特許第6559133号(P6559133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6559133シアン酸エステル/エポキシブレンドに基づく繊維強化部品を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559133
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】シアン酸エステル/エポキシブレンドに基づく繊維強化部品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/48 20060101AFI20190805BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20190805BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20190805BHJP
   B29K 63/00 20060101ALN20190805BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   B29C70/48
   C08G59/40
   C08J5/24CEZ
   C08J5/24CFC
   B29K63:00
   B29K105:08
【請求項の数】18
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-536804(P2016-536804)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公表番号】特表2017-504499(P2017-504499A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2014076566
(87)【国際公開番号】WO2015082613
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】13195613.8
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ラ デルファ、ガエタノ
(72)【発明者】
【氏名】ゾマー、マルセル
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−506422(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097568(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/183303(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/119467(WO,A1)
【文献】 特開2011−144361(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099292(WO,A1)
【文献】 特表2008−514395(JP,A)
【文献】 特開2002−265645(JP,A)
【文献】 特開2000−191776(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
C08J 5/24
C08G 59/32
B29B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)から(v)の工程を含む、シアン酸エステル又はシアン酸エステル/エポキシブレンドに基づく繊維強化部品を調製する方法:
(i)以下の(a)、(b)及び(c)を含む液体混合物(これは周囲温度で液体である)を準備する工程;
(a)下記式の二官能性シアン酸エステル
【化1】

(式中、RからRは、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択される);
下記式の二官能性シアン酸エステル
【化2】

(式中、RからR12は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択され、
は、直接結合、又は−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−CH(CF)−、−C(CF−、−C(=O)−、−C(=CH)−、−C(=CCl)−、−Si(CH−、C1からC10の直鎖アルカンジイル、C4からC10の分枝鎖アルカンジイル、C3からC8のシクロアルカンジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、−N(R13)−(式中、R13は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。)、及び下記式の部分からなる群から選択される2価の部分を示す)
【化3】

(式中、Xは、水素又はフッ素である);及び
下記式の多官能性シアン酸エステル及びこれらのオリゴマー混合物
【化4】

(式中、nは、1から20の整数であり、R14及びR15は、水素、C1からC10の直鎖アルキル及びC4からC10の分枝鎖アルキルからなる群から独立して選択される)
からなる群から選択される、15から99.9重量%の少なくとも1種の二官能性又は多官能性シアン酸エステル;
(b)下記式のエポキシ樹脂
【化5】

(式中、Q及びQは、独立して酸素、又はGがオキシラニルメチルである−N(G)−であり、R16からR19は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択される);
下記式のエポキシ樹脂
【化6】

(式中、Q及びQは、独立して酸素、又はGがオキシラニルメチルである−N(G)−であり、R20からR27は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択され、Zは、直接結合、又は−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−CH(CF)−、−C(CF−、−C(=O)−、−C(=CH)−、−C(=CCl)−、−Si(CH−、C1からC10の直鎖アルカンジイル、C4からC10の分枝鎖アルカンジイル、C3からC8のシクロアルカンジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、グリシジルオキシフェニルメチレン及び−N(R28)−(式中、R28は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。)からなる群から選択される2価の部分を示す);
下記式のエポキシ樹脂及びこれらのオリゴマー混合物
【化7】

(式中、mは、1から20の整数であり、Qは、酸素、又はGがオキシラニルメチルである−N(G)−であり、R29及びR30は、水素、C1からC10の直鎖アルキル及びC4からC10の分枝鎖アルキルからなる群から独立して選択される);及び
ナフタレンジオールジグリシジルエーテルからなる群から選択される、0から84.9重量%の少なくとも1種の二官能性又は多官能性エポキシ樹脂;並びに
(c)0.1から25重量%の無金属触媒であって、下記式の芳香族ジアミンからなる群から選択される無金属触媒:
【化8】

