(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程a1)における該ポリイミドの製造に使用される非プロトン性双極性溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、スルホラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はそれらの混合物からなる群から選択されたものであり、
及び/又は
工程a2)における該キャスト溶液の製造のために、
・揮発性で水と混和性の溶剤、
・非溶剤、
・細孔形成剤
及び
・水混和性の溶剤
からなる群から選択される水溶性添加剤が添加される
ことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された化学的性質及び物理的性質を有するポリイミド膜、好ましくはP84改良種製のもの、特に好ましくはP84タイプ70又はP84 HT製のもの、それらの製造方法、並びにそれらの使用に関する。
【0002】
先行技術
転相膜を製造するためには、一般的に、水と混和性の従来の溶剤に可溶であるポリマーが必要とされる。該膜の性質に影響を及ぼすために、多くの添加剤、例えば助溶剤、非溶剤、細孔形成剤、親水化剤等が混合される。この際に、通常、ポリマー粒状物又はポリマー粉末から出発し、それから、該溶剤及び該添加剤でペースト化することによりキャスト溶液が製造される。膜製造における成功のために決定的であるのは、とりわけ、使用されるポリマーのモル質量及びモル質量分布である。一般的に、高いモル質量及び狭い分布を有するポリマーが必要とされる。
【0003】
P84は、文献において一般的に知られたポリマーであり、かつ平膜及び中空繊維膜の製造に使用される(US 2006/0156920、WO 04050223、US 7018445、US 5635067、EP 1457253、US 7169885、US 20040177753、US 7025804、J.N Barsema et al, J. of Membrane Science, 216, 2003, 195-205; J. Ren et al, J. of Membrane Science, 241, 2004, 305-314; Liu et al, Chem. Eng. Sci., 60, 2005, 6674 - 6686; J. Ren et al, J. of Membrane Science, 248, 2005, 177-188)。P84は、複数の改良種、特にP84タイプ70及びP84 HTで、オーストリアのレンチング在のHP Polymer社から粉末形で販売されている。顧客は、この粉末を、該キャスト溶液の製造のために、次いで非プロトン性双極性溶剤中に再溶解させ、これを添加剤と混合する。得られた溶液から、次いで、膜を製造することができる。US 2006/156920によれば、しかしながら、この方法は、こうして製造されたフィルム及び膜が極めてもろいという欠点を有する。ゆえに、安定なフィルム及び中空繊維膜を得るために、P84と他のポリマーとのブレンドを製造することが提案される。しかし、ブレンドにとって不利であるのは、ガスの極めて良好な分離特性、CO
2に対する可塑化安定性及び多くの溶剤に対するP84の薬品安定性が、一部では、他のポリマーの混合により妨げられるか又はそれどころか破壊されることである。
【0004】
WO 2006/092677において、P84タイプ70及びP84 HTの粉末が、少なすぎるモル質量を有することが指摘される。ゆえに、十分に高いモル質量を得るために、該粉末を熱処理にかけることが提案される。この際に、その処理期間及び方法が、極めて重要であり、かつ少し異なる性質を有する粉末をもたらし、これらが、そしてまた異なる粘度を有するキャスト溶液を与える。それゆえ、該ポリマー膜の均一な製造は、困難を伴ってのみ可能である。更に、この方法により製造される膜が、不十分な熱安定性を有することが見出された。すなわち、該粉末のアニーリングにより達成される分子量増加が可逆的であることが分かった。すなわち、より高いプロセス温度でのこれらの膜の使用の際に、望ましくない分子量減少、ひいてはその膜特性の悪化の結果となる。
【0005】
中空繊維膜の製造に加えて、P 84粉末は平膜の製造にも使用される(WO 2007/125367、WO 2000/06293)。ここでは、前記のことと同じ問題及び欠点が生じた。
【0006】
WO 2011/009919には、P84タイプ70もしくはP84 HT粉末の少ないモル質量の原因が製造プロセスにあることが開示されている。該ポリマーが、その重合溶液から粉末へ変換される際に、すなわち、その沈殿プロセスにより、モル質量を失うことが見出された。ゆえに、該ポリマーを、該重合後に、固体の形態で、特に乾燥された固体として、とりわけ乾燥された粉末として、単離するのではなくて、該重合溶液を、該膜の製造に直接使用することが提案された。この方法は、WO 2006/092677の方法と比較して、かなりの方法単純化である。更に、明らかにより狭いPDIを有する膜が得られる。しかしながら、目下、WO 2011/009919の方法により製造される膜も、より高い温度でのより長期の使用の際に、分子量減少を被ることが分かった。
【0007】
ポリイミド膜、その中でもP84タイプ70もしくはP84 HT膜の分子量の安定化のためには、該ポリマーを架橋剤の添加により架橋させることが知られている。しかしながら、これは、付加的な作業工程を必要とし、かつ該架橋剤の付加的な成分としての使用により、該膜のコスト及び該プロセスの複雑度を高める。
【0008】
WO 2006/068626及びEP 0321569において、液体混合物の分離のために、ポリイミド膜を280℃を上回る温度で真空中でアニーリングして、該膜の選択性を高めることが提案される。しかしながら、これらの方法により製造される膜が、良好な選択性を有するが、しかし少なすぎる透過係数(Permeanz)を有するので、これらの膜を経済的に使用することができないことが分かった。更に、前記の特許を追試する際に、個々の該中空繊維膜のアニーリングする際の接着に伴う問題が明らかになった。ガスの分離の問題は、前記の特許出願において触れられない。
【0009】
それゆえ、依然として、高い分子量及び改善された分子量安定性を有するポリイミド膜、特にP84改良種製のもの、殊にP84タイプ70もしくはP84 HT製のものの新規な製造方法の必要性がある。
【0010】
課題
ゆえに、本発明の課題は、先行技術の膜及び方法の欠点を有しないか又は低下された程度でのみ有する、新種のポリイミド膜並びにそれらの製造方法を提供することである。
【0011】
該方法は、特に、P84改良種、殊にP84タイプ70及びP84 HT製の膜に、しかし類似のポリイミドにも、使用可能であるべきである。
【0012】
特別な課題において、該方法は、極めて良好な機械的性質を有する生成物を得ることを可能にするべきである。そのうえ、該膜は、極めて良好な選択性を極めて良好な透過係数と両立すべきであるので、これらの膜は、先行技術の膜と比較して、より高い生産性、すなわち、より効率的な分離、特にガス混合物のより効率的な分離を可能にする。
【0013】
特別な部分課題において、該膜は、数ヶ月間の熱負荷後にも、分子量減少を有しないか又はごく僅かにのみ有するべきである。
【0014】
更に特別な課題において、該方法は、できるだけ単純に実施可能であるべきであり、かつできるだけ少なくポリマー由来でない及び/又は架橋作用のある物質が、該ポリマー中へ取り込まれるべきである。
【0015】
なお更に特別な課題は、CH
4及びCO
2の分離の際に、先行技術と比較して高められた選択性を有する、ポリイミド膜、特にP84タイプ70又はP84HT製のものを提供することに見ることができる。
【0016】
最後に、特別な課題は、高級炭化水素、すなわち、3個より多い炭素原子を有する脂肪族又は芳香族の炭化水素、特に、痕跡不純物として天然ガス中に存在しているもの、殊にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン又はキシレンに対して極めて良好な安定性を有し、かつCO
2に対する極めて良好な可塑化抵抗を有するポリイミド膜をもたらす、新規な方法を提供することに見ることができる。
【0017】
明示的に挙げられていない更なる課題は、以下の詳細な説明、実施例及び請求の範囲の全ての関係から明らかになる。
【0018】
問題の解決
前記課題は、請求項1記載の方法によるかもしくは請求項11記載のポリイミド膜により解決される。好ましい実施形態は、従属請求項もしくは以下の詳細な説明に開示される。
【0019】
