特許第6559136号(P6559136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6559136-絶縁シート 図000002
  • 特許6559136-絶縁シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559136
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】絶縁シート
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/60 20060101AFI20190805BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20190805BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20190805BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20190805BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20190805BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01B17/60 J
   H01B17/56 A
   H05K7/20 F
   H01L23/36 M
   B32B7/025
   B32B27/38
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-538382(P2016-538382)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2015071461
(87)【国際公開番号】WO2016017670
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-153477(P2014-153477)
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】石畝 千啓
(72)【発明者】
【氏名】大橋 章浩
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−503975(JP,A)
【文献】 特開2011−108617(JP,A)
【文献】 特開2009−130251(JP,A)
【文献】 特開2013−107353(JP,A)
【文献】 特開平03−077203(JP,A)
【文献】 特開2007−182494(JP,A)
【文献】 特開2013−159097(JP,A)
【文献】 特開平02−090417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/60
B32B 7/025
B32B 27/38
H01B 17/56
H01L 23/373
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の層構造となっている絶縁シートであって、
被着体に接着されて用いられ、
前記被着体に接着される第1表面層と、
前記第1表面層とは反対側の面となる第2表面層と、
前記第1表面層に内側から接する中間層とを備えており、
前記第1表面層が、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有し、
前記中間層は、前記第1表面層よりも無機成分の体積含有率が高く、前記第1表面層よりも熱伝導率が高く、
前記第1表面層は、前記中間層よりも厚みが小さく、厚み方向での前記中間層との熱抵抗の差が±5℃/W以内である、絶縁シート。
【請求項2】
前記中間層が、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有する、請求項1に記載の絶縁シート。
【請求項3】
前記中間層が、セラミックプレートで構成されている、請求項1に記載の絶縁シート。
【請求項4】
前記セラミックプレートが、アルミナプレート、窒化アルミニウムプレート、又は、窒化ケイ素プレートである、請求項3に記載の絶縁シート。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2014−153477号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、絶縁シートに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、絶縁シートは、被着体に接着されて用いられる接着シート(例えば、電子部品と、該電子部品が発した熱を外部に放出させる放熱部材との間に介装されて用いられる絶縁シート等)は、エポキシ樹脂及び無機フィラーを含有している。
【0004】
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物により形成された樹脂シートと、金属箔により形成された金属層とが積層された絶縁シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2006−191150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今では、絶縁性、接着性、及び、熱伝導性がより一層優れた絶縁シートが求められることがあるが、従来の絶縁シートでは、斯かる要求を十分満足できない場合がある。