(式中、R31、R32、R33、R36、R36、R37、R38、R40、R41及びR42は、水素、C1からC4のアルキル、C1からC4のアルコキシ、C1からC4のアルキルチオ及び塩素から独立して選択され、R34、R35、R39及びR43は、水素及びC1からC8のアルキル並びにこれらの混合物から独立して選択され、Zは、直接結合、又は−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−CH(CF)−、−C(CF−、−C(=O)−、−C(=CH)−、−C(=CCl)−、−Si(CH−、C1からC10の直鎖アルカンジイル、C4からC10の分枝鎖アルカンジイル、C3からC8のシクロアルカンジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、及び−N(R44)−(式中、R44は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。)からなる群から選択される2価の部分を示す);
前記(a)、(b)及び(c)の割合は、(a)、(b)及び(c)の全量に基づく;
(ii)繊維構造体を準備する工程;
(iii)前記繊維構造体をモールド内に又は基材上に置く工程;
(iv)前記繊維構造体に前記液体混合物を、20℃から80℃の温度で含浸させる工程;並びに
(v)前記液体混合物を、30℃から300℃の温度を前記混合物が硬化するのに十分な時間適用することにより、硬化させる工程。
【請求項2】
工程(iv)において、前記繊維構造体に前記液体混合物を、高圧を適用することにより及び/又は前記モールド及び繊維構造体から空気を抜くことにより、20℃から80℃の温度で含浸させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(iv)において、前記液体混合物を、30℃から220℃の温度を前記混合物が硬化するのに十分な時間適用することにより、硬化させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(iii)の前記含浸工程が、樹脂トランスファー成形、真空補助樹脂トランスファー成形、液体樹脂インフュージョン、液体樹脂インフュージョン、シーマンコンポジット樹脂インフュージョン成形プロセス(Seeman Composites Resin Infusion Molding Process)、真空補助樹脂インフュージョン、インジェクション成形、圧縮成形、噴霧成形、引抜成形、積層及びフィラメントワインディングからなる群から選択される方法を使用することにより達成される、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒(c)が、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)トルエン−2,4−ジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)トルエン−2,6−ジアミン、4,4'−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の方法:
【請求項6】
前記少なくとも1種の二官能性又は多官能性シアン酸エステル(a)が、R14及びR15は水素であり、nの平均値は1から20、好ましくは1から5である式(Ic)のシアン酸エステルである、請求項1から5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の二官能性又は多官能性エポキシ樹脂(b)が、ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂、N,N,O−トリグリシジル−3−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジジル−4,4’−メチレンビスベンゼンアミン、4,4’,4’’−メチリデントリスフェノールトリグリシジルエーテル樹脂、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)で得られる前記液体混合物が、20から80重量%の前記少なくとも1種の二官能性又は多官能性シアン酸エステル(a)を含む、請求項1から7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)で得られる前記液体混合物が、20から79重量%の前記少なくとも1種の二官能性又は多官能性エポキシ樹脂(b)を含む、請求項1から8のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)で得られる前記液体混合物が、0.1から10重量%の前記触媒(c)を含む、請求項1から9のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(i)で得られる前記液体混合物が、前記液体混合物の全重量に基づいて、20重量%未満の溶媒を含む、請求項1から10のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(i)で得られる前記液体混合物が、前記液体混合物の全重量に基づいて、10重量%未満の溶媒を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(i)で得られる前記液体混合物が、溶媒を含まない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)で準備される前記繊維構造体が、炭素繊維、ガラス繊維、石英繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、天然繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から13のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)で準備される前記繊維構造体が、ストランド、ヤーン、ロービング、一方向布、0/90°布、織布、ハイブリッド布、多軸布、チョップドストランドマット、ティシュー、編組(braid)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から14のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程(i)で得られる前記液体混合物が、離型剤、充填剤、反応性希釈剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の追加的な成分を含む、請求項1から15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16のうちいずれか1項に記載の方法であって、前記液体混合物を、60℃から140℃の温度で硬化させることにより得ることができる、繊維強化部品。
【請求項18】
繊維強化パネル、複雑な形状、回転対称部品を有する部品、中実及び中空の形材(profile)、並びにサンドイッチ構造部品からなる群から選択される、請求項17に記載の繊維強化部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン酸エステル/エポキシブレンドに基づく繊維強化部品を製造するための方法及び前記方法により得ることができる繊維強化部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂に基づく繊維強化部品を製造するための幾つかの方法が確立されている。樹脂インフュージョン、樹脂インジェクション、フィラメントワインディング、引抜成形及び圧縮成形、並びに更にこれらの変形法等のより新規な方法は、伝統的なプリプレグ加工よりも、技術的且つ経済的に、より効率を上げることができる。例えば、Flake C.Campbell,Jr.,Manufacturing Processes for Advanced Composites,Elsevier Ltd.2004,ISBN 978−1−85617−415−2を参照。これらの方法では、高性能複合材料を製造するために、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)モールドを使用することができる。生産量が少ない場合、CFRPモールドは、鋼又はインバーのツール加工よりもはるかに安価である。インバーツール加工には通常、寸法が安定した材料を製造するために有益な熱膨張を示すことが求められる。CFRPモールドは、これらのモールドを使用して製造される部品の熱膨張係数に類似した熱膨張係数を示すので、最終的により良好な寸法精度が得られる(Campbell、104〜110、336頁)。
今日、これらの材料は一般的に、主に炭素繊維強化エポキシ樹脂系に基づくプリプレグ材料を用いて製造される。しかし、モールド製造用と成形部品製造用に同じ樹脂系を使用する幾つかの場合、インフュージョンによるCFRPモールド製造用に液体エポキシ樹脂系を使用することが次第に普通になってきている。硬化サイクルのため、モールドは熱応力を受けるので、エポキシ系CFRPモールドの層間剪断強度(ILSS)値は低下する結果となる。従って、本発明の目的は、機械的特性を劣化させることなく、長期間、熱応力に耐える、CFRPモールド等の繊維強化部品を製造するための方法を提供することである。
【0003】
米国公開特許US2011/0139496A1には、シアン酸エステル樹脂及びナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、並びに任意選択で、硬化促進剤を含む樹脂組成物が開示されている。シアン酸エステル樹脂含量は好ましくは、50質量%以下である。樹脂組成物は、メチルエチルケトン等の溶媒又は溶媒ナフサの溶液から接着性フィルムを製造するのに使用され、使用される硬化促進剤には、ナフテン酸亜鉛又はコバルトアセチルアセトナート等の金属化合物が含まれる。米国公開特許US2011/0139496A1には、その樹脂組成物は、プリプレグを製造するためにも使用することができるが、このような方法には、溶媒又は高温(「ホットメルト法」)のいずれかが必要となるであろうと更に言及されている。
【0004】
国際出願公開特許WO2013/074259A1には、シリカナノ粒子を含有するポリシアン酸エステル組成物が開示されている。組成物の調製には、ポリシアン酸エステル及びナノ粒子が溶媒中に溶解又は分散され、次にワイプ膜蒸発器中で蒸留される工程が含まれる。蒸留前の溶液/分散液であっても、72℃にて、約10Pa×s(10,000mPa×s)と約250Pa×sの間の高粘度を有する。
【0005】
国際出願公開特許WO2006/034830A1には、繊維強化樹脂被覆シートの無溶媒製造のための2工程プロセスが開示されている。第1工程で、(固体)シアン酸エステル又はエポキシ樹脂等の粉末樹脂を、織布又は不織布から選択される基材に、磁力及び静電力を使用して塗布し、第2工程で、このようにして得た粉末をコーティングした層を成形し、硬化する。このプロセスには、磁気及び/又は電気を帯びたロールのシステムが必要であり、平坦で且つ好ましくは、連続的な基材にのみ塗布可能であることがわかる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、時間効率が良く(硬化が早いことを意味する)、シアン酸エステル又はシアン酸エステル/エポキシブレンドに基づく繊維強化部品を、樹脂トランスファー成形、真空補助樹脂トランスファー成形、液体樹脂インフュージョン、シーマンコンポジット樹脂インフュージョン成形プロセス(Seeman Composites Resin Infusion Molding Process)、真空補助樹脂インフュージョン、射出成形、圧縮成形、噴霧成形、積層、フィラメントワインディング、及び高温耐性を有し得る引抜成形等の方法を使用して製造するための方法を提供する。本発明に係る配合物及びプロセスパラメータを用いて、温度耐性、機械的特性及び他の特性に関して、高性能の繊維強化複合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明では、シアン酸エステル又はシアン酸エステル/エポキシブレンドに基づく繊維強化部品を以下の(i)から(v)の工程を含む方法により製造する:
(i)以下の(a)から(c)を含む液体混合物を準備する工程;
(a)下記式の二官能性シアン酸エステル
【化1】

(式中、RからRは、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択される);
下記式の二官能性シアン酸エステル
【化2】

(式中、RからR12は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択され、
は、直接結合、又は−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−CH(CF)−、−C(CF−、−C(=O)−、−C(=CH)−、−C(=CCl)−、−Si(CH−、C1からC10の直鎖アルカンジイル、C4からC10の分枝鎖アルカンジイル、C3からC8のシクロアルカンジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、−N(R13)−(式中、R13は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。)、及び下記式の部分からなる群から選択される2価の部分を示す)
【化3】

(式中、Xは、水素又はフッ素である);並びに
下記式の多官能性シアン酸エステル及びこれらのオリゴマー混合物
【化4】

(式中、nは、1から20の整数であり、R14及びR15は、水素、C1からC10の直鎖アルキル及びC4からC10の分枝鎖アルキルからなる群から独立して選択される)
からなる群から選択される、15から99.9重量%の少なくとも1種の二官能性又は多官能性シアン酸エステル;
(b)下記式のエポキシ樹脂
【化5】

(式中、Q及びQは、独立して酸素、又はGがオキシラニルメチルである−N(G)−であり、R16からR19は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択される);
下記式のエポキシ樹脂
【化6】