本発明者らは、ポリイミド膜を、280℃から該ポリイミドのガラス転移点までの範囲内の温度で0.5体積%未満の酸素含量を有するガス雰囲気中でアニーリングすることにより、極めて高いガス選択性、そのうえ極めて良好な透過係数を有する膜を得ることが可能であることが見出された。特に、これらのアニーリング条件が、例えばWO 2006/068626において提案されるような、真空中でのアニーリングと比較して、匹敵しうる選択性、ひいては明らかにより高い生産性で明らかにより高い透過係数を有する膜をもたらすことが分かった。
【0020】
本発明による方法を用いて、温度及び時間に応じて、自由に調節可能なDMF溶解度を有するポリイミド膜が得られる。このように処理された膜は、数ヶ月間の(mehrmonatiger)熱負荷の際にも、分子量減少を示さないかもしくは先行技術と比較して著しく低下された分子量減少のみを示す。
【0021】
該分子量減少のこの低下が、本発明によれば、該ポリマー中へ取り込まれたポリマー由来でない物質、例えば架橋剤を使用することなく可能であることを強調することができる。それゆえ、極めて単純で費用のかからない方法が見出され、かつ該膜のリサイクル性が改善された、それというのも、その品種の純度が高められたからである。
【0022】
更に、本発明による方法により、該膜のCO
2に対する極めて良好な可塑化抵抗及び耐薬品性が達成され、これが一部では先行技術よりも、それどころか良好であることは意外であった。
【0023】
本発明による膜の有利な性質の前記の組合せは、先行技術の背景から予測することはできなかった。一方では、既に議論されたWO 2006/068626号及びEP 0321569は、専ら液/液分離用の膜に関し、他方では、ガス分離に関するWO 2006/092677は、第17頁第1段落に、“P84及びP84HTの過剰のアニーリングが望ましくない鎖切断をまねき、ひいては回避されなければならない”ことを教示する。WO 2006/092677は、第16頁第18行によれば第17頁第3行と組み合せて、250℃を上回るアニーリング温度が適していないことを教示する。
【0024】
ガス分離膜に関する先行技術において、250℃を上回る温度でアニーリングしないほうがよいことが勧告されるにとどまらず、先行技術であるWO 2006/092677及びWO 2011/009919は、膜製造プロセスにおける前駆物質をアニーリングすることを当然とし、かつ本発明におけるように、完成した膜をアニーリングすることを当然としない。本発明者らの結果は、それゆえ、先行技術の背景から、全く予測することはできず、かつ自明ではなかった。
【0025】
発明の対象
本発明の対象は、それゆえ、以下の詳細な説明、実施例及び請求の範囲に開示された方法及びそれらに開示された膜である。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の対象が以下に詳細に記載される前に、まず最初に幾つかの重要な概念が定義される。
【0027】
概念“P84”及び“P84タイプ70”は、本発明の範囲内で、同義に使用され、かついずれにせよP84HTとは相違し、このP84HTは―指している場合に―常に明示的にそのものを挙げる。
【0028】
“ポリマー由来でない、架橋作用のある物質”として、本発明の範囲内で、共有結合によって該ポリマー中へ取り込まれるか又は該ポリマー鎖へ結合されるものであって、かつ該ポリマーの製造に使用されるモノマーとは相違する物質、もしくは該鎖長の制御に使用される物質もしくは本発明により使用されるポリマーの製造の際に又は本発明による方法の過程で既に形成されたポリマーから、例えば副生物又は中間生成物として、形成された物質とは相違する物質を呼ぶか、相当する。それらの例は、温度安定な膜を得るために、先行技術において使用される架橋剤である。
【0029】
“該膜を取り囲むガス雰囲気”は、本発明の範囲内で、該膜が、該アニーリング中に、5体積%未満の酸素含量を有し、好ましくは少なくとも5mbar、特に好ましくは少なくとも10mbar、極めて特に好ましくは少なくとも20mbar;殊に好ましくは少なくとも30mbar、極めて殊に好ましくは少なくとも100mbar、特に好ましくは少なくとも500mbar及び最も好ましくは少なくとも1000mbar(絶対)の圧力を有する、該装置中へ供給されるガス又はガス混合物又はガス流又はガス混合物の流れにより、取り囲まれることであると理解される。該ガス又はガス混合物又は該ガス流又はガス混合物の該流れは、該アニーリング前及び/又は該アニーリング中に該装置中へ導入することができる。この雰囲気は、それゆえ、該装置からの空気の真空排気によってだけで発生される雰囲気とは相違する。
【0030】
ポリイミド膜の本発明による製造方法は、次の工程:
a)3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシ二フタル酸二無水物、スルホニル二フタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン二フタル酸二無水物からなる群から選択される、少なくとも1種の二無水物と、
トルエン−2,4−ジイソシアナート、トルエン−2,6−ジイソシアナート、4,4′−メチレンジフェニルジイソシアナート、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアナート、2,3,4,5−テトラメチル−1,4−フェニレンジイソシアナートからなる群から選択される、少なくとも1種のジイソシアナートと
からポリイミド膜を製造する工程、
b)工程a)からの膜を、280℃から該ポリマーのガラス転移温度、すなわち約360〜370℃まででアニーリングする工程
を含み、かつ
該膜が、該アニーリング中に、0.5体積%以下の酸素含量を有するガス雰囲気、好ましくは、対応する低い酸素含量を有する不活性ガス、特に好ましくは窒素により、取り囲まれているか、もしくは対応するガス流により周りを洗われる(umspuelt)
ことにより特徴付けられている。
【0031】
好ましくは、工程a)におけるポリイミドは、次の組成を有するポリイミドである:
【化1】
ここで、0≦x≦0.5及び1≧y≧0.5であり、かつRは、基L1、L2、L3及びL4からなる群から選択される、同じか又は異なる1種以上の基に相当する。
【0032】
極めて特に好ましくは、X=0、Y=1であり、かつRは、64モル%がL2から、16モル%がL3から、かつ20モル%がL4からなるポリマーである。このポリマーは、名称P84又はP84タイプ70で市場で入手可能であり、かつ次のCAS番号:9046-51-9を有する。殊に好ましくは、段階a)において、組成x=0.4、y=0.6であり、かつRは、80モル%がL2から、20モル%がL3からなるポリマーである。このポリマーは、名称P84HT又はP84 HT 325で市場で入手可能であり、かつ次のCAS番号:134119-41-8を有する。
【0033】
該アニーリングの条件は、該膜の所望の性質に応じて、変えることができる。280℃の温度から、極めて良好なガス選択性を有する膜が得られる。P84タイプ70の場合に280℃を上回る温度及びP84 HTの場合に300℃を上回る温度で、そのうえ分子量が安定化されるので、これらの温度で、該分子量安定性を調節することができる。該温度に加えて、該アニーリングの期間によっても、該選択性及び該分子量安定性に影響を与えることができる。特定の理論に結び付けられてはいないが、本発明者らは、乾燥された膜の該アニーリングにより、該膜構造の圧縮が、殊に該分離層が存在する表面上で、行われるという見解である。該選択性は、該ポリマーの固有値によってのみ制限されている。
【0034】
以下に更に挙げられる例に基づき、どの変更がその生成物特性にどのような影響を及ぼし、かつどのようにしてどの性質を調節できるかは、当業者にとって明白である。
【0035】
好ましくは、該アニーリングは、280℃から370℃まで、特に好ましくは285〜360℃、極めて特に好ましくは290〜350℃の温度で、殊に好ましくは300〜340℃で、極めて殊に好ましくは305〜330℃で及び特に好ましくは310〜320℃で実施される。
【0036】
該アニーリングの期間は―該アニーリングのための目標温度に到達した時点から―、好ましくは、15〜300分、特に好ましくは30〜240分、極めて特に好ましくは30〜90分及び殊に好ましくは60〜90分又は45〜75分である。
【0037】
P84タイプ70についての温度及び期間の特に好ましい組合せは、280〜310℃、特に285〜295℃、及び30〜90分、特に45〜75分である。
【0038】
P84 HTについての温度及び期間の特に好ましい組合せは、305〜330℃、特に310〜320℃、及び30〜90分、特に45〜75分である。
【0039】
