【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、CO
2などの圧縮性流体、特にクロマトグラフィ用途に適した溶媒用のポンプシステムが提案される。このポンプシステムは、第1のポンプ出口を有する第1のポンプを含む。このポンプシステムは、第2のポンプ出口を有する第2のポンプをさらに含む。第1のポンプ出口と、第2のポンプ出口とは、ポンプシステムの主出口と流体連通する結合部(junction)で合流する。言い換えれば、結合部の下流に主出口が設けられ、この主出口は、結合部のため第1のポンプ出口および第2のポンプ出口と流体連通する。
【0013】
このように、第1のポンプ出口から出た流体流と、第2のポンプ出口から出た流体流とは、結合部で合流し、さらに下流に、ポンプシステムの主出口へと、またはポンプシステムの主出口を通って送られる。
【0014】
さらに、このポンプシステムは、第1のポンプの第1の出口圧力p1の測定値に基づいて、第2のポンプの第2の出口圧力p2を調節する制御部を含む。第1および第2の出口圧力p1およびp2は、それぞれ第2のポンプおよび第1のポンプの出口圧力を指定する。さらに、第1のポンプ出口は、第1のポンプの唯一の出口であり、第2のポンプ出口は、第2のポンプの唯一の出口である。典型的には、第1および第2のポンプの各々は、第1または第2のポンプ出口としてそれぞれに指定される1つの出口を含む。
【0015】
制御部は、第1のポンプの出口圧力p1の測定値に基づいて、第2のポンプの出口圧力p2を調節するように動作可能であるので、第2のポンプが圧力制御によって調節され、それによって第1のポンプ出口の出口流における供給流の脈動を、第2のポンプによって有効に補償する、または少なくとも低減させることができる。ここで、第2のポンプは、第1のポンプの流量または体積流量よりも低減した流量を供給するように寸法設定かつ設計される。第2のポンプは、特に、第1のポンプの出口において流体流に圧力降下または流量低下が生じた特定の時点で、流体流を補助的に供給するように動作可能である。
【0016】
制御部は、特に、結合部下流の合計圧力および合計流量が所定のレベルを超えることを相殺し、防止するように、第2のポンプの第2の出口圧力を調節するように適用(adapted to)されている。したがって、第2のポンプの出口圧力の調節および/または制御は、結合部下流の体積流量を、クロマトグラフィ用途によって主出口下流に求められる所定のマージンまたはレベルの範囲内、典型的には所定の一定体積流量よりも低く保持する働きをする。
【0017】
第1のポンプは、典型的には主ポンプまたは増圧ポンプとして働き、作用するが、第2のポンプは、補助ポンプまたは分注ポンプとして作用し、働くことができ、この第2のポンプは、第1のポンプの供給流の脈動、すなわち第1のポンプの出口において頻繁に生じる圧力降下または供給流の低下を専ら補償するように適用され、設計されている。
【0018】
第1および/または第2のポンプの出口圧力を測定し、調節するとは、特に、第1および/または第2のポンプそれぞれの出口を流れるそれぞれの加圧流体の圧力を調節および/または測定することを意味する。
【0019】
第2のポンプは、特に、第1のポンプ出口の供給流の脈動を補償する働きをするので、第2のポンプの最大体積流量は、第1のポンプの最大体積流量ほど大きくする必要はない。したがって、第2のポンプの寸法は、第1のポンプの寸法に比べて遥かに小型にすることができる。実際上、第2のポンプにかかる費用は、第1のポンプの金銭的投資に比べてかなり低く抑えることができる。このように、このポンプシステムは、かなりコンパクト、かつ費用効率よく維持することができる。さらに、第1のポンプを搭載済みクロマトグラフィシステムのポンプによって置き換えてもよい。第1のポンプに、第2のポンプを結合部および制御部と共に付属させ、連結する(couple)ことによっても、既存のポンプシステムに第2のポンプを後付けして、本発明によるポンプシステムを設けることができる。
【0020】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つの逆止め弁が、結合部と、第2のポンプ出口との間に配置される。この逆止め弁によって、流体が第1のポンプ出口から第2のポンプ出口の方へと流れるのを効果的に防止することができる。典型的には、逆止め弁は、第1のポンプ出口の圧力が降下して、第2のポンプ出口の圧力レベルを下回ると開く。これは、典型的には、
