【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、非凝集免疫検定における誤った検定結果を減少し又は排除することによる試料中の被検体濃度の正確な測定を目的とする。本明細書で述べる原則に従った方法の例において、非凝集免疫検定に供される抗体及び試料は、ヒドロキシフェニル置換C1−C5カルボン酸及びその金属塩並びにハロゲン置換C1−C5カルボン酸及びその金属塩、又は上記の2以上の組合せからなる群から選ばれる、非凝集免疫検定の正確さを向上させるのに効果的な量の、前処理剤と結合される。
【0015】
「抗体」とは、特定の結合対(「sbpメンバー」)の構成要素であり、2つの異なる分子の一方であって、その表面又は空洞中に、他の分子の特定の空間的又は極性組織と特異的に結合し従って相補的であると定義される領域を有する。前記特異的結合対の構成要素は、通常、抗原−抗体のような免疫学的ペアの構成要素である。しかしながら、例えば、ビオチン−アヴィジン、ホルモン−ホルモン受容体、酵素−基質、核酸二本鎖、免疫グロブリンG−タンパク質A、及びDNA−DNA、DNA−RNAといったポリヌクレオチドペアは、免疫学的ペアではないが、sbpメンバーの範囲内に含まれる。従って、特異的結合には、2つの異なる分子の一方の他の分子に対する、その他の分子に対する本質的に低い認識に比較して、特異的な認識が関与する。他方、非特異的結合には、特異的な表面構造の影響を相対的に受けない、分子間の非共有結合が関与する。非特異的結合は、分子間の疎水性相互作用を始めとするいくつかの要因から生じる。
【0016】
「非凝集」免疫検定は、少なくとも1つの抗体又は特異的な結合対の類似の巨大分子メンバーを使用する検定であって、この検定は、球状物質、例えば、バクテリア、細胞又はラテックス粒子、のような物質の凝集を引き起こさない。これは、該物質上の抗原が該抗体又は類似の巨大分子sbpメンバーに結合するおかげである。
【0017】
C1−C5カルボン酸とは、1〜5個の炭素原子又は1〜4個の炭素原子又は1〜3個の炭素原子又は1〜2個の炭素原子又は2〜5個の炭素原子又は2〜4個の炭素原子又は2〜3個の炭素原子又は4〜5個の炭素原子を有するカルボン酸をいう。C1−C5カルボン酸の例には、これは説明のためであって限定するものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、イソブタン酸、n−ペンタン酸、イソペンタン酸を含む。
【0018】
いくつかの例では、C1−C5カルボン酸は、ヒドロキシフェニル置換基(これは、少なくとも1つのヒドロキシ基又は2以上のヒドロキシ基を含有するフェニル基である。)で置換されている。ヒドロキシ置換基は、C1−C5カルボン酸に結合しているフェニル環の炭素原子に対してオルト(o)、メタ(m)又はパラ(p)位であってよい。ヒドロキシフェニルC1−C5カルボン酸の例には、これらに限定するものではないが、例えば、(o−ヒドロキシフェニル)蟻酸(サリチル酸)、(m−ヒドロキシフェニル)蟻酸、(p−ヒドロキシフェニル)蟻酸、(o−ヒドロキシフェニル)酢酸、(m−ヒドロキシフェニル)酢酸及び(p−ヒドロキシフェニル)酢酸が含まれる。
【0019】
いくつかの例では、ヒドロキシフェニル置換C1−C5カルボン酸は、金属塩の形態である。金属塩の金属は、これは説明のためであって限定するものではないが、例えば、周期表第1族の金属又は周期表第2族の金属であってよい。いくつかの例では、ヒドロキシフェニル置換C1−C5カルボン酸の金属塩の金属は、これらに限定するものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウムである。本明細書で述べる原則に従った特別な例では、ヒドロキシフェニル置換C1−C5カルボン酸の金属塩は、サリチル酸ナトリウムである。
【0020】
ハロゲン置換C1−C5カルボン酸は、少なくとも1つのハロゲン置換基又は2以上のハロゲン置換基又は3以上のハロゲン置換基を有するC1−C5カルボン酸である。いくつかの例では、ハロゲン置換基の数は、例えば、1〜4、又は1〜3、又は1〜2、又は2〜4、又は3〜4、又は2〜3である。いくつかの例では、ハロゲン置換基の数は、例えば、1又は2又は3又は4であってよい。ハロゲン置換基は、例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素の1以上であってよい。本明細書で述べる原則に従ったいくつかの例では、ハロゲン置換C1−C5カルボン酸は、これらに限るものではないが、例えば、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、2−クロロプロピオン酸、2,2−ジクロロプロピオン酸、2,2,2−トリクロロプロピオン酸、2,3−ジクロロプロピオン酸、2,3,3−トリクロロプロピオン酸、ブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、トリブロモ酢酸、2−ブロモプロピオン酸、2,2−ジブロモプロピオン酸、2,2,2−トリブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3,3−トリブロモプロピオン酸、ヨード酢酸、ジヨード酢酸、トリヨード酢酸、2−ヨードプロピオン酸、2,2−ジヨードプロピオン酸、2,2,2−トリヨードプロピオン酸、2,3−ジヨードプロピオン酸、2,3,3−トリヨードプロピオン酸であってよい。いくつかの例では、ハロゲン置換C1−C5カルボン酸は、金属塩の形態であってもよく、ここで、金属塩の金属は、ヒドロキシフェニル置換C1−C5カルボン酸の金属塩について上述したように、周期表第1族又は第2族から選ばれる。本明細書で述べる原則に従った特別な例では、ハロゲン置換C1−C5カルボン酸の金属塩は、トリクロロ酢酸ナトリウムである。
【0021】
本明細書で述べる原則に従った方法の例では、抗体及び非凝集免疫検定に供すべき試料は、上述のとおり、水性媒体(これは、水性緩衝媒体であってよい。)中の前処理剤と合一される。この媒体は、その中で非凝集免疫検定が、本明細書で述べる原則に従って、実施される媒体又は前処理法を実施するために使用される媒体である。水性媒体のpHは、通常、約4〜約11の範囲内、又は約5〜約10の範囲内、又は約6.5〜約9.5の範囲内である。
【0022】
所望のpHを達成し、そのpHを操作中維持するために種々の緩衝剤を使用することができる。緩衝剤の例には、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、トリス(tris)、バルビタール(barbital)等が含まれる。使用される具体的な緩衝剤は、決定的なものではなく、個々の検定において、或る緩衝剤又は他の緩衝剤を選んでよい。上述の方法において、種々の補助材料を使用することができる。例えば、緩衝剤のほかに、媒体は、その媒体のための、そして使用される試薬のための、安定剤を含有していてもよい。いくつかの実施態様において、これらの添加剤に加えて、例えば、アルブミン等のタンパク質、第4級アンモニウム塩、デキストランサルフェートのようなポリアニオン、及び結合促進剤が含まれていてもよい。上述の材料の全ては、所望の効果又は機能を達成するのに十分な濃度又は量で存在する。
【0023】