該アニーリング温度に到達するための加熱速度は、好ましくは、約250℃から、0.1〜10℃/分、特に好ましくは1〜5℃/分及び極めて特に好ましくは1〜2℃/分の範囲内で選択され、それによって該加熱が膜束中のあらゆる所で均一に行われ、かつ同時に最終温度に到達される。特に、大量の繊維の同時のアニーリングの際に、よりゆっくりとした加熱速度は、該繊維の均一な加熱を保証するために有利である。
【0040】
該膜を10cmまで、好ましくは2〜10cmの距離で取り囲む雰囲気の温度は、3個以上のセンサ、好ましくは熱電対で、測定される。その所定の距離は、1枚のみの膜がアニーリングされる場合に、該膜の外側表面までの距離を基準としている。複数の膜、例えば膜束又は膜のスタック配置が同時にアニーリングされる場合には、該距離は、完全に外側にある膜の外側表面、すなわち、該膜束又はそれ以外の膜配置の外側表面までの距離を基準としている。
【0041】
本発明者らは、該膜の機械的性質及び特にそれらの生産性が、該膜を10cmまで、好ましくは2〜10cmの距離で取り囲む雰囲気の酸素含量が、該アニーリング中に特定の極大値を超えない場合に、特に良好であることを見出した。好ましくは、該アニーリングは、ゆえに、0.5体積%以下の酸素含量で、特に好ましくは0.25体積%以下で、極めて特に好ましくは0.1体積%以下で及び殊に好ましくは0.01体積%以下で行われる。更に、該酸素含量が単独で決定的であるのではなくて、むしろ、先行技術におけるような真空中の代わりに、該膜を、対応する低い酸素含量を有するガス雰囲気又はガス流中でアニーリングする場合に、特に良好な結果が達成されることが分かった。特定の理論に結び付けられてはいないが、該実験結果は、該ガス雰囲気もしくは該ガス流により、アニーリングされうる膜束中の均一な温度分布が達成され、ひいては全ての膜が均一にアニーリングされることを示唆する(これについては以下の比較例2も参照)。
【0042】
該膜は、ゆえに、該アニーリング中に及び好ましくは少なくとも該冷却の第一段階において、特に好ましくは該加熱中及び/又は該冷却の終了までも、対応する低い酸素含量を有する雰囲気により取り囲まれる。極めて特に好ましくは、該膜は前記の段階中に、前記の低い酸素含量を有するガス又はガス混合物又はガス流又はガス混合物の流れ、殊に好ましくは少なくとも1種の不活性ガス、例えば貴ガス又は窒素又は六フッ化硫黄及び極めて殊に好ましくは窒素の流れにより、周りを洗われる。最も好ましくは、対応するガス流が使用される。該冷却中に、すなわち、その最大アニーリング温度が持続的に下回るようになると直ちに、真空を適用することもできる。
【0043】
特に好ましいのは、該膜を10cmまで、好ましくは2〜10cmの距離で取り囲む雰囲気が、200〜275℃、特に好ましくは200〜270℃、極めて特に好ましくは200〜250℃及び殊に好ましくは200〜220℃の温度までの該冷却の開始後に、前記のガス雰囲気に相当するかもしくは真空引きされることである。より低い温度で、特に200℃を下回ると、該膜の反応性は、より酸素に富む雰囲気との接触が通例、もはや損傷を引き起こさないほど僅かである。該アニーリングが成功していたか否か、すなわち、望ましくない酸化が行われなかったか否かは、とりわけ、該膜の変色(すこしオレンジ色)が目に見えないことによっても確認することができる。望ましくない酸化は、FT−IRを用いて確認することもできる。
【0044】
該アニーリング後の該膜の冷却は、“受動的に”、すなわち該熱源のスイッチを切ることにより、行うことができる。しかしながら、特に好ましくは、アニーリングが終わった後の該膜の“能動的な”冷却が、例えば該炉のフラッシングによるか又は該膜と、以下に更に規定されたO
2含量を有する対応して温度調節された不活性ガスとの接触により、行われる。選択的に、しかし同様に好ましくは、該冷却は、熱交換器もしくは冷却回路を用いて行われる。対応する冷却を生じさせる更なる技術上の変型は、当業者に知られており、かつ本発明により含まれている。該能動的冷却は、その空時収量を高め、かつ該冷却中に、まだなお該膜特性の望ましくない悪化となるリスクを低下させる。
【0045】
本発明による工程a)は、原則的に、該ポリイミド膜の任意の製造方法に応じて、実施することができる。しかしながら、特に好ましいのは、ナノ孔構造を有する膜をもたらす方法である。工程b)用の出発物質として、かなり厚い分離層又は緻密な構造を既に有する膜が製造される場合には、該アニーリングにより確かにそれらの選択性は更に改善され、かつその分子量減少は防止されるが、しかし、該アニーリングは、該膜が更になお圧縮され、ひいては極めて厚い分離層が得られることもまねく。このことはそしてまた、該膜が、確かに極めて良好な選択性を有するが、しかし劣悪な透過係数、ひいては劣悪な生産性を有することを意味する。本発明による方法の効率は、それゆえ、工程a)において、対応して高い透過係数により特徴付けられている膜が製造される場合に、もう一度高めることができる。該透過係数は、該ガス流束の尺度であり、ひいては該膜の構造の指標である。本発明による方法において、それゆえ、好ましくは工程a)において、25GPU以上、好ましくは50GPU以上、特に好ましくは100〜2000GPU、極めて特に好ましくは200〜1500GPU、殊に好ましくは300〜1000GPU及び極めて殊に好ましくは400〜800GPUのO
2についての透過係数を有する膜が製造される。対応する膜は、好ましくは以下に記載される方法により、製造することができる。
【0046】
好ましい第一実施態様において、工程a)における膜製造プロセスは、以下の部分工程を含む:
a1)重合
a2)キャスト溶液の製造
a3)膜製造。
【0047】
a1)重合
本発明により使用されるポリイミドの製造は、前記の芳香族テトラカルボン酸無水物のうち少なくとも1種を前記の芳香族ジイソシアナートのうち少なくとも1種と、二酸化炭素の放出下に重縮合させることにより、行われる。
【0048】
該重合は、好ましくは、非プロトン性双極性溶剤中で行われる。好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びスルホランが個々にか又は混合物で使用されるが、しかしこれらに限定されるものではない。
【0049】
この際に、好ましくは、該芳香族二無水物又は芳香族二無水物の混合物は、10質量%〜40質量%、好ましくは18質量%〜32質量%及び特に好ましくは22質量%〜28質量%の濃度で、非プロトン性双極性溶剤中に溶解され、かつ50℃〜150℃に、好ましくは70℃〜120℃に及び特に好ましくは80℃〜100℃に加熱される。この溶液に、塩基性触媒0.01質量%〜5質量%、好ましくは0.05質量%〜1質量%、及び特に好ましくは0.1質量%〜0.3質量%が添加される。触媒として、次のものが考慮に値する:
・アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、メチラート、エタノラート、炭酸塩及びリン酸塩、例えば、次のものであるが、しかしこれらに限定されない:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムエチラート、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム
・第三級アミン、例えば、次のものであるが、しかしこれらに限定されない:トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジアザビシクロウンデカン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルアミノピリジン。
【0050】
該ジイソシアナートは、好ましくは、1〜25時間、特に好ましくは3〜15時間及び極めて特に好ましくは5〜10時間の期間にわたって添加される。
【0051】
本発明により使用されるポリマーの場合に、このようにして、1〜300Pa・s、好ましくは20〜150Pa・s及び特に好ましくは40〜90Pa・sの粘度を有する澄明でゴールデンイエローないしダークブラウンのポリマー溶液が生じる。そのモル質量Mpは、好ましくは、100000g・モル
-1より大きい。
【0052】
前記の処理工程によれば、非プロトン性双極性溶剤中に溶解された、本発明によるポリイミドポリマーが生じる。該ポリマー溶液中に、妨害する随伴物質又は副生物はない。その粘度は、極めて高く、かつ膜の製造に適している。この理由から、該ポリマーを沈殿させず、次いで同じ溶剤中に再溶解させることも経済的に有利である。該溶液は、ゆえに、好ましくは該ポリマーを単離せず、かつ好ましくはその他の更なる処理なしでも、該キャスト溶液の製造に直接使用される。
【0053】
a2)キャスト溶液の製造