(式中、Q及びQは、独立して酸素、又はGがオキシラニルメチルである−N(G)−であり、R20からR27は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、C3からC8のハロゲン化シクロアルキル、C1からC10のアルコキシ、ハロゲン、フェニル及びフェノキシからなる群から独立して選択され、Zは、直接結合、又は−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−CH(CF)−、−C(CF−、−C(=O)−、−C(=CH)−、−C(=CCl)−、−Si(CH−、C1からC10の直鎖アルカンジイル、C4からC10の分枝鎖アルカンジイル、C3からC8のシクロアルカンジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、グリシジルオキシフェニルメチレン及び−N(R28)−(式中、R28は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。)からなる群から選択される2価の部分を示す);
下記式のエポキシ樹脂及びこれらのオリゴマー混合物
【化7】

(式中、mは、1から20の整数であり、Qは、酸素、又はGがオキシラニルメチルである−N(G)−であり、R29及びR30は、水素、C1からC10の直鎖アルキル及びC4からC10の分枝鎖アルキルからなる群から独立して選択される);及び
ナフタレンジオールジグリシジルエーテルからなる群から選択される、0から84.9重量%の少なくとも1種の二官能性又は多官能性エポキシ樹脂;並びに
(c)0.1から25重量%の無金属触媒;
(ii)繊維構造体を準備する工程;
(iii)前記繊維構造体をモールド内に又は基材上に配置する工程;
(iv)前記繊維構造体に前記液体混合物を、任意選択で、高圧を適用することにより及び/又は前記モールド及び繊維構造体から空気を抜くことにより、20から80℃の温度で含浸させる工程;並びに
(v)前記液体混合物を、30から150℃の温度を前記混合物が硬化するのに十分な時間適用することにより硬化させる工程。
【0008】
「液体混合物」の表示は、周囲温度(典型的に約25℃)で液体である混合物を意味し、周囲温度で好ましくは10,000mPa×s未満の粘度、好ましくは1,000mPa×s未満、より好ましくは、500mPa×s未満、最も好ましくは80℃以下の温度で約300mPa×s以下の粘度を有する。
【0009】
以下では、「C1からC10の直鎖アルキル」の表示には、結合点にかかわらず、1から10の炭素原子を有する非分枝鎖の全てのアルキル基が含まれる。C1からC10のアルキル基の例としては、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル(イソプロピル)、1−ブチル(n−ブチル)、2−ブチル(sec−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル等が挙げられる。特に好ましいC1からC10の直鎖アルキル基は、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル(イソプロピル)及び1−ブチル(n−ブチル)である。同様に、「C4からC10の分枝鎖アルキル」の表示には、4から10個の炭素原子及び少なくとも1つの分枝点を有する全てのアルキル基が含まれる。C4からC10の分枝鎖アルキル基の例としては、2−メチル−1−プロピル(イソブチル)、2−メチル−2−プロピル(tert−ブチル)、3−メチル−1−ブチル(イソペンチル)、1,1−ジメチル−1−プロピル(tert−ペンチル)、2,2−ジメチル−1−プロピル(ネオペンチル)等が挙げられる。特に好ましいC4からC10の分枝鎖アルキル基は、2−メチル−1−プロピル(イソブチル)及び2−メチル−2−プロピル(tert−ブチル)である。「C1からC4のアルキル基」の表示には、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル(イソプロピル)、1−ブチル、2−ブチル(sec−ブチル)、2−メチルプロピル(イソブチル)、及び2−メチル−2−プロピル(tert−ブチル)が含まれ、一方、「C1からC4のアルコキシ」及び「C1からC4のアルキルチオ」の表示には、酸素又は2価の硫黄原子を介して結合した前記C1からC4のアルキル基が含まれる。特に好ましい「C1からC4のアルコキシ」基及び「C1からC4のアルキルチオ」基は、メトキシ及びメチルチオである。「C3からC8のシクロアルキル」の表示には、3から8個の炭素原子を有する飽和炭素環、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが含まれる。特に好ましいC3からC8のシクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。
「C1からC10のハロゲン化アルキル」、「C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル」及び「C3からC8のハロゲン化シクロアルキル」の表示には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される1つ以上のハロゲン原子が炭素鎖又は炭素環の任意の位置にて結合している前記基のうちのいずれかが含まれる。2以上のハロゲン原子は、同じであっても又は異なっていてもよい。
「C1からC10のアルコキシ」の表示には、エーテル結合の酸素原子を介して結合した前記C1からC10の直鎖アルキル基又はC4からC10の分枝鎖アルキル基のうちいずれかが含まれ、例えばメトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ(イソプロポキシ)、1−ブトキシ等がある。
上記のように、「ハロゲン」の表示には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。
【0010】
「C1からC10の直鎖アルカンジイル」、「C4からC10の分枝鎖アルカンジイル」及び「C3からC8のシクロアルカンジイル」には、同じか又は異なる炭素原子に2つの開殻原子価を有する、「C1からC10の直鎖アルキル」、「C4からC10の分枝鎖アルキル」及び「C3からC8のシクロアルキル」についての上記定義にそれぞれ従う、C1からC10の非分枝アルカン鎖、C4からC10の分枝アルカン鎖及び3から8個の炭素原子を有する飽和炭素環が含まれる。C1からC10の直鎖アルカンジイル基の例としては、メタンジイル(メチレン)、1,1−エタンジイル(エチリデン)、1,2−エタンジイル(エチレン)、1,3−プロパンジイル、1,1−プロパンジイル(プロピリデン)、2,2−プロパンジイル(イソプロピリデン)、1,4−ブタンジイル、1,5−ペンタンジイル、1,6−ヘキサンジイル等が挙げられる。C4からC10の分枝鎖アルカンジイル基の例としては、2−メチル−1,1−プロパンジイル(イソブチリデン)、2−メチル−1,3−プロパンジイル及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイルが挙げられる。C3からC8のシクロアルカンジイル基の例としては、1,1−シクロプロパンジイル、1,2−シクロプロパンジイル、1,1−シクロブタンジイル、1,2−シクロブタンジイル、1,3−シクロブタンジイル、1,1−シクロペンタンジイル、1,2−シクロペンタンジイル、1,3−シクロペンタンジイル、1,1−シクロヘキサンジイル、1,2−シクロヘキサンジイル、1,3−シクロヘキサンジイル及び1,4−シクロヘキサンジイルが挙げられる。異なる炭素原子上に開殻原子価を有するシクロアルカンジイル基は、シス及びトランスの異性体形態にて生じ得る。
ナフタレンジオールジグリシジルエーテルには、1,2−ナフタレンジオール、1,3−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、1,7−ナフタレンジオール、1,8−ナフタレンジオール、2,3−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール及び2,7−ナフタレンジオール等の任意のナフタレンジオールのジグリシジルエーテルが含まれる。シンメトリックなナフタレンジオール、即ち1,4−、1,5−、1,8−、2,3−、2,6−及び2,7−ナフタレンジオールのジグリシジルエーテルが好ましい。2,6−ナフタレンジオールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0011】