前処理剤は、非凝集検定の正確さを向上させるのに十分な量で使用される。前処理剤の量は、例えば、非凝集検定の特性、抗体試薬の特性、試料の量、試料中の被検体の量の予想される範囲、試料中に存在が推測される他の物質の量、並びに、代謝物及び/又はリン脂質の存在の1つ以上に依存する。いくつかの例では、検定媒体中の前処理剤の量又は濃度(重量%)は、例えば、約1〜約75%、又は約1〜約50%、又は約1〜約40%、又は約1〜約30%、又は約1〜約20%、又は約1〜約10%、又は約1〜約5%、又は約5〜約75%、又は約5〜約50%、又は約5〜約40%、又は約5〜約30%、又は約5〜約20%、又は約5〜約10%、又は約10〜約75%、又は約10〜約50%、又は約10〜約40%、又は約10〜約30%、又は約10〜約20%、又は約10〜約15%である。
【0024】
試験されるべき試料は、非生物学的試料であっても生物学的試料であってもよい。「非生物学的試料」は、生物学的物質に関連しない試料であり、例えば、土壌試料、水試料、空気試料、他の気体の試料及び鉱物試料を含む。用語「生物学的試料」は、例えば、体液、体組織、体化合物(body compound)、培地のようなあらゆる生物学的物質をいう。試料は、あらゆる源からの固体、半固体又は流体(液体又は気体)であってよい。いくつかの実施態様では、試料は、体排出物、体吸引物(body aspirant)、 体摘出物(body excisant)又は体抽出物(body extractant)であってもよい。「体」とは、通常、哺乳類のそれを言い、いくつかの実施態様では、体は人体である。体排出物は、例えば、尿、糞、便、膣粘液、精液、涙、呼気、汗、水疱液、炎症滲出物等の、体から排出された物質(これらは、摘出又は抽出によって得られたものであってもよい。)である。体摘出物は、例えば、皮膚、毛髪及び器官又は他の体部分からの生検を始めとする組織試料のような、体から摘出された物質である。体吸引物は、例えば、粘液、唾液及び喀痰のような、体から吸引された物質である。体抽出物は、例えば、全血、血漿、血清、せき髄液、脳せき髄液、リンパ液、関節液、腹水のような、体から抽出される物質である。
【0025】
検定に供される試料の量は、例えば、被検体の特性、検定の特性、検定を行なうための種々の試薬の特性及び被検体を含有する錯体の特性の1つ以上に依る。いくつかの例では、試料の体積は、例えば、約1μL〜約100μL、又は約2μL〜約100μL、又は約5μL〜約100μL、又は約10μL〜約100μL、又は約1μL〜約80μL、又は約1μL〜約60μL、又は約1μL〜約40μL、又は約1μL〜約20μL、又は約5μL〜約50μL、又は約10μL〜約50μLである。
【0026】
被検体は、対象物質又は検出し及び/又は定量すべき化合物又は組成物である。被検体は、これは説明のためであって限定するものではないが、例えば、治療薬物、依存性薬物、代謝物、殺虫剤、揮発性有機化合物、半揮発性有機化合物、非揮発性有機化合物、タンパク質、多糖類、汚染物質、毒素、脂質及び核酸、(DNA、RNA)を含む。
【0027】
代表的な薬物被検体は、これは説明のためであって限定するものではないが、例えば、アルカロイド、ステロイド、ラクタム、アミノアルキルベンゼン、ベンズ複素環化合物、プリン、マリファナから誘導される薬物、ホルモン、タンパク質を含むポリペプチド、免疫抑制剤、ビタミン、プロスタグランジン、3環系抗うつ剤、抗悪性腫瘍薬、ポリヌクレオシド及びポリヌクレオチドを始めとするヌクレオシド、ヌクレオチド、種々の個々の薬物(これには、メサドン、メプロバメート、セロトニン、メペリジン、リドカイン、プロカインアミド、アセチルプロカインアミド、プロプラノール、グリセオフルヴィン、ヴァルプロン酸、ブチロフェノン、抗ヒスタミン薬、クロラムフェニコール、抗コリン薬が含まれる。)並びに、上述の全てのものの代謝物及び誘導体を含む。
【0028】
用語「被検体」には、また、病態に関連する代謝物、ゲンタマイシン、カナマイシン、トブラマイシン及びアミカシン等のアミノグリコシド、例えば、ポリハロゲン化ビフェニル、リン酸エステル、チオフォスフェート、カルバンミン酸エステル及びポリハロゲン化スルフェンアミドのような殺虫剤並びにそれらの代謝物及び誘導体が含まれる。
【0029】
用語「被検体」は、また、2以上の、ポリペプチド及びタンパク質並びに多糖類及び核酸の組合せをも含む。そのような組合せは、例えば、バクテリア、ウイルス、クロモソーム、遺伝子、ミトコンドリア、細胞核及び細胞膜の成分を含む。タンパク質被検体は、例えば、免疫グロブリン、サイトカイン、酵素、ホルモン、がん抗原、栄養素マーカー及び組織特異的抗原である。そのようなタンパク質には、これは説明のためであって限定するものではないが、例えば、プロタミン、ヒストン、アルブミン、グロブリン、硬タンパク質、リンタンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リポタンパク質、核タンパク質、糖タンパク質、T−細胞受容体、プロテオグリカン、HLA、分類されていないタンパク質、例えば、ソマトトロピン、プロラクチン、インスリン、ペプシン、ヒト血漿中に見られるタンパク質、血液凝固因子、タンパク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、黄体刺激ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、組織ホルモン、サイトカイン、がん抗原、例えばPSA、CEA、フェトプロテイン、酸フォスファターゼ、CA19.9及びCA125、細胞特異的抗原、例えば、アルカリフォスファターゼ、ミオグロビン、CPK−MB及びカルシトニン、並びにペプチドホルモンが含まれる。関連する他の多量体物質は、ムコ多糖体及び多糖体である。上述したように、用語「被検体」は、更に、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド被検体、例えば、m−RNA、r−RNA、t−RNA、DNA、及びDNA−RNA二重鎖を含む。
【0030】
本明細書で述べる原則に従ったいくつかの例では、被検体は、免疫抑制薬であり、これは、非自己組織の移植片拒絶反応の防止を援助するために移植受容者に投薬される治療薬である。免疫抑制薬は、次のように分類することができる。即ち、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、抗体、イムノフィリンに作用する薬物、並びに、例えば、インタフェロン、アヘン剤INF結合タンパク、ミコフェノール酸及びFTY720等の他の薬物。免疫抑制薬の特別な分類には、イムノフィリンに作用する薬物が含まれる。イムノフィリンは、生理学的に重要な、高親和性の特異的結合タンパクである。現在、イムノフィリンの2つの別個のファミリー、シクロフィリン及びマクロフィリン、が知られており、後者は、例えばタクロリムス又はシロリムスに特異的に結合する。イムノフィリンに作用する免疫抑制薬には、例えば、シクロスポリン(シクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンG、シクロスポリンH、シクロスポリンIを含む)、タクロリムス(FK506,PROGRAF(登録商標))、シロリムス(ラパマイシン、RAPAMUNE(登録商標))及びエヴェロリムス(RAD、CERTICAN(登録商標))が含まれる。
【0031】