【0007】
本発明は、上記要望点に鑑み、絶縁性、接着性、及び、熱伝導性に優れる絶縁シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、3層以上の層構造となっている絶縁シートであって、
被着体に接着されて用いられ、
前記被着体に接着される第1表面層と、
前記第1表面層とは反対側の面となる第2表面層と、
前記第1表面層に内側から接する中間層とを備えており、
前記第1表面層が、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有し、
前記中間層は、前記第1表面層よりも無機成分の体積含有率が高く、前記第1表面層よりも熱伝導率が高く、
前記第1表面層は、前記中間層よりも厚みが小さく、厚み方向での前記中間層との熱抵抗の差が±5℃/W以内である、絶縁シートにある。
【0009】
ここで、本発明に係る絶縁シートの一態様として、前記中間層は、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有する。
【0010】
また、本発明に係る絶縁シートの他態様として、前記中間層は、セラミックプレートで構成されている。
【0011】
さらに、前記中間層がセラミックプレートで構成されている絶縁シートの一態様として、前記セラミックプレートは、前記セラミックプレートが、アルミナプレート、窒化アルミニウムプレート、又は、窒化ケイ素プレートである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る絶縁シートの概略断面図。
図2】塗工装置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
本実施形態に係る絶縁シートは、3層以上の層構造となっている絶縁シートである。また、本実施形態に係る絶縁シートは、被着体に接着されて用いられる。さらに、本実施形態に係る絶縁シートは、前記被着体に接着される第1表面層と、前記第1表面層とは反対側の面となる第2表面層と、前記第1表面層に内側から接する中間層とを備えている。前記第1表面層は、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有する。前記中間層は、前記第1表面層よりも無機成分の体積含有率が高く、前記第1表面層よりも熱伝導率が高い。前記第1表面層は、前記中間層よりも厚みが小さく、厚み方向での前記中間層との熱抵抗の差が±5℃/W以内である。
【0015】
以下、3層構造となっている絶縁シートを例にして、本実施形態に係る絶縁シートについて説明する。
【0016】
本実施形態に係る絶縁シートは、電子部品と、該電子部品が発した熱を外部に放出させる放熱部材との間に介装されて用いられる絶縁シートである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る絶縁シート1は、一面側の第1表面層2と、他面側の第2表面層3と、前記第1表面層2および前記第2表面層3の間に設けられ、且つ、前記第1表面層2および前記第2表面層3に接する中間層4とを備えている。
【0018】
前記第1表面層2、前記第2表面層3、および、前記中間層4は、それぞれエポキシ樹脂と無機フィラーとを含有する。
【0019】
前記第1表面層2および前記第2表面層3は、それぞれ前記中間層4よりも無機成分たる無機フィラーの体積含有率が小さい層である。
前記第1表面層2および前記第2表面層3は、それぞれ前記中間層4よりも無機フィラーの体積含有率が小さいので、前記第1表面層2および前記第2表面層3におけるエポキシ樹脂の体積含有率を前記中間層4におけるエポキシ樹脂の体積含有率よりも大きくすることができる。また、エポキシ樹脂は、無機成分たる無機フィラーと異なり優れた接着性を有する。よって、前記第1表面層2および前記第2表面層3は、接着性に優れたものとなり、その結果、本実施形態に係る絶縁シート1は、接着性に優れたものとなる。
また、前記第1表面層および前記第2表面層は、それぞれ前記中間層よりも無機成分たる無機フィラーの体積含有率が小さいことにより、クラックが生じ難い。よって、前記第1表面層2および前記第2表面層3は、絶縁性に優れたものとなり、その結果、本実施形態に係る絶縁シート1は、絶縁性に優れたものとなる。
前記中間層4は、無機フィラーの体積含有率が、好ましくは50体積%以上であり、より好ましくは50〜70体積%である。
前記第1表面層2および前記第2表面層3の各層は、無機フィラーの体積含有率が、好ましくは60体積%以下であり、より好ましくは30〜60体積%である。
なお、体積は20℃における体積を意味する。
【0020】
前記中間層4は、前記第1表面層及び前記第2表面層よりも熱伝導率が高い。
前記中間層4は、熱伝導率が、好ましくは10〜50W/(m・K)であり、より好ましくは10〜30W/(m・K)である。
前記第1表面層は、熱伝導率が、好ましくは10〜50W/(m・K)であり、より好ましくは10〜30W/(m・K)である。また、前記第2表面層は、熱伝導率が、好ましくは10〜50W/(m・K)であり、より好ましくは10〜30W/(m・K)である。
なお、熱伝導率は、JIS A1412−1:1999に規定されている方法により測定することができる。
【0021】