多官能性シアン酸エステル(Ic)及び多官能性エポキシ樹脂(IIc)は、種々のnの値を有する分子のオリゴマー混合物とすることができる。このようなオリゴマー混合物は通常、nの平均値が非整数となり得ることを特徴とする。好ましい実施態様では、工程(iii)の含浸は、樹脂トランスファー成形、真空補助樹脂トランスファー成形、液体樹脂インフュージョン、シーマンコンポジット樹脂インフュージョン成形プロセス、真空補助樹脂インフュージョン、インジェクション成形、圧縮成形、噴霧成形、引抜成形、積層、フィラメントワインディング、Quickstepプロセス又はRoctoolプロセスからなる群から選択される方法を使用して達成される。より好ましくは、工程(iii)の含浸は、樹脂トランスファー成形、液体樹脂インフュージョン、シーマンコンポジット樹脂インフュージョン成形プロセス、真空補助樹脂インフュージョン、インジェクション成形、及びEADS真空補助プロセス(VAP(登録商標))からなる群から選択される液体複合体成形プロセスを使用して達成される。
【0012】
−引抜成形
この方法での従来技術の材料は、エポキシ樹脂及びポリエステルである。これまで、シアン酸エステルは、この方法には適用されなかった。引抜成形プロセスは、規則的な断面又は中空構造を有するバー及び形材(profile)を連続的に製造するのに使用することができる。繊維強化材は、連続的であり、繊維は製造方向に平行に整列される。
強化構造(ガラス繊維製又は炭素繊維製又はアラミド繊維製)は、全ての成分を混合した樹脂浴で含浸される。樹脂配合物は、含浸温度にて500mPa×s未満、好ましくは300mPa×s以下の粘度を有するべきである。
強化繊維の完全な且つ均一な含浸は、引抜成形プロセスにおいて非常に重要である。
その後、複合体材料は、加熱されたダイ内に供給され、それを通して引出される。結果として、マトリクスは、引抜ダイの寸法によって規定された断面を有する繊維強化バーを製造するために、重合を開始する。最終的に、バーは、必要な長さに切断される。
芳香族ジアミン(特に、Lonzacure(商標)DETDA80)を引抜成形プロセスの触媒として使用することにより、混合物粘度は、更に低下させることができ、これは、より低温にて樹脂浴を操作するのに役立つ。一定で経済的な製造速度を達成するために、芳香族ジアミンの濃度を、より高める必要がある。濃度がより高いと、引抜かれるバーは、モールドを出る際には、既に重合し、確実に固体となる。
ゲル化時間及び硬化時間は、非常に正確に設計することができ、全体的な硬化時間は、以下の実施例にて示された反応性データを考慮して減少させることができる。
【0013】
−フィラメントワインディング
この方法での従来技術の材料は、エポキシ樹脂及びポリエステルである。これまで、シアン酸エステルは、この方法には、稀に且つ触媒なしで適用されてきたに過ぎない。複合材料から圧力容器及び凸形状体を製造する場合、フィラメントワインディングは、最も競争力のある技術の一つである。フィラメントワインディングのための工業的に利用可能な含浸方法には、開放浴に繊維を含浸させることが含まれる。含浸工程の間に、ロービングの単繊維フィラメントを完全に濡らすために、ロービングを十分に広げなければならない。
その後、フィラメントワインディング装置により、最終的な製品の形状及び寸法を規定するマンドレルの周りに、張力をかけられ且つ樹脂を含浸された繊維束が巻き付けられる。繊維束は、複合体における繊維/樹脂の高い体積比を達成するために、張力下で適用される。
【0014】
フィラメントワインディングの場合、樹脂配合物は、含浸温度で、約500mPa×s未満、好ましくは約300mPa×s以下の粘度を有するべきである。強化構造体(例えばガラス繊維製、炭素繊維製、又はアラミド繊維製)は、全ての成分を混合した樹脂浴内で含浸される。強化繊維の完全な且つ均一な含浸は、フィラメントワインディングプロセスにおいて非常に重要である。
芳香族ジアミン(特に、Lonzacure(商標)DETDA80)を触媒として使用することにより、混合物の粘度は、更に低下させることができ、これは、より低い温度で樹脂浴を操作するのに役立つ。一定で経済的な硬化プロセスを達成するために、ある一定の濃度の芳香族ジアミンを利用する。この濃度によって、確実に、製造部品(例えば円筒形又は楕円形)を、純粋なシアン酸エステル樹脂(触媒なし)よりもはるかに低い温度で硬化させることができ、これにより、内部応力がより低くなり、部品品質がより高くなる。
ゲル化時間及び硬化時間は、非常に正確に設計することができ、全体的な硬化時間は、以下の実施例で示された反応性データを考慮して低減することができる。
【0015】
本発明で使用される触媒は、金属を含まず、特に、最終的な製品の特性(例えば、電磁特性)を損なったり、環境上若しくは就業上の問題を引き起こす可能性のある遷移金属を含まない。好ましくは、本発明の液体混合物は、可溶性金属化合物を本質的に含まない。「本質的に含まない」とは、金属含量が10重量ppm以下、好ましくは5重量ppm以下であることを意味すると理解すべきである。
【0016】
好ましい実施態様では、触媒(c)は、脂肪族モノ−、ジ−及びポリアミン、芳香族モノ−、ジ−及びポリアミン、炭素環式モノ−、ジ−及びポリアミン、複素環式モノ−、ジ−及びポリアミン、5員又は6員の窒素含有複素環含有化合物、ヒドロキシアミン、ホスフィン、フェノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
好適な触媒には、非限定的に、フェノール、例えばフェノール、p−ニトロフェノール、ノニルフェノール、ピロカテコール、ジヒドロキシナフタレン;第三級脂肪族アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン及びトリブチルアミン並びにそれらの付加化合物、例えばN,N−ジメチルオクチルアミン−三塩化ホウ素;環状第三級アミン、例えばジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;第三級芳香族脂肪族アミン、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン;芳香族窒素複素環、例えばイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−オクタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、ピリジン、1つ以上のC1からC4のアルキル基及び/又はC1からC4のアルケニル基で置換されたピリジン、N−メチルピペラジン、キノリン、イソキノリン及びテトラヒドロイソキノリン;第四級及び第三級アンモニウム塩、例えばテトラエチルアンモニウムクロリド及びトリエチルアミン塩酸塩;N−オキシド、例えばピリジン−N−オキシド;第三級ホスフィン、例えばトリブチルホスフィン及びトリフェニルホスフィン;アミノアルコール、例えば2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−(フェノキシメチル)−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール;ヒドロキシ化側鎖を有する窒素複素環、例えば1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン及びN−(β−ヒドロキシエチル)モルホリン;アミノフェノール、例えば2−(ジメチルアミノメチル)フェノール及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール;ジアミン、例えば2−ジメチルアミノエチルアミン、2−ジエチルアミノエチエルアミン、3−ジメチルアミノ−n−プロピルアミン及び3−ジエチルアミノ−n−プロピルアミン;並びに、メルカプト化合物、例えば2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンズイミダゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール;並びに、他の硫黄化合物、例えばメチアゾール(1−メチル−3H−イミダゾール−2−チオン)が含まれる。
全てこれらの触媒は、シアン酸エステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂と反応させることができ、こうして最終生成物中で共有結合をし、浸出も拡散もする傾向がない。
【0018】
より好ましくは、触媒(c)は、下記式の芳香族ジアミンからなる群から選択される:
【化8】