本明細書で述べる原則に従ったいくつかの例は、被検体を含有すると推測される試料中の被検体を測定する非凝集検定法に向けられている。非凝集検定において、試料、被検体の抗体を含有する抗体試薬、非凝集検定の正確さを向上させるのに有効な量の、ヒドロキシフェニル置換C1−C5カルボン酸及びハロゲン置換C1−C5カルボン酸の金属塩からなる群から選ばれる試薬を含有してなる配合物(combination)が媒体中に供給される。
【0032】
抗体試薬は、被検体の抗体、即ち、被検体に特異的に結合する抗体、を含有してなる。抗体試薬は、更に、1又はそれ以上の標識又は標識試薬を含有していてもよい。抗体試薬は、被検体の検知のために必要な薬剤を含む。標識は、通常、信号生成系(「sps」)の部分である。標識の特性は、特別な非凝集検定フォーマットに依存する。spsは、通常、1又はそれ以上の構成成分を含み、その少なくとも1成分は、結合し又は結合していない標識の量、即ち、検知されるべき被検体に結合し又は結合していない標識の量、又は、検知すべき被検体の量を反映する試薬に関連する検知可能な信号を発生する検知可能な標識である。標識は、信号を発生し又は信号を発生するように誘導され得るいかなる分子であってもよく、例えば、蛍光剤、放射標識、酵素、化学発光剤又は感光剤である。従って、信号は、場合により、酵素活動、発光、光吸収又は放射能等々を検知することによって、検知され又は測定される。
【0033】
適切な標識には、これは説明のためであって限定するものではないが、以下のものが含まれる。β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスフォターゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(「G6PDH」)及びホースラディッシュペルオキシダーゼのような酵素;リボザイム;QBレプリカーゼのようなレプリカーゼのための基質;プロモーター;染料;フルオレッセン、イソチオシアネート、ローダミン化合物、フィコエリトリン、フィコシアニン、o−フタルアルデヒド及びフルオレスカミンのような蛍光剤;半導体ナノクリスタル内に存在するCdSe及びZnSから合成される量子ドットとして知られている錯体のような錯体;例えばイソルミノール及びアクリジニウムエステルのような化学発光剤;増感剤;補酵素;酵素基質;
125I、
131I、
14C、
3H、
57Co及び
75Seのような放射性標識;ラテックス粒子、炭素粒子、磁性粒子を始めとする金属粒子、例えば二酸化クロム(CrO
2)粒子、等々の粒子;金属ゾル;微結晶質;リポソーム;細胞、等々。これらの標識は、更に、染料、触媒又は他の検知可能な基によって標識されていてもよい。適切な酵素又は補酵素は、特許文献1(Litmanら)の第19−28欄及び特許文献2(Boguslaskiら)の第10−14欄に開示されている。適切な蛍光剤及び化学発光剤は、特許文献1の第30及び31欄に開示されている。これらの内容は、参照により、本明細書に導入される。
【0034】
標識は、信号を直接生成してもよく、従って、信号を生成するための追加の構成成分は、必要とされない。非常に多くの有機分子、例えば蛍光剤、は、紫外光及び可視光を吸収することができ、ここで、光吸収はこれらの分子にエネルギーを伝達し、これらの分子を励起エネルギー状態に高める。この吸収されたエネルギーは、その後、第二の波長における発光により、消失する。信号を直接生成する他の標識には、放射性同位元素及び染料が含まれる。
【0035】
或いは、標識は、信号を生成するための他の構成成分を必要としてもよい。このとき、信号生成系は、測定可能な信号を生成するのに必要な全ての構成成分を含む。そのような他の構成成分には、基質、補酵素、賦活剤、追加の酵素、酵素生成物と反応する物質、触媒、活性化剤、補因子、禁止剤、捕捉剤、金属イオン、及び信号生成物質の結合のために必要とされる特異的結合物質が含まれる。適切な信号生成系についての詳細な議論は、特許文献3(hら)の第11−12欄に見出すことができる。これらの内容は、参照により、本明細書に取り込まれる。
【0036】
標識及び他のsps要素は、支持体に結合されていてもよい。被検体誘導体及び被検体類似物も、結合が抗体と結合する能力を実質的に阻害しない限り、当技術分野で知られている任意の固体支持体に結合されていてもよい。いくつかの実施態様において、被検体又は被検体類似体は、固相に被着されていてもよく、直接に共有結合的に固相に結合されていてもよく、また、血清アルブミン又は免疫グロブリン等のタンパク質を始めとするポリ(アミノ酸)や例えばデキストラン、デキストラン誘導体等の多糖類(炭水化物)のごとき、1以上の担体分子の層を有していてもよい。固体支持体と被検体類似体とを共有結合的に結合するために連結基を用いてもよい。被検体誘導体を結合する他の方法を用いてもよい。例えば、固体支持体は、小分子、例えばアヴィジンや抗体、のための結合剤で被着していてもよく、ビオチンやハプテンのような小分子が被検体誘導体に結合していてもよく、また、その逆でもよい。支持体の表面の構成成分の結合は、直接でも間接でもよく、共有結合的でも非共有結合的でもよく、特許文献で一般的に利用可能な周知の技術で達成することができる。例えば、非特許文献1を参照。
【0037】
支持体は、有機又は無機の、固形の又は流動性の、水不溶性の材料で構成されていてよく、透明であっても部分的に透明であってもよい。支持体は、ビーズを始めとする粒子、フィルム、膜、チューブ、くぼみ(well)、細片、棒、平板や紙等の平面、又は繊維を始めとする多数の形状のいずれをも取り得る。検定の種類により、支持体は、それが使用されている媒体中に懸濁可能であってもなくてもよい。懸濁可能な支持体の例は、これらに限られないが、ラテックス、脂質二重層又はリポソーム、油滴、細胞及びハイドロゲル、並びに磁性粒子等の重合体材料である。他の支持体組成物には、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン及びポリ(ビニルブチレート)等のポリマーが含まれ、これらは、それらのみで使用してもよく、他の材料と一緒に使用してもよい。
【0038】
支持体は、粒子であってもよい。粒子は、約0.02μm以上、約100μ以下の平均直径を有しているのがよい。いくつかの実施態様では、粒子は、約0.05μm〜約20μm又は約0.3μm〜約10μmの平均直径を有している。粒子は、有機又は無機の、膨張可能な又は膨張不可能な、多孔性の又は非多孔性で、好ましくは水に近い、一般的に約0.4g/mL〜約0.7g/mLの密度を有しており、透明、部分的に透明又は不透明な材料で構成されている。粒子は、細胞や、例えば、赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、又は大腸菌、ウイルス等の微生物のような生物学的材料であってよい。粒子は、例えば、有機又は無機のポリマー、リポソーム、ラテックス粒子、磁性粒子又は非磁性粒子、リン脂質小胞、カイロミクロン、又はリポタンパク質で構成されていてよい。いくつかの例では、粒子は、二酸化クロム(クロム)粒子又はラテックス粒子である。
【0039】
ポリマー粒子は、付加重合体又は縮合重合体から形成されていてよい。粒子は、水性媒体に容易に分散することができ、直接又は結合基を介して間接的に被検体類似物へ接合できることができるように、吸着性であってもよく官能化可能であってもよい。粒子は、天然に存在する材料、天然に存在する材料を合成的に修飾したもの、合成材料から誘導することができる。特別に重要な有機ポリマーとしては、例えば以下のものが挙げられる。多糖類、例えばSEPHAROSE(登録商標)として入手可能なアガロース、SEPHADEX(登録商標)及びSEPHACRYL(登録商標)として入手可能なデキストランのような特別に架橋した多糖類、セルロース及びでんぷん;付加ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、アクリレート及びメタクリレートの誘導体、特に遊離のヒドロキシ官能性を有するエステル及びアミド、の単独重合体及び共重合体。