図3に示す圧力降下61が生じた場合であり、典型的には、第1のポンプ出口の流体流の対応する低下にリンクしている。
【0021】
第1および第2のポンプ出口の結合部によって、主出口の流体流をかなり一定に、かつ圧力降下のないレベルで保持することができ、これは、第1のポンプ出口において生じるいかなる圧力降下または流体流の低下も、第2のポンプ出口の補足的な補償流体流によって補償することができるからである。ここで、結合部と、第2のポンプ出口との間の逆止め弁は、実質的に遅延のない動作を実現する多数の様々な形で実施可能である。このように、逆止め弁によって、第1のポンプ出口における圧力降下または流体流の低下は、第2のポンプ出口において第2のポンプによって供給される流体流によってほぼ即座に補償することができる。
【0022】
別の実施形態によれば、第1のポンプは、第1のポンプ入口を含む。第2のポンプも、第2のポンプ入口を含む。第1および第2のポンプ入口はどちらも、圧縮性流体が少なくとも部分的に充填された収納リザーバと並列に連結可能である。典型的には、第1および第2の入口は、全く同一の収納リザーバに連結可能、または実際に連結されている。収納リザーバと、第1および第2のポンプ入口との間には、圧縮性液体を、第1および/または第2のポンプによって加圧する前に所定の温度に予め冷却するための冷却器を設けることができる。どちらのポンプも全く同一の収納容器と流体連通するので、第1および第2のポンプは、クロマトグラフィ用途に適した同種の溶媒を加圧し、供給するように適用されている。
【0023】
言い換えれば、別の実施形態によれば、第1および第2のポンプは、互いに対して並列に配置される。したがって、貯蔵容器に供給された加圧流体は、第1のポンプを通り、結合部を通って主出口へと流れるか、または第2のポンプを介し、結合部を通って主出口へと流れることができる。第1および第2のポンプを、収納リザーバと主出口との間の流体経路に並列に配置することによって、流量が異なる、したがって費用効果の高い、第1のポンプと第2のポンプとで異なるポンプ構成を実現することができる。
【0024】
別の実施形態によれば、制御部は、第2のポンプの出口圧力を、第1のポンプの出口圧力よりも低く調整するように動作可能である。上記で既に述べたように、言及しているポンプの出口圧力とはいずれも、それぞれのポンプによって加圧された加圧流体の流体圧力を指すものである。第2のポンプの出口圧力を第1のポンプの出口圧力よりも少なくとも僅かに低く調整することによって、供給流の脈動のいかなる過剰補償も、有効に防止することができる。第2のポンプの動作圧力を、第1のポンプの所定の出口圧力よりも低く保持することによって、主出口における合計圧力を第1のポンプの所定の出口圧力よりも低く、またはその所定の出口圧力で保持することができる。
【0025】
第2のポンプの出口圧力の調整は、典型的には制御部によって実施され、制御部は、マイクロコントローラによって、またはPLC制御システム、または同様の制御システムもしくは制御ループによって実施することができる。第2のポンプの出口圧力の調整は、第1のポンプの実際に測定された出口圧力に依存して、第2のポンプを一時的にスイッチオンしたり、スイッチオフしたりすることを含むことができる。第1のポンプ出口の加圧流体流に圧力降下が生じた場合、かかる圧力降下は、ほぼ即座に検出されることになる。その結果、第2のポンプは、直ちに起動する(activate)ことになる。この例では、第2の出口圧力の調節または調整は、第2のポンプの出口圧力を動的に改変することによって、例えばポンプ容量またはポンプ出力を連続的に上昇および/または低下させることによって、等しく達成できることに留意されたい。
【0026】
代替例として、第2のポンプは、第2の出口圧力、したがって第2のポンプ出口内部の流体圧力の測定値に基づいて制御し、動作させることも考えられる。このように、制御部は、第2のポンプ出口においてかなり一定の圧力レベルをもたらすことができる。第1のポンプ出口の圧力レベルが降下して所定のレベルを下回った場合、結合部と第2のポンプ出口との間にある逆止め弁を開き、それによって第2の出口の圧力降下をもたらすことができ、それによって第2のポンプの調節ループが、第2のポンプの体積流量を増大させて、圧力降下を相殺し、第2のポンプ出口の流体圧力を所定の一定レベルで保持することができるように動作可能となる。
【0027】