前記第1表面層2および前記第2表面層3は、それぞれ前記中間層4よりも厚みが小さい。本実施形態に係る絶縁シート1は、斯かる構成により、熱伝導性に優れたものとなる。
前記中間層4は、厚みが、好ましくは100〜300μmであり、より好ましくは100〜200μmである。
前記第1表面層2は、厚みが、好ましくは30〜100μmであり、より好ましくは30〜80μmである。また、前記第2表面層3は、厚みが、好ましくは30〜100μmであり、より好ましくは30〜80μmである。
なお、厚みは、マイクロメーターにより測定することができる。
【0022】
前記第1表面層2は、厚み方向での前記中間層4との熱抵抗の差が±5℃/W以内である。本実施形態に係る絶縁シート1では、斯かる構成により、熱溜まりが生じ難くなる。その結果、本実施形態に係る絶縁シート1は、熱伝導性に優れたものとなる。
前記第2表面層3は、厚み方向での前記中間層4との熱抵抗の差が±5℃/W以内であることが好ましい。
前記第1表面層2は、熱抵抗が、好ましくは75℃/W以下であり、より好ましくは6〜20℃/Wである。前記第2表面層3は、それぞれ熱抵抗が、好ましくは75℃/W以下であり、より好ましくは6〜20℃/Wである。前記中間層4は、熱抵抗が、好ましくは75℃/W以下であり、より好ましくは6〜20℃/Wである。
前記第1表面層2は、厚み方向での前記中間層4との熱抵抗の差が±3℃/W以内であることが好ましい。前記第2表面層3は、厚み方向での前記中間層4との熱抵抗の差が±3℃/W以内であることが好ましい。
前記第1表面層2の厚み方向での熱抵抗に対する、前記中間層4の厚み方向での抵抗の比が、好ましくは8/10〜10/8であり、より好ましくは9/10〜10/9である。前記第2表面層3の厚み方向での熱抵抗に対する、前記中間層4の厚み方向での抵抗の比が、好ましくは8/10〜10/8であり、より好ましくは9/10〜10/9である。
なお、熱抵抗は、JIS A1412−1:1999に規定されている方法により測定することができる。
各層の性質(熱抵抗、厚み、熱伝導率等)は、絶縁シートを研磨して測定対象の層を露出させることで測定することができる。
【0023】
本実施形態に係る絶縁シートの絶縁破壊電圧(BDV)は、2kV以上であることが好ましく、3kV以上であることがより好ましい。
BDVは、JIS K6911:1995に基づいて測定することができる。
【0024】
本実施形態に係る絶縁シートは、パワートランジスタ等の電子部品と、放熱フィン等の放熱部材の間に介装されて用いられる。
【0025】
本実施形態に係る絶縁シートは、上記の如く構成されているが、次に、本実施形態に係る絶縁シートを製造するための製造方法について説明する。
【0026】
前記製造方法では、第1表面層2となる第1樹脂シートと、中間層4となる第3樹脂シートと、第2表面層3となる第2樹脂シートとを熱プレスする熱プレス工程を実施することで、本実施形態に係る絶縁シートを得ることができる。
【0027】
まず、樹脂シート(第1樹脂シート、第2樹脂シート、及び、第3樹脂シート)の製造方法について説明する。
樹脂シートの製造方法は、無機フィラーと、エポキシ樹脂と、必要に応じて揮発性溶媒とその他の成分とを一般的な方法で混合して、樹脂組成物を調製する樹脂組成物調製工程と、該樹脂組成物をシート状に成形して樹脂シートを形成する樹脂シート形成工程とを備えている。
【0028】
前記樹脂組成物調製工程における樹脂組成物の作製方法としては、例えば、エポキシ樹脂を揮発性溶媒で溶解し、更に無機フィラーやその他の成分を加え混合する方法を採用することができる。また、例えば、エポキシ樹脂を加熱溶融しながら、前記無機フィラーとこの加熱溶融したエポキシ樹脂とその他の成分とをミキサー等によって混合する方法を採用することができる。
【0029】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を単独または2種以上併用して採用することができる。
【0030】
前記無機フィラーは、前記エポキシ樹脂よりも熱伝導率が高ければ特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、二酸化珪素、酸化マグネシウム、ダイヤモンドなどの粒子が挙げられる。
前記無機フィラーは、平均粒子径が10〜50μmであることが好ましい。
【0031】
前記樹脂組成物には、硬化剤、硬化促進剤を含有させて熱硬化性を付与することができる。
前記硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノール系フェノール樹脂などのフェノール系硬化剤、酸無水物などを用いることができる。
中でも、電気特性における信頼性を確保し易い点において、フェノールノボラック樹脂、ジアミノジフェニルスルホンが好適である。
前記硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、イミダゾール類や、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤が保存性などにおいて好適である。
【0032】
前記その他の成分としては、分散剤、粘着性付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料などといったプラスチック配合薬品として一般に用いられるその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲において適宜加えることができる。