(式中、R31、R32、R33、R36、R36、R37、R38、R40、R41及びR42は、水素、C1からC4のアルキル、C1からC4のアルコキシ、C1からC4のアルキルチオ及び塩素から独立して選択され、R34、R35、R39及びR43は、水素及びC1からC8のアルキル、並びにこれらの混合物から独立して選択され、Zは、直接結合、又は−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−CH(CF)−、−C(CF−、−C(=O)−、−C(=CH)−、−C(=CCl)−、−Si(CH−、C1からC10の直鎖アルカンジイル、C4からC10の分枝鎖アルカンジイル、C3からC8のシクロアルカンジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、−N(R44)−(式中、R44は、水素、C1からC10の直鎖アルキル、C1からC10のハロゲン化直鎖アルキル、C4からC10の分枝鎖アルキル、C4からC10のハロゲン化分枝鎖アルキル、C3からC8のシクロアルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。)からなる群から選択される2価の部分を示す)。
好ましい実施態様では、Zは、メチレン(−CH−)基である。
「C1からC4のアルキル」の表示は、本明細書では、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル(イソブチル)、1−ブチル、2−ブチル(sec−ブチル)、2−メチル−1−プロピル(イソブチル)及び2−メチル−2−プロピル(tert−ブチル)を含むことを意味し、一方、「C1からC8のアルキル」の表示は、前記のものを含み、且つC1からC10の直鎖アルキル及びC4からC10の分枝鎖アルキルについて上記した定義に従って、5から8個の炭素原子を有する全ての直鎖及び分枝鎖アルキル基を含むことを意味する。
【0019】
特に好ましい実施態様では、触媒(c)は、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、4,4'−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
別の好ましい実施態様では、少なくとも1種の二官能性又は多官能性シアン酸エステル(a)は、式(Ic)のシアン酸エステルであり、式中、R14及びR15は、水素であり、nの平均値は、1から20、より好ましくは1から15、更により好ましくは1から10、最も好ましくは1から5である。
【0021】
更に別の好ましい実施態様では、少なくとも1種の二官能性又は多官能性エポキシ樹脂(b)は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂、N,N,O−トリグリシジル−3−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジジル−4,4’−メチレンビスベンゼンアミン、4,4’,4’’−メチリデントリスフェノールトリグリシジルエーテル樹脂、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
別の好ましい実施態様では、工程(i)で得られる液体混合物には、20から80重量%の少なくとも1種の二官能性又は多官能性シアン酸エステル(a)が含まれる。
別の好ましい実施態様では、工程(i)で得られる液体混合物には、20から79重量%の少なくとも1種の二官能性又は多官能性シアン酸エポキシ樹脂(b)が含まれる。
更に別の好ましい実施態様では、工程(i)で得られる液体混合物には、0.5から10重量%の触媒(c)が含まれる。
別の好ましい実施態様では、工程(ii)で得られる繊維構造体は、炭素繊維、ガラス繊維、石英繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、天然繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
別の好ましい実施態様では、工程(ii)で得られる繊維構造体は、ストランド、ヤーン、ロービング、一方向布、0/90°布、織布、ハイブリッド布、多軸布、チョップドストランドマット、ティシュー、編組(braid)、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0023】
工程(i)で得られる液体混合物には、(内部)離型剤、充填剤、反応性希釈剤、及びこれらの混合物又は組合せからなる群から選択される1種以上の追加的な成分を含有させることができる。
内部離型剤は、好ましくは、成分(a)、(b)、及び(c)の全量に対して、0から5重量%の量で存在する。工程(i)で得られる液体混合物に追加される場合の好適な内部離型剤の例としては、Axel XP−1−PHPUL−1(有機脂肪酸、エステル及びアミン中和剤の独自の相乗作用を有するブレンド)及びAxel MoldWiz(登録商標)INT−1850HT(有機脂肪酸、エステル並びにアルカン及びアルカノールの独自の相乗作用を有するブレンド、供給者:Axel Plastics Research Laboratories, Inc.,Woodside NY, USA)が挙げられる。他の離型剤は通常、モールド表面に塗られる。これらの離型剤の例としては、Frekote(登録商標)700−NC(水素処理した重質ナフサ(60から100%)、ジブチルエーテル(10から30%)、ナフサ(石油)軽質アルキラート(1から5%)、オクタン(1から5%)及び独自の樹脂(1から5%)の混合物;供給者:Henkel Ag&Co.KGaA、デュッセルドルフ、ドイツ)及びAirtech Release All(登録商標)45(これは、90から100%の水素処理重質ナフサ(石油);供給者:Airtech Europe SARL、Differdange、ルクセンブルク)が挙げられる。
【0024】
充填剤は、好ましくは、成分(a)、(b)、及び(c)の全量に対して、0から40重量%の量で存在する。それらは、粒子、粉末、球、チップ及び/又はストランドの形態で、ナノスケールからミリメートルの大きさであってもよい。好適な充填剤は、熱可塑性樹脂及びエラストマー等の有機性、又はガラス、グラファイト、炭素繊維、シリカ、鉱物粉末等の無機性等であってもよい。
【0025】
反応性希釈剤は、好ましくは、成分(b)の量に対して、0から20重量%の量で存在する。好適な反応性希釈剤の例としては、脂肪族又は脂環式アルコール又はフェノールから誘導される液体モノ−、ジ−又はトリ官能性エポキシ化合物;例えばグリコール、特に4から12個の炭素原子を有する1,ω−アルカンジオールのグリシジルエーテル;例えば1,4−(ジグリシジルオキシ)ブタン若しくは1,12−(ジグリシジルオキシ)ドデカン、又はネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル;8から16個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖第一級アルコールのグリシジルエーテル;例えば2−エチルヘキシルグリシジルエーテル若しくはC8からC16のアルキルグリシジルエーテル、又は1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0026】
好ましい実施態様では、工程(i)で得られる液体混合物には、アセトン又はブタン等の追加的な(非反応性の)溶媒は殆ど又は全く含有されない。好ましくは、それには、20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、更により好ましくは10重量%未満又は5重量%未満が含有され、、各割合は、成分(a)、(b)、及び(c)の全量に基づいており、あるいは最も好ましくは溶媒を全く含まない。
【0027】
硬化工程(v)は、従来の技術並びにQuickstep又はRoctoolプロセス等の革新的な技術を含む任意の加熱技術を使用して行うことができる。液体混合物を硬化するために必要な時間は、その組成物及びその硬化温度に依存しており、典型的には約1時間から約20時間の範囲内である。当業者は、以下の実施例で示されたガイダンスに基づいて好適な硬化条件を容易に決定することができる。
【0028】
硬化工程(v)は、更に続けて、後硬化加熱処理を、好ましくは300℃までの温度、10時間以内で行うことができる。
本発明の方法により得ることができる繊維強化部品は、Tg値(TMAを介してタンジェントδ測定値により定量される)によって示される高温耐性を発揮し、それは、脱型後、好ましくは100℃より高く、より好ましくは120から160℃であり、後硬化の後、好ましくは180℃より高く、より好ましくは200から420℃である。
上記本発明及び好ましい実施態様の方法により得ることができる繊維強化部品は、同様に、本発明の目的でもある。
本発明の方法により得ることができる繊維強化部品は、視覚的な又は非視覚的な用途で使用できるが、それには、非限定的に、繊維強化パネル、例えば保護カバー、ドア及び床パネル、ドア、補強材、スポイラー、ディフューザ、ボックス等;複雑な形状、例えばリブを有する成形部品、回転対称部品を有する部品、例えばパイプ、シリンダー、及びタンク、特に、燃料タンク、油及びガスライザー、排気管等;及び中実又は中空の形材(profile)、例えば補強材、バネ板、キャリア等;及びコア構造体を有するか有しないサンドイッチ構造部品、例えばブレード、ウィング等;又は高性能複合体材料製造用の炭素繊維強化プラスチックモールドが含まれる。
以下の非限定的な例により、本発明の方法及び本発明に係る繊維強化部品の製造を説明する。全ての割合は、特に断らない限り、重量による。
【実施例】
【0029】
方法
RTM樹脂トランスファー成形/樹脂インジェクション
樹脂トランスファー成形プロセスを説明する:繊維強化材は、モールドセットに配置される;モールドを閉じ、クランプする。樹脂を、圧力下でモールドキャビティ内にインジェクションする。RTMでの原動力は圧力である。従って、モールドキャビティ内の圧力は、大気圧よりも高くなる。対照的に、真空インフュージョン法は、原動力として真空を使用し、モールドキャビティ内の圧力は大気圧よりも低い。
樹脂インジェクション成形プロセスは、非常に限定されたトレランス(例えば、粘度、混合比、補強材の浸透性、ゲル化時間、サイクル時間等全てのプロセスパラメータについて)を有する、反復条件下での高生産性(サイクル時間が短い)部品製造のために設計される。これは、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの両方を加工するのに最も普通に使用される。
RTMに使用される樹脂に好適な特性:
・インジェクション前にリザーバ内に保持されるので、ある一定の温度で低粘度を有していなければならない。
・ボイドなしで迅速に且つ均一に繊維プリフォームを含浸しなければならない。
・含浸した後は可能な限り迅速にゲル化しなければならない(速いサイクル時間)。
・歪みなく脱型するのに十分な硬さを有していなければならない。
・低粘度臨界点(50%のプリフォームローディングを含浸する含浸温度にて1000mPa×s未満)
・低粘度では、適切な繊維ウェッティングを達成するのに必要とされる圧力が低い。
・温度が高いと硬化が促進され、従ってインジェクション時間が短縮されるので、樹脂のインジェクション温度(典型的に高温)は、プリフォーム含浸を確実にするために可能な限り最低粘度に近づけて保持すべきである。
更に、開発された樹脂配合物(シアン酸エステル配合物とアミンで触媒されるブレンド)は、例えばQuickstep又はRoctoolプロセス等の動的にモールド温度が変わる複合体製造プロセスにも適用することができる。
【0030】
技術的な特徴:
シアン酸エステル又はシアン酸エステル/エポキシブレンド樹脂系は、RTM樹脂インジェクションプロセスにてアミン触媒Lonzacure DETDA80又は他のアミンを用いて硬化することができた。硬化時間は、方法に適用されるインジェクション温度及びモールド温度によって略決まる触媒量(例えば0.5から5重量%以上)を変えて設計することができた。最終的に、硬化サイクル温度は、5から30分、好ましくは5から20分程度の値に減少させることができた。180℃300℃の間、好ましくは180℃と220℃の間の後硬化処理を、所望の高温及び機械特性を達成するために適用した。
実施例1
【0031】
配合物は、シアン酸エステルPrimaset(商標)PT−30(式Ic、R14=R15=H、n=3〜4)及びビスフェノールAエポキシ樹脂(式IIb、Q=Q=O、R20=R21=R22=R23=R24=R25=R26=R27=H、Z=−C(CH−、グリシジルオキシ部分はZに対してパラ位)の混合物であった。液体アミンLonzacure(商標) DETDA80(式IIIa、R31=CH、R32=R33=C、R34=R35=H、約80%の3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン及び約20%の3,5−ジエチル−2,6−ジアミンの異性体混合物)を触媒として使用した。
12.80g(41重量%)のPrimaset(商標)PT−30及び18.10g(59重量%)のビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂GY240(Huntsman)の混合物を調製した。樹脂系の粘度は、下記の表1に示す:
【表1】