該重縮合から得られるポリマー溶液は好ましくは、15質量%〜35質量%、特に好ましくは22質量%〜30質量%及び極めて特に好ましくは22質量%〜29質量%の固形分を有し、かつ更なる処理なしで、該キャスト溶液の製造に使用することができる。該固形分が高ければ高いほど、該膜の透過係数はますます低くなる。本発明の範囲内で、工程a)において、特に好ましくは、高い透過係数を有する膜が製造されるので、最大29質量%の固形分で操作することが特に好ましい。
【0054】
本発明によるキャスト溶液は、次の性質に傑出している:
・該キャスト溶液は、中空繊維膜を製造するために十分に高い粘度を有する
・該キャスト溶液は、該膜中の大きな空洞(マクロボイド)の形成を防止する添加剤を含有することができる
・該キャスト溶液は、所望の孔径を有する表面を製造するための揮発性溶剤を含有することができる。
【0055】
該キャスト溶液の粘度は、これが、該固体に依存する粘度の経過でのいわゆる“からみ合い”点に相当する場合に、理想的である。この点は、該固体への粘度の依存性が線形の挙動から指数関数的な挙動へ移行する点である。この点は、そのモル質量に極めて大きく依存している。該モル質量が高ければ高いほど、からみ合いが生じる際の固形分はますます低くなる。
【0056】
該粘度、該モル質量及び該モル質量分布に関して、この方法により得ることができるキャスト溶液は、同じポリマーの粉末又は粒状物から製造されたキャスト溶液とは明らかに相違する。この好ましい実施態様は、それゆえ、高い粘度を該ポリイミドの高いモル質量及び狭いモル質量分布と組み合わせて有するキャスト溶液を得ることができるという利点を有する。この好ましい第一実施態様による方法を用いて、それゆえ、卓越した機械的性質を有する膜を製造することができる。
【0057】
該キャスト溶液の製造の際に、添加剤も添加することができる。多様な量の添加剤により、異なる固形分が得られ、そうすると該からみ合い点をシフトさせることになるであろう。ここでは、該重合における該モル質量を適合させることにより、このからみ合い点は再びシフトすることができる。
【0058】
該キャスト溶液の組成が、相分離が行われる濃度からはるかにずっと離れるように移動する場合に、溶剤と非溶剤との間の勾配が、該膜製造の際に転相によって極めて大きくなり、かつ該膜中に大きな空洞が得られる。マクロボイドとも呼ばれるこれらの空洞は、使用されている該膜のより低い圧力安定性を引き起こし、かつそれらの使用を、例えば天然ガス精製の際の使用において制限する。該マクロボイドの形成は、非溶剤の添加により防止することができる。このためには、以下の、水と混和性の溶剤又はそれらの混合物が考慮に値する。
【0059】
このリストは、単に例のリストとして見るべきものであり、熟練した専門家は、更に他の溶剤も見出す。
・アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ブタンジオール、グリセリン、
・水、
・ケトン、例えばアセトン又はブタノン。
【0060】
該膜の定義された表面を製造するためには、原則的に、複数の方法を利用することができる。遅延脱混合(Delayed Demixing)法に加えて、揮発性助溶剤の蒸発も、ガス分離膜の分野並びにナノろ過膜及び限外ろ過膜の分野における極めて薄い選択層をもたらす。該蒸発の程度、ひいては該孔径は、該揮発性溶剤の種類、その濃度、その蒸発時間、該キャスト溶液の温度、該蒸発区間での取り囲む該ガスの量及び温度により、影響を受ける。
【0061】
揮発性溶剤として、以下の溶剤が考慮に値する。これらは、水と混和性であるべきである、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジオキサン、ジエチルエーテル。
【0062】
該キャスト溶液の製造は、好ましくは、該添加剤の添加により、該添加剤の混合物の計量供給により、又は互いに別個に続けて、行われる。その際に、該添加剤は、好ましくは該混合物に撹拌しながらゆっくりと計量供給される。該計量供給は、好ましくは10分〜3時間、特に好ましくは30分〜2時間、行われる。該助溶剤の添加により、該ポリイミドの部分沈殿が滴加箇所で行われる。該固体は、しかし数(wenigen)分後に残留物不含に再溶解する。その澄明な溶液は次いで、好ましくは更に、鋼製網ふるい、特に好ましくは約15μmのふるいの目の大きさにより、ろ過されて、該膜表面中の欠陥をまねきうる妨害する随伴物質を除去する。
【0063】
該ろ過後に、該溶液は、好ましくは脱ガスされ、かつ気泡が取り除かれる。これは通例、真空ポンプを用いる減圧の適用により行われる。
【0064】
a3)中空繊維の製造
脱ガスされ、ろ過され、かつ場合により添加剤と混合されたキャスト溶液は、好ましくは20〜100℃に、特に好ましくは30〜70℃にサーモスタット調温される。該溶液は、次いで、例えば歯車ポンプを用いて、二流体ノズルの外側部分を通りポンプ輸送される。該二流体ノズルの外径は、好ましくは500〜800μm、特に好ましくは550〜750μmであり、その内径は、好ましくは200〜400μm、特に好ましくは250〜350μmであり、そのポンプ能力は、好ましくは0.1〜13.5ml/分である。該二流体ノズルの内側部分中で、水と1種の非プロトン性双極性溶剤又は複数の非プロトン性双極性溶剤の混合物との液体混合物(芯液(Bore-Loesung))がポンプ輸送される。
【0065】
非プロトン性双極性溶剤として、とりわけ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、スルホラン又はジメチルスルホキシド又はそれらの組合せが考慮に値するが、しかしこれらに限定されない。該芯液中の溶剤と水との組成は、好ましくは溶剤10質量%〜95質量%及び水90質量%〜5質量%、特に好ましくは溶剤30質量%〜90質量%及び水70質量%〜10質量%及び極めて特に好ましくは溶剤50質量%〜80質量%及び水50質量%〜20質量%である。ポンプ能力は、特に好ましくは1ml/分〜10ml/分である。
【0066】
該中空繊維が紡糸され、かつ該ポリマーの沈殿により、一体型の非対称中空繊維膜が成形される、水からなる凝固浴からの紡糸口金の好ましい距離は、1cm〜1m、好ましくは5〜60cmである。該膜の外面での該溶剤の蒸発により、該層は圧縮され、それによって該凝固浴中での沈殿の際に該分離層を形成する。該分離層の厚さは、該凝固浴からの該紡糸口金の距離により及び該紡糸口金から該凝固浴までのその経路での該膜の雰囲気により、調節することができる。該膜の所望の性質に応じて、当業者は、適切な距離を単純な実験により求めることができる。
【0067】
既に述べられているように、本発明による方法において、高いガス透過性、すなわち透過係数を有する膜が、工程a)において得られることが特に好ましい。そのためには、該膜は、該アニーリング前に厚すぎる及び/又は緻密すぎる分離層を有するべきではない。これは、本発明によれば特に好ましくは、該中空糸の紡糸プロセスの際に、該凝固浴へ入る前に、乾燥しており、サーモスタット調温されたガス流又は空気流で周りを洗われるか、もしくは対応するガス雰囲気又は空気雰囲気が導かれることにより、達成される。特に好ましくは、該膜に、ガス流又は空気流が導かれる。乾燥しているとは、該ガス流又は空気流が、水を取り込むことができることを意味する。ゆえに、好ましくは、該空気流又はガス流は、それぞれの空気温度もしくはガス温度で、相対湿度0〜90%、好ましくは相対湿度0〜50%及び極めて特に好ましくは相対湿度0〜30%の含水量を有する。
【0068】
極めて特に好ましくは、該中空繊維は、該ノズルの下流で、シャフト(管)中へ入り、該シャフトには、乾燥しているサーモスタット調温されたガスが貫流している。ガスとして、窒素、空気、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、メタン又は他の工業用不活性ガスが考慮に値する。該ガスの温度は、熱交換器を介して調節され、かつ好ましくは20〜250℃、特に好ましくは25〜120℃及び極めて特に好ましくは30〜80℃である。
【0069】
該管中のガス速度は、好ましくは0.1〜10m/分、特に好ましくは0.3〜5m/分、極めて特に好ましくは0.5〜3m/分及び殊に好ましくは0.5〜2m/分である。該管の長さは、好ましくは1cm〜1m、特に好ましくは2〜50cm、極めて特に好ましくは5〜40cm及び殊に好ましくは5〜30cmである。該シャフト長さ、該ガス速度及び該温度は、該膜の分離活性層の厚さに影響を与える。本発明による方法の工程a)において、高い透過係数及び該分離活性層の少ない厚さを有する膜を得るために、前記の範囲が好ましくは遵守されるべきである。
【0070】
