が1.0〜5.0重量%の範囲内であるため、焼結挙動が優れていることが分かる。また実施例3、4のニッケル粉は、実施例5、比較例4と比較して個数50%径が同程度であるのにもかかわらず、硫黄濃度が上記範囲内であり、かつ、硫酸イオン/硫化物イオン比が0.10以下であるため、凝集粒子の発生が少ないことが分かる。なお、実施例5は凝集挙動の評価が「△」であったが、より重要な焼結挙動の評価が「○」であったため、本発明の性能としては充分である。
【0060】
以上の結果から、本発明のニッケル粉末は積層セラミックコンデンサの製造工程において優れた焼結特性を有し、結果として積層セラミックコンデンサの電極層と誘電体層の間の剥離や電極層のクラックといった欠陥の発生の防止に有効なものであることが実証された。さらに、凝集粒子の発生防止効果を有し、結果として電極層間のショートや耐電圧の低下といった不良の発生の防止に有効なものであることが実証された。