液体触媒アミンLonzacure(商標) DETDA80の粘度は、以下の表2に示すように非常に低い。
【表2】
【0032】
樹脂系Primaset(商標)PT−30/ビスフェノールAエポキシ+触媒Lonzacure(商標) DETDA80の低粘度及び高繊維湿潤の潜在性により、良好な加工性パラメータを示すことができる。樹脂は50と80℃の間の温度で1000mPa×s未満の粘度にてインジェクションすることができる。
含浸が完了すると、可能な限り迅速に、樹脂系をゲル化しなければならない。ゲル化時間は、以下の表3に示すように、触媒の量及び温度を変えることによって制御することができる。触媒の量は、シアン酸エステル+エポキシ樹脂の量に基づいて、重量%で与えられる。
【表3】
【0033】
例えば130から140℃のモールド温度に設定することにより、2から3重量%のアミンLonzacure(商標) DETDA80触媒を含有する樹脂系は、5から20分以内に、歪みなしで脱型することができる十分な硬度に達した。ガラス繊維又は炭素繊維の複合体部品は、この方法によって製造することができた。技術的パラメータの概要を以下の表4に示す。
【表4】
【0034】
硬化サイクル後、歪みなしで部品を脱型することが可能であった。
高温耐性(それぞれ高Tg)は、オーブン中での規定された後硬化プロセス工程(180℃と220℃の間の温度)を介してか又は高温環境下での使用の間のいずれかで達することができる。
Tgガラス転移温度は、熱機械分析(TMA)により測定した。使用した機械は、Mettler Toledo装置 TMA SDTA840であった。サンプルの寸法は、6×6mm(長さ×幅)及び1.5mm厚さであった。試験方法は、2つの加熱ランプを利用した(第1ランプ:10K/分にて25から220℃、第2ランプ:10K/分にて25から350℃)。Tgは第2ランプで評価した。結果を以下の表5に示す。
【表5】