こうして状態調節された糸は、次いで、凝固浴中へ浸漬し、該浴は、該ポリマー塊を凝固させ、こうして該膜を形成する。該浴の温度は、好ましくは1〜80℃、特に好ましくは20〜70℃及び極めて特に好ましくは40〜65℃である。
【0071】
該凝固浴中の、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、イソプロパノール、エタノール又はグリセリンであるがしかしこれらに限定されない、非プロトン性双極性溶剤及び他の溶剤の濃度は、好ましくは0.01質量%〜20質量%、特に好ましくは0.1質量%〜10質量%及び極めて特に好ましくは0.2質量%〜1質量%であり、残部は水である。水浴中で純水を使用することが同様に好ましい。
【0072】
該中空繊維の抜出速度は、好ましくは2〜100m/分、特に好ましくは10〜80m/分及び極めて特に好ましくは30〜70m/分である。高すぎる抜出速度が透過係数の損失をまねくことが分かった。それにもかかわらず、本発明によれば好ましい方法において、好ましくは、高い抜出速度で操作すること、ひいては該生産性を先行技術と比較して高めることが可能である。
【0073】
該繊維は、該凝固浴の下流で、その残留溶剤含量が1質量%未満、好ましくは0.5質量%以下になるまで、好ましくは洗浄される。このためには、多様な洗浄技術を適用することができる。好ましくは、該繊維を1つ以上の続いて配置された水浴に導かれる連続法において操作される。特に好ましくは、該水浴は、より効果的な洗浄を達成するために、40〜90℃、好ましくは50〜80℃に加熱されている。
【0074】
しかし、該繊維を、該凝固浴の下流で、ボビンに巻き付け、かつオフラインで水中で洗浄することも可能である。該洗浄は、あらゆる温度で行うことができる。しかしながら、好ましくは、前記のように、より高い温度で洗浄される。好ましくは、該水は、十字流で該繊維に沿って導かれ、すなわち、該ボビンの内側から外へ押し込まれる。
【0075】
引き続いて、好ましくは溶剤交換が、特に好ましくはイソプロパノール及び/又はヘキサン中で、行われ、それと共に水及びDMFが除去される。該溶剤交換並びに該洗浄は、連続的に(オンラインで)又はオフラインで行うことができる。オンライン溶剤交換のために、該繊維は、好ましくは1つ/複数の該洗浴の下流で、1つ以上の溶剤浴に導かれる。
【0076】
該繊維は次いで、好ましくは、室温ないし150℃、特に好ましくは50〜100℃の範囲内の温度で乾燥され、その際に、イソプロパノール及びヘキサンが除去される。該全含水量及び/又は残留溶剤含量は、該乾燥後に、0〜5質量%、好ましくは<3質量%及び殊に好ましくは0.1〜3質量%であり、かつ好ましくは、水、イソプロパノール及びヘキサンの含分からなる。低い残留溶剤及び残留含水量が、該アニーリングに付加的な利点をもたらすことが分かった。比較例4に示されるように、膜束全体のアニーリングの際の高すぎる残留含量の水及び溶剤は、該膜が互いにくっつくことをまねく。それゆえ、高すぎる残留含量の場合に、膜束全体がアニーリングされることができない。その代わりに、該膜を個々にアニーリングするために、付加的に浪費されなければならなかっただろう。これはそのうえ、個々の膜の該アニーリングの際の変動による膜束中の不均質性となる危険をはらんでいる。比較例4に示されるように、EP 0321569における短い乾燥は全く不十分であり、かつ該膜束はくっついた。
【0077】
更に、多すぎる水は、加水分解、ひいては鎖切断、それゆえに機械的に不安定な膜をまねきうる。該水及び該溶剤の一部が該アニーリング中に蒸発されるにもかかわらず、該アニーリングの開始前の最大含量が5質量%未満、好ましくは3質量%未満である場合に有利であることが分かった。
【0078】
本発明による方法において、好ましくは、該膜を該乾燥後に、シリコーンタイプのエラストマー、例えばSylgard(登録商標) 184で処理して、起こりうる欠陥を補修することが可能である。
【0079】
工程a)において、好ましくは、100〜1000μm、好ましくは200〜700μm及び特に好ましくは250〜400μmの外径を有する繊維が得られる。
【0080】
こうして製造された中空繊維膜は、引き続き、処理工程である工程b)における上記で詳細に説明されたアニーリングに供給される。
【0081】
工程a1)〜a3)を伴う該膜の製造についての詳細は、WO 2011/009919から読み取ることができ、その内容はこれにより明示的に本発明の詳細な説明へ参照により取り入れられる。
【0082】
本発明の選択的な好ましい実施態様において、工程a)において、好ましくは乾燥されている、ポリイミド粉末からまず最初にキャスト溶液が、それから該膜が、製造される。この方法は、上記で説明された好ましい第一実施態様の方法よりも確かに費用がかかるが、該粉末からの製造は、しかしながら逆に、そのために製造者も、ポリイミドに固有の考えられる重合なしに、本発明による方法を実施し、かつ本発明による膜を製造することができるという利点を有する。
【0083】
この好ましい第二実施態様において、該方法は、工程a)において、次の部分工程:
aI)好ましくは乾燥された、固体の形態、好ましくは粉末又は粒状物の形態の、任意にアニーリングされた、本発明によるポリイミドポリマーを用意する工程、
aII)キャスト溶液を製造する工程、その際に、このキャスト溶液は、溶剤と、工程aI)からの固体とを含む;及び
aIII)中空繊維膜を形成する工程
を含む。
【0084】
工程aI)において、商業的に入手可能なポリイミド粉末又はポリイミド粒状物、例えばEvonik Fibers製のP84タイプ70又はP84 HTを使用することができる。まず最初に、ポリイミドが、前記の方法において工程a1)において説明されたように製造され、次いで該固体が単離され、かつ乾燥されることもできる。
【0085】
商業的に入手可能なポリイミドを、膜の製造に直接使用することができる。しかしながら、該ポリイミドを、工程aII)の前に、好ましくは6〜30時間、特に好ましくは10〜16時間の期間にわたって、50〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度で乾燥させる及び/又はアニーリングすることが有利でありうる。該アニーリング工程及び/又は乾燥工程は、機械的なアニーリング/乾燥、熱による乾燥/アニーリング又はそれらの組合せとして実施することができる。該乾燥/アニーリングは、真空中又は不活性ガスフラッシング下に行うことができる。使用されるポリイミド粉末に応じて、その際に、分子量増加となりうる。該温度が高過ぎて選択されるか又は長過ぎてアニーリングされる場合には、ゲル化が開始されうる。このことは回避されるべきである、それというのも、さもなければキャスト溶液はもはや製造できないからである。しかしながら、当業者はゲル化の開始を認識したら、該温度を、ゲル化が行われなくなるまで低下させることになる。
【0086】
該アニーリングは、好ましくは、コントロールされたアニーリングとして行われ、その際に、該時間及び該温度のコントロールにより、意図された分子量増加が制御される。
【0087】
好ましい方法は、商業的に入手可能なポリイミド粉末が、炉又は回転管乾燥機中で加熱されることにより特徴付けられている。該温度は、好ましくは、100〜250℃の範囲内及び特に好ましくは140〜180℃の範囲内で選択される。好ましくは、該炉又は回転管乾燥機は、少なくとも0.5bar、好ましくは少なくとも0.6bar、特に好ましくは0.6〜0.9barの真空に真空排気される。該アニーリングの期間は、好ましくは6〜30時間、特に好ましくは10〜16時間である。任意に、該アニーリングは、不活性ガス流中で行うことができる。
【0088】
工程aI)による固体から、この実施態様において、引き続き工程aII)において、当業者にそれ自体として知られた方法により、キャスト溶液が製造される。
【0089】
工程aIII)における該キャスト溶液からの中空繊維膜の製造は、それ自体として知られている。好ましくは、該製造は、前記の方法においてa3)のもとで説明されたように行われる。
【0090】
工程a3)又はaIII)において、好ましくは、一体型の非対称中空繊維膜が製造され、その際に、殊に好ましくは、該中空繊維が、二流体ノズルを用いてポリイミドキャスト溶液及び芯液から、連続法において紡糸される。
【0091】
本発明によるポリイミド膜は、それゆえ、
・該ポリイミドが、
3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシ二フタル酸二無水物、スルホニル二フタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン二フタル酸二無水物からなる群から選択される、少なくとも1種の二無水物と、