【0033】
前記揮発性溶媒は、前記樹脂組成物に含まれる成分を均一分散させるべく用いられる。
前記揮発性溶媒としては、特に限定されないが、樹脂シート形成工程時において揮発除去が容易であるという点で、沸点が120℃以下のものが好ましい。また、樹脂組成物との反応性がないという点で、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン等を用いることが好ましい。
【0034】
前記樹脂シート形成工程では、例えば、揮発性溶媒が用いられるなどして樹脂組成物として常温で液状のものを用いる場合には、図2に示すような一般的な塗工装置により、樹脂シートを形成させるための樹脂組成物5を支持層6の一面側に塗工し、続いて、樹脂組成物5を乾燥させることにより支持層6上に樹脂シートを形成させることができる。
【0035】
前記樹脂組成物5を塗工する方法としては、特に限定されず、ドクターブレード法、コーター法、押し出し成形法、スクリーン印刷法、メタルマスク印刷法などを採用できる。
【0036】
前記樹脂組成物5を乾燥する方法としては、常圧での加温による乾燥方法の他、真空条件下で前記樹脂組成物5中の揮発性溶媒を揮発除去させる方法も採用できる。前記樹脂組成物5中に揮発性溶媒が含まれている場合、通常、この乾燥により樹脂組成物5が乾燥し固化する。前記樹脂組成物5を乾燥する温度としては、特に限定されないが、樹脂組成物5に配合された揮発性溶媒の沸点以上であってエポキシ樹脂の完全硬化温度以下の温度が好ましく、通常は70〜130℃が適当である。
【0037】
前記樹脂シート形成工程では、図2に示したように支持層6を用いる場合、該支持層6としては、例えば、表面未処理の他、表面粗化処理、表面離型処理されたシート状のものを用いることができる。前記支持層6の材質としては、特に限定されるものではなく、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミドなどのプラスチック、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属等が挙げられる。なかでも、剥離性が良好で、外形加工性もよく、安価であるという点において、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。前記支持層6の厚みとしては、通常、25〜188μmを例示できる。
【0038】
また、前記樹脂シート形成工程では、例えば、支持層6を一方で送り出すとともに他方で巻き取り、この送り出しと巻き取りとの間において液状の樹脂組成物5の塗工と乾燥とを連続的に実施させる、いわゆる「ロール トゥ ロール」などと呼ばれる生産性に優れた方法などを採用することもできる。
【0039】
前記樹脂シートは、ボイドを有している。樹脂シートを熱プレスすることにより、樹脂シートのボイドを減少させることができるため、熱プレス後に形成される樹脂層の方が、樹脂シートよりも厚さが小さくなる。したがって、斯かる厚さの変化を考慮して、例えば、支持層に樹脂組成物を塗工する際の厚みを適切に設定することにより、所望の樹脂層の厚みとすることができる。
【0040】
尚、樹脂層が積層されている面の単位面積当たりの樹脂層の質量をw、樹脂層の厚さをm、樹脂層の密度をρとすると、下記式(1)で表される。
w=m×ρ (1)
また、樹脂層の密度ρは、樹脂シートにおいて、樹脂層の各成分の密度に、樹脂層における各成分の体積割合を乗じたものの和から算出することができる。若しくは、別途樹脂層を1層形成し、斯かる質量と体積を測定して、樹脂層の密度ρを算出しても良い。
更に、樹脂層の質量は、該樹脂層の形成に使用された樹脂組成物の質量から、熱プレス時に揮発する成分の質量分を引いて算出することができる。
従って、乾燥後の単位面積当たりの質量がwとなるように樹脂シートを形成させることにより、後段における熱プレス工程後の樹脂層の厚さを目的とする厚さmとすることができる。
【0041】
前記熱プレス工程では、まず、第1表面層となる第1樹脂シートと、中間層となる第3樹脂シートとが接するように、支持層付きの第1樹脂シートと、支持層付きの第3樹脂シートとを積層し熱プレスして、第1樹脂シートと第3樹脂シートとを接合することにより、両面に支持層を有する接合体を作製する。
そして、この接合体から第3樹脂シート側の支持層を剥離させる。
次に、第2表面層となる第2樹脂シートと、中間層となる第3樹脂シートとが接するように、支持層付きの第2樹脂シートと、支持層付きの接合体とを積層し熱プレスして、第2樹脂シートと第3樹脂シートとを接合することにより、両面に支持層を有する絶縁シートを作製する。
そして、絶縁シートの両面から支持層を剥離することにより、絶縁シートを得ることができる。
【0042】
前記熱プレスでの圧力は、好ましくは1〜20MPa、より好ましくは2〜15MPaとする。
【0043】
圧力以外の前記熱プレスの条件としては、特に限定されないが、温度40〜160℃、2秒〜10時間が例示できる。熱硬化をさらに促進するという点で40℃以上であることが好ましく、エポキシ樹脂の硬化反応が進みすぎて、電気が絶縁されるべき媒体間に接着できなくなることを防止するという点で160℃以下であることが好ましい。
また、ボイドを効率良く取り除き得るという点で、減圧下にて熱プレスを行うことがより好ましい。
【0044】