実施例2
【0035】
配合物は、シアン酸エステルPrimaset(商標)PT−15(式Ic、R14=R15=H、n=2〜3)及びビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂の混合物であった。液体アミンLonzacure(商標) DETDA80を触媒として使用した。
12.80g(41重量%)のPrimaset(商標)PT−15及び18.10g(59重量%)のビスフェノールAエポキシ樹脂GY240(Huntsman)の混合物を調製した。樹脂系の粘度は、以下の表6に示す:
【表6】
【0036】
樹脂系Primaset(商標)PT−15/ビスフェノールAエポキシ+触媒アミンLonzacure(商標) DETDA80は低粘度及び高繊維湿潤の能力を有するので、実施例1に上記した樹脂系よりも、更に良好な加工性パラメータを示す。樹脂は35と60℃の間の温度で1000mPxs未満の粘度にてインジェクションすることができる。
【0037】
含浸が完了すると可能な限り迅速に、樹脂系をゲル化しなければならない。ゲル化時間は、以下の表7に示すことができるように、触媒の量及び温度を変えることによって制御することができる。
【表7】
【0038】
例えば、モールド温度を120℃に設定することにより、3から5重量%のアミンLonzacure(商標) DETDA80触媒を含有する樹脂系は、約10分後には歪みなしで脱型することができる十分な硬度に達した。ガラス繊維又は炭素繊維の複合体部品は、この方法によって製造することができた。技術的パラメータの概要を以下の表8に示す。
【表8】
【0039】
硬化サイクル後、歪みなしで部品を脱型することが可能であった。
高温耐性(それぞれ高Tg)は、オーブン中での規定された後硬化プロセス工程(180℃と220℃の間の温度)を介してか又は高温環境下での使用の間のいずれかで達することができる。
Tgガラス転移温度は、実施例1で記載したように熱機械分析(TMA)により測定した。結果を以下の表9に示す。
【表9】
【0040】
−真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)及び樹脂インフュージョン
以前の発明は、殆どがプリプレグ技術又は1成分樹脂配合物について対処するものであった。樹脂インフュージョンには、500mPa×s未満、好ましくは300mPa×s未満の粘度(インフュージョン温度における)を有する樹脂系が必要である。強化構造体(ガラス繊維又は炭素繊維又はアラミド繊維製)は、全ての成分を混合した樹脂ポットで含浸される。芳香族ジアミン(特に、Lonzacure(商標) DETDA80)を使用することにより、混合物の粘度を更に低下させることができ、これにより、より低温での樹脂ポットの操作に役立つ。部品の大きさを考慮して、インフュージョン時間を評価しなければならない。ゲル化時間及び硬化時間は、非常に正確に設計することができ、以下の表10の反応性データを考慮して、硬化時間全体を短くすることができる。
【表10】
【0041】
Primaset(商標)PT−30(68重量%)/ビスフェノールAエポキシ(32重量%)のブレンドの樹脂系の粘度を以下の表11に示す。
【表11】

実施例3
【0042】
真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)及び樹脂インフュージョン
技術的特徴:
平坦なガラスモールドを使用した。モールドを清浄化し、表面に離型剤を塗った。この試験では、Airtechの液体離型剤ReleaseAll(登録商標)を使用した。
炭素繊維布を、25×25cmの小片に切断し、該切断プライを取扱う間、繊維を引抜かないように注意を払った。16プライを、実験積層体の各々のために切断した。該試験の場合、使用した炭素布繊維は、Toho Tenax HTA40 E13(供給者:Toho Tenax Europe GmbH、Wuppertal ドイツ)であった。その後、調製した炭素繊維布の層を、モールド表面上に置いた。後硬化工程の間の歪みを防止するために、対称的なレイアップに積上げるように注意を払った。この例では、Airtech Omega Flow Lineを、樹脂供給と真空ラインの両方に使用した。Omega Flow Lineの寸法は、炭素繊維層の両側(樹脂供給入口と真空ライン出口)の幅と同じであった。樹脂を一方の側で浸透させると、樹脂供給ラインは、非常に迅速にその全長にて満たされた。その後、樹脂を、真空出口に向かって、炭素積層体レイアップ全体に行渡らせてインフュージョンした。
【0043】
以下の樹脂インフュージョン補助材料を利用した。「オールインワン」ピールプライ及びリリースフィルム層(Fibertex Compoflex(登録商標)SB150)を切断し、炭素繊維層を覆って直接接触させて配置した。樹脂分配媒体層(Airtech Knitflow 105HT)を切断し、先のレイアップ(炭素繊維及びピールプライ/リリースフィルム層)の上に設置した。樹脂分配媒体により、複合体部品全体に迅速に樹脂を広げることができた。分配層は、樹脂供給入口用のOmega Flow Line(Airtech Omega Flow LineOF750)の基材としても配置した。モールドの他の側(真空ライン出口)に、樹脂分配層とCompoflex(登録商標)SB150(Fibertex Nonwovens A/S Aalborg、デンマーク)層を、Omega Flow Lineの基材として配置した。モールドに接触する全ての材料の層を、真空適用時に「ブリッジング」となることを回避するために圧縮した。高温樹脂インフュージョンコネクター(Airtech VAC−RIC−HT又はRIC−HT)を樹脂供給入口と真空出口のチャンネルの中央に取付けた。
【0044】
周囲の3辺を熱でシームし、且つモールドの寸法に合わせて特別に設計してカスタマイズした矩形の真空バッグを使用した(Airtech Wrightlon(登録商標) WL5400又はWL7400)。全てのインフュージョンアセンブリを、真空バッグの内側に組立て、該真空バッグは、周囲のうち開いている1つの側を最後に熱でシームした。2つの小さい穴をバッグに開けた。供給ラインと真空ラインのコネクターを、それらの穴を介してバッグに取付け、ナイロンチューブを取付けた。組立てたモールドを、樹脂供給源と真空ポンプに接続した。
【0045】
モールドアセンブリ全体を、必要な温度でインフュージョンするためにオーブン内に設置した。インフュージョンを開始する前に、十分な真空と温度を、3から12時間バッグアセンブリに適用した。繊維レイアップ及びモールドアセンブリに、処理温度条件を適用することは、フロープロセスを改良し、且つ繊維層からピックアップした水分を除去するために有益であった。
真空ポンプを3から5hPaの真空で作動させ、漏れをチェックすることにより良好に封止した。オーブン温度を80℃まで3から5K/分の加熱速度で上げた。
【0046】
350gのPrimaset(商標)PT−30/ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂ブレンド(230gのシアン酸エステルPrimaset(商標)PT−30及び112gのビスフェノールAエポキシ樹脂(Huntsman GY 240))を80℃の真空オーブン内に入れ、3hPaにて30分間脱気して樹脂中に存在する空気の泡を除去した。その後、アミン触媒Lonzacure(商標)DETDA80(3.15g、0.9重量%)を80℃にて添加し、完全に均質化するまで混合した。樹脂+アミン触媒系を80℃のオーブン内に入れ、5hPaにて5から10分間再び脱気して、触媒と混合する間に生じた空気の泡を除去した。
【0047】
真空バッグの圧力を10mbarに設定し、オーブン温度は80℃であった。樹脂を80℃に加熱すると、粘度は150から300mPa×sの範囲まで下がった。この粘度で、Primaset(商標)PT−30/ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂ブレンド+アミン触媒Lonzacure(商標)DETDAを20から30分以内に首尾よくインフュージョンし、バッグ下の繊維を通って流すことができた。
10hPaの十分な真空を、樹脂が硬化点に到達するまで維持した。以下の硬化サイクルを使用して、材料をバッグアセンブリ下で硬化させた:
1K/分で80℃から120℃;120℃で2時間;1K/分で120℃から140℃;140℃で2時間。
【0048】
硬化後、材料は、バッグアセンブリから容易に脱型できた。後硬化サイクルを、所望の機械的及び熱的特性を達成するために、以下のように適用することができる:0.5K/分で25℃から220℃、220℃で2時間。
技術的なパラメータの概要を以下の表12に示す。
【表12】
【0049】
Tgガラス転移温度を実施例1に記載したように熱機械分析(TMA)により測定した。結果を以下の表13に示す。
【表13】