トルエン−2,4−ジイソシアナート、トルエン−2,6−ジイソシアナート、4,4′−メチレンジフェニルジイソシアナート、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアナート、2,3,4,5−テトラメチル−1,4−フェニレンジイソシアナートからなる群から選択される、少なくとも1種のジイソシアナートと
を含むポリイミドであることと、
・該膜中のポリマー由来でない、架橋作用のある物質の含量が、0〜5質量%、好ましくは0〜1質量%の範囲内であり、
・これらが、5〜95%、好ましくは5〜90%、特に好ましくは10〜80%及び極めて特に好ましくは20〜70%のDMFへの溶解度を有し、
・これらが、1.5μm以下、好ましくは1μm以下、極めて特に好ましくは750nm以下、殊に好ましくは500nm以下、極めて殊に好ましくは250nm以下及び特に好ましくは100nm以下の分離活性層の層厚を有することと
により特徴付けられている。
【0092】
好ましくは、該ポリイミドは、上記で該製造方法の説明の際に好ましいとして開示されたようなポリイミドである。
【0093】
既に述べたように、本発明による方法を用いて初めて、極めて良好な生産性及び熱負荷の際の高い分子量安定性と同時に極めて高いガス選択性を有する膜を製造することに成功している。本発明によりアニーリングされた膜は、本発明による方法を用いて多様に調節可能なDMF溶解度に傑出しており、かつ先行技術のアニーリングされない膜とは、架橋剤、すなわちポリマー由来でない物質を添加せずに完全にDMFに可溶である点でも相違する。
【0094】
本発明による膜が特別であるのは、その熱安定性及びDMFへの不溶性が、ポリマー由来でない物質、すなわちブレンド又はコポリマー中に本発明によらないポリマー(先行技術において推奨されるように)又は架橋剤(同様に先行技術)を添加せずに、達成されることである。
【0095】
しかしながら、原則的に、本発明による方法において、ブレンド、好ましくは本発明によるポリマーのブレンドを製造し、次いでアニーリングすることも可能である。
【0096】
既に述べたように、本発明による膜は、先行技術の膜よりも、明らかにより薄い分離層を有する。それにもかかわらず、これらは、少なくとも匹敵しうる選択性を有する。しかしながら、本発明による膜の透過係数、ひいては生産性は、先行技術の膜のそれよりもはるかにずっと良好である。
【0097】
本発明に関連している中空繊維膜は、精密ろ過膜、限外ろ過膜又はナノろ過膜の形態の細孔膜並びに―好ましい変法において記載されるように―ガスの分離用の細孔不含の膜であってよい。全ての膜は、一体型非対称膜であり、かつ転相法により製造される。特に好ましくは、ガス分離膜及び殊に好ましくは中空繊維ガス分離膜である。
【0098】
本発明によるポリイミド膜は、好ましくは、メタン及び二酸化炭素の分離のため及び/又は酸素及び窒素の分離のため及び/又はプロセスガスからの水素の分離のため及び/又は多種多様な種類のガス又はガス混合物からの水蒸気及び/又はヘリウムの分離のために、使用される。
【0099】
分析
粘度測定
動的粘度ηは、25℃の一定の温度での円筒形の隙間中のポリマー溶液のせん断により、一回、多様な回転数Ω(もしくはせん断勾配γ)の基準値により、せん断勾配の場合に1.25;2.5;5.0;10.0;20.0;及び40.0 1/sで、具体的に測定され、引き続きそれぞれ10sでの2250〜100Paのせん断応力Τにより求められる。
【0100】
測定装置として、HAAKE RS 600が液体温度調節可能な計量カップホルダTEF/Z28、円筒形のローターZ25DIN53019/ISO3219及びアルミ使い捨て計量カップZ25E/D=28mmと共に使用される。
【0101】
動的粘度ηは、次の式から計算され、かつ10s
-1のせん断勾配で、単位:Pa・sで示される。
【数1】
Τ … せん断応力
η … 動的粘度
M … ローターのせん断ファクター:12350rad/s
Ω … 角速度。
【0102】
モル質量測定
該モル質量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて行われる。その校正は、ポリスチレン標準を用いて行われる。報告されるモル質量は、ゆえに、相対モル質量として理解されうる。
【0103】
次の成分及び設定を使用した:
【表1】
【0104】
透過性(Permeabilitaeten)
ガス透過性は、バーラー(Barrer、10
-10cm
3・cm
-2・cm・s
-1・cmHg
-1)で示される。ガスについての中空繊維膜の透過係数は、GPU(Gas Permeation Unit、10
-6cm
3・cm
-2・s
-1・cmHg
-1)で示される。ナノろ過膜及び限外ろ過膜の流束は、l・m
-2・h
-1・バール
-1で示される。
【0105】
ガス透過性
ガスについての透過性の測定は、圧力上昇法により行われる。この際に、10〜70μmの厚さを有するフラットフィルムの一方の側に、ガス又はガス混合物を適用する。その他方の側、該透過液側では、該試験の開始時に、真空(約10
-2mbar)が支配的である。それから、該透過液側での圧力上昇が経時的に記録される。
【0106】
該ポリマーの透過性は、次の式により計算することができる:
【数2】
P … 透過性[単位:バーラー(10
-10cm
3・cm
-2・cm・s
-1・cmHg
-1)]
V
dead … 透過液側の体積[単位:cm
3]
MW
gas … ガスのモル質量[単位:g・モル
-1]
l … 該フィルムの厚さ[単位:cm]
ρ … ガスの密度[単位:g・cm
-3]
R … 気体定数[単位:cm
3・cmHg・K
-1・モル
-1]
T … 温度[単位:ケルビン](室温、約23℃)
A … 該フィルムの面積[単位:cm
2](約12cm
2)
Δp … フィードと透過液側との圧力差[単位:cmHg]
dp/dt … 透過液側の時間当たりの圧力上昇[単位:cmHg・s
-1]。
【0107】
中空繊維の透過係数が測定される場合には、体積上昇法が使用される。
【0108】
透過係数P/lの計算は(なぜなら分離層の厚さは既知ではない)、次の式により行われる:
【数3】
P/l … 透過係数[単位:GPU(Gas permeation units、10
-6cm
3・cm
-2・s
-1・cmHg
-1)]
Q … 透過液側のガス流量[単位:cm
3(STP)/s]
R … 気体定数[単位:cm
3・cmHg・K
-1・モル
-1]
T … 温度[単位:ケルビン](室温、約23℃)
A … 中空繊維の外側面積[単位:cm
2](60〜80cm
2)
Δp … フィードと透過液側との圧力差[単位:cmHg]
dp/dt … 透過液側の時間当たりの圧力上昇[単位:cmHg・s
-1]。
【0109】
多様なガスのペアの選択性は、純ガス選択性である。2種のガス間の選択性は、該透過性の比から計算される:
【数4】
S … 理想の気体選択性
P
1 … ガス1の透過性又は透過係数
P
2 … ガス2の透過性又は透過係数。
【0110】
DMF溶解度の測定
該DMF溶解度の測定のために、アニーリングされた及びアニーリングされないポリマーもしくはアニーリングされない膜をそれぞれ20mg、室温でDMF 10ml中に添加し、撹拌せずに4h放置する。アニーリングされないポリマーもしくはアニーリングされない膜の場合に、完全な溶液が得られる。アニーリングされたポリマーもしくはアニーリングされた膜の場合に、場合により存在している残留物がろ別される。引き続き、双方の溶液により、GPCを用いて、そのモル質量分布の測定が、別に上記で説明されたように行われる。該溶解度は、続いて、該ポリマー鎖の流体力学的体積に基づいて、完全に可溶なアニーリングされないポリマーの面積に対するアニーリングされたポリマーの得られたモル質量分布の面積の比から求められる。
【0111】
残留溶剤の割合の測定
該残留溶剤(
例えばイソプロパノール、ヘキサン)は、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)中に溶解もしくは分散されたポリマーのヘッドスペース注入(Headspace)によりガスクロマトグラフィーを用いて測定される。
【0112】
該試料から、250〜300mgを、風袋を計ったバイアル中へ、0.1mgまで正確にはかり入れる(=秤量分)。その後、DMPU 5.00mlを、ホールピペット又はDispensetteを用いてピペット添加し、該バイアルをセプタムで、キャップクリンパーを用いてシールした。該試料を、ヘッドスペースサンプラ上で90分、120℃にサーモスタット調温し、その後、該GCカラムへのヘッドスペース注入を行う。
【0113】