【0040】
標識及び/又は他のspsメンバーは、sbpメンバー又は他の分子に結合していてもよい。例えば、標識は、sbpメンバー、例えば、抗体、抗体の受容体、抗体に接合した小分子に結合することができる受容体又は配位子(被検体)類似物、に共有結合的に結合していてよい。標識のsbpメンバーへの結合は、標識の水素原子をsbpメンバーへの結合で置き換える結果となる化学反応によって達成してもよく、標識とsbpメンバーとの間の連結基を含んでいてもよい。他のspsメンバーも、また、共有結合的にsbpメンバーに結合していてもよい。例えば、蛍光剤及びクエンチャーのような2つのspsメンバーは、それぞれ、被検体と特異的な錯体を形成する異なる抗体に結合していてもよい。錯体の形成は、蛍光剤とクエンチャーとを近接させ、その結果、クエンチャーが蛍光剤と相互作用して信号を生成することを可能にする。接合の方法は、当技術分野で周知である。例えば、特許文献4(Rubinsteinら)(参照により、本明細書に取り入れる。)を参照のこと。
【0041】
標識タンパク質として特に重要な酵素は、レドックス酵素、特に、例えばグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ及びラクテートデヒドロゲナーゼのような、デヒドロゲナーゼ、並びに、過酸化水素の生成及び染料前駆体を染料に酸化するための過酸化水素の使用に関与する酵素である。特別な配合物には、過酸化水素を染料前駆体の酸化に使用する酵素、即ち、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ又はミクロペルオキシダーゼと結合した、グルコースオキシダーゼやガラクトースオキシダーゼのようなサッカライドオキシダーゼ又はウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼのようなヘテロサイクリックオキシダーゼが含まれる。補足的な配合物は、当技術分野で公知である。単一の酵素が標識として使用されるとき、他の酵素は、ヒドロラーゼ、トランスフェラーゼ及びオキシド、レダクターゼとして、好適には、アルカリフォスファターゼ及びβ−ガラクトシダーゼのようなヒドロラーゼとして、使用される。或いは、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼルシフェラーゼのようなルシフェラーゼを使用してもよい。
【0042】
使用される補酵素の例としては、例えば、NAD[H]、NADP[H]、ピリドキサルフォスフェート、FAD[H]、FMN[H]が含まれ、これらは、環化反応に関与する補酵素である。例えば、特許文献5参照。この公報の開示を参照により、本明細書に取り入れる。
【0043】
例えば酵素のような標識タンパク質に関し、重量平均分子量の範囲は、約10,000〜約600,000、又は約10,000〜約300,000である。通常、例えば、約200,000分子量について少なくとも約1、約150,000分子量について少なくとも約1、又は約100,000分子量について少なくとも約1、又は約50,000分子量について少なくとも約1の被検体類似物が存在する。酵素の場合には、被検体類似物群の数は、例えば、約1〜約20、約2〜約15、又は約6〜約10である。
【0044】
用語「非ポリ(アミノ酸)標識」には、タンパク質(即ち、酵素)ではない標識が含まれる。非ポリ(アミノ酸)標識は、直接的に又は検知可能な信号を生成する特異的な結合反応によって間接的に、検知される。非ポリ(アミノ酸)標識には、例えば、放射性同位体、発光化合物、例えば粒子、板、ビーズ等の支持体、ポリヌクレオチド、等々が包含される。より詳細には、非ポリ(アミノ酸)標識は、同位体であっても非同位体であってもよく、通常、非同位体であるが、触媒、プロモーター、染料、補酵素、酵素基質、放射性基、(ビオチン、蛍光分子、化学発光分子等々を始めとする)小有機物分子をコードするポリヌクレオチド、増幅可能なポリヌクレオチド配列、例えば、ラテックス若しくは炭素粒子又は二酸化クロム(クローム)粒子、金属ゾル、微結晶質、リポソーム、細胞等の支持体であってよい。これらは、更に、例えば、染料、触媒又は他の検知可能な基で、標識されてもよい。
【0045】
本明細書で述べる原則に従ったいくつかの例、例えば、免疫抑制薬被検体、では、試料と抗体試薬との結合に先立って又は抗体試薬、試料及び前処理剤の結合に際して、
遊離剤(releasing agent)を使用してもよい。
【0046】
遊離剤は、内因性結合部位から、被検体を置き換える。いくつかの実施態様では、遊離剤は、内因性結合タンパク質に対して高い親和性を有しているので、被検体を容易に置き換え、そして、いくつかの例では、その内因性結合タンパク質の代謝物をも置き換える。更に、遊離剤は、検定に用いられる被検体の抗体に対して、何ら有意な程度には結合しない。「何ら有意な程度には結合しない」とのフレーズは、結合の程度が、被検体の正確な検定を実施するために、十分に低いということを意味する。遊離剤は、検定検体に何らの結合を引き起こすことなく所望の置換結果を達成することができるいかなる部位であってもよく、単独の化合物でも化合物の混合物であってもよい。
【0047】
いくつかの例では、遊離剤は、構造類似体を始めとする被検体の類似体であってよい。被検体類似体である遊離剤は、結合タンパク質から類似の被検体を置換することができるが、被検体の抗体のような受容体に対して、何ら実質的な程度には、競合しない修飾された薬物である。修飾は、被検体類似体を他の分子に連結する手段を提供する。被検体類似体は、ハブ又は標識に被検体類似体に連結させる結合で水素を置換した以上に、被検体通常、とは異なっているが、それは、必須ではない。被検体類似体は、例えば、例えば連結基により他の分子に接合していてもよい。ヒドロキシ又はカルボン酸官能基を含有する被検体について、遊離剤は、検知すべき被検体よりも、内因性結合タンパク質に対して高い結合親和性を有し、被検体の抗体に対して何らの有意の親和性を示さない被検体のエステルであってよい。例えば、シロリムスの測定にあたって、シロリムスのエステルを、それが上述の要求に合致する限り、遊離剤として用いてもよい。非遊離剤被検体類似体は、被検体の抗体に結合するための対応被検体と競合する修飾被検体であるということに、留意すべきである。
【0048】
構造類似体は、被検体の類似体と同一の又は類似の結果を生じる、被検体と同一の又は類似の構造特性又は空間特性を有する部分である。構造類似体は、例えば、被検体と関連する他の化合物であってよい。例えば、上述のように、シロリムスの測定にあたって、タクロリムスのエステルを、遊離剤として使用してもよく、或いは、タクロリムスの測定にあたって、シロリムスを遊離剤として使用してもよい。エステルは、例えば、カルバミン酸エステル、炭酸エステル、又は例えばC1〜C6カルボン酸のエステルであってよい。例えば、特許文献6を参照せよ。この明細書の関連する開示を、参照により、本明細書に取り入れる。遊離剤の他の例としては、例えば、シクロスポリンAについての[Thr2,Leu5,D−Hiv8,Leu10]−シクロスポリンA、シロリムスについてのFK506、FK506についてのシロリムスが挙げられる。例えば、特許文献6を参照せよ。この明細書の関連する開示を、参照により、本明細書に取り入れる。