前記熱プレス工程を実施した後、エポキシ樹脂は、未硬化の状態、より詳しくは、完全に硬化していない半硬化の状態であるのが好ましい。半硬化の状態としては、DSC測定において、全く硬化させていないエポキシ樹脂の発熱量を100%として、前記熱プレス工程を実施した後のエポキシ樹脂の発熱量が20〜85%の範囲であることが好ましい。
【0045】
前記熱プレス工程は、加熱装置を備えているほかに、例えば、減圧装置を備えているプレス機、冷却装置を備えているプレス機、その他、多段プレス機などによって実施することができる。
また、前記熱プレスを実施する具体的方法としては、加熱プレスして自然冷却する方法、熱交換による加熱冷却一貫プレス方法、加熱プレスと冷却プレスとを分け加熱プレス後冷却プレスを行う方法等が例示される。
【0046】
ところで、第3樹脂シートは、無機フィラーの体積含有率が高いので、ひび割れが生じやすい。しかし、前記製造方法では、第3樹脂シートを第1樹脂シート及び第2樹脂シートで覆い、熱プレスするので、熱プレスした際に第1樹脂シート及び第2樹脂シートのエポキシ樹脂でそのひび割れ箇所を埋めることができる。その結果、ひび割れが少ない絶縁シートを得ることができる。
【0047】
本実施形態の絶縁シートは、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0048】
即ち、本実施形態の絶縁シート1は、3層以上の層構造となっている絶縁シートである。また、本実施形態に係る絶縁シートは、被着体に接着されて用いられる。さらに、本実施形態に係る絶縁シートは、前記被着体に接着される第1表面層2と、前記第1表面層2とは反対側の面となる第2表面層3と、前記第1表面層2に内側から接する中間層4とを備えている。前記第1表面層2は、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有する。前記中間層4は、前記第1表面層2よりも無機成分の体積含有率が高く、前記第1表面層2よりも熱伝導率が高い。前記第1表面層2は、前記中間層4よりも厚みが小さく、厚み方向での前記中間層4との熱抵抗の差が±5℃/W以内である。
斯かる絶縁シート1において、前記第1表面層2は、前記中間層4よりも無機成分の体積含有率が小さいので、前記第1表面層2におけるエポキシ樹脂の体積含有率を前記中間層4におけるエポキシ樹脂の体積含有率よりも大きくすることができる。また、エポキシ樹脂は、無機成分と異なり優れた接着性を有する。よって、前記第1表面層2は、接着性に優れたものとなり、その結果、斯かる絶縁シート1は、接着性に優れたものとなる。
また、前記第1表面層2は、前記中間層4よりも無機成分の体積含有率が小さいことにより、クラックが生じ難い。よって、前記第1表面層2は絶縁性に優れたものとなり、その結果、斯かる絶縁シート1は、絶縁性に優れたものとなる。
また、斯かる絶縁シート1において、前記中間層4は、前記第1表面層2よりも無機フィラーの体積含有率が大きい。また、無機成分はエポキシ樹脂よりも熱伝導性に優れる。よって、前記中間層4は、熱伝導性に優れたものとなる。その結果、斯かる絶縁シート1は、熱伝導性に優れたものとなる。
さらに、斯かる絶縁シート1において、前記第1表面層2は、前記中間層4よりも厚みが小さいので、斯かる絶縁シート1は、熱伝導性に優れたものとなる。
さらに、斯かる絶縁シート1において、前記第1表面層2は、厚み方向での前記中間層4との熱抵抗の差が±5℃/W以内である。そのため、斯かる絶縁シート1では、熱溜まりが生じ難くなる。その結果、斯かる絶縁シート1は、熱伝導性に優れたものとなる。
以上のように、本実施形態によれば、絶縁性、接着性、及び、熱伝導性がより一層優れた絶縁シートを提供し得る。
【0049】
また、本実施形態の絶縁シート1では、前記中間層4が、エポキシ樹脂と無機フィラーとを含有する。
【0050】
本発明に係る絶縁シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る絶縁シートは、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る絶縁シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、本実施形態に係る絶縁シートでは、前記中間層4がエポキシ樹脂と無機フィラーとを含有するが、本発明に係る絶縁シートでは、前記中間層がセラミックプレートで構成されてもよい。セラミックプレート自体は機械的強度が弱いが、本発明に係る絶縁シートでは、セラミックプレートが2つの表面層で覆われているので、機械的強度が高まるという利点がある。
この場合、前記中間層4は、厚みが、好ましくは100〜300μmであり、より好ましくは100〜200μmである。前記第1表面層2は、厚みが、好ましくは30〜200μmであり、より好ましくは50〜150μmである。また、前記第2表面層3は、厚みが、好ましくは30〜200μmであり、より好ましくは50〜150μmである。
【0052】
前記セラミックプレートとしては、アルミナプレート、窒化アルミニウムプレート、又は、窒化ケイ素プレートであることが好ましく、放熱性に優れ、更に、低価格であるという観点から、窒化アルミニウムプレートが特に好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1:絶縁シート、2:第1表面層、3:第2表面層、4:中間層、5:樹脂組成物、6:支持層
図1
図2