別の実施形態では、制御部は、第2のポンプの出口圧力を調整するように動作可能であり、したがって第2の出口圧力p2を、第1のポンプの出口圧力p1よりも1バールから10バール低いレベルに調整することができる。本例では、第1のポンプの出口圧力は、第1のポンプのかなり一定の、所定の出口圧力に関し、かかる圧力は、主出口に連結され、そこから供給を受けるクロマトグラフィシステムが一般に必要とするものである。典型的な動作シナリオでは、第1のポンプは、数百バール、典型的には約400バール、さらにはそれよりも高い圧力をもたらす。次いで、第2のポンプの圧力は、第1のポンプの圧力レベルに比べて1〜10バール低い圧力レベルに調整され、調節される。第2のポンプの出口圧力p2を、第1のポンプの出口圧力p1の圧力レベルよりも僅かに低い圧力レベルに調整し、かつ第1および第2のポンプ出口を並列に配置しておくことによって、第1のポンプの供給流の脈動を、第2のポンプの作用によってほぼ完全に補償することができる。
【0028】
さらなる実施形態によれば、ポンプシステムは、制御部に連結され、結合部上流の第1のポンプ出口と流れ連通する、少なくとも第1の圧力センサを含む。第1の圧力センサによって、第1のポンプの出口圧力p1を第1のポンプ出口で測定することが可能となる。このように、制御部によって第1の出口圧力p1を常に監視することができる。
【0029】
さらなる実施形態では、ポンプシステムはまた、制御部に連結され、結合部上流の第2のポンプ出口と流れ連通する、少なくとも第2の圧力センサを含む。第2の圧力センサによって、第2のポンプの第2の出口圧力p2を測定することができる。第1および第2の圧力センサの信号を比較することによって、第1および第2のポンプ間の、したがって第1および第2のポンプ出口間の圧力差を求めることが可能となる。したがって、第2のポンプの動作をも調節するように適用された制御部によって、第1および第2の出口圧力p1−p2間の圧力差を所定のマージン、すなわちx2とx1の範囲内、典型的には1バールから10バールの間に保つことができる。
【0030】
制御部は第2の圧力センサと連結されているため、また、制御部は第2のポンプの動作を制御するようにその駆動部にも連結されているため、制御部、第2の圧力センサ、および第2のポンプは、制御ループとして配置され、または制御ループを形成(form)している。このように、ポンプシステムの動作中の、第2のポンプの動作および挙動は、明確に規定された所定の形で制御することができ、したがって第2のポンプによって供給される体積流量および圧力は、第1のポンプの圧力に追従することになる。このように、ポンプシステム、特に第2のポンプは、第1または主ポンプの流体流の脈動、流量変動、および/または動作モードの変更にも動的に反応することができる。
【0031】
一般に、第1および第2のポンプは、同等の型のものでよいが、同等の型のものである必要はない。第2のポンプは、第1のポンプの供給流の脈動を、広範な体積流量にわたっても有効に補償する働きをするので、第1および/または第2のポンプは、1つ、2つ、3つ、または4つのポンプヘッドをそれぞれ特色とする単式ポンプ、複式ポンプ、三重式ポンプ、または四重式ポンプとして実施されることが考えられる。第1および第2のポンプは、幾何形状および寸法が大幅に異なってもよい。さらに、供給流の脈動を補償するために、第1および第2のポンプが非同期で駆動されることが特に有利である。
【0032】
単独で考えると、第2のポンプも、連続モードで駆動される場合には供給流の脈動を示すことがある。第2のポンプの体積流量は、典型的には第1のポンプの体積流量よりも少ないので、第2のポンプの供給流の脈動が、第1のポンプの供給流の脈動と時間的に重ならないようにすると特に有利である。供給流の脈動がそのように互いに重なるのを回避するために、第1および第2のポンプが非同期で、または互いに独立して駆動されると有利である。
【0033】
別の実施形態によれば、第2のポンプの最大体積流量は、第1のポンプの最大体積流量の20%未満、または15%未満、または10%未満である。第2のポンプは、分注または補助ポンプとしてのみ作用し、第1のポンプ出口の流体流の供給流量ギャップを専ら補償する働きをするだけなので、大体積流量を供給する必要はない。典型的には、第2のポンプの体積流量は、第1のポンプの体積流量の10%から20%の間、典型的には10%から15%の間の範囲でよい。
【0034】
別の態様によれば、少なくとも1種の溶媒を収納および/または準備するための少なくとも1つの収納リザーバを有するクロマトグラフィシステムも、提供される。このクロマトグラフィシステムは、上述のポンプシステムをさらに含む。典型的な実施形態では、クロマトグラフィシステムはまた、クロマトグラフィカラムと、物質を分析、識別し、定量化するための少なくとも1つの検出または分析ユニットとを含む。