【0049】
いくつかの実施態様においては、遊離剤は、被検体が捕らわれている細胞膜を破壊する試薬であってよい。例えば、赤血球に捕らわれている被検体は、溶血剤を使用することにより、赤血球から解放することができる。溶血剤は、赤血球の膜の完全性を破壊し、それにより、細胞の細胞内含有物、特に赤血球、を遊離させる化合物又は化合物の混合物である。当技術分野において、数多くの溶血剤が知られている。溶血剤には、例えば、非イオン性洗剤、アニオン性洗剤、両性洗剤、低イオン強度の水溶液(低張液)、抗菌剤、補体依存性溶解を引き起こす抗体、等々が含まれる。非イオン性洗剤は、溶血剤として使用される非イオン性洗剤には、合成洗剤及び天然洗剤の両方が含まれる。合成洗剤の例には、TRITON(登録商標)X−100、TRITON(登録商標)N−101、TRITON(登録商標)X−114、TRITON(登録商標)X−405、TRITON(登録商標)SP−135、TWEEN(登録商標)20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、TWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、DOWFAX(登録商標)、ZONYL(登録商標)、ペンタエリスリチル パルミテート、ADOGEN(登録商標)464、ALKANOL(登録商標)6112 界面活性剤、アリルアルコール、1,2−ブトキシレート−ブロック−エトキシレート HLB 6、BRIJ(登録商標)、エチレンジアミンテトラキス(エトキシレート−ブロック−プロポキシレート)テトラオール、IGEPAL(登録商標)、MERPOL(登録商標)、ポリ(エチレングリコール)、2−[エチル[(ヘプタデカフルオロオクチル)スルフォニル]アミノ]エチルエーテル、ポリエチレン−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、TERGITOL(登録商標)NP−9、GAFAC(登録商標)(RHODAFAC(登録商標)、例えば、アルファ−ドデシル−オメガ−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)フォスフェート)及びEP110(登録商標)等のアルキルポリオキシエチレングリコールフォスフェートエステル等が含まれる。溶血剤として使用し得る天然由来の洗剤には、例えば、サポニン、ナトリウム又はカリウムで中和した脂肪酸、中和リン脂質、ジアシルグリセロール、中和フォスファチジルセリン、フォスファチジン酸エステル、中和したフォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルコリン、胆汁塩、エステル化していないコレステロール、中和スフィンゴシン、セラミド等が、含まれる。1又はそれ以上の合成洗剤又は1又はそれ以上の天然由来の洗剤の配合物並びに合成洗剤及び天然由来の洗剤の配合物も、使用することができる。
【0050】
本発明の実施態様において使用し得る他の遊離剤には、例えば、少量の有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール及びDMSO;並びに、例えばプロテアーゼ、トリプシン、ペプシン、ペプチダーゼ等のタンパク質消化を行なう薬剤;等が含まれる。
【0051】
媒体中の遊離剤の濃度は、上述のように、内因性結合部位から被検体を置換して被検体及び場合により被検体代謝物を被検体の抗体に接近して結合し得るようにするという所望の結果を達成するに十分な濃度である。使用される遊離剤の量又は濃度は、例えば、試料の性質、被検体の性質、薬物代謝物の性質、他の薬剤成分の性質及び反応条件の1つ又はそれ以上に依存する。いくつかの実施態様においては、媒体中の遊離剤の量は、例えば、約0.000001%〜約0.5%、約0.0001%〜約0.4%、約0.001%〜約0.3%、約0.01%〜約0.2%、約0.1%〜約0.3%、約0.2%〜約0.5%、約0.1%〜約0.2%である。%は、重量/体積%である。
【0052】
例えば、免疫抑制薬のような被検体については、例えば洗剤のような溶解剤を用いてもよい。洗剤は、免疫抑制剤を、水性検定混合物中において、水とより混和し易くし、従って、検定抗体のような検定測定薬剤が、免疫抑制剤により接近できるようにする。いくつかの例では、薬物がリポタンパク粒子又は他の型のリポソーム中に拡散するのを防止することのできる洗剤が用いられる。例えば、PLURONIC(登録商標)洗剤は、薬剤がリポタンパク錯体の核の中に拡散するのを防止するために、タクロリムス検定に用いられる洗剤である。
【0053】
本明細書に記載する原則に従う方法において、1又はそれ以上のインキュベーション期間が採用される。インキュベーション期間は、上述の種々の薬剤の添加の間のいかなる間隔をも含む1又はそれ以上の間隔で媒体に適用される。媒体は、通常、実施しようとする機能、例えば、遊離剤による処理、前処理剤による処理、試薬の種々の成分の結合、例えば、被検体への抗体の結合、が生じるのに十分な温度で十分な時間インキュベートされる。通常、インキュベーションを実施するのに適度な温度が採用される。本発明の方法は、発明の1又はそれ以上のステップのためのインキュベーション時間を含む。例えば、インキュベーション期間は、例えば、遊離剤と試料との1又はそれ以上の結合、前処理剤と試料及び抗体試薬との結合、前処理剤と試料、抗体試薬及び固相試薬との結合に、適用される。いくつかの例では、媒体は、被検体の抗体を、試料中に存在すると推測される被検体に、結合させる条件下で、インキュベートされる。これについては、以下により詳細に議論する。
【0054】
インキュベーション期間の長さ及び条件は、例えば、試薬の性質及び濃度、被検体の性質並びに被検体の想定される濃度の1又はそれ以上に依る。いくつかの実施態様では、インキュベーション時間は、例えば、約5℃〜約99℃、又は約15℃〜約70℃、又は約20℃〜約45℃である。インキュベーション時間は、媒体の温度並びに反応速度又は種々の試薬の結合の速度の1つ又はそれ以上に依る。インキュベーションの期間は、例えば、約0.2秒〜約24時間、又は約1秒〜約6時間、又は約2秒〜約1時間、又は約1分〜約15分である。
【0055】
それが存在するとして、被検体に被検体の抗体を結合させるインキュベーション期間に引き続いて、媒体は、被検体及び被検体の抗体を含んでなる錯体の存在について、試験される。錯体の存在及び/又は量は、試料中の被検体の存在及び/又は量を指示する。「被検体の抗体を含んでなる錯体」というフレーズは、被検体の抗体が、1又はそれ以上の被検体であってもよく又は試料中の被検体の抗体に結合する他の物質であってもよい、1又はそれ以上の物質に結合している錯体をいう。
【0056】
多くの実施態様において、媒体の試験は、媒体からの信号に関する。信号の存在及び/又は量は、試料中の被検体の存在及び/又は量に関連する。検知の特別なモードは、spsの性質による。上記で議論したように、外部手段により、望ましくは視覚的試験により、検知可能な信号を、spsの標識が発生する数多くの方法があり、これらには、例えば、電磁放射線、電気化学、熱、放射能検出及び化学試薬が含まれる。