湿った中空繊維試料の残留DMFを、エタノール中でのソックスレー抽出により測定する。引き続き定量化を、GC上への該抽出物の直接注入により行う。乾燥している中空繊維試料の残留DMFは、ヘッドスペースGCを用いて測定される。
GC:Perkin Elmer AutoSystem XL
カラム:Perkin Elmer WAX ETR、30m×0.53mm、df=2.00μm、#N931-6570
ヘッドスペース−オートサンプラ:Perkin Elmer TurboMatrix 40
キャリヤーガス:5mlヘリウム 4.6(又は以上)
FID検出器ガス:水素40ml/分、合成空気400ml/分
GCの温度プログラム:
初期温度:175℃に3分間、
ランプ1:20°/分、230℃に3分間
運転時間:8.75分
サイクル時間:15分。
【0114】
該残留溶剤含量は、分析が行われた後に、自動的に、式
【数5】
により計算され、“濃度[%]”で表される。
【0115】
残留含水量の測定
該残留含水量の測定のために、イソプロパノールでの該膜の抽出及び引き続きカールフィッシャー滴定による分析が実施される。該膜を、前もって乾燥された250mlショットガラス器具中へ移し、計量された量で乾燥しているイソプロパノールで上まで覆う。該容器を一晩にわたって、室温で放置する。
【0116】
製造例
以下の例は、本発明のより詳細な説明のため及びより良好な理解のために利用されるが、しかしながら本発明を決して限定するものではない。
【0117】
例1
該紡糸液の製造のために、撹拌機及び還流冷却器を備えた3lガラスフラスコ中に、無水ジメチルホルムアミド1800gを装入した。その中に、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物316.4g及びピロメリト酸二無水物142.8gを溶解させ、かつ80℃に加熱した。この溶液に、ジアザビシクロオクタン1.8gを添加する。窒素適用(Stickstoffbeaufschlagung)下に、2,4−トルイレンジイソシアナート80%及び2,6−トルイレンジイソシアナート20%の混合物283.4gを、数(mehrerer)時間の間に計量供給する。その際に、CO
2が副生物として逃出し、ポリイミドが溶液中に直接生じた。
【0118】
こうして得られたDMF中27質量%紡糸液をその後、脱ガスし、50℃にサーモスタット調温し、歯車ポンプを用いて二流体ノズルに搬送した。該流量は324g/hであった。該二流体ノズルの外側領域において、該ポリマー溶液を搬送したのに対し、内側にジメチルホルムアミド70%及び水30%の混合物(芯液)を搬送して、該中空繊維のホールを発生させた。該芯液の流量は120ml/hであった。該ノズルから13cm下流の距離で、該中空繊維は50℃の温水中へ入った。ノズルと凝固浴との間の経路で、該中空繊維は、管で包まれた。この管には、1l/分の窒素流が貫流し、該管内部温度は35℃であった。該繊維を、その水洗浴に引き入れ、最終的に50m/分の速度で巻き付けた。数(mehrere)時間にわたる水での抽出後に、該中空繊維をイソプロパノール中に浸漬した。該溶剤交換後に、該膜を70℃で乾燥区間に導き、約40秒以内に乾燥させた。得られた膜は、残留水約2質量%、残留溶剤(イソプロパノール、ヘキサン)≦0.5質量%及び残留DMF<0.1質量%を含有し、かつ300℃の本発明による温度に、0.2℃/分の加熱速度で30mbar絶対の真空(N
2−フラッシングした、O
2含量<0.001体積%)中で加熱し、引き続き、該最終温度で2h放置した。
【0119】
本発明によるアニーリング後及び3ヶ月間の貯蔵後にも、該膜の分子量Mpが102kDaであったことが確認された。本発明による膜は、それゆえ熱的に安定であり、かつ数ヶ月間の(mehrmonatiger)貯蔵後にも分子量減少を有しない。
【0120】
比較例1:
中空繊維膜を、例1のように製造し、かつアニーリングした。しかしながら、例1とは異なり、該アニーリング温度は、265℃もしくは250℃に低下された。該試験の結果は、以下の第2表に見出される:
【表2】
【0121】
例1とは異なり、第2表は、低すぎる温度での本発明によらないアニーリングの際に、十分な貯蔵安定性が与えられていないことを示す。
【0122】
例2
該アニーリングの際の温度の効果を、更になお説明するために、本発明による例1による複数の膜を新たに製造した。しかしながら、該アニーリングの際の加熱速度を、5℃/分に高めた。該加熱を、0.001体積%のO
2含量を有するN
2雰囲気下で、290〜320℃の温度で、行った。得られた膜について、DMF溶解度、CO
2透過係数、CO
2/CH
4選択性及び機械的性質を測定し、第3表にまとめた。
【0123】
【表3】
【0124】
該アニーリングが、アニーリングされない膜と比較して選択性を明らかに高めたことが分かった。透過係数は、全ての例において極めて良好である。DMF溶解度、ひいては耐薬品性は、該アニーリング温度の選択により、該選択性が有意に妨げられる必然性を伴わずに、同様に制御することができる。機械的性質は、該温度により不利な影響を受けなかった。
【0125】
例3
この例において、例2とは異なり、該アニーリング温度の影響ではなくて、該アニーリングの期間の影響が示されるものである。該アニーリングの期間の効果を説明するために、本発明による例1による複数の膜を新たに製造し、かつアニーリングした。該アニーリングの最終温度は、310℃もしくは320℃に一定に保持し、かつ該アニーリングの期間を変えた。得られた膜について、DMF溶解度を測定し、第4表にまとめた。
【0126】
【表4】
【0127】
第4表は、該温度に加え、該アニーリングの期間によっても、耐薬品性を調節することができることを示す。
【0128】
例4:
この例において、該膜を該アニーリング中に取り囲む雰囲気の酸素含量の影響が示される。そのためには、例1を繰り返したが、しかしながら、それぞれ、310℃で1hアニーリングした。
【0129】
3つのアニーリング試験が実施され、その際に
・例4―本発明による:0.1体積%のN
2パージガス中酸素含量を有する
・例4―比較1:N
2パージガス中酸素含量 1体積%
・例4―比較2:N
2パージガス中酸素含量 5体積%。
【0130】
得られた膜について、CO
2/CH
4選択性及び引張強さを測定した。該結果は、以下の第5表に見出される。
【表5】
【0131】
第5表における結果は、該膜を直接取り囲む雰囲気中での低い酸素含量が、本発明による方法において、該膜の良好な選択性及び良好な機械的性質にとって本質的であることを示す。
【0132】
比較例2
この例において、真空により発生される酸素不含の雰囲気中での、例えば先行技術であるWO 2006/068626に教示されたような、アニーリングが、低い酸素含量を有するガス雰囲気中でアニーリングされる本発明による方法と比較して、明らかな欠点を有することが示される。
【0133】
例4のように行ったが、しかしながら真空中で310℃で1hアニーリングした。その後、O
2透過係数及びO
2/N
2選択性を測定した。
【0134】
以下の第6表は、比較例2からの結果及び比較のために例4―本発明による―により製造された膜の結果を含む:
【表6】
【0135】
第6表からの結果は、WO 2006/068626の方法が、確かに―そこに正確に記載されたように―良好な選択性をもたらすことを示す。WO 2006/068626に従い真空中でアニーリングされた膜は、しかしながら、約300%より劣悪な透過係数を有する。それゆえ、先行技術の方法によりアニーリングされた膜は、経済的に使用することができない。
【0136】
そのうえ、真空中でアニーリングされた中空繊維膜が、極めて著しく多様に、黄色ないし褐色に、変色していたことが確認された。褐色は、著しい圧縮を示唆し、かつ真空中での劣悪な温度分布によりおそらく引き起こされている。この観察は、第6表からの透過係数データと一致する。それゆえ、真空は一義的に、適したアニーリング媒体ではない。
【0137】
例5
この例において、本発明による方法が、本発明による2種のポリイミドのブレンドを用いても実施することができることが示される。そのためには、DMF中の2種のポリイミドのブレンドから27%の紡糸液を製造し、その際に、95%のポリイミド1を5%のポリイミド2と混合した。
【0138】
DMF中のポリイミド溶液1の製造のために、撹拌機及び還流冷却器を備えた3lガラスフラスコ中に、無水ジメチルホルムアミド1622gを装入した。その中に、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物456.4gを溶解させ、85℃に加熱した。この溶液に、粉砕した水酸化ナトリウム0.45gを添加した。窒素適用下に、2,4−トルイレンジイソシアナートもしくは2,6−トルイレンジイソシアナート80%及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート20%の混合物266.8gを数(mehrerer)時間の間に計量供給した。その際に、CO