【0035】
さらなる態様では、クロマトグラフィシステムは、超臨界流体クロマトグラフィシステムとして、またはHPLCシステムとして設計され、ここで、そのポンプシステムは、加圧CO
2、またはエタノール、メタノール、アセトン、ジエチルエーテル、もしくは同様の溶媒などの他の圧縮性流体を供給するように動作可能である。
【0036】
この改良型ポンプシステムを用いると、クロマトグラフィシステムに入る溶媒流を、かなり一定した、脈動のない溶媒流として供給することができる。実際上、クロマトグラフィシステムの測定結果を、著しく改善することができる。
【0037】
さらなる態様では、変換キットが提供され、この変換キットによって、第1の、したがって主ポンプの供給流の脈動を補償するように、クロマトグラフィシステムの従来型ポンプシステムに、収納リザーバ、ならびにポンプシステムの主出口に並列に連結された第1および第2のポンプを後付けすることができる。この変換キットは、少なくとも第2のポンプ、結合部、および制御部を含む。したがって、第2のポンプは、分枝部中、または収納リザーバと主出口との間の流路に平行に延び、しかし第1のポンプを通って延びる流路中に配置されることになる。
【0038】
さらに、少なくとも1つ、典型的には2つの、すなわち上述の、変換キットに付属させてもよい第1および第2の圧力センサが、第1および第2のポンプの第1および第2のポンプ出口にそれぞれ配置されることになる。さらに、少なくとも第2のポンプは、その出口圧力p2を、第1のポンプの出口圧力p1よりも僅かに低い所定のレベルに調整するように、制御部によって動作し、制御される。
【0039】
変換キットによって、HPLCまたはSFCシステムなどのクロマトグラフィシステムの既存のポンプシステムに、かなりコスト効率がよく、かつ容易な形で後付けすることができる。
【0040】
別の態様では、上述のポンプシステムを動作させる方法が提供される。前記方法は、第1のポンプの第1のポンプ出口で第1の出口圧力p1を測定する工程と、測定された第1の出口圧力に基づいて、第2のポンプの第2のポンプ出口で第2の出口圧力を調整する工程とを含む。第2のポンプ出口の第2の出口圧力p2は、第1のポンプ出口の出口圧力よりも僅かに低く調整され、かつ/または保持される。このように、第2のポンプによって供給される体積流量は、第1のポンプによって生じる加圧流体流の頻繁な降下を専ら補償する働きをする。少なくとも第2のポンプが専ら圧力調整され、かつ第2の出口圧力p2が第1の出口圧力p1よりも少なくとも僅かに低いので、第1および第2のポンプによって、第1のポンプおよび第2のポンプの分枝部、または主出口で流体流を入念かつ量的に測定しなくとも、均質かつ一定の体積流量を供給することができる。
【0041】
本方法のさらなる実施形態では、第2の出口圧力p2は、第1の出口圧力p1よりも1バールから10バール低く保持される。典型的には、第1および第2のポンプの出口圧力レベルは、約数百バール、典型的にはSFC用途の場合約400バールである。しかし、第1および第2のポンプの出口圧力のレベルは1000バール程度まで高い場合も考えられる。また、ここでも、出口圧力p1とp2との圧力差は、1バールから10バールの間の範囲でよい。あるいは、第1および第2の出口圧力間の圧力差は、p1の合計圧力の0.25%から2.5%の間の範囲も考えられる。
【0042】
本発明は、ポンプシステム、かかるポンプシステムを含むクロマトグラフィシステム、およびかかるポンプシステムまたはクロマトグラフィシステムを動作させる方法にもそれぞれ等しく関連することに言及しておきたい。ポンプシステムに関して言及し、説明したいかなる特色、効果、および利点も、クロマトグラフィシステム、およびポンプシステムを動作させる方法にも等しくあてはまるものであり、その逆もまた同様である。
【0043】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な改変および変更を行うことができることが当業者には明白であろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用するいかなる参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではないことに留意されたい。
【0044】
以下、一実施形態の様々な特色、態様、利点、および応用例(application scenario)について、図面を参照しながら説明する。