【0057】
信号の存在及び/又は量の試験は、また、信号の検知を含むが、これは、一般的に、単に信号を読み取るステップである。信号は、通常、機器を用いて読み取られ、機器の性質は、信号の性質に依存する。機器は、分光光度計、蛍光光度計、吸光度計、照度計、化学発光計、光量計、写真機器、等を含む。検出された信号の存在及び量は、検定が正確な測定をなす限り、試料中に存在する被検体の存在及び量に関連する。測定中の温度は、一般に、例えば、約10℃〜約70℃、又は約20℃〜約45℃、又は約20℃〜約25℃である。1つのやり方として、濃度既知のスクリーニングすべき被検体を用いて、標準曲線が形成される。ここで議論するように、キャリブレーター及び他の制御機器を使用してもよい。
【0058】
「被検体の量を測定する」というフレーズは、被検体の定量的、半定量的及び定性的測定を指す。方法は、定量的でも、半定量的でも、そして定性的でもよく、被検体を測定する他の全ての方法が、被検体の量を測定する方法と考えられる。例えば、被検体を含有すると考えられる試料中の被検体の存在又は不存在を検出するに過ぎない方法も、上記フレーズの範囲に包含されると考えられる。「検出する」及び「測定する」の語は、測定についての他の一般の同意語と同様に、本発明の範囲内にあると意図される。
【0059】
[被検体の非凝集検定についての一般的説明]
本明細書で述べる原則に従った被検体の測定のためには、適切な非凝集検定であれば、いかなるものであってもよい。検定は、上述のように、試料について、前処理に引き続いて直ちに実施してもよく、また、その後のある時点で実行することもできる。従って、特定の検定は、連続的に実施しても、同時に実施してもよい。検定は、個々の試料を試料中の被検体の量を測定するための試薬と合一することによって実施される。試薬の性質は、実行すべき検定の特定の型に依存する。一般に、検定は、試料中の被検体の量を測定するための方法である。以下に種々の検定方法を記述するが、これらは説明のためであって、限定を意図するものではない。
【0060】
検定は、試料を含有する媒体に、試料中の被検体の濃度を測定するための試薬を、添加する工程を有する。免疫検定法については、試薬は、被検体又は類似のsbpメンバーに対する少なくとも1つの抗体を含有する。被検体の抗体を含有する錯体の量が測定され、錯体の量が試料中の被検体及び他の物質の濃度に関連付けられる。
【0061】
採用される非凝集免疫検定の1つの群には、限定された濃度の抗体を用いる非凝集免疫検定が含まれる。非凝集検定のもう1つの群には、1つ又はそれ以上の主試薬の過剰、例えば被検体に対する抗体の過剰、の使用が関連する。非凝集検定のもう1つの群は、分離のない均質検定であり、この検定では、標識された試薬が被検体−抗体結合反応に対する標識信号を調節する。非凝集検定のもう1つの群は、問題の多い標識化ハプテン類の使用を避ける、標識された抗体試薬で限定された被検体の競合検定である。この型の検定においては、固相に固定化された被検体が一定の限定量で存在する。固定化被検体と遊離の被検体との間の標識の分配は、試料中の被検体の濃度に依存する。
【0062】
免疫検定で使用される被検体に特異的な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよい。そのような抗体は、当技術分野においてよく知られている、ホストの免疫化及び血清の収集(ポリクローナル)、又は連続ハイブリッドセルラインを準備し分泌されたタンパク質を収集する方法(モノクローナル)、又は、少なくとも天然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列又はその突然変異誘発されたバージョンのクローニング及び発現等の技術を用いて準備される。
【0063】
抗体は、完全な免疫グロブリン又はその断片を含み、この免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3、IgM等の種々の種類及びアイソタイプが含まれる。それらの断片には、Fab、Fv及びF(ab’)
2、Fab’等が含まれる。更に、特別な分子に対する結合親和性が維持される限り、適切であれば、凝集体、ポリマー、免疫グロブリンの接合体又はそれらの断片も使用することができる。
【0064】
上記で議論したように、例えば被検体の免疫検定に使用するために選定された抗体は、他の代謝物又は関連する物質に対してよりも、被検体(及び、必要ならば又は要求されるならば、その薬学的活性な代謝物)に対して、特異的にそして優先的に、結合しなければならない。他の試薬は、実行すべき検定の性質に依存して、検定媒体に含まれる。
【0065】
上述のように、非凝集免疫検定には、標識化試薬が関与する。非凝集標識化免疫検定には、これらに限定するものではないが、例えば、酵素免疫検定、蛍光偏光免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、阻害アッセイ、誘起発光、蛍光酸素チャネリングアッセイが含まれる。
【0066】
いくつかの実施態様では、均質非凝集免疫検定を採用することができる。そのような検定は、基本的にパーティションフリーな免疫検定とも呼ばれる。現在の方法は、全自動化均質検定に用いられているが、この検定では、検定に先立って、被検体代謝物を始めとする試料中の他の構成成分からの被検体の抽出又は分離は、行なわれない。「非手動抽出」検定においては、全血試料等の試料は、例えば有機溶媒中への抽出なしに、適切な媒体中でその被検体について検定を実施するための試薬と合一され、検定方法が実行される。
【0067】
検定は、検定構成成分又は生成物を分離せずに(均質)又は分離して(不均質)実施することができる。均質免疫検定は、特許文献4の第3欄第6行〜第6欄第64行に開示されているEMIT(登録商標)検定(カリフォルニア州、サンノゼ、Syva社);特許文献7(Ullmanら)の第17欄第59行〜第23欄第25行に開示されているような免疫蛍光法;特許文献8(Maggioら)の第6欄第25行〜第9欄第63行に開示されているような酵素チャネリング免疫検定(enzyme channeling immunoassay「ECIA」);例えば、中でも特許文献9に開示されている蛍光偏光免疫測定法(fluorescence polarization immunoassay「FPIA」);等に例証されている。
【0068】
他の酵素免疫検定は、非特許文献2で議論されている酵素調節媒介免疫検定(enzyme modulate mediated immunoassay);非特許文献3に開示されている基質標識化蛍光免疫検定(substrate labeled fluorescence immunoassay「SLFIA」);非特許文献4に開示されている結合酵素ドナー免疫検定(combined enzyme donor immunoassay「CEDIA」);粒子増強比濁阻害免疫検定(particle enhanced turbidimetric inhibition immunoassay「PETINIA」)粒子増強比濁免疫検定(particle enhanced turbidimetric immunoassay「PETIA」)等の均質粒子標識化免疫検定;等々である。
【0069】