実施例4
【0050】
引抜成形
技術的特徴
矩形金属引抜成形モールドを使用して、20×10mmのコンポジット形材(profile)を形成した。モールドを清浄化し、表面に離型剤(Chemlease(登録商標)IC25)を塗った。
繊維強化材(炭素繊維Toho Tenax HTA(供給者:Toho Tenax Europe GmbH、Wuppertal、ドイツ)を16のロービングにより形成した。繊維をボビンから樹脂浴に向かって直接引いた。
含浸繊維は引抜成形モールドに入り、モールドを通って引出された。モールドは、4つの別々に制御された加熱ゾーンを有し、それは、温度が150℃で開始し、そして160℃、170℃及び最終的にモールド出口で180℃に上がる。
Primaset(商標)PT−30/ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂ブレンド(350g、238gのシアン酸エステルPrimaset(商標)PT−30と112gのビスフェノールAエポキシ樹脂(Huntsman GY240)の混合物)を2%(7g)の内部離型剤(Chemlease IC25、供給者:Chemtrend)と混合した。その後、アミン触媒Lonzacure(商標)DETDA80(8.75g、2.5重量%)を80℃で添加し、完全に均質になるまで混合した。樹脂+アミン触媒系を、65℃の一定の温度に維持した樹脂浴に入れた。その後、引抜成形プロセスを、記載したように開始した。最終的に、後硬化サイクルを適用することができた:1K/分で25℃から220℃+220℃で2時間。
達成した製造速度は0.2m/分であった。製造したサンプルは、Tg(DMAによる)が成形後は80℃であり、後硬化後は300℃であった。
技術的パラメータの概要を以下の表14に示す。
【表14】
【0051】
ガラス転移温度Tgを、実施例1に記載したように熱機械分析(TMA)により測定した。結果を以下の表15(表17)に示す。
【表15】

実施例5
【0052】
フィラメントワインディング
技術的特徴
円筒マンドレルを使用して内径が40mmのコンポジットパイプを形成した。マンドレルを清浄化し、その表面に離型剤を塗った。
繊維強化材(炭素繊維Toho Tenax HTA(供給者:Toho Tenax Europe GmbH、Wuppertal、ドイツ))を4のロービングにより形成した。繊維をボビンから、65℃の一定の温度に維持した樹脂浴に向かって直接引いた。
含浸繊維を、89°±30°の異なる角度でマンドレル上に配置し、18の層を形成して、4.4mmのパイプ壁厚とした。
マンドレル及びその上に配置された含浸繊維を80℃の一定の温度に維持した。
【0053】
Primaset(商標)PT−30シアン酸エステルとビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂の樹脂ブレンド(350g、238gのPrimaset(商標)PT−30と112gのビスフェノールAエポキシ樹脂(Huntsman GY240)を、アミン触媒Lonzacure(商標)DETDA80(7g、2重量%)と、70℃で完全に均質化するまで混合した。樹脂+アミン触媒系を65℃の樹脂浴に入れた。その後、フィラメントワインディングプロセスを記載したように開始し、その後、80℃で24時間の前硬化サイクルを行い、周囲温度に冷却し(冷却速度:1K/分)、周囲温度にてマンドレルから脱型した。最終的に、パイプを15K/分で25℃から220℃及び220℃で2時間、後硬化処理にかけた。
技術的パラメータの概要を以下の表16に示す。
【表16】
【0054】
Tgガラス転移温度を、実施例1に記載したように熱機械分析(TMA)により測定した。結果を以下の表17に示す。
【表17】

実施実施例6から14
【0055】
Primaset(商標)PT−30シアン酸エステル樹脂を種々の触媒を用いて試験した。樹脂を95℃に加熱し、触媒を添加し、完全に均質化するまで混合することによりサンプルを調製した。
サンプルを、1K/分で25℃から140℃に加熱すること及び140℃で30分間維持することを含む硬化サイクルに供し、その後、1K/分で25℃から200℃に加熱すること、200℃で1時間維持すること、1K/分で200℃から260℃に加熱すること、及び260℃で1時間維持することを含む後硬化処理に供した。
Tgガラス転移温度を、上記したように熱機械分析(TMA)により測定した。試験法では2つの加熱ランプを利用した(第1ランプ:10K/分で25℃から250℃、第2ランプ:10K/分で25℃から400℃)。Tgは第2ランプで評価した。結果を表18に、各組成物から繊維強化部品を調製するのに適した方法と共に示す。
【表18】

実施例15から28
【0056】
Primaset(商標)PT−30シアン酸エステル樹脂とビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂のブレンドを種々の触媒を用いて試験した。樹脂を95℃に加熱し、触媒を添加し、完全に均質化するまで混合することにより、サンプルを調製した。
サンプルを、1K/分で25℃から140℃に加熱すること及び140℃で30分間維持することを含む硬化サイクルに供し、その後、1K/分で25℃から220℃に加熱すること及び220℃で2時間維持することを含む後硬化処理に供した。
Tgガラス転移温度を、上記したように熱機械分析(TMA)により測定した。試験法では2つの加熱ランプを利用した(第1ランプ:10K/分で25℃から200℃、第2ランプ:10K/分で25℃から350℃)。Tgは第2ランプで評価した。結果を表19に、各組成物から繊維強化部品を調製するのに適した方法と共に示す。
【表19】