2が副生物として逃出し、ポリイミドが溶液中に直接生じた。
【0139】
DMF中のポリイミド溶液2の製造のために、撹拌機及び還流冷却器を備えた3lガラスフラスコ中に、無水ジメチルホルムアミド1800gを装入した。その中に、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物316.4g及びピロメリト酸二無水物142.8gを溶解させ、80℃に加熱した。この溶液に、ジアザビシクロオクタン1.8gを添加する。窒素適用下に、2,4−トルイレンジイソシアナート80%及び2,6−トルイレンジイソシアナート20%の混合物283.4gを数(mehrerer)時間の間に計量供給する。その際に、CO
2が副生物として逃出し、ポリイミドが溶液中に直接生じた。
【0140】
該ポリイミド溶液を、Kat缶中で一緒に混合し、ロールスタンド(Rollbock)上で週末にわたって均質化した。25℃での体積粘性率:79Pas及び固形分:27.8%が得られた。
【0141】
こうして得られたキャスト溶液を、脱ガスし、50℃にサーモスタット調温し、歯車ポンプを用いて二流体ノズルに搬送した。該流量は324g/hであった。該二流体ノズルの外側領域において、該ポリマー溶液を搬送したのに対し、内側に、ジメチルホルムアミド70%及び水30%の混合物(芯液)を搬送して、該中空繊維のホールを発生させた。該芯液の流量は120ml/hであった。該ノズルから13cm下流の距離で、該中空繊維は50℃の温水中へ入った。ノズルと凝固浴との間の経路で、該中空繊維は管で包まれた。この管には、1l/分の窒素流が貫流し、該管内部温度は35℃であった。該繊維を、その水洗浴に引き入れ、最終的に50m/分の速度で巻き付けた。数(mehrere)時間にわたる水での抽出後に、該中空繊維をイソプロパノール中に浸漬し、その後、乾燥区間中で70℃で乾燥させた。得られた膜は、水2質量%未満、残留溶剤(イソプロパノール、ヘキサン)≦0.5質量%及び残留DMF0.1質量%を含有し、310℃に2℃/分の加熱速度でN
2(0.001%のO
2含量)中で加熱し、引き続き、該最終温度で1h放置した。
【0142】
得られた膜は、27GPUのCO
2透過係数及び93のCO
2/CH
4シングルガス選択性を有していた。約70%のDMF溶解度が測定され、求められた。これらの結果は、本発明による方法が、異なるポリイミドのブレンドでも機能することを確認する。
【0143】
例6
本発明による例5に対応して、しかしながら第二ポリイミド溶液を使用せずに、中空繊維膜を製造した。得られた膜は、該乾燥後に、水2質量%未満、残留溶剤(IPA、ヘキサン)≦0.5質量%及び残留DMF≦0.1質量%を含有し、280℃もしくは290℃に2℃/分の加熱速度でN
2中で加熱し、引き続き、該最終温度で1h放置した。
【0144】
第7表は、透過係数測定の結果を示す。第8表は、機械的性質及び測定された溶解度を示す。
【0145】
【表7】
【表8】
【0146】
該結果は、ここで使用されるポリマー―この例においてこれはP84タイプ70に相当する―を用いても、本発明による方法により、すなわち架橋剤を添加せずに、架橋され、高選択性で生産的な膜を得ることができることを示す。
【0147】
比較例3
比較例2において、WO 2006/068626からのアニーリング法、すなわち真空中でのアニーリングが、本発明のアニーリングよりも明らかに劣っていることが示された後で、ここでは、これがEP 0321569の方法にも当てはまることが示される。
【0148】
前記の例6による膜を製造し、EP 0321569の例20に対応して、次のようにアニーリングした(全て空気中):
・100℃で30分
・200℃に加熱
・200℃から320℃に16分以内に加熱
・320℃に14分保持し、自然冷却する。
【0149】
以下の第9表は、比較例3からの結果及び比較のために、本発明により次のようにアニーリングされた(250℃から290℃への加熱速度2℃/分、O
2不含のN
2雰囲気中290℃で1h)、例6―本発明による―により製造された膜の結果を含む:
【表9】
【0150】
第9表は、本発明による方法によるアニーリングが、明らかにより低いアニーリング温度が使用されたにもかかわらず、約5.5倍より良好な選択性及び約3倍より良好な透過係数をもたらすことを示す。本発明によりアニーリングされた膜の機械的性質は、同様に明らかにより良好である。
【0151】
比較例4:
この比較例は、比較例3よりも、もう一歩踏み込み、かつ本発明によるアニーリング法による既に極めて有利な効果が、アニーリングされうる膜の本発明による好ましい製造方法により、更に高めることができることを示す。
【0152】
比較例3において、本発明によれば好ましい製造方法により製造されたアニーリングされない膜をアニーリングした。それゆえ、EP 0321569からは、該アニーリング条件のみが引き継がれた。比較例4において、それから完全にEP 0321569に従い操作した、すなわち、工程a)において、EP 0321569の例1による膜を製造し、次いで、比較例3において記載されたようにアニーリングした。そのためには、EP 0321569のReference Preparation Example 1に従い、DMF中のP84タイプ70の25%溶液を製造した。その紡糸条件は次の通りであった:
・紡糸液 2.4ml/分;芯液 0.86ml/分
・凝固浴中の滞留時間=8〜10s;凝固浴 加熱せず(27℃)
・芯液 50/50DMF/H
2O
・紡糸シャフトなし、その代わりにエアギャップ12cm
・膜を、水を有する容器中に10分浸漬する
・膜を、溶剤交換せずに空気中で24h乾燥させる。
【0153】
比較例3におけるようにアニーリングした。次の結果が得られた:
【表10】
【0154】
第10表からのデータを第9表からのデータと比較すると、EP 0321569からのアニーリングされない膜の製造方法が、既に、劣悪な透過係数を有する著しく圧縮された膜をまねくことが確認される。これらの膜が、先行技術の劣悪なアニーリング法によりなおアニーリングされる場合に、本発明による方法による膜よりも20倍より劣悪である透過係数を有する膜が得られる。強度及び破断伸びは類似した状況である。
【0155】
この比較例は、それゆえ、本発明によるアニーリング法を用いて単独で、既に、該膜の透過係数、ひいては生産性のかなりの改善が得られることを示す。次いで、本発明によれば好ましい方法によりまだアニーリングされず、メソ孔構造を有する、すなわち、高い透過係数を有する膜を製造する場合には、先行技術の膜よりもいっそう更に優れている、選択性と透過係数との組合せ、すなわち、生産性を有する膜が得られる。
【0156】
この比較例の場合に、EP 0321 569における洗浄が、短すぎていた、ひいてはなお多すぎる残留溶剤が該アニーリング前の該膜中に存在していたことも観察された。EP 0321 569による膜束のアニーリングは、該膜束中での接着をまねいたので、該膜は、個々にアニーリングされなければならない。
【0157】
例7:
本発明による膜は、先行技術の膜よりも明らかに良好な応用技術的なデータに傑出しているだけでなく、これらは構造的にも相違する。本発明の膜を用いて、―架橋剤を添加せずに―耐薬品性であり、かつ同時に高い生産性を有する膜を製造することに初めて成功している。その要因となる構造的なパラメーターは、次の通りである:
・DMF溶解度(分子量減少に対する安定性について)
・該膜の全厚と比較した、分離活性層の厚さ。
【0158】
該分離活性層の厚さは、該膜の透過性及び透過係数から算出されうる。該透過性は、ポリマー材料の透過率(Durchlaessigkeit)の尺度であり、ひいては、厚さ、圧力又は面積から独立した材料特性である。中空繊維膜を通る流量は、通常、透過性とは異なる透過係数により表され、該透過係数は該厚さについて正規化されていない、それというのも、中空繊維膜の層厚は、測定することが困難だからである。該分離活性層の層厚は、ゆえに、次の式により求められる:
【数6】
ここで、層厚l
HFM[単位:nm]、透過性[単位:バーラー(10
-10cm
3(STP)・cm・cm
-2・s
-1・cmHg
-1)]及び透過係数[単位:GPU(10
-6cm
3(STP)・cm
-2・s
-1・cmHg
-1)]。
【0159】
例6による本発明による膜が、91nmの分離活性層の層厚を有することが見出された。これに反して、比較例4による先行技術の膜は、1929nm、すなわちほぼ2μmの分離活性層の層厚を有していた。