その他の検定には、ゾル粒子免疫検定(「SPIA」);分散染料免疫検定(「DIA」);金属免疫検定(「MIA」);酵素膜免疫検定(「EMIA」);発光免疫検定(「LIA」);固相として常磁性粒子を用いるアクリジニウムエステル標識免疫検定(ADVIAケンタウロス(Centaur)免疫検定)等々が含まれる。他の型の検定には、抗体固定化表面に被検体が結合する際の光学的、音響的及び電気的特性の変化の監視が関与するイムノセンサーアッセイがある。そのようなアッセイには、例えば、光学的イムノセンサーアッセイ、音響的イムノセンサーアッセイ、半導体イムノセンサーアッセイ、電気化学的トランスデューサーイムノアッセイ、電位差イムノアッセイ、及び電流測定電極アッセイが含まれる。
【0070】
ある実施態様では、酵素接合体の酵素に加えて第二の酵素を使用してもよい。この酵素対の酵素は、第一の酵素の生成物が第二の酵素の基質として機能する点で関連している。
【0071】
1つの実施態様では、アッセイは、誘起発光イムノアッセイであり、これは、特許文献11(Ullmanら)に記載されている。この特許の開示を参照により、本明細書に取り込む。1つのアプローチでは、アッセイは、感光剤を導入した粒子及び化学発光化合物を導入した標識粒子を使用する。標識粒子は、被検体の量に関連して、sbpメンバーに接合する。例えば、被検体に結合できる被検体の抗体に接合して錯体を形成し、又は第二のsbpメンバーに結合して錯体を形成する。もし、被検体が存在すれば、感光剤及び化学発光化合物が近接する。2つの標識が近接したときに、感光剤は一重項酸素を発生し、化学発光化合物を活性化する。活性化された化学発光化合物は、次いで、光を生じる。生成される光の量は、被検体の抗体を含有する形成される錯体の量に関連する。
【0072】
更に説明すると、化学発光粒子が使用されるが、化学発光粒子は、導入又は付着等により導入された化学発光化合物を含有する。被検体に結合するsbpメンバー、例えば被検体の抗体、は、その粒子を被覆している多糖類に結合する。被検体に結合する第二のsbpメンバーは、ビオチン接合体の一部である。ストレプトアヴィジンは、感光剤が付着した第二のセットの粒子に接合している。ストレプトアヴィジンのこの第二のセットの粒子(感光剤粒子)への結合は、粒子状の多糖類が関与してもしなくてもよい。化学発光粒子は、被検体を含有すると推測される試料の個々の部分と又は感光剤粒子と混合される。反応媒体は、インキュベートされて、sbpメンバーの被検体への結合により、粒子を被検体に結合させる。次いで、媒体は光照射されて感光剤を励起させ、感光剤は、励起状態で酸素を一重項状態に活性化することができる。粒子のセットの1つの化学発光化合物が、該物質及び/又は被検体の存在により、今や、感光剤の直近に存在するので、一重項酸素により活性化されて化学発光する。次に、媒体の化学発光又は発光の量が測定され、その存在が、被検体の抗体に結合する物質の量又は被検体の量に関係づけられる。
【0073】
被検体の測定に採用できるアッセイのもう1つの例が特許文献12(Davalianら)で議論されており、そこには、蛍光酸素チャネリングイムノアッセイが記述されている。
【0074】
アッセイの形式のもう1つの実施態様は、キャプチャアッセイである。このアッセイ形式においては、被検体の抗体は、磁性粒子に共有結合で結合している。試料はこれらの粒子とともにインキュベートされ、被検体の抗体を、被検体及び/又は試料中のやはり抗体に結合している被検体以外の物質に、結合させる。次に、被検体又は被検体の誘導体を、共有結合で付着させた酵素が磁性粒子とともに、インキュベートされる。洗浄ののち、磁性粒子に結合している酵素の量が測定され被検体の抗体を含有してなる錯体の量に、逆に関連付けられる。或いは、上澄み液の中の酵素の量が測定され、被検体の抗体を含有してなる錯体の量に直接関係づけられる。
【0075】
上述のアッセイは、一般的に最適のアッセイ感度が得られ採用されたアッセイに干渉しない適度なpHの緩衝水性媒体で、通常、実行される。アッセイ媒体のpHは、通常約4〜約11、又は約5〜約10、又は約6.5〜約9.5の範囲内である。pHは、通常、特定の結合対の結合メンバーの最適の結合、信号生成系のメンバー等のアッセイの他の試薬に最適のpH、等々の妥協物である。
【0076】
所望のpHを達成し、そのpHを、測定の間中、維持するために、種々の緩衝剤を用いてもよい。緩衝剤の例としては、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、トリス、バルビタール等が挙げられる。使用する特定の緩衝剤は、臨界的ではないが、個々のアッセイにおいて、1つ又は他の緩衝剤が好ましい。上述の方法において、種々の補助材料を使用してもよい。例えば、緩衝剤に加えて、媒体は、使用する媒体や試薬のための安定剤を含んでいてよい。いくつかの実施態様では、これらの添加物に加えて、アルブミン等のタンパク質;第4級アンモニウム塩;硫酸デキストラン等のポリアニオン;結合強化剤;等を含有していてもよい。これら上述の材料の全ては、所望の効果又は機能を達成するのに十分な濃度又は量で存在する。
【0077】
上述のとおり、媒体には、1又はそれ以上のインキュベーション期間が、1又はそれ以上の間隔で(この間隔には、上述の種々の試薬を添加する間隔も含まれる。)、適用される。インキュベーション期間の条件は、上述した。
【0078】
アッセイすべき被検体の濃度は、一般に約10
−5〜約10
−17M、又は10
−6〜約10
−14Mで変化する。アッセイが(試料中に存在する被検体の量に関して)定性的か、半定量的か又は定量的か、特別な検知技術及び被検体の濃度等を考慮することにより、通常、種々の試薬の濃度が決まる。
【0079】
アッセイ媒体中の種々の試薬の濃度は、一般に、例えば、被検体の関心のある濃度、アッセイの性質、抗体親和性及び結合活性並びに抗体断片によって決定される。しかしながら、各試薬の最終濃度は、通常、経験的にアッセイ感度を範囲に亘って最適化するように決められる。即ち、重要な被検体の濃度の変化により、正確に測定可能な信号の差異が与えられるべきである。通常、信号生成系の性質及び被検体の性質を考慮することにより、種々の試薬の濃度が決まる。
【0080】
添加の順序は、広範に変化させうるが、非凝集アッセイの性質により、或る優先順位が存在する。最も簡単な添加の順序は、全ての材料を同時に添加し、アッセイ媒体の信号に対する効果を均質アッセイにおけるように決定する。或いは、試薬を連続的に合一することもできる。所望により、上述のように、各添加に引き続いて、インキュベーション工程を関与させることも可能である。
【0081】
[免疫抑制薬の決定のための非凝集免疫検定の具体例]
以下の具体例は、説明のためであって、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、一般的に被検体の、そして、特に免疫薬の検出に適用できるので、免疫抑制薬としてのタクロリムス又はシロリムスの選択も、また、説明のためであって、限定のためではない。
【0082】
分析すべき試料は、1又はそれ以上の免疫抑制薬被検体を含有することが推測される試料である。これらの例において、試料は、未分画の血液である全血又は赤色細胞及び血漿の両方を含有する血液である。試料を1又はそれ以上の遊離剤で処理して、内因性結合物質から免疫抑制薬被検体を遊離させた。この例における免疫抑制薬について、遊離剤は、上述のように、赤血球から免疫抑制薬を遊離させるための1又はそれ以上の溶解剤及び溶血剤を含有していてもよい。使用した溶解剤及び/又は溶血剤の性質及び量又は濃度は、上述のとおりである。試料及び抗体試薬も、また、上述のように、前処理剤で処理をしたが、この処理は、別個のステップとして実施してもよく、或いは、前処理剤は、1又はそれ以上の遊離剤とともに媒体中に含まれていてもよい。このようにして、上述のもの全てが、同時に媒体中に同時に合一され、又は1又はそれ以上の上述の試薬が、上述のように、連続して、種々の濃度で、添加されてもよい。媒体は、また、当技術分野で知られている1又はそれ以上の防腐剤を含有していてもよい。
【0083】
1つの実施例では、FK506エステルを含有する1又はそれ以上の遊離剤による処理の後、アッセイ媒体中にタクロリムスを含有することが推測される試料が、タクロリムス接合体、即ち、例えば、ビオチンに付着したタクロリムス類似体、と混合された。試料がインキュベートされて、試料のタクロリムスを、タクロリムスの類似体との競合下に、タクロリムスの抗体に結合させた(ここで、抗体は、タクロリムス又はタクロリムスの類似体に結合することができる。)。媒体も、また、上述のとおり、前処理剤としてのサリチル酸ナトリウムを含んでいる。適切な洗浄緩衝液でリンスしたのち、酵素に接合したストレプトアヴィジン又はアヴィジン、蛍光又は化学発光分子又は放射性部分からなる検出分子を媒体に添加してもよく、その後、媒体について、信号の量を検査する。信号の量は、試料中のタクロリムスの量に関連している。
【0084】
もう1つの実施例では、採用される非凝集イムノアッセイは、上述の誘起発光アッセイである。誘起発光アッセイのいくつかの実施態様(これは説明のためのものであって限定のためのものではないが)では、試薬は2つのラテックスビーズ試薬及びビオチン化抗タクロリムスマウスモノクローナル抗体を含む。第一のビーズ試薬は、タクロリムス又はタクロリムス類似体で被覆されており、化学発光染料を含有する。第二のビーズ試薬は、ストレプトアヴィジンで被覆されており、感光剤染料を含有する。タクロリムスを含有すると推測される試料と抗体とを含有する媒体が、上述のとおり、前処理剤としてのトリクロロ酢酸で処理される。このとき、媒体は、試料中の内因性結合物質からタクロリムスを遊離させるための、FK506を始めとする1又はそれ以上の遊離剤を含んでいてもよい。アッセイを実行した後、結果として生じる化学発光シグナルが612nmで測定され、それは、タクロリムス抗体に結合する試料中のタクロリムスの濃度の逆関数であった。
【0085】
本明細書で述べる原則に従うもう1つの特別な実施例では、ACMIA(Affinity Chromium dioxide Mediated Immuno Assay:親和性二酸化クロム媒介イムノアッセイ)として知られているアッセイ形式が関与する。ACMIAアッセイ形式では、シロリムス又はシロリムス類似体で被覆されたクローム粒子が第一の成分として使用される。第二の成分は、シロリムスの抗体である。この抗体は、レポーター酵素(例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ)に架橋されているが、過剰量で、即ち、試料中に存在するかもしれない被検体の全てに結合するのに必要な量よりも多い量で、反応容器に添加される。上述の前処理剤としてのサリチル酸ナトリウム及びタクロリムスエステルを始めとする1又はそれ以上の遊離剤による処理ののち、シロリムスを含有することが推測される試料及び抗体−酵素接合体を含有してなる媒体がインキュベートされ、シロリムス被検体を抗体に結合させる。次に、クローム粒子試薬が添加され、いかなるものであれ、過剰に存在する抗体−酵素接合体を結合する。次いで、磁石が適用され、これが全てのクローム粒子及び過剰の抗体−酵素接合体を、懸濁液から引き出し、そして、上澄み液が最終的な反応容器に移される。レポーター酵素の基質が最終反応容器に添加され、酵素活性が、時間に亘る吸光度の変化として、分光学的に測定される。信号の量は、試料中のシロリムスの量に関係する。
【0086】
サンドイッチアッセイ形式では、例えば、抗タクロリムス抗体で被覆されたクローム粒子を含有してなる第一の試薬及びレポーター酵素に接合した第一の抗体の第二の抗体(又は結合タンパク質)を含有してなる第二の試薬が使用される。上述した前処理剤としてのサリチル酸ナトリウム及びタクロリムスエステルを始めとする1又はそれ以上の遊離剤による処理ののち、タクロリムスを含有することが推測される試料及びクローム粒子を含有してなる媒体がインキュベートされ、試料中に存在する全てのタクロリムスがクローム粒子に結合する。クローム粒子は、磁石を用いて洗浄され、上澄みから結合された被検体を分離する。次いで、第二の試薬、即ち、レポーター酵素に接合した抗体(又は結合プロテイン)がクローム粒子でインキュベートされ、「サンドイッチ」を形成する。洗浄後、クロームに結合している酵素の量が測定され、試料中のタクロリムスの量に関係づけられる。
【0087】
アッセイ形式のもう1つの特定の例は、説明を目的とするものであって限定を目的とするものではないが、EMIT(登録商標)(Enzyme−Mediated Immunoassay Technology:酵素媒介イムノアッセイ技術)である。上述のとおり、前処理剤としてのトリクロロ酢酸及びタクロリムスを始めとする1又はそれ以上の遊離剤での処理の後、シロリムスを含有することが推測される試料、シロリムスの抗体及び酵素接合体、例えばG−6−PDH、を含有してなる媒体が、適切な時間の間、インキュベートされた。アッセイを実行したのち、酵素活性の量が測定され、試料中のシロリムスの量に関連付けられた。
【0088】
[非凝集イムノアッセイを実施するためのキット]
個々のアッセイを実行するための試薬は、被検体を測定するためのアッセイを都合よく実行するために有用なキット内に存在する。1つの実施態様において、キットは、本明細書に記述した原則に従う前処理剤、内因性結合物質から被検体を遊離させるための試薬、被検体の抗体及び非凝集イムノアッセイ−その性質は、個々のアッセイ様式による−を実行するための他の試薬の組合せを一括して含む。試薬は、試薬の相互反応性及び安定性に応じて、それぞれ、個々の容器に入っていてもよく、種々の試薬が1又はそれ以上の容器に一緒に入っていてもよい。キットは、更に、追加のsbpメンバー、補助酵素基質等の補助試薬等のような、アッセイを実施するための個別に包装された試薬を含んでいてもよい。
【0089】
キットにおける種々の試薬の相対的な量は、本発明の方法の間に起きる必要がある反応を実質的に最適化する試薬の濃度を提供し、更に、アッセイの感度を実質的に最適化するために、広範囲に変化させることができる。適切な状況下において、キット中の1又はそれ以上の試薬は、通常、凍結乾燥され、賦形剤を含む乾燥粉末として提供することができ、このものは、溶解すると、方法又はアッセイを実行するための適切な濃度の試薬溶液を提供する。キットは、更に、上述のような本実施例に従う方法についての明細書を含んでいてもよい。
【0090】
ここで用いられる用語「少なくとも」は、規定された項目の数が、記載された数に等しいかそれより大きいことを意味する。ここで用いられる用語「約」は、記載された数がプラス10%又はマイナス10%だけ異なってもよいことを意味する。例えば、「約5」は、4.5〜5.5の範囲を意味する。
【0091】
以下の実施例は、更に、本発明の具体的な実施態様を記述するが、これは、説明のためであって限定のためではなく、本発明の範囲を説明することを意図しており、範囲を限定するものではない。ここで開示された部及びパーセントは、他に指示しない限り